JP3547703B2 - 適応アレーアンテナ送受信装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、適応アレーアンテナを用いて無線信号の送受信を行う適応アレーアンテナ送受信装置に関し、特に、FDD(Frequency Division Duplex)方式のように送信と受信とで互いに異なる周波数の信号を用いる通信システムにおいて、アレーアンテナのブランチ間の振幅及び位相差を、送信機及び受信機のそれぞれについて、個別に装置内で自動校正するための適応アレーアンテナ送受信装置に関する。また、本発明は、アンテナや給電線を含む装置の送信部及び受信部の振幅及び位相を、遠方界からの情報を用いることなく個別に校正するための適応アレーアンテナ送受信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の携帯電話やPHS(Persona1 Handyphone System)などの爆発的な移動通信の普及に伴って、限られた周波数帯においてできる限り多くの加入者の通信チャネルを確保することが必要になってきている。
そのため、移動通信では多数の加入者に対して、必要に応じて特定のチャネルを割り当てる方法(マルチチャネルアクセス方式とよぶ)を採用することが現在の主流になっている。
【0003】
セルラーシステムやPHSなどに代表される現在の移動通信システムでは、マルチチャネルアクセス方式として、主に時分割多重化(Time Division MultipleAccess:TDMA)方式が採用されている。その中でも、携帯電話のシステムの代表とされるGSM(Globa1 System for Mobile Comunications)やPDC(Persona1 Digita1 Cellular Telecomunication System)では、通話エリアを拡大するためにFDD方式を採用している。
【0004】
ところで、無線区間で周波数の利用効率を高めるためには、隣接セルからの干渉波の影響を低減することが必要である。干渉波を低減する技術としては、アダプティブアレーアンテナが知られている。この種の技術は、例えば文献1「Monzingo et a1.,“Introduction to Adaptive Array”,John Wiley & Sons, New York,1980」に開示されている。
【0005】
アダプティブアレーアンテナにおいては、アレー状に配列した複数のアンテナ素子によってアレーアンテナを構成する。そして、アレーアンテナの各ブランチ毎に、入力された信号に対して振幅と位相を重みづけしてアレーアンテナの放射パターンを制御する。すなわち、干渉波の方向にアレーアンテナの放射パターンのヌルを形成し、干渉波の影響を低減する。
【0006】
アダプディブアレーアンテナとFDDシステムとを組み合わせた装置は図34に示すように構成される。
近年、アダプティブアレーで必要とされる振幅と位相の制御は、制御の容易さや柔軟性などを考慮して、ベースバンドでDSP(Digita1 Signa1 Processor)などの演算器を用いたディジタル信号処理で実現することが一般的な方法とされている。この事実は、例えば文献2「T.0hgane,et a1.,“A Implementation of a CMA Adaptive array for high speed GMSK transmission in mobile mobile communications”,IEEE Trans.Vol.42,No.3,pp.282−288,August 1993」に開示されている。
【0007】
したがって、ベースバンドの制御でアダプティブアレーアンテナを実現する場合には、アレーアンテナの各ブランチ毎に送信機及び受信機が必要になる。このようなアダプティブアレーアンテナで用いる送信機および受信機については、それらの振幅及び位相が各ブランチ間で等しいことが理想的である。しかし、実際には電力増幅器などの高周波回路やケーブルの個体差、設置場所の温度特性の変動などによって振幅や位相がブランチ間で異なることが多い。
【0008】
このような振幅や位相の誤差の影響により、アダプティブアレーアンテナの放射パターンには、理想的な放射パターンに対してヌルの低下やサイドローブの上昇が生じ、アダプティブアレーアンテナの本来持つ干渉波抑圧特性を劣化させる要因となっている。この事実は、例えば文献3「J.Litva et a1.,“Digita1 Beamforming in Wireless Communications”,Artech House Publishers,1996.」に開示されている。
【0009】
この現象の一例について、図31及び図32を参照して説明する。図31はアレーアンテナの構成及び指向パターンを示し、図32は振幅及び位相誤差とヌル深度の関係を示している。すなわち、図31に示す3素子円形配列のアレーアンテナの各素子に図31に示す振幅及び位相を理想条件として与えた場合を基準とし、各素子の振幅及び位相が基準となる理想条件からずれた場合の放射パターンのヌル深度が図32に表されている。
【0010】
理想的な条件においては、図32に示す180度方向にヌルを有する放射パターンが形成され、ヌル深度も非常に大きくなる。しかし、各素子の振幅及び位相が基準となる理想条件からずれた場合には、アレーアンテナの放射パターンが劣化し、振幅誤差及び位相誤差に応じて図32のようにヌル深度が上昇する。
したがって、送信周波数と受信周波数とが異なるFDDシステムを採用する場合にはアダプティブアレーアンテナの送信の放射パターンと受信の放射パターンとを一致させるために、アレーアンテナの各ブランチ間の振幅と位相を校正する技術が必要になる。また、FDDシステムにアダプティブアレーアンテナを適用する場合には、送信と受信の周波数が異なるため、受信時に求められたアダプティブアレーアンテナの各素子の重み係数をそのまま送信時に適用することはできない。
【0011】
したがって、通常、アダプティブアレーアンテナの送信時の重み係数を決定するためには、受信時になんらかの到来方向推定技術を用いて所望信号及び干渉信号の方向を推定する必要があり、これらの方向の情報を用いて送信時の重み係数を決定し放射パターンを制御することになる。このため、FDDシステムにアダプティブアレーを適用するためには、受信時及び送信時にそれぞれ個別の校正を行う必要がある。
【0012】
従来より、各送信機及び受信機の振幅や位相を校正する場合には、装置に内蔵した発振器が出力する校正用の基準信号を用いる。この種の技術は、例えば文献4「H.Steyscal et a1.,“Digita1 Beamforming for Raders”,Microwave Journa1,vo1.32,No.1,pp.122−136.」に開示されている。
このような従来例の校正回路を図33に示す。図33の校正回路を用いる場合の校正手順は次の通りである。
【0013】
(1)基準信号発生器からの基準信号を、分岐手段であるカップラを介して各ブランチの受信機に各ブランチに共通の信号として送る。各ブランチの受信機で得られる値と基準値とを用いて各受信機の校正値を求める。予め定めた特定のブランチの受信機が検出した値を前記基準値として用いる。
(2)送信機から出力した信号をスイッチと減衰器(アッテネータ)を介して受信機に送り、各ブランチ毎に得られた値と基準値とを用いて送受信全体の校正値をブランチ毎に求める。ここで用いる基準値は、前記(1)で受信機の校正値を求める際に基準としたブランチの受信機で得られた値である。
【0014】
(3)前記(2)で求めた送受信全体の校正値から前記(1)で求めた受信機の校正値を差し引き、各送信機の校正値を求める。
上記のように、図33の校正回路を用いることにより、装置内でアレーアンテナの各ブランチ間の振幅及び位相を校正できる。
しかしながら、FDDシステムの場合には送信機と受信機の周波数が異なるため、送信機の出力する信号を受信機で測定することができず、図33に示されるような校正回路を用いても、上記(2)の手順を実行できない。したがって、従来の校正回路を用いる場合には、受信機の校正だけしか行うことができず、送信機側の振幅誤差及び位相誤差を解消できないという問題が生じる。また、従来の校正回路は装置間の校正を実現するものであり、アンテナ素子間の校正を行うことはできない。
【0015】
一方、アンテナ素子の振幅及び位相のばらつきも含めてアレーアンテナ装置の各ブランチ間の振幅及び位相を校正する場合には、遠方界から到来する信号を受信するか、あるいは遠方界でアレーアンテナの送信する信号を受信し、各ブランチ毎に移相器を用いて位相を順次に回転させる方法が用いられる。この技術は、素子電界ベクトル回転方法と呼ばれ、例えば文献5「真野,片木,“フェーズドアレーアンテナの素子振幅位相測定法”,電子情報通信学会論文誌(B),Vo1.J−65−B,N0.5,pp.555−560」に開示されている。
【0016】
ところが、例えば移動通信においては、各基地局が必ずしも規則的に配置されるとは限らず、通話エリアの不感地を解消するためやトラヒックの増大に応じて適宜決定した位置に各基地局が配置されるのが一般的である。移動通信の各基地局に上記の素子電界ベクトル回転方法を適用する場合には、基地局と基準局とが見通しになる条件を満たす必要がある。したがって、移動通信などの環境下においては、アレーアンテナの各ブランチ間の振幅及び位相をできる限り装置内で校正できるのが望ましい。
【0017】
また、アレーアンテナのアンテナ素子間で信号を送受信することによりアンテナ及びそれに接続される送受信機の校正を行う方法が、例えば文献6「H.M.Aumann et a1.,“Phased Array Antenna Calibration and Pattern Prediction Using Mutua1 Coupling Measurements” , IEEE Trans.on AP−37,N0.7,pp844−850,July 1989.」に開示されている。
【0018】
文献6の方法について、図35を参照しながら説明する。この方法では、図35(a)に示すように、例えば6角型配列になるようにアレーアンテナの各アンテナ素子を配置するとともに、隣接するアンテナ素子をある基準素子(この場合は#m)からみて均等位置になるように配列する。この場合には、基準素子からみた、隣接アンテナ素子の素子間相互結合を同一と見なすことができる。この条件の下で、図35(b)に示すように隣接するアンテナ素子と基準素子との間で信号を送受信することで、送受信機間の振幅・位相差を補正することができる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実際にはアレーアンテナの配列は直線や円形である場合が多く、実際の配列においては、使用するアンテナ間の相互結合をすべて等しくすることは困難である。また、この方法を適用するためには、すべての素子に対して上記の条件を満たすことが必要であり、校正用のアンテナが多数必要になる。さらに、この方法をFDDシステムに適用する場合は、送信と受信との周波数が異なるため、単純に隣接するアンテナ間で信号を送受信することはできないという問題がある。
【0020】
本発明は、アレーアンテナの送信周波数と受信周波数とが異なる場合であっても、アレーアンテナ装置において、アンテナや給電線を含む装置の受信部と送信部の双方を個別にかつ簡易に校正可能な適応アレーアンテナ送受信装置を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナと、前記アレーアンテナのアンテナ素子数と同数の送信機及び受信機と、前記各アンテナ素子に前記送信機及び受信機をそれぞれ接続する送受共用手段と、前記複数の受信機に各アンテナ素子からそれぞれ入力される信号に対して振幅及び位相の重み付けを行って複数の受信機の出力を合成することにより前記アレーアンテナの放射パターンを制御する指向性制御演算回路とを備えるとともに、前記受信機の受信周波数と前記送信機の送信周波数とが異なる適応アレーアンテナ送受信装置において、前記受信機の受信周波数と前記送信機の送信周波数との差分に相当する周波数の信号を出力するローカル信号生成手段と、前記複数の送信機のそれぞれの出力から信号の一部分を分岐して取り出す分岐手段と、前記複数の送信機のいずれかが出力する信号を選択する第1のスイッチと、前記第1のスイッチが選択した信号の周波数を、前記ローカル信号生成手段が出力する信号を用いて変換する周波数変換手段と、前記周波数変換手段が出力する信号を入力して前記複数の受信機に対応付けられた複数経路のいずれかに選択的に出力する第2のスイッチと、前記アンテナ素子からの受信信号と前記第2のスイッチからの信号とを選択的に前記各受信機に入力する第3のスイッチと、前記第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチの接続状態を制御して、前記受信機で得られる振幅・位相値を入力し、前記アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める校正制御手段とを設けた第1の適応アレーアンテナ送受信装置を提供する。
【0022】
第1の適応アレーアンテナ送受信装置においては、前記複数の送信機のいずれかが出力する信号が、分岐手段(例えばカップラ)によって取り出され、第1のスイッチで選択されて周波数変換手段に入力される。周波数変換手段は、第1のスイッチが選択した信号の周波数を、ローカル信号生成手段が出力する信号を用いて変換する。
また、ローカル信号生成手段が出力する信号の周波数は、前記受信機の受信周波数と前記送信機の送信周波数との差分に相当する。例えば、送信機の送信周波数がf1、受信機の受信周波数がf2であり、(f1>f2)の関係がある場合には、ローカル信号生成手段が出力する信号の周波数は(f1−f2)になる。従って、送信機から出力される周波数がf1の信号を周波数変換手段に入力すると、周波数変換手段の出力には周波数がf2の信号が得られる。この信号の周波数f2は受信機の受信周波数がf2と同一であるので、その信号を各受信機に入力すればその受信機で信号の振幅や位相を測定することができる。
【0023】
第2のスイッチは、周波数変換手段が出力する信号を入力して複数の受信機に対応付けられた複数経路のいずれかに選択的に出力する。第3のスイッチは、アンテナ素子からの受信信号と第2のスイッチからの信号とを選択的に各受信機に入力する。
【0024】
したがって、第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチを切り替えることにより、アレーアンテナのいずれかのブランチに設けられた送信機からの送信信号を、いずれかのブランチの受信機に周波数を整合させてから入力することができる。
第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチの制御は校正制御手段によって行われる。また、校正制御手段は受信機で得られる振幅・位相値を入力し、アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める。
【0025】
第1の適応アレーアンテナ送受信装置によれば、受信機の受信周波数と送信機の送信周波数とが異なる場合であっても、送信機が出力する信号を受信機に入力して振幅・位相値を測定することができるので、受信機の校正だけでなく送信機の校正も行うことができる。
【0026】
また、本発明は、第1の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、前記複数の送信機のそれぞれが出力する信号を前記第1のスイッチで順次に選択するとともに、前記第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御し、前記周波数変換手段によって周波数変換された信号を予め基準として定めた特定ブランチの受信機に入力し、各々のブランチの送信機からの信号についてそれぞれ測定された複数の振幅・位相値と、予め基準として定めた特定ブランチの送信機からの信号について測定された振幅・位相値との比率を各ブランチの送信系の校正値として算出する。
【0027】
送信機が出力する信号を受信機で検出して得られる振幅・位相値には、送信機の成分,受信機の成分及び温度特性に依存する成分が含まれている。本発明においては、各々のブランチの送信機からの信号を特定の受信機で測定して得た振幅・位相値と、基準となるブランチの送信機からの信号を測定して得た振幅・位相値との比率を求めるので、各ブランチの振幅・位相値に共通の受信機の成分及び温度特性に依存する成分は相殺され、送信機のみの振幅・位相値の成分が校正値として得られる。
【0028】
また、本発明は、第1の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、予め基準として定めた特定ブランチの送信機が出力する信号を前記第1のスイッチで選択するとともに、前記第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御して、前記周波数変換手段で周波数変換された信号を各々のブランチの受信機に順次に入力し、各々のブランチの受信機でそれぞれ測定された複数の振幅・位相値と、予め基準として定めた特定ブランチの受信機で測定された振幅・位相値との比率を各ブランチの受信系の校正値として算出する。
【0029】
送信機が出力する信号を受信機で検出して得られる振幅・位相値には、送信機の成分,受信機の成分及び温度特性に依存する成分が含まれている。本発明においては、特定の送信機からの信号を各々のブランチの受信機で測定して得た振幅・位相値と、基準となるブランチの受信機で測定された振幅・位相値との比率を求めるので、各ブランチの振幅・位相値に共通の送信機の成分及び温度特性に依存する成分は相殺され、受信機のみの振幅・位相値の成分が校正値として得られる。
【0030】
さらに、本発明は、複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナと、前記アレーアンテナのアンテナ素子数と同数の送信機及び受信機と、前記各アンテナ素子に前記送信機及び受信機をそれぞれ接続する送受共用手段と、前記複数の受信機に各アンテナ素子からそれぞれ入力される信号に対して振幅及び位相の重み付けを行って複数の受信機の出力を合成することにより前記アレーアンテナの放射パターンを制御する指向性制御演算回路とを備えるとともに、前記受信機の受信周波数と前記送信機からアンテナ素子に印加される信号の送信周波数とが異なる適応アレーアンテナ送受信装置において、前記受信周波数と前記送信周波数との差分に相当する周波数の信号を出力するローカル信号生成手段と、前記複数の送信機のそれぞれが出力する前記受信周波数と同じ周波数の信号を、前記ローカル信号生成手段が出力する信号を用いて周波数変換する第1の周波数変換手段と、前記複数の送信機のそれぞれの出力から、前記第1の周波数変換手段の変換後の信号の一部分を分岐して取り出す第1の分岐手段と、前記送信機の1つの出力から、前記第1の周波数変換手段の変換前の信号の一部分を分岐して取り出す第2の分岐手段と、前記複数の送信機のいずれかが前記第1の分岐手段に入力する1つの信号を選択する第1のスイッチと、前記第1のスイッチが選択した信号の周波数を、前記ローカル信号生成手段が出力する信号を用いて変換する第2の周波数変換手段と、前記第2の分岐手段が出力する信号を入力して前記複数の受信機に対応付けられた複数経路のいずれかに選択的に出力する第2のスイッチと、前記アンテナ素子からの受信信号と、前記第2のスイッチからの信号と、前記第2の周波数変換手段からの信号とを選択的に前記各受信機に入力する第3のスイッチと、前記第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチの接続状態を制御して、前記受信機で得られる振幅・位相値を入力し、前記アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める校正制御手段とを設けた第2の適応アレーアンテナ送受信装置を提供する。
【0031】
第2の適応アレーアンテナ送受信装置においては、各送信機が出力する信号の周波数は受信機の受信周波数と同一であるが、各送信機が出力する信号は第1の周波数変換手段によって周波数変換され、送信信号としてアンテナ素子に印加される。このため、第1の適応アレーアンテナ送受信装置の場合と同様に送信周波数と受信機の受信周波数とは異なる。
第1の分岐手段は、第1の周波数変換手段の変換後の送信信号の一部分を分岐して取り出す。第1のスイッチは、いずれかのブランチの送信機からの信号(第1の周波数変換手段の変換後の信号)を選択し、第2の周波数変換手段に入力する。第2の周波数変換手段は、第1のスイッチが選択した信号の周波数を、ローカル信号生成手段が出力する信号を用いて変換する。
【0032】
また、ローカル信号生成手段が出力する信号の周波数は、前記受信機の受信周波数と送信周波数との差分に相当する。例えば、アンテナ素子に印加される信号の送信周波数がf1、受信機の受信周波数がf2であり、(f1>f2)の関係がある場合には、ローカル信号生成手段が出力する信号の周波数は(f1−f2)になる。
【0033】
従って、送信機から出力され第1の周波数変換手段を通った周波数がf1の信号を第2の周波数変換手段に入力すると、第2の周波数変換手段の出力には周波数がf2の信号が得られる。この信号の周波数f2は受信機の受信周波数がf2と同一であるので、その信号を各受信機に入力すればその受信機で信号の振幅や位相を測定することができる。
【0034】
この例では、各送信機の出力する信号の周波数が受信機の受信周波数と同一であるので、送信機の出力から第1の周波数変換手段を通る前の信号を取り出す場合には、その信号の周波数を変換することなしに受信機で振幅・位相値を測定できる。
そこで、第2のスイッチは1つのブランチの送信機の出力から第1の周波数変換手段の変換前の信号を第2の分岐手段で取り出し、複数の受信機に対応付けられた複数経路のいずれかに選択的に出力する。第3のスイッチは、アンテナ素子からの受信信号と、第2のスイッチからの信号と、第2の周波数変換手段からの信号とを選択的に各受信機に入力する。
【0035】
したがって、第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチを切り替えることにより、アレーアンテナのいずれかのブランチに設けられた送信機からの送信信号を、いずれかのブランチの受信機に周波数を整合させてから入力することができる。
第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチの制御は校正制御手段によって行われる。また、校正制御手段は受信機で得られる振幅・位相値を入力し、アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める。
また、第2の適応アレーアンテナ送受信装置は、受信周波数と送信周波数とが異なる場合であっても、送信機が出力する信号を受信機に入力して振幅・位相値を測定することができるので、受信機の校正だけでなく送信機の校正も行うことができる。
【0036】
また、本発明は、第2の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、前記複数の送信機のそれぞれが出力する信号を前記第1のスイッチで順次に選択するとともに、前記第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御し、第2の周波数変換手段によって周波数変換された信号を予め基準として定めた特定ブランチの受信機に入力し、各々のブランチの送信機からの信号についてそれぞれ測定された複数の振幅・位相値と、予め基準として定めた特定ブランチの送信機からの信号について測定された振幅・位相値との比率を各ブランチの送信系の校正値として算出する。
【0037】
送信機が出力する信号を受信機で検出して得られる振幅・位相値には、送信機の成分,受信機の成分及び温度特性に依存する成分が含まれている。本発明においては、各々のブランチの送信機からの信号を特定の受信機で測定して得た振幅・位相値と、基準となるブランチの送信機からの信号を測定して得た振幅・位相値との比率を求めるので、各ブランチの振幅・位相値に共通の受信機の成分及び温度特性に依存する成分は相殺され、送信機のみの振幅・位相値の成分が校正値として得られる。
【0038】
また、本発明は、第2の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、予め基準として定めた特定ブランチの送信機が出力する信号を、前記第2の分岐手段で取り出し、前記第2のスイッチ及び第3のスイッチを介して各々のブランチの受信機に順次に入力し、各々のブランチの受信機でそれぞれ測定された複数の振幅・位相値と、予め基準として定めた特定ブランチの受信機で測定された振幅・位相値との比率を各ブランチの受信系の校正値として算出する。
【0039】
送信機が出力する信号を受信機で検出して得られる振幅・位相値には、送信機の成分,受信機の成分及び温度特性に依存する成分が含まれている。本発明においては、特定の送信機からの信号を各々のブランチの受信機で測定して得た振幅・位相値と、基準となるブランチの受信機で測定された振幅・位相値との比率を求めるので、各ブランチの振幅・位相値に共通の送信機の成分及び温度特性に依存する成分は相殺され、受信機のみの振幅・位相値の成分が校正値として得られる。
【0040】
また、本発明は、複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナと、前記アレーアンテナのアンテナ素子数と同数の送信機及び受信機と、前記各アンテナ素子に前記送信機及び受信機をそれぞれ接続する送受共用手段と、前記複数の受信機に各アンテナ素子からそれぞれ入力される信号に対して振幅及び位相の重み付けを行って複数の受信機の出力を合成することにより前記アレーアンテナの放射パターンを制御する指向性制御演算回路とを備えるとともに、前記受信機の受信周波数と前記送信機の送信周波数とが異なる適応アレーアンテナ送受信装置において、前記受信機の受信周波数と前記送信機の送信周波数との差分に相当する周波数の信号を出力するローカル信号生成手段と、前記複数の送信機のそれぞれの出力から信号の一部分を分岐して取り出す分岐手段と、前記アレーアンテナの予め定めたブランチの並びについて互いに隣接する2つのブランチからそれぞれ前記分岐手段の出力信号を入力していずれか一方を選択する複数の第1のスイッチと、前記第1のスイッチが選択した信号の周波数を、前記ローカル信号生成手段が出力する信号を用いて変換する周波数変換手段と、前記アレーアンテナの複数ブランチのそれぞれについて、前記周波数変換手段が出力する信号を入力し、互いに隣接する2つのブランチのいずれか一方の経路に選択的に出力する複数の第2のスイッチと、前記アレーアンテナの複数ブランチのそれぞれについて、当該ブランチのアンテナ素子からの受信信号と、当該ブランチに属する前記第2のスイッチからの信号と、隣接するブランチに属する前記第2のスイッチからの信号とのいずれかを選択して1つの受信機に入力する第3のスイッチと、前記第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチの接続状態を制御して、前記受信機で得られる振幅・位相値を入力し、前記アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める校正制御手段とを設けた第3の適応アレーアンテナ送受信装置を提供する。
【0041】
第3の適応アレーアンテナ送受信装置においては、第1のスイッチは、互いに隣接する2つのブランチからそれぞれ前記分岐手段の出力信号を入力していずれか一方を選択する。なお、この場合の隣接する2つのブランチは、必ずしも実際のアンテナ素子の並びと一致する必要はなく、第1のスイッチが選択するブランチの並びは任意に定めることができる。
【0042】
周波数変換手段は、各ブランチにおいて第1のスイッチが選択した信号の周波数を、ローカル信号生成手段が出力する信号を用いてそれぞれ変換する。
また、ローカル信号生成手段が出力する信号の周波数は、前記受信機の受信周波数と前記送信機の送信周波数との差分に相当する。例えば、送信機の送信周波数がf1、受信機の受信周波数がf2であり、(f1>f2)の関係がある場合には、ローカル信号生成手段が出力する信号の周波数は(f1−f2)になる。従って、送信機から出力される周波数がf1の信号を周波数変換手段に入力すると、周波数変換手段の出力には周波数がf2の信号が得られる。この信号の周波数f2は受信機の受信周波数がf2と同一であるので、その信号を各受信機に入力すればその受信機で信号の振幅や位相を測定することができる。
【0043】
第2のスイッチは、アレーアンテナの複数ブランチのそれぞれについて、周波数変換手段が出力する信号を入力し、互いに隣接する2つのブランチのいずれか一方の経路に選択的に出力する。
第3のスイッチは、アレーアンテナの複数ブランチのそれぞれについて、当該ブランチのアンテナ素子からの受信信号と、当該ブランチに属する第2のスイッチからの信号と、隣接するブランチに属する第2のスイッチからの信号とのいずれかを選択して1つの受信機に入力する。
【0044】
したがって、第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチを切り替えることにより、アレーアンテナのいずれかのブランチに設けられた送信機からの送信信号を、いずれかのブランチの受信機に周波数を整合させてから入力することができる。
第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチの制御は校正制御手段によって行われる。また、校正制御手段は受信機で得られる振幅・位相値を入力し、アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める。
【0045】
第3の適応アレーアンテナ送受信装置によれば、受信機の受信周波数と送信機の送信周波数とが異なる場合であっても、送信機が出力する信号を受信機に入力して振幅・位相値を測定することができるので、受信機の校正だけでなく送信機の校正も行うことができる。
【0046】
また、本発明は、第3の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、隣接するブランチ毎に、隣接する2つのブランチの送信機が出力する信号を前記第1のスイッチで交互に選択するとともに、前記第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御し、前記周波数変換手段によって周波数変換された信号を2つのブランチのうち予め定めた一方の受信機に入力し、2つのブランチの送信機からの信号についてそれぞれ測定された振幅・位相値の比率を第1の比率として求めるとともに、予め基準として定めたブランチ以外については、当該ブランチで求められた第1の比率を他のブランチで求められた第1の比率を用いて修正し各ブランチの送信系の校正値を算出する。
【0047】
隣接する2つのブランチの送信機からの信号を第1のスイッチで交互に選択して一方のブランチの共通の受信機に入力することにより、2つの振幅・位相値が得られる。これら2つの振幅・位相値の比率を第1の比率とする。第1の比率は隣接するブランチ毎にそれぞれ求められる。
しかしながら、隣接する2つのブランチの間で求められた第1の比率には、2つのブランチの送信機に関する振幅・位相値成分が含まれている。そこで、予め基準として定めたブランチ以外については、当該ブランチで求められた第1の比率を他のブランチで求められた第1の比率を用いて修正する。
【0048】
この修正により、各ブランチの第1の比率は、基準として定めた特定ブランチの送信機の振幅・位相値成分に対する当該ブランチの送信機の振幅・位相値の比率に統一される。従って、各ブランチの第1の比率を、各送信機の振幅・位相値成分の校正値として利用できる。
【0049】
また、本発明は、第3の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、隣接するブランチ毎に、隣接する2つのブランチのうち予め定めた一方の送信機が出力する信号を前記第1のスイッチで選択するとともに、前記第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御して、前記周波数変換手段で周波数変換された信号を、隣接する2つのブランチの各々の受信機に交互に入力し、隣接する2つのブランチの受信機でそれぞれ測定された複数の振幅・位相値の比率を第1の比率として求めるとともに、予め基準として定めたブランチ以外については、当該ブランチで求められた前記第1の比率を他のブランチで求められた第1の比率を用いて修正し各ブランチの受信系の校正値を算出する。
【0050】
隣接する2つのブランチ毎に、一方の送信機からの信号を2つのブランチのいずれか一方の受信機に第2のスイッチで交互に選択して入力することにより、2つの振幅・位相値が得られる。これら2つの振幅・位相値の比率を第1の比率とする。第1の比率は隣接するブランチ毎にそれぞれ求められる。
しかしながら、隣接する2つのブランチの間で求められた第1の比率には、2つのブランチの受信機に関する振幅・位相値成分が含まれている。そこで、予め基準として定めたブランチ以外については、当該ブランチで求められた第1の比率を他のブランチで求められた第1の比率を用いて修正する。
【0051】
この修正により、各ブランチの第1の比率は、基準として定めた特定ブランチの受信機の振幅・位相値成分に対する当該ブランチの受信機の振幅・位相値の比率に統一される。従って、各ブランチの第1の比率を、各受信機の振幅・位相値成分の校正値として利用できる。
【0052】
また、本発明は、3以上のN個のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナと、N個の送信機及び受信機と、前記各アンテナ素子に前記送信機及び受信機をそれぞれ接続する送受共用手段と、前記複数の受信機に各アンテナ素子からそれぞれ入力される信号に対して振幅及び位相の重み付けを行って複数の受信機の出力を合成することにより前記アレーアンテナの放射パターンを制御する指向性制御演算回路とを備えるとともに、通信に利用する前記アレーアンテナの受信周波数と送信周波数とが異なる適応アレーアンテナ送受信装置において、送出する信号の周波数が前記アレーアンテナの受信周波数と同一のN個の送信機と、前記N個の送信機のそれぞれが送出する信号の周波数を前記アレーアンテナの送信周波数に変換する第1の周波数変換手段と、前記N個の送信機のそれぞれの出力から前記第1の周波数変換手段が変換する前の信号を取り出すN個の分岐手段と、受信する信号の周波数が前記アレーアンテナの受信周波数と同一のN個の受信機と、前記アレーアンテナの送信周波数と同じ周波数の信号を前記アレーアンテナの受信周波数と同じ周波数に変換する第2の周波数変換手段と、前記第1の周波数変換手段の出力と、前記受信機の入力と、前記各アンテナ素子との間に設けられたN個の第1の送受共用手段と、前記分岐手段の出力と、前記第2の周波数変換手段の入力と、前記各アンテナ素子との間に設けられたN個の第2の送受共用手段と、前記N個の送信機及びN個の受信機のいずれかに接続可能な1つの付加アンテナと、前記アンテナ素子及び付加アンテナのいずれか一方を、前記第1の送受共用手段及び第2の送受共用手段のいずれか一方と接続する、アンテナ素子毎に設けられた第1のスイッチと、前記受信機の入力に接続され、前記第1の送受共用手段からの受信信号と、前記第2の周波数変換手段が出力する受信信号とのいずれか一方を選択的に前記受信機に入力する、受信機毎に設けられた第2のスイッチと、前記付加アンテナをいずれかの第1のスイッチと接続する第3のスイッチと、前記第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御するとともに、前記各受信機から得られる振幅・位相値に基づいて、アレーアンテナのブランチ間の振幅位相校正値を求める校正制御手段とを設けた第4の適応アレーアンテナ送受信装置を提供する。
なお、第4の適応アレーアンテナ送受信装置において、付加アンテナは1つに限らず少なくとも1つ以上設けられていれば良い。
【0053】
第4の適応アレーアンテナ送受信装置では、前記第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御することにより、3つのブランチの回路を選択し、2つのブランチからそれぞれ送信した信号を共通の1つのブランチで受信するか、又は共通の1つのブランチから送信した信号を残りの2つのブランチでそれぞれ受信することができる。
また、共通のブランチについては、付加アンテナを用いて信号の送受信を行うことができる。
【0054】
付加アンテナを所定の位置に配置して、2つのブランチから送信した信号を付加アンテナを介して1つの共通ブランチで受信することにより、2つのブランチの送信部及びアンテナ素子を含む相対的な振幅・位相値を校正値として求めることができる。
【0055】
また、付加アンテナを介して1つの共通ブランチから送信した信号を2つのブランチでそれぞれ受信することにより、2つのブランチの受信部及びアンテナ素子を含む相対的な振幅・位相値を校正値として求めることができる。
通信に利用する前記アレーアンテナの受信周波数と送信周波数とが異なるため、前記アレーアンテナから送信される信号の周波数は受信機の受信周波数とは異なるが、受信側に設けた第2の周波数変換手段によって、受信機が受信可能な周波数の受信信号を得ることができる。
【0056】
また、本発明は、第4の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、前記第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御して、前記付加アンテナから互いに等しい距離に存在する2つのアンテナ素子のブランチにそれぞれ属する第1の送信機及び第2の送信機を前記N個の送信機の中から選択するとともに、前記第1の送信機及び第2の送信機とは異なるブランチに属する1つの校正受信機を前記N個の受信機の中から選択し、前記第3のスイッチを前記第1の送信機及び第2の送信機とは異なるブランチに属する1つの校正受信機に接続される第1のスイッチに接続し、前記第1の送信機が送出する信号を前記第1の周波数変換手段で周波数変換した信号を第1の送信機が属するブランチのアンテナ素子から送信し、前記付加アンテナが受信した前記第1の送信機からの信号を、前記第2の周波数変換手段によって周波数変換した出力を前記校正受信機に入力して前記校正受信機に得られる第1の測定値を検出し、前記第2の送信機が送出する信号を前記第1の周波数変換手段で周波数変換した信号を第2の送信機が属するブランチのアンテナ素子から送信し、前記付加アンテナが受信した前記第2の送信機からの信号を、前記第2の周波数変換手段によって周波数変換した出力を前記校正受信機に入力して前記校正受信機に得られる第2の測定値を検出し、前記第2の測定値と第1の測定値との比率を第1の校正値として算出し、前記第1の送信機及び第2の送信機の選択を順次に切り替えてそれぞれ測定した第1の測定値及び第2の測定値に基づいて複数ブランチのそれぞれの第1の校正値を求め、予め定めた基準ブランチ以外については、当該ブランチの第1の校正値を他のブランチで得られた第1の校正値を用いて修正し、基準ブランチに対する相対値として第1の校正値を算出する。
【0057】
上記第4の適応アレーアンテナ送受信装置においては、前記校正制御手段は、前記第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御して、前記付加アンテナから互いに等しい距離に存在する2つのアンテナ素子のブランチにそれぞれ属する第1の送信機及び第2の送信機を前記N個の送信機の中から選択するとともに、前記第1の送信機及び第2の送信機とは異なるブランチに属する1つの校正受信機を前記N個の受信機の中から選択する。
【0058】
また、前記校正制御手段は、前記第1の送信機が送出する信号を前記第1の周波数変換手段で周波数変換した信号を第1の送信機が属するブランチのアンテナ素子から送信し、前記付加アンテナが受信した前記第1の送信機からの信号を、前記第2の周波数変換手段によって周波数変換した出力を前記校正受信機に入力して前記校正受信機に得られる第1の測定値を検出する。
【0059】
更に、前記校正制御手段は、前記第2の送信機が送出する信号を前記第1の周波数変換手段で周波数変換した信号を第2の送信機が属するブランチのアンテナ素子から送信し、前記付加アンテナが受信した前記第2の送信機からの信号を、前記第2の周波数変換手段によって周波数変換した出力を前記校正受信機に入力して前記校正受信機に得られる第2の測定値を検出する。
【0060】
また、前記校正制御手段は、前記第2の測定値と第1の測定値との比率を第1の校正値として算出し、前記第1の送信機及び第2の送信機の選択を順次に切り替えてそれぞれ測定した第1の測定値及び第2の測定値に基づいて複数ブランチのそれぞれの第1の校正値を求める。そして、予め定めた基準ブランチ以外については、当該ブランチの第1の校正値を他のブランチで得られた第1の校正値を用いて修正し、基準ブランチに対する相対値として第1の校正値を算出する。
【0061】
上記第4の適応アレーアンテナ送受信装置では、アレーアンテナのアンテナ素子数が多い場合であっても、それぞれのブランチの送信機及びアンテナ素子を含む送信部の振幅・位相値の校正値を特定の基準ブランチに対する相対値として求めることができる。
【0062】
また、本発明は、第4の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、前記第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御して、前記付加アンテナから互いに等しい距離に存在する2つのアンテナ素子のブランチにそれぞれ属する第1の受信機及び第2の受信機を前記N個の受信機の中から選択するとともに、前記第1の受信機及び第2の受信機とは異なるブランチに属する1つの校正送信機を前記N個の送信機の中から選択し前記校正送信機が送出する信号を、前記分岐手段,第2の送受共用手段,第1のスイッチ及び第3のスイッチを介して前記付加アンテナから送信し、前記第1の受信機が属するブランチのアンテナ素子が受信した前記校正送信機からの信号を、前記第1の受信機に入力して前記第1の受信機に得られる第1の測定値を検出し、前記第2の受信機が属するブランチのアンテナ素子が受信した前記校正送信機からの信号を、前記第2の受信機に入力して前記第2の受信機に得られる第2の測定値を検出し、前記第2の測定値と第1の測定値との比率を第1の校正値として算出し、前記第1の受信機及び第2の受信機の選択を順次に切り替えてそれぞれ測定した第1の測定値及び第2の測定値に基づいて複数ブランチのそれぞれの第1の校正値を求め、予め定めた基準ブランチ以外については、当該ブランチの第1の校正値を他のブランチで得られた第1の校正値を用いて修正し、基準ブランチに対する相対値として第1の校正値を算出する。
【0063】
上記第4の適応アレーアンテナ送受信装置においては、前記校正制御手段は、前記第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御して、前記付加アンテナから互いに等しい距離に存在する2つのアンテナ素子のブランチにそれぞれ属する第1の受信機及び第2の受信機を前記N個の受信機の中から選択するとともに、前記第1の受信機及び第2の受信機とは異なるブランチに属する1つの校正送信機を前記N個の送信機の中から選択する。
【0064】
また、前記校正制御手段は、前記校正送信機が送出する信号を、前記分岐手段,第2の送受共用手段,第1のスイッチ及び第3のスイッチを介して前記付加アンテナから送信し、前記第1の受信機が属するブランチのアンテナ素子が受信した前記校正送信機からの信号を、前記第1の受信機に入力して前記第1の受信機に得られる第1の測定値を検出する。
【0065】
更に、前記校正制御手段は、前記第2の受信機が属するブランチのアンテナ素子が受信した前記校正送信機からの信号を、前記第2の受信機に入力して前記第2の受信機に得られる第2の測定値を検出する。
また、前記校正制御手段は、前記第2の測定値と第1の測定値との比率を第1の校正値として算出し、前記第1の受信機及び第2の受信機の選択を順次に切り替えてそれぞれ測定した第1の測定値及び第2の測定値に基づいて複数ブランチのそれぞれの第1の校正値を求める。そして、予め定めた基準ブランチ以外については、当該ブランチの第1の校正値を他のブランチで得られた第1の校正値を用いて修正し、基準ブランチに対する相対値として第1の校正値を算出する。
【0066】
上記第4の適応アレーアンテナ送受信装置では、アレーアンテナのアンテナ素子数が多い場合であっても、それぞれのブランチの受信機及びアンテナ素子を含む受信部の振幅・位相値の校正値を特定の基準ブランチに対する相対値として求めることができる。
【0067】
また、本発明は、第4の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記N個のアンテナ素子を1つの直線上に等間隔で配置するとともに、2つのアンテナ素子の中間の位置に前記付加アンテナを配置する。
【0068】
アレーアンテナのアンテナ素子が直線上に並んで配置されている場合には、選択した2つのアンテナ素子の中間の位置に付加アンテナを配置することにより、2つのアンテナ素子のそれぞれと付加アンテナとの距離を等しくすることができる。
2つのアンテナ素子のそれぞれと付加アンテナとの距離を等しくすることにより、アンテナ素子と付加アンテナとの間の伝搬損失の影響が校正値に現れないように校正値を求めることができる。
【0069】
なお、3以上のブランチのそれぞれについて校正値を求める場合には、選択されたブランチの組み合わせに応じて1つの付加アンテナの位置を変更するか、あるいは予め複数の付加アンテナをそれぞれの中間位置に配置しておき、複数の付加アンテナをスイッチで切り替えるようにすればよい。
【0070】
また、本発明は、第4の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記N個のアンテナ素子を1つの円周上に等間隔で配置するとともに、前記円周の中心位置に前記付加アンテナを配置する。
【0071】
アレーアンテナのアンテナ素子が円周上に並んで配置されている場合には、その円周の中心位置に付加アンテナを配置することにより、全てのアンテナ素子のそれぞれと付加アンテナとの距離を等しくすることができる。
【0072】
また、本発明は、2以上のN個のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナと、N個の送信機及び受信機と、前記各アンテナ素子に前記送信機及び受信機をそれぞれ接続する送受共用手段と、前記複数の受信機に各アンテナ素子からそれぞれ入力される信号に対して振幅及び位相の重み付けを行って複数の受信機の出力を合成することにより前記アレーアンテナの放射パターンを制御する指向性制御演算回路とを備えるとともに、通信に利用する前記アレーアンテナの受信周波数と送信周波数とが異なる適応アレーアンテナ送受信装置において、送出する信号の周波数が前記アレーアンテナの受信周波数と同一のN個の送信機と、前記N個の送信機のそれぞれが送出する信号の周波数を前記アレーアンテナの送信周波数に変換する第1の周波数変換手段と、前記N個の送信機のそれぞれの出力から前記第1の周波数変換手段が変換する前の信号を取り出すN個の第1の分岐手段と、前記第1の周波数変換手段の出力から変換後の信号をアレーアンテナのブランチ毎に取り出すN個の第2の分岐手段と、受信する信号の周波数が前記アレーアンテナの受信周波数と同一のN個の受信機と、前記アレーアンテナの送信周波数と同じ周波数の信号を前記アレーアンテナの受信周波数と同じ周波数に変換する第2の周波数変換手段と、前記第1の周波数変換手段の出力と、前記受信機の入力と、前記各アンテナ素子との間に設けられたN個の第1の送受共用手段と、前記第1の分岐手段の出力と、前記第2の周波数変換手段の入力と、前記各アンテナ素子との間に設けられたN個の第2の送受共用手段と、前記N個の送信機及びN個の受信機のいずれかに接続可能な1つの付加アンテナと、前記アンテナ素子及び付加アンテナのいずれか一方を、前記第1の送受共用手段及び第2の送受共用手段のいずれか一方と接続する、アンテナ素子毎に設けられた第1のスイッチと、予め定めた基準ブランチに属する第1の分岐手段の出力をいずれか1つのブランチの受信機の入力と接続する第2のスイッチと、N個の各ブランチに属する前記第2の分岐手段の出力のいずれか1つを前記基準ブランチに属する第2の周波数変換手段の入力に接続する第3のスイッチと、前記第3のスイッチの出力と、前記基準ブランチに属する第2の送受共用手段とのいずれか一方を前記基準ブランチに属する第2の周波数変換手段の入力に接続する第4のスイッチと、各々のブランチにおいて、前記第1の送受共用手段からの受信信号と、前記第2の周波数変換手段が出力する信号と、前記第2のスイッチが出力する送信機からの信号とのいずれか1つを選択して前記受信機の入力に印加する第5のスイッチと、前記付加アンテナをいずれかの第1のスイッチと接続する第6のスイッチと、前記第1のスイッチ,第2のスイッチ,第3のスイッチ,第4のスイッチ,第5のスイッチ及び第6のスイッチを制御するとともに、前記各受信機から得られる振幅・位相値に基づいて、ブランチ間の振幅位相校正値を求める校正制御手段とを設けた第5の適応アレーアンテナ送受信装置を提供する。
なお、第5の適応アレーアンテナ送受信装置において、付加アンテナは1つに限らず少なくとも1つ以上設けられていれば良い。
【0073】
第5の適応アレーアンテナ送受信装置では、前記第1のスイッチ,第2のスイッチ,第3のスイッチ,第4のスイッチ,第5のスイッチ及び第6のスイッチを制御することにより、基準ブランチと選択された1つのブランチとの間で、アンテナ素子を介在することなく信号の送受信を行うこともできる。
すなわち、送信機の校正値を測定する場合には、基準ブランチ及び選択されたブランチの第1の周波数変換手段が出力する信号がそれぞれ第2の分岐手段,第3のスイッチ,第4のスイッチ,第2の周波数変換手段,第5のスイッチを介して基準ブランチの受信機に選択的に入力されるので、基準ブランチ及び選択されたブランチのそれぞれについて、送信機の振幅・位相値を基準ブランチの受信機で測定することができる。したがって、基準ブランチに対する相対値としてアンテナを含まない送信機の校正値を求めることができる。
【0074】
また、受信機の校正値を測定する場合には、基準ブランチの送信機が出力する信号が第1の分岐手段及び第2のスイッチを通り、基準ブランチ及び選択されたブランチの第5のスイッチを通って各ブランチの受信機に入力されるので、基準ブランチの送信機からの信号を、アンテナ素子を介在することなく、基準ブランチ及び選択されたブランチの受信機で測定することができる。したがって、基準ブランチに対する相対値としてアンテナを含まない受信機の校正値を求めることができる。
【0075】
また、本発明は、2以上のN個のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナと、N個の送信機及び受信機と、前記各アンテナ素子に前記送信機及び受信機をそれぞれ接続する第1の送受共用手段と、前記複数の受信機に各アンテナ素子からそれぞれ入力される信号に対して振幅及び位相の重み付けを行って複数の受信機の出力を合成することにより前記アレーアンテナの放射パターンを制御する指向性制御演算回路とを備えるとともに、通信に利用する前記アレーアンテナの受信周波数と送信周波数とが異なり、前記各送信機の出力する信号の周波数がf1、前記各受信機の受信周波数がf2である適応アレーアンテナ送受信装置において、前記アレーアンテナの少なくとも2つのアンテナ素子からの距離が等しい位置に配置された少なくとも1つの付加アンテナと、前記付加アンテナに接続された第2の送受共用手段と、1つの送信機から出力される周波数がf1の信号をf2の周波数に変換して前記第2の送受共用手段に出力するとともに、前記第2の送受共用手段から入力される周波数がf1の信号をf2の周波数に変換して出力する少なくとも1つの周波数変換手段と、前記N個の送信機の少なくとも1つの出力から取り出した信号を前記周波数変換手段に入力する少なくとも1つの分岐手段と、前記N個の受信機の少なくとも1つについて、その入力を前記第1の送受共用手段及び前記周波数変換手段のいずれか一方と接続する、少なくとも1つの第1のスイッチと、前記第1のスイッチを制御するとともに、前記各受信機から得られる振幅・位相値に基づいて、アレーアンテナのブランチ間の振幅位相校正値を求める校正制御手段とを設けた第6の適応アレーアンテナ送受信装置を提供する。
【0076】
第6の適応アレーアンテナ送受信装置においては、前記付加アンテナを用いて各ブランチのアンテナ素子との間で信号の送受信を行うことにより、ブランチ毎の振幅・位相値を検出することができる。
各送信機が出力する信号の周波数f1と、各受信機の受信周波数f2とは異なるため、送信機が送信した信号を受信機でそのまま検出することはできない。しかし、校正時に送信機が出力する周波数f1の信号は、前記付加アンテナから送信される前に、又は前記付加アンテナで受信された後で前記周波数変換手段により周波数f2の信号に変換されるため、この信号を前記受信機で検出することができる。
【0077】
前記第1のスイッチを切り替えることにより、前記付加アンテナで受信した信号と、アレーアンテナのアンテナ素子で受信した信号とを選択して前記受信機に入力することができる。
【0078】
また、本発明は、第6の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記N個の送信機の出力にそれぞれ前記分岐手段を接続し、前記N個の受信機の入力にそれぞれ前記第1のスイッチを接続し、前記N個の送信機に接続した分岐手段のいずれか1つを選択的に前記周波数変換手段の入力と接続する第2のスイッチと、前記周波数変換手段の出力を前記N個の受信機に接続した第1のスイッチのいずれか1つの入力と選択的に接続する第3のスイッチとをさらに設ける。
上記第6の適応アレーアンテナ送受信装置においては、N個の送信機のそれぞれが出力する信号を選択的に前記周波数変換手段に入力して周波数変換することができる。また、周波数変換手段から出力される周波数f2の信号をいずれかのブランチの受信機に選択的に入力することができる。
このため、アレーアンテナのアンテナ素子及び付加アンテナを用いなくても校正を行うことができる。
【0079】
また、本発明は、第6の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、前記第1のスイッチを制御し、前記N個の受信機のうち校正受信機に定めた1つの受信機の入力に前記周波数変換手段の出力を接続し、前記N個の送信機の1つを校正送信機として順次に選択するとともに選択した校正送信機から信号を送出し、前記校正送信機から送出され、前記第1の送受共用手段及びそれに接続された前記アンテナ素子を介して送信された信号を前記付加アンテナ,第2の送受共用手段,周波数変換手段及び第1のスイッチを介して前記校正受信機に入力し、それぞれのブランチの校正送信機から送出された信号について前記校正受信機で検出した測定値に基づいてアレーアンテナのブランチ間の振幅位相校正値を求める。
【0080】
上記第6の適応アレーアンテナ送受信装置においては、前記校正制御手段の制御により、順次に選択された校正送信機から信号が送出される。これらの信号は、前記第1の送受共用手段及びそれに接続された前記アンテナ素子を介して送信され、前記付加アンテナで受信される。付加アンテナから出力される信号は、第2の送受共用手段,周波数変換手段及び第1のスイッチを介して前記校正受信機に入力される。
【0081】
したがって、それぞれのブランチの校正送信機から送出された信号をアンテナを経由して前記校正受信機で検出することができる。
【0082】
また、本発明は、第6の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、前記第1のスイッチを制御し、それが接続された受信機の入力を前記第1の送受共用手段と接続し、前記N個の送信機の1つを校正送信機に定めて前記校正送信機から信号を送出し、前記N個の受信機の1つを校正受信機として順次に選択し、前記校正送信機から送出され、前記分岐手段,周波数変換手段及び第2の送受共用手段を通って前記付加アンテナから送信された信号を、前記校正受信機が属するブランチのアンテナ素子及び第1の送受共用手段を介して前記校正受信機に入力し、それぞれのブランチの校正受信機で検出した測定値に基づいてアレーアンテナのブランチ間の振幅位相校正値を求める。
【0083】
上記第6の適応アレーアンテナ送受信装置においては、前記校正制御手段の制御により、校正送信機から送出された信号は前記分岐手段,周波数変換手段及び第2の送受共用手段を通って前記付加アンテナから送信される。この信号は、順次に選択されたブランチのアンテナ素子及び第1の送受共用手段を介してそれぞれの校正受信機に入力される。
したがって、1つの校正送信機から送出された信号を各ブランチのアンテナを経由する経路を介してそれぞれの校正受信機で検出することができる。
【0084】
また、本発明は、第6の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、前記第1のスイッチを制御し、前記N個の受信機のうち校正受信機に定めた1つの受信機の入力に前記周波数変換手段の出力を接続し、前記N個の送信機の1つを校正送信機として順次に選択するとともに選択した校正送信機から信号を送出し、前記校正送信機から送出された信号を前記分岐手段で分岐し前記第2のスイッチを介して周波数変換手段に入力し、前記周波数変換手段が出力する信号を前記第3のスイッチ及び第1のスイッチを介して校正受信機の入力に印加し、それぞれのブランチの校正送信機から送出された信号について前記校正受信機で検出した測定値に基づいてアレーアンテナのブランチ間の振幅位相校正値を求める。
【0085】
上記第6の適応アレーアンテナ送受信装置においては、前記校正制御手段の制御により、順次に選択された校正送信機からそれぞれ信号が送出される。これらの信号は、分岐手段で分岐され前記第2のスイッチを介して周波数変換手段に入力される。周波数変換手段から出力される信号は、前記第3のスイッチ及び第1のスイッチを介して校正受信機の入力に印加される。
【0086】
したがって、それぞれのブランチの校正送信機から送出された信号をアンテナを経由しない経路を介して前記校正受信機で検出することができる。
【0087】
また、本発明は、第6の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、前記N個の送信機の1つを校正送信機に定めて前記校正送信機から信号を送出し、前記N個の受信機の1つを校正受信機として順次に選択し、前記校正送信機から送出された信号を前記分岐手段で分岐し、前記第2のスイッチを介して周波数変換手段の入力に印加し、前記周波数変換手段から出力される信号を前記第3のスイッチ及び第1のスイッチを介して校正受信機の入力に印加し、それぞれのブランチの校正受信機で検出した測定値に基づいてアレーアンテナのブランチ間の振幅位相校正値を求めることを特徴とする。
【0088】
上記第6の適応アレーアンテナ送受信装置においては、前記校正制御手段の制御により、1つの校正送信機から信号が送出される。この信号は、分岐手段で分岐され前記第2のスイッチを介して周波数変換手段の入力に印加される。周波数変換手段から出力される信号は、前記第3のスイッチ及び第1のスイッチを介して選択されたブランチの校正受信機の入力に順次に印加される。
したがって、1つの校正送信機から送出された信号をアンテナを経由しない経路を介してそれぞれのブランチの校正受信機で順次に検出することができる。
【0089】
また、本発明は、第6の適応アレーアンテナ送受信装置において、1つの送信機から出力される周波数がf1の信号をf2の周波数に変換する第1の周波数変換手段と、前記第2の送受共用手段から入力される周波数がf1の信号をf2の周波数に変換して出力する第2の周波数変換手段とを設けている。
【0090】
上記第6の適応アレーアンテナ送受信装置においては、付加アンテナに対して送出する信号の周波数を変換するための第1の周波数変換手段と、付加アンテナで受信された信号の周波数を変換するための第2の周波数変換手段とが独立している。このため、周波数変換手段の入力及び出力を切り替えるためのスイッチを減らすことができる。
【0091】
また、本発明は、第6の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記N個のアンテナ素子を1つの直線上に等間隔で配置するとともに、2つのアンテナ素子の中間の位置に前記付加アンテナを配置する。
このようにN個のアンテナ素子及び付加アンテナを配置することにより、少なくとも2つのアンテナ素子と付加アンテナとの距離を等しくすることができる。なお、付加アンテナを複数設ける場合にはンそれぞれの付加アンテナについてそれと2つのアンテナ素子との距離が等しくなるように配置し、複数の付加アンテナをスイッチで切り替えればよい。
【0092】
また、本発明は、第6の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記N個のアンテナ素子を1つの円周上に等間隔で配置するとともに、前記円周の中心位置に前記付加アンテナを配置する。
このようにN個のアンテナ素子及び付加アンテナを配置することにより、付加アンテナとN個のアンテナ素子との距離を全て等しくすることができる。
【0093】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
本発明の適応アレーアンテナ送受信装置の1つの実施の形態について、図1〜図3を参照して説明する。
【0094】
図1はこの形態の適応アレーアンテナ送受信装置の構成を示すブロック図である。図2はこの形態の送信機の校正制御手順を示すフローチャートである。図3はこの形態の受信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
この形態の適応アレーアンテナ送受信装置は、送受共用手段の一例となるサーキュレータ12、指向性制御演算回路に対応する指向性制御演算部26,ローカル信号生成部に対応する信号発生部24、分岐手段の一例となるカップラ15、校正制御手段に対応する校正演算部25を含む。
【0095】
図1において、アレーアンテナは並べて配置されたN(任意の整数)個のアンテナ素子11で構成されている。この形態では、各要素の符号に付加した括弧内の数値によってそれが配置されたアレーアンテナのブランチの区分を表してある。また、図1中の各矢印は信号の方向を表わしている。なお、以下の説明において、各要素のブランチを区別する必要がない場合には、各符号の括弧及び括弧内の数値の表記は省略する。
【0096】
図1の例では、アンテナ素子11毎にそれを含むブランチユニット10を構成してある。各ブランチユニット10は、アンテナ素子11,サーキュレータ12,送信機13,受信機14,カップラ15及びスイッチ16で構成されている。サーキュレータ12は、アンテナ素子11を送信と受信とで共用するために設けてある。カップラ15は、送信機13が出力する信号の一部分を分岐して取り出すために設けてある。
【0097】
送信を行う場合、各送信機13から送出される信号は、カップラ15及びサーキュレータ12を通り、アンテナ素子11から無線信号として放射される。受信を行う場合には、アンテナ素子11で受信された信号がサーキュレータ12及びスイッチ16を通って、受信機14に入力される。
この例では、送信機13が出力する信号の周波数すなわち送信周波数はf1であり、受信機14の受信周波数はf2であり、送信周波数f1と受信周波数f2とは異なっている。
【0098】
図1の適応アレーアンテナ送受信装置には、N個のブランチユニット10の他に、スイッチ21,周波数変換器22,スイッチ23,信号発生部24,校正演算部25及び指向性制御演算部26が設けてある。
指向性制御演算部26は、アレーアンテナの指向パターンを適応制御するために、N個のブランチの信号を合成すると共に、合成の際の各ブランチの重み付けを制御する。
【0099】
校正演算部25は、各ブランチユニット10の送信機13及び受信機14の振幅・位相誤差を個別に求めて校正を行う。実際には、校正演算部25は図2に示す制御を実施して各送信機13の校正に利用する値を求め、図3に示す制御を実施して各受信機14の校正に利用する値を求める。
スイッチ16,21及び23のそれぞれは、電気的に制御可能に構成されており、この例では校正演算部25の制御によって各々の接続状態が切り替わる。
【0100】
スイッチ21は、N個のブランチユニット10のカップラ15からの信号の1つを選択して周波数変換器22に入力する。スイッチ23は、周波数変換器22が出力する信号をN個のブランチユニット10の中で選択したいずれか1つのスイッチ16に与える。各ブランチユニット10のスイッチ16は、サーキュレータ12からの受信信号とスイッチ23が出力する信号とのいずれか一方を選択して受信機14に入力する。
【0101】
信号発生部24は、前記送信周波数f1と受信周波数f2との差分に相当する周波数(|f1−f2|)の信号を出力する。周波数変換器22は、スイッチ21が出力する信号と信号発生部24が出力する信号とを混合した結果を出力する。スイッチ21が出力する信号は送信機13が出力する信号の一部分であるので、その周波数はf1であり、信号発生部24が出力する信号の周波数は(|f1−f2|)である。
【0102】
周波数がf1の信号と周波数が(|f1−f2|)の信号とを周波数変換器22で合成(混合)することにより、周波数変換器22の出力にはf2の周波数成分が得られる。すなわち、送信機13が出力する周波数がf1の信号は、周波数変換器22を通ると周波数がf2の信号に変換される。
受信機14の受信周波数はf2であるので、周波数変換器22が出力する信号を受信機14に入力すれば、送信機13が出力した信号の振幅や位相を受信機14で測定できる。
【0103】
つまり、従来の校正回路では送信周波数と受信周波数とが異なる場合には、送信機から出力した信号を受信機に入力して校正することはできないが、図1の装置の場合には、周波数変換器22で周波数を変換するので、送信周波数と受信周波数とが異なる場合であっても送信機13が出力した信号を受信機14に入力して校正することができる。
【0104】
信号発生部24が出力する周波数が(|f1−f2|)の信号については、受信機のローカル信号と送信機のローカル信号とを用いて生成することができる。すなわち、信号発生部24は、例えば図10に示す回路、又は図11に示す回路で実現できる。
図10は、べースバンド帯の周波数と通信周波数帯の周波数とを直接変換するダイレクトコンバージョン方式の回路を示しており、図11は、中間周波数を設けてべースバンド帯と通信周波数帯との間の周波数変換を2段階の周波数変換で行うスーパーヘテロダイン方式の回路を示している。
【0105】
図10の回路においては、送信部60が周波数変換に利用している発振器61の出力信号の周波数が送信周波数f1と同一であり、受信部70が周波数変換に利用している発振器71の出力信号の周波数が受信周波数f2と同一であるため、発振器61の出力信号と発振器71の出力信号とを周波数変換器80で混合することにより、画者の差分の周波数(f1−f2)が得られる。
【0106】
図11の回路においては、中間周波数がfIFの場合を想定している。従って、送信部60の発振器65が出力する信号の周波数は(f1−fIF)であり、受信部70の発振器75が出力する信号の周波数は(f2−fIF)である。図11に示すように、発振器65の出力信号と発振器75の出力信号とを周波数変換器80で混合することにより、両者の差分の周波数(f1−f2)が得られる。
【0107】
図10又は図11に示す回路によって図1の信号発生部24を構成する場合には、送信機13及び受信機14のそれぞれの周波数変換に利用しているローカル信号を用いて(f1−f2)の信号を生成するので、新たな発振器を設ける必要がなく回路構成が簡略化される。しかも、信号発生部24の内部で利用する周波数と実際の送信周波数及び受信周波数との間に偏差が生じないので、校正の精度が改善される。
【0108】
なお、図1の回路において、送信機13の出力からカップラ15を介して信号を取り出すのは、受信側の回路の許容入力レベルに比べて送信機13の出力が大きいためである。カップラ15を用いることにより、比較的レベルの小さい信号を送信機13の出力から取り出すことができる。
次に、図2に示す校正制御手順について説明する。なお、この例ではブランチユニット10(1)を基準ブランチに定めてあるが、他のブランチを基準にすることもできる。
【0109】
ステップS10では、スイッチ23を制御して周波数変換器22の出力を基準ブランチのスイッチ16(1)と接続する。次のステップS11では、基準ブランチのスイッチ16(1)を制御して、スイッチ23の出力と基準ブランチの受信機14(1)の入力とを接続する。
次のステップS12では、カウンタiの値を1に初期化する。また、ステップS13〜S19の処理はカウンタiの値に応じて繰り返し実行される。
【0110】
ステップS13では、カウンタの値iに対応するブランチのカップラ15(i)の出力を選択するようにスイッチ21を切り替える。ステップS14では、カウンタの値iに対応するブランチの送信機13(i)から信号を送信する。なお、送信機13(i)から信号を送信するのは測定の間だけで良い。
ステップS15では、基準ブランチの受信機14(1)が受信したi番目の信号 K(i)を受信機14(1)の出力信号から測定する。この信号K(i)は、受信した信号の振幅及び位相の情報を含む値である。初回はカウンタiの値が1なので、ステップS15からS16を通ってステップS17に進み、カウンタiの値をカウントアップしてステップS13に戻る。
【0111】
2回目以降は、カウンタiの値が1以外なので、ステップS15からS16を通ってステップS18に進む。ステップS18では、次式によりi番目のブランチの校正値H(i)を求める。
H(i)=K(i)/K(1) ・・・ (1)
N個の全てのブランチについて処理が終了していない場合には、ステップS18からS19を通ってステップS17に進み、カウンタiの値をカウントアップしてステップS13に戻る。
【0112】
従って、図2の校正制御手順を実行すると、2番目〜N番目のそれぞれのブランチについて、校正値H(i)が個別に求められる。この例では1番目のブランチを基準にしているので、当然のことながら1番目のブランチの校正値H(1)は1である。
ここで、信号K(i)は次式で表される。
【0113】
K(i)=T(i)・Q・R(1) ・・・ (2)
但し、
T(i):送信機13(i)に生じる振幅・位相値
Q :温度特性による振幅・位相値の変動成分
R(1):受信機14(1)に生じる振幅・位相値
従って、第(1)式を変形して次式が得られる。
【0114】
Figure 0003547703
つまり、図2の校正制御手順で得られる校正値H(i)は、送信機13(i)の振幅・位相値の基準ブランチに対する相対値である。また、測定される振幅・位相値は温度特性などの時間変化の影響によって変動するが、その成分Qは上記第(3)式で相殺されているので、温度特性の影響は校正値H(i)には現れない。
【0115】
従って、各ブランチで送信する際に、図2の校正制御手順で得られた校正値H(i)を各々の送信機13(i)の振幅・位相値に乗算することにより、送信機13における振幅・位相値のブランチ間の誤差を補正することができる。
次に、図3に示す校正制御手順について説明する。なお、この例ではブランチユニット10(1)を基準ブランチに定めてあるが、他のブランチを基準にすることもできる。
【0116】
ステップS20では、スイッチ21を制御して基準ブランチのカップラ15(1)の出力を選択する。また、ステップS21では基準ブランチの送信機13(1)から信号を送信する。なお、送信機13(1)が信号を送信するのは測定の間だけでよい。
ステップS22では、カウンタiの値を1に初期化する。ステップS23〜S29の処理は、カウンタiの値に応じて繰り返し実行される。
【0117】
ステップS23では、スイッチ23を制御して、周波数変換器22の出力をカウンタiの値に応じたブランチのスイッチ16(i)と接続する。ステップS24では、スイッチ16(i)を制御して、周波数変換器22の出力とi番目のブランチの受信機14(i)の入力とを接続する。
ステップS25では、i番目のブランチの受信機14(i)が受信した信号S(i)を受信機14(i)の出力信号から測定する。この信号S(i)は、受信した信号の振幅及び位相の情報を含む値である。初回はカウンタiの値が1なので、ステップS25からS26を通ってステップS27に進み、カウンタiの値をカウントアップしてステップS23に戻る。
【0118】
2回目以降は、カウンタiの値が1以外なので、ステップS25からS26を通ってステップS28に進む。ステップS28では、次式によりi番目のブランチの校正値P(i)を求める。
P(i)=S(i)/S(1) ・・・ (4)
N個の全てのブランチについて処理が終了していない場合には、ステップS28からS29を通ってステップS27に進み、カウンタiの値をカウントアップしてステップS23に戻る。
【0119】
従って、図3の校正制御手順を実行すると、2番目〜N番目のそれぞれのブランチについて、校正値S(i)が個別に求められる。この例では1番目のブランチを基準にしているので、当然のことながら1番目のブランチの校正値P(1)は1である。
ここで、信号S(i)は次式で表される。
【0120】
S(i)=T(1)・Q・R(i) ・・・ (5)
但し、
T(1):送信機13(1)に生じる振幅・位相値
Q :温度特性による振幅・位相値の変動成分
R(i):受信機14(i)に生じる振幅・位相値
従って、第(4)式を変形して次式が得られる。
【0121】
Figure 0003547703
つまり、図3の校正制御手順で得られる校正値P(i)は、受信機14(i)の振幅・位相値の基準ブランチに対する相対値である。また、測定される振幅・位相値は温度特性などの時間変化の影響によって変動するが、その成分Qは上記第(6)式で相殺されているので、温度特性の影響は校正値P(i)には現れない。
【0122】
従って、各ブランチで受信する際に、図3の校正制御手順で得られた校正値P(i)を各々の受信機14(i)の振幅・位相値に乗算することにより、受信機14における振幅・位相値のブランチ間の誤差を補正することができる。
前記第(2)式及び第(5)式における温度特性による振幅・位相値の変動成分Qは、実際には各ブランチの送信機13における変動成分と、受信機14における変動成分と、校正に用いる周波数変換器22における変動成分とを含んでいる。したがって、時間の経過に伴う温度変化に対して周波数変換器22の特性が変化するが、周波数変換器22については校正処理でいずれのブランチの振幅・位相値を測定する際にも共通に利用しているので、単一の周波数変換器22の振幅・位相値の変動成分Qは求める校正値に影響を及ぼさない。
【0123】
(第2の実施の形態)
本発明の適応アレーアンテナ送受信装置の1つの実施の形態について、図4〜図6を参照して説明する。
図4はこの形態の適応アレーアンテナ送受信装置の構成を示すブロック図である。図5はこの形態の送信機の校正制御手順を示すフローチャートである。図6はこの形態の受信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
【0124】
この形態は第1の実施の形態の変形例であり、図4〜図6において第1の実施の形態と対応する要素及び処理は、同一の符号及びステップ番号を付けて示してある。
この形態適応アレーアンテナ送受信装置は、送受共用手段の一例となるサーキュレータ12、指向性制御演算回路に対応する指向性制御演算部26、ローカル信号生成手段に対応する信号発生部24、分岐手段の一例となるカップラ15,カップラ32、および、校正制御手段に対応する校正演算部25Bを含む。
【0125】
図1と同様に、図4のアレーアンテナは並べて配置されたN(任意の整数)個のアンテナ素子11で構成されている。この形態では、各要素の符号に付加した括弧内の数値によってそれが配置されたアレーアンテナのブランチの区分を表してある。また、図4中の各矢印は信号の方向を表わしている。なお、以下の説明において、各要素のブランチを区別する必要がない場合には、各符号の括弧及び括弧内の数値の表記は省略する。
【0126】
図4の例では、アンテナ素子11毎にそれを含むブランチユニット30を構成してある。各ブランチユニット30は、アンテナ素子11,サーキュレータ12,送信部31,受信機14,カップラ15及びスイッチ16で構成されている。送信部31は、送信機35,カップラ32及び周波数変換器33を備えている。この例では、送信機35が出力する信号の周波数はf2であり、受信機14の受信周波数と同一である。しかしながら、送信機35の出力に接続された周波数変換器33は、送信機35が出力する信号の周波数をf1に変換してサーキュレータ12に印加する。従って、送信周波数はf1であり、受信機14の受信周波数と異なる。なお、この例では(f1>f2)である。
【0127】
サーキュレータ12は、アンテナ素子11を送信と受信とで共用するために設けてある。カップラ15は、周波数変換器33で周波数変換された周波数がf1の送信信号を分岐して取り出すために設けてある。また、カップラ32は送信部31の内部で送信機35が出力する周波数がf2の送信信号を分岐して直接取り出すために設けてある。
【0128】
図4の適応アレーアンテナ送受信装置には、N個のブランチユニット30の他に、周波数変換器22,信号発生部24,スイッチ38,分配器39,校正演算部25B及び指向性制御演算部26が設けてある。
周波数変換器22が出力する周波数が(|f1−f2|)の信号は、分配器39で分配され、周波数変換器22及び各ブランチの周波数変換器33に印加される。
【0129】
スイッチ21は、N個のブランチのいずれかのカップラ15からの信号(周波数がf1)を選択して周波数変換器22に印加する。スイッチ38は、基準として定めた1番目のブランチの送信部31(1)からカップラ32が取り出した信号(周波数がf2)を、N個のブランチの中から選択した1つのスイッチ16に印加する。
【0130】
基準ブランチのスイッチ16(1)は、サーキュレータ12(1)からの受信信号と、周波数変換器22からの信号と、スイッチ38からの信号とのいずれか1つを選択して受信機14(1)の入力に印加する。また、基準ブランチ以外のスイッチ16(2)〜16(N)は、それぞれ、サーキュレータ12からの受信信号と、スイッチ38からの信号とのいずれかを選択して受信機14の入力に印加する。
【0131】
図4の校正演算部25Bは、図5に示す送信機の校正制御手順と、図6に示す受信機の校正制御手順とをそれぞれ実行する。
図5に示す送信機の校正制御手順のほとんどの内容は、既に説明した図2と同一である。異なるのは図5のステップS10Bのみである。図5のステップS1OBでは、基準ブランチのスイッチ16(1)を制御して、周波数変換器22の出力を受信機14(1)の入力と接続する。
【0132】
従って、各ブランチの送信部31から送出された信号を、基準ブランチの受信機14(1)で受信することができる。送信部31の校正を行う場合には、送信部31に含まれる周波数変換器33の特性を含めた振幅・位相値を測定する必要がある。
【0133】
そこで、周波数がf1の送信信号をカップラ15(1)で取り出し、スイッチ21を介して周波数変換器22に入力し、周波数をf2に変換してからスイッチ16(1)を介して受信機14(1)の入力に印加している。受信機14の受信周波数はf2なので、周波数変換器22が出力する信号を受信機14で測定することができる。
【0134】
図5のステップS15で測定される信号K(i)は次式で表される。
K(i)=T(i)・Q・R(1) ・・・ (7)
但し、
T(i):送信部31(i)に生じる振幅・位相値
Q :周波数変換器22の温度特性による振幅・位相値の変動成分
R(1):受信機14(1)に生じる振幅・位相値
従って、図5のステップS18で求められるi番目のブランチの校正値H(i)は次式で表される。
【0135】
Figure 0003547703
つまり、図5の校正制御手順で得られる校正値H(i)は、送信部31(i)の振幅・位相値の基準ブランチに対する相対値である。また、測定される振幅・位相値は温度特性などの時間変化の影響によって変動するが、その成分Qは上記第(8)式で相殺されているので、温度特性の影響は校正値H(i)には現れない。
【0136】
従って、各ブランチで送信する際に、図5の校正制御手順で得られた校正値H(i)を各々の送信部31(i)の振幅・位相値に乗算することにより、送信部31における振幅・位相値のブランチ間の誤差を補正することができる。
図6に示す受信機の校正制御手順のほとんどの内容は、既に説明した図3と同一である。ステップS20は不要なので省略されている。また、図6のステップS23Bでは、スイッチ38を制御して、基準ブランチの送信部31(1)に設けたカップラ32の出力をi番目のブランチのスイッチ16(i)と接続する。
【0137】
また、図6のステップS24Bでは、i番目のブランチのスイッチ16(i)を制御して、スイッチ38の出力とi番目のブランチの受信機14(i)の入力とを接続する。
従って、基準ブランチの送信機35(1)から送出された信号を、各ブランチの受信機14(i)に入力することができる。送信機35の出力信号の周波数f2は受信機14の受信周波数f2と同一であるので、各受信機14(i)はスイッチ16から入力された信号をそのまま受信することができる。
【0138】
受信機14の校正を行う場合には、送信部31に含まれる周波数変換器33の特性を考慮する必要はないので、周波数変換器33で周波数変換する前の信号をカップラ32で取り出して受信機14に直接入力することができる。
図6のステップS25で測定される信号S(i)は次式で表される。
S(i)=T(1)・R(i) ・・・ (9)
但し、
T(1):送信機35(1)に生じる振幅・位相値
R(i):受信機14(i)に生じる振幅・位相値
従って、図6のステップS28で得られるi番目のブランチの校正値P(i)は次式で表される。
【0139】
Figure 0003547703
つまり、図6の校正制御手順で得られる校正値P(i)は、受信機14(i)の振幅・位相値の基準ブランチに対する相対値である。従って、各ブランチで受信する際に、図3の校正制御手順で得られた校正値P(i)を各々の受信機14(i)の振幅・位相値に乗算することにより、受信機14における振幅・位相値のブランチ間の誤差を補正することができる。
【0140】
前記第(8)式における温度特性による振幅・位相値の変動成分Qは、実際には各ブランチの送信部31における変動成分と、受信機14における変動成分と、校正に用いる周波数変換器22における変動成分とを含んでいる。したがって、時間の経過に伴う温度変化に対して周波数変換器22の特性が変化するが、周波数変換器22については校正処理でいずれのブランチの振幅・位相値を測定する際にも共通に利用しているので、単一の周波数変換器22の振幅・位相値の変動成分Qは求める校正値に影響を及ぼさない。
【0141】
(第3の実施の形態)
本発明の適応アレーアンテナ送受信装置の1つの実施の形態について、図7〜図9を参照して説明する。
図7はこの形態の適応アレーアンテナ送受信装置の構成を示すブロック図である。図8はこの形態の送信機の校正制御手順を示すフローチャートである。図9はこの形態の受信機の校正制御子順を示すフローチャートである。
この形態は第1の実施の形態の変形例であり、図7〜図9において第1の実施の形態と対応する要素及び処理は、同一の符号及びステップ番号を付けて示してある。
【0142】
この形態の適応アレーアンテナ送受信装置は、送受共用手段の一例となるサーキュレータ12、指向性制御演算回路に対応する指向性制御演算部26、ローカル信号生成手段に対応する信号発生部24、分岐手段の一例となるカップラ15、および、校正制御手段に対応する校正演算部25Cを含む。
図7において、アレーアンテナは並べて配置されたN(任意の整数)個のアンテナ素子11で構成されている。この形態では、各要素の符号に付加した括弧内の数値によってそれが配置されたアレーアンテナのブランチの区分を表してある。また、図7中の各矢印は信号の方向を表わしている。なお、以下の説明において、各要素のブランチを区別する必要がない場合には、各符号の括弧及び括弧内の数値の表記は省略する。
【0143】
図7の例では、アンテナ素子11毎にそれを含むブランチユニット40を構成してある。各ブランチユニット40は、アンテナ素子11,サーキュレータ12,送信機13,受信機14,カップラ15,スイッチ16,41,42及び周波数変換器43で構成されている。
但し、N番目のブランチユニット40(N)については、不要なスイッチ41,42,周波数変換器43は省略してある。
【0144】
サーキュレータ12は、アンテナ素子11を送信と受信とで共用するために設けてある。カップラ15は、送信機13が出力する信号の一部分を分岐して取り出すために設けてある。
送信を行う場合、各送信機13から送出される信号は、カップラ15及びサーキュレータ12を通り、アンテナ素子11から無線信号として放射される。受信を行う場合には、アンテナ素子11で受信された信号がサーキュレータ12及びスイッチ16を通って、受信機14に入力される。
この例では、送信機13が出力する信号の周波数すなわち送信周波数はf1であり、受信機14の受信周波数はf2であり、送信周波数f1と受信周波数f2とは異なっている。
【0145】
この例では、送信機13が出力する信号の周波数すなわち送信周波数はf1であり、受信機14の受信周波数はf2であり、送信周波数f1と受信周波数f2とは異なっている。
図7の適応アレーアンテナ送受信装置には、N個のブランチユニット40の他に、信号発生部24,分配器39,校正演算部25C及び指向性制御演算部26が設けてある。
【0146】
指向性制御演算部26は、アレーアンテナの指向パターンを適応制御するために、N個のブランチの信号を合成すると共に、合成の際の各ブランチの重み付けを制御する。
【0147】
校正演算部25Cは、各ブランチユニット40の送信機13及び受信機14の振幅・位相誤差を個別に求めて校正を行う。実際には、校正演算部25Cは図8に示す制御を実施して各送信機13の校正に利用する値を求め、図9に示す制御を実施して各受信機14の校正に利用する値を求める。
スイッチ16,41及び42のそれぞれは、電気的に制御可能に構成されており、この例では校正演算部25Cの制御によって各々の接続状態が切り替わる。
【0148】
i番目のブランチのスイッチ41(i)は、当該ブランチのカップラ15(i)からの信号と、隣接するブランチのカップラ15(i+1)からの信号とのいずれか一方を選択して周波数変換器43(i)に入力する。
各ブランチの周波数変換器43は、それぞれ分配器39からの信号(周波数はf1−f2)を用いて、スイッチ41が出力する信号(周波数はf1)の周波数をf2に変換する。
【0149】
i番目のブランチのスイッチ42は、当該ブランチの周波数変換器43(i)が出力する信号(周波数はf2)を、当該ブランチのスイッチ16(i)と、隣接するブランチのスイッチ16(i+1)とのいずれか一方に選択的に出力する。
この例では、1番目のブランチを基準ブランチとして定めてある。基準ブランチのスイッチ16(1)は、当該ブランチのスイッチ42が出力する信号とサーキュレータ12からの受信信号とのいずれか一方を選択して、受信機14の入力に印加する。
【0150】
2番目〜(N−1)番目のブランチのスイッチ16(j)は、それぞれ、隣接するブランチのスイッチ42(j−1)からの信号と、当該ブランチのスイッチ42(j)からの信号と、サーキュレータ12からの信号とのいずれかを選択して、受信機14の入力に印加する。
N番目のブランチのスイッチ16(N)は、隣接するブランチのスイッチ42(N−1)からの信号と、サーキュレータ12からの信号とのいずれか一方を選択して、受信機14の入力に印加する。
【0151】
信号発生部24は、送信周波数f1と受信周波数f2との差分に相当する周波数(|f1−f2|)の信号を出力する。この信号は分配器39によって分配され各回路に印加される。各ブランチの周波数変換器43は、信号発生部24からの信号(|f1−f2|)を用いて、送信機13から出力される信号の周波数をf1からf2に変換する。
【0152】
受信機14の受信周波数はf2であるので、各周波数変換器43が出力する信号を受信機14に入力すれば、送信機13が出力した信号の振幅や位相を受信機14で測定できる。
なお、図7の例では、アンテナ素子11の並び順に合わせて決定したそれぞれ2つのブランチの組み合わせについて、スイッチ41,42が信号の経路を選択するように構成してある。しかし、スイッチ41,42が選択する2つのブランチの組み合わせについては、アンテナ素子11が実際に隣接している2つのブランチと同じである必要はなく任意に決定することができる。
【0153】
次に、図8に示す校正制御手順について説明する。なお、この例ではブランチユニット40(1)を基準ブランチに定めてあるが、他のブランチを基準にすることもできる。
ステップS30では、カウンタiの値を1に初期化する。また、ステップS31ではカウンタjの値をカウンタiの値に1を加算した値に定める。ステップS31〜S45の処理は、カウンタi,jの値に従って繰り返し実行される。なお、カウンタiの値は注目するブランチを表し、カウンタjの値は注目するブランチに隣接するブランチを表している。
【0154】
ステップS32では、注目ブランチのスイッチ42(i)を制御して、周波数変換器43の出力と隣接ブランチのスイッチ16(j)とを接続する。また、ステップS33では、隣接ブランチのスイッチ16(j)を制御して、注目ブランチのスイッチ42(i)の出力を隣接ブランチの受信機14(j)の入力と接続する。
【0155】
ステップS34では、カウンタの値iに対応する注目ブランチの送信機13(i)から信号を送信する。なお、送信機13(i)から信号を送信するのは測定の間だけで良い。
ステップS35では、カウンタの値iに対応する注目ブランチのスイッチ41(i)を制御して、カップラ15(i)の出力を選択する。ステップS36では、隣接ブランチの受信機14(j)が受信したj番目の信号K1(j)を受信機14(j)の出力信号から測定する。この信号K1(j)は、受信した信号の振幅及び位相の情報を含む値である。
【0156】
ステップS37では、カウンタの値jに対応する隣接ブランチの送信機13(j)から信号を送信する。なお、送信機13(j)から信号を送信するのは測定の間だけで良い。
ステップS38では、カウンタiの値に対応する注目ブランチのスイッチ41(i)を制御して、隣接ブランチのカップラ15(j)の出力を選択する。ステップS39では、隣接ブランチの受信機14(j)が受信したj番目の信号K2(j)を受信機14(j)の出力信号から測定する。この信号K2(j)は、受信した信号の振幅及び位相の情報を含む値である。
【0157】
次のステップS40では、次式によりj番目のブランチの校正値H2(j)を求める。
H2(j)=K2(j)/K1(j) ・・・ (11)
初回はカウンタiの値が1なので、ステップS41からS42を通ってステップS43に進み、カウンタiの値をカウントアップしてステップS31に戻る。2回目以降は、カウンタiの値が1以外なので、ステップS41からS44を通ってステップS45に進む。
【0158】
ステップS42では、校正値H2(j)を校正値H3(j)として保存する。また、ステップS44では、前のブランチについて求められたi番目の校正値H3(i)を当該ブランチ(注目ブランチ及び隣接ブランチ)について求めたj番目の校正値H2(j)に乗算し、その結果を校正値H3(j)として保存する。従って、図8の処理を実行すると、各ブランチについてj番目の校正値H3(j)が得られる(j=2〜N)。
【0159】
ステップS36で得られる信号K1(j)及びステップS39で得られる信号K2(j)はそれぞれ次式で表される。
K1(j)=T(i)・Q(i)・R(j) ・・・ (12)
K2(j)=T(j)・Q(i)・R(j) ・・・ (13)
但し、
T(i),T(j):送信機13(i),13(j)に生じる振幅・位相値
Q(i):周波数変換器43(i)の温度特性による振幅・位相値の変動成分
R(j):受信機14(j)に生じる振幅・位相値
従って、第(11)式を変形して次式が得られる。
【0160】
Figure 0003547703
ステップS42,S44の校正値H3(j)について説明する。例えば、j=2の場合は第(14)式より校正値H2(2)=H3(2)となる。j>2の場合、校正値H3(3)は次式で表される。
【0161】
Figure 0003547703
従って、校正値H3(4)は次式で表される。
【0162】
Figure 0003547703
上記と同様の計算により、校正値H3(j)は次式で表される。
【0163】
Figure 0003547703
つまり、図8の校正制御手順で得られる校正値H3(j)は、送信機13(j)の振幅・位相値の基準ブランチに対する相対値である。また、測定される振幅・位相値は温度特性などの時間変化の影響によって変動するが、その成分Qは上記第(14)式で相殺されているので、温度特性の影響は校正値H3(j)には現れない。
【0164】
従って、各ブランチで送信する際に、図8の校正制御手順で得られた校正値H3(j)を各々の送信機13(j)の振幅・位相値に乗算することにより、送信機13における振幅・位相値のブランチ間の誤差を補正することができる。
次に、図9に示す校正制御手順について説明する。なお、この例ではブランチユニット40(1)を基準ブランチに定めてあるが、他のブランチを基準にすることもできる。
【0165】
ステップS50では、カウンタiの値を1に初期化する。また、ステップS51ではカウンタjの値をカウンタiの値に1を加算した値に定める。ステップS51〜S65の処理は、カウンタi,jの値に従って繰り返し実行される。なお、カウンタiの値は注目するブランチを表し、カウンタjの値は注目するブランチに隣接するブランチを表している。
【0166】
ステップS52では、カウンタiの値に対応する注目ブランチの送信機13(i)から信号を送信する。なお、送信機13(i)から信号を送信するのは測定の間だけで良い。ステップS53では、カウンタの値iに対応する注目ブランチのスイッチ41(i)を制御して、カップラ15(i)の出力を選択する。
【0167】
ステップS54では、注目ブランチのスイッチ42(i)を制御して、周波数変換器43の出力と注目ブランチのスイッチ16(i)とを接続する。また、ステップS55では、注目ブランチのスイッチ16(i)を制御して、注目ブランチのスイッチ42(i)の出力を注目ブランチの受信機14(i)の入力と接続する。
ステップS56では、注目ブランチの受信機14(i)が受信したj番目の信号S1(j)を受信機14(i)の出力信号から測定する。この信号S1(j)は、受信した信号の振幅及び位相の情報を含む値である。
【0168】
ステップS57では、注目ブランチのスイッチ42(i)を制御して、周波数変換器43の出力と隣接ブランチのスイッチ16(j)とを接続する。また、ステップS58では、隣接ブランチのスイッチ16(j)を制御して、注目ブランチのスイッチ42(i)の出力を隣接ブランチの受信機14(j)の入力と接続する。
ステップS59では、隣接ブランチの受信機14(j)が受信したj番目の信号S2(j)を受信機14(j)の出力信号から測定する。この信号S2(j)は、受信した信号の振幅及び位相の情報を含む値である。
【0169】
次のステップS60では、次式によりj番目のブランチの校正値P2(j)を求める。
P2(j)=S2(j)/S1(j) ・・・ (18)
初回はカウンタiの値が1なので、ステップS61からS62を通ってステップS63に進み、カウンタiの値をカウントアップしてステップS51に戻る。2回目以降は、カウンタiの値が1以外なので、ステップS61からS64を通ってステップS65に進む。
【0170】
ステップS62では、校正値P2(j)を校正値P3(j)として保存する。また、ステップS64では、前のブランチについて求められたi番目の校正値P3(i)を当該ブランチ(注目ブランチ及び隣接ブランチ)について求めたj番目の校正値P2(j)に乗算し、その結果を校正値P3(j)として保存する。
【0171】
従って、図9の処理を実行すると、各ブランチについてj番目の校正値P3(j)が得られる(j=2〜N)。
ステップS56で得られる信号S1(j)及びステップS59で得られる信号S2(j)はそれぞれ次式で表される。
S1(j)=T(i)・Q(i)・R(i) ・・・ (19)
S2(j)=T(i)・Q(i)・R(j) ・・・ (20)
但し、
T(i):送信機13(i)に生じる振幅・位相値
Q(i):周波数変換器43(i)の温度特性による振幅・位相値の変動成分
R(i),R(j):受信機14(i),14(j)に生じる振幅・位相値
従って、第(18)式を変形して次式が得られる。
【0172】
Figure 0003547703
ステップS62,S64の校正値P3(j)について説明する。例えば、j=2の場合は第(21)式より校正値P3(2)=P2(2)となる。校正値P3(3)は次式で表される。
【0173】
Figure 0003547703
従って、校正値P3(4)は次式で表される。
【0174】
Figure 0003547703
上記と同様の計算により、校正値P3(j)は次式で表される。
【0175】
Figure 0003547703
つまり、図9の校正制御手順で得られる校正値P3(j)は、受信機14(j)の振幅・位相値の基準ブランチに対する相対値である。また、測定される振幅・位相値は温度特性などの時間変化の影響によって変動するが、その成分Qは上記第(21)式で相殺されているので、温度特性の影響は校正値P3(j)には現れない。
【0176】
従って、各ブランチで受信する際に、図9の校正制御手順で得られた校正値P3(j)を各々の受信機14(j)の振幅・位相値に乗算することにより、受信機14における振幅・位相値のブランチ間の誤差を補正することができる。
【0177】
(第4の実施の形態)
本発明の適応アレーアンテナ送受信装置の1つの実施の形態について、図12〜図16及び図10、図11,図18を参照して説明する。
【0178】
図12はこの形態の適応アレーアンテナ送受信装置の構成を示すブロック図である。図13はこの形態の送信機の校正制御手順を示すフローチャートである。図14はこの形態の受信機の校正制御手順を示すフローチャートである。図15(a)はアンテナ素子及び付加アンテナの配置例(1)を示す平面図である。図16はアンテナ素子及び付加アンテナの配置例(2)を示す平面図である。
【0179】
図10は周波数f1−f2の生成回路例(1)を示すブロック図である。図11は周波数f1−f2の生成回路例(2)を示すブロック図である。図18はi番目のブランチの各部の振幅・位相値を示すブロック図である。
この形態の適応アレーアンテナ送受信装置は、指向性制御演算回路に対応する指向性制御演算部125、分岐手段の一例となるカップラ122、送受共用手段の一例となるサーキュレータ113,サーキュレータ114、および、校正制御手段に対応する校正演算部124を含む。
【0180】
図12において、アレーアンテナは並べて配置されたN(任意の整数)個のアンテナ素子111で構成されている。この形態では、各要素の符号に付加した括弧内の数値によってそれが配置されたアレーアンテナのブランチの区分を表してある。また、図12中の各矢印は信号の方向を表わしている。なお、以下の説明において、各要素のブランチを区別する必要がない場合には、各符号の括弧及び括弧内の数値の表記は省略する。
【0181】
図12の例では、アンテナ素子111毎にそれを含むブランチユニット110を構成してある。N個の全てのブランチユニット110は同一の構成になっている。各ブランチユニット110は、アンテナ素子111,スイッチ112,サーキュレータ113,114,送信部115,周波数変換器116,スイッチ117及び受信機118で構成されている。
【0182】
送信部115は、送信機121,カップラ122及び周波数変換器123を備えている。カップラ122は、送信部115の内部で送信機121が出力する信号の一部分を分岐して取り出すために設けてある。
サーキュレータ113,114及び112は、アンテナ素子111を送信と受信とで共用するために設けてある。通信のために送信を行う場合、各送信部115から送出される信号は、サーキュレータ113及びスイッチ112を通り、アンテナ素子111から無線信号として放射される。また、通信のために受信を行う場合には、アンテナ素子111で受信された信号がスイッチ112,サーキュレータ113及びスイッチ117を通って、受信機118に入力される。
【0183】
この例では、送信部115が出力する信号の周波数すなわち通信に利用するアレーアンテナの送信周波数はf1であり、通信に利用するアレーアンテナ及び受信機118の受信周波数はf2であり、送信周波数f1と受信周波数f2とは異なっている。
但し、送信部115の内部において送信機121が送出する信号の周波数は、受信機118の受信周波数と同じf2になっている。送信機121が送出する信号は、周波数変換器123を通って送信周波数f1に変換される。カップラ122は、周波数がf2の信号を送信機121の出力から取り出す。また、周波数変換器116は周波数がf1の信号をサーキュレータ114から入力して、周波数がf2の信号を出力するように信号の周波数を変換する。
【0184】
図12の適応アレーアンテナ送受信装置には、N個のブランチユニッ卜110の他に、校正演算部124,指向性制御演算部125,信号発生部126,分配器127,付加アンテナ128及びスイッチ129が設けてある。
指向性制御演算部125は、アレーアンテナの指向パターンを適応制御するために、N個のブランチの信号を合成すると共に、合成の際の各ブランチの重み付けを制御する。
【0185】
校正演算部124は、各ブランチユニット110の送信系(送信部115及びアンテナ素子111)及び受信系(受信機118及びアンテナ素子111)の振幅・位相誤差を個別に求めて校正を行う。実際には、校正演算部124は図13に示す制御を実施して各ブランチの送信系の校正に利用する値を求め、図14に示す制御を実施して各ブランチの受信系の校正に利用する値を求める。
【0186】
スイッチ112,117及び129のそれぞれは、電気的に制御可能に構成されており、この例では校正演算部124の制御によって各々の接続状態が切り替わる。
スイッチ129は、付加アンテナ128をN個のブランチユニット110のいずれか1つのスイッチ112と接続する。各ブランチのスイッチ112は、アンテナ素子111及びスイッチ129のいずれか一方を、サーキュレータ113及び114のいずれか一方と接続する。各ブランチのスイッチ117は、サーキュレータ113と周波数変換器116の出力とのいずれか一方を受信機118の入力と接続する。
【0187】
信号発生部126は、前記送信周波数f1と受信周波数f2との差分に相当する周波数(|f1−f2|)の信号を出力する。信号発生部126が出力する信号は、分配器127を介して各ブランチの周波数変換器116,123に印加される。各ブランチの周波数変換器116,123は、信号発生部126からの信号を用いて周波数の変換を行う。
【0188】
すなわち、周波数変換器123に送信機121から入力される信号の周波数はf2であり、信号発生部126からの信号の周波数が(|f1−f2|)なので、それらの信号の合成(混合)によって、周波数変換器123から出力される信号の周波数はf1になる。
また、周波数変換器116にサーキュレータ114から入力される信号の周波数はf1であり、信号発生部126からの信号の周波数が(|f1−f2|)なので、それらの信号の合成(混合)によって、周波数変換器116から出力される信号の周波数はf2になる。
【0189】
この例では、通信に利用する送信周波数がf1であり受信周波数がf2であるため、1つのブランチから送出した信号を他のブランチで検出してそのまま受信機118で受信することはできない。しかし、周波数変換器116を用いて周波数の変換を行うことにより、他のブランチから送出された信号を受信機118で受信することができる。
【0190】
信号発生部126が出力する周波数が(|f1−f2|)の信号については、受信機のローカル信号と送信機のローカル信号とを用いて生成することができる。
すなわち、信号発生部126は、例えば図10に示す回路、又は図11に示す回路で実現できる。
【0191】
図10は、ベースバンド帯の周波数と通信周波数帯の周波数とを直接変換するダーイレクトコンバージョン方式の回路を示しており、図11は、中間周波数を設けでベースバンド帯と通信周波数帯との間の周波数変換を2段階の周波数変換で行うスーパーヘテロダイン方式の回路を示している。
図10の回路においては、送信部60が周波数変換に利用している発振器61の出力信号の周波数が送信周波数f1と同一であり、受信部70が周波数変換に利用している発振器71の出力信号の周波数が受信周波数f2と同一であるため、発振器61の出力信号と発振器71の出力信号とを周波数変換器80で混合することにより、両者の差分の周波数(f1−f2)が得られる。
【0192】
図11の回路においては、中間周波数がfIFの場合を想定している。したがって、送信部60の発振器65が出力する信号の周波数は(f1−fIF)であり、受信部70の発振器75が出力する信号の周波数は(f2−fIF)である。図11に示すように、発振器65の出力信号と発振器75の出力信号とを周波数変換器80で混合することにより、両者の差分の周波数(f1−f2)が得られる。
【0193】
図10又は図11に示す回路によって図12の信号発生部126を構成する場合には、送信部115及び受信機118のそれぞれの周波数変換に利用しているローカル信号を用いて(f1−f2)の信号を生成するので、新たな発振器を設ける必要がなく回路構成が簡略化される。しかも、信号発生部126の内部で利用する周波数と実際の送信周波数及び受信周波数との間に偏差が生じないので、校正の精度が改善される。
【0194】
なお、図12の回路において、送信機121の出力からカップラ122を介して信号を取り出すのは、受信側の回路の許容入力レベルに比べて送信機121の出力が大きいためである。カップラ122を用いることにより、比較的レベルの小さい信号を送信機121の出力から取り出すことができる。
付加アンテナ128を設置する位置については、アレーアンテナを構成するN個のアンテナ素子111の配置に応じて決定する必要がある。図15(a)に示すように、1つの直線上にアンテナ素子111が等間隔で並んでいる場合には、校正対象の2つのブランチの各アンテナ素子111と付加アンテナ128との距離dが等しくなるように、例えば2つのアンテナ素子111の中間位置に付加アンテナ128を配置すればよい。
【0195】
また、図16に示すように1つの円周上に等間隔でアンテナ素子111が並べて配置してある場合には、円周の中心位置に付加アンテナ128を配置すればよい。この場合、アンテナ素子111と付加アンテナ128との距離dはいずれのブランチについても等しくなる。
このように付加アンテナ128を配置すると、後述するように、各アンテナ素子111と付加アンテナ128との間の伝搬損失が等しくなり、それの影響を受けない校正値を求めることができる。
【0196】
次に、図13に示す校正制御手順について説明する。なお、この例ではブランチユニット10(1)を基準ブランチに定めてあるが、他のブランチを基準にすることもできる。
ステップS110では、カウンタiの値を1に初期化する。カウンタiの値は、校正の対象となる1つのブランチに対応している。ステップS111〜S127の処理はカウンタiの値に応じて繰り返し実行される。
【0197】
ステップS111では、それぞれ2つのブランチに対応するカウンタj,kの値をカウンタiの値に応じて決定する。但し、カウンタjの値は常にカウンタiの値とは異なるように定め、カウンタkの値は常にカウンタiの値とは異なりかつカウンタjの値とも異なるように定める。
実際には、カウンタiの値に1を加算した結果をカウンタjにセットし、カウンタiの値に2を加算した結果をカウンタkにセットすればよい。但し、カウンタj,kの値がブランチ数のNを超えた場合にはNを減算した値をセットする。
【0198】
これにより、カウンタi,j,kの値は互いに異なる値になるので、カウンタi,j,kの値で特定されるブランチを選択することにより、互いに異なる3つのブランチを同時に選択することができる。図13の処理においては、カウンタi,jの値は校正対象の2つのブランチに対応し、カウンタkの値は受信用の共通のブランチに対応している。
【0199】
但し、校正対象の2つのブランチについては、各ブランチのアンテナ素子111と付加アンテナ128との距離が等しくなるものを同時に選択するようにカウンタi,jの値を決定する必要がある。
図16に示すようにアンテナ素子111を円周上に配置してその中心に付加アンテナ128を配置する場合には、いずれのブランチについてもアンテナ素子111と付加アンテナ128との距離が等しくなるので特に問題はない。
【0200】
しかし、図15(a)に示すように直線上にアンテナ素子111を配置する場合には、選択した校正対象の2つのブランチのアンテナ素子111からの距離が等しくなるように付加アンテナ128の位置を逐次変更する必要がある。
ステップS112では、スイッチ129及びカウンタkの値に対応するブランチのスイッチ112(k)を制御して、付加アンテナ128をカウンタkの値に対応するブランチのサーキュレータ114(k)と接続する。
【0201】
ステップS113では、カウンタkの値に対応するブランチについて、スイッチ117(k)を制御して周波数変換器116(k)の出力を受信機118(k)の入力と接続する。
ステップS114では、カウンタiの値に対応するブランチについて、スイッチ112(i)を制御して周波数変換器123(i)の出力とアンテナ素子111(i)とを接続する。
【0202】
ステップS115では、カウンタiの値に対応するブランチの送信機121(i)から信号を送信する。この場合、送信機121(i)が出力する信号は、カップラ122(i)を通り、周波数変換器123(i)で周波数がf1に変換され、サーキュレータ113(i)及びスイッチ112(i)を通ってアンテナ素子111(i)から無線信号として送信される。
【0203】
この無線信号は、付加アンテナ128によって受信される。付加アンテナ128が受信した信号は、スイッチ129を通ってカウンタkの値に対応するブランチに入力され、スイッチ112(k),サーキュレータ114(k)を通り、周波数変換器116(k)で周波数がf2に変換され、スイッチ117(k)を通って受信機118(k)に入力される。
【0204】
そこで、ステップS116では受信機118(k)の受信出力から現在選択しているブランチの信号(振幅・位相値)G1(j)を測定する。測定が終了したら、次のステップS117で送信機121(i)の送信を停止する。
上記と同様に、ステップS118では、カウンタjの値に対応するブランチについて、スイッチ112(j)を制御して周波数変換器123(j)の出力とアンテナ素子111(j)とを接続する。
【0205】
ステップS119では、カウンタjの値に対応するブランチの送信機121(j)から信号を送信する。この場合、送信機121(j)が出力する信号は、カップラ122(j)を通り、周波数変換器123(j)で周波数がf1に変換され、サーキュレータ113(j)及びスイッチ112(j)を通ってアンテナ素子111(j)から無線信号として送信される。
【0206】
この無線信号は、付加アンテナ128によって受信される。付加アンテナ128が受信した信号は、スイッチ129を通ってカウンタkの値に対応するブランチに入力され、スイッチ112(k),サーキュレータ114(k)を通り、周波数変換器116(k)で周波数がf2に変換され、スイッチ117(k)を通って受信機118(k)に入力される。
【0207】
そこで、ステップS120では受信機118(k)の受信出力から現在選択しているブランチの信号(振幅・位相値)G2(j)を測定する。測定が終了したら、次のステップS121で送信機121(j)の送信を停止する。
ステップS122では、次式の計算により校正値H2(j)を求める。
H2(j)=G2(j)/G1(j) ・・・(101)
初回の処理では、カウンタiの値が1なので、ステップS122からS123を通ってS124に進み、ステップS125でカウンタiの値を更新してステップS111に戻る。ステップS124では、校正値H2(j)を校正値H3(j)として保存する。
【0208】
2回目以降の処理では、カウンタiの値が1以外なので、ステップS122からS123を通ってS126に進み、ステップS127,S125を通ってステップS111に戻る。この場合もステップS125でカウンタiの値が更新される。
ステップS126では、次式の計算により、校正値H2(j)を修正した結果を校正値H3(j)として保存する。
【0209】
H3(j)=H3(i)・H2(j) ・・・(102)
全てのブランチについて処理が終了すると2番目〜N番目のそれぞれのブランチについて、校正値H3(j)が個別に求められる。この例では1番目のブランチを基準にしているので、当然のことながら1番目のブランチの校正値H3(j)は1である。
【0210】
ところで、図13のステップS116,S120で測定される振幅・位相値G1(j),G2(j)は次式で表される。
G1(j)=T(i)・M(i,f1)・L1(k)・M2(f1)・Q(k)・R(k) ・・・(103)
G2(j)=T(j)・M(j,f1)・L2(k)・M2(f1)・Q(k)・R(k) ・・・(104)
但し、
T(i),T(j):送信部115(i),115(j)の振幅・位相
M(i,f1):アンテナ素子111(i)のf1に関する振幅・位相
M(j,f1):アンテナ素子111(j)のf1に関する振幅・位相
L1(k):アンテナ素子111(i)と付加アンテナ128との間の伝搬損失
L2(k):アンテナ素子111(j)と付加アンテナ128との間の伝搬損失
M2(f1):付加アンテナ128のf1に関する振幅・位相
Q(k):周波数変換器116(k)の振幅・位相
R(k):受信機118(k)の振幅・位相
この形態では、アンテナ素子111(i)と付加アンテナ128との距離は、アンテナ素子111(j)と付加アンテナ128との距離と同一であるため、伝搬損失L1(k),L2(k)は同一である。また、付加アンテナ128及びカウンタkに対応するブランチはカウンタi,jに対応する2つのブランチに共通に利用されているので、それらの成分は共通である。したがって、前記第(101)式を変形すると次式が得られる。
【0211】
Figure 0003547703
つまり、図18に示すような送信部115のf1に関する振幅・位相の成分T(i)と、アンテナ素子111(i)のf1に関する振幅・位相の成分M(i,ft)とを合わせたi番目のブランチの送信系全体の振幅・位相値が、他のブランチとの比率としてブランチ毎に求められる。
【0212】
ステップS124,S126の校正値H3(j)について説明する。例えば、校正値H3(3)は次式で表される。
Figure 0003547703
したがって、校正値H3(4)は次式で表される。
【0213】
Figure 0003547703
上記と同様の計算により、校正値H3(j)は次式で表される。
【0214】
Figure 0003547703
つまり、図13の校正制御手順で得られる校正値H3(j)は、j番目のブランチの送信系(送信部115(j)及びアンテナ素子111(j))の振幅・位相値の基準ブランチに対する相対値である。また、測定される振幅・位相値は温度特性などの時間変化の影響によって変動するが、その成分Qは上記第(105)式で相殺されているので、温度特性の影響は校正値H3(j)には現れない。
【0215】
このように、単一の付加アンテナ128を用いるだけで、基準ブランチに対する相対値として各ブランチの校正値H3(j)を求めることができる。各ブランチで送信する際には、図13の校正制御手順で得られた校正値H3(j)を各々の送信部115(j)の振幅・位相値に乗算することにより、送信部115における振幅・位相値のブランチ間の誤差を補正することができる。
【0216】
次に、図14に示す校正制御手順について説明する。なお、この例ではブランチユニット110(1)を基準ブランチに定めてあるが、他のブランチを基準にすることもできる。
ステップS130では、カウンタiの値を1に初期化する。カウンタiの値は、校正の対象となる1つのブランチに対応している。ステップS131〜S145の処理はカウンタiの値に応じて繰り返し実行される。
【0217】
ステップS131では、それぞれ2つのブランチに対応するカウンタj,kの値をカウンタiの値に応じて決定する。但し、常にカウンタjの値はカウンタiの値とは異なるように定め、カウンタkの値は常にカウンタiの値とは異なりかつカウンタjの値とも異なる値に定める。
実際には、カウンタiの値に1を加算した結果をカウンタjにセットし、カウンタiの値に2を加算した結果をカウンタkにセットすればよい。但し、カウンタj,kの値がブランチ数のNを超えた場合にはNを減算した値をセットする。
【0218】
これにより、カウンタi,j,kの値は互いに異なる値になるので、カウンタi,j,kの値で特定されるブランチを選択することにより、互いに異なる3つのブランチを同時に選択することができる。図14の処理においては、カウンタi,jの値は校正対象の2つのブランチに対応し、カウンタkの値は送信用の共通のブランチに対応している。
【0219】
但し、校正対象の2つのブランチについては、各ブランチのアンテナ素子111と付加アンテナ128との距離が等しくなるものを同時に選択するようにカウンタi,jの値を決定する必要がある。
図16に示すようにアンテナ素子111を円周上に配置してその中心に付加アンテナ128を配置する場合には、いずれのブランチについてもアンテナ素子111と付加アンテナ128との距離が等しくなるので特に問題はない。
【0220】
しかし、図15(a)に示すように直線上にアンテナ素子111を配置する場合には、選択した校正対象の2つのブランチのアンテナ素子111からの距離が等しくなるように付加アンテナ128の位置を逐次変更する必要がある。
ステップS132では、スイッチ129及びカウンタkの値に対応するブランチのスイッチ112(k)を制御して、付加アンテナ128をカウンタkの値に対応するブランチのサーキュレータ114(k)と接続する。
【0221】
ステップS133では、カウンタkの値に対応するブランチの送信機121(k)から信号を送出する。この場合、送信機121(k)から出力される信号は、カップラ122(k)で分岐され、サーキュレータ114(k),スイッチ112(k)及びスイッチ129を通って付加アンテナ128から無線信号として送信される。
付加アンテナ128から送信された無線信号は、各ブランチのアンテナ素子111で受信することができる。また、この場合には送信機121(k)が出力する信号を周波数変換器123(k)を通さずに周波数f2のまま付加アンテナ128から送信するので、受信側のブランチでは周波数を変換することなく受信機118で信号を受信できる。
【0222】
ステップS134では、カウンタiの値に対応するブランチについて、スイッチ112(i)を制御してアンテナ素子111(i)とサーキュレータ113(i)とを接続する。
ステップS135では、カウンタiの値に対応するブランチについて、スイッチ117(i)を制御してサーキュレータ113(i)と受信機118の入力とを接続する。
【0223】
この場合、アンテナ素子111(i)で受信された信号は、スイッチ112(i),サーキュレータ113(i),スイッチ117(i)を通って受信機118(i)に入力される。そこで、ステップS136では、受信機118(i)の受信出力から選択されたブランチの信号(振幅・位相値)S1(j)を測定する。
上記と同様に、ステップS137では、カウンタjの値に対応するブランチについて、スイッチ112(j)を制御してアンテナ素子111(j)とサーキュレータ113(j)とを接続する。
【0224】
ステップS138では、カウンタjの値に対応するブランチについて、スイッチ117(j)を制御してサーキュレータ113(j)と受信機118の入力とを接続する。
この場合、アンテナ素子111(j)で受信された信号は、スイッチ112(j),サーキュレータ113(j),スイッチ117(j)を通って受信機118(j)に入力される。そこで、ステップS139では、受信機118(j)の受信出力から選択されたブランチの信号(振幅・位相値)S2(j)を測定する。
【0225】
ステップS140では、次式の計算により校正値P2(j)を求める。
P2(j)=S2(j)/S1(j) ・・・(109)
初回の処理では、カウンタiの値が1なので、ステップS140からS141を通ってS142に進み、ステップS143でカウンタiの値を更新してステップS131に戻る。ステップS142では、校正値P2(j)を校正値P3(j)として保存する。
【0226】
2回目以降の処理では、カウンタiの値が1以外なので、ステップS140からS141を通ってS144に進み、ステップS145,S143を通ってステップS131に戻る。この場合もステップS143でカウンタiの値が更新される。
ステップS144では、次式の計算により、校正値P2(j)を修正した結果を校正値P3(j)として保存する。
【0227】
P3(j)=P3(i)・P2(j) ・・・(110)
全てのブランチについて処理が終了すると2番目〜N番目のそれぞれのブランチについて、校正値P3(j)が個別に求められる。この例では1番目のブランチを基準にしているので、当然のことながら1番目のブランチの校正値P3(j)は1である。
【0228】
ところで、図14のステップS136,S139で測定される振幅・位相値S1(j),S2(j)は次式で表される。
S1(j)=T(k)・M2(f2)・L1(k)・M(i,f2)・R(i) ・・・(111)
S2(j)=T(k)・M2(f2)・L2(k)・M(j,f2)・R(j) ・・・(112)
但し、
T(k):送信機121(k)の振幅・位相
M2(f2):付加アンテナ128のf2に関する振幅・位相
L1(k):アンテナ素子111(i)と付加アンテナ128との間の伝搬損失
L2(k):アンテナ素子111(j)と付加アンテナ128との間の伝搬損失
M(i,f2):アンテナ素子111(i)のf2に関する振幅・位相
M(j,f2):アンテナ素子111(j)のf2に関する振幅・位相
R(i):受信機118(i)の振幅・位相
R(j):受信機118(j)の振幅・位相
この形態では、アンテナ素子111(i)と付加アンテナ128との距離は、アンテナ素子111(j)と付加アンテナ128との距離と同一であるため、伝搬損失L1(k),L2(k)は同一である。また、付加アンテナ128及びカウンタkに対応するブランチはカウンタi,jに対応する2つのブランチに共通に利用されているので、それらの成分は共通である。したがって、前記第(109)式を変形すると次式が得られる。
Figure 0003547703
つまり、図18に示すような受信機118(i)の振幅・位相の成分R(i)と、アンテナ素子111(i)のf2に関する振幅・位相の成分M(i,f2)とを合わせたi番目のブランチの受信系全体の振幅・位相値が、他のブランチとの比率としてブランチ毎に求められる。
【0229】
ステップS142,S144の校正値P3(j)について説明する。例えば、校正値P3(3)は次式で表される。
Figure 0003547703
したがって、校正値P3(4)は次式で表される。
【0230】
Figure 0003547703
上記と同様の計算により、校正値P3(j)は次式で表される。
【0231】
Figure 0003547703
つまり、図14の校正制御手順で得られる校正値P3(j)は、j番目のブランチの受信系(受信機118(j)及びアンテナ素子111(j))の振幅・位相値の基準ブランチに対する相対値である。
【0232】
したがって、各ブランチで受信する際に、図14の校正制御手順で得られた校正値P3(j)を各々の受信機118(j)の振幅・位相値に乗算することにより、受信系における振幅・位相値のブランチ間の誤差を補正することができる。
なお、付加アンテナ128については、その近傍に配置されるアンテナ素子111との間でのみ信号の送受信ができればよいため、通信に用いる一般のアンテナのように高い利得を有する必要はない。したがって、付加アンテナ128としては超小型アンテナもしくはプローブを用いるだけで十分である。
【0233】
前記第(103)式及び第(104)式における温度特性による振幅・位相値の変動成分Qは、実際には各ブランチの送信機121における変動成分と、受信機118における変動成分と、校正に用いる周波数変換器116における変動成分とを含んでいる。したがって、時間の経過に伴う温度変化に対して周波数変換器116の特性が変化するが、周波数変換器116については校正処理でいずれのブランチの振幅・位相値を測定する際にも共通に利用しているので、単一の周波数変換器116の振幅・位相値の変動成分Qは求める校正値に影響を及ぼさない。
【0234】
(第5の実施の形態)
本発明の適応アレーアンテナ送受信装置のもう1つの実施の形態について図17を参照して説明する。図17は、この形態の適応アレーアンテナ送受信装置の構成を示すブロック図である。
この形態は第4の実施の形態の変形例である。図17において、図12と対応する要素は同一の符号を付けて示してある。第4の実施の形態と同一の要素については、以下の説明を省略する。
【0235】
この形態の適応アレーアンテナ送受信装置は、指向性制御演算回路に対応する指向性制御演算部125、分岐手段の一例となるカップラ122,カップラ131、送受共用手段の一例となるサーキュレータ113,サーキュレータ114、校正制御手段に対応する校正演算部124を含む。
【0236】
FDD送受信装置において、アンテナや給電線の部分は温度などの急激な環境変動の影響を比較的受けにくいが、送信機及び受信機は、それらに内蔵される電力増幅器やミキサーなどの高周波回路が温度変化の影響を受けやすい。
したがって、アンテナ及び給電線に関する校正は頻繁に行う必要はないが、温度変化の影響を受けやすい送信機及び受信機についてはできるだけ短い時間間隔で校正を行うのが望ましい。
【0237】
そこで、図17に示す適応アレーアンテナ送受信装置においては、第4の実施の形態の校正機能の他に、送信部(送信機121,周波数変換器123)及び受信機118の振幅及び位相の校正値をアンテナから分離して単独でブランチ毎に個別に測定するための機能を付加してある。アンテナ及び給電線を含む校正値については、既に説明した図13,図14と同様の処理手順で算出できる。
【0238】
図17に示すように、この形態では、各々のブランチユニット110に設けたカップラ131により、周波数変換器123が出力する信号の一部分を分岐して取り出すことができる。各ブランチのカップラ131によって取り出された信号は、それぞれスイッチ133に印加される。スイッチ133は、N個のブランチのいずれか1つのカップラ131からの信号を選択する。
【0239】
また、基準ブランチとして定めた1番目のブランチユニット110(1)には、スイッチ132が設けてある。スイッチ132は、サーキュレータ114(1)が出力する信号と、スイッチ133が選択した信号とのいずれか一方を選択して周波数変換器116の入力に印加する。
スイッチ134は、N個のブランチユニット110のいずれか1つのスイッチ117に対して、カップラ122(1)で分岐された信号を出力する。各ブランチのスイッチ117は、サーキュレータ113からの受信信号と、周波数変換器116の出力信号と、スイッチ134の出力とのいずれか1つを選択的に受信機118の入力に印加する。
【0240】
各スイッチ132,133,134,117の選択状態は、校正演算部124の制御によって切り替えられる。校正演算部124は、図13,図14の他に次に説明する校正のための制御を実施する。
送信部に関する校正手順は次の通りである。
(1)基準ブランチとして割り当てられたブランチユニット110(1)のスイッチ132を制御して、スイッチ133の出力を周波数変換器116(1)の入力と接続する。また、スイッチ117(1)を制御して、周波数変換器116(1)の出力を受信機118(1)の入力に接続する。
【0241】
(2)1つのブランチ(i)を選択し、選択したブランチの送信機121から信号を送出する。
(3)選択したブランチの信号をカップラ131(i)で分岐し、信号を送り、この信号をスイッチ133で選択する。
(4)基準ブランチの受信機118(1)の受信出力から選択されたブランチの信号(振幅・位相値)X(i)を測定する。
【0242】
上記(2)〜(4)の処理を繰り返し、全てのブランチについて順番に信号X(i)を測定する。
この場合、送信機121(i)から出力される周波数がf2の信号は、カップラ122(i)を通り、周波数変換器123(i)でf1の周波数に変換され、カップラ131(i)で分岐されてスイッチ133に入力される。
【0243】
更に、この信号はスイッチ133及びスイッチ132を通り、周波数変換器116(1)でf2の周波数に変換され、スイッチ117(1)を通って受信機118(1)に入力される。したがって、各ブランチの送信部(送信機121,周波数変換器123)から出力された信号を基準ブランチの受信機118(1)で測定することができる。
ここで測定される各ブランチの信号X(i)は次式で表される。
【0244】
X(i)=T(i)・Q(1)・R(1) … (117)
但し、
T(i):各ブランチのアンテナを含まない送信部の振幅・位相
Q(1):基準ブランチの周波数変換器116(1)の振幅・位相
R(1):基準ブランチの受信機118(1)の振幅・位相
したがって、次式により送信部の校正値A(i)が得られる。
【0245】
Figure 0003547703
また、受信部に関する校正手順は次の通りである。
【0246】
(1)基準ブランチ送信機121(1)から信号を送出し、カップラ122(1)でこの信号を分岐し、分岐した信号をスイッチ134に送る。
(2)1つのブランチ(i)を選択し、選択したブランチに応じてスイッチ134を切り替える。
(3)選択したブランチ(i)のスイッチ117(i)を制御して、スイッチ134の出力を受信機118(i)の入力に接続する。
【0247】
(4)選択したブランチの受信機118(i)の受信出力から選択されたブランチの信号(振幅・位相値)Y(i)を測定する。
上記(2)〜(4)の処理を繰り返し、全てのブランチについて順番に信号Y(i)を測定する。
ここで測定される各ブランチの信号Y(i)は次式で表される。
【0248】
Y(i)=T(1)・R(i) ・・・(119)
但し、
T(1):基準ブランチの送信機121(1)の振幅・位相
R(i):各ブランチの受信機118(i)の振幅・位相
したがって、次式により受信機118(i)の校正値B(i)が得られる。
【0249】
Figure 0003547703
したがって、この形態ではアンテナや給電線を含む送受信部全体の振幅・位相の校正値だけでなく、温度変化の影響を受けやすい送信機だけに関する校正値及び受信機だけに関する校正値をブランチ毎に得ることができる。
【0250】
(第6の実施の形態)
本発明の適応アレーアンテナ送受信装置のもう1つの実施の形態について、図19〜図21を参照して説明する。
図19はこの形態の適応アレーアンテナ送受信装置の構成を示すブロック図である。図20はこの形態の送信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
図21はこの形態の受信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
この形態は第4の実施の形態の変形例である。図19において、図12と対応する要素は同一の符号を付けて示してある。
【0251】
この形態の適応アレーアンテナ送受信装置は、送受共用手段の一例となるサーキュレータ113,サーキュレータ143、指向性制御演算回路に対応する指向性制御演算部125、分岐手段の一例となるカップラ122、及び、校正制御手段に対応する校正演算部124を含む。
【0252】
図19において、アレーアンテナは並べて配置されたN(任意の整数)個のアンテナ素子111で構成されている。この形態では、各要素の符号に付加した括弧内の数値によってそれが配置されたアレーアンテナのブランチの区分を表してある。また、図19中の各矢印は信号の方向を表わしている。なお、以下の説明において、各要素のブランチを区別する必要がない場合には、各符号の括弧及び括弧内の数値の表記は省略する。
【0253】
図19の例では、アンテナ素子111毎にそれを含むブランチユニット110を構成してある。各ブランチユニット110は、アンテナ素子111,サーキュレータ113,送信部115及び受信機118を備えている。また、カップラ122及びスイッチ117は1つのブランチユニット110(1)だけに設けてある。それ以外のブランチユニット110は互いに同一の構成になっている。
【0254】
ブランチユニット110(1)のカップラ122は、送信部115が出力する信号の一部分を分岐して取り出すために設けてある。ブランチユニット110(1)のスイッチ117は、受信機118(1)に入力する信号を切り替えるために設けてある。スイッチ117の選択状態は校正演算部124により電気的に制御される。サーキュレータ113は、アンテナ素子111を送信と受信とで共用するために設けてある。
【0255】
通信のために送信を行う場合、各送信部115から送出される信号は、サーキュレータ113を通りアンテナ素子111から無線信号として放射される。また、通信のために受信を行う場合には、アンテナ素子111で受信された信号がサーキュレータ113を通って、受信機118に入力される。
この例では、送信部115が出力する信号の周波数すなわち通信に利用するアレーアンテナの送信周波数はf1であり、通信に利用するアレーアンテナ及び受信機118の受信周波数はf2であり、送信周波数f1と受信周波数f2とは異なっている。
【0256】
なお、図12の場合と同様に、送信部115の内部には受信機118の受信周波数f2と同じ周波数の信号を送出する送信機(121)及び周波数変換器(123)を設けてもよい。
図19の適応アレーアンテナ送受信装置には、N個のブランチユニット110の他に、校正演算部124,指向性制御演算部125,信号発生部126,周波数変換器141,142,サーキュレータ143及び付加アンテナ128が設けてある。
【0257】
サーキュレータ143は周波数f1の信号を付加アンテナ128から入力し、周波数f2の信号を付加アンテナ128に出力する。指向性制御演算部125は、アレーアンテナの指向パターンを適応制御するために、N個のブランチの信号を合成すると共に、合成の際の各ブランチの重み付けを制御する。
校正演算部124は、各ブランチユニット110の送信系(送信部115及びアンテナ素子111)及び受信系(受信機118及びアンテナ素子111)の振幅・位相誤差を個別に求めて校正を行う。実際には、校正演算部124は図20に示す制御を実施して各ブランチの送信系の校正に利用する値を求め、図21に示す制御を実施して各ブランチの受信系の校正に利用する値を求める。
【0258】
送信部115が送出する信号(周波数はf1)の一部分は、カップラ122で分岐され、周波数変換器141の入力に印加される。周波数変換器141は、信号発生部126が出力する信号(周波数は|f1−f2|)を利用して周波数の変換を実施する。
すなわち、周波数変換器141はカップラ122から入力される信号と信号発生部126から入力される信号とを混合し周波数の変換を行う。カップラ122から入力される信号の周波数がf1であり、信号発生部126から入力される信号の周波数が|f1−f2|であるため、周波数がf2の信号が周波数変換器141から出力される。周波数変換器141が出力する信号は、サーキュレータ143を通り、付加アンテナ128から電波として放射される。
【0259】
また、周波数がf1の信号を付加アンテナ128が受信した場合、その信号はサーキュレータ143を介して周波数変換器142に入力される。周波数変換器142は信号発生部126が出力する信号(周波数は|f1−f2|)を利用して周波数の変換を実施する。
すなわち、付加アンテナ128で受信された周波数がf1の信号は、周波数がf2に変換されて周波数変換器142から出力される。スイッチ117を制御することにより、周波数変換器142が出力する信号を受信機118(1)に入力することができる。
【0260】
この例では、送信部115の出力する信号の周波数がf1であり、受信機118の受信周波数がf2であるため、送信部115が出力する信号をそのまま受信機118で受信することはできない。しかし、周波数変換器141,142を用いて周波数の変換を行うことにより、送信部115から送出された信号を受信機118で受信することができる。
【0261】
第4の実施の形態と同様に、信号発生部126が出力する周波数が(|f1−f2|)の信号については、受信機のローカル信号と送信機のローカル信号とを用いて生成することができる。すなわち、信号発生部126は例えば図10に示す回路、又は図11に示す回路で実現できる。
なお、図19の回路において、送信部115の出力からカップラ122を介して信号を取り出すのは、受信側の回路の許容入力レベルに比べて送信部115の出力が大きいためである。カップラ122を用いることにより、比較的レベルの小さい信号を送信部115の出力から取り出すことができる。
【0262】
付加アンテナ128を設置する位置については、アレーアンテナを構成するN個のアンテナ素子111の配置に応じて決定する必要がある。図15(a)に示すように、1つの直線上にアンテナ素子111が等間隔で並んでいる場合には、校正対象の2つのブランチの各アンテナ素子111と付加アンテナ128との距離dが等しくなるように、例えば2つのアンテナ素子111の中間位置に付加アンテナ128を配置すればよい。
【0263】
なお、図15(a)に示すように複数の付加アンテナ128を用いる場合には図15(b)に示すようにスイッチ149を用いて複数の付加アンテナ128の1つを選択的にサーキュレータに接続すればよい。
また、図16に示すように1つの円周上に等間隔でアンテナ素子111が並べて配置してある場合には、円周の中心位置に付加アンテナ128を配置すればよい。この場合、アンテナ素子111と付加アンテナ128との距離dはいずれのブランチについても等しくなる。
【0264】
このように付加アンテナ128を配置すると、各アンテナ素子111と付加アンテナ128との間の伝搬損失が等しくなり、それの影響を受けない校正値を求めることができる。
【0265】
次に、図20に示す校正制御手順について説明する。なお、この例では1番目のブランチユニット110(1)を基準ブランチに定めてあるが、他のブランチを基準にすることもできる。つまり、いずれか1つのブランチユニット110にカップラ122及びスイッチ117を設ければよい。また、図20の校正制御手順を開始するときには、全ての送信部115(1)〜115(N)が送信を停止していることを想定している。
【0266】
ステップS150では、カウンタiの値を1に初期化する。カウンタiの値は、校正の対象となる1つのブランチに対応している。ステップS152では、スイッチ117を制御して周波数変換器142の出力を基準ブランチの受信機118(1)の入力に接続する。
これ以降のステップS153〜S160の処理は、カウンタiの値に応じて繰り返し実行される。
【0267】
ステップS153ではi番目の送信部115(i)から信号(周波数はf1)を送出する。この場合、送信部115(i)が出力する信号は、サーキュレータ113(i)を通ってアンテナ素子111(i)から無線信号として送信される。
この無線信号は、付加アンテナ128によって受信される。付加アンテナ128が受信した信号は、サーキュレータ143を通って周波数変換器142に入力され、周波数がf2の信号に変換され、スイッチ117を通って受信機118(1)に入力される。
【0268】
そこで、ステップS154では受信機118(1)が受信した信号K(i)を測定する。測定が終了したら、次のステップS155で送信部115(i)の送信を停止する。
ステップS153〜S160の処理を繰り返すことにより、N個のブランチのそれぞれに属する送信部115から出力された信号が、各ブランチのアンテナ(111,128)を経由する経路を通ってそれぞれ受信機118(1)で受信され、信号K(1)〜K(N)が測定される。
【0269】
初回の処理では、カウンタiが1なのでステップS156からS158に進む。なお、初回に得られる信号K(1)は基準ブランチの信号として保持される。また、2回目以降の処理ではカウンタiが1でないためステップS156からS159に進む。ステップS159では、次式の計算により校正値H(i)を求める。
H(i)=K(i)/K(1) ・・・(121)
全てのブランチについて処理が終了すると2番目〜N番目のそれぞれのブランチについて、校正値H(i)が相対値として個別に求められる。この例では1番目のブランチを基準にしているので、当然のことながら1番目のブランチの校正値H(i)は1である。
【0270】
ところで、図20のステップS154で測定される振幅・位相値K(i)は次式で表される。
K(i)=T(i)・M(i,f1)・L(i)・M(a,f1)・Q2・R(1) ・・・(122)
但し、
T(i):送信部115(i)で生じる振幅・位相
M(i,f1):アンテナ素子111(i)のf1に関する振幅・位相
M(a,f1):付加アンテナ128のf1に関する振幅・位相
L(i):アンテナ素子111(i)と付加アンテナ128との間の伝搬損失
Q2:周波数変換器142の振幅・位相
R(1):受信機118(1)の振幅・位相
この形態では、付加アンテナ128,周波数変換器142及び受信機118(1)はカウンタiに対応するいずれのブランチの測定でも共通に利用されているので、それらの成分は共通である。したがって、前記第(121)式を変形すると次式が得られる。
【0271】
Figure 0003547703
また、この形態ではアンテナ素子111(i)と付加アンテナ128との距離dが校正対象の全てのブランチについて同一である場合を想定しているので、伝搬損失L(i)は全てのブランチについて同一である。したがって、前記第(123)式を変形すると次式が得られる。
【0272】
Figure 0003547703
つまり、図18に示すような送信部115(i)のf1に関する振幅・位相の成分T(i)と、アンテナ素子111(i)のf1に関する振幅・位相の成分M(i,f1)とを合わせたi番目のブランチの送信系全体の振幅・位相値が、他のブランチとの比率としてブランチ毎に求められる。
【0273】
なお、測定される振幅・位相値は温度特性などの時間変化の影響によって変動するが、その成分Q2は上記第(124)式で相殺されているので、温度特性の影響は校正値H(i)には現れない。
このように、単一の付加アンテナ128を用いるだけで、基準ブランチに対する相対値として各ブランチの校正値H(i)を求めることができる。各ブランチで送信する際には、図20の校正制御手順で得られた校正値H(i)を各々の送信部115(i)の振幅・位相値に乗算することにより、送信部115における振幅・位相値のブランチ間の誤差を補正することができる。
【0274】
次に、図21に示す校正制御手順について説明する。なお、この例ではブランチユニット110(1)を基準ブランチに定めてあるが、他のブランチを基準にすることもできる。
ステップS170では、カウンタiの値を1に初期化する。カウンタiの値は、校正の対象となる1フのブランチに対応している。次のステップS171では、スイッチ117を制御して受信機118(1)の入力をサーキュレータ113(1)と接続する。
【0275】
ステップS172では、基準ブランチの送信部115(1)から信号を送信する。この場合、送信部115(1)から出力される信号は、カップラ122で分岐され、周波数変換器141で周波数がf2の信号に変換された後、サーキュレータ143を通り付加アンテナ128から無線信号として送信される。
付加アンテナ128から送信された無線信号は、各ブランチのアンテナ素子111で受信することができる。また、付加アンテナ128から送信される信号の周波数はf2に変換されているため、アンテナ素子111が受信した信号を直接受信機118に入力して検出することができる。
【0276】
ステップS173〜S178の処理は、カウンタiの値に応じて繰り返し実行される。これらの処理を実行するたびに、ステップS176でカウンタiの値が更新される。
ステップS173では、i番目のブランチの受信機118(i)の受信出力からそのブランチの信号(振幅・位相値)S(i)を測定する。
【0277】
ステップS173〜S178の処理を繰り返すことにより、基準ブランチの送信部115(1)から出力された信号が、各ブランチのアンテナ(111,128)を経由する経路を通って各ブランチの受信機118(i)で受信され、信号S(1)〜S(N)が測定される。
初回の処理では、カウンタiが1なのでステップS174からS176に進む。初回に得られる信号S(1)は基準ブランチの信号として保持される。
【0278】
また、2回目以降の処理ではカウンタiが1でないためステップS174からS177に進む。ステップS177では、次式の計算により校正値P(i)を求める。
P(i)=S(i)/S(1) ・・・ (125)
全てのブランチについて処理が終了すると2番目〜N番目のそれぞれのブランチについて、校正値P(i)が個別に求められる。この例では1番目のブランチを基準にしているので、当然のことながら1番目のブランチの校正値P(1)は1である。
【0279】
ところで、図21のステップS173で測定される振幅・位相値S(i)は次式で表される。
S(i)=T(1)・Q 1 ・M(a,f2)・L(i)・M(i,f2)・R(i) ・・・(126)
但し、
T(1):送信部115(1)の振幅・位相
Q1:周波数変換器141に関する振幅・位相
M(a,f2):付加アンテナ128のf2に関する振幅・位相
L(i):アンテナ素子111(i)と付加アンテナ128との間の伝搬損失
M(i,f2):アンテナ素子111(i)のf2に関する振幅・位相
R(i):受信機118(i)の振幅・位相
この形態では、全てのブランチについてアンテナ素子111(i)と付加アンテナ128との距離が同一である場合を想定しているので、伝搬損失L1(i)は全てのブランチについて同一になる。
【0280】
また、周波数変換器141及び付加アンテナ128は全てのブランチに共通に利用されているので、それらの成分は共通である。したがって、前記第(125)式を変形すると次式が得られる。
Figure 0003547703
つまり、図18に示すような受信機118(i)の振幅・位相の成分R(i)と、アンテナ素子111(i)のf2に関する振幅・位相の成分M(i,f2)とを合わせたi番目のブランチの受信系全体の振幅・位相値が、基準ブランチとの比率としてブランチ毎に求められる。
【0281】
したがって、各ブランチで受信する際に、図21の校正制御手順で得られた校正値P(i)を各々の受信機118(i)の振幅・位相値に乗算することにより、受信系における振幅・位相値のブランチ間の誤差を補正することができる。
なお、付加アンテナ128についでは、その近傍に配置されるアンテナ素子111との間でのみ信号の送受信ができればよいため、通信に用いる一般のアンテナのように高い利得を有する必要はない。したがって、付加アンテナ128としては超小型アンテナもしくはプローブを用いるだけで十分である。
【0282】
前記第(126)式における温度特性による振幅・位相値の変動成分Q1は、実際には各ブランチの送信部115における変動成分と、受信機118における変動成分と、校正に用いる周波数変換器141における変動成分とを含んでいる。
時間の経過に伴う温度変化に対して周波数変換器141の特性が変化するが、周波数変換器141については校正処理でいずれのブランチの振幅・位相値を測定する際にも共通に利用しているので、単一の周波数変換器141の振幅・位相値の変動成分Q1は求める校正値に影響を及ぼさない。
【0283】
(第7の実施の形態)
本発明の適応アレーアンテナ送受信装置のもう1つの実施の形態について、図22〜図24を参照して説明する。
図22はこの形態の適応アレーアンテナ送受信装置の構成を示すブロック図である。図23はこの形態の送信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
図24はこの形態の受信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
【0284】
この形態は第6の実施の形態の変形例である。図22〜図24において、図19〜図21と対応する要素は同一の符号を付けて示してある。第6の実施の形態と同一の部分については、以下の説明を省略する。
なお、この形態の適応アレーアンテナ送受信装置は、分岐手段の一例となるカップラ122を含む。
【0285】
一般に、適応アレーアンテナ送受信装置等においてはアンテナや給電線については温度変化などの急激な環境変動の影響を比較的受けにくい。しかしながら、送信機,受信機,電力増幅器,周波数変換器のような高周波回路については、比較的短い時間周期の間であっても温度変化の影響によって特性が変化し易い。
したがって、アンテナや給電線に関する校正については比較的長い周期で行えば十分であるが、送受信機などの高周波回路については比較的短い周期で校正する必要がある。
【0286】
そこで、この形態においては、アンテナとは別に送受信機単独でも校正が実施できるように構成してある。なお、アンテナを含む校正については、第6の実施の形態と同様に処理すれば実現できるので、その説明は省略する。
【0287】
図22を参照すると、この形態ではN個のブランチユニット110のそれぞれにカップラ122及びスイッチ117が設けてある。また、スイッチ151,152,153,154が追加されている。スイッチ117,151,152,153,154は、いずれも電気的に制御可能に構成されており、校正演算部124の制御により状態が変化するように接続してある。
【0288】
スイッチ152は、N個のカップラ122(1)〜122(N)のいずれか1つを選択的に周波数変換器141の入力に接続する。スイッチ153は、周波数変換器141が出力する信号をサーキュレータ143及びスイッチ154のいずれか一方に選択的に出力する。
スイッチ154は、周波数変換器141が出力する信号と周波数変換器142が出力する信号とのいずれか一方を選択的にスイッチ151に出力する。スイッチ151は、スイッチ154を介して入力される信号をN個のブランチのいずれか1つのスイッチ117に選択的に出力する。
【0289】
次に、図23に示す校正制御手順について説明する。なお、この例では1番目のブランチユニット110(1)を基準ブランチに定めてあるが、他のブランチを基準にすることもできる。また、図23の校正制御手順を開始するときには全ての送信部115(1)〜115(N)が送信を停止していることを想定している。
ステップS150では、カウンタiの値を1に初期化する。カウンタiの値は、校正の対象となる1つのブランチに対応している。
【0290】
ステップS152Bでは、基準ブランチのスイッチ117(1)を制御してスイッチ151の出力を基準ブランチの受信機118(1)の入力と接続する。また、スイッチ153,154を制御して周波数変換器141の出力をスイッチ151と接続する。
これ以降のステップS153〜S160の処理は、カウンタiの値に応じて繰り返し実行される。
【0291】
ステップS153ではi番目の送信部115(i)から信号(周波数はf1)を送出する。
追加されたステップS161では、まずi番目のブランチの力ップラ122(i)の出力をスイッチ152で選択し、スイッチ151で基準ブランチのスイッチ117(1)を選択する。
【0292】
この場合、送信部15(i)が出力する信号は、カップラ122(i)で分岐され、スイッチ152を通って周波数変換器141に入力され周波数がf2の信号に変換される。また、周波数変換器141が出力する信号はスイッチ153を通り、スイッチ154を通り、スイッチ151を通り、基準ブランチのスイッチ117(1)を通って受信機118(1)の入力に印加される。
【0293】
そこで、ステップS154Bでは受信機118(1)が受信した信号X(i)を測定する。測定が終了したら、次のステップS155で送信部115(i)の送信を停止する。
ステップS153〜S160の処理を繰り返すことにより、N個のブランチのそれぞれに属する送信部115から出力された信号が、アンテナ(111,128)を経由しない経路を通ってそれぞれ受信機118(1)で受信され、信号X(1)〜X(N)が測定される。
【0294】
初回の処理では、カウンタiが1なのでステップS156からS158に進む。初回に得られた信号X(1)は基準ブランチの信号として保持される。
また、2回目以降の処理ではカウンタi、が1でないためステップS156からS159Bに進む。ステップS159Bでは、次式の計算により校正値H2(i)を求める。
【0295】
H2(i)=X(i)/X(1) ・・・(128)
全てのブランチについて処理が終了すると2番目〜N番目のそれぞれのブランチについて、校正値H2(i)が相対値として個別に求められる。この例では1番目のブランチを基準にしているので、当然のことながら1番目のブランチの校正値H2(i)は1である。
【0296】
ところで、図22のステップS154Bで測定される振幅・位相値X(i)は次式で表される。
X(i)=T(i)・Q1・R(1) ・・・(129)
但し、
T(i):送信部115(i)で生じる振幅・位相
Q1 :周波数変換器141の振幅・位相
R(1):受信機118(1)の振幅・位相
この形態では、周波数変換器141及び受信機118(1)はカウンタiに対応するいずれのブランチの測定でも共通に利用されているので、それらの成分は共通である。したがって、前記第(129)式を変形すると次式が得られる。
【0297】
Figure 0003547703
つまり、i番目のブランチの送信部115(i)のf1に関する振幅・位相の成分T(i)の振幅・位相値が、基準ブランチ(1)との比率としてブランチ毎に求められる。
【0298】
なお、測定される振幅・位相値は温度特性などの時間変化の影響によって変動するが、その成分Q1は上記第(130)式で相殺されているので、温度特性の影響は校正値H2(i)には現れない。
このように、アンテナ素子111及び付加アンテナ128を用いなくても、基準ブランチに対する相対値として各ブランチの校正値H2(i)を求めることができる。勿論、第6の実施の形態で説明した処理により、アンテナ素子111を含む全体の校正値も求める必要があるが、アンテナ素子111を含む全体の校正は比較的長い周期で実施すればよい。
【0299】
各ブランチで送信する際には、図23の校正制御手順で得られた校正値H2(i)を各々の送信部115((i)の振幅・位相値に乗算することにより、送信部115における振幅・位相値のブランチ間の誤差を補正することができる。
次に、図24に示す校正制御手順について説明する。なお、この例ではブランチユニット110(1)を基準ブランチに定めてあるが、他のブランチを基準にすることもできる。
【0300】
ステップS170では、カウンタiの値を1に初期化する。カウンタiの値は、
校正の対象となる1つのブランチに対応している。次のステップS171Bでは、基準ブランチのカップラ122(1)の出力をスイッチ152で選択する。
ステップS172では、基準ブランチの送信部115(1)から信号を送信する。
この場合、送信部115(1)から出力される信号は、カップラ122(1)で分岐され、スイッチ152を通って周波数変換器141に入力され、周波数変換器141で周波数がf2の信号に変換される。
【0301】
追加されたステップS181では、スイッチ153,154を制御して周波数変換器141の出力をスイッチ151と接続する。また、ステップS182ではスイッチ151を制御してi番目のスイッチ117(i)を選択する。ステップS183では、スイッチ117(i)を制御してスイッチ151の出力を受信機118(i)の入力と接続する。
【0302】
したがって、基準ブランチの送信部115(1)から出力された信号は、カップラ122(1)及びスイッチ152を通って周波数変換器141に入力され、周波数変換器141から出力される信号がスイッチ153,154,151,117及び(i)を通って受信機118(i)に入力される。
つまり、付加アンテナ128及びアンテナ素子111を経由することなしに、送信部115(1)からの信号を各受信機118で受信できる。また、周波数変換器141で信号の周波数がf2に変換されているため、受信機118は入力される信号をそのまま検出することができる。
【0303】
ステップS173Bでは、i番目のブランチの受信機118(i)の受信出力からそのブランチの信号(振幅・位相値)Y(i)を測定する。
ステップS173〜S178の処理を繰り返すことにより、基準ブランチの送信部115(1)から出力された信号が、各ブランチのアンテナ(111,128)を経由しない経路を通って各ブランチの受信機118(i)で受信され、信号Y(1)〜Y(N)が測定される。
【0304】
初回の処理では、カウンタiが1なのでステップS174からS176に進む。初回の処理で得られる信号Y(1)は基準ブランチの信号として保持される。また、2回目以降の処理ではカウンタiが1でないためステップS174からS177Bに進む。ステップS177Bでは、次式の計算により校正値P2(i)を求める。
【0305】
P2(i)=Y(i)/Y(1) ・・・ (131)
全てのブランチについて処理が終了すると2番目〜N番目のそれぞれのブランチについて、校正値P2(i)が個別に求められる。この例では1番目のブランチを基準にしているので、当然のことながら1番目のブランチの校正値P2(1)は1である。
【0306】
ところで、図24のステップS173Bで測定される振幅・位相値Y(i)は次式で表される。
Y(i)=T(1)・Q1・R(i) ・・・(132)
但し、
T(1):送信部115(1)の振幅・位相
Q1:周波数変換器141に関する振幅・位相
R(i):受信機118(i)の振幅・位相
この形態では、送信部115(1)及び周波数変換器141は全てのブランチに共通に利用されているので、それらの成分は共通である。すなわち、前記第(131)式を変形すると次式が得られる。
【0307】
Figure 0003547703
つまり、i番目のブランチの受信機118(i)の振幅・位相の成分R(i)が、基準ブランチとの比率としてブランチ毎に求められる。
【0308】
したがって、各ブランチで受信する際に、図24の校正制御手順で得られた校正値P2(i)を各々の受信機118(i)の振幅・位相値に乗算することにより、アンテナ及び給電線以外の受信系における振幅・位相値のブランチ間の誤差を補正することができる。
【0309】
(第8の実施の形態)
本発明の適応アレーアンテナ送受信装置のもう1つの実施の形態を、図25に示す。この形態は第6の実施の形態の変形例である。図25において図19と対応する要素は同一の符号を付けて示してある。変更された部分について、以下に説明する。
図25を参照すると、周波数変換器141の入力にはスイッチ145が接続され、周波数変換器141の出力にはスイッチ146が接続されている。スイッチ145,146は電気的に切り替え可能に構成されており、校正演算部124の制御により状態が切り替わる。
【0310】
スイッチ145は、サーキュレータ143から入力される信号(周波数はf1)とカップラ122から入力される信号(周波数はf1)とのいずれか一方を選択的に周波数変換器141に入力する。また、スイッチ146は、周波数変換器141が出力する信号(周波数はf2)をサーキュレータ143の入力及びスイッチ117の入力のいずれか一方に選択的に入力する。
【0311】
スイッチ145,146を切り替えることにより、周波数変換器141は送信用の信号の周波数変換にも利用できるし、受信した信号の周波数変換にも利用できる。このため、周波数変換器142は不要である。
この形態では、送信部115(1)が送出した信号を付加アンテナ128で送信する場合には、スイッチ145を制御してカップラ122の出力を周波数変換器141の入力と接続し、スイッチ146を制御して周波数変換器141の出力とサーキュレータ143の入力とを接続する。
【0312】
また、付加アンテナ128からの信号を受信する場合には、スイッチ145を制御してサーキュレータ143の出力を周波数変換器141の入力に接続し、スイッチ146を制御して周波数変換器141の出力をスイッチ117の入力に接続する。それ以外の制御については第6の実施の形態と同一である。
【0313】
(第9の実施の形態)
本発明の適応アレーアンテナ送受信装置のもう1つの実施の形態を、図26に示す。この形態は第7の実施の形態の変形例である。図26において図22と対応する要素は同一の符号を付けて示してある。変更された部分について、以下に説明する。
【0314】
図26を参照すると、周波数変換器141の入力にはスイッチ145が接続され、周波数変換器141の出力にはスイッチ146が接続されている。スイッチ145,146は電気的に切り替え可能に構成されており、校正演算部124の制御により状態が切り替わる。
スイッチ145は、サーキュレータ143から入力される信号(周波数はf1)とスイッチ162から入力される信号(周波数はf1)とのいずれか一方を選択的に周波数変換器141に入力する。また、スイッチ146は、周波数変換器141が出力する信号(周波数はf2)をサーキュレータ143の入力及びスイッチ151の入力のいずれか一方に選択的に入力する。
【0315】
スイッチ145,146を切り替えることにより、周波数変換器141は送信用の信号の周波数変換にも利用できるし、受信した信号の周波数変換にも利用できる。このため、周波数変換器142は不要である。
この形態では、送信部115(1)が送出した信号を周波数変換する場合には、スイッチ145を制御してスイッチ152の出力を周波数変換器141の入力と接続し、付加アンテナ128からの信号を受信する場合には、スイッチ145を制御してサーキュレータ143の出力を周波数変換器141の入力に接続する。
【0316】
また、アンテナを含む校正を実施する場合にはスイッチ146を制御して周波数変換器141の出力とサーキュレータ143の入力とを接続し、アンテナを含まない回路だけで校正を実施する場合にはスイッチ146を制御して周波数変換器141の出力をスイッチ151の入力に接続する。それ以外の制御については第7の実施の形態と同一である。
【0317】
(第10の実施の形態)
本発明の適応アレーアンテナ送受信装置の1つの実施の形態について、図27〜図30を参照して説明する。
図27はこの形態の適応アレーアンテナ送受信装置の構成を示すブロック図である。図28は、この形態の適応アレーアンテナ送受信装置に備えられる校正/受信信号分離部201の構成を示す。図29はこの形態の送信機の校正制御手順を示すフローチャートである。図30はこの形態の受信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
この形態は第1の実施の形態の変形例であり、図27,図29,図30において第1の実施の形態と対応する要素及び処理は、同一の符号及びステップ番号を付けて示してある。
【0318】
本実施の形態に示す適応アレーアンテナ送受信装置は、通信中においても各ブランチの校正を可能とする構成とした点において、第1の実施の形態に示す適応アレーアンテナ送受信装置と相違する。
【0319】
図1と同様に、図27のアレーアンテナは並べて配置されたN(任意の整数)個のアンテナ素子11で構成されている。この形態では、各要素の符号に付加した括弧内の数値によってそれが配置されたアレーアンテナのブランチの区分を表してある。また、図27中の各矢印は信号の方向を表わしている。なお、以下の説明において、各要素のブランチを区別する必要がない場合には、各符号の括弧及び括弧内の数値の表記は省略する。
【0320】
図27の例では、アンテナ素子11毎にそれを含むブランチユニット40を構成してある。各ブランチユニット40は、アンテナ素子11,サーキュレータ12,送信機13,受信機14,カップラ15及び合成器216で構成されている。
【0321】
サーキュレータ12は、アンテナ素子11を送信と受信とで共用するために設けてある。カップラ15は、送信機13が出力する信号の一部分を分岐して取り出すために設けてある。
送信を行う場合、各送信機13から送出される信号は、カップラ15及びサーキュレータ12を通り、アンテナ素子11から無線信号として放射される。受信を行う場合には、アンテナ素子11で受信された信号がサーキュレータ12及び合成器216を通って、受信機14に入力される。
この例では、送信機13が出力する信号の周波数すなわち送信周波数はf1であり、受信機14の受信周波数はf2であり、送信周波数f1と受信周波数f2とは異なっている。
【0322】
図27の適応アレーアンテナ送受信装置には、N個のブランチユニット40の他に、スイッチ21,周波数変換器22,スイッチ23,信号発生部24,校正/受信信号分離部201、校正演算部25及び指向性制御演算部26が設けてある。
以下では、図1に示す適応アレーアンテナ送受信装置との相違点を中心に説明する。
【0323】
図27の適応アレーアンテナ送受信装置と図1に示す適応アレーアンテナ送受信装置との構成における相違点は、各ブランチユニット40内にスイッチ16の代わりに合成器216が設けられている点、校正/受信信号分離部201がさらに適応アレーアンテナ送受信装置に設けられている点である。
ここで、合成器216は、アンテナ素子11からの受信信号と、スイッチ23からの信号を合成し、合成された信号を受信機14に出力する。
校正/受信信号分離部201は、受信機14の出力信号に対し、アンテナ素子11からの受信信号とスイッチ23からの信号とを分離して出力する。
【0324】
また、校正演算部25において、図27の適応アレーアンテナ送受信装置と図1に示す校正演算部25と接続等において一部相違する。すなわち、本実施の形態の校正演算部25は、スイッチ21,23の接続状態を制御して、校正/受信信号分離部201で分離されたスイッチ23からの信号を入力し、アレーアンテナの各ブランチの校正値を求めている。
【0325】
次に、校正/受信信号分離部201について説明する。
通信システムでは、基地局側と端末側で同期や位置情報などを確立するために、お互いに既知の信号を用いている。例えば、CDMA(Code division MultiPle Access)システムにおいては、各基地局と端末にそれぞれ異なった符号を割り当てることで、基地局と端末の両方で他の端末などのシステムと同一周波数で通信が行うことが可能となる。校正/受信信号分離部201も、この原理に基づき、基地局からの送信信号系列と端末からの信号があらかじめ既知であるとし、校正信号のみを抽出するための相関器を設けることで校正信号を抽出する。
【0326】
上記の処理を行う校正/受信信号分離部201の構成を図28に示す。校正/受信信号分離部201は、分配器202と校正信号相関器203と、1以上の受信信号相関器204とにより構成される。受信信号相関器204の数は基地局が収容する端末数に応じて決定される。
分配器202は、校正演算部25より指定された受信器14からの信号を分岐し、校正信号相関器203及び受信信号相関器204に入力する。
校正信号相関器203は、校正演算部25より校正用の送信信号系列(例えば、CDMAにおけるコード)を予め入力し、分配器202からの信号との相関を求めることにより、スイッチ23からの信号を分離し、出力する。なお、この出力信号は、送信機13、周波数変換機22、受信器14の特性を含む信号となる。また、この出力信号は、校正演算部25に対して出力される。
【0327】
受信信号相関器204は、基地局からの送信信号系列(例えば、CDMAにおけるコード)を予めセットし、分配器202からの信号との相関を求めることにより、アンテナ素子11からの受信信号を分離し出力する。なお、この出力信号は、受信器14の特性を含む信号となる。また、この出力信号は、指向性制御演算部26へも出力される。
【0328】
次に、図29に示す校正制御手順について説明する。なお、この例ではブランチユニット10(1)を基準ブランチに定めてあるが、他のブランチを基準にすることもできる。なお、校正/受信信号分離部201には、校正演算部25より校正用の送信信号系列が予めセットされているものとする。
ステップS10Dでは、スイッチ23を制御して周波数変換器22の出力を基準ブランチの合成器216(1)と接続する。
次のステップS12では、カウンタiの値を1に初期化する。また、ステップS13〜S19の処理はカウンタiの値に応じて繰り返し実行される。
ステップS13では、カウンタの値iに対応するブランチのカップラ15(i)の出力を選択するようにスイッチ21を切り替える。
ステップS14では、カウンタの値iに対応するブランチの送信機13(i)から信号を送信する。なお、送信機13(i)から信号を送信するのは測定の間だけで良い。
【0329】
ここで、送信機13(i)から校正用の信号が送信された際に、受信機14(1)より出力される信号K(i)は以下の式で与えられる。
K(i)=Rc(t)・R(1)+Cc(t)・T(i)・Q・R(1)・・・(201)
但し、
T(i):送信機13(i)に生じる振幅・位相値
Q:温度特性による振幅・位相変動成分(周波数変換器)
R(1):受信機14(1)に生じる振幅・位相値
Rc(t):時刻tにおける受信信号
Cc(t):時刻tにおける送信信号
【0330】
この場合、図28に示すように校正信号相関器203は以下の式に示す信号K’(i)を出力する。
K’(i)=Cc(t)・T(i)・Q・R(1)・・・(202)
【0331】
よって、ステップS15Dでは、基準ブランチの受信機14(1)が受信したi番目の信号K’(i)を校正/受信信号分離部201内の校正信号相関器203の出力信号から測定する。この信号K’(i)は、受信した信号の振幅及び位相の情報を含む値である。初回はカウンタiの値が1なので、ステップS15からS16を通ってステップS17に進み、カウンタiの値をカウントアップしてステップS13に戻る。
【0332】
2回目以降は、カウンタiの値が1以外なので、ステップS15からS16を通ってステップS18Dに進む。ステップS18Dでは、次式によりi番目のブランチの校正値H(i)を求める。
H(i)=K’(i)/K’(1) ・・・ (203)
N個の全てのブランチについて処理が終了していない場合には、ステップS18からS19を通ってステップS17に進み、カウンタiの値をカウントアップしてステップS13に戻る。
従って、図29の校正制御手順を実行すると、2番目〜N番目のそれぞれのブランチについて、校正値H(i)が個別に求められる。この例では1番目のブランチを基準にしているので、当然のことながら1番目のブランチの校正値H(1)は1である。
【0333】
ここで、信号K’(i)は(202)式で表されることから、(203)式を変形して次式が得られる。
Figure 0003547703
【0334】
つまり、図29の校正制御手順で得られる校正値H(i)は、送信機13(i)の振幅・位相値の基準ブランチに対する相対値である。また、測定される振幅・位相値は温度特性などの時間変化の影響によって変動するが、その成分Qは上記第(204)式で相殺されているので、温度特性の影響は校正値H(i)には現れない。
従って、各ブランチで送信する際に、図29の校正制御手順で得られた校正値H(i)を各々の送信機13(i)の振幅・位相値に乗算することにより、送信機13における振幅・位相値のブランチ間の誤差を補正することができる。
【0335】
次に、図30に示す校正制御手順について説明する。なお、この例ではブランチユニット40(1)を基準ブランチに定めてあるが、他のブランチを基準にすることもできる。
ステップS20では、スイッチ21を制御して基準ブランチのカップラ15(1)の出力を選択する。
また、ステップS21では基準ブランチの送信機13(1)から信号を送信する。なお、送信機13(1)が信号を送信するのは測定の間だけでよい。
ステップS22では、カウンタiの値を1に初期化する。ステップS23〜S29の処理は、カウンタiの値に応じて繰り返し実行される。
ステップS23Dでは、スイッチ23を制御して、周波数変換器22の出力をカウンタiの値に応じたブランチの合成器216(i)と接続する。
【0336】
ここで、送信機13(1)から校正用の信号が送信された際に、受信機14(i)より出力される信号S(i)は以下の式で与えられる。
S(i)=Rc(t)・R(i)+Cc(t)・T(1)・Q・R(i)・・・(205)
但し、
T(1):送信機13(1)に生じる振幅・位相値
Q:温度特性による振幅・位相変動成分(周波数変換器)
R(i):受信機14(i)に生じる振幅・位相値
Rc(t):時刻tにおける受信信号
Cc(t):時刻tにおける送信信号
【0337】
この場合、図28に示すように校正信号相関器203は以下の式に示す信号S’(i)を出力する。
S’(i)=Cc(t)・T(1)・Q・R(i)・・・(206)
【0338】
よって、ステップS25Dでは、受信機14(i)が受信したi番目の信号S’(i)を校正/受信信号分離部201内の校正信号相関器203の出力信号から測定する。この信号S’(i)は、受信した信号の振幅及び位相の情報を含む値である。初回はカウンタiの値が1なので、ステップS25からS26を通ってステップS27に進み、カウンタiの値をカウントアップしてステップS23に戻る。
【0339】
2回目以降は、カウンタiの値が1以外なので、ステップS25からS26を通ってステップS28に進む。ステップS28Dでは、次式によりi番目のブランチの校正値P(i)を求める。
P(i)=S’(i)/S’(1) ・・・ (207)
N個の全てのブランチについて処理が終了していない場合には、ステップS28からS29を通ってステップS27に進み、カウンタiの値をカウントアップしてステップS23に戻る。
【0340】
従って、図30の校正制御手順を実行すると、2番目〜N番目のそれぞれのブランチについて、校正値S’(i)が個別に求められる。この例では1番目のブランチを基準にしているので、当然のことながら1番目のブランチの校正値P(1)は1である。
【0341】
ここで、信号S’(i)は(206)式で表されることから、(207)式を変形して次式が得られる。
Figure 0003547703
【0342】
つまり、図30の校正制御手順で得られる校正値P(i)は、受信機14(i)の振幅・位相値の基準ブランチに対する相対値である。また、測定される振幅・位相値は温度特性などの時間変化の影響によって変動するが、その成分Qは上記第(208)式で相殺されているので、温度特性の影響は校正値P(i)には現れない。
【0343】
従って、各ブランチで受信する際に、図30の校正制御手順で得られた校正値P(i)を各々の受信機14(i)の振幅・位相値に乗算することにより、受信機14における振幅・位相値のブランチ間の誤差を補正することができる。
(202)式及び(206)式における温度特性による振幅・位相値の変動成分Qは、実際には各ブランチの送信機13における変動成分と、受信機14における変動成分と、校正に用いる周波数変換器22における変動成分とを含んでいる。したがって、時間の経過に伴う温度変化に対して周波数変換器22の特性が変化するが、周波数変換器22については校正処理でいずれのブランチの振幅・位相値を測定する際にも共通に利用しているので、単一の周波数変換器22の振幅・位相値の変動成分Qは求める校正値に影響を及ぼさない。
【0344】
なお、本実施の形態に示すような受信時に校正を行えるようにするための変更は、第2〜第9においても適用可能である。以下に適用のための構成における変更点を簡単に示す。
すなわち、第2の実施の形態に示す適応アレーアンテナ送受信装置においては、以下の変更により受信時にも校正を行うことが可能となる。
・各部ランチユニット30に、アンテナ素子11からの受信信号とスイッチ38からの信号、あるいは、アンテナ素子11からの受信信号と周波数変換器22からの信号とを合成し、合成した信号を受信機14に出力する合成器を、スイッチ16のかわりにそれぞれ設ける。
・受信機14の出力信号に対し、送信機35の校正の際にアンテナ素子11からの受信信号とスイッチ38からの信号とを分離/出力し、受信機14の校正の際にアンテナ素子11からの受信信号と周波数変換器22からの信号とを分離/出力する校正/受信信号分離部をさらに設ける。
・送信機35の校正の際、校正演算部25Bは、スイッチ38の接続状態を制御して、校正/受信信号分離部で分離されたスイッチ38からの信号を入力し、各送信機35の校正値を求める。また、受信機14の校正の際、校正演算部25Bは、スイッチ21の接続状態を制御して、校正/受信信号分離部で分離された周波数変換器22からの信号を入力し、各受信機14の校正値を求める。
【0345】
第3の実施の形態に示す適応アレーアンテナ送受信装置においては、以下の変更により受信時にも校正を行うことが可能となる。
・各ブランチユニット40に、アンテナ素子11からの受信信号とそのブランチに属するスイッチ42からの信号、あるいは、アンテナ素子11からの受信信号と隣接するブランチに属するスイッチ42からの信号とを合成し、合成した信号を受信機14に出力する合成器を、スイッチ16のかわりにそれぞれ設ける。
・受信機14の出力信号に対し、アンテナ素子11からの受信信号と当該ブランチに属するスイッチ42からの信号とを分離/出力する、あるいは、アンテナ素子11からの受信信号と隣接するブランチに属するスイッチ42からの信号を分離/出力する校正/受信信号分離回路をさらに設ける。
・校正演算部25Cは、スイッチ41,42の接続状態を制御して、校正/受信信号分離部で分離された当該ブランチに属するスイッチ42からの信号、および、校正/受信信号分離部で分離された隣接するブランチに属するスイッチ42からの信号入力し、アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める。
【0346】
第4の実施の形態に示す適応アレーアンテナ送受信装置においては、以下の変更により受信時にも校正を行うことが可能となる。
・各ブランチユニット110に、サーキュレータ113から受信信号と、周波数変換器116が出力する受信信号とを合成し、合成した信号を受信機118に出力する合成器をスイッチ117のかわりにそれぞれ設ける。
・受信機118の出力に対し、サーキュレータ113からの受信信号と周波数変換器117が出力する受信信号とを分離/出力する校正/受信信号分離部をさらに設ける。
・校正演算部124は、スイッチ113の接続状態を制御して、校正/受信信号分離部で分離された周波数変換器116が出力する受信信号を入力し、前記アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める。
【0347】
第5の実施の形態に示す適応アレーアンテナ送受信装置においては、以下の変更により受信時にも校正を行うことが可能となる。
・各ブランチユニット110に、サーキュレータ113からの受信信号と周波数変換器116が出力する信号とを合成、あるいは、サーキュレータ113からの受信信号とスイッチ134が出力する送信機からの信号とを合成し、合成した信号を受信機118に出力する合成器を、スイッチ118のかわりにそれぞれ設ける。
・受信機118の出力に対し、サーキュレータ113からの受信信号と周波数変換器116が出力する信号とを分離/出力する、あるいは、サーキュレータ113からの受信信号とスイッチ134が出力する送信機からの信号とを分離/出力する校正/受信信号分離部をさらに設ける。
・校正制演算部124は、スイッチ112,133,134を制御するとともに、校正/受信信号分離部で分離された周波数変換器16が出力する信号、あるいは、校正/受信信号分離部で分離されたスイッチ34が出力する送信機からの信号を入力し、アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める。
【0348】
第6および第8の実施の形態に示す適応アレーアンテナ送受信装置においては、以下の変更により受信時にも送信部15の校正を行うことが可能となる。
・ブランチユニット110(1)において、サーキュレータ113からの信号と周波数変換器142からの信号とを合成し、合成した信号を受信機118(1)に出力する合成器を、スイッチ117(1)のかわりに設ける。
・受信機118(1)出力に対し、サーキュレータ1113からの信号と周波数変換器142からの信号とを分離/出力する校正/受信信号分離部をさらに設ける。
・校正演算部124は、校正/受信信号分離部で分離された周波数変換器142からの信号を入力し、各ブランチの送信部115の校正値を求める。
【0349】
第7および第9の実施の形態に示す適応アレーアンテナ送受信装置においては、以下の変更により受信時にも校正を行うことが可能となる。
・各ブランチユニット110に、サーキュレータ113からの信号とスイッチ151からの信号とを合成し、合成した信号を受信機118に出力する合成器を、スイッチ117のかわりにそれぞれ設ける。
・受信機118の出力に対し、サーキュレータ131からの信号とスイッチ151からの信号とを分離/出力する校正/受信信号分離部をさらに設ける。
・校正演算部124は、スイッチ151〜153を制御するとともに、校正/受信信号分離部で分離されたスイッチ151からの信号を入力し、アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める。
【0350】
【発明の効果】
以上第1〜第10の実施の形態で述べたように、本発明を用いると、FDDのように送信と受信の周波数が異なったシステムにおいても各ブランチ間の送信機/受信機の振幅・位相値を個別に校正することが可能となり、基地局の設置場所の違いによる環境変動や通信中の温度特性の変化により生じる各ブランチ間の振幅・位相誤差を補償することが可能となる。
また、図7に示すように構成する場合には、端子数の多いスイッチ(21,23)を設ける必要がないので、特にアレーアンテナの素子数(N)が大きい場合には製造が容易になる。
【0351】
また、付加アンテナを用いることにより、FDDのように送信と受信の周波数が異なるシステムにおいても、各ブランチ間の送信部/受信部の振幅・位相値の校正を、アンテナまで含めて個別に行うことが可能になる。これにより、例えば基地局の設置場所の違いによる環境変動や通信中の温度特性の変化により生じる各ブランチ間の振幅・位相誤差を補償することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の適応アレーアンテナ送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態の送信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施の形態の受信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施の形態の適応アレーアンテナ送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図5】第2の実施の形態の送信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態の受信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
【図7】第3の実施の形態の適応アレーアンテナ送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図8】第3の実施の形態の送信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
【図9】第3の実施の形態の受信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
【図10】周波数(f1−f2)の生成回路例(1)を示すブロック図である。
【図11】周波数(f1−f2)の生成回路例(2)を示すブロック図である。
【図12】第4の実施の形態の適応アレーアンテナ送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図13】第4の実施の形態の送信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
【図14】第4の実施の形態の受信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
【図15】アンテナ素子及び付加アンテナの配置例(1)を示す平面図である。
【図16】アンテナ素子及び付加アンテナの配置例(2)を示す平面図である。
【図17】第5の実施の形態の適応アレー−アンテナ送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図18】i番目のブランチの各部の振幅・位相値を示すブロック図である。
【図19】第6の実施の形態の適応アレーアンテナ送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図20】第6の実施の形態の送信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
【図21】第6の実施の形態の受信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
【図22】第7の実施の形態の適応アレーアンテナ送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図23】第7の実施の形態の送信機め校正制御手順を示すフローチャートである。
【図24】第7の実施の形態の受信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
【図25】第8の実施の形態の適応アレーアンテナ送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図26】第9の実施の形態の適応アレーアンテナ送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図27】第10の実施の形態の適応アレーアンテナ送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図28】校正/受信信号分離部の構成を示すブロック図である。
【図29】第10の実施の形態の送信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
【図30】第10の実施の形態の受信機の校正制御手順を示すフローチャートである。
【図31】アレーアンテナの構成及び指向パターンを示すグラフである。
【図32】振幅及び位相誤差とヌル深度の関係を示すグラフである。
【図33】従来例の校正回路(1)を示すブロック図である。
【図34】従来例のアダプティブアレーアンテナとFDDシステムとの組み合わせを示すブロック図である。
【図35】従来例の校正回路(2)を示すブロック図である。
【符号の説明】
10,30,40 ブランチユニット
11 アンテナ素子
12 サーキュレータ
13 送信機
14 受信機
15 カップラ
16 スイッチ
21 スイッチ
22 周波数変換器
23 スイッチ
24 信号発生部
25,25B,25C 校正演算部
26 指向性制御演算部
31 送信部
32 カップラ
33 周波数変換器
35 送信機
38 スイッチ
39 分配器
41,42 スイッチ
43 周波数変換器
60 送信部
61,65 発振器
62,66 分配器
63,68 アップコンバータ
67 中間周波処理部
70 受信部
71,75 発振器
72,76 分配器
73,78 ダウンコンバータ
77 中間周波処理部
80 周波数変換器
110 ブランチユニット
111 アンテナ素子
112 スイッチ
113,114 サーキュレータ
115 送信部
116 周波数変換器
117 スイッチし
118 受信機
121 送信機
122 カップラ
123 周波数変換器
124 校正演算部
125 指向性制御演算部
126 信号発生部
127 分配器
128 付加アンテナ
129 スイッチ
131 カップラ
132,133,134 スイッチ、
141,142 周波数変換器
143 サーキュレータ
145,146,151,152,153,154 スイッチ
201 校正/受信号分離部
202 分配器
203 校正信号相関器
204 受信信号相関器
216 合成器

Claims (32)

  1. 複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナと、前記アレーアンテナのアンテナ素子数と同数の送信機及び受信機と、前記各アンテナ素子に前記送信機及び受信機をそれぞれ接続する送受共用手段と、前記複数の受信機に各アンテナ素子からそれぞれ入力される信号に対して振幅及び位相の重み付けを行って複数の受信機の出力を合成することにより前記アレーアンテナの放射パターンを制御する指向性制御演算回路とを備えるとともに、前記受信機の受信周波数と前記送信機の送信周波数とが異なる適応アレーアンテナ送受信装置において、
    前記受信機の受信周波数と前記送信機の送信周波数との差分に相当する周波数の信号を出力するローカル信号生成手段と、
    前記複数の送信機のそれぞれの出力から信号の一部分を分岐して取り出す分岐手段と、
    前記複数の送信機のいずれかが出力する信号を選択する第1のスイッチと、
    前記第1のスイッチが選択した信号の周波数を、前記ローカル信号生成手段が出力する信号を用いて変換する周波数変換手段と、
    前記周波数変換手段が出力する信号を入力して前記複数の受信機に対応付けられた複数経路のいずれかに選択的に出力する第2のスイッチと、
    前記アンテナ素子からの受信信号と前記第2のスイッチからの信号とを選択的に前記各受信機に入力する第3のスイッチと、
    前記第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチの接続状態を制御して、前記受信機で得られる振幅・位相値を入力し、前記アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める校正制御手段と
    を設けたことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  2. 請求項1の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、前記複数の送信機のそれぞれが出力する信号を前記第1のスイッチで順次に選択するとともに、前記第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御し、前記周波数変換手段によって周波数変換された信号を予め基準として定めた特定ブランチの受信機に入力し、各々のブランチの送信機からの信号についてそれぞれ測定された複数の振幅・位相値と、予め基準として定めた特定ブランチの送信機からの信号について測定された振幅・位相値との比率を各ブランチの送信系の校正値として算出することを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  3. 請求項1の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、予め基準として定めた特定ブランチの送信機が出力する信号を前記第1のスイッチで選択するとともに、前記第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御して、前記周波数変換手段で周波数変換された信号を各々のブランチの受信機に順次に入力し、各々のブランチの受信機でそれぞれ測定された複数の振幅・位相値と、予め基準として定めた特定ブランチの受信機で測定された振幅・位相値との比率を各ブランチの受信系の校正値として算出することを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  4. 請求項1の適応アレーアンテナ送受信装置において、
    前記アンテナ素子からの受信信号と前記第2のスイッチからの信号を合成し、該信号を前記受信機に出力する合成器を前記第3のスイッチのかわりに設け、
    前記受信機の出力信号に対し、前記アンテナ素子からの受信信号と前記第2のスイッチからの信号とを分離/出力する校正/受信信号分離回路をさらに設け、
    前記校正制御手段は、前記第1のスイッチ,及び第2のスイッチの接続状態を制御して、前記校正/受信信号分離回路で分離された第2のスイッチからの信号を入力し、前記アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める
    ことを特徴とする適応アレーアンテナ送信装置。
  5. 複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナと、前記アレーアンテナのアンテナ素子数と同数の送信機及び受信機と、前記各アンテナ素子に前記送信機及び受信機をそれぞれ接続する送受共用手段と、前記複数の受信機に各アンテナ素子からそれぞれ入力される信号に対して振幅及び位相の重み付けを行って複数の受信機の出力を合成することにより前記アレーアンテナの放射パターンを制御する指向性制御演算回路とを備えるとともに、前記受信機の受信周波数と前記送信機からアンテナ素子に印加される信号の送信周波数とが異なる適応アレーアンテナ送受信装置において、
    前記受信周波数と前記送信周波数との差分に相当する周波数の信号を出力するローカル信号生成手段と、
    前記複数の送信機のそれぞれが出力する前記受信周波数と同じ周波数の信号を、前記ローカル信号生成手段が出力する信号を用いて周波数変換する第1の周波数変換手段と、
    前記複数の送信機のそれぞれの出力から、前記第1の周波数変換手段の変換後の信号の一部分を分岐して取り出す第1の分岐手段と、
    前記送信機の1つの出力から、前記第1の周波数変換手段の変換前の信号の一部分を分岐して取り出す第2の分岐手段と、
    前記複数の送信機のいずれかが前記第1の分岐手段に入力する1つの信号を選択する第1のスイッチと、
    前記第1のスイッチが選択した信号の周波数を、前記ローカル信号生成手段が出力する信号を用いて変換する第2の周波数変換手段と、
    前記第2の分岐手段が出力する信号を入力して前記複数の受信機に対応付けられた複数経路のいずれかに選択的に出力する第2のスイッチと、
    前記アンテナ素子からの受信信号と、前記第2のスイッチからの信号と、前記第2の周波数変換手段からの信号とを選択的に前記各受信機に入力する第3のスイッチと、
    前記第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチの接続状態を制御して、前記受信機で得られる振幅・位相値を入力し、前記アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める校正制御手段と
    を設けたことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  6. 請求項5の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、前記複数の送信機のそれぞれが出力する信号を前記第1のスイッチで順次に選択するとともに、前記第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御し、第2の周波数変換手段によって周波数変換された信号を予め基準として定めた特定ブランチの受信機に入力し、各々のブランチの送信機からの信号についてそれぞれ測定された複数の振幅・位相値と、予め基準として定めた特定ブランチの送信機からの信号について測定された振幅・位相値との比率を各ブランチの送信系の校正値として算出することを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  7. 請求項5の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、予め基準として定めた特定ブランチの送信機が出力する信号を、前記第2の分岐手段で取り出し、前記第2のスイッチ及び第3のスイッチを介して各々のブランチの受信機に順次に入力し、各々のブランチの受信機でそれぞれ測定された複数の振幅・位相値と、予め基準として定めた特定ブランチの受信機で測定された振幅・位相値との比率を各ブランチの受信系の校正値として算出することを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  8. 請求項5の適応アレーアンテナ送受信装置において、
    前記アンテナ素子からの受信信号と前記第2のスイッチからの信号、あるいは、前記アンテナ素子からの受信信号と前記第2の周波数変換手段からの信号とを合成し、該信号を前記受信機に出力する合成器を前記第3のスイッチのかわりにそれぞれ設け、
    前記受信機の出力信号に対し、前記アンテナ素子からの受信信号と前記第2のスイッチからの信号とを分離/出力する、あるいは、前記アンテナ素子からの受信信号と前記第2の周波数変換手段からの信号とを分離/出力する校正/受信信号分離回路をさらに設け、
    前記校正制御手段は、前記第1のスイッチ,及び第2のスイッチの接続状態を制御して、前記校正/受信信号分離回路で分離された第2のスイッチからの信号、あるいは、前記校正/受信信号分離回路で分離された第2の周波数変換手段からの信号を入力し、前記アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める
    ことを特徴とする適応アレーアンテナ送信装置。
  9. 複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナと、前記アレーアンテナのアンテナ素子数と同数の送信機及び受信機と、前記各アンテナ素子に前記送信機及び受信機をそれぞれ接続する送受共用手段と、前記複数の受信機に各アンテナ素子からそれぞれ入力される信号に対して振幅及び位相の重み付けを行って複数の受信機の出力を合成することにより前記アレーアンテナの放射パターンを制御する指向性制御演算回路とを備えるとともに、前記受信機の受信周波数と前記送信機の送信周波数とが異なる適応アレーアンテナ送受信装置において、
    前記受信機の受信周波数と前記送信機の送信周波数との差分に相当する周波数の信号を出力するローカル信号生成手段と、
    前記複数の送信機のそれぞれの出力から信号の一部分を分岐して取り出す分岐手段と、
    前記アレーアンテナの予め定めたブランチの並びについて互いに隣接する2つのブランチからそれぞれ前記分岐手段の出力信号を入力していずれか一方を選択する複数の第1のスイッチと、
    前記第1のスイッチが選択した信号の周波数を、前記ローカル信号生成手段が出力する信号を用いて変換する周波数変換手段と、
    前記アレーアンテナの複数ブランチのそれぞれについて、前記周波数変換手段が出力する信号を入力し、互いに隣接する2つのブランチのいずれか一方の経路に選択的に出力する複数の第2のスイッチと、
    前記アレーアンテナの複数ブランチのそれぞれについて、当該ブランチのアンテナ素子からの受信信号と、当該ブランチに属する前記第2のスイッチからの信号と、隣接するブランチに属する前記第2のスイッチからの信号とのいずれかを選択して1つの受信機に入力する第3のスイッチと、
    前記第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチの接続状態を制御して、前記受信機で得られる振幅・位相値を入力し、前記アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める校正制御手段と
    を設けたことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  10. 請求項9の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、隣接するブランチ毎に、隣接する2つのブランチの送信機が出力する信号を前記第1のスイッチで交互に選択するとともに、前記第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御し、前記周波数変換手段によって周波数変換された信号を2つのブランチのうち予め定めた一方の受信機に入力し、2つのブランチの送信機からの信号についてそれぞれ測定された振幅・位相値の比率を第1の比率として求めるとともに、予め基準として定めたブランチ以外については、当該ブランチで求められた第1の比率を他のブランチで求められた第1の比率を用いて修正し各ブランチの送信系の校正値を算出することを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  11. 請求項9の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、隣接するブランチ毎に、隣接する2つのブランチのうち予め定めた一方の送信機が出力する信号を前記第1のスイッチで選択するとともに、前記第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御して、前記周波数変換手段で周波数変換された信号を、隣接する2つのブランチの各々の受信機に交互に入力し、隣接する2つのブランチの受信機でそれぞれ測定された複数の振幅・位相値の比率を第1の比率として求めるとともに、予め基準として定めたブランチ以外については、当該ブランチで求められた前記第1の比率を他のブランチで求められた第1の比率を用いて修正し各ブランチの受信系の校正値を算出することを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  12. 請求項9の適応アレーアンテナ送受信装置において、
    前記アンテナ素子からの受信信号と当該ブランチに属する前記第2のスイッチからの信号、あるいは、前記アンテナ素子からの受信信号と隣接するブランチに属する前記第2のスイッチからの信号とを合成し、該信号を前記受信機に出力する合成器を前記第3のスイッチのかわりにそれぞれ設け、
    前記受信機の出力信号に対し、前記アンテナ素子からの受信信号と当該ブランチに属する前記第2のスイッチからの信号とを分離/出力する、あるいは、前記アンテナ素子からの受信信号と隣接するブランチに属する前記第2のスイッチからの信号を分離/出力する校正/受信信号分離回路をさらに設け、
    前記校正制御手段は、前記第1のスイッチ,及び第2のスイッチの接続状態を制御して、前記校正/受信信号分離回路で分離された当該ブランチに属する前記第2のスイッチからの信号、および、前記校正/受信信号分離回路で分離された隣接するブランチに属する前記第2のスイッチからの信号を入力し、前記アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める
    ことを特徴とする適応アレーアンテナ送信装置。
  13. 3以上のN個のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナと、N個の送信機及び受信機と、前記各アンテナ素子に前記送信機及び受信機をそれぞれ接続する送受共用手段と、前記複数の受信機に各アンテナ素子からそれぞれ入力される信号に対して振幅及び位相の重み付けを行って複数の受信機の出力を合成することにより前記アレーアンテナの放射パターンを制御する指向性制御演算回路とを備えるとともに、通信に利用する前記アレーアンテナの受信周波数と送信周波数とが異なる適応アレーアンテナ送受信装置において、
    送出する信号の周波数が前記アレーアンテナの受信周波数と同一のN個の送信機と、
    前記N個の送信機のそれぞれが送出する信号の周波数を前記アレーアンテナの送信周波数に変換する第1の周波数変換手段と、
    前記N個の送信機のそれぞれの出力から前記第1の周波数変換手段が変換する前の信号を取り出すN個の分岐手段と、
    受信する信号の周波数が前記アレーアンテナの受信周波数と同一のN個の受信機と、
    前記アレーアンテナの送信周波数と同じ周波数の信号を前記アレーアンテナの受信周波数と同じ周波数に変換する第2の周波数変換手段と、
    前記第1の周波数変換手段の出力と、前記受信機の入力と、前記各アンテナ素子との間に設けられたN個の第1の送受共用手段と、
    前記分岐手段の出力と、前記第2の周波数変換手段の入力と、前記各アンテナ素子との間に設けられたN個の第2の送受共用手段と、
    前記N個の送信機及びN個の受信機のいずれかに接続可能な1つの付加アンテナと、
    前記アンテナ素子及び付加アンテナのいずれか一方を、前記第1の送受共用手段及び第2の送受共用手段のいずれか一方と接続する、アンテナ素子毎に設けられた第1のスイッチと、
    前記受信機の入力に接続され、前記第1の送受共用手段からの受信信号と、前記第2の周波数変換手段が出力する受信信号とのいずれか一方を選択的に前記受信機に入力する、受信機毎に設けられた第2のスイッチと、
    前記付加アンテナをいずれかの第1のスイッチと接続する第3のスイッチと、前記第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御するとともに、 前記各受信機から得られる振幅・位相値に基づいて、アレーアンテナのブランチ間の振幅位相校正値を求める校正制御手段と
    を設けたことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  14. 3以上のN個のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナと、N個の送信機及び受信機と、前記各アンテナ素子に前記送信機及び受信機をそれぞれ接続する送受共用手段と、前記複数の受信機に各アンテナ素子からそれぞれ入力される信号に対して振幅及び位相の重み付けを行って複数の受信機の出力を合成することにより前記アレーアンテナの放射パターンを制御する指向性制御演算回路とを備えるとともに、通信に利用する前記アレーアンテナの受信周波数と送信周波数とが異なる適応アレーアンテナ送受信装置において、
    送出する信号の周波数が前記アレーアンテナの受信周波数と同一のN個の送信機と、
    前記N個の送信機のそれぞれが送出する信号の周波数を前記アレーアンテナの送信周波数に変換する第1の周波数変換手段と、
    前記N個の送信機のそれぞれの出力から前記第1の周波数変換手段が変換する前の信号を取り出すN個の分岐手段と、
    受信する信号の周波数が前記アレーアンテナの受信周波数と同一のN個の受信機と、
    前記アレーアンテナの送信周波数と同じ周波数の信号を前記アレーアンテナの受信周波数と同じ周波数に変換する第2の周波数変換手段と、
    前記第1の周波数変換手段の出力と、前記受信機の入力と、前記各アンテナ素子との間に設けられたN個の第1の送受共用手段と、
    前記分岐手段の出力と、前記第2の周波数変換手段の入力と、前記各アンテナ素子との間に設けられたN個の第2の送受共用手段と、
    前記N個の送信機及びN個の受信機のいずれかに接続可能な少なくとも1つの付加アンテナと、
    前記アンテナ素子及び付加アンテナのいずれか一方を、前記第1の送受共用手段及び第2の送受共用手段のいずれか一方と接続する、アンテナ素子毎に設けられた第1のスイッチと、
    前記受信機の入力に接続され、前記第1の送受共用手段からの受信信号と、前記第2の周波数変換手段が出力する受信信号とのいずれか一方を選択的に前記受信機に入力する、受信機毎に設けられた第2のスイッチと、
    前記付加アンテナをいずれかの第1のスイッチと接続する第3のスイッチと、前記第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御するとともに、 前記各受信機から得られる振幅・位相値に基づいて、アレーアンテナのブランチ間の振幅位相校正値を求める校正制御手段と
    を設けたことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  15. 請求項13または請求項14の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、
    前記第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御して、前記付加アンテナから互いに等しい距離に存在する2つのアンテナ素子のブランチにそれぞれ属する第1の送信機及び第2の送信機を前記N個の送信機の中から選択するとともに、前記第1の送信機及び第2の送信機とは異なるブランチに属する1つの校正受信機を前記N個の受信機の中から選択し、前記第3のスイッチを前記第1の送信機及び第2の送信機とは異なるブランチに属する1つの校正受信機に接続される第1のスイッチに接続し、
    前記第1の送信機が送出する信号を前記第1の周波数変換手段で周波数変換した信号を第1の送信機が属するブランチのアンテナ素子から送信し、
    前記付加アンテナが受信した前記第1の送信機からの信号を、前記第2の周波数変換手段によって周波数変換した出力を前記校正受信機に入力して前記校正受信機に得られる第1の測定値を検出し、
    前記第2の送信機が送出する信号を前記第1の周波数変換手段で周波数変換した信号を第2の送信機が属するブランチのアンテナ素子から送信し、
    前記付加アンテナが受信した前記第2の送信機からの信号を、前記第2の周波数変換手段によって周波数変換した出力を前記校正受信機に入力して前記校正受信機に得られる第2の測定値を検出し、
    前記第2の測定値と第1の測定値との比率を第1の校正値として算出し、
    前記第1の送信機及び第2の送信機の選択を順次に切り替えてそれぞれ測定した第1の測定値及び第2の測定値に基づいて複数ブランチのそれぞれの第1の校正値を求め、
    予め定めた基準ブランチ以外については、当該ブランチの第1の校正値を他のブランチで得られた第1の校正値を用いて修正し、基準ブランチに対する相対値として第1の校正値を算出する
    ことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  16. 請求項13または請求項14の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、
    前記第1のスイッチ,第2のスイッチ及び第3のスイッチを制御して、前記付加アンテナから互いに等しい距離に存在する2つのアンテナ素子のブランチにそれぞれ属する第1の受信機及び第2の受信機を前記N個の受信機の中から選択するとともに、前記第1の受信機及び第2の受信機とは異なるブランチに属する1つの校正送信機を前記N個の送信機の中から選択し、
    前記校正送信機が送出する信号を、前記分岐手段,第2の送受共用手段,第1のスイッチ及び第3のスイッチを介して前記付加アンテナから送信し、
    前記第1の受信機が属するブランチのアンテナ素子が受信した前記校正送信機からの信号を、前記第1の受信機に入力して前記第1の受信機に得られる第1の測定値を検出し、
    前記第2の受信機が属するブランチのアンテナ素子が受信した前記校正送信機からの信号を、前記第2の受信機に入力して前記第2の受信機に得られる第2の測定値を検出し、
    前記第2の測定値と第1の測定値との比率を第1の校正値として算出し、
    前記第1の受信機及び第2の受信機の選択を順次に切り替えてそれぞれ測定した第1の測定値及び第2の測定値に基づいて複数ブランチのそれぞれの第1の校正値を求め、
    予め定めた基準ブランチ以外については、当該ブランチの第1の校正値を他のブランチで得られた第1の校正値を用いて修正し、基準ブランチに対する相対値として第1の校正値を算出する
    ことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  17. 請求項13または請求項14の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記N個のアンテナ素子を1つの直線上に等間隔で配置するとともに、2つのアンテナ素子の中間の位置に前記付加アンテナを配置したことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  18. 請求項13または請求項14の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記N個のアンテナ素子を1つの円周上に等間隔で配置するとともに、前記円周の中心位置に前記付加アンテナを配置したことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  19. 請求項13または請求項14の適応アレーアンテナ送受信装置において、
    前記第1の送受共用手段からの受信信号と、前記第2の周波数変換手段が出力する受信信号とを合成し、該信号を前記受信機に出力する合成器を前記第2のスイッチのかわりにそれぞれ設け、
    前記受信機の出力に対し、前記第1の送受共用手段からの受信信号と前記第2の周波数変換手段が出力する受信信号とを分離/出力する校正/受信信号分離回路をさらに設け、
    前記校正制御手段は、前記第1のスイッチの接続状態を制御して、前記校正/受信信号分離回路で分離された前記第2の周波数変換手段が出力する受信信号を入力し、前記アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める
    ことを特徴とする適応アレーアンテナ送信装置。
  20. 2以上のN個のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナと、N個の送信機及び受信機と、前記各アンテナ素子に前記送信機及び受信機をそれぞれ接続する送受共用手段と、前記複数の受信機に各アンテナ素子からそれぞれ入力される信号に対して振幅及び位相の重み付けを行って複数の受信機の出力を合成することにより前記アレーアンテナの放射パターンを制御する指向性制御演算回路とを備えるとともに、通信に利用する前記アレーアンテナの受信周波数と送信周波数とが異なる適応アレーアンテナ送受信装置において、
    送出する信号の周波数が前記アレーアンテナの受信周波数と同一のN個の送信機と、
    前記N個の送信機のそれぞれが送出する信号の周波数を前記アレーアンテナの送信周波数に変換する第1の周波数変換手段と、
    前記N個の送信機のそれぞれの出力から前記第1の周波数変換手段が変換する前の信号を取り出すN個の第1の分岐手段と、
    前記第1の周波数変換手段の出力から変換後の信号をアレーアンテナのブランチ毎に取り出すN個の第2の分岐手段と、
    受信する信号の周波数が前記アレーアンテナの受信周波数と同一のN個の受信機と、
    前記アレーアンテナの送信周波数と同じ周波数の信号を前記アレーアンテナの受信周波数と同じ周波数に変換する第2の周波数変換手段と、
    前記第1の周波数変換手段の出力と、前記受信機の入力と、前記各アンテナ素子との間に設けられたN個の第1の送受共用手段と、
    前記第1の分岐手段の出力と、前記第2の周波数変換手段の入力と、前記各アンテナ素子との間に設けられたN個の第2の送受共用手段と、
    前記N個の送信機及びN個の受信機のいずれかに接続可能な1つの付加アンテナと、
    前記アンテナ素子及び付加アンテナのいずれか一方を、前記第1の送受共用手段及び第2の送受共用手段のいずれか一方と接続する、アンテナ素子毎に設けられた第1のスイッチと、
    予め定めた基準ブランチに属する第1の分岐手段の出力をいずれか1つのブランチの受信機の入力と接続する第2のスイッチと、
    N個の各ブランチに属する前記第2の分岐手段の出力のいずれか1つを前記基準ブランチに属する第2の周波数変換手段の入力に接続する第3のスイッチと、前記第3のスイッチの出力と、前記基準ブランチに属する第2の送受共用手段とのいずれか一方を前記基準ブランチに属する第2め周波数変換手段の入力に接続する第4のスイッチと、
    各々のブランチにおいて、前記第1の送受共用手段からの受信信号と、前記第2の周波数変換手段が出力する信号と、前記第2のスイッチが出力する送信機からの信号とのいずれか1つを選択して前記受信機の入力に印加する第5のスイッチと、
    前記付加アンテナをいずれかの第1のスイッチと接続する第6のスイッチと、前記第1のスイッチ,第2のスイッチ,第3のスイッチ,第4のスイッチ,第5のスイッチ及び第6のスイッチを制御するとともに、前記各受信機から得られる振幅・位相値に基づいて、ブランチ間の振幅位相校正値を求める校正制御手段と
    を設けたことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  21. 2以上のN個のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナと、N個の送信機及び受信機と、前記各アンテナ素子に前記送信機及び受信機をそれぞれ接続する送受共用手段と、前記複数の受信機に各アンテナ素子からそれぞれ入力される信号に対して振幅及び位相の重み付けを行って複数の受信機の出力を合成することにより前記アレーアンテナの放射パターンを制御する指向性制御演算回路とを備えるとともに、通信に利用する前記アレーアンテナの受信周波数と送信周波数とが異なる適応アレーアンテナ送受信装置において、
    送出する信号の周波数が前記アレーアンテナの受信周波数と同一のN個の送信機と、
    前記N個の送信機のそれぞれが送出する信号の周波数を前記アレーアンテナの送信周波数に変換する第1の周波数変換手段と、
    前記N個の送信機のそれぞれの出力から前記第1の周波数変換手段が変換する前の信号を取り出すN個の第1の分岐手段と、
    前記第1の周波数変換手段の出力から変換後の信号をアレーアンテナのブランチ毎に取り出すN個の第2の分岐手段と、
    受信する信号の周波数が前記アレーアンテナの受信周波数と同一のN個の受信機と、
    前記アレーアンテナの送信周波数と同じ周波数の信号を前記アレーアンテナの受信周波数と同じ周波数に変換する第2の周波数変換手段と、
    前記第1の周波数変換手段の出力と、前記受信機の入力と、前記各アンテナ素子との間に設けられたN個の第1の送受共用手段と、
    前記第1の分岐手段の出力と、前記第2の周波数変換手段の入力と、前記各アンテナ素子との間に設けられたN個の第2の送受共用手段と、
    前記N個の送信機及びN個の受信機のいずれかに接続可能な少なくとも1つの付加アンテナと、
    前記アンテナ素子及び付加アンテナのいずれか一方を、前記第1の送受共用手段及び第2の送受共用手段のいずれか一方と接続する、アンテナ素子毎に設けられた第1のスイッチと、
    予め定めた基準ブランチに属する第1の分岐手段の出力をいずれか1つのブランチの受信機の入力と接続する第2のスイッチと、
    N個の各ブランチに属する前記第2の分岐手段の出力のいずれか1つを前記基準ブランチに属する第2の周波数変換手段の入力に接続する第3のスイッチと、前記第3のスイッチの出力と、前記基準ブランチに属する第2の送受共用手段とのいずれか一方を前記基準ブランチに属する第2め周波数変換手段の入力に接続する第4のスイッチと、
    各々のブランチにおいて、前記第1の送受共用手段からの受信信号と、前記第2の周波数変換手段が出力する信号と、前記第2のスイッチが出力する送信機からの信号とのいずれか1つを選択して前記受信機の入力に印加する第5のスイッチと、
    前記付加アンテナをいずれかの第1のスイッチと接続する第6のスイッチと、前記第1のスイッチ,第2のスイッチ,第3のスイッチ,第4のスイッチ,第5のスイッチ及び第6のスイッチを制御するとともに、前記各受信機から得られる振幅・位相値に基づいて、ブランチ間の振幅位相校正値を求める校正制御手段と
    を設けたことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  22. 請求項20または請求項21の適応アレーアンテナ送受信装置において、
    前記第1の送受共用手段からの受信信号と前記第2の周波数変換手段が出力する信号とを合成、あるいは、前記第1の送受共用手段からの受信信号と前記第2のスイッチが出力する送信機からの信号とを合成し、該信号を前記受信機に出力する合成器を前記第5のスイッチのかわりにそれぞれ設け、
    前記受信機の出力に対し、前記第1の送受共用手段からの受信信号と前記第2の周波数変換手段が出力する信号とを分離/出力する、あるいは、前記第1の送受共用手段からの受信信号と前記第2のスイッチが出力する送信機からの信号とを分離/出力する校正/受信信号分離回路をさらに設け、
    前記校正制御手段は、前記第1のスイッチ,第2のスイッチ,第3のスイッチ,及び第4のスイッチを制御するとともに、前記校正/受信信号分離回路で分離された前記第2の周波数変換手段が出力する信号、あるいは、前記校正/受信信号分離回路で分離された前記第2のスイッチが出力する送信機からの信号を入力し、前記アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める
    ことを特徴とする適応アレーアンテナ送信装置。
  23. 2以上のN個のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナと、N個の送信機及び受信機と、前部各アンテナ素子に前記送信機及び受信機をそれぞれ接続する第1の送受共用手段と、前記複数の受信機に各アンテナ素子からそれぞれ入力される信号に対して振幅及び位相の重み付けを行って複数の受信機の出力を合成することにより前記アレーアンテナの放射パターンを制御する指向性制御演算回路とを備えるとともに、通信に利用する前記アレーアンテナの受信周波数と送信周波数とが異なり、前記各送信機の出力する信号の周波数がf1、前記各受信機の受信周波数がf2である適応アレーアンテナ送受信装置において、
    前記アレーアンテナの少なくとも2つのアンテナ素子からの距離が等しい位置に配置された少なくとも1つの付加アンテナと、
    前記付加アンテナに接続された第2の送受共用手段と、
    1つの送信機から出力される周波数がf1の信号をf2の周波数に変換して前記第2の送受共用手段に出力するとともに、前記第2の送受共用手段から入力される周波数がf1の信号をf2の周波数に変換して出力する少なくとも1つの周波数変換手段と、
    前記N個の送信機の少なくとも1つの出力から取り出した信号を前記周波数変換手段に入力する少なくとも1つの分岐手段と、
    前記N個の受信機の少なくとも1つについて、その入力を前記第1の送受共用手段及び前記周波数変換手段のいずれか一方と接続する、少なくとも1つの第1のスイッチと、
    前記第1のスイッチを制御するとともに、前記各受信機から得られる振幅・位相値に基づいて、アレーアンテナのブランチ間の振幅位相校正値を求める校正制御手段と
    を設けたことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  24. 請求項23の適応アレーアンテナ送受信装置において、
    前記N個の送信機の出力にそれぞれ前記分岐手段を接続し、
    前記N個の受信機の入力にそれぞれ前記第1のスイッチを接続し、
    前記N個の送信機に接続した分岐手段のいずれか1つを選択的に前記周波数変換手段の入力と接続する第2のスイッチと、
    前記周波数変換手段の出力を前記N個の受信機に接続した第1のスイッチのいずれか1つの入力と選択的に接続する第3のスイッチと
    をさらに設けたことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  25. 請求項23の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、
    前記第1のスイッチを制御し、前記N個の受信機のうち校正受信機に定めた1つの受信機の入力に前記周波数変換手段の出力を接続し、
    前記N個の送信機の1つを校正送信機として順次に選択するとともに選択した校正送信機から信号を送出し、
    前記校正送信機から送出され、前記第1の送受共用手段及びそれに接続された前記アンテナ素子を介して送信された信号を前記付加アンテナ,第2の送受共用手段,周波数変換手段及び第1のスイッチを介して前記校正受信機に入力し、
    それぞれのブランチの校正送信機から送出された信号について前記校正受信機で検出した測定値に基づいてアレーアンテナのブランチ間の振幅位相校正値を求める
    ことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  26. 請求項23の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、
    前記第1のスイッチを制御し、それが接続された受信機の入力を前記第1の送受共用手段と接続し、
    前記N個の送信機の1つを校正送信機に定めて前記校正送信機から信号を送出し、
    前記N個の受信機の1つを校正受信機として順次に選択し、
    前記校正送信機から送出され、前記分岐手段,周波数変換手段及び第2の送受共用手段を通って前記付加アンテナから送信された信号を、前記校正受信機が属するブランチのアンテナ素子及び第1の送受共用手段を介して前記校正受信機に入力し、
    それぞれのブランチの校正受信機で検出した測定値に基づいてアレーアンテナのブランチ間の振幅位相校正値を求める
    ことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  27. 請求項24の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、
    前記第1のスイッチを制御し、前記N個の受信機のうち校正受信機に定めた1つの受信機の入力に前記周波数変換手段の出力を接続し、
    前記N個の送信機の1つを校正送信機として順次に選択するとともに選択した校正送信機から信号を送出し、
    前記校正送信機から送出された信号を前記分岐手段で分岐し前記第2のスイッチを介して周波数変換手段に入力し、前記周波数変換手段が出力する信号を前記第3のスイッチ及び第1のスイッチを介して校正受信機の入力に印加し、
    それぞれのブランチの校正送信機から送出された信号について前記校正受信機で検出した測定値に基づいてアレーアンテナのブランチ間の振幅位相校正値を求める
    ことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  28. 請求項24の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記校正制御手段は、
    前記N個の送信機の1つを校正送信機に定めて前記校正送信機から信号を送出し、
    前記N個の受信機の1つを校正受信機として順次に選択し、
    前記校正送信機から送出された信号を前記分岐手段で分岐し、前記第2のスイッチを介して周波数変換手段の入力に印加し、前記周波数変換手段から出力される信号を前記第3のスイッチ及び第1のスイッチを介して校正受信機の入力に印加し、
    それぞれのブランチの校正受信機で検出した測定値に基づいてアレーアンテナのブランチ間の振幅位相校正値を求める
    ことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  29. 請求項23の適応アレーアンテナ送受信装置において、1つの送信機から出力される周波数がf1の信号をf2の周波数に変換する第1の周波数変換手段と、前記第2の送受共用手段から入力される周波数がf1の信号をf2の周波数に変換して出力する第2の周波数変換手段とを設けたことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  30. 請求項23の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記N個のアンテナ素子を1つの直線上に等間隔で配置するとともに、2つのアンテナ素子の中間の位置に前記付加アンテナを配置したことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  31. 請求項23の適応アレーアンテナ送受信装置において、前記N個のアンテナ素子を1つの円周上に等間隔で配置するとともに、前記円周の中心位置に前記付加アンテナを配置したことを特徴とする適応アレーアンテナ送受信装置。
  32. 請求項23の適応アレーアンテナ送受信装置において、
    前記第1の送受共用手段からの信号と前記周波数変換手段からの信号とを合成し、該信号を前記受信機に出力する合成器を前記第1のスイッチのかわりに設け、
    前記受信機の出力に対し、前記第1の送受共用手段からの信号と前記周波数変換手段からの信号とを分離/出力する校正/受信信号分離回路をさらに設け、
    前記校正制御手段は、前記各校正/受信信号分離回路で分離された前記周波数変換手段からの信号を入力し、前記アレーアンテナの各ブランチの校正値を求める
    ことを特徴とする適応アレーアンテナ送信装置。
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