JP3831998B2 - 石炭焚ボイラのミル通常起動時における出炭量算出装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、石炭焚ボイラのミル通常起動時における出炭量算出装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
一般に、石炭焚ボイラの場合、図３に示される如く、コールバンカ１に貯留された石炭を、モータ等の駆動装置２によって駆動される給炭機３により、石炭粉砕用のミル４へ投入し、該ミル４において粉砕された微粉炭を微粉炭管５を介してバーナ６へ空気搬送し、ボイラ７の火炉８内において燃焼させるようになっている。
【０００３】
尚、図中、９はモータ等の駆動装置１０によって開閉される石炭ゲートである。
【０００４】
前記ミル４からボイラ７の火炉８内へ供給される石炭（微粉炭）の出炭量は、直接計測することができないため、給炭機３上に現在ある石炭の重量を図示していないロードセル等で測定すると共に、給炭機３の駆動装置２の回転数を測定し、これらの積を給炭機３からミル４へ供給される給炭量とし、該給炭量を前記ミル４からボイラ７の火炉８内へ供給されると予測される石炭の出炭量としている。
【０００５】
又、前記ミル４は、一基のボイラ７に対して、通常、複数台（例えば六台）設けられており、ボイラ７の定常運転時においては、各ミル４の出炭量の合計と、ボイラ負荷指令（ＭＷＤ）に基づく燃料流量指令とを比較し、該比較結果に応じて各給炭機３への給炭量指令を求め、該給炭量指令に基づいて各給炭機３の制御を行うようになっている。
【０００６】
ところで、前述の如く、給炭機３からミル４へ供給される給炭量を前記ミル４からボイラ７の火炉８内へ供給される出炭量とすることは、ボイラ７の定常運転時においてはほとんど問題はないが、前記ミル４を停止した状態から起動する場合には、ミル４からの出炭は粉砕遅れがあるため、実際の出炭量が少ないのにもかかわらず、それ以上の石炭がボイラ７の火炉８内へ供給されているかのように判断されることとなり、プラント全体に与える外乱が大きくなって、ミル４の起動も不安定となる。
【０００７】
このため、従来においては、図４に示される如く、ミル通常起動時において給炭機３を起動する給炭機起動指令１４が出力された時点から所要時間（ｔ［分］）経過後、“１”の信号１５を出力するタイマ１６と、
ミル通常起動時における給炭機起動指令１４が出力された時点から前記タイマ１６で設定された時間（ｔ［分］）だけ信号発生器１７から出力される“０”の信号１８を信号１３として出力する（図４中、ａ側に切り換えられる）一方、定常運転時には給炭機３からミル４へ投入される給炭量１１をそのまま信号１３として出力する（図４中、ｂ側に切り換えられる）切換器１２と、
該切換器１２から出力される信号１３が変化した場合に、その信号１３の変化に対し、予め設定した時間遅れが生じるよう追従させて、ミル通常起動時にミル４から出炭されると予測される出炭量模擬信号２０を出力する一次遅れ器１９と、
ミル通常起動時における給炭機３起動時には前記一次遅れ器１９から出力される出炭量模擬信号２０を出炭量２２として出力する（図４中、ａ側に切り換えられる）一方、定常運転時には前記給炭量１１をそのまま出炭量２２として出力する（図４中、ｂ側に切り換えられる）切換器２１と
からミル通常起動時における出炭量算出装置を構成していた。
【０００８】
前述の如き従来の出炭量算出装置の場合、ミル４を起動するために、該ミル４に対応するコールバンカ１の石炭ゲート９が開放され、且つ給炭機３を起動する給炭機起動指令１４が出力されて給炭機３が起動されると、図５に示される如く、給炭機３からミル４へ投入される給炭量１１は“０”からｚ［ｔｏｎ／ｈ］となるが、タイマ１６から出力される信号１５は、前記給炭機起動指令１４が出力されてから所要時間（ｔ［分］）経過するまでは“０”のままであるため、ミル通常起動時における給炭機起動指令１４が出力された時点から前記タイマ１６で設定された時間（ｔ［分］）の間は、切換器１２は、図４中、ａ側に切り換えられ、信号発生器１７から出力される“０”の信号１８が信号１３として出力される。
【０００９】
前記信号発生器１７から出力される“０”の信号１８が信号１３として出力されていた状態から、前記タイマ１６で設定された時間（ｔ［分］）だけ経過すると、前記切換器１２が、図４中、ｂ側に切り換えられ、ｚ［ｔｏｎ／ｈ］となっている給炭量１１が信号１３として一次遅れ器１９へ出力され、該一次遅れ器１９においては、切換器１２から出力される信号１３の変化に対し、予め設定した時間遅れが生じるよう追従させて、ミル通常起動時にミル４から出炭されると予測される出炭量模擬信号２０が、図４中、ａ側に切り換えられた切換器２１へ出力され、該切換器２１から前記出炭量模擬信号２０が出炭量２２として出力される。
【００１０】
尚、図５に示した例においては、給炭量１１は、給炭機起動指令１４が出力されて給炭機３が起動された時点で“０”からｚ［ｔｏｎ／ｈ］となり、続いて、ｚ［ｔｏｎ／ｈ］の状態が所定時間継続した後、ある傾斜角度で増加して行き、ｙ［ｔｏｎ／ｈ］となった時点でミル４の起動が完了し定常運転に移行するようになっている。
【００１１】
一方、前記ミル４の起動が完了し、定常運転に移行すると、前記切換器２１が、図４中、ｂ側に切り換えられ、給炭機３からミル４へ投入される給炭量１１が切換器２１を介してそのまま出炭量２２として出力される。
【００１２】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述の如く、単に一次遅れ器１９を設けて出炭量模擬信号２０を作成するのでは、ミル通常起動時における出炭量２２増加の傾きを一義的に決まるカーブでしか設定することができないため、実際の出炭量との誤差が依然として残ってしまい、精度的に見て充分であるとは言えず、ミル通常起動時に発生する外乱を充分に抑制することができず、依然としてミル４の起動を安定化させることは困難となっていた。
【００１３】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ミル通常起動時にミルから出炭されると予測される出炭量を精度よく求めることができ、ミル通常起動時に発生する外乱を充分に抑制し得、安定したミル起動を行い得る石炭焚ボイラのミル通常起動時における出炭量算出装置を提供しようとするものである。
【００１４】
【課題を解決するための手段】
【００１５】
本発明は、ミル通常起動時における給炭機３起動時には信号発生器２３から出力される“１”の信号２４を信号２８として出力する一方、定常運転時には信号発生器２５から出力される“０”の信号２６を信号２８として出力する切換器２７と、
該切換器２７から出力される信号２８が“０”から“１”へ変化した場合に、その変化率を設定値以下の範囲内に制限する処理を行って変化率補正信号３０を出力する変化率制限器２９と、
該変化率制限器２９から出力される変化率補正信号３０に基づき出炭量模擬ゲイン３２を求めて出力する関数発生器３１と、
該関数発生器３１から出力される出炭量模擬ゲイン３２を給炭機３からミル４へ投入される給炭量１１に掛け、ミル通常起動時にミル４から出炭されると予測される出炭量模擬信号３４を出力する乗算器３３と、
ミル通常起動時における給炭機３起動時には前記乗算器３３から出力される出炭量模擬信号３４を出炭量２２として出力する一方、定常運転時には前記給炭量１１をそのまま出炭量２２として出力する切換器２１と
を備えたことを特徴とする石炭焚ボイラのミル通常起動時における出炭量算出装置にかかるものである。
【００１６】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【００１７】
【００１８】
本発明の石炭焚ボイラのミル通常起動時における出炭量算出装置においては、ミル４を起動するために、該ミル４に対応する給炭機３が起動されると、給炭機３からミル４へ投入される給炭量１１は“０”から所定の値となる一方、信号発生器２３から出力される“１”の信号２４が切換器２７から信号２８として変化率制限器２９へ出力され、該変化率制限器２９において、“０”から“１”へ変化した切換器２７からの信号２８の変化率を設定値以下の範囲内に制限する処理が行われ、変化率補正信号３０が関数発生器３１へ出力され、該関数発生器３１において前記変化率制限器２９から出力される変化率補正信号３０に基づき出炭量模擬ゲイン３２が求められて乗算器３３へ出力され、該乗算器３３において、前記関数発生器３１から出力される出炭量模擬ゲイン３２が前記給炭量１１に掛けられ、ミル通常起動時にミル４から出炭されると予測される出炭量模擬信号３４が切換器２１へ出力され、該切換器２１から前記出炭量模擬信号３４が出炭量２２として出力される。
【００１９】
一方、前記ミル４の起動が完了し、定常運転に移行すると、前記切換器２１が切り換えられ、給炭機３からミル４へ投入される給炭量１１が切換器２１を介してそのまま出炭量２２として出力される。
【００２０】
ここで、従来のように、単に一次遅れ器１９を設けて出炭量模擬信号２０を作成するのでは、ミル通常起動時における出炭量２２増加の傾きを一義的に決まるカーブでしか設定することができないが、本発明の場合には、変化率制限器２９と関数発生器３１との組合せにより、出炭量２２増加の傾きを、実機でのテストデータに対応させた時間の関数として設定することができるため、前記切換器２１から出力される出炭量２２と実際の出炭量との誤差が最小限に抑えられ、ミル通常起動時に発生する外乱が充分に抑制され、ミル４の起動が安定化する。
【００２１】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【００２２】
図１及び図２は本発明を実施する形態の一例であって、図中、図３〜図５と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、２７はミル通常起動時における給炭機３起動時には信号発生器２３から出力される“１”の信号２４を信号２８として出力する一方、定常運転時には信号発生器２５から出力される“０”の信号２６を信号２８として出力する切換器、２９は前記切換器２７から出力される信号２８が“０”から“１”へ変化した場合に、その変化率を設定値以下の範囲内に制限する処理を行って変化率補正信号３０を出力する変化率制限器、３１は前記変化率制限器２９から出力される変化率補正信号３０に基づき出炭量模擬ゲイン３２を求めて出力する関数発生器、３３は前記関数発生器３１から出力される出炭量模擬ゲイン３２を給炭機３からミル４へ投入される給炭量１１に掛け、ミル通常起動時にミル４から出炭されると予測される出炭量模擬信号３４を出力する乗算器であり、ミル通常起動時における給炭機３起動時には前記乗算器３３から出力される出炭量模擬信号３４を、図１中、ａ側に切り換えられた切換器２１から出炭量２２として出力する一方、定常運転時には前記給炭量１１を、図１中、ｂ側に切り換えられた切換器２１からそのまま出炭量２２として出力するよう構成してある。
【００２３】
尚、前記変化率制限器２９の変化率と、関数発生器３１の関数は、それぞれ予め行ったテストデータに基づいて設定するようになっている。
【００２４】
次に、上記図示例の作動を説明する。
【００２５】
ミル４を起動するために、該ミル４に対応するコールバンカ１の石炭ゲート９が開放され、且つ給炭機３を起動する給炭機起動指令１４が出力されて給炭機３が起動されると、図２に示す如く、給炭機３からミル４へ投入される給炭量１１は“０”からｚ［ｔｏｎ／ｈ］となる一方、信号発生器２３から出力される“１”の信号２４が切換器２７から信号２８として変化率制限器２９へ出力され、該変化率制限器２９において、“０”から“１”へ変化した切換器２７からの信号２８の変化率を設定値以下の範囲内に制限する処理が行われ、変化率補正信号３０が関数発生器３１へ出力され、該関数発生器３１において前記変化率制限器２９から出力される変化率補正信号３０に基づき出炭量模擬ゲイン３２が求められて乗算器３３へ出力され、該乗算器３３において、前記関数発生器３１から出力される出炭量模擬ゲイン３２が前記給炭量１１に掛けられ、ミル通常起動時にミル４から出炭されると予測される出炭量模擬信号３４が、図１中、ａ側に切り換えられた切換器２１へ出力され、該切換器２１から前記出炭量模擬信号３４が出炭量２２として出力される。
【００２６】
一方、前記ミル４の起動が完了し、定常運転に移行すると、前記切換器２１が、図１中、ｂ側に切り換えられ、給炭機３からミル４へ投入される給炭量１１が切換器２１を介してそのまま出炭量２２として出力される。
【００２７】
ここで、従来のように、単に一次遅れ器１９を設けて出炭量模擬信号２０を作成するのでは、ミル通常起動時における出炭量２２増加の傾きを一義的に決まるカーブでしか設定することができないが、本図示例の場合には、変化率制限器２９と関数発生器３１との組合せにより、出炭量２２増加の傾きを、実機でのテストデータに対応させた時間の関数として設定することができるため、前記切換器２１から出力される出炭量２２と実際の出炭量との誤差が最小限に抑えられ、ミル通常起動時に発生する外乱が充分に抑制され、ミル４の起動が安定化する。
【００２８】
こうして、ミル通常起動時にミル４から出炭されると予測される出炭量２２を精度よく求めることができ、ミル通常起動時に発生する外乱を充分に抑制し得、安定したミル起動を行い得る。
【００２９】
尚、本発明の石炭焚ボイラのミル通常起動時における出炭量算出装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【００３０】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明の石炭焚ボイラのミル通常起動時における出炭量算出装置によれば、ミル通常起動時にミル４から出炭されると予測される出炭量２２を精度よく求めることができ、ミル通常起動時に発生する外乱を充分に抑制し得、安定したミル起動を行い得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明を実施する形態の一例のブロック図である。
【図２】 本発明を実施する形態の一例のタイムチャート図である。
【図３】 一般的な石炭焚ボイラの石炭の供給系統を表わす概略図である。
【図４】 従来の石炭焚ボイラのミル通常起動時における出炭量算出装置の一例を表わすブロック図である。
【図５】 図４に示す従来例のタイムチャート図である。
【符号の説明】
３ 給炭機
４ ミル
１１ 給炭量
２１ 切換器
２２ 出炭量
２３ 信号発生器
２４ 信号
２５ 信号発生器
２６ 信号
２７ 切換器
２８ 信号
２９ 変化率制限器
３０ 変化率補正信号
３１ 関数発生器
３２ 出炭量模擬ゲイン
３３ 乗算器
３４ 出炭量模擬信号

Claims (1)

1. ミル通常起動時における給炭機（３）起動時には信号発生器（２３）から出力される“１”の信号（２４）を信号（２８）として出力する一方、定常運転時には信号発生器（２５）から出力される“０”の信号（２６）を信号（２８）として出力する切換器（２７）と、
   該切換器（２７）から出力される信号（２８）が“０”から“１”へ変化した場合に、その変化率を設定値以下の範囲内に制限する処理を行って変化率補正信号（３０）を出力する変化率制限器（２９）と、
   該変化率制限器（２９）から出力される変化率補正信号（３０）に基づき出炭量模擬ゲイン（３２）を求めて出力する関数発生器（３１）と、
   該関数発生器（３１）から出力される出炭量模擬ゲイン（３２）を給炭機（３）からミル（４）へ投入される給炭量（１１）に掛け、ミル通常起動時にミル（４）から出炭されると予測される出炭量模擬信号（３４）を出力する乗算器（３３）と、
   ミル通常起動時における給炭機（３）起動時には前記乗算器（３３）から出力される出炭量模擬信号（３４）を出炭量（２２）として出力する一方、定常運転時には前記給炭量（１１）をそのまま出炭量（２２）として出力する切換器（２１）と
   を備えたことを特徴とする石炭焚ボイラのミル通常起動時における出炭量算出装置。

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