JP3831624B2 - バリアフィルムの製造方法とこの製造方法で製造されたバリアフィルムを用いた積層材および包装用容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はバリアフィルムとこれを用いた積層材および包装用容器に係り、特に優れたバリア性と耐衝撃性を備えるバリアフィルムと、優れた充填包装適性、保存適性および後加工適性を有する積層材、包装用容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、酸素ガスおよび水蒸気等に対するバリア性を備え、食品や医薬品等の良好な保存適性を有する包装用材料として、種々のものが開発され提案されており、例えば、可撓性プラスチック基材の上にポリ塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体のコーテンィグ層を設けた構成からなるバリアフィルムが提案されている。
【0003】
しかし、これらのバリアフィルムにおいては、酸素、水蒸気に対するバリア性が十分でなく、特に高温での殺菌処理においてバリア性の著しい低下が生じるという問題があった。さらに、ポリ塩化ビニリデンのコーティング層を設けたバリアフィルムは、焼却時に有毒なダイオキシンを発生し、環境への悪影響が懸念されている。
そこで、近年、基材フィルムの上に酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を設けた構成からなるバリアフィルム、また、それらを使用した包装用積層材および包装用容器等が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらのバリアフィルムは、従来のアルミニウム箔等を使用した包装用積層材等と比較して透明性に優れ、環境への影響もほとんどなく、包装用材料等にその需要が大いに期待されているものである。しかし、これらのバリアフィルムのバリア性は、アルミニウム箔を使用した包装用積層材に比べて未だ低いものであり、高いバリア性と保香性等が要求される用途においては、実用性に問題があった。さらに、基材フィルムと蒸着膜との密着性が不十分であったり、蒸着膜の強度が不十分であり、剥離が生じたり耐衝撃性が低いという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高いバリア性を有し、耐衝撃性にも優れたバリアフィルムと、さらに後加工適性を有する積層材と、内容物の充填包装適性が良好な包装用容器を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明のバリアフィルムの製造方法は、基材フィルムの少なくとも一方の面に化学気相蒸着(CVD)法によりポリアミック酸からなる樹脂層を形成し、該樹脂層上に真空蒸着法、イオンプレーティング法およびスパッタリング法のいずれかによりAlO x ( x は1.0〜1.8の範囲)からなる薄膜を成膜してバリア層とするような構成とした。
本発明のバリアフィルムの製造方法の好ましい態様として、前記バリア層の厚みを5〜300nmの範囲とするような構成とした。
【0007】
本発明の積層材は、上記の製造方法により製造したバリアフィルムの少なくとも一方の面にヒートシール性樹脂層を設けたような構成とした。
また、本発明の積層材は、上記の製造方法により製造したバリアフィルムのバリア層上にヒートシール性樹脂層を設けたような構成、バリア層が形成されていない基材フィルム上に基材を積層して備えるような構成、さらに、基材上にヒートシール性樹脂層を備えるような構成とした。
また、本発明の積層材の好ましい態様として、バリア層とヒートシール性樹脂層との間にアンカーコート剤層および/または接着剤層を有するような構成とした。
【0008】
本発明の包装用容器は、上記の積層材を用い、ヒートシール性樹脂層を熱融着して製袋または製函したような構成とした。
このような本発明では、バリア層が真空蒸着法、イオンプレーティング法およびスパッタリング法のいずれかにより成膜したAlOxからなるので緻密であり、バリアフィルムに優れたバリアー性および耐衝撃性を付与し、また、樹脂層がバリア層と基材フィルムとの密着性を向上させるとともに、バリア性も向上させる作用をなし、このバリアフィルムを用いた積層材は、上記の各特性に加えヒートシール性樹脂層による後加工適性が付与され、この積層材を製袋または製函した包装用容器は優れた内容物の充填包装適性が備えられている。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
バリアフィルム
図1は本発明のバリアフィルムの一実施形態を示す概略断面図である。図1においてバリアフィルム1は基材フィルム2と、この基材フィルム2の一方の面に樹脂層3を介して形成されたバリアー層4とからなる。尚、本発明のバリアフィルムは、基材フィルム2の両面に樹脂層3とバリア層4を積層するものでもよい。また、樹脂層3とバリア層4との積層を2回以上繰り返して形成してもよい。
【0010】
(基材フィルム)
本発明のバリアフィルム1を構成する基材フィルム2は、樹脂層3とバリア層4を保持し得るフィルムであれば特に制限はなく、バリアフィルム1の使用目的等から適宜選択することができる。具体的には、基材フィルム2としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の延伸(一軸ないし二軸)または未延伸の可撓性透明樹脂フィルムを用いることができる。基材フィルム2の厚さとしては、5〜500μm、好ましくは10〜100μmの範囲内で適宜設定することができる。
【0011】
(樹脂層)
本発明のバリアフィルム1を構成する樹脂層3は、基材フィルム2とバリア層4との密着性を向上させ、かつ、バリア性も向上させるためのものである。このような樹脂層3は、ポリアミック酸、ポリエチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリアゾメチン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等の市販の樹脂材料、および、上述の基材フィルムに使用する樹脂材料、後述の積層材に使用するアンカーコート剤、接着剤、ヒートシール性樹脂材料等の1種、または、2種以上の組み合わせにより形成することができる。
【0012】
樹脂層3の形成は、従来公知の真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理蒸着法、化学気相蒸着(CVD)法等によるドライ形成法、あるいは、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレイコート等のコーティング法でコーティングし、その後、溶剤や希釈剤等を乾燥除去して形成するウエット形成法により行うことができ、使用する材料等により形成方法は適宜選択することができる。また、樹脂層3の形成を真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理蒸着法により行う場合、後述するバリア層4の形成の際に、同一の成膜装置内でインラインで樹脂層3の形成を行うこともできる。樹脂層3の厚みは、使用する材料により適宜設定することが好ましいが、例えば、5〜5×105nm程度の範囲で設定することができる。
【0013】
(バリア層)
本発明のバリアフィルム1を構成するバリア層4は、真空蒸着法、イオンプレーティング法およびスパッタリング法のいずれかにより形成した酸化アルミニウムAlOxからなる薄膜である。このような方法により成膜し、かつ、酸化アルミニウムAlOxにおける酸素量Xを1.0〜1.8の範囲で設定することにより、バリア層4は透明性とバリア性を兼ね備えた緻密な薄膜となる。
【0014】
バリア層4は、厚みが5〜500nm、好ましくは10〜100nmの範囲で適宜設定することができる。バリア層4の厚みが5nm未満であると、良好なバリア性(酸素透過率が0.5cc/m2・day・atm以下、水蒸気透過率が0.5g/m2・day以下程度を指す)を発現できず、500nmを超えると、応力が大きくかかり、基材フィルムがフレキシブルな場合、クラックが生じバリア性が低下するとともに、成膜に要する時間が長くなり好ましくない。
【0015】
また、バリア層4は、主体とするAlOxの他に、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ナトリウム、チタン、ジルコニウム、イットリウム等の金属や、炭素、ホウ素、窒素、フッ素等の非金属元素を含有していてもよい。
尚、本発明においては、上記のようなバリア層4に、後加工適性を向上させる目的で、コロナ処理、プラズマ処理、シランカップリング剤処理等の表面処理を施してもよい。
【0016】
積層材
次に、本発明の積層材について、上述の本発明のバリアフィルム1を用いた例を挙げて説明する。
図2は、本発明の積層材の実施形態を示す概略断面図である。図2において積層材11は、基材フィルム2の一方の面に樹脂層3を介してバリア層4を備えたバリアフィルム1と、このバリアフィルム1のバリア層4上にアンカーコート剤層および/または接着剤層12を介して形成したヒートシール性樹脂層13とを備えている。
【0017】
積層材11を構成するアンカーコート剤層12は、例えば、アルキルチタネート等の有機チタン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、ポリブタジエン系アンカーコート剤等を使用して形成することができる。アンカーコート剤層12の形成は、上記のようなアンカーコート剤を、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレイコート等の公知のコーティング法でコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去して行うことができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m2 (乾燥状態)程度が好ましい。
【0018】
また、積層材11を構成する接着剤層12は、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリ(メタ)アクリル系、ポリ酢酸ビニル系、ポリオレフィン系、カゼイン、ワックス、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリブタジエン系等のビヒクルを主成分とする溶剤型、水性型、無溶剤型、あるいは、熱溶融型等の各種のラミネート用接着剤を使用して形成することができる。接着剤層12の形成は、上記のようなラミネート用接着剤を、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デッブコート、スプレイコート、その他のコーティング法でコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去して行うことができる。上記のラミネート用接着剤の塗布量としては0.1〜5g/m2 (乾燥状態)程度が好ましい。
【0019】
積層材11を構成するヒートシール性樹脂層13に用いるヒートシール性樹脂としては、熱によって溶融し相互に融着し得る樹脂を挙げることができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレンーメタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を使用することができる。ヒートシール性樹脂層13は、上述のようなヒートシール性樹脂を塗布して形成してもよく、また、上述のようなヒートシール性樹脂からなるフィルムないしシートをラミネートして形成してもよい。このようなヒートシール性樹脂層13の厚みは、5〜300μm、好ましくは10〜100μmの範囲内で設定することができる。
【0020】
図3は、本発明の積層材の他の実施形態を示す概略断面図である。図3において積層材21は、基材フィルム2の一方の面に樹脂層3を介してバリア層4を備えたバリアフィルム1と、このバリアフィルム1のバリア層4上にアンカーコート剤層および/または接着剤層22を介して形成したヒートシール性樹脂層23と、バリアフィルム1の基材フィルム2の他方の面(バリア層非形成面)に設けられた基材24とを備えている。
【0021】
積層材21を構成するアンカーコート剤層、接着剤層22およびヒートシール性樹脂層23は、上述の積層材11を構成するアンカーコート剤層、接着剤層12およびヒートシール性樹脂層13と同様とすることができ、ここでの説明は省略する。
【0022】
積層材21を構成する基材24としては、例えば、積層材21が包装用容器を構成する場合、基材24が基本素材となることから、機械的、物理的、化学的、その他等において優れた性質を有し、特に、強度を有して強靭であり、かつ耐熱性を有する樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。具体的には、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂等の強籾な樹脂の延伸(一軸ないし二軸)または未延伸のフィルムないしシートを挙げることができる。この基材24の厚みは、5〜100μm、好ましくは10〜50μm程度が望ましい。
【0023】
また、本発明においては、基材24に、例えば、文字、図形、記号、絵柄、模様等の所望の印刷絵柄を通常の印刷法で表刷り印刷あるいは裏刷り印刷が施されていてもよい。このような文字等は、積層材21を構成するバリアフィルム1を介して視認することができる。
【0024】
図4は、本発明の積層材の他の実施形態を示す概略断面図である。図4において積層材31は、基材フィルム2の一方の面に樹脂層3を介してバリア層4を備えたバリアフィルム1と、このバリアフィルム1のバリア層4上にアンカーコート剤層および/または接着剤層32を介して形成したヒートシール性樹脂層33と、バリアフィルム1の基材フィルム2の他方の面(バリア層非形成面)に設けられた基材34と、この基材34上に形成したヒートシール性樹脂層35とを備えている。
【0025】
積層材31を構成するアンカーコート剤層、接着剤層32およびヒートシール性樹脂層33,35は、上述の積層材11を構成するアンカーコート剤層、接着剤層12およびヒートシール性樹脂層13と同様とすることができ、また、積層材31を構成する基材34は、上述の積層材21を構成する基材24と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0026】
尚、本発明の積層材には、さらに、例えば、水蒸気、水等のバリア性を有する低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等の樹脂のフィルムないしシート、あるいは、酸素、水蒸気等に対するバリア性を有するポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物等の樹脂のフィルムないしシート、樹脂に顔料等の着色剤、その他、所望の添加剤を加えて混練してフィルム化してなる遮光性を有する各種の着色樹脂のフィルムないしシート等を使用することができる。これらの材料は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができ、厚みは任意であるが、通常、5〜300μm、好ましくは10〜100μm程度である。
【0027】
さらに、包装用容器の用途に本発明の積層材が使用される場合、通常、包装用容器は物理的にも化学的にも過酷な条件におかれることから、積層材にも厳しい包装適性が要求される。具体的には、変形防止強度、落下衝撃強度、耐ピンホール性、耐熱性、密封性、品質保全性、作業性、衛生性、その他等の種々の条件が要求され、このため、本発明の積層材には、上記のような諸条件を充足する材料を任意に選択して、基材フィルム1、基材24,34、あるいは、他の構成部材として使用することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ一樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロース等の公知の樹脂のフィルムまたはシートから任意に選択して使用することができる。その他、例えば、セロハン等のフィルムも使用することができる。
【0028】
上記のフィルムまたはしシートは、未延伸、一軸あるいは二軸方向に延伸されたもの等のいずれも使用することができる。また、その厚さは、任意であるが、数μmから300μm程度の範囲から選択して使用することができ、積層位置は特に制限はない。また、本発明において、上記のフィルムやシートは、押し出し成膜、インフレーション成膜、コーティング膜等のいずれの性状の膜でもよい。
【0029】
上述の積層材11,21,31のような本発明の積層材は、通常の包装材料をラミネートする方法、例えば、ウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、Tダイ押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法、共押し出しインフレーション法等を用いて製造することができる。
【0030】
尚、上記の積層を行う際に、必要ならば、例えば、コロナ処理、オゾン処理等の前処理をフィルムに施すことができ、また、例えば、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系等のアンカーコーティング剤、あるいはポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系等のラミネート用接着剤等の公知の接着剤等を使用することができる。
【0031】
包装用容器
次に、本発明の包装用容器について説明する。
本発明の包装用容器は、本発明の積層材を用いて熱融着により製袋または製函したものである。
【0032】
具体的には、包装用容器が軟包装袋の場合、本発明の積層材のヒートシール性樹脂層の面を対向させて折り重ねるか、あるいは、本発明の積層材二枚を重ね合わせ、その周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、その他等のヒートシール形態により熱融着してシール部を形成するこにより、本発明にかかる種々の形態の包装用容器を製造することができる。
上記において、熱融着は、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0033】
図5は、上記のような本発明の包装用容器の一実施形態を示す斜視図である。図5において包装用容器51は、1組の本発明の積層材11を、そのヒートシール性樹脂層13が対向するように重ね合わせ、この状態で周辺部の三方において熱融着を行ってシール部52を形成したものである。この包装用容器は51は、周辺部の残りの一方に形成された開口部53から内容物を充填することができる。そして、内容物を充填した後に、上記開口部53を熱融着してシール部を形成することにより、内容物を充填包装した包装用容器とすることができる。
【0034】
本発明の包装用容器は、上記の他に、例えば、自立性包装袋(スタンデイングパウチ)等も可能であり、さらに、本発明の積層材を使用してチューブ容器等も製造することができる。
尚、本発明においては、上記のような包装用容器に、例えば、ワンピースタイプ、ツウーピースタイプ、その他の注出ロ、あるいは開閉用ジッパー等を任意に取り付けることができる。
【0035】
また、本発明の包装用容器は、まず本発明の積層材を使用して所望の容器を製造するためのブランク板を作製し、このブランク板を使用して胴部、底部、頭部等を形成することにより、例えば、ブリックタイプ、フラットタイプあるいはゲーベルトップタイプの液体用容器等を製造することができる。また、その形状は、角形容器、丸形等の円筒状の缶等、いずれの形状でも製造することができる。
【0036】
図6は、本発明の包装用容器である上記の液体充填用紙容器の一実施形態を示す斜視図であり、図7は、図6に示される包容用容器に用いるブランク板の平面図である。ブランク板70は、例えば、図4に示される本発明の積層材31を使用し、容器形成における折り曲げ加工用の押圧線m,m・・・と、容器61の胴部62を構成する胴部パネル71,72,73,74と、容器61の頂部63を構成する頂部パネル71a,72a,73a,74aと、容器61の底部64を構成する底部パネル71b,72b,73b,74bと、筒体形成用の熱融着用パネル75とを備えるように打ち抜き加工して作製されたものである。このブランク板70を押圧線m,m・・・で折り曲げ、胴部パネル71の端部内側と熱融着用パネル75の外側とを熱融着して筒体を形成し、その後、底部パネル71b,72b,73b,74bを押圧線m,m・・・で折り曲げ熱融着し、頂部の開口から液体を充填した後に、頂部パネル71a,72a,73a,74aを押圧線m,m・・・で折り曲げ熱融着することにより、液体を充填包装した包装用容器61とすることができる。
本発明の包装用容器は、種々の飲食品、接着剤、粘着剤等の化学品、化粧品、医薬品、ケミカルカイロ等の雑貨品、その他等の種々の物品に使用されるものである。
【0037】
【実施例】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
基材フィルムとして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製ルミラーS−10、厚み25μm、600mm幅×4000m)を準備し、下記組成の樹脂層用塗工液をグラビアリバース法により塗布(塗布量0.8g/m2(乾燥状態))し、乾燥(100℃)した。これにより、基材フィルム上にポリエステル系樹脂(非結晶)からなる樹脂層(厚み1.0μm)が形成された。
【0038】
樹脂層用塗工液の組成
・ポリエステル(東洋紡績(株)製バイロン#500)… 50重量部
・ポリエステル(東洋紡績(株)製バイロン#280)… 50重量部
・メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比) … 100重量部
・イソシアネート硬化剤 … 1重量部
(ザ・インクテック(株)製XEL硬化剤D)
【0039】
次に、樹脂層を形成した基材フィルムを、真空蒸着装置(ライボルト(株)製)のチャンバー内に載置した。
次いで、チャンバー内を、油回転ポンプおよび油拡散ポンプにより、到達真空度2×10-3Paまで減圧した。また、蒸発源としてアルミニウム(日軽産業(株)製 純度99.5%)を用い、セラミックスるつぼに入れた。次に、電子銃を使用し、約17kWの電力を印加して蒸発源を加熱した。同時に、チャンバー内に酸素ガスを0.5slmの流量で導入し、酸素雰囲気下でバリア層の成膜を行った。バリア層の膜厚は、光学膜厚計で蒸着中の光透過度、すなわち、膜厚をモニターし、20nmまで成膜した。この成膜時のチャンバー内の圧力は2.0×10-2Paに保った。これにより、酸化アルミニウムAlOxからなるバリア層が樹脂層上に形成され、バリアフィルムを得た。
【0040】
このように作製したバリアフィルムは、酸素透過率が0.2cc/m2・day・atm、水蒸気透過率が0.4g/m2・dayであり、優れたバリア性を有するものであった。また、バリア層を構成する酸化アルミニウムAlOxの酸素量はX=1.6であった。
【0041】
さらに、上記のバリアフィルムを用いて図5に示されるような三方シール型のプラスチック袋を製造し、内容物としてハムを充填して7日間放置した。この一連の加工における透明バリアフィルムの後加工適性、包装用容器の充填包装適性は良好であり、放置後の内容物の品質は良好であった。
【0042】
尚、酸素透過率、水蒸気透過率、および、バリア層の組成は、以下の方法により測定した。また、後加工適性、充填包装適性および品質維持適性の評価は、以下の方法により行った。
酸素透過率
酸素ガス透過率測定装置(モダンコントロール社製 MOCON OX-TRAN 2/20)を用いて、温度23℃、湿度50%RHで測定した。
【0043】
水蒸気透過率
水蒸気透過率測定装置(モダンコントロール社製 MOCON PERMATRAN-W 3/31)を用いて、温度38℃、湿度100%RHで測定した。
【0044】
バリア層の組成
X線光電子分光(XPS)法により測定した。
【0045】
後加工適性・充填包装適性・品質維持適性
2液硬化型ポリウレタン系樹脂の7%溶液からなる接着剤を使用し、作製したバリアフィルムのバリア層に接着剤層(厚み1μm)を形成した。次いで、この接着剤層上に、低密度ポリエチレンを押し出しコートして、厚み60μmのヒートシール性樹脂層を形成し、図2に示されるような層構成の積層材を作製した。次に、この積層材を使用し、製袋機により製袋して図5に示されるような三方シール型のプラスチック袋を製造し、このプラスチック袋に内容物の変色が色で容易に判断できるハムを充填した後、開口部を熱融着して充填包装製品を製造し、この一連の加工における適性を評価した。また、充填包装製品を30℃で7日間放置した後の内容物の品質を検査した。
【0046】
[実施例2]
基材フィルムとしてシート状の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製ルミラーS−10、厚み25μm、大きさ200mm×150mm)を準備し、CVD装置(アネルバ(株)製PED−401)のチャンバー内に装着した。次いで、チャンバー内を、油回転ポンプおよび油拡散ポンプにより、到達真空度3.0×10-5Paまで減圧した。
【0047】
次に、原料ガスとして、4,4−ジアミノジフェニルエーテルを流量制御しながら180℃に加熱した気化器によって気化してチャンバーに供給した。また、原料ガスとして、ピロメリット酸二無水物を流量制御しながら200℃に加熱した気化器によって気化してチャンバーに供給した。これにより、基材フィルム上にポリアミック酸からなる樹脂層(厚み20nm)が形成された。尚、樹脂層の組成は、赤外分光分析のATR法により分析して同定した。
次に、樹脂層を形成した基材フィルムの樹脂層上に、実施例1と同様にして、酸化アルミニウムAlOxからなるバリア層を形成してバリアフィルムを得た。
【0048】
このバリアフィルムについて、実施例1と同様に、酸素透過率および水蒸気透過率を測定した結果、酸素透過率が0.1cc/m2・day・atm、水蒸気透過率が0.2g/m2・dayであり、優れたバリア性を有するものであった。また、バリア層を構成する酸化アルミニウムAlOxの酸素量はX=1.6であった。
【0049】
さらに、上記のバリアフィルムを用いて実施例1と同様に三方シール型のプラスチック袋を製造し、内容物としてハムを充填して7日間放置した。この一連の加工における透明バリアフィルムの後加工適性、包装用容器の充填包装適性は良好であり、放置後の内容物の品質は良好であった。
【0050】
[比較例]
樹脂層を形成しない他は、実施例1と同様にして、バリアフィルムを作製した。このバリアフィルムについて、実施例1と同様に、酸素透過率および水蒸気透過率を測定した結果、酸素透過率が2.0cc/m2・day・atm、水蒸気透過率が2.0g/m2・dayであり、バリア性が悪いものであった。
【0051】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば真空蒸着法、イオンプレーティング法およびスパッタリング法のいずれかにより成膜したAlOxからなるバリア層が緻密であり、かつ、樹脂層がバリア層と基材フィルムとの間に介在することにより、バリアフィルムは優れたバリアー性および耐衝撃性を有し、曲げなどによるクラックの発生がなく高いバリア性を安定して維持することができ、また、廃棄時における環境上の問題やバリア性の湿度依存もない。このバリアフィルムを用いた積層材は、上記の各特性に加えヒートシール性樹脂層による後加工適性を備えるものであり、このような積層材を製袋または製函した包装用容器は、内容物の品質維持が可能で、充填包装適性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のバリアフィルムの一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明のバリアフィルムを用いた積層材の一実施形態を示す概略断面図である。
【図3】本発明のバリアフィルムを用いた積層材の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図4】本発明のバリアフィルムを用いた積層材の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図5】本発明のバリアフィルムを用いた包装用容器の一実施形態を示す概略断面図である。
【図6】本発明のバリアフィルムを用いた包装用容器の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図7】図7に示される包装用容器の製造に使用するブランク板の平面図である。
【符号の説明】
1…バリアフィルム
2…基材フィルム
3…樹脂層
4…バリア層
11,21,31…積層材
12,22,32…アンカーコート剤層、接着剤層
13,23,33…ヒートシール性樹脂層
24,34…基材
35…ヒートシール性樹脂層
51,61…包装用容器
Claims (8)
- 基材フィルムの少なくとも一方の面に化学気相蒸着(CVD)法によりポリアミック酸からなる樹脂層を形成し、該樹脂層上に真空蒸着法、イオンプレーティング法およびスパッタリング法のいずれかによりAlO x ( x は1.0〜1.8の範囲)からなる薄膜を成膜してバリア層とすることを特徴とするバリアフィルムの製造方法。
- 前記バリア層の厚みを5〜300nmの範囲とすることを特徴とする請求項1に記載のバリアフィルムの製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載の製造方法により製造したバリアフィルムの少なくとも一方の面にヒートシール性樹脂層を設けたことを特徴とする積層材。
- 請求項1または請求項2に記載の製造方法により製造したバリアフィルムのバリア層上にヒートシール性樹脂層を設けたことを特徴とする積層材。
- バリア層が形成されていない基材フィルム上に基材を積層して備えることを特徴とする請求項4に記載の積層材。
- 基材上にヒートシール性樹脂層を備えることを特徴とする請求項5に記載の積層材。
- バリア層とヒートシール性樹脂層との間にアンカーコート剤層および/または接着剤層を有することを特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれかに記載の積層材。
- 請求項3乃至請求項7のいずれかに記載の積層材を用い、ヒートシール性樹脂層を熱融着して製袋または製函したことを特徴とする包装用容器。
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