JP3831497B2 - Cr複合電子部品とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非磁性セラミック誘電体層を有する積層型のキャパシタに、抵抗ないしインピーダンス要素を付加したCR複合電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、電子機器の電源の多くには、スイッチング電源やDC−DCコンバータが用いられている。これらの電源に使用されるコンデンサとして電源バイパス用のコンデンサがある。この電源バイパス用コンデンサは、その電源容量やスイッチング周波数、併用される平滑コイル等の回路パラメータに応じて、低容量の積層セラミックコンデンサと、高容量のアルミあるいはタンタルといった電解コンデンサが用いられてきた。ところで、電解コンデンサは、容易に大容量が得られ、電源のバイパス用(平滑用)コンデンサとしては優れた面を有するが、大型で、低温特性に劣り、短絡事故の恐れがあり、しかも内部インピーダンスが比較的高いため、等価直列抵抗(ESR)による損失が定常的に発生し、それに伴う発熱を生じ、しかも周波数特性が悪く、平滑性が悪化するといった問題を有している。また、近年、技術革新により、積層セラミックコンデンサの誘電体や内部電極の薄層化、積層化技術の進展に伴い、積層セラミックコンデンサの静電容量が、電解コンデンサの静電容量に近づきつつある。このため、電解コンデンサを積層セラミックコンデンサに置き換えようとする試みも種々なされている。
【0003】
電源のバイパス用のコンデンサにおいては平滑作用を示すファクターとしてリップルノイズが重要である。リップルノイズをどの程度に抑えるかは、コンデンサの等価直列抵抗(ESR)により決まる。ここで、リップル電圧をΔVr 、チョ−クコイルに流れる電流をΔi、等価直列抵抗をESRとすると、
ΔVr =Δi×ESR
と表され、ESRを低下させることによりリップル電圧が抑制されることがわかる。従って、電源のバイパス回路においては、ESRの低いコンデンサを使用することが好ましく、ESRの低い積層セラミックコンデンサを電源回路に用いる試みもなされている。
【0004】
ところが、帰還回路を有するDC−DCコンバータやスイッチング電源等の2次側回路では、平滑回路のESRが帰還ループの位相特性に大きな影響を与え、特にESRが極端に低くなると問題を生じることがある。すなわち、平滑用コンデンサとしてESRの低い積層セラミックコンデンサを使用した場合、2次側平滑回路が等価的にLとC成分のみで構成されてしまい、回路内に存在する位相成分が±90°および0°のみとなり、位相の余裕がなくなり容易に発振してしまう。同様な現象は3端子レギュレータを用いた電源回路においても負荷変動時の発振現象として現れる。
【0005】
このため、積層セラミックコンデンサに抵抗成分を付加した、いわゆるCR複合電子部品も種々提案されている。例えば、特開平8−45784号公報には、積層セラミックコンデンサの端部を炭化物と還元剤を用いて半導体化した複合電子部品について記載されている。しかし、その製造方法は、積層セラミックコンデンサ素体に外部電極用ペーストを塗布し、これを一旦還元性雰囲気中で仮焼し、バインダーを炭化して残留させ、さらに700〜750℃で焼き付けることにより前記炭化物を還元剤として作用させ、半導体化させている。また抵抗値の制御は還元剤の量で行っている。しかし、この方法では半導体化する工程が複雑であり、端子電極を形成する工程を含めると、3回もの熱処理を必要とし、生産性が低下し、エネルギーコストが高くなる。しかも、抵抗値の制御が還元剤の量で行われているため、所望の値を正確に得ることが困難であり、回路設計が困難になると共に、製品間のバラツキも多く、量産化した場合の歩留まりも悪い。
【0006】
また、例えば、特開昭59−225509号公報に記載されているように、積層セラミックコンデンサに、さらに酸化ルテニウム等の抵抗体ペーストを積層し、これを同時焼成して抵抗体としたものも知られている。しかし、このものは、そのまま端子電極を設けた場合、等価回路がC/Rまたは(LC)/Rの並列回路となり、直列回路を得ることができない。また、直列回路を得るためには端子電極の形状が複雑となり、製造工程も複雑なものとなってしまう。
【0007】
特許第2578264号公報には、外部電極の表面に金属酸化膜を設けて所望の等価直列抵抗としたCR複合部品が記載されている。しかしながら、同公報の実施例に記載されているCR複合部品は、ニッケルの端子電極を加熱処理して金属酸化膜を形成するもので、抵抗値の調整はバレル研磨によりこの金属酸化膜の膜厚を調整することにより行っている。このため、所望の抵抗値を得ることが困難であり、抵抗値の調整も煩雑で量産性に劣る。また、形成された金属酸化膜の上に、さらにニッケル層を無電解メッキにより設けているが、この方法では端子部位以外にメッキが付着しないようマスクを設ける必要があり、製造工程が増加する。さらに付着した、ニッケルメッキと金属酸化膜との接着性が悪く、ニッケルメッキにリ−ド線を設けた場合、このリード線が容易に剥離してしまう。
【0008】
なお、平滑コンデンサに対して直列に抵抗を接続する方法もあるが、コストが高く実用的でない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、特別な焼成条件を必要とせず、製造工程も簡単で、生産コストも安く、CRまたは(L/C)R直列回路が簡単に得られ、抵抗値の制御も容易であり、リード線の接着強度も強固なCR複合電子部品およびその製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の(1)〜(12)の構成により達成される。
(1) 誘電体層と内部電極とが交互に積層されており、
前記内部電極と、CR複合電子部品の端部に形成された端子電極とがキャパシタとなるように電気的に接続され、
前記端子電極の少なくとも一方は内部電極側から第1〜第3の電極層を順次有し、
第1の電極層はFe,Co,CuおよびNiの1種または2種以上を含有し、
第2の電極層は前記第1の電極層の酸化物を含有し、
第3の電極層はAg,Au,Pt,Pd,Rh,IrおよびRuの1種または2種以上を含有し、
前記第2の電極層の厚さが、0.01〜50μmであるCR複合電子部品。
(2) 前記第2の電極層は、酸化物としてFeO,α−Fe2O3 ,γ−Fe2O3 ,Fe3O4 ,CoO,Co3O4 ,Cu2O,Cu3O4 ,CuO,NiOの1種または2種以上を含有する上記(1)のCR複合電子部品。
(3) 前記第1の電極層は、Ag,Au,Pt,Pd,Rh,IrおよびRuの1種または2種以上を10wt%以下含有する上記(1)または(2)のいずれかのCR複合電子部品。
(4) 前記第1〜第3の電極層は、ガラスを0〜20wt%含有する上記(1)〜(3)のいずれかのCR複合電子部品。
(5) 等価回路がCRまたは(LC)R直列回路を有する上記(1)〜(4)のいずれかのCR複合電子部品。
(6) 前記内部電極層がNiを含有する上記(1)〜(5)のいずれかのCR複合電子部品。
(7) 前記端子電極の外側にメッキ層を有する上記(1)〜(6)のいずれかのCR複合電子部品。
(8) 誘電体層と、内部電極層とを交互に積層してグリーンチップを形成し、
これを焼成してチップ体とし、
このチップ体に第1の電極層用ペーストを塗布し、中性または還元性雰囲気で焼成して第1および第2の電極層の前駆体を形成し、
さらにこの上に第3の電極層用ペーストを塗布し、
これを酸化性雰囲気中で焼成して、前記第1および第2の電極層の前駆体の第3の電極層との界面付近を酸化し、前記第1〜第3の電極層を形成して上記(1)〜(8)のいずれかのCR複合部品を得るCR複合電子部品の製造方法。
(9) 前記第1の電極層用ペーストまたは第2の電極層用ペーストは、平均粒径0.1〜10μm の金属粒子を有する上記(8)のCR複合電子部品の製造方法。
(10) 誘電体層と、内部電極層とを交互に積層してグリーンチップを形成し、
これを焼成してチップ体とし、
このチップ体に第1の電極層用ペーストを塗布し、
さらにこの上に第3の電極層用ペーストを塗布し、
中性または還元性雰囲気で焼成し、
冷却過程中にこれを酸化性雰囲気として、前記第1の電極層用ペースト焼成体の第3の電極層との界面付近を酸化し、前記第1、第2および第3の電極層を形成して上記(1)〜(7)のいずれかのCR複合部品を得るCR複合電子部品の製造方法。
(11) 誘電体層と、内部電極層とを交互に積層してグリーンチップを形成し、
このグリーンチップに第1の電極層用ペーストを塗布し、
さらにこの上に第3の電極層用ペーストを塗布し、
還元性雰囲気で焼成し、さらに冷却過程中で酸化性雰囲気として、前記第1の電極層用ペースト焼成体の第3の電極層との界面付近を酸化し、前記グリーンチップ、第1、第2および第3の電極層を形成して上記(1)〜(7)のいずれかのCR複合部品を得るCR複合電子部品の製造方法。
(12) 第1の電極層はNiを含有し、第3の電極層はPd,Pt,Rh,IrおよびRuの1種または2種以上を含有する上記(10)または(11)のCR複合電子部品の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のCR複合電子部品は、誘電体層と内部電極とが交互に積層されており、前記内部電極と、CR複合電子部品の端部に形成された端子電極とがキャパシタとなるように電気的に接続され、前記端子電極の少なくとも一方は内部電極側から第1〜第3の電極層を順次有し、第1の電極層はFe,Co,CuおよびNiの1種または2種以上を含有し、第2の電極層は前記第1の電極層の酸化物を含有し、第3の電極層はAg,Au,Pt,Pd,Rh,IrおよびRuの1種または2種以上を含有する。このように、端子電極を3層構造とし、第1の電極層の酸化物で第2の電極層を形成することにより、抵抗の高い第2の電極層が等価的にキャパシタに直列に接続される抵抗成分となり、コンデンサの等価直列抵抗(ESR)が制御されたCR複合電子部品となる。
【0012】
第1の電極層はFe,Co,CuおよびNiの1種または2種以上を含有し、好ましくはCu,NiおよびCu−Ni合金を含有する。また、これらの第1の電極層用金属に加えてAg,Au,Pt,Pd,Rh,IrおよびRu等の金属、特にAgを、好ましくは10wt%以下、より好ましくは5wt%以下程度含有していてもよい。前記第1の電極層用金属にこれらの金属を添加する場合、粉の状態で添加する必要はなく、第1の電極層用金属粒子にこれらの金属がコーティングされたものや、第1の電極層用金属と、これらの金属との傾斜機能粉末を用いてもよい。
【0013】
前記第1の電極層用金属の平均粒径は、好ましくは0.01〜100μm 、特に0.1〜30μm の範囲が好ましい。第1の電極層用金属の粒径が前記範囲より小さいと、複数の種類の金属を用いる場合、金属同士の凝集が激しくなり、焼成時に完全に金属成分同士が固溶し難くなる。第1の電極層用金属の粒径が前記範囲より大きいと、ペースト化が困難となってくる。
【0014】
第1の電極層あるいはその前駆体の形成方法としては、特に限定されるものではないが、通常のディッピング法、スクリーン印刷法、転写法、乾式メッキ法が好ましく、特にディッピング法が好ましい。形成される第1電極の厚さは、特に限定されるものではないが、通常5〜100μm 、特に10〜80μm 程度が好ましい。
【0015】
第1の電極層あるいはその前駆体をディッピング法等により設けるには、前記第1の電極層用金属と有機ビヒクルとを混練し、ペーストとしたものを用いればよい。端子電極ペーストには、通常前記第1の電極層用金属の他に無機結合剤としてのガラスフリット、有機バインダーおよび溶剤が含有される。端子電極ペーストの第1の電極層用金属の含有量は、好ましくは50〜90wt%、より好ましくは60〜80wt%程度の範囲が好ましい。
【0016】
また、第3の電極層は、第3の電極層用金属としてAg,Au,Pt,Pd,Rh,IrおよびRuの1種または2種以上を含有し、好ましくはAgまたはPt、Pdであり、特にAgを含有することが好ましい。第3電極層の形成方法は第1電極層に準ずればよい。形成される第3電極の厚さは、特に限定されるものではないが、通常5〜100μm 、特に10〜50μm 程度が好ましい。第3の電極層は第1の電極層の過剰な酸化を防止し、メッキ付き性を良好にする。第1の電極層が過剰に酸化された場合、容量が低下し、コンデンサとしての機能が著しく低下する。
【0017】
前記第3の電極層用金属の平均粒径は、好ましくは0.01〜100μm 、特に1〜30μm の範囲が好ましい。第3の電極層用金属の粒径が前記範囲より小さいと、複数の種類の金属を用いる場合、金属同士の凝集が激しくなり、焼成時に完全に金属成分同士が固溶し難くなる。第3の電極層用金属の粒径が前記範囲より大きいと、ペースト化が困難となってくる。
【0018】
第3の電極層の形成方法としては、第1の電極層と同様でよい。形成される第3電極の厚さは、特に限定されるものではないが、通常5〜100μm 、特に10〜80μm 程度が好ましい。
【0019】
第3の電極層をディッピング法等により設けるには、上記第1の電極層の場合に準ずればよい。端子電極ペーストの第1の電極層用金属の含有量は、好ましくは50〜95wt%、より好ましくは60〜90wt%程度の範囲が好ましい。
【0020】
第1の電極層と第3の電極層は、素体との密着性および導電材の焼結を補助するためのガラスを含有する。このようなガラスとして、特に限定されるものではないが、第1の電極層に用いる場合、還元性または中性雰囲気中で焼成するため、このような雰囲気中でもガラスとして機能するものであればよい。例えば、ケイ酸ガラス(SiO2 :20〜80wt%、Na2O:80〜20wt%)、ホウケイ酸ガラス(B2O3 :5〜50wt%、SiO2 :5〜70wt%、PbO:1〜10wt%、K2O:1〜15wt%)、アルミナケイ酸ガラス(Al2O3 :1〜30wt%、SiO2 :10〜60wt%、Na2O:5〜15wt%、CaO:1〜20wt%、B2O3 :5〜30wt%)から選択されるガラスフリットの、1種または2種以上を用いればよい。これに必要に応じて、CaO:0.01〜50wt%,SrO:0.01〜70wt%,BaO:0.01〜50wt%,MgO:0.01〜5wt%,ZnO:0.01〜70wt%,PbO:0.01〜5wt%,Na2 O:0.01〜10wt%,K2 O:0.01〜10wt%,MnO2 :0.01〜20wt%等の添加物を所定の組成比となるように混合して用いればよい。またこれらは総計で50wt%以下添加してもよい。ガラスの含有量は特に限定されるものではないが、通常、第1の電極層の場合、金属成分に対して0.5〜20wt%、好ましくは0.5〜15wt%程度、第3の電極層の場合、金属成分に対して0〜20wt%、好ましくは0.5〜15wt%程度である。第3の電極層にはガラスを有しなくてもよい。ガラスフリットの平均粒径としては、好ましくは0.01〜30μm 程度が好ましい。ガラスフリットの平均粒径が前記範囲より小さいと、ガラスの凝集が激しくなり、導電材の局所的な焼結効果をもたらし、端子電極のクラックを発生させる要因となる。平均粒径が前記範囲より大きいと、ガラスの分散が悪くなり、金属の固溶が抑制されると共に、端子電極とチップ体との接着性が低下してくる。
【0021】
有機バインダーとしては、特に限定されるものではなく、セラミックス材のバインダーとして一般的に使用されているものの中から、適宜選択して使用すればよい。このような有機バインダーとしては、エチルセルロース、アクリル樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられ、溶剤としてはターピネオール、テルピネオール、ブチルカルビトール、ケロシン等が挙げられる。ペースト中の有機バインダーおよび溶剤の含有量は、特に制限されるものではなく、通常使用されている量、例えば有機バインダー1〜5wt%、溶剤10〜50wt%程度とすればよい。
【0022】
さらに、第1の電極層および第3の電極層用ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等の添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10wt%以下であることが好ましい。
【0023】
第2の電極層は、第1の電極層(第1および第2の電極層の前駆体)に含有される第1の電極層用金属が酸化されることにより形成される。すなわち、酸化金属含有層である。第1の電極層上に第3の電極層を形成し、これを酸化性雰囲気中で焼成することにより第1の電極層の表面付近が酸化され、高抵抗の第2の電極層が形成される。従って、少なくとも第2の電極層と第3の電極層とは同時に焼成されることになる。
【0024】
この第2の電極層中に存在する酸化物は、前述のように第1の電極層中に含有される金属の酸化物であるが、全ての金属が酸化されている必要はなく、その一部が酸化されている状態であってもよい。この場合、酸化物は第2の電極層中の全金属量に対し、酸素換算で好ましくは10at%以上、より好ましくは25at%以上含有されていることが好ましい。形成される第2の電極層の厚さは、特に限定されるものではなく、所望のESRにより適宜調整すればよいが、通常0.01〜50μm 、特に0.05〜30μm 程度が好ましい。なお、第1の電極層(第1および第2の電極層の前駆体)が酸化されて形成されるため、この第2の電極層中にも前記第3の電極層用金属やガラスが存在することとなる。第2の電極層により得られるESRは、好ましくは1〜2000mΩ、特に10〜1000mΩ程度が好ましい。酸化物の存在は通常X線回折により、その組成はEPMA等により調べることができる。
【0025】
このような酸化により、CuではCu2O,Cu3O4 ,CuO等の1種または2種以上が生成し、Niでは通常NiOが生成する。これらの酸化物は化学量論組成から多少偏倚していてもよい。なお、第3の電極層用金属であるAg,Au,Pt,Pd,Rh,IrおよびRuは通常酸化されない。
【0026】
端子電極はいずれか一方の電極を上記構造として高抵抗化してもよく、あるいは双方を高抵抗化してもよい。また、端子電極における抵抗値は、第2の電極層の酸化物や最小厚さにより調製することができる。なお、高抵抗化した端子電極が双方に存在する場合、その抵抗値はそれぞれの電極における抵抗値の合計となる。
【0027】
<メッキ層>
端子電極には、その外側、つまり端子側にメッキ層を設けることが好ましい。メッキ層は、ニッケル、スズ、ハンダ等が挙げられ、好ましくはニッケルメッキ層と、スズあるいはスズ−鉛合金ハンダ層とから構成される。メッキ層は、端子電極側にニッケルメッキ層が形成され、その外側の構成材料としては、低抵抗率でハンダ濡れ性が良好なものが好ましく、スズあるいはスズ−鉛合金ハンダ等が好ましく、特に好ましくはスズ−鉛合金ハンダを設けたものが好ましい。メッキ層は、リード線を取り付ける際のハンダ濡れ性を改善すると共に、端子電極とリード線との接続を確実に行い、しかも、端子電極全体を覆うように形成されるため、端子電極の抵抗値が安定する。
【0028】
メッキ層を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、スパッタ法や蒸着法を用いた乾式メッキも可能であるが、従来公知の電解メッキ法、無電解メッキ法を用いた湿式メッキにより容易に設けることができ好ましい。湿式法を用いる場合、ニッケルメッキ層は端子電極上に形成するため、電解メッキ法を用いることが好ましい。また、スズあるいはスズ−鉛合金ハンダ層は、被膜が形成されるニッケル層が金属であるためどちらの方法を用いてもよいが電解メッキ法が好ましい。メッキ層の膜厚としては、好ましくは0.1〜30μm 程度が好ましい。
【0029】
<誘電体層>
誘電体層を構成する誘電体材料としては、特に限定されるものではなく、種々の誘電体材料を用いてよいが、例えば、酸化チタン系、チタン酸系複合酸化物、あるいはこれらの混合物などが好ましい、酸化チタン系としては、必要に応じNiO,CuO,Mn3O4,Al2O3,MgO,SiO2等を総計0.001〜30wt%程度含むTiO2等が、チタン酸系複合酸化物としては、チタン酸バリウムBaTiO3等が挙げられる。Ba/Tiの原子比は、0.95〜1.20程度がよく、BaTiO3には、MgO,CaO,Mn3O4,Y2O3,V2O5,ZnO,ZrO2,Nb2O5,Cr2O3,Fe2O3,P2O5,SrO,Na2O,K2O等が総計0.001〜30wt%程度含有されていてもよい。また、焼成温度、線膨張率の調整等のため、(BaCa)SiO3 ガラス等のガラス等が含有されていてもよい。
【0030】
誘電体層の一層あたりの厚さは特に限定されないが、通常5〜20μm 程度である。また、誘電体層の積層数は、通常、2〜300程度とする。
【0031】
<内部電極層>
内部電極層に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層構成材料に耐還元性を有するものを使用することで、安価な卑金属等を用いることができ好ましい。導電材として用いる金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn、Cr、Co、Al等から選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95wt%以上であることが好ましい。
【0032】
なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1wt%程度以下含まれていてもよい。
【0033】
内部電極層の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、0.5〜5μm 、特に0.5〜2.5μm 程度であることが好ましい。
【0034】
次に、本発明のCR複合電子部品の製造方法について説明する。
【0035】
本発明のCR複合電子部品は、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、このチップの少なくとも一端に抵抗体ペーストを印刷ないし転写して同時焼成することにより製造できる。
【0036】
<誘電体層用ペースト>
誘電体層用ペーストは、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練して製造される。
【0037】
誘電体原料には、誘電体層の組成に応じた粉末を用いる。誘電体原料の製造方法は特に限定されず、例えばチタン酸系複合酸化物としてチタン酸バリウムを用いる場合、水熱合成法等により合成したBaTiO3 に、副成分原料を混合する方法を用いることができる。また、BaCO3 とTiO2 と副成分原料との混合物を仮焼して固相反応させる乾式合成法を用いてもよく、水熱合成法を用いてもよい。また、共沈法、ゾル・ゲル法、アルカリ加水分解法、沈殿混合法などにより得た沈殿物と副成分原料との混合物を仮焼して合成してもよい。なお、副成分原料には、酸化物や、焼成により酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等の少なくとも1種を用いることができる。
【0038】
誘電体原料の平均粒子径は、目的とする誘電体層の平均結晶粒径に応じて決定すればよいが、通常、平均粒子径0.3〜1.0μm 程度の粉末を用いる。
【0039】
有機ビヒクルは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
【0040】
<内部電極層用ペースト>
内部電極層用ペーストは、上記の各種導電性金属や合金、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
【0041】
<端子電極用ペースト>
端子電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
【0042】
<有機ビヒクル含有量>
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、例えば、バインダは1〜5wt%程度、溶剤は10〜50wt%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10wt%以下とすることが好ましい。
【0043】
<グリーンチップ作製>
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に積層印刷する。このとき内部電極用ペーストの端部の一方が誘電体層用ペーストの端部より交互に外部に露出するように積層する。その後、所定形状に切断してチップ化し、基板から剥離してグリーンチップとする。
【0044】
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、このグリーンシート上に内部電極層用ペーストを、内部電極用ペーストの端部が交互に誘電体層用ペーストの端部の一方から露出するように印刷したものを積層し、所定形状に切断して、グリーンチップとする。
【0045】
<脱バインダ処理工程>
焼成前に行なう脱バインダ処理の条件は通常のものであってよいが、内部電極層の導電材にNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、特に下記の条件で行うことが好ましい。
昇温速度:5〜300℃/時間、特に10〜100℃/時間
保持温度:200〜400℃、特に250〜300℃
温度保持時間:0.5〜24時間、特に5〜20時間
雰囲気:空気中
【0046】
<焼成工程>
グリーンチップ焼成時の雰囲気は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定すればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気はN2 を主成分とし、H2 1〜10%、10〜35℃における水蒸気圧によって得られるH2Oガスを混合したものが好ましい。そして、酸素分圧は、10-8〜10-12 気圧とすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
【0047】
焼成時の保持温度は、1100〜1400℃、特に1200〜1300℃とすることが好ましい。保持温度が前記範囲未満であると緻密化が不十分であり、前記範囲を超えると、内部電極が途切れやすくなる。また、焼成時の温度保持時間は、0.5〜8時間、特に1〜3時間が好ましい。
【0048】
<アニール工程>
還元性雰囲気中で焼成した場合、CR複合電子部品チップ体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これによりIR加速寿命を著しく長くすることができる。
【0049】
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10-6気圧以上、特に10-5〜10-8気圧とすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると誘電体層の再酸化が困難であり、前記範囲を超えると内部電極層が酸化する傾向にある。
【0050】
アニールの際の保持温度は、1100℃以下、特に500〜1000℃とすることが好ましい。保持温度が前記範囲未満であると誘電体層の酸化が不十分となって寿命が短くなる傾向にあり、前記範囲を超えると内部電極層が酸化し、容量が低下するだけでなく、誘電体素地と反応してしまい、寿命も短くなる傾向にある。なお、アニール工程は昇温および降温だけから構成してもよい。この場合、温度保持時間は零であり、保持温度は最高温度と同義である。また、温度保持時間は、0〜20時間、特に2〜10時間が好ましい。雰囲気用ガスには、加湿したN2 ガス等を用いることが好ましい。
【0051】
なお、上記した脱バインダ処理、焼成およびアニールの各工程において、N2 、H2 や混合ガス等を加湿するには、例えばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。
【0052】
脱バインダ処理工程、焼成工程およびアニール工程は、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
【0053】
これらを連続して行なう場合、脱バインダ処理後、冷却せずに雰囲気を変更し、続いて焼成の保持温度まで昇温して焼成を行ない、次いで冷却し、アニール工程での保持温度に達したときに雰囲気を変更してアニールを行なうことが好ましい。
【0054】
また、これらを独立して行なう場合は、脱バインダ処理工程は、所定の保持温度まで昇温し、所定時間保持した後、室温にまで降温する。その際の脱バインダ雰囲気は、連続して行う場合と同様なものとする。さらにアニール工程は、所定の保持温度にまで昇温し、所定時間保持した後、室温にまで降温する。その際のアニール雰囲気は、連続して行う場合と同様なものとする。また、脱バインダ工程と、焼成工程とを連続して行い、アニール工程だけを独立して行うようにしてもよく、脱バインダ工程だけを独立して行い、焼成工程とアニール工程を連続して行うようにしてもよい。
【0055】
<端子電極形成>
上記のようにして得られたチップ体に、第1の電極層用ペーストを印刷ないし転写して焼成し、端子(外部)電極を形成する。第1の電極層用ペーストの焼成条件は、例えば、N2 とH2 との混合ガス等の還元性雰囲気中で600〜800℃にて1分間〜1時間程度とすることが好ましい。次いで、第3の電極層用ペーストを印刷ないし転写して、第3の電極層を焼成する。第3の電極層用ペーストの焼成条件は、例えば、大気等の酸化性雰囲気中で400〜850℃にて0分間〜1時間程度とすることが好ましい。この際、第1の電極層用ペーストの第3の電極層用ペーストとの界面付近に、第2の電極層が形成される。
【0056】
なお、第1の電極層にNiを主成分として用い、第3の電極層にPd,Pt,Rh,IrおよびRuを主成分として用いた場合、第1の電極層と第3の電極層との同時焼成が可能となる。このとき、第1の電極層にはFe,CoおよびCuの1種または2種以上を30wt%以下含有していてもよく、第3の電極層には、Agおよび/またはAuを20wt%以下含有していてもよい。この場合は、内部電極が積層された誘電体グリーンチップに第1の電極層用ペースト、さらに第3の電極層用ペーストを印刷ないし転写して同時焼成してもよい。この場合の焼成条件としては、先ず上記のグリーンチップの焼成条件で焼成し、冷却過程で、酸化性雰囲気として、800〜400℃にて1分間〜1時間程度保持して焼成すればよい。これらの場合にも、第1の電極層用ペーストの第3の電極層用ペーストとの界面付近に、第2の電極層が形成される。
【0057】
<メッキ工程>
さらに、端子電極が形成されたチップ体を、それぞれニッケルメッキ浴、またはスズあるいはスズ−鉛合金ハンダメッキ浴中に浸漬し、メッキ層を形成する。
【0058】
<具体的構成例>
このようにして製造される、本発明のCR複合電子部品の構成例を図1に示す。図1において、本発明のCR複合電子部品は、誘電体層2と、内部電極層3と、第1の電極層4と、第2の電極層5と、第3の電極層6とを有する。さらに、これら第1〜第3の電極層により構成される端子電極は、その外側にメッキ層を有することが好ましい。また、第2の電極層5は、最小膜厚および金属酸化物等により規制される導電率に応じた抵抗値となる。ここで、図1は第2の電極層5をCR複合電子部品の両方の端子に形成した場合を示すが、どちらか一方のみに形成してもよく、その場合、等価直列抵抗に寄与する端子電極はいずれか一方のみとなる。
【0059】
なお、上記の説明では第1の電極層〜第3の電極層が単独で存在する場合について説明したが、例えば、第1の電極層〜第3の電極層の構造が2重構造になっていたり、チップ体の端部に先ず第3の電極層用金属を有する端子電極層を設け、さらにその上に第1の電極層〜第3の電極層を設けた構造としてもよく、端子電極中のいずれかに第1の電極層〜第3の電極層となる部分が存在していればよい。
【0060】
【実施例】
次に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
【0061】
<実施例1>
誘電体層の主原料としてBaCO3(平均粒径:2.0μm )およびTiO2(平均粒径:2.0μm )を用意した。Ba/Tiの原子比は1.00である。また、これに加えて、BaTiO3 に対し添加物としてMnCO3 を0.2wt%、MgCO3 を0.2wt%、Y2O3 を2.1wt%、(BaCa)SiO3 を2.2wt%を用意した。各原料粉末を水中ボールミルで混合し、乾燥した。得られた混合粉を1250℃で2時間仮焼した。この仮焼分を水中ボールミルで粉砕し、乾燥した。得られた仮焼粉に、有機バインダーとしてアクリル樹脂と、有機溶剤として塩化メチレンとアセトンを加えてさらに混合し、誘電体スラリーとした。得られた誘電体スラリーを、ドクターブレード法を用いて誘電体グリーンシートとした。
【0062】
内部電極材料として、卑金属のNi粉末(平均粒径:0.8μm )を用意し、これに有機バインダーとしてエチルセルロースと、有機溶剤としてターピネオールを加え、3本ロールを用いて混練し、内部電極用ペーストとした。
【0063】
第1の電極層用ペースト原料として、第1の電極層用金属のCu粉末(平均粒径:0.5μm )と、このCu粉末に対してストロンチウム系ガラスを7wt%添加したものを用意した。これに有機バインダーとしてアクリル樹脂と、有機溶剤としてターピネオールを加え、3本ロールを用いて混練し、各端子電極用ペーストとした。
【0064】
第3の電極層用ペースト原料として、Ag粉末(平均粒径:0.5μm )と、このCu粉末に対してホウケイ酸鉛ガラスを1wt%添加したものを用意した。これに有機バインダーとしてアクリル樹脂と、有機溶剤としてターピネオールを加え、3本ロールを用いて混練し、各端子電極用ペーストとした。
【0065】
所定の厚みを得るためにグリーンシートを数枚積層し、その上にスクリーン印刷法により内部電極用ペーストの端部が誘電体層用ペーストの端部から交互に外部に露出するように印刷されたグリーンシートを所定枚数積層し、最後に内部電極の印刷されていないグリーンシートを所定枚数積層し、熱圧着し、チップ形状が、焼成後に縦×横×厚みが3.2×1.6×1.0mmとなるように切断し、グーリーンチップを得た。
【0066】
得られたグリーンチップを、空気中に80℃で30分間放置して乾燥した。次いで、加湿したN2 +H2 (N2 3%)還元雰囲気中、1300℃にて3時間保持して焼成し、さらに、加湿したN2 酸素分圧10-7気圧の雰囲気にて1000℃に2時間保持し、チップ体を得た。
【0067】
得られたチップ体の両端部に、上記のCuとガラスフリットを、金属成分に対し7wt%添加し、これらを有機ビヒクル中に分散させた第1の電極層用ペーストを塗布し、乾燥し、N2 −H2 雰囲気中、770℃で10分間保持して焼成し、第1の電極層を形成した。
【0068】
次いで、第1の電極層が形成されたチップ体の両端部に、上記のAgとガラスフリットを、金属成分に対し1wt%添加し、これらを有機ビヒクル中に分散させた第3の電極層用ペーストを、前記第1の電極層上にディッピング法により塗布し、乾燥し、空気中、600〜750℃で10分間保持して焼成し、第3の電極層を形成すると同時に第1の電極層表面を酸化させて第2の電極層を形成した。このとき、焼成温度をそれぞれ600℃、650℃、700℃、750℃の各温度で焼成すると共に、保持時間を1分、5分、10分として第2の電極層の膜厚を制御した。なお、第2の電極層をX線回折により解析したところ、CuO2 ,Cu3O4 が確認された。
【0069】
次いで、得られた各添加物組成のサンプルに、ニッケルメッキ層、スズ−鉛合金メッキ層を電解法を用いて順次形成し、CR複合電子部品を得た。得られたサンプルの静電容量は1μFであった。また、得られた各試料についてESRを測定した。結果を図2に示す。また、得られたサンプルのうち、焼成温度620℃、保持時間10分の条件でのサンプルの端子部の断面写真を図3に、その拡大写真を図4に示す。
【0070】
図3、図4から明らかなように、第1の電極層と第3の電極層との間に第2の電極層が形成されていることがわかる(端子電極中央付近の帯状に暗くなっている部分)。さらに、得られたCR複合電子部品をDC−DCコンバータの電源バイパスコンデンサーとして用い、スイッチング周波数を1kHz〜10MHzに変化させて動作させたところ、発振等の電圧変動現象を生じることなく正常に動作した。
【0071】
図2から明らかなように、第3の電極層の焼成温度とその保持時間により、ESR変化させることが可能であり、これを制御できることがわかる。
【0072】
<実施例2>
実施例1において、第1の電極層の材料として、Cu粉末に代えてNi粉末(平均粒径:0.4μm )、Ni−Cu粉末(平均粒径:0.5μm )、Fe粉末(平均粒径:0.5μm )Co粉末(平均粒径:0.01〜10μm )としたものを用いた他は実施例1と同様にしてサンプルを得た。
【0073】
得られた各サンプルについて実施例1と同様にしてESRを測定したところ、実施例1に比べてESRの大きさに差があるものの、ほぼ同様の結果が得られた。
【0074】
<実施例3>
実施例1において、第3の電極層用の材料としてAu粉末(平均粒径:1.0μm )、Pt粉末(平均粒径:0.1〜5μm )、Pd粉末(平均粒径:0.01〜5μm )、Rh粉末(平均粒径:0.1〜10μm )、Ir粉末(平均粒径:0.1〜10μm )を用いた他は実施例1と同様にしてサンプルを得た。
【0075】
得られたサンプルについて実施例1と同様にしてESRを測定したところ、実施例1に比べてESRの大きさに差があるものの、ほぼ同様の結果が得られた。
【0076】
<実施例4>
実施例1において、第1の電極層用ペースト原料として、第1の電極層用金属のNi粉末(平均粒径:0.5μm )と、このNi粉末に対してストロンチウム系ガラスを7wt%添加したものを用意した。これに有機バインダーとしてアクリル樹脂と、有機溶剤としてターピネオールを加え、3本ロールを用いて混練し、各端子電極用ペーストとした。
【0077】
第3の電極層用ペースト原料として、第3の電極層用金属のPd粉末(平均粒径:0.5μm )と、このPd粉末に対してホウケイ酸鉛ガラスを1wt%添加したものを用意した。これに有機バインダーとしてアクリル樹脂と、有機溶剤としてターピネオールを加え、3本ロールを用いて混練し、各端子電極用ペーストとした。
【0078】
実施例1と同様にして得られたグリーンチップを、空気中に80℃で30分間放置して乾燥した。次いで、加湿したN2 +H2 (N2 3%)還元雰囲気中、1300℃にて3時間保持して焼成し、さらに、加湿したN2 酸素分圧10-7気圧の雰囲気にて1000℃に2時間保持し、チップ体を得た。
【0079】
得られたチップ体の両端部に、上記の第1の電極層用ペーストを塗布し、乾燥し、中性、もしくは還元性雰囲気中で1000℃で、10分間焼成してNi端子電極を得た(第1の電極層)。
【0080】
次いで、前記第1の電極層上にディッピング法により第3の電極層用ペーストを塗布し、乾燥し、空気中で、800℃で1分間保持して焼成し、第3の電極層を形成すると同時に第1の電極層表面を酸化させて第2の電極層を形成した。なお、第2の電極層をX線回折により解析したところ、NiOが確認された。
【0081】
次いで、得られた各添加物組成のサンプルに、ニッケルメッキ層、スズ−鉛合金メッキ層を電解法を用いて順次形成し、CR複合電子部品を得た。得られたサンプルの静電容量は1μFであった。また、得られた試料についてESRを測定したところ、500mΩであった。また、第3の電極用ペーストにおいて、用いる金属をPdからPtに変えたところほぼ同等の結果が得られた。また、得られたCR複合電子部品をDC−DCコンバータの電源バイパスコンデンサーとして用いたところ、発振等の電圧変動現象を生じることなく正常に動作した。
【0082】
<実施例5>
実施例4において、得られたグリーンチップの両端部に、第1の電極層用ペーストを塗布し、乾燥した。次いで、第1の電極層が塗布されたグリーンチップの両端部に、第3の電極層用ペーストを、前記第1の電極層用ペースト上にディッピング法により塗布し、乾燥した。
【0083】
端子電極ペーストが塗布されたグリーンチップを、空気中に80℃で30分間放置して乾燥した。次いで、加湿したN2 +H2 (N2 3%)還元雰囲気中、1300℃にて3時間保持して焼成し、さらに、加湿したN2 酸素分圧10-7気圧の雰囲気にて1000℃に2時間保持し、次いで空気中で、700℃で10分間保持して冷却し、チップ体とすると同時に、第1および第3の電極層を形成し、さらに同時に第1の電極層表面を酸化させて第2の電極層を形成した。なお、第2の電極層をX線回折により解析したところ、NiOが確認された。
【0084】
次いで、得られた各添加物組成のサンプルに、ニッケルメッキ層、スズ−鉛合金メッキ層を電解法を用いて順次形成し、CR複合電子部品を得た。得られたサンプルの静電容量は1μFであった。また、得られた各試料についてESRを測定したところ、200mΩであった。また、得られたCR複合電子部品をDC−DCコンバータの電源バイパスコンデンサーとして用いたところ、発振等の電圧変動現象を生じることなく正常に動作した。
【0085】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、特別な焼成条件を必要とせず、製造工程も簡単で、生産コストも安く、CRまたは(L/C)R直列回路が簡単に得られ、抵抗値の制御も容易であるCR複合電子部品およびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のCR複合電子部品の基本構成を示す断面概略図である。
【図2】本発明のCR複合電子部品サンプルのESRを示したグラフである。
【図3】本発明のCR複合電子部品の端子電極部分の断面を撮影した図面代用写真である。
【図4】図3の拡大写真である。
【符号の説明】
2 誘電体層
3 内部電極
4 第1の電極層(端子電極)
5 第2の電極層(端子電極)
6 第3の電極層(端子電極)
Claims (12)
- 誘電体層と内部電極とが交互に積層されており、
前記内部電極と、CR複合電子部品の端部に形成された端子電極とがキャパシタとなるように電気的に接続され、
前記端子電極の少なくとも一方は内部電極側から第1〜第3の電極層を順次有し、
第1の電極層はFe,Co,CuおよびNiの1種または2種以上を含有し、
第2の電極層は前記第1の電極層の酸化物を含有し、
第3の電極層はAg,Au,Pt,Pd,Rh,IrおよびRuの1種または2種以上を含有し、
前記第2の電極層の厚さが、0.01〜50μmであるCR複合電子部品。 - 前記第2の電極層は、酸化物としてFeO,α−Fe2O3 ,γ−Fe2O3 ,Fe3O4 ,CoO,Co3O4 ,Cu2O,Cu3O4 ,CuO,NiOの1種または2種以上を含有する請求項1のCR複合電子部品。
- 前記第1の電極層は、Ag,Au,Pt,Pd,Rh,IrおよびRuの1種または2種以上を10wt%以下含有する請求項1または2のいずれかのCR複合電子部品。
- 前記第1〜第3の電極層は、ガラスを0〜20wt%含有する請求項1〜3のいずれかのCR複合電子部品。
- 等価回路がCRまたは(LC)R直列回路を有する請求項1〜4のいずれかのCR複合電子部品。
- 前記内部電極層がNiを含有する請求項1〜5のいずれかのCR複合電子部品。
- 前記端子電極の外側にメッキ層を有する請求項1〜6のいずれかのCR複合電子部品。
- 誘電体層と、内部電極層とを交互に積層してグリーンチップを形成し、
これを焼成してチップ体とし、
このチップ体に第1の電極層用ペーストを塗布し、中性または還元性雰囲気で焼成して第1および第2の電極層の前駆体を形成し、
さらにこの上に第3の電極層用ペーストを塗布し、
これを酸化性雰囲気中で焼成して、前記第1および第2の電極層の前駆体の第3の電極層との界面付近を酸化し、前記第1〜第3の電極層を形成して請求項1〜8のいずれかのCR複合部品を得るCR複合電子部品の製造方法。 - 前記第1の電極層用ペーストまたは第2の電極層用ペーストは、平均粒径0.1〜10μm の金属粒子を有する請求項8のCR複合電子部品の製造方法。
- 誘電体層と、内部電極層とを交互に積層してグリーンチップを形成し、
これを焼成してチップ体とし、
このチップ体に第1の電極層用ペーストを塗布し、
さらにこの上に第3の電極層用ペーストを塗布し、
中性または還元性雰囲気で焼成し、
冷却過程中にこれを酸化性雰囲気として、前記第1の電極層用ペースト焼成体の第3の電極層との界面付近を酸化し、前記第1、第2および第3の電極層を形成して請求項1〜7のいずれかのCR複合部品を得るCR複合電子部品の製造方法。 - 誘電体層と、内部電極層とを交互に積層してグリーンチップを形成し、
このグリーンチップに第1の電極層用ペーストを塗布し、
さらにこの上に第3の電極層用ペーストを塗布し、
還元性雰囲気で焼成し、さらに冷却過程中で酸化性雰囲気として、前記第1の電極層用ペースト焼成体の第3の電極層との界面付近を酸化し、前記グリーンチップ、第1、第2および第3の電極層を形成して請求項1〜7のいずれかのCR複合部品を得るCR複合電子部品の製造方法。 - 第1の電極層はNiを含有し、第3の電極層はPd,Pt,Rh,IrおよびRuの1種または2種以上を含有する請求項10または11のCR複合電子部品の製造方法。
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