JP3830455B2 - ピント調整機構、およびそれを用いたカメラ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピント調整機構およびそれを用いたカメラに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、CCD(charge-coupled device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子の性能向上や小型化が進むにしたがって、今まで以上に多様な環境での撮影可能なカメラが求められるようになっている。例えば、カーナビゲーションシステムの普及が進み、それに伴い、そのディスプレイを利用した機能を実現するために、多くの車両にカメラが搭載されるようになっている。
【0003】
車載用のカメラは、屋外での使用を前提とするため、一般には防水機能を有する。さらに、搭載可能な空間も、レイアウトの都合で限られていことが多く、小型化は不可欠である。例えば、振動に強く、かつ防水性能に優れたカメラが開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−84277号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1で示されている技術では、基板部全体を樹脂成形体により密着した状態で隙間なく覆うことで、基板部及びレンズの防水処理がなされている。この構成を有するカメラの場合、その防水処理がなされたあとピントに狂いが生じていることが判明しても、調整することができない。そのような場合、そのカメラは、不良となってしまう。現在、小型カメラに対する需要は急速に増えているが、同時にコストに対する要求も厳しくなっている。このような状況において、極力、不要品を出さないようにすることが望まれる。
【0006】
本発明は、そうした状況に鑑みなされたものであって、その目的は、カメラのピント調整技術を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のある態様は、ピント調整機構に関する。このピント調整機構は、レンズ群の組み込みがなされたレンズアッシと、内側にねじ加工が施され、かつレンズアッシに対して回転可能に嵌合される調整用リングと、調整用リングを、その回転自由度を保ったままレンズアッシから脱落しないよう保持しつつ、レンズアッシに固定される保持板と、レンズアッシに対して回転しないように嵌合しつつ、レンズアッシの光軸方向には可動であり、かつ、調整用リングの内径と同径のおねじ加工が施されるレンズホルダと、を備え、調整用リングとレンズホルダは、それぞれねじ加工が施された部分で嵌合し、調整用リングが回転することで、レンズホルダが光軸方向に前後移動する。
【0008】
レンズホルダのレンズアッシと嵌合しない側に、レンズアッシの像を受ける撮像素子が設けられた場合、この撮像素子が受ける像のピント調整が、調整用リングのみでできる。つまり、レンズアッシ、つまりレンズの調整が不要となる。
【0009】
一般に、所望の性能を満たすために、レンズアッシは複数のレンズがレンズホルダに取り付けられた構成となっている。これらレンズの調整を行うことは、手間のかかる作業である。特に、レンズアッシが組み立てられた後に、調整が必要となると、レンズアッシをレンズホルダから取り出す必要がある。この作業は、避けたいものである。
【0010】
また、防水構造を有するレンズアッシの場合、Oリングなどのシーリング材が、レンズ間やレンズと鏡枠、レンズと押さえ環の間などに用いられる。レンズアッシに含まれるレンズを調整することで、そのシーリング材が移動したり、変形したりすることで、所望の防水性能が得られなくなる恐れがある。そこで、調整用リングを用いたこの構成であれば、レンズは固定されており、上述のような防水性能の低下のような課題は生じない。また、調整作業自体が容易となる。また、使用によりピントが狂ってきた場合であっても、再度ピントを合わせることができ、従来は、調整作業にコストがかかることから、廃棄されていた状況であっても、レンズアッシの再利用が可能となる。
【0011】
また、例えば、レンズアッシとレンズホルダは、キー嵌合するように構成することで、レンズホルダは、レンズアッシに対して回転することが避けられる。
【0012】
また、レンズアッシには、弾性体からなるリングが内挿され、レンズホルダとレンズアッシを嵌合する際に、レンズホルダの端部が、弾性体からなるリングに当接してもよい。
【0013】
例えば、レンズホルダとレンズアッシの嵌合が深くなり、設計上のピント位置になる少し前から、レンズホルダの端部が弾性体からなるリングに接触し始める構造とする。その際発生する予張力により、調整用リングとレンズホルダとが嵌合するねじ部および調整用リングの構造部について、一方向に片寄せされる。これによって、ねじ部のバックラッシュや部品寸法ばらつきによるガタが吸収される。
【0014】
また、保持板と調整用リングを固定する固定手段をさらに有してもよい。固定手段として、ねじ等がある。例えば、保持板に雌ねじを形成し、その雌ねじ部にとがり先のねじを組み付け、調整用リングと保持板とを一体化することで、ピントが固定される。このとき、レンズアッシには、ねじ止めによる負荷が直接かからないため、レンズの歪みがおきず、カメラの撮像品位に対する影響を低減できる。
【0015】
本発明の別の態様は、カメラに関する。このカメラは、上述のピント調整機構と、レンズホルダのレンズアッシと嵌合しない側に、レンズアッシの像を受ける撮像素子と、を有する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本実施の形態では、防水カメラのピント調整機構に関して説明する。一般に、カバーガラスによって封止されたカメラにおいては、ピント調整の際の、レンズ全群繰り出しを行っても、ケース内にピント調整による全長ばらつきを考慮したスペースを確保できた。したがって、カメラがケース内に収まれば、所望の防水性能が得られた。
【0017】
しかし、カバーガラスを廃し、前面のレンズを露出させレンズ面及びレンズとケースとの間で防水シールを行うカメラにおいては、所望の防水性能を得るためには、レンズの位置を安定させる必要がある。
【0018】
また、焦点距離のばらつきとして許容できる範囲は、一般には±5%程度である。例えば、車載用の小型カメラを想定し焦点距離が10mmであると仮定すると、±0.5mm、つまり1mmのばらつきを考慮したカメラ設計がなされる必要がある。車載用の小型カメラなどでは、カメラの前方部分で部品合わせをして車両に取り付けることが多く、レイアウト上、カメラの前方部分で上述のばらつきを吸収することには制約が大きい。
【0019】
そこで、本実施の形態では、レンズ自体の位置は不変とし、レンズアッシと外装ケースはねじ止めによって固定される。このとき、ピント調整はレンズアッシより後部に位置する、撮像素子を含む基板を光軸方向に前後させることによって行う。
【0020】
図1は、本実施の形態に係るピント調整機構を備える防水カメラ10が、外装ケース12に内装された状態を示している。図2は、防水カメラ10の斜視図であり、図3は、防水カメラ10の正面図を示している。さらに、図4は、防水カメラ10の部品構成図を示していおり、斜め上方からみた構成を示している。図5は、同じく、防水カメラ10の部品構成図を示していおり、斜め下方からみた構成を示している。図6は、図3に示した防水カメラ10の正面図のA−A線断面図である。
【0021】
以下、図4〜6を元に防水カメラ10の構成について説明する。図4および図5の部品構成図から分かるように、防水カメラ10は、本図左側から順に、レンズアッシ20と、フォームリング40と、調整用リング42と、リング固定板44と、レンズホルダ46と、CCD基板48と、電源基板50と、を備える。
【0022】
レンズアッシ20は、広角レンズ群として本図左側から順に第1レンズ23、第2レンズ24、絞り29、第3レンズ25、第4レンズ26、第5レンズ27、及び第6レンズ28を備える。なお、絞り29と第3レンズ25の間には、マスクが設けられる。
【0023】
第1レンズ23は、外周部分が段カット構造となっており、その部分に、Oリング34が配置される。押さえ環32外周と嵌合するねじ込み式の第1のレンズリテイナ30によって、第1レンズ23は固定される。このとき、Oリング34は、第1のレンズリテイナ30と第1レンズ23の段カット部分によって押圧される。これによって、第1のレンズリテイナ30の内壁と第1レンズ23の段カット部分で作られるクリアランスがなくなり、防水性能が得られる。
【0024】
また、第4レンズ26、第5レンズ27、及び第6レンズ28を保持する第2のレンズリテイナ22には、3本のキー溝21が直線的に、かつ、第2のレンズリテイナ22の外周を3等分する位置関係で設けられている。なお、本図ではキー溝21は1本で代表している。
【0025】
フォームリング40は、発泡ゴムを材料とし、環状の形状を有し、レンズアッシ20に内挿される。調整用リング42は、内側にねじ加工が施され、また、レンズアッシ20に対して自由に回転可能に嵌合される。
【0026】
リング固定板44は、調整用リング42を挟むように、第1及び第2タップタイトネジ80および82によって、レンズアッシ20に固定される。このとき、調整用リング42の回転自由度は維持されたまま、調整用リング42が脱落しないような設計がなされている。
【0027】
レンズホルダ46は、その内側に、第2のレンズリテイナ22に設けられた3本のキー溝21とキー嵌合する3本のキー47が直線的に設けられている。なお、本図ではキー47は1本で代表している。また、レンズホルダ46は、その外周に所定の長さだけ、雄ねじ加工が施され、調整用リング42の内側に施されたねじと螺合するように構成されている。したがって、調整用リング42が回転すると、キー嵌合がガイドとなって、レンズホルダ46は非回動のまま光軸方向に前後移動する。
【0028】
なお、レンズホルダ46は、レンズアッシ20と嵌合し設計上のピント位置となる直前の所定の位置となると、レンズホルダ46の本図左側の端部は、フォームリング40に当接する。レンズホルダ46に押されてフォームリング40が圧縮された際に発生する予張力により、調整用リング42とレンズホルダ46とが嵌合するねじ部および調整用リング42の構造部について、一方向に片寄せされる。これによって、ねじ部のバックラッシュや部品寸法ばらつきによるガタが吸収される。
【0029】
なお、リング固定板44には、調整用リング42の外周に対して平行となるような雌ねじ部45が形成されている。この雌ねじ部45にとがり先のリング固定ネジ56を組み付け、調整用リング42とリング固定板44が一体化することで、ピントが確実に固定される。また、ピントの固定の際に押さえ環32を直接固定しないため、レンズに負荷が直接かからない。したがって、レンズに歪みが生じることが避けられ、撮像品位の低下が避けられる。
【0030】
レンズホルダ46には、第3及び第4タップタイトネジ84及び86によって、撮像素子であるCCDが設けられたCCD基板48が固定される。レンズホルダ46は、上述の通り、レンズアッシ20に対してキー嵌合しており、その位置の調整が、調整用リング42で行われるため、いわゆる「垂直出し」とよばれる位置あわせが不要となる。CCD基板48がレンズホルダ46に対して垂直となるように取り付けることで、撮像面は、光軸方向に対して垂直となる。したがって、撮像面の調整は、光軸方向をZ軸方向とした場合、X及びY軸方向のみでよい。
【0031】
また、CCD基板48には、CCD基板48に電力を供給するとともに、CCD基板48が出力する信号を防水カメラ10の外部に出力する機能を備える電源基板50が取り付けられる。また、この防水カメラ10は、レンズアッシ20に設けられる、第1及び第2外装止めネジ穴92及び94とで、外装ケース12にねじ止めされる。
【0032】
以上、本実施の形態によれば、ピント調整が容易なカメラが実現される。特に、小型な防水カメラにおいて、レンズ自体を調整することなくピント調整ができるので調整作業の効率向上が実現できる。また、調整用リングを用いることで、ピント調整の際の光軸調整が不要となる。また、ピント固定は、調整リングを固定することで実現できるので、レンズに直接負荷がかからず、レンズに歪みが発生することが回避できる。
【0033】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素やその組合せにいろいろな変形が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、ピント調整技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態に係るピント調整機構を備える防水カメラが、外装ケースに内装された状態を示した図である。
【図2】 実施の形態に係るピント調整機構を備える防水カメラの斜視図である。
【図3】 実施の形態に係るピント調整機構を備える防水カメラの正面図である。
【図4】 実施の形態に係るピント調整機構を備える防水カメラの、斜め上方から見た部品構成図である。
【図5】 実施の形態に係るピント調整機構を備える防水カメラの、斜め下方から見た部品構成図である。
【図6】 図3に示した防水カメラの正面図のA−A線断面図である。
【符号の説明】
10 防水カメラ、 12 外装ケース、 20 レンズアッシ、 21 キー溝、 22 第2のレンズリテイナ、 30 第1のレンズリテイナ、 32 押さえ環、 34 Oリング、 40 フォームリング、 42 調整用リング、 44 リング固定板、 45 雌ねじ部、 46 レンズホルダ、 47 キー、 48 CCD基板、 50 電源基板、 56 固定ネジ。

Claims (4)

  1. レンズ群の組み込みがなされたレンズアッシと、
    内側にねじ加工が施され、かつ前記レンズアッシに対して回転可能に嵌合される調整用リングと、
    前記調整用リングを、その回転自由度を保ったまま前記レンズアッシから脱落しないよう保持しつつ、前記レンズアッシに固定される保持板と、
    前記レンズアッシに対して回転しないように嵌合しつつ、前記レンズアッシの光軸方向には可動であり、かつ、前記調整用リングの内径と同径のおねじ加工が施されるレンズホルダと、
    を備え、
    前記調整用リングと前記レンズホルダは、それぞれねじ加工が施された部分で嵌合し、前記調整用リングが回転することで、前記レンズホルダが光軸方向に前後移動し、
    前記レンズアッシには、弾性体からなるリングが内挿され、
    前記レンズホルダと前記レンズアッシを嵌合する際に、前記レンズホルダの端部が、前記弾性体からなるリングに当接することを特徴とするピント調整機構。
  2. 前記レンズアッシは、レンズ群のうち径の大きな大径レンズを保持する第1のレンズリテイナと、前記大径レンズより径の小さい小径レンズを保持する第2のレンズリテイナと、を有し、前記第2のレンズリテイナの外周部に前記調整用リングを配置することを特徴とする請求項1に記載のピント調整機構。
  3. 前記保持板と前記調整用リングを固定する固定手段をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載のピント調整機構。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のピント調整機能と、
    前記レンズホルダの前記レンズアッシと嵌合しない側に、前記レンズアッシの像を受ける撮像素子と、を有することを特徴とするカメラ。
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