JP3830379B2 - ペットフード - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、酸成分を含有する水分含量が10〜70質量%のペットフードにおいて、ペットフードから発生する酸臭を緩和または低減してペットフードの臭いを改善し、しかもペットによる嗜好性を向上させたペットフードに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、犬、猫などのペット類の飼育が盛んになっており、それに伴って各種のペットフードが製造、販売されている。市販のペットフードを水分含量によって分類すると、水分含量が通常70〜80質量%程度のウエットタイプ、水分含量が通常15〜40質量%程度のセミモイストタイプ、および水分含量が通常約10質量%前後またはそれ以下のドライタイプに大別される。それらのうちで、ウエットタイプおよびセミモイストタイプのペットフードは、ドライタイプのペットフードに比べて、ペットによる嗜好性が高く、しかも同じものを与え続けても飽きが少ないという長所を有している。
【0003】
しかしながら、ウエットタイプおよびセミモイストタイプのペットフードは、水分含量が高いことにより、ドライタイプのペットフードに比べて細菌やカビなどの微生物が繁殖し易いという欠点がある。そこで、ウエットタイプやセミモイストタイプの水分含量の多いペットフードでは、制菌、防カビなどの目的で、ペットフードの製造時に、リンゴ酸などの有機酸、リン酸などの無機酸、それらの塩などの酸成分を添加したり、元々酸成分を含む原材料を用いてペットフードを製造することが行われている。また、ソルビン酸カリウムなどの防カビ剤を併用している場合が多い。いずれの場合も、ペットフードには酸成分が含まれているため、製造直後から酸臭のすることが多く、特に気密性の容器などに入れて保管しておくと酸臭が強くなり、ペットフードを扱う人間やペットに不快感を与え、しかもペットによる嗜好性が低下するという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、制菌や防カビなどの目的で、酸成分を添加したり、酸成分を含有する原料を用いてなるウエットタイプやセミモイストタイプなどの水分含量の多いペットフードにおいて、その酸臭を緩和または低減して、保管時、取り扱い時、給与時、摂餌時などに人間やペットに与える不快感をなくし、しかもペットによる嗜好性の向上したペットフードを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らは種々検討を重ねてきた。その結果、ウエットタイプやセミモイストタイプなどの水分含量の多いペットフード、特に水分含量が10〜70質量%であって、酸成分を含有するペットフードに、ヨーグルトフレーバーを含有させると、酸臭が緩和または低減されて、ペットフードの取り扱い時、給与時、摂餌時などに人間やペットに与える不快感が無くなるかまたは低減すること、しかもペットによる嗜好性が向上することを見出して、そのような知見に基づいて本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1) 酸成分を含有する水分含量が10〜70質量%のペットフードに、ヨーグルトフレーバーを更に含有させたことを特徴とするペットフードである。
【0007】
そして、本発明は、
(2) 水分含量が15〜40質量%のセミモイストタイプのペットフードである前記(1)のペットフード;および、
(3) ペットフードが、水分含量15〜40質量%のモイストタイプの粒状ペットフードであって、該粒状ペットフードの表面部分に、ヨーグルトフレーバーを0.01〜0.1質量%の割合(外割り)で被覆してなる前記(1)または(2)のペットフード;
を好ましい態様として包含する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のペットフードは、犬、猫、ウサギ、モルモットなどのペット類に給与されるフードであり、特にドッグフードまたはキャットフードとして適するものである。
本発明のペットフードは、その水分含量が10〜70質量%であって、通常セミモイストタイプと称されているペットフードおよびウエットタイプと称されているペットフードの範疇に属するものである。そのうちでも、本発明のペットフードは、水分含量が15〜40質量%のセミモイストタイプのペットフードであることが、ペットフードを球状、ペレット状などの所定の大きさの粒状の形態で生産することができ、生産性、取り扱い性、給餌性などの点で優れていることから好ましい。
【0009】
本発明は、酸成分を含有するペットフードを対象とする。水分含量が10〜70質量%である本発明のペットフードでは、酸成分は、主として制菌や防カビなどの微生物の繁殖防止のために用いられる。しかしながら、本発明では、酸成分の含有目的は、必ずしも微生物の繁殖防止のためにのみに限られず、酸成分を含有していて、酸成分の含有に伴って酸臭が現に発生したり、発生する恐れのある、水分含量が10〜70質量%のペットフードは、いずれも、本発明の対象となる。
本発明のペットフードでは、酸成分は、ペットフードの製造時にペットフード原料に添加されたものであっても、ペットフード原料中に元々含まれているものであっても、またはその両方であってもよい。
【0010】
ペットフードに含まれる酸成分の種類は特に制限されず、ウエットタイプやセミモイストタイプのペットフードにおいて従来から用いられているか又は含まれている酸成分のいずれであってもよく、例えば、リン酸、塩酸などの無機酸、それらの塩、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、ソルビン酸、アスコルビン酸などの有機酸、それらの塩などを挙げることができる。本発明のペットフードは、1種類の酸成分のみを含有していても、または2種類以上の酸成分を含有していてもよい。
また、ペットフードにおける酸成分の含有形態は特に制限されず、ペットフードの内部に含有していても、ペットフードの表面部分に含有していても、またはそれらの両方であってもよい。
【0011】
本発明のペットフードにおける酸成分の含有量は、ペットフードの種類、ペットフードを構成する原料の種類、酸成分の種類、給餌対象ペットの種類などに応じて種々異なり得る。しかしながら、ペットフードにおける酸成分の含有量が多すぎると、本発明によりヨーグルトフレーバーを添加または被覆しても酸臭が緩和または低減されないことがあるので、ペットフードにおける酸成分の含有量は、一般に0.01〜5質量%、特に0.05〜1質量%程度であることが好ましい。
また、本発明のペットフードは、pHが4〜6であることが好ましく、4.5〜5.5であることがより好ましい。ペットフードのpHが4未満であると、ペットフードにおける酸成分の含有量が多くなり過ぎ、それに伴って酸臭が強くなり過ぎ、ヨーグルトフレーバーによる酸臭の緩和または低減が困難になることがあり、しかもペットによる嗜好性が低下する。一方、ペットフードのpHが6を超えると、細菌やカビなどの発生や増殖が著しくなって腐敗し易くなり、しかもペットによる嗜好性が低下する。
【0012】
本発明のペットフードの形状(形態)、サイズなどは特に制限されず、水分含量、ペットフードを構成する原料の種類や組成、給与するペットの種類などに応じて適当なものを選択することができる。
本発明のペットフードが、例えば水分含量が15〜40質量%程度のセミモイストタイプのペットフードである場合は、球状、ペレット状、ドーナツ状などのような所定の形状および寸法を有する粒状とすることができる。また、本発明のペットフードが水分含量が40質量%以上のウエットタイプのペットフードなどである場合は、例えば、缶、レトルトパウチ、ビン、プラスチック容器などの容器に充填して流通、販売するのがよい。
【0013】
本発明におけるヨーグルトフレーバーの含有形態としては、ヨーグルトフレーバーが、ペットフード中に添加されているか、ペットフードの表面に被覆されているか、またはペットフード中に添加されていると共に表面に被覆されている場合のいずれであってもよい。
ヨーグルトフレーバーを含有していることによって、本発明のペットフードでは酸成分に伴って発生した臭気(酸臭)が緩和または低減される。なお、本発明でヨーグルトフレーバーを含有させた主たる目的は、酸臭の緩和または低減であるが、ヨーグルトフレーバーによって酸臭と共に他の不快な臭気を緩和または低減することを何ら排除するものではない。
【0014】
ヨーグルトフレーバーは、通常、ヨーグルトを水性媒体や有機溶媒などを用いて処理してその香料成分を抽出して得られた香料(フレーバー)であり、従来から広く知られており、各社から種々のヨーグルトフレーバーが市販されている。本発明では、従来から知られているヨーグルトフレーバーのいずれもが使用できる。
【0015】
本発明のペットフードにおけるヨーグルトフレーバーの含有形態は特に制限されず、ペットフードの種類や形態などに応じて選択することができる。例えば、セミモイストタイプのペットフードの場合は、小球状、ペレット状などの粒状の固形形態にすることができるので、そのような粒状のペットフードの表面にヨーグルトフレーバーを被覆してもよいし、ペットフード中(ペットフードを形成する原料中)にヨーグルトフレーバーを添加してもよいし、またはその両者の併用であってもよい。そのうちでも、セミモイストタイプのペットフードで、ペットフードを小球状、ペレット状などの粒状形態し、その表面部分にヨーグルトフレーバーを被覆することが、酸臭の緩和または低減効果が大きく、しかもペットによる嗜好性が高い点から好ましい。
また、ウエットタイプのペットフードは、一般に粒状やペレット状などに成形することが困難で、容器などに充填して流通、販売されることが多いので、ペットフード中(ペットフード原料中)にヨーグルトフレーバーを添加するのがよい。
【0016】
本発明のペットフードにおけるヨーグルトフレーバーの含有量は、給与するペットの種類(ペットフードの種類)、配合組成、ペットフードの水分含量や形状(形態)、ペットフードに含まれる酸成分の種類や量などに応じて調整することができる。
本発明のペットフードが、例えば、水分含量15〜40質量%のセミモイストタイプの粒状のペットフードである場合は、該粒状ペットフードの表面に、ヨーグルトフレーバーを、0.01〜0.1質量%の割合(外割り;ヨーグルトフレーバーで被覆する前のペットフードの質量に対する割合)で被覆することが、酸臭の緩和または低減、およびペットによる嗜好性などの点から好ましい。
また、ヨーグルトフレーバーをペットフード中に添加する場合(ヨーグルトフレーバーをペットフード表面に被覆せずにウエットタイプまたはセミモイストタイプのペットフード原料中に添加含有させる場合)は、ヨーグルトフレーバーを添加する前のペットフード原料の総質量に対して、ヨーグルトフレーバーを0.1〜0.5質量%の割合で添加することが、酸臭の緩和または低減、およびペットによる嗜好性などの点から好ましい。
【0017】
本発明のペットフードでは、酸成分およびヨーグルトフレーバー以外のペットフード原料の種類および配合割合などは特に限定されず、対象とするペットの種類などに応じて、従来のペットフードと同様のものを適宜使用することができる。何ら限定されるものではないが、例えば肉粉、魚粉、穀粉類(小麦粉、トウモロコシ粉、大豆粉、米粉、各種澱粉類)、糟糠類(大豆粕、米ぬか、ふすま、胚芽、麦芽など)、おから、小麦グルテン、油脂類、ビタミン類、ミネラル類、卵製品、ガム類などの増粘剤、ゲル化剤、食塩、調味料、香辛料などを使用することができる。
【0018】
本発明のペットフードの製造方法および製造装置は特に制限されず、水分含量(セミモイストタイプであるかまたはウエットタイプであるか)、ペットフードの最終的な形態(形状)などに応じて、従来と同様の方法および装置を使用して製造することができる。
何ら限定されるものではないが、本発明のペットフードがセミモイストタイプ(好ましくは水分含量が15〜40質量%)のペットフードである場合は、例えば、押出し造粒機、転動造粒機などの造粒機(好ましくは押出し造粒機)を用いて所定の大きさの粒状体をつくり、得られた粒状体中の水分含量が少ない場合は造粒後に水を加えて、水分含量が15〜40質量%になるように調整し、それにより得られた粒状体の表面にヨーグルトフレーバーを含有する液(水溶液、水性分散液、有機溶媒溶液など)を噴霧し、必要に応じて所定の乾燥を施すことにより、表面部分にヨーグルトフレーバーを被覆含有する本発明のペットフードを得ることができる。
【0019】
また、本発明のペットフードが、ウエットタイプのペットフードである場合は、例えば、酸成分を含有するペットフード原料にヨーグルトフレーバーを所定の量で添加して、緩やかに回転する撹拌装置などを有するミキサー、転動式ミキサーなどを用いる混合方法、手作業による混合方法などを採用して混合し、得られた混合物を、缶、レトルトパウチ、ビンなどの容器に充填し、必要に応じて加圧加熱殺菌処理などを行うことによって製造することができる。
【0020】
【実施例】
以下に本発明について実施例などにより具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されない。
《実施例1》
(1) 下記の表1に示す配合組成からなるドッグフード用の原料を準備した。
【0021】
【表1】
【0022】
(2) 上記(1)で準備した原料をリボンミキサーを用いて十分に混合した後、エクストルーダーに供給して、エクストルーダーへの原料混合物の供給量50kg/時、エクストルーダーへの給水量6リットル/時、混練温度110〜130℃、エクストルーダーのバレル先端温度80℃、バレル先端圧力10Paの条件下に押出成形して膨化発泡させ、それを切断して、直径が約10〜12mmの球状物を製造し(水分含量20質量%)、次いで該球状物に水を噴霧して水分含量が30質量%のセミモイストタイプのドッグフードを製造した。
(3) 下記の表2に示す6種類のフレーバーを準備し、ドッグフードの質量に対するフレーバーの含有量が0.02質量%(外割り)になるようにして、それぞれのフレーバーをドッグフードの表面に噴霧して、表面に下記の表2のフレーバーをそれぞれ被覆した6種類のセミモイストタイプのドッグフード(水分含量27質量%)をそれぞれ製造し、気密性のある包装袋(OPP/PE積層フィルム製)に充填して密封した。
【0023】
【表2】
【0024】
(4) 上記(3)で得られたフレーバー被覆ドッグフードのそれぞれを前記包装袋に充填・密封した状態で室温下に2カ月間保管した(保管時の室温約17〜25℃)。2カ月後に開封して、ドッグフードの臭いを下記の表3に示す評価基準にしたがって評価したところ、下記の表4に示すとおりであった。
(5)(i) 15頭の犬(犬の種類:パグマルチーズ、ポメラニアン、シーズー、コーギー、パピヨン、スピッツ、柴犬、シェルティ、雑種)を準備し、犬を1頭ずつ隔離し、それぞれの犬に、上記(2)で得られたフレーバーを被覆する前のドッグフード(対照品)と、上記(3)で得られたフレーバー被覆ドッグフードのうちのヨーグルトフレーバーを被覆したドッグフード(試験品)を、1日毎に、同じ量で別々の皿に入れて給与し(2点比較)、対照品と試験品のいずれのドッグフードを多く摂取したかを比較調査する試験を4日間行い(延べで各試験区当たり60頭)、4日間の延べ頭数(60頭)に対する試験品(ヨーグルトフレーバーを被覆したドッグフード)を多く摂取した犬の延べ頭数(延べ個体数)を調べたところ、下記の表4に示すとおりであった。
(ii) ヨーグルトフレーバー以外の他のフレーバーを被覆したドッグフードについても、上記(i)と同じ試験を行った。その結果を下記の表4に示す。
(iii) 上記(i)および(ii)の試験において、試験品(フレーバーを被覆したドッグフード)の方を多く摂取した延べ個体数が60%以上の場合を嗜好性が良好、40%以下の場合を嗜好性が不良として評価した。
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】
上記の表4の結果にみるように、ヨーグルトフレーバーを含有する試験区1のドッグフードは、ドッグフードの酸臭が緩和されていて不快な臭いが無いかまたは低減されており、しかも表面被覆されたヨーグルトフレーバーの香りとベースをなすドッグフードの臭いとの間に違和感がない。
その上、ヨーグルトフレーバーを被覆した試験区1のドッグフードは、ヨーグルトフレーバーを被覆してない対照品のドッグフードに比べて、犬に好んで摂取され、犬による嗜好性が高い。
【0028】
それに対して、レモンフレーバーまたはオレンジフレーバーを被覆した試験区2と試験区3のドッグフードは、表面被覆されたレモンフレーバーまたはオレンジフレーバーの香りとベースをなすドッグフードの臭いとの間に違和感があり、全体的に不快な臭いがする。しかも試験区2および試験区3のドッグフードは、フレーバーを被覆してない対照品のドッグフードに比べて、犬に好まれず、嗜好性が低い。
また、ビーフフレーバー、チキンフレーバーまたはフィッシュフレーバーを被覆した試験区4〜6のドッグフードは、ドッグフードから発生する不快な酸臭が緩和または低減されておらず、ドッグフードの臭いの点で改善がなされていない。
【0029】
【発明の効果】
酸成分を含有する水分含量の多いペットフードに、ヨーグルトフレーバーを含有させてなる本発明のペットフードでは、ペットフードから発生する酸臭が緩和または低減されるので、取り扱い時、保管時、給与時、摂餌時などに人間やペットに与える不快感をなくしたり低減することができる。
しかも、ヨーグルトフレーバーを含有する本発明のペットフードは、ペットによる嗜好性が高く、ペットに好んで摂取される。
Claims (3)
- 酸成分を含有する水分含量が10〜70質量%のペットフードに、ヨーグルトフレーバーを更に含有させたことを特徴とするペットフード。
- 水分含量が15〜40質量%のセミモイストタイプのペットフードである請求項1に記載のペットフード。
- ペットフードが、水分含量15〜40質量%のモイストタイプの粒状ペットフードであって、該粒状ペットフードの表面部分に、ヨーグルトフレーバーを0.01〜0.1質量%の割合(外割り)で被覆してなる請求項1または2に記載のペットフード。
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