JP3830259B2 - 液体封入式エンジンマウント - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のエンジンを支承するために用いられる液体封入式エンジンマウントに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の液体封入式エンジンマウントとして、内筒体と、外筒体と、両筒体間を連結するゴム弾性体と、このゴム弾性体中に画成されて内筒体と外筒体との相対変位による圧力を受ける主流体室と、この主流体室からの液体がオリフィスを通して流入される副流体室と、上記主流体室と副流体室とに封入された流体とをを備えたものが知られている(例えば、特開平7−151183号公報参照)。このものでは、上記内筒体から筒軸に直交する方向であって略水平方向両側にそれぞれ上記外筒体まで延びて上記主流体室の上面を仕切る一対の主ばね部により、上記内筒体は上記外筒体に対し弾性支持されており、上記内筒体に上下方向に振動が入力されると、上記両主ばね部が下方に変位する結果、上記主流体室内に圧力変動が発生するようになる。そして、この圧力変動により、液体がオリフィスを通して上記主流体室と副流体室とを相互に流動し、上記オリフィス内の液体の液柱共振により、上下方向の低周波数域の振動を減衰させるようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の如き主ばね部の変形により主流体室の圧力変動を生じさせるものとして、例えば図9に示すような液体封入式エンジンマウントを、同図の上下方向(鉛直方向)を車両の上下方向にし、同図の左右方向(水平方向)を車両の前後方向になるように配置して、外筒体2を車体側に内筒体1をエンジン側にそれぞれ取り付けた場合、例えば内筒体1に対し上下方向に振動が入力して、この内筒体1が外筒体2に対し相対的に下方に変位すると、同図に実線で示すように、第1及び第2主ばね部31,32がそれぞれ上方に膨らんでしまい主流体室5が受ける圧力が分散してしまうおそれがある。このように膨らんでしまうと、主流体室5内の液体がオリフィス7及びオリフィス8を通して副流体室6に押し出されるというピストン効果が得られなくなり、この結果、上記の液柱共振による減衰効果が低減してしまうという不都合がある。
【0004】
これを解消するために、第1及び第2主ばね部の肉厚を分厚くすることで、上記内筒体が下方に相対変位する際の上記両主ばね部の膨らみを防止・抑制することが考えられる。
【0005】
ところが、上記両主ばね部の肉厚を分厚くすると上記の如き両主ばね部の膨らみは防止することができるものの、主としてエンジンの自重に起因する静荷重に対する上下方向の支持剛性と前後方向の支持剛性との比率(剛性バランス)が上記両主ばね部の肉厚を分厚くすることによって肉厚を厚くしない状態から変化してしまうことになる。このため、例えば車両の上下方向に対し硬く、前後方向に対し軟らかくするというような剛性バランスの設定要求がある場合に、上記の如く両主ばね部の肉厚を分厚くすることで上記剛性バランスの設定値が変化してしまい上記設定要求を実現できないという不都合がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液体封入式のエンジンマウントにおいて、静的特性を変化させることなく動的特性としての減衰効果を向上させることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、筒軸が横向きに配置されてエンジン及び車体の一側に連結される内筒体と、この内筒体の周囲を囲みエンジン及び車体の他側に連結される外筒体と、この外筒体と内筒体とを互いに連結するゴム弾性体と、上記内筒体の下側位置のゴム弾性体中に画成されて上記内筒体の外筒体に対する上下方向の相対変位に伴い圧力変動を受ける主流体室と、この主流体室に対しオリフィスを介して連通されて上記主流体室の圧力変動を補償する副流体室と、これら主流体室及び副流体室に封入された流体とを備えた液体封入式エンジンマウントを前提とし以下のように構成するものである、すなわち、上記ゴム弾性体を、無負荷状態において上記内筒体から斜め下方の両側にそれぞれ上記外筒体まで延びて上記主流体室の上面を仕切る一対の主ばね部と、上記両主ばね部の上記筒軸方向両側端の各位置から上記外筒体までの間を閉止して上記主流体室の筒軸方向両側面を仕切る一対の側壁部とを備えたものとし、上記各主ばね部には、上記一対の側壁部それぞれの内壁に対して所定寸法だけ離れた位置の間でかつ、上記外筒体の内周面に対して所定寸法だけ離れた位置から内筒体までの間の領域内に、上記主流体室からの流体圧に対する曲げ剛性を増大させるよう厚肉部を一体に形成するものである。
【0008】
上記の構成の場合、厚肉部を、一対の側壁部それぞれの内壁に対して所定寸法だけ離れた位置の間でかつ、上記外筒体の内周面に対して所定寸法だけ離れた位置から内筒体までの間の領域内、換言すれば静荷重の支持剛性に対し死にゴムとなる領域に形成するため、上記厚肉部を形成しても静荷重に対する上下方向と前後方向との剛性バランスが上記厚肉部を設けない状態から変化してしまうことはない。
【0009】
また、上記厚肉部を形成することにより、上記主ばね部の曲げ剛性が増大されるため、動的荷重が加わったとき、つまり、振動が加えられて内筒体が下方に相対変位したときに上記主ばね部が上方に膨らむことを防止・抑制することが可能になる。これにより、確実に主流体室内の液体をオリフィスを通して副流体室に押し出すことが可能になり、この結果、減衰特性を向上させることが可能になる。
【0010】
従って、静的特性を変化させることなく動的特性としての減衰効果を向上させることが可能になる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、厚肉部を、各主ばね部に対し上下方向に突出して内筒体と外筒体とを結ぶ方向にリブ状に形成する構成とするものである。
【0012】
上記の構成の場合、厚肉部の具体的な形状が特定され、主流体室からの流体圧に対する曲げ剛性を増大させて、内筒体が下方に相対変位したときに上記主ばね部が上方に膨らむことを効果的に防止することが可能になる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の発明において、厚肉部を、各主ばね部の上面部に形成する構成とするものである。
【0014】
上記の構成の場合、厚肉部を各主ばね部の上面部に形成することにより、主流体室の容積を縮小させることなく、減衰効果の向上が図られる。しかも、厚肉部を各主ばね部の上面部に形成することにより、例えば主流体室内に形成されて内筒体の下方への変位を制限するストッパー等と上記厚肉部とが干渉することを回避して、液体封入式エンジンマウントの構造を簡易なものにすることが可能になる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る液体封入式エンジンマウントの無負荷状態(製造状態)を示し、図2、図3及び図4は上記実施形態の内筒体がエンジン側に、外筒体が振動受部としての車体側にそれぞれ取り付けられ、エンジンの自重が内筒体及びゴム弾性体に作用した状態(1G状態)を示す。
【0017】
図1〜図4において、1は筒軸Xが略水平方向となるよう配置された内筒体、2はこの内筒体1の周囲を囲むよう外周囲に配置された外筒体、3はこの外筒体2と上記内筒体1とを互いに連結するゴム弾性体、4は上記内筒体1と外筒体2との中間位置であって上記外筒体2に近接した位置のゴム弾性体3中に上記内筒体1の周囲を囲むよう埋め込まれた中間筒体である。また、5は上記内筒体1の下側のゴム弾性体3内に画成された主流体室、6は上記内筒体1の上側に画成された副流体室、7は上記の主流体室5と副流体室6を互いに連通するオリフィス、8は同じく主流体室5と副流体室とを互いに連通するオリフィス、9は上記内筒体1よりも上側のゴム弾性体3中を上記筒軸Xに平行に貫通する貫通空所である。そして、上記主流体室5および副流体室6には非圧縮性の流体としての液体10と、圧縮性の気体としての空気11とが封入されている。
【0018】
上記内筒体1は、無負荷状態(図1参照)では、その筒軸Xが外筒体2の筒軸Yよりも所定寸法上方位置であって上記筒軸Yと平行に延びるようにゴム弾性体3によって外筒体2に対し支持されている。また、上記中間筒体4には、図5にも示すように、外周面の下側部分が切り欠かれて窓部41が形成される一方、上側部分が内方に凹まされて凹溝部42が形成されており、この凹溝部42の一部には上方に凸となるリバウンド受部43が形成されている。
【0019】
そして、上記ゴム弾性体3は、上記内筒体1及び中間筒体4と一体に加硫成形されたものであり、内筒体1から筒軸Xに直交する水平方向(図1及び図2の左右方向)両側にハの字状に延びて内筒体1を外筒体2に対し弾性支持して防振機能を果たす第1及び第2の主ばね部31,32を主要構成要素として備えるものである。加えて、上記ゴム弾性体3は上記内筒体1の下側を所定肉厚で覆い、その変形抵抗により上記内筒体1の下方変位を所定量に制限する入力側被覆部33と、上記内筒体1の上側を所定肉厚で覆うリバウンド側被覆部34と、中間筒体4の外周面を覆うように加硫接着されて外筒体2の内周面との間に介装される薄肉層35とを上記両主ばね部31,32と一体のものとして備えている。
【0020】
上記第1主ばね部31は上記内筒体1から左斜め下方に比較的急傾斜の下り勾配で外筒体2まで延びるように形成され、また、上記第2主ばね部32は上記内筒体1から右斜め下方に比較的緩傾斜の下り勾配で外筒体2まで延びるように形成されている。このような第1及び第2主ばね部31,32は、その下面が1G状態(図2参照)で後述の案内面13を構成することになるように定められ、具体的には無負荷状態(図1参照)で筒軸Xを通る鉛直軸Zと上記第1主ばね部31の延びる方向(図1の一点鎖線参照)との間の内角が、上記鉛直軸Zと第2主ばね部32の延びる方向との間の内角よりも所定量小さくなるように定められる。そして、1G状態(図2参照)では、ゴム弾性体3がエンジン自重を受けて下方に撓むことにより、上記鉛直軸Zと第1主ばね部31の延びる方向との間の内角が90度よりも小さくなる一方、第2主ばね部32の延びる方向との間の内角が90度以上(図例ではほぼ90度)になるようになっている。その結果、そのゴム弾性体3の下面が主流体室5の上記水平方向左端側からオリフィス8の主流体室側開口8aが位置する右端側に向けて徐々に上昇するように傾斜した案内面13を構成するようになっている。
【0021】
上記第1及び第2主ばね部31,32にはそれぞれ、図1に示すように、リブ31a,32aが形成されており、上記第1主ばね部31に形成されたリブ31aは、上記中間筒体4の窓部41の付近の内周面に対して所定寸法αだけ離れた位置から上記中間筒体4のリバウンド受部43の付近の内周面に対して上記所定寸法βだけ離れた位置までであり、かつ、図6に示すように、上記主流体室5を区画する第1及び第2側壁部36,37の内壁に対して所定寸法γだけ離れた位置の間のリブ領域内に後述の貫通空所91側に突出するように形成されている。一方、上記第2主ばね部32に形成されたリブ32aは、上記中間筒体4の窓部41の付近の内周面に対して所定寸法αだけ離れた位置から上記中間筒体4のリバウンド受部43の付近の内周面に対して上記所定寸法βだけ離れた位置までであり、かつ、図7に示すように、上記主流体室5を区画する第1及び第2側壁部36,37の内壁に対してそれぞれ所定寸法γだけ離れた位置の間のリブ領域内に後述の貫通空所92側に突出するように形成されている。
【0022】
また、上記のリバウンド側被覆部34は、無負荷状態(図1参照)において中間筒体4のリバウンド受部43の下面に対し非接着状態で当接した状態に形成されて、内筒体1の両側に筒軸Xに平行に貫通する貫通空所91,92が形成されるようになっている一方、1G状態(図2参照)においては上記リバウンド側被覆部34がリバウンド受部43から離れて両貫通空所91,92が連続した1つの貫通空所9が形成されるようになっている。この1G状態では、振動入力時に上記被覆部34がリバウンド受部43に当接することにより内筒体1の上方変位を所定量に制限するようになっている。
【0023】
上記主流体室5は、図1及び図3に示すように、上記ゴム弾性体3の下面と、中間筒体4の窓部41位置に外筒体2の内周面と、上記第1及び第2側壁部36,37の内壁とによって画成されている。また、上記副流体室6は、中間筒体4の凹溝部42の筒壁と外筒体2の内周面とにより体積が不変の状態で画成されており、上記凹溝部42の筒壁により上記貫通空所9と副流体室6との間が互いに隔てられて区画されている。
【0024】
上記オリフィス7は、内筒体1を挟んで左側の薄肉層35(図4及び図6参照)の主流体室5と副流体室6との間の部分が筒軸X方向に所定幅だけ周方向に切り欠かれて凹溝状とされ、この凹溝の部分と外筒体2の内周面とに挟まれて形成されたオリフィス部71により形成されている。そして、このオリフィス7は、第1主ばね部31の外筒体2との連結位置が比較的下位に設定されていることにより、比較的大通路長を有するように形成されており、また、所定の低周波域(例えば自動車のシェイク振動域10〜15Hz )で液柱共振を生じるように上記通路長に応じて比較的大通路断面積を有するように形成されている。また、上記オリフィス7は、一端開口で主流体室5の右端部側に連通し、その一端開口が上記オリフィス7の主流体室側開口7aとされている。
【0025】
また、オリフィス8は、図4及び図7に示すように、内筒体1を挟んで右側の薄肉層35の主流体室5と副流体室6との間の部分が筒軸X方向に所定幅だけ周方向に切り欠かれて凹溝状とされ、この凹溝の部分と外筒体2の内周面とに挟まれて形成されている。このオリフィス8は、上記オリフィス7に設定された共振周波数と関係で定まる細径のものに形成されている。
【0026】
上記オリフィス7とオリフィス8とは、図4に示すように、筒軸X方向に対し互いにオフセットした位置に形成されており、上記筒軸X方向に対し同じ位置に上記オリフィス7とオリフィス8とが形成した場合にこの両オリフィス7,8とから流入する液体が上記副流体室6内で衝突することによって、空気11が液体内10へ気泡となって混入することを防止するようにしている。
【0027】
そして、1G状態(図2参照)において、主流体室5内の全てに液体10が充満され、副流体室6内に液面10aがその副流体室6の上下方向中間位置であって上記オリフィス7及びオリフィス8の副流体室側開口7b,8bよりも上方に位置するように液体が封入され、これにより、上記副流体室6の下半部には液室部61が形成される一方、上半部には気室部62が形成されるようになっている。なお、この気室部62の容積、すなわち、封入空気量は、オリフィス7及びオリフィス8を介しての主流体室5と副流体室6との間の液体10の流動により上記液室部61の容積を拡縮させて有効に液柱共振を生じさせるような量に設定されている。
【0028】
次に、上記構成の液体封入式エンジンマウントの製造方法について説明すると、まず、内筒体1および中間筒体4とを上述のごとくゴム弾性体3と一体加硫成形する。ついで、この一体成形物と外筒体2とを筒軸Xが上下方向になるように配置し、上記外筒体2の内周面に対して上から上記一体成形物の外周面の薄肉層35を圧入していく。そして、主流体室5となる空所の上端部と外筒体2の上端開口縁との間に隙間を開けた状態で上記圧入を一時停止し、この状態で、上記隙間から液体10を気室部62の空気量を考慮した所定量だけ注入し、その後、上記一体成形物を最後まで圧入する。最後に、上記外筒体2の上下の各開口縁をかしめて上記一体成形物と外筒体2とを一体化する。この製造方法によれば、液体10を満たした液槽中で組み付けを行う必要がないため、圧入による液体の飛散の発生や組み付け後に外面に付着した液体の洗浄の必要などを省略することができる。
【0029】
この製造されたエンジンマウントを上記筒軸Xが水平になるようして主流体室5が下に副流体室6が上になるようにすれば、図1に示す無負荷状態になり、封入された空気11は、通常は、副流体室6の上部と、主流体室5のオリフィス8の主流体室側開口8aを通る水平面よりも上方部分とにそれぞれ位置することになる。
【0030】
そして、この無負荷状態のエンジンマウントの内筒体1をエンジン側に、外筒体2を車体側にそれぞれ取付けて1G状態にすることにより、ゴム弾性体3が下方に変位してそのゴム弾性体3の下面に案内面13(図2参照)が形成されるため、上記主流体室5内の空気11が上記案内面13に沿ってオリフィス8の主流体室側開口8aに自然に導かれ、このオリフィス8を通して全量が副流体室6に入る。これにより、空気11が副流体室6にのみ封入された状態に自動的にされ,副流体室6内に確実に所定の設定空気量(設定容積)の気室部62が形成される。
【0031】
次に、内筒体1を介してゴム弾性体3に対し上下方向の低周波域の振動が入力すると、内筒体1が上下方向に相対的に変位する。この変位によりオリフィス7及びオリフィス8を通して主流体室5と副流体室6の液室部61との間で液体10が流動し、上記両オリフィス7,8を介した液柱共振によって上記低周波域の入力振動の減衰が図られる。なお、上記のオリフィス7及びオリフィス8を介した液体10の流動は気室部62の空気11の圧縮・膨脹作用によって液室部61の容積の拡縮により可能となるものである。
【0032】
つぎに、上記実施形態の作用・効果を説明する。
【0033】
静荷重に対する剛性は、上記第1及び第2主ばね部31,32の上記外筒体2に接する面、及び、上記第1及び第2主ばね部31,32と第1及び第2側壁部36,37とがそれぞれ接する面の面積に依存するが、上記両リブ31a,32aは、それぞれ中間筒体4の窓部41の付近の内周面に対して所定寸法αだけ離れた位置から上記中間筒体4のリバウンド受部43の付近の内周面に対して上記所定寸法βだけ離れた位置までであり、かつ、図6に示すように、上記主流体室5を区画する第1及び第2側壁部36,37の内壁に対して所定寸法γだけ離れた位置の間のリブ領域内に形成されている。このため、上記両リブ31a,32aにより上記の面積が拡大されることにはならず、上記両リブ31a,32aは、静荷重に対して死にゴムとなる。これにより、静荷重に対する剛性バランスは上記リブ31a,32aを設けても変化しないことになる。
【0034】
また、第1及び第2主ばね部31,32にリブ31a,32aを設けることにより、この第1及び第2主ばね部31,32の肉厚が厚くなり、変形に対する抵抗が増加するようになる。このため、振動が加えられて内筒体1が外筒体2に対して下方に相対変位したときに上記第1及び第2主ばね部31,32が上方に膨らむことを防止することができるようになる。これにより、確実に主流体室5内の液体をオリフィス7及びオリフィス8を通して副流体室6に押し出すことができるようになり、この結果、減衰特性を向上させることができるようになる。
【0035】
従って、上記のリブ31a,32aを設けるという簡易な構造で、静的特性を変化させることなく動的特性としての減衰効果を向上させることができるようになる。
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、第1及び第2主ばね部31,32として内筒体1から斜め下方に下り勾配で延びるもののようにしているが、これに限らず、例えば第1及び第2主ばね部が水平方向に延びるように形成されたものに対して、リブをそれぞれ形成するようにしてもよい。
【0036】
上記実施形態では、液体封入式エンジンマウントとしてエアダイアフラムを用いたエアダイアフラム式のものを用いているが、これに限らず、例えばダイアフラムを用いたダイアフラム式のエンジンマウントに適用してもよい。
【0037】
上記実施形態では、リブ31a,32aとして各主ばね部31,32の上面側に突出して貫通空所91,92に突出するようにしているが、これに限らず、リブを例えば上記各主ばね部31,32の下面側に形成して主流体室5内にそれぞれ突出するようにしてもよい。
【0038】
上記実施形態では、リブ31a,32aとして、その上端が中間筒体4のリバウンド受部43の付近の内周面に対して上記所定寸法βだけ離れた位置から突出するようにしているが、これに限らず、例えばリブの上端を上記中間筒体4のリバウンド受部43まで連続させるようにしてもよい。この場合にでも、同様の効果を得ることができるようになる。
【0039】
また、上記実施形態では、各リブ31a,32aとして、それぞれのリブ領域内から突出する1つもののように形成しているが、これに限らず、例えば第1または第2主ばね部31,32に沿って内筒体1と外筒体2とを結ぶ方向に延びる複数列のリブをリブ領域内に筒軸方向に並べるように形成してもよい。
【0040】
さらに、筒軸方向に延びるリブをリブ領域内に形成してもよい。この場合であっても、そのリブの内筒体1と外筒体2とを結ぶ方向の幅に応じて、この上記第1または第2主ばね部31,32の上方への膨らみを防止することができるようになる。
【0041】
加えて、リブ領域全体を厚肉部にするようにしてもよい。
【0042】
【実施例】
図8は、図1及び図2に示す、リブを形成した実施形態の液体封入式エンジンマウントと、図9に示す、上記実施形態のものからリブを省略した液体封入式エンジンマウントとに対して、それぞれ強制的に加振を行った場合の減衰効果の変化を示す実験結果であり、この図において、実線及び破線はリブ有りの液体封入式エンジンマウントの結果であり、一点鎖線及び二点鎖線はリブ無しの液体封入式エンジンマウントの結果である。なお、実線及び一点鎖線は振幅が±0.1mmで加振したときの結果であり、破線及び二点鎖線は振幅が±0.5mmで加振したときの結果である。
【0043】
図8の実線と一点鎖線とを比較すると、上記リブを形成することにより、損失係数のピーク値が高くなっており、減衰効果が向上している。また、加振振幅を大きくした場合の破線と二点鎖線とを比較しても、上記リブを形成することにより、損失係数のピーク値が高くなっており、減衰効果が向上している。なお、上記加振振幅を大きくなれば、減衰効果は低下するようになるが、上記リブを形成することによる減衰効果の向上率は、上記加振振幅が±0.1mmの場合でも、±0.5mmの場合でも同じであり、上記リブを形成することにより、加振振幅に依らず減衰効果が向上している。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明における液体封入式エンジンマウントによれば、上記一対の側壁部それぞれの内壁に対して所定寸法だけ離れた位置の間でかつ、上記外筒体の内周面に対して所定寸法だけ離れた位置から内筒体までの間の領域内(静荷重の支持剛性に対し死にゴムとなる領域)に厚肉部を形成することによって、剛性バランスが変化してしまうことを防止し、上記厚肉部により、動的荷重が加わったときに上記主ばね部の上方への膨らみを防止・抑制することができ、静的特性を変化させることなく動的特性としての減衰効果を向上させることができる。
【0045】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明による効果に加えて、厚肉部の具体的な形状を特定することができる。
【0046】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1または請求項2記載の発明による効果に加えて、主流体室の容積を縮小させることなく、減衰効果の向上を図ることができ、しかも、例えば主流体室内に形成されて内筒体の下方への変位を制限するストッパー等と厚肉部とが干渉することを回避して、液体封入式エンジンマウントの構造を簡易なものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態の製造段階のものを示す横断面図である。
【図2】 上記実施形態の1G状態のものを示す図1対応図である。
【図3】 図2のC−C線における断面図である。
【図4】 図2のD−D線における断面図である。
【図5】 内筒体と中間筒体との分解斜視図である。
【図6】 図1のA−A線における端面図である。
【図7】 図1のB−B線における端面図である。
【図8】 本発明の実施形態における損失係数と周波数との関係図である。
【図9】 従来の液体封入式エンジンマウントを示す図2対応図である。
【符号の説明】
1 内筒体
2 外筒体
3 ゴム弾性体
5 主流体室
6 副流体室
7,8 オリフィス
10 液体(流体)
11 気体(流体)
31 第1主ばね部
32 第2主ばね部
36 第1側壁部
37 第2側壁部
31a,32a リブ
X 筒軸
Claims (3)
- 筒軸が横向きになるように配置されてエンジン及び車体の一側に連結される内筒体と、この内筒体の周囲を囲みエンジン及び車体の他側に連結される外筒体と、この外筒体と上記内筒体とを互いに連結するゴム弾性体と、上記内筒体の下側位置のゴム弾性体中に画成されて上記内筒体の上記外筒体に対する上下方向の相対変位に伴い圧力変動を受ける主流体室と、この主流体室に対しオリフィスを介して連通されて上記主流体室の圧力変動を補償する副流体室と、これら主流体室及び副流体室に封入された流体とを備えた液体封入式エンジンマウントにおいて、
上記ゴム弾性体は、
無負荷状態において上記内筒体から斜め下方の両側にそれぞれ上記外筒体まで延びて上記主流体室の上面を仕切る一対の主ばね部と、上記両主ばね部の上記筒軸方向両側端の各位置から上記外筒体までの間を閉止して上記主流体室の筒軸方向両側面を仕切る一対の側壁部とを備え、
上記各主ばね部には、
上記一対の側壁部それぞれの内壁に対して所定寸法だけ離れた位置の間でかつ、上記外筒体の内周面に対して所定寸法だけ離れた位置から内筒体までの間の領域内に、上記主流体室からの流体圧に対する曲げ剛性を増大させるよう厚肉部が一体に形成されている
ことを特徴とする液体封入式エンジンマウント。 - 請求項1において、
厚肉部は、各主ばね部に対し上下方向に突出して内筒体と外筒体とを結ぶ方向に延びるリブ状に形成されている
ことを特徴とする液体封入式エンジンマウント。 - 請求項1または請求項2において、
厚肉部は、各主ばね部の上面側に形成されている
ことを特徴とする液体封入式エンジンマウント。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35985597A JP3830259B2 (ja) | 1997-12-26 | 1997-12-26 | 液体封入式エンジンマウント |
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