JP3829587B2 - 同一色相のインクを吐出するノズルを同種のインクを吐出するノズルとして使用するドラフト印刷 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、印刷ヘッドを用いて印刷媒体上にドットを形成することによって印刷を行う技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
主走査方向と副走査方向に走査しながら印刷ヘッドを用いて印刷を行う印刷装置としては、シリアルスキャン型プリンタやドラムスキャン型プリンタ等のようなインクジェットプリンタがある。インクジェットプリンタは、印刷ヘッドの複数のノズルからインクを吐出させることによって文字や画像を印刷媒体上に形成する。また、印刷方式には、高画質で印刷する印刷モードと高速のドラフト印刷モード(高速印刷モード)とがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
画像配置の確認等に使用されるドラフト印刷においては、高画質は必要とされない一方、高速性が非常に重要視される。そして、従来のドラフト印刷よりもさらに高速な印刷を行いたいという要望があった。
【0004】
この発明は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、高速印刷モードにおける印刷速度をさらに向上させることのできる技術を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の第1の構成では、複数種類のインクを吐出する印刷ヘッドを主走査方向に走査しつつ印刷媒体上にドットを形成する印刷部を用いて印刷を行うために、前記印刷部に供給すべき印刷データを生成する印刷制御装置であって、前記印刷ヘッドは、色相がほぼ同一で明度と彩度の少なくとも一方が異なる複数の同一色相インクを吐出する複数の同一色相ノズル群を備え、前記複数の同一色相ノズル群は、副走査方向に沿って相互にずれた位置に配列されており、前記印刷制御装置は、所定の高速印刷モードで印刷を行う際に、前記複数の同一色相ノズル群がそれぞれ異なる主走査ラインを記録対象とし、同一の主走査ラインを記録対象としないように、前記印刷データを生成する印刷データ生成部を備えることを特徴とする。
【0006】
この第1の構成によれば、色相が同一で明度と彩度の少なくとも一方が異なるインクを吐出する各前記ノズル群が同一の主走査ラインでなく、異なる主走査ラインを記録するので、一走査において記録できる主走査ラインの数が大幅に増加し、印刷速度がさらにに向上することになる。また、異なる種類のインクではあるが、色相が同一のインクで記録するため、画質の劣化は小さい。
【0007】
なお、ドラフト印刷用の印刷データPDは、ドラフト印刷用の色変換テーブル(図1)を用いて生成しても良い。
【0008】
こうすれば、印刷データの生成に要する時間を短くすることができ、印刷時間の短縮化が図れる。
【0009】
また、高画質で印刷する印刷モード用に生成されたハーフトーンデータをドラフト印刷用のハーフトーンデータに変換して、ドラフト印刷用の印刷データPDを生成しても良い。
【0010】
これにより、ドラフト印刷用の色変換テーブルを準備することなく、本発明を適用することができる。
【0011】
また、高画質で印刷する印刷モード用に生成された印刷データPDを変換して、ドラフト印刷用の印刷データPDを生成することもできる。
【0012】
こうすれば、プリンタ側のファームウェアの変更のみでも容易に、本発明の適用が可能である。
【0013】
なお、複数の同一色相ノズル群は、副走査方向に沿って一列に配列されていても良い。
【0014】
こうすることにより、印刷ヘッドをコンパクトにすることができる。
【0015】
また、本発明の適用により、記録される各主走査ラインがすきまなく接するときは、副走査送り量を、複数の同一色相ノズル群が1回の主走査で形成可能なドットの配列で構成される領域を副走査方向に沿って測った長さの値に設定すればよい。
【0016】
上記のような印刷データを生成する印刷制御装置は、印刷部を備える印刷装置とは別個の装置として構成されたコンピュータによって実現されてもよく、あるいは、印刷装置内の回路によって実現されてもよい。
【0017】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、印刷方法および印刷装置、印刷制御方法および印刷制御装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の態様で実現することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.装置の構成:
B.記録方式の基本的条件:
C.濃淡の異なる複数のインクを使用することによる多階調化の考え方:
D.ドラフト印刷における印刷データと副走査送りの考え方:
E.ドラフト印刷におけるドット記録方式の比較例と実施例:
【0019】
A.装置の構成:
図1は、本発明の一実施例としての印刷システムの構成を示すブロック図である。この印刷システムは、印刷制御装置としてのコンピュータ90と、印刷部としてのカラープリンタ20と、を備えている。なお、カラープリンタ20とコンピュータ90の組み合わせを、広義の「印刷装置」と呼ぶことができる。
【0020】
コンピュータ90では、所定のオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム95が動作している。オペレーティングシステムには、ビデオドライバ91やプリンタドライバ96が組み込まれており、アプリケーションプログラム95からは、これらのドライバを介して、カラープリンタ20に転送するための印刷データPDが出力されることになる。アプリケーションプログラム95は、処理対象の画像に対して所望の処理を行い、また、ビデオドライバ91を介してCRT21に画像を表示する。
【0021】
アプリケーションプログラム95が印刷命令を発すると、コンピュータ90のプリンタドライバ96が、画像データをアプリケーションプログラム95から受け取り、これをカラープリンタ20に供給するための印刷データPDに変換する。図1に示した例では、プリンタドライバ96の内部には、解像度変換モジュール97と、色変換モジュール98と、ハーフトーンモジュール99と、ラスタライザ100と、色変換テーブルLUTと、が備えられている。
【0022】
解像度変換モジュール97は、アプリケーションプログラム95が扱っているカラー画像データの解像度(即ち、単位長さ当りの画素数)を、プリンタドライバ96が扱うことができる解像度に変換する役割を果たす。こうして解像度変換された画像データは、まだRGBの3色からなる画像情報である。色変換モジュール98は、色変換テーブルLUTを参照しつつ、各画素ごとに、RGB画像データを、カラープリンタ20が利用可能な複数のインク色の多階調データに変換する。
【0023】
色変換された多階調データは、例えば256階調の階調値を有している。ハーフトーンモジュール99は、インクドットを分散して形成することにより、カラープリンタ20でこの階調値を表現するためのハーフトーン処理を実行する。ハーフトーン処理された画像データは、ラスタライザ100によりカラープリンタ20に転送すべきデータ順に並べ替えられ、最終的な印刷データPDとして出力される。なお、印刷データPDは、各主走査時のドットの記録状態を示すラスタデータと、副走査送り量を示すデータと、を含んでいる。
【0024】
なお、プリンタドライバ96は、印刷データPDを生成する機能を実現するためのプログラムに相当する。プリンタドライバ96の機能を実現するためのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で供給される。このような記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等の、コンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用できる。
【0025】
図2は、カラープリンタ20の概略構成図である。カラープリンタ20は、紙送りモータ22によって印刷用紙Pを副走査方向に搬送する副走査送り機構と、キャリッジモータ24によってキャリッジ30をプラテン26の軸方向(主走査方向)に往復動させる主走査送り機構と、キャリッジ30に搭載された印刷ヘッドユニット60(「印刷ヘッド集合体」とも呼ぶ)を駆動してインクの吐出およびドット形成を制御するヘッド駆動機構と、これらの紙送りモータ22,キャリッジモータ24,印刷ヘッドユニット60および操作パネル32との信号のやり取りを司る制御回路40とを備えている。制御回路40は、コネクタ56を介してコンピュータ90に接続されている。
【0026】
印刷用紙Pを搬送する副走査送り機構は、紙送りモータ22の回転をプラテン26と用紙搬送ローラ(図示せず)とに伝達するギヤトレインを備える(図示省略)。また、キャリッジ30を往復動させる主走査送り機構は、プラテン26の軸と並行に架設されキャリッジ30を摺動可能に保持する摺動軸34と、キャリッジモータ24との間に無端の駆動ベルト36を張設するプーリ38と、キャリッジ30の原点位置を検出する位置センサ39とを備えている。
【0027】
図3は、制御回路40を中心としたカラープリンタ20の構成を示すブロック図である。制御回路40は、CPU41と、プログラマブルROM(PROM)43と、RAM44と、文字のドットマトリクスを記憶したキャラクタジェネレータ(CG)45とを備えた算術論理演算回路として構成されている。この制御回路40は、さらに、外部のモータ等とのインタフェースを専用に行なうI/F専用回路50と、このI/F専用回路50に接続され印刷ヘッドユニット60を駆動してインクを吐出させるヘッド駆動回路52と、紙送りモータ22およびキャリッジモータ24を駆動するモータ駆動回路54とを備えている。I/F専用回路50は、パラレルインタフェース回路を内蔵しており、コネクタ56を介してコンピュータ90から供給される印刷データPDを受け取ることができる。カラープリンタ20は、この印刷データPDに従って印刷を実行する。なお、RAM44は、ラスタデータを一時的に格納するためのバッファメモリとして機能する。
【0028】
印刷ヘッドユニット60は、印刷ヘッド28を有しており、また、インクカートリッジを搭載可能である。なお、印刷ヘッドユニット60は、1つの部品としてカラープリンタ20に着脱される。即ち、印刷ヘッド28を交換しようとする際には、印刷ヘッドユニット60を交換することになる。
【0029】
図4は、印刷ヘッド28の下面におけるノズル配列を示す説明図である。印刷ヘッド28の下面には、濃ブラックインクを吐出するための濃ブラックインクノズル群KD と、淡ブラックインクを吐出するための淡ブラックインクノズル群KL と、濃シアンインクを吐出するための濃シアンインクノズル群CD と、淡シアンインクを吐出するための淡シアンインクノズル群CL と、濃マゼンタインクを吐出するための濃マゼンタインクノズル群MD と、淡マゼンタインクを吐出するための淡マゼンタインクノズル群ML と、濃イエローインクを吐出するための濃イエローインクノズル群YD と、淡イエローインクを吐出するための淡イエローインクノズル群YL とが形成されている。ここで、濃インクと淡インクとは、明度と彩度の少なくとも一方が相違し、色相がほぼ同一のインクである。
【0030】
淡インクノズル群は、濃インクノズル群とは副走査方向にずれている。ここで、各ノズル群を示す符号における最初のアルファベットの大文字はインク色を意味しており、また、添え字の「D 」は濃度が比較的高いインクであることを、添え字の「L 」は濃度が比較的低いインクであることを、それぞれ意味している。
【0031】
各ノズル群の複数のノズルは、副走査方向SSに沿って一定のノズルピッチk・Dでそれぞれ整列している。ここで、kは整数であり、Dは主走査方向と副走査方向における印刷解像度に相当するピッチ(「ドットピッチ」と呼ぶ)である。本明細書では、「ノズルピッチはkドットである」とも言う。このときの単位[ドット]は、印刷解像度のドットピッチを意味している。副走査送り量に関しても同様に、[ドット]の単位を用いる。
【0032】
各ノズルには、各ノズルを駆動してインク滴を吐出させるための駆動素子としてのピエゾ素子(図示せず)が設けられている。印刷時には、印刷ヘッド28が主走査方向MSに移動しつつ、各ノズルからインク滴が吐出される。
【0033】
なお、各ノズル群の複数のノズルは、副走査方向に沿って一直線上に配列されている必要はなく、例えば千鳥状に配列されていてもよい。なお、ノズルが千鳥状に配列されている場合にも、副走査方向に測ったノズルピッチk・Dは、図4の場合と同様に定義することができる。この明細書において、「副走査方向に沿って配列された複数のノズル」という文言は、一直線上に配列されたノズルと、千鳥状に配置されたノズルと、を包含する広い意味を有している。
【0034】
図5は、印刷ヘッド28の下面におけるノズル配列の他の例を示す説明図である。図4に示したノズル配列との違いは、濃インクノズル群と淡インクノズル群が主走査方向にずれていない点である。即ち、これらのノズル群が副走査方向に一列に並べて印刷ヘッドに配列されている。ただし、副走査方向に関しては、このノズル配列においても、図4に示したノズル配列と同様にずれている。なお、濃インクノズル群と淡インクノズル群を副走査方向に一列に並べることにより、印刷ヘッド28を小さくできるという利点がある。
【0035】
以上説明したハードウェア構成を有するカラープリンタ20は、紙送りモータ22により用紙Pを搬送しつつ、キャリッジ30をキャリッジモータ24により往復動させ、同時に印刷ヘッド28のピエゾ素子を駆動して、各色インク滴の吐出を行い、インクドットを形成して用紙P上に多色多階調の画像を形成する。
【0036】
B.記録方式の基本的条件:
本発明の実施例に用いられている記録方式の詳細を説明する前に、以下ではまず、通常のインターレース記録方式の基本的な条件について説明する。なお、「インターレース記録方式」とは、印刷ヘッドの副走査方向に沿って測ったノズルピッチk[ドット]が2以上であるときに採用される記録方式を言う。インターレース記録方式では、1回の主走査では隣接するノズルの間に記録できないラスタラインが残り、このラスタライン上の画素は他の主走査時に記録される。なお、本明細書においては、「印刷方式」と「記録方式」とは同義語である。
【0037】
図6は、通常のインターレース記録方式の基本的条件を示すための説明図である。図6(A)は、4個のノズルを用いた場合の副走査送りの一例を示しており、図6(B)はそのドット記録方式のパラメータを示している。図6(A)において、数字を含む実線の丸は、各パスにおける4個のノズルの副走査方向の位置を示している。ここで、「パス」とは1回分の主走査を意味している。丸の中の数字0〜3は、ノズル番号を意味している。4個のノズルの位置は、1回の主走査が終了する度に副走査方向に送られる。但し、実際には、副走査方向の送りは紙送りモータ22(図2)によって用紙を移動させることによって実現されている。
【0038】
図6(A)の左端に示すように、この例では副走査送り量Lは4ドットの一定値である。従って、副走査送りが行われる度に、4個のノズルの位置が4ドットずつ副走査方向にずれてゆく。各ノズルは、1回の主走査中にそれぞれのラスタライン上のすべてのドット位置(「画素位置」とも呼ぶ)を記録対象としている。なお、本明細書では、各ラスタライン(「主走査ライン」とも呼ぶ)上で行われる主走査の延べ回数を、「スキャン繰り返し数s」と呼ぶ。
【0039】
図6(A)の右端には、各ラスタライン上のドットを記録するノズルの番号が示されている。なお、ノズルの副走査方向位置を示す丸印から右方向(主走査方向)に伸びる破線で描かれたラスタラインでは、その上下のラスタラインの少なくとも一方が記録できないので、実際にはドットの記録が禁止される。一方、主走査方向に伸びる実線で描かれたラスタラインは、その前後のラスタラインがともにドットで記録され得る範囲である。このように実際に記録を行える範囲を、以下では有効記録範囲(または「有効印刷範囲」、「印刷実行領域」、「記録実行領域」)と呼ぶ。
【0040】
図6(B)には、このドット記録方式に関する種々のパラメータが示されている。ドット記録方式のパラメータには、ノズルピッチk[ドット]と、使用ノズル個数N[個]と、スキャン繰り返し数sと、実効ノズル個数Neff[個]と、副走査送り量L[ドット]とが含まれている。
【0041】
図6の例では、ノズルピッチkは3ドットである。使用ノズル個数Nは4個である。なお、使用ノズル個数Nは、実装されている複数個のノズルの中で実際に使用されるノズルの個数である。スキャン繰り返し数sは、各ラスタライン上においてs回の主走査が実行されることを意味している。例えば、スキャン繰り返し数sが2のときには、各ラスタライン上において2回の主走査が実行される。このとき、通常は、一回の主走査において1ドットおきに間欠的にドットが形成される。図6の場合には、スキャン繰り返し数sは1である。実効ノズル個数Neff は、使用ノズル個数Nをスキャン繰り返し数sで割った値である。この実効ノズル個数Neff は、一回の主走査でドット記録が完了するラスタラインの正味の本数を示しているものと考えることができる。
【0042】
図6(B)の表には、各パスにおける副走査送り量Lと、その累計値ΣLと、ノズルのオフセットFとが示されている。ここで、オフセットFとは、最初のパス1におけるノズルの周期的な位置(図6では4ドットおきの位置)をオフセットが0である基準位置と仮定した時に、その後の各パスにおけるノズルの位置が基準位置から副走査方向に何ドット離れているかを示す値である。例えば、図6(A)に示すように、パス1の後には、ノズルの位置は副走査送り量L(4ドット)だけ副走査方向に移動する。一方、ノズルピッチkは3ドットである。従って、パス2におけるノズルのオフセットFは1である(図6(A)参照)。同様にして、パス3におけるノズルの位置は、初期位置からΣL=8ドット移動しており、そのオフセットFは2である。パス4におけるノズルの位置は、初期位置からΣL=12ドット移動しており、そのオフセットFは0である。3回の副走査送り後のパス4ではノズルのオフセットFは0に戻るので、3回の副走査を1サイクルとして、このサイクルを繰り返すことによって、有効記録範囲のラスタライン上のすべてのドットを記録することができる。
【0043】
図6の例からも解るように、ノズルの位置が初期位置からノズルピッチkの整数倍だけ離れた位置にある時には、オフセットFはゼロである。また、オフセットFは、副走査送り量Lの累計値ΣLをノズルピッチkで割った余り(ΣL)%kで与えられる。ここで、「%」は、除算の余りをとることを示す演算子である。なお、ノズルの初期位置を周期的な位置と考えれば、オフセットFは、ノズルの初期位置からの位相のずれ量を示しているものと考えることもできる。
【0044】
スキャン繰り返し数sが1の場合には、有効記録範囲において記録対象となるラスタラインに抜けや重複が無いようにするためには、以下のような条件を満たすことが必要である。
【0045】
条件c1:1サイクルの副走査送り回数は、ノズルピッチkに等しい。
【0046】
条件c2:1サイクル中の各回の副走査送り後のノズルのオフセットFは、0〜(k−1)の範囲のそれぞれ異なる値となる。
【0047】
条件c3:副走査の平均送り量(ΣL/k)は、使用ノズル数Nに等しい。換言すれば、1サイクル当たりの副走査送り量Lの累計値ΣLは、使用ノズル数Nとノズルピッチkとを乗算した値(N×k)に等しい。
【0048】
上記の各条件は、次のように考えることによって理解できる。隣接するノズルの間には(k−1)本のラスタラインが存在するので、1サイクルでこれら(k−1)本のラスタライン上で記録を行ってノズルの基準位置(オフセットFがゼロの位置)に戻るためには、1サイクルの副走査送りの回数はk回となる。1サイクルの副走査送りがk回未満であれば、記録されるラスタラインに抜けが生じ、一方、1サイクルの副走査送りがk回より多ければ、記録されるラスタラインに重複が生じる。従って、上記の第1の条件c1が成立する。
【0049】
1サイクルの副走査送りがk回の時には、各回の副走査送りの後のオフセットFの値が0〜(k−1)の範囲の互いに異なる値の時にのみ、記録されるラスタラインに抜けや重複が無くなる。従って、上記の第2の条件c2が成立する。
【0050】
上記の第1と第2の条件を満足すれば、1サイクルの間に、N個の各ノズルがそれぞれk本のラスタラインの記録を行うことになる。従って、1サイクルではN×k本のラスタラインの記録が行われる。一方、上記の第3の条件c3を満足すれば、図6(A)に示すように、1サイクル後(k回の副走査送り後)のノズルの位置が、初期のノズル位置からN×kラスタライン離れた位置に来る。従って、上記第1ないし第3の条件c1〜c3を満足することによって、これらのN×k本のラスタラインの範囲において、記録されるラスタラインに抜けや重複を無くすることができる。
【0051】
図7は、スキャン繰り返し数sが2以上の場合のドット記録方式の基本的条件を示すための説明図である。スキャン繰り返し数sが2以上の場合には、同一のラスタライン上でs回の主走査が実行される。以下では、スキャン繰り返し数sが2以上のドット記録方式を「オーバーラップ方式」と呼ぶ。
【0052】
図7に示したドット記録方式は、図6(B)に示したドット記録方式のパラメータの中で、スキャン繰り返し数sと副走査送り量Lとを変更したものである。図7(A)からも解るように、図7のドット記録方式における副走査送り量Lは2ドットの一定値である。但し、図7(A)においては、偶数回目のパスのノズルの位置を、菱形で示している。通常は、図7(A)の右端に示すように、偶数回目のパスで記録されるドット位置は、奇数回目のパスで記録されるドット位置と、主走査方向に1ドット分だけずれている。従って、同一のラスタライン上の複数のドットは、異なる2つのノズルによってそれぞれ間欠的に記録されることになる。例えば、有効記録範囲内の最上端のラスタラインは、パス2において2番のノズルで1ドットおきに間欠的に記録された後に、パス5において0番のノズルで1ドットおきに間欠的に記録される。このオーバーラップ方式では、各ノズルは、1回の主走査中に1ドット記録した後に(s−1)ドット記録を禁止するように、間欠的なタイミングでノズルが駆動される。
【0053】
このように、各主走査時にラスタライン上の間欠的な画素位置を記録対象とするオーバーラップ方式を、「間欠オーバーラップ方式」と呼ぶ。なお、間欠的な画素位置を記録対象とする代わりに、各主走査時にラスタライン上のすべての画素位置を記録対象としてもよい。即ち、1本のラスタライン上でs回の主走査を実行するときに、同じ画素位置でドットの重ね打ちを許容してもよい。このようなオーバーラップ方式を、「重ね打ちオーバーラップ方式」または「完全オーバーラップ方式」と呼ぶ。
【0054】
なお、間欠オーバーラップ方式では、同一ラスタラインを記録する複数のノズルの主走査方向の位置が互いにずれていればよいので、各主走査時における実際の主走査方向のずらし量は、図7(A)に示すもの以外にも種々のものが考えられる。例えば、パス2では主走査方向のずらしを行わずに丸で示す位置のドットを記録し、パス5において主走査方向のずらしを行なって菱形で示す位置のドットを記録するようにすることも可能である。
【0055】
図7(B)の表の最下段には、1サイクル中の各パスのオフセットFの値が示されている。1サイクルは6回のパスを含んでおり、パス2からパス7までの各パスにおけるオフセットFは、0〜2の範囲の値を2回ずつ含んでいる。また、パス2からパス4までの3回のパスにおけるオフセットFの変化は、パス5からパス7までの3回のパスにおけるオフセットFの変化と等しい。図7(A)の左端に示すように、1サイクルの6回のパスは、3回ずつの2組の小サイクルに区分することができる。このとき、1サイクルは、小サイクルをs回繰り返すことによって完了する。
【0056】
一般に、スキャン繰り返し数sが2以上の整数の場合には、上述した第1ないし第3の条件c1〜c3は、以下の条件c1’〜c3’のように書き換えられる。
【0057】
条件c1’:1サイクルの副走査送り回数は、ノズルピッチkとスキャン繰り返し数sとを乗じた値(k×s)に等しい。
【0058】
条件c2’:1サイクル中の各回の副走査送り後のノズルのオフセットFは、0〜(k−1)の範囲の値であって、それぞれの値がs回ずつ繰り返される。
【0059】
条件c3’:副走査の平均送り量{ΣL/(k×s)}は、実効ノズル数Neff (=N/s)に等しい。換言すれば、1サイクル当たりの副走査送り量Lの累計値ΣLは、実効ノズル数Neff と副走査送り回数(k×s)とを乗算した値{Neff ×(k×s)}に等しい。
【0060】
上記の条件c1’〜c3’は、スキャン繰り返し数sが1の場合にも成立する。従って、条件c1’〜c3’は、スキャン繰り返し数sの値に係わらず、インターレース記録方式に関して一般的に成立する条件であると考えられる。即ち、上記の3つの条件c1’〜c3’を満足すれば、有効記録範囲において、記録されるドットに抜けや不要な重複が無いようにすることができる。但し、間欠オーバーラップ方式を採用する場合には、同じラスタラインを記録するノズルの記録位置を互いに主走査方向にずらすという条件も必要である。また、重ね打ちオーバーラップ方式を採用する場合には、上記の条件c1’〜c3’が満足されていればよく、各パスにおいてすべての画素位置が記録対象とされる。
【0061】
C.濃淡の異なる複数のインクを使用することによる多階調化の考え方:
図8は、高解像度の通常印刷に使用されるドット記録方式を示す説明図である。図8において、数字を含む実線の丸は、各パスにおける6個のノズルの副走査方向の位置を示している。丸の中の2桁の数字00〜12は、ノズル番号を示している。この数字の上位の桁はノズル群を特定する番号であり、下位の桁はノズル群の中でのノズルを特定する番号である。ノズル番号の上位の桁が0のノズルは濃インクを吐出するノズル群のノズルであり、ノズル番号の上位の桁が1のノズルは淡インクを吐出するノズル群のノズルである。ここでは、印刷ヘッドが3個の濃インク用ノズル00〜02と3個の淡インク用ノズル10〜12とを有するものと仮定している。
【0062】
図8の右端に示す画素位置番号は、各ラスタライン上の画素の配列の順番を示しており、円内の番号はその画素位置におけるドットの形成を担当するノズルの番号を示している。例えば、1番目のラスタラインは#02と#10のノズルの双方でドットが可能である。即ち、1番目のラスタラインは、濃い色のドットを形成するときは#01のノズルで、淡い色のドットを形成するときは#10のノズルでドットを形成する。また、双方のノズルで同一画素に重畳的にドットを形成することで、さらに色の濃い画素を形成することもできる。同様に、2番目のラスタライン上のドットは#00と#11のノズルで形成され、3番目のラスタライン上のドットは#01と#12のノズルで形成される。そして、一般に、(1+3×n)番目のラスタラインは#02と#10のノズルで、(2+3×n)番目のラスタラインは#00と#11のノズルで、そして(3+3×n)番目のラスタラインは#01と#12のノズルで形成される。ここで、nは、負でない整数である。
【0063】
濃インクを吐出するノズル群(00〜02)に着目して、この記録方式を説明する。図8に示すように、この例では副走査送り量Lは3ドットの一定値であり、各ノズル群の実効ノズル個数Neffは3である。また、この記録方式の他のパラメータは、k=4,s=1である。これらのパラメータは、上述した条件c1’〜c3’を満足している。従って、各ノズル群毎に、記録されるドットに抜けや不要な重複が無く印刷を実行することができる。従って、すべてのラスタラインの画素に濃インクを吐出するノズル群のみでドットを形成することも可能である。一方、淡インクを吐出するノズル群(ノズル番号の上位の桁が1のもの)に着目しても同様となる。
【0064】
以上の説明から分かるように、濃インクを吐出するノズル群と淡インクを吐出するノズル群の双方が同一の画素にドットを形成することができる。これにより、各画素に対して、濃インクと淡インクの少なくとも一方を使用するドットが形成でき、多階調化を可能としている。換言すれば、同一画素におけるドットの形成に使用する濃インク若しくは淡インク又は双方の選択を可能とすることにより、各画素の階調を増加させて画質を向上させている。
【0065】
D.ドラフト印刷における印刷データと副走査送りの考え方:
図9は、通常印刷とドラフト印刷における各ノズルの記録対象画素を説明する図である。図9において、通常印刷におけるドットピッチDnは、通常印刷の印刷解像度に相当する。一方、ドラフト印刷におけるドットピッチDdは、ドラフト印刷の印刷解像度に相当する。また、これらのドットピッチDn、Ddは、通常印刷とドラフト印刷におけるノズルピッチkや副走査送り量Lの基準となる値である。
【0066】
高解像度の通常印刷では、ドットピッチDnが比較的小さいため、各ノズルの記録対象画素も小さい。このため、同一面積の印刷媒体に対して、記録対象となる画素数が多くなり、多くのドットが印刷に必要とされることが分かる。一方、低解像度のドラフト印刷では、ドットピッチDdが比較的大きいため、各ノズルの記録対象画素も大きくなっている。具体的には、ドラフト印刷の記録対象画素は、面積では通常印刷のものの4倍となっている。このため、同一面積の印刷媒体に対して、記録対象となる画素数が少なくなるため、少ない数(4分の1)のドットで印刷が可能となっていることが分かる。従って、ドットの形成数という観点のみで考えると、ドラフト印刷は通常印刷の4倍の速度で印刷できることになる。印刷速度は、単位時間当たりのドット形成個数が一定であると考えると、印刷に必要なドットの数に反比例することになるからである。なお、4倍の印刷速度は、例えば主走査速度を2倍とし、また、副走査送り量Lも2倍とすることによって実現される。
【0067】
E.ドラフト印刷におけるドット記録方式の比較例と実施例:
図10は、従来のドラフト印刷である第1比較例を示す説明図である。図8に示した通常の印刷との相違は、ドットピッチDdがDnの2倍となっている点である。従って、前に述べたように、主走査速度も副走査送り量Lも2倍にすることができる。ただし、記録密度が粗くなるため、画質は劣化する。
【0068】
この第1比較例のドット記録方式を濃インクノズル又は淡インクノズルのいずれか一方のみに着目して説明する。この記録方式のパラメータは、Neff=3,k=2Dd(=4Dn),L=3Dd(=6Dn),s=1である。これらのパラメータは、上述した条件c1’〜c3’を満足している。従って、記録されるドットに抜けや不要な重複が無く印刷を実行することができる。
【0069】
図11は、本発明の第1実施例のドット記録方式を示す説明図である。図10に示した第1比較例との相違は、濃インクのノズル群と淡インクのノズル群が異なる主走査ライン上でドットの形成を行っており、同一の主走査ライン上ではドットの形成を行っていない点である。即ち、図10に示した第1比較例においては、濃インクを吐出するノズル群と淡インクを吐出するノズル群が同一の主走査ライン上でドットを形成することが可能であった。しかし、この第1実施例においては、双方のノズル群が独立して異なる主走査ライン上のドットを形成している。このため、実効ノズル個数Neffが3から6に増大されているとともに、実効的なノズルピッチkが1Ddとなり、一つの主走査(「パス」とも言う)で形成されるラスタラインがすきまなく接することとなる。その結果、インターレース方式で副走査送りをする必要がなくなり、バンド送りが可能となっている。ここで、「バンド送り」とは、複数の同一色相ノズル群が1回の主走査で形成可能なドットの配列で構成される領域を副走査方向に沿って測った長さの値に、副走査送り量Lを設定して送ることをいう。
【0070】
この第1実施例の印刷速度の向上を単位時間当たりの主走査ライン記録数の観点から説明する。単位時間当たりの主走査ライン記録数は、単位時間当たりの主走査数と実効ノズル個数Neffの積となる。第1比較例では、濃インクノズルと淡インクノズルを同一の主走査ラインの記録に使用するため、濃インクノズルのみを使用する記録方式と印刷速度は同じである。これに対して、この第1実施例では、各ノズルすべてが異なる主走査ライン記録数を印字できるため、すべてのノズルが重畳的に記録することも記録を休止することもなく、各主走査ライン上の各画素を記録できる。その結果、この第1実施例では、単位時間当たりの主走査ライン記録数が第1比較例の2倍となるため、印刷速度もこれに伴い2倍となる。なお、印刷速度の増加は、具体的には、副走査送り量Lが2倍になることにより、達成される。
【0071】
この第1実施例では、ドラフト印刷用の印刷データPDが使用される。ノズルの使用方法も主走査速度や副走査送り量Lも通常の印刷とは異なるからである。
【0072】
図12は、プリンタドライバによるドラフト印刷用の印刷データPDの生成手順を示すフローチャートである。この手順は、ドラフト印刷用の印刷データPDをRGB画像データから直接生成するものである。具体的には、プリンタドライバ96(図1)は、ステップS1において、通常印刷で行う8色のインクを前提とした色変換の代わりに、4色インクを前提とした色変換を行う。この色変換は、色変換モジュール98(図1)が、ドラフト印刷用の色変換テーブルLUTを参照しつつ、各画素ごとにRGB画像データを、4色の多階調データに変換することにより行う。色変換された多階調データは、ステップS2において、ハーフトーンモジュール99(図1)によりハーフトーン処理がなされる。このハーフトーン処理では、濃度の異なるインクの平均濃度を考慮しても良い。具体的には、例えば、ハーフトーン処理で使用する閾値を、濃インクと淡インクの平均濃度を前提として設定することにより、インクの平均濃度を考慮したハーフトーン処理を実現する。ハーフトーン処理によって生成されたハーフトーンデータは、ステップS3において、ラスタライザ100(図1)によりラスタライズされ、ドラフト印刷用の印刷データPDが生成される。ここで「ラスタライズ」とは、主走査方向と副走査方向に走査しながら印刷ヘッドを用いて印刷を行えるように、ハーフトーンデータを印刷データPDに変換する処理をいう。ラスタライズされ生成された印刷データPDは、各主走査時のドットの記録状態を示すラスタデータと、副走査送り量を示すデータとを含んでいる。
【0073】
図13は、印刷データPDの他の作成手順を示すフローチャートである。この手順は、通常印刷で行う8色のインクを前提とした色変換とハーフトーン処理を経て生成されたハーフトーンデータを変換することにより、ドラフト印刷用の印刷データPDを生成するものである。具体的には、プリンタドライバ96(図1)は、ステップS1において、通常印刷用の色変換テーブルLUTを参照して、通常印刷で行う8色のインクを前提とした色変換を行う。色変換された多階調データは、ステップS2において、ハーフトーンモジュール99(図1)によりハーフトーン処理がなされる。このハーフトーン処理では、ドラフト印刷用のハーフトーンデータをRGB画像データから直接生成する場合と同様に、濃度の異なるインクの平均濃度が考慮される。ハーフトーン処理によって生成されたハーフトーンデータは、ステップS3において、データ変換がなされる。このデータ変換は、各主走査ライン毎に、濃インクのハーフトーンデータと淡インクのハーフトーンデータとの論理和をとる処理を行うものである。変換処理されたハーフトーンデータは、ステップS4において、ラスタライズされてドラフト印刷用の印刷データPDが生成される。
【0074】
図14は、通常印刷用印刷データPDをドラフト印刷用印刷データPDに変換する処理の内容を示す表である。この表を用いて、通常印刷用の印刷データPDを変換して、ドラフト印刷用の印刷データPDを生成する方法を説明する。ラスタ番号1のラスタは、通常印刷である第1比較例においてはパス1とパス2で形成され、この第1実施例においてはパス1のみで形成される。このため、第1比較例では、パス1におけるノズル#11のラスタデータとパス2におけるノズル#00のラスタデータがラスタ番号1のラスタの形成に使用される。かかる2つのノズルは、同一の画素を重畳的に走査し、選択的に又は重畳的に使用される。一方、この第1実施例では、パス1におけるノズル#00のラスタデータのみで印刷されることになる。従って、第1実施例で使用するラスタデータを第1比較例のラスタデータから生成するためには、比較例においてパス1におけるノズル#11が印字する画素とのパス2におけるノズル#00が印字する画素のいずれの画素においても印字するラスタデータを生成する必要がある。よって、第1実施例で使用するラスタデータは、第1比較例で使用する2つのノズルのラスタデータの論理和をとれば良いことが分かる。
【0075】
以上の処理は、その一部又は全部をコンピュータ90でプリンタドライバで行っても良いし、カラープリンタ20のプリンタファームウェアで行っても良い。プリンタファームウェアで行う場合、その処理は、制御回路40(図3)で行われる。コンピュータ90から送られてきたデータは、P−ROM43に格納されたファームウェアを使用して、CPU41が処理を行なう。
【0076】
図15は、本発明の第2実施例のドット記録方式を示す説明図である。図11に示した第1実施例との相違は、ノズル群が2個から3個に増加している点である。この実施例は、さらなる多階調化のために、濃度の異なる3種類のインクを使用する印刷ヘッドを想定したものである。即ち、一つの色相に対し濃度が異なる3種類のインクのノズル群をヘッドに装備している。具体的には、例えば、#00,01、02のノズルは高濃度インク、#10,11,12のノズルは中間濃度インク、#20、21、22のノズルは低濃度インクを吐出するノズル群である。
【0077】
この第2実施例では、従来のドラフト印刷と比べて、実効ノズル個数Neffが3個から9個に増大するとともに、ノズルピッチkが1Ddとなっている。従って、一つのパスで形成されるラスターがすきまなく接することとなる。その結果、インターレース方式で副走査送りをする必要がなくなり、第1実施例と同様にバンド送りが可能となり、ひいては印刷速度も大幅に向上する。なお、ノズル群の列の数に制限はなく、4列以上でも同様に実施できる。
【0078】
図16は、従来のドラフト印刷である第2比較例のドット記録方式を示す説明図である。図10に示した第1比較例との相違は、ノズルピッチkが2Ddから4Ddに増加している点である。この記録方式のパラメータは、各濃度のインクノズル群毎にNeff=3,k=4Dd(=8Dn),L=3Dd(=6Dn),s=1である。これらのパラメータは、上述した条件c1’〜c3’を満足している。従って、各ノズル群は、記録されるドットに抜けや不要な重複が無く印刷を実行することができる。
【0079】
図17は、本発明の第3実施例のドット記録方式を示す説明図である。図16に示した第2比較例との相違は、第1比較例と第1実施例の相違と同様に、濃インクのノズル群と淡インクのノズル群が異なる主走査ライン上のドットを形成している点である。ただし、この第3実施例は、実効ノズル個数Neffが3から6に増大するが、ノズルピッチkが1Ddとならない点で、図11に示した第1実施例と異なる。この記録方式のパラメータは、Neff=6,k=2Dd(=4Dn),L={5Dd−7Dd}(ΣL/k=6Dd),s=1である。ここで、副走査の平均送り量(ΣL/k)は、ドラフト印刷におけるドットピッチDdと実効ノズル個数Neffの積と一致しており、条件c3’を満たしている。この第3実施例では、副走査送り量Lが第2比較例の2倍であるため、印刷速度も2倍となる。
【0080】
この第3実施例は、前述のように、ノズルピッチkが1Ddとならないためバンド送りができない。このため、インターレース方式となっている。この実施例の副走査送りは、図17に示すように送り量として{5Dd、7Dd}が繰り返される変則送りとなっている。定則送り(送り量が一定である副走査送り)としなかったのは、定則送りとすると副走査送り量L(6Dd)がノズルピッチk(2Dd)の整数倍となるため、副走査送り後のノズルのオフセットが恒常的に0となる。このため、1サイクル中の各回の副走査送り後のノズルのオフセットFは、0〜(k−1)の範囲の値であって、それぞれの値がs回ずつ繰り返されるとする条件c2’を満たさないことになるからである。一方、副走査送りを5Ddー7Ddの変則送りとすると、1サイクル中の各回の副走査送り後のノズルのオフセットFは、0と1を交互に繰り返す。従って、この記録方式は、条件c2’を満たすとともに、2回の副走査送りで1サイクルを構成し、条件c1’をも同時に満たすことになる。従って、かかる副走査送りとすることにより、条件c1’〜c3’の全てを満たし、記録されるドットに抜けや不要な重複が無く印刷を実行することができる。
【0081】
図18は、本発明の第4実施例のドット記録方式を示す説明図である。図17に示した第3実施例との違いは、各ノズル群の相互の位置関係である。即ち、濃インクを吐出するノズル群と淡インクを吐出するノズル群の副走査方向のずれが、第3実施例においては、ノズル群のノズルピッチの半分となっているのに対し、この第4実施例では、半分からずれた位置に配置されている。このずれの量は、各ノズル群で形成されるラスタがすきまなく接するように、1Ddとなっている。
【0082】
この第4実施例では、各ノズル群で形成されるラスタがすきまなく接するように各ノズル群がずれているため、隣接する濃淡2つのノズルを合わせて一つのノズルとして捉えて考えることも可能である。具体的には、図18に示すように、#00と10、#01と11、#02と12のノズルは、それぞれ1Ddだけ副走査方向にずれているから、そのラスタはすきまなく接し、一つのノズルユニットとして考えることができる。そうすると、このノズルユニットの記録対象画素は、通常印刷の記録対象画素を基準として考えることができ、副走査方向に4個分、主走査方向に2個分のものとなる。その結果、この記録方式のパラメータは、Neff=3ユニット,k=2Dd,L=3Dd(=12Dn),s=1となる。これらのパラメータは、上述した条件c1’〜c3’を満足している。従って、記録されるドットに抜けや不要な重複が無く印刷を実行することができることが分かる。
【0083】
図19は、本発明の第5実施例のドット記録方式を示す説明図である。図18に示した第4実施例との相違は、ノズル群が2個から3個に増加している点である。また、図15に示した第2実施例との相違は、第2実施例がバンド送りとなっているのに対しインターレース記録方式となっている点である。この実施例では、第4実施例と同様に、#00と10と20、#01と11と21、#02と12と22のノズルは、それぞれ1Ddだけ副走査方向にずれているからそのラスタはすきまなく接し、一つのノズルユニットとして考えることができる。そして、この記録方式のパラメータも第4実施例と同一であり、記録されるドットに抜けや不要な重複が無く印刷を実行することができることが分かる。結局、各ノズル群を1Ddだけ副走査方向にずらして配置することにより、すきまなく接するラスタラインを形成できるノズルユニットを構成できれば、ノズルユニットを基準として条件c1’〜c3’を満たすことにより、ノズル群が4個以上でも実施できる。
【0084】
図20は、本発明の第6実施例のドット記録方式を示す説明図である。図17に示した第3実施例との違いは、ノズル群が2列から3列に増加している点である。この記録方式のパラメータは、Neff=9,k=2Dd,L=9Dd(=18Dn),s=1である。これらのパラメータは、上述した条件c1’〜c3’を満足している。即ち、3列になっても、2列の場合と同様に、定則送りで記録されるドットに抜けや不要な重複を生ずることなく印刷を実行することができる。なお、ノズル群の列に制限はなく、条件c1’〜c3’を満足する限り、4列以上でも同様に実施できることが明らかである。
【0085】
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0086】
この発明はカラー印刷だけでなくモノクロ印刷にも適用できる。また、ドラムプリンタにも適用できる。尚、ドラムプリンタでは、ドラム回転方向が主走査方向、キャリッジ走行方向が副走査方向となる。また、この発明は、インクジェット記録装置のみでなく、一般に、複数のドット形成要素アレイを有する記録ヘッドを用いて印刷媒体の表面に記録を行うドット記録装置に適用することができる。ここで、「ドット形成要素」とは、インクジェットプリンタにおけるインクノズルのように、ドットを形成するための構成要素を意味する。
【0087】
上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、図1に示したプリンタドライバ96の機能の一部または全部を、プリンタ20内の制御回路40が実行するようにすることもできる。この場合には、印刷データを作成する印刷制御装置としてのコンピュータ90の機能の一部または全部が、プリンタ20の制御回路40によって実現される。
【0088】
本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。この発明において、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。
【0089】
本発明の実施例では、4個の色相のインクとして8種類又は12種類のインクを使用する印刷方式について説明した。しかし、本発明の適用できる範囲は、これらの場合に限定されるものではなく、N個(Nは正の整数)の色相のインクとして、M種類(MはN+1以上の整数)のインクを使用する印刷方式にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例として印刷システムの構成を示すブロック図。
【図2】プリンタの構成を示す説明図。
【図3】制御回路40を中心としたカラープリンタ20の構成を示すブロック図。
【図4】印刷ヘッド28の下面におけるノズル配列を示す説明図。
【図5】印刷ヘッド28の下面におけるノズル配列の他の例を示す説明図。
【図6】通常のインターレース記録方式の基本的条件を示すための説明図。
【図7】オーバーラップ記録方式の基本的条件を示すための説明図。
【図8】高解像度の通常印刷であるドット記録方式を示す説明図。
【図9】通常印刷とドラフト印刷における各ノズルの記録対象画素を示す説明図。
【図10】従来のドラフト印刷である第1比較例を示す説明図。
【図11】本発明の第1実施例のドット記録方式を示す説明図。
【図12】プリンタドライバによるドラフト印刷用の印刷データPDの生成手順を示すフローチャート。
【図13】印刷データPDの他の作成手順を示すフローチャート。
【図14】通常印刷用印刷データPDからドラフト印刷用印刷データPDへの変換処理。
【図15】本発明の第2実施例のドット記録方式を示す説明図。
【図16】従来のドラフト印刷である第2比較例を示す説明図。
【図17】本発明の第3実施例のドット記録方式を示す説明図。
【図18】本発明の第4実施例のドット記録方式を示す説明図。
【図19】本発明の第5実施例のドット記録方式を示す説明図。
【図20】本発明の第6実施例のドット記録方式を示す説明図。
【符号の説明】
20…カラープリンタ
21…CRT
22…紙送りモータ
24…キャリッジモータ
26…プラテン
28…印刷ヘッド
30…キャリッジ
32…操作パネル
34…摺動軸
36…駆動ベルト
38…プーリ
39…位置センサ
40…制御回路
41…CPU
43…ROM
44…RAM
50…I/F専用回路
52…ヘッド駆動回路
54…モータ駆動回路
56…コネクタ
60…印刷ヘッドユニット
90…コンピュータ
91…ビデオドライバ
95…アプリケーションプログラム
96…プリンタドライバ
97…解像度変換モジュール
98…色変換モジュール
99…ハーフトーンモジュール
100…ラスタライザ
Claims (8)
- 複数種類のインクを吐出する印刷ヘッドを主走査方向に走査しつつ印刷媒体上にドットを形成する印刷部を用いて印刷を行うために、前記印刷部に供給すべき印刷データを生成する印刷制御装置であって、
前記印刷ヘッドは、高画質印刷モードでの印刷を実現するために色相がほぼ同一で明度と彩度の少なくとも一方が異なる複数の同一色相インクを、それぞれ吐出する複数の同一色相ノズル群を備え、前記複数の同一色相ノズル群は、副走査方向に沿って相互にずれた位置に配列されており、
前記複数の同一色相ノズル群の各々には、前記複数の同一色相インクのそれぞれが供給されており、
前記印刷制御装置は、前記高画質印刷モードとは相違する所定の高速印刷モードで印刷を行う際に、前記複数の同一色相ノズル群がそれぞれ異なる主走査ラインを記録対象とし、同一の主走査ラインを記録対象としないように印刷を行うための、前記印刷データを生成する印刷データ生成部を備えることを特徴とする印刷制御装置。 - 請求項1記載の印刷制御装置であって、
前記印刷ヘッドは、N個(Nは正の整数)の色相のインクとして、M種類(MはN+1以上の整数)のインクを吐出可能であり、
前記印刷データ生成部は、
与えられた画像データの表色系を変換することによって、複数の色成分で表された色変換画像データを生成する色変換部と、
前記色変換画像データに対してハーフトーン処理を行うことによって、前記複数の色成分に関するハーフトーンデータを生成するハーフトーン処理部と、
前記ハーフトーンデータから、各主走査時における各ノズルからのインクの吐出状態を表すラスタデータを、前記印刷データとして生成するラスタライザと、
を備え、
前記色変換部は、前記高速印刷モードにおいては、前記複数の同一色相インクを区別することなく、前記N個の色相の色成分で表された色変換画像データを生成する、印刷制御装置。 - 請求項1記載の印刷制御装置であって、
前記印刷ヘッドは、N個(Nは正の整数)の色相のインクとして、M種類(MはN+1以上の整数)のインクを吐出可能であり、
前記印刷データ生成部は、
与えられた画像データの表色系を変換することによって、前記M種類のインクに相当するM種類の色成分によって表された色変換画像データを生成する色変換部と、
前記色変換画像データに対してハーフトーン処理を行うことによって、前記M種類の色成分に関するハーフトーンデータを生成するハーフトーン処理部と、
前記高速印刷モードにおいて、同一の主走査ライン上の前記M種類の色成分に関するハーフトーンデータのうちで、前記複数の同一色相インクに対応する複数の色成分に関するハーフトーンデータの論理和を取ることによって、前記N個の色相の色成分で表されたハーフトーンデータを生成するハーフトーンデータ変換部と、
前記ハーフトーンデータから、各主走査時における各ノズルからのインクの吐出状態を表すラスタデータを、前記印刷データとして生成するラスタライザと、
を備える印刷制御装置。 - 請求項1記載の印刷制御装置であって、
前記印刷ヘッドは、N個(Nは正の整数)の色相のインクとして、M種類(MはN+1以上の整数)のインクを吐出可能であり、
前記印刷データ生成部は、
与えられた画像データの表色系を変換することによって、前記M種類のインクに相当するM種類の色成分によって表された色変換画像データを生成する色変換部と、
前記色変換画像データに対してハーフトーン処理を行うことによって、前記複数の色成分に関するハーフトーンデータを生成するハーフトーン処理部と、
前記ハーフトーンデータから、各主走査時における各ノズルからのインクの吐出状態を表すラスタデータを、前記印刷データとして生成するラスタライザと、
前記高速印刷モードにおいて、同一の主走査ライン上の前記M種類の色成分に関するラスタデータのうちで、前記複数の同一色相インクに対応する複数の色成分に関するラスタデータの論理和を取ることによって、前記N個の色相の色成分で表されたラスタデータを生成する色合成部と、
を備える印刷制御装置。 - 請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷制御装置であって、
前記複数の同一色相ノズル群が副走査方向に沿って一列に配列されている印刷制御装置。 - 請求項1ないし5のいずれかに記載の印刷制御装置であって、
前記印刷データは、前記印刷ヘッドと印刷媒体とのうち一方を副走査方向に送るための副走査送り量を含み、
前記高速印刷モードにおいて、前記副走査送り量が、前記複数の同一色相ノズル群が1回の主走査で形成可能なドットの配列で構成される領域を副走査方向に沿って測った長さの値に設定されている、印刷制御装置。 - 印刷媒体の表面にドットを形成することによって印刷を行う印刷装置であって、
色相がほぼ同一で明度と彩度の少なくとも一方が異なる複数の同一色相インクを吐出する複数の同一色相ノズル群を備え、前記複数の同一色相ノズル群が副走査方向に沿って相互にずれた位置に配列され、複数種類のインクを吐出する印刷ヘッドを主走査方向に走査しつつ印刷媒体上にドットを形成する印刷部と、
請求項1ないし6のいずれかに記載の印刷制御装置と、
を備える印刷装置。 - 高画質印刷モードでの印刷を実現するために色相がほぼ同一で明度と彩度の少なくとも一方が異なる複数の同一色相インクを、それぞれ吐出する複数の同一色相ノズル群を備え、前記複数の同一色相ノズル群が副走査方向に沿って相互にずれた位置に配列され、複数種類のインクを吐出する印刷ヘッドを主走査方向に走査しつつ印刷媒体上にドットを形成する印刷部に供給すべき印刷データをコンピュータに生成させるためのコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読みとり可能な記録媒体であって、
前記複数の同一色相ノズル群の各々には、前記複数の同一色相インクのそれぞれが供給されており、
前記コンピュータプログラムは、
前記高画質印刷モードとは相違する所定の高速印刷モードで印刷を行う際に、前記複数の同一色相ノズル群がそれぞれ異なる主走査ラインを記録対象とし、同一の主走査ラインを記録対象としないように印刷を行うための、前記印刷データを生成する機能を前記コンピュータに実現させるプログラムを有するコンピュータ読みとり可能な記録媒体。
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