JP3829127B2 - 電子放出素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エミッタ部に形成された第1の電極と第2の電極とその間のスリットにて形成された電子放出素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、電子放出素子は、駆動電極及びコモン電極を有し、フィールドエミッションディスプレイ(FED)やバックライトのような種々のアプリケーションに適用されている。FEDに適用する場合、複数の電子放出素子を2次元的に配列し、これら電子放出素子に対する複数の蛍光体を、所定の間隔をもってそれぞれ配置するようにしている。
【0003】
この電子放出素子の従来例としては、例えば特許文献1〜5があるが、いずれもエミッタ部に誘電体を用いていないため、対向電極間にフォーミング加工もしくは微細加工が必要となったり、電子放出のために高電圧を印加しなければならず、また、パネル製作工程が複雑で製造コストが高くなるという問題がある。
【0004】
そこで、エミッタ部を誘電体で構成することが考えられているが、誘電体からの電子放出として以下の非特許文献1〜3にて諸説が述べられている。
【0005】
【特許文献1】
特開平1−311533号公報
【特許文献2】
特開平7−147131号公報
【特許文献3】
特開2000−285801号公報
【特許文献4】
特公昭46−20944号公報
【特許文献5】
特公昭44−26125号公報
【非特許文献1】
安岡、石井「強誘電体陰極を用いたパルス電子源」応用物理第68巻第5号、p546〜550(1999)
【非特許文献2】
V.F.Puchkarev, G.A.Mesyats, On the mechanism of emission from the ferroelectric ceramic cathode, J.Appl.Phys., vol. 78, No. 9, 1 November, 1995, p. 5633-5637
【非特許文献3】
H.Riege, Electron emission ferroelectrics - a review, Nucl. Instr. and
Meth. A340, p. 80-89(1994)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の電子放出素子においては、誘電体の表面、誘電体と上部電極との界面、誘電体内部の欠陥準位に拘束された電子を誘電体の分極反転によって放出するようにしている。つまり、誘電体にて分極反転さえ起きれば、印加電圧パルスの電圧レベルに依存せず、放出電子量はほぼ一定となる。
【0007】
しかしながら、電子放出が安定せず、電子放出回数はたかだか数万回までであり、実用性に乏しいという問題がある。このように、従来においては、誘電体にて構成されたエミッタ部を有する電子放出素子の効果を見出すまでには至っていない。
【0008】
本発明は、誘電体にて構成されたエミッタ部を有する電子放出素子において、電子放出に伴う第1の電極及び第2の電極での損傷を抑制することができ、長寿命化及び信頼性の向上を図ることができる電子放出素子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電子放出素子は、誘電体にて構成されたエミッタ部と、前記エミッタ部に接して形成された第1の電極と、前記エミッタ部に接して形成され、前記第1の電極と共にスリットを形成する第2の電極とを有する電子放出素子において、前記第1の電極と前記第2の電極間に駆動電圧が印加されることによって、少なくとも前記エミッタ部の前記スリットから露出する部分が分極反転されることで電子放出を行い、前記スリットの幅が0.1μm〜50μmであることを特徴とする。
【0010】
まず、本発明に係る電子放出素子の作用について説明する。第1の電極と第2の電極間に駆動電圧が印加されることによって、少なくともエミッタ部のスリットから露出する部分が分極反転され、前記第2の電極よりも電位が低い前記第1の電極の近傍から電子が放出されることになる。即ち、この分極反転によって、第1の電極とその近傍の双極子モーメントの正極側とで局所的な集中電界が発生することにより、前記第1の電極から1次電子が引き出され、前記第1の電極から引き出された1次電子が前記エミッタ部に衝突して、該エミッタ部から2次電子が放出される。
【0011】
電子放出素子が、前記第1の電極、前記エミッタ部の前記スリットから露出する部分及び真空雰囲気の3重点を有する場合には、前記第1の電極のうち、3重点近傍の部分から1次電子が引き出され、前記引き出された1次電子が前記エミッタ部に衝突して、該エミッタ部から2次電子が放出される。ここで述べる2次電子は、1次電子のクーロン衝突でエネルギーを得て、エミッタ部外へ飛び出した固体内電子とオージェ電子と、1次電子がエミッタ部の表面近くで散乱したもの(反射電子)の全てを含む。なお、前記第1の電極の厚みが極薄(〜10nm)である場合には、該第1の電極とエミッタ部との界面から電子が放出されることになる。
【0012】
このような原理によって電子が放出されることから、電子放出が安定して行われ、電子放出の回数も20億回以上を実現でき、実用性に富む。しかも、放出電子量は、第1の電極と第2の電極間に印加される駆動電圧のレベルにほぼ比例して増加することから、放出電子量を容易に制御できるという利点もある。
【0013】
そして、この電子放出素子を例えばディスプレイの画素として利用する場合は、エミッタ部の上方のうち、少なくとも前記スリットに対向した位置に第3の電極が配置され、該第3の電極には蛍光体が塗布されることになる。この場合、放出された電子のうち、一部の電子はコレクタ電極に導かれて蛍光体を励起し、外部に蛍光体発光として具現されることになる。他の一部の電子は、第2の電極に引かれる。
【0014】
第2の電極に引かれた電子は、主に第2の電極の近傍に存在する気体又は第2の電極を構成する原子等を正イオンと電子に電離する。前記第2の電極の近傍に存在する前記第2の電極を構成する原子は、該第2の電極の一部が蒸散した結果生じた原子であり、該原子は前記第2の電極の近傍に浮遊している。そして、前記電離によって発生した電子が更に前記気体や前記原子等を電離するため、指数関数的に電子が増え、これが進行して電子と正イオンが中性的に存在すると局所プラズマとなる。
【0015】
そして、前記電離によって発生した正イオンが例えば第1の電極に衝突することによって第1の電極が損傷する場合がある。
【0016】
ここで、上述したように、少なくとも前記エミッタ部の前記スリットから露出する部分が分極反転することによって、第1の電極とその近傍の双極子モーメントの正極側とで局所的な集中電界が発生するが、この電界集中ポイントでの電界の強さをE、第1の電極と第2の電極間の電圧(駆動電圧の発生源から出力される該駆動電圧が第1の電極と第2の電極間に印加されることによって、該第1の電極と第2の電極間に現れる電圧)をV、スリットの幅をdとしたとき、電子放出には、上述した電界集中ポイントでの電界の強さEとして、ある値以上が必要であるが、ここで、E=V/dであるから、電界の強さEを大きくするためには、前記電圧Vを大きくするか、スリットの幅dを小さくすればよい。
【0017】
前記電圧Vを大きくすると、▲1▼:駆動回路の耐圧を大きくする必要があるため、駆動回路を小型化することができず、高価になるおそれや、▲2▼:プラズマで生成された正イオンが前記電圧Vによってエネルギーを得て、例えば第1の電極に衝突するため、第1の電極の損傷量が多くなるおそれがある。
【0018】
そこで、本発明では、スリットの幅dを小さくしている。従来の電界電子放出を用いた電子放出素子では、5×109V/m程度の電界が必要であることから、前記印加電圧を例えば100V未満にする場合、20nmという狭いスリットの幅が必要になる。
【0019】
これに対して、本発明では、エミッタ部を誘電体で構成するようにしているため、前記印加電圧を例えば100V未満にする場合、スリットの幅を20nm程度まで狭くする必要はなく、20μm程度で十分である。もちろん、前記印加電圧の選定によっては、スリットの幅を0.1μm〜50μmの範囲に設定するとよい。より好ましくは、0.1μm〜10μmの範囲であり、前記印加電圧を10V程度とする場合には、0.1μm〜1μmの範囲に設定することが好ましい。
【0020】
0.1μm以上としたのは、スリットの加工のし易さや電極間の絶縁を確保する上で有利であり、50μm以下、10μm以下、あるいは1μm以下としたのは、前記印加電圧Vの選定にもよるが、いずれにしても電子放出の低電圧化において有利となるからである。これらの範囲に設定することで、駆動回路の小型化、低コスト化を図ることができると共に、例えば第1の電極の損傷を抑制することができ、長寿命化において有利となる。
【0021】
そして、この発明において、前記第1の電極及び前記第2の電極は共に、前記エミッタ部の上面に形成され、前記スリットが空隙であってもよい。
【0022】
また、前記第1の電極は、前記エミッタ部の一方の側面に接して形成され、前記第2の電極は、前記エミッタ部の他方の側面に接して形成され、前記スリットに前記エミッタ部が存在していてもよい。
【0023】
スリットが空隙の場合は、第1の電極の損傷によってスリット幅が拡大し、印加電圧についての低電圧の維持が困難になるおそれがあるが、スリットにエミッタ部を存在させた場合は、第1の電極が損傷したとしてもスリットの幅は不変である。その結果、一定電圧で安定した電子放出を実現することができ、電極の長寿命化を実現させることができる。
【0024】
更に、エミッタ部が2つの電極で挟まれた構造となることから、エミッタ部において分極を完全に行うことができ、分極反転による電子放出を安定して行うことができる。
【0025】
特に、前記エミッタ部を蛇行して形成することで、第1の電極とエミッタ部との接触面積並びに第2の電極とエミッタ部との面積が増大することから、効率よく電子を放出させることができる。
【0026】
そして、基板の上面に前記エミッタ部が形成され、前記第1の電極が前記エミッタ部の一方の側面に接して形成され、前記第2の電極が前記エミッタ部の他方の側面に接して形成され、前記スリットに前記エミッタ部が存在している場合に、前記基板の上面に第3の電極が配置され、該第3の電極の上面に蛍光体が塗布されていてもよい。
【0027】
通常、電子放出素子をディスプレイの画素として構成する場合、複数の電子放出素子を例えばマトリックス状に配列し、これら複数の電子放出素子に対向させて表示パネルを設置し、更に、電子放出素子に隣接してスペーサを設置することが挙げられる。
【0028】
この構成で、表示パネルの裏面(電子放出素子と対向する面)に第3の電極を形成し、更に、第3の電極上に蛍光体を形成した場合、電子放出素子から電子を放出させると、放出された電子の一部がスペーサに衝突し、この電子の衝突によって、スペーサが負に帯電するおそれがある。
【0029】
スペーサが負に帯電すると、電子放出素子と第3の電極との間の電界分布、即ち、電子放出素子から放出された電子を第3の電極に向かわせるための電界分布が変化し、電子ビームによる蛍光体励起が正確に行えなくなって、画質不良を招くおそれがある。
【0030】
また、電子の放出分布は、第3の電極に向かって徐々に広がった分布となるため、画素配列の狭ピッチ化(高精細度化)に不利になるおそれがある。電子の放出分布の広がりを抑えるために、電子放出素子と第3の電極との間に1以上の制御電極を配置する構造も考えられるが、構造が複雑になり、製造コストが高くなるおそれがある。
【0031】
しかし、この発明は、基板の上面に第3の電極を形成し、更に、該第3の電極の上面に蛍光体を形成するようにしたので、スペーサが負に帯電したとしても、電子放出素子から放出された電子を第3の電極に向かわせるための電界分布はほとんど変化しない。そのため、電子ビームによる蛍光体励起を正確に行うことができ、画質不良を招くことがない。
【0032】
しかも、電子を表示パネルまで飛ばす必要がないため、電子の放出分布の広がりを考慮する必要がない。従って、画素配列の狭ピッチ化(高精細度化)を図ることができ、高精細度化が容易になる。
【0033】
ところで、上述の構成において、電子放出素子から放出された電子の一部が基板上の第3の電極に向かわずに、表示パネルに向かう場合がある。そこで、前記エミッタ部の上方に、負極性の電圧が印加され、かつ、前記エミッタ部に対向する第4の電極を配置すれば、電子放出素子から放出された電子を効率よく第3の電極に向かわせることができ、放出電子の蛍光体励起に対する寄与率を向上させることができる。
【0067】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る電子放出素子の実施の形態例を図1〜図37を参照しながら説明する。
【0068】
まず、本実施の形態に係る電子放出素子は、ディスプレイとしての用途のほか、電子線照射装置、光源、LEDの代替用途、電子部品製造装置に適用することができる。
【0069】
電子線照射装置における電子線は、現在普及している紫外線照射装置における紫外線に比べ、高エネルギーで吸収性能に優れる。適用例としては、半導体装置では、ウェハーを重ねる際における絶縁膜を固化する用途、印刷の乾燥では、印刷インキをむらなく硬化する用途や、医療機器をパッケージに入れたまま殺菌する用途等がある。
【0070】
光源としての用途は、高輝度、高効率仕様向けであって、例えば超高圧水銀ランプ等が使用されるプロジェクタの光源用途等がある。本実施の形態に係る電子放出素子を光源に適用した場合、小型化、長寿命、高速点灯、水銀フリーによる環境負荷低減という特徴を有する。
【0071】
LEDの代替用途としては、屋内照明、自動車用ランプ、信号機等の面光源用途や、チップ光源、信号機、携帯電話向けの小型液晶ディスプレイのバックライト等がある。
【0072】
電子部品製造装置の用途としては、電子ビーム蒸着装置等の成膜装置の電子ビーム源、プラズマCVD装置におけるプラズマ生成用(ガス等の活性化用)電子源、ガス分解用途の電子源などがある。また、テラHz駆動の高速スイッチング素子、大電流出力素子といった真空マイクロデバイス用途もある。他に、プリンタ用部品、つまり、感光ドラムを感光させる発光デバイスや、誘電体を帯電させるための電子源としても好ましく用いられる。
【0073】
電子回路部品としては、大電流出力化、高増幅率化が可能であることから、スイッチ、リレー、ダイオード等のデジタル素子、オペアンプ等のアナログ素子への用途がある。
【0074】
そして、本実施の形態に係る電子放出素子10は、図1に示すように、基板12上に形成されたエミッタ部14と、該エミッタ部14の一方の面に形成された第1の電極(カソード電極)16と、同じくエミッタ部14の一方の面に形成され、カソード電極16と共にスリット18を形成する第2の電極(アノード電極)20とを有する。カソード電極16とアノード電極20間には、パルス発生源22からの駆動電圧Vaが印加される。なお、図1の例では、アノード電極20をGND(グランド)に接続して、該アノード電極20の電位をゼロにした場合を示しているが、もちろん、ゼロ電位以外の電位にしてもかまわない。
【0075】
そして、この電子放出素子10をディスプレイの画素として利用する場合は、エミッタ部14の上方のうち、前記スリット18に対向した位置に第3の電極(コレクタ電極)24が配置され、該コレクタ電極24には蛍光体28が塗布される。なお、コレクタ電極24にはバイアス電圧源102(バイアス電圧V3)が抵抗104(抵抗値R3)を介して接続される。
【0076】
また、本実施の形態に係る電子放出素子10は、当然のことながら、真空空間内に配置される。この電子放出素子10は、図1に示すように、電界集中ポイントA及びBが存在するが、ポイントAは、カソード電極16/エミッタ部14/真空が1つのポイントに存在する3重点を含むポイントとしても定義することができ、ポイントBは、アノード電極20/エミッタ部14/真空が1つのポイントに存在する3重点を含むポイントとしても定義することができる。
【0077】
そして、雰囲気中の真空度は、102〜10-6Paが好ましく、より好ましくは10-3〜10-5Paである。
【0078】
このような範囲を選んだ理由は、低真空では、▲1▼:空間内に気体分子が多いために、プラズマが生成し易く、プラズマが多量に発生され過ぎると、その正イオンが多量にカソード電極16に衝突して損傷を進めるおそれや、▲2▼:放出電子がコレクタ電極24に到達する前に気体分子に衝突してしまい、コレクタ電位(バイアス電圧V3)で十分に加速した電子による蛍光体28の励起が十分に行われなくなるおそれがあるからである。
【0079】
一方、高真空では、電界集中ポイントA及びBから電子を放出し易いものの、構造体の支持、及び真空のシール部が大きくなり、小型化に不利になるという問題があるからである。
【0080】
ここで、エミッタ部14は誘電体にて構成される。誘電体は、好適には、比誘電率が比較的高い、例えば1000以上の誘電体を採用することができる。このような誘電体としては、チタン酸バリウムの他に、ジルコン酸鉛、マクネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、マグネシウムタンタル酸鉛、ニッケルタンタル酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、チタン酸鉛、マグネシウムタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛等、又はこれらの任意の組み合わせを含有するセラミックスや、主成分がこれらの化合物を50重量%以上含有するものや、前記セラミックスに対して更にランタン、カルシウム、ストロンチウム、モリブデン、タングステン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガン等の酸化物、もしくはこれらのいずれかの組み合わせ、又は他の化合物を適切に添加したもの等を挙げることができる。
【0081】
例えば、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)とチタン酸鉛(PT)の2成分系nPMN−mPT(n,mをモル数比とする)においては、PMNのモル数比を大きくすると、キュリー点が下げられて、室温での比誘電率を大きくすることができる。
【0082】
特に、n=0.85〜1.0、m=1.0−nでは比誘電率3000以上となり好ましい。例えば、n=0.91、m=0.09では室温の比誘電率15000、n=0.95、m=0.05では室温の比誘電率20000が得られる。
【0083】
次に、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)、チタン酸鉛(PT)、ジルコン酸鉛(PZ)の3成分系では、PMNのモル数比を大きくする他に、正方晶と擬立方晶又は正方晶と菱面体晶のモルフォトロピック相境界(MPB:Morphotropic Phase Boundary)付近の組成とすることが比誘電率を大きくするのに好ましい。例えば、PMN:PT:PZ=0.375:0.375:0.25にて比誘電率5500、PMN:PT:PZ=0.5:0.375:0.125にて比誘電率4500となり、特に好ましい。更に、絶縁性が確保できる範囲内でこれらの誘電体に白金のような金属を混入して、誘電率を向上させるのが好ましい。この場合、例えば、誘電体に白金を重量比で20%混入させるとよい。
【0084】
また、エミッタ部14は、上述したように、圧電/電歪層や反強誘電体層等を用いることができるが、エミッタ部14として圧電/電歪層を用いる場合、該圧電/電歪層としては、例えば、ジルコン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、マグネシウムタンタル酸鉛、ニッケルタンタル酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、マグネシウムタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛等、又はこれらのいずれかの組み合わせを含有するセラミックスが挙げられる。
【0085】
主成分がこれらの化合物を50重量%以上含有するものであってもよいことはいうまでもない。また、前記セラミックスのうち、ジルコン酸鉛を含有するセラミックスは、エミッタ部14を構成する圧電/電歪層の構成材料として最も使用頻度が高い。
【0086】
また、圧電/電歪層をセラミックスにて構成する場合、前記セラミックスに、更に、ランタン、カルシウム、ストロンチウム、モリブデン、タングステン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガン等の酸化物、若しくはこれらのいずれかの組み合わせ、又は他の化合物を、適宜、添加したセラミックスを用いてもよい。
【0087】
例えば、マグネシウムニオブ酸鉛とジルコン酸鉛及びチタン酸鉛とからなる成分を主成分とし、更にランタンやストロンチウムを含有するセラミックスを用いることが好ましい。
【0088】
圧電/電歪層は、緻密であっても、多孔質であってもよく、多孔質の場合、その気孔率は40%以下であることが好ましい。
【0089】
エミッタ部14として反強誘電体層を用いる場合、該反強誘電体層としては、ジルコン酸鉛を主成分とするもの、ジルコン酸鉛とスズ酸鉛とからなる成分を主成分とするもの、更にはジルコン酸鉛に酸化ランタンを添加したもの、ジルコン酸鉛とスズ酸鉛とからなる成分に対してジルコン酸鉛やニオブ酸鉛を添加したものが望ましい。
【0090】
また、この反強誘電体膜は、多孔質であってもよく、多孔質の場合には気孔率30%以下であることが望ましい。
【0091】
更に、エミッタ部14にタンタル酸ビスマス酸ストロンチウムを用いた場合、分極反転疲労が小さく好ましい。このような分極反転疲労が小さい材料は、層状強誘電体化合物で、(BiO2)2+(Am-1BmO3m+1)2-という一般式で表される。ここで、金属Aのイオンは、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Pb2+、Bi3+、La3+等であり、金属Bのイオンは、Ti4+、Ta5+、Nb5+等である。
【0092】
また、圧電/電歪/反強誘電体セラミックスに、例えば鉛ホウケイ酸ガラス等のガラス成分や、他の低融点化合物(例えば酸化ビスマス等)を混ぜることによって、焼成温度を下げることができる。これにより、エミッタ部14を基板12上に形成する際に有利となる。
【0093】
また、エミッタ部14に非鉛系の材料を使用する等により、エミッタ部14を融点、もしくは蒸散温度の高い材料とすることで、電子もしくはイオンの衝突に対し損傷しにくくなる。
【0094】
そして、基板12上にエミッタ部14を形成する方法としては、スクリーン印刷法、ディッピング法、塗布法、電気泳動法等の各種厚膜形成法や、イオンビーム法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)、めっき等の各種薄膜形成法を用いることができる。
【0095】
この実施の形態においては、基板12上にエミッタ部14を形成するにあたっては、スクリーン印刷法やディッピング法、塗布法、電気泳動法等による厚膜形成法が好適に採用される。
【0096】
これらの手法は、平均粒径0.01〜5μm、好ましくは0.05〜3μmの圧電セラミックスの粒子を主成分とするペーストやスラリー、又はサスペンション、エマルジョン、ゾル等を用いて形成することができ、良好な圧電作動特性が得られるからである。
【0097】
特に、電気泳動法は、膜を高い密度で、かつ、高い形状精度で形成することができることをはじめ、「電気化学および工業物理化学 Vol.53,No.1(1985),p63〜68 安斎和夫著」あるいは「第1回電気泳動法によるセラミックスの高次成形法 研究討論会 予稿集(1998),p5〜6,p23〜24」等の技術文献に記載されるような特徴を有する。また、圧電/電歪/反強誘電体をシート状に成形したもの、もしくはその積層体、もしくはこれらを他の支持基板に積層又は接着したものを用いてもよい。このように、要求精度や信頼性等を考慮して、適宜、手法を選択して用いるとよい。
【0098】
カソード電極16は、以下に示す材料にて構成される。即ち、スパッタ率が小さく、真空中での蒸発温度が大きい導体が好ましい。例えば、Ar+で600Vにおけるスパッタ率が2.0以下で、蒸気圧1.3×10-3Paとなる温度が1800K以上のものが好ましく、白金、モリブデン、タングステン等がこれに該当する。また、高温酸化雰囲気に対して耐性を有する導体、例えば金属単体、合金、絶縁性セラミックスと金属単体との混合物、絶縁性セラミックスと合金との混合物等によって構成され、好適には、白金、イリジウム、パラジウム、ロジウム、モリブデン等の高融点貴金属や、銀−パラジウム、銀−白金、白金−パラジウム等の合金を主成分とするものや、白金とセラミック材料とのサーメット材料によって構成される。更に好適には、白金のみ又は白金系の合金を主成分とする材料によって構成される。また、電極として、カーボン、グラファイト系の材料、例えば、ダイヤモンド薄膜、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブも好適に使用される。なお、電極材料中に添加されるセラミック材料の割合は、5〜30体積%程度が好適である。
【0099】
更に、焼成後に薄い膜が得られる有機金属ペースト、例えば白金レジネートペースト等の材料を用いることが好ましい。また、分極反転疲労を抑制する酸化物電極、例えば酸化ルテニウム、酸化イリジウム、ルテニウム酸ストロンチウム、La1-xSrxCoO3(例えばx=0.3や0.5)、La1-xCaxMnO3、La1-xCaxMn1-yCoyO3(例えばx=0.2、y=0.05)、もしくはこれらを例えば白金レジネートペーストに混ぜたものが好ましい。
【0100】
カソード電極16を形成するに当たり、上記材料を用いて、スクリーン印刷、スプレー、コーティング、ディッピング、塗布、電気泳動法等の各種の厚膜形成法や、スパッタリング法、イオンビーム法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)、めっき等の各種の薄膜形成法による通常の膜形成法に従って形成することができ、好適には、前者の厚膜形成法によって形成される。なお、カソード電極16の寸法については、図2に示すように、幅W1を2mmとし、長さL1を5mmとした。カソード電極16の厚さは、20μm以下がよく、好適には5μm以下である。
【0101】
アノード電極20は、カソード電極16と同様の材料及び方法によって形成されるが、好適には上記厚膜形成法によって形成する。アノード電極20の厚さも、20μm以下がよく、好適には5μm以下であるとよい。また、アノード電極20の寸法については、図2に示すように、カソード電極16と同様に幅W2を2mmとし、長さL2を5mmとした。
【0102】
カソード電極16に電気的に接続した配線と、アノード電極20に電気的に接続した配線とを電気的に分離するために、基板12を電気的な絶縁材料で構成するのが好ましい。
【0103】
従って、基板12を、ガラス、又は高耐熱性の金属、あるいはその金属表面をガラスなどのセラミック材料によって被覆したホーローのような材料によって構成することができるが、セラミックスで構成するのが最適である。
【0104】
基板12を構成するセラミックスとしては、例えば、安定化された酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、スピネル、ムライト、窒化アルミニウム、窒化珪素、ガラス、これらの混合物等を使用することができる。その中でも、酸化アルミニウム及び安定化された酸化ジルコニウムが、強度及び剛性の観点から好ましい。安定化された酸化ジルコニウムは、機械的強度が比較的高いこと、靭性が比較的高いこと、カソード電極16及びアノード電極20との化学反応が比較的小さいことなどの観点から特に好適である。なお、安定化された酸化ジルコニウムとは、安定化酸化ジルコニウム及び部分安定化酸化ジルコニウムを包含する。安定化された酸化ジルコニウムでは、立方晶などの結晶構造をとるため、相転移が生じない。
【0105】
一方、酸化ジルコニウムは、1000℃前後で単斜晶と正方晶との間を相転移し、このような相転移の際にクラックが発生するおそれがある。安定化された酸化ジルコニウムは、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化イッテルビウム、酸化セリウム、希土類金属の酸化物等の安定剤を、1〜30モル%含有する。なお、基板12の機械的強度を向上させるために、安定化剤が酸化イットリウムを含有すると好適である。この場合、酸化イットリウムを、好適には1.5〜6モル%、更に好適には2〜4モル%含有し、更に0.1〜5モル%の酸化アルミニウムを含有することが好ましい。
【0106】
また、結晶相を、立方晶+単斜晶の混合相、正方晶+単斜晶の混合相、立方晶+正方晶+単斜晶の混合相等とすることができるが、その中でも、主たる結晶相を、正方晶又は正方晶+立方晶の混合相としたものが、強度、靭性及び耐久性の観点から最適である。
【0107】
基板12をセラミックスから構成した場合、比較的多数の結晶粒が基板12を構成するが、基板12の機械的強度を向上させるためには、結晶粒の平均粒径を0.05〜2μmとするとよく、更に好適には0.1〜1μmとするとよい。
【0108】
エミッタ部14、カソード電極16及びアノード電極20をそれぞれ形成するたびに熱処理(焼成処理)して基板12と一体構造にすることができ、また、これらエミッタ部14、カソード電極16及びアノード電極20を形成した後、同時に焼成処理して、これらを同時に基板12に一体に結合することもできる。なお、カソード電極16及びアノード電極20の形成法によっては、一体化のための熱処理(焼成処理)を必要としない場合もある。
【0109】
基板12と、エミッタ部14、カソード電極16及びアノード電極20とを一体化させるための焼成処理に係る温度としては、500〜1400℃の範囲、好適には、1000〜1400℃の範囲とするとよい。更に、膜状のエミッタ部14を熱処理する場合、高温時にエミッタ部14の組成が不安定にならないように、エミッタ部14の蒸発源と共に雰囲気制御を行いながら焼成処理を行うことが好ましい。
【0110】
また、エミッタ部14を適切な部材によって被覆し、エミッタ部14の表面が焼成雰囲気に直接露出しないようにして焼成する方法を採用してもよい。この場合、被覆部材としては、基板12と同様の材料を用いることが好ましい。
【0111】
次に、電子放出素子10の電子放出原理について図1〜図6を参照しながら説明する。まず、パルス発生源22から出力される駆動電圧Vaは、図3に示すように、第1の電圧Va1が出力される期間(準備期間T1)と第2の電圧Va2が出力される期間(電子放出期間T2)を1ステップとし、該1ステップが繰り返される。第1の電圧Va1は、カソード電極16の電位がアノード電極20の電位よりも高い電圧であり、第2の電圧Va2は、カソード電極16の電位がアノード電極20の電位よりも低い電圧である。駆動電圧Vaの振幅Vinは、第1の電圧Va1から第2の電圧Va2を差し引いた値(=Va1−Va2)で定義することができる。
【0112】
準備期間T1は、図4に示すように、カソード電極16とアノード電極20間に第1の電圧Va1を印加してエミッタ部14を分極する期間である。第1の電圧Va1としては、図3のように直流電圧でもよいが、1つのパルス電圧、もしくはパルス電圧を複数回連続印加するようにしてもよい。ここで、準備期間T1は、分極処理を十分に行うために、電子放出期間T2よりも長くとることが好ましい。例えば、この準備期間T1としては100μsec以上が好ましい。これは、第1の電圧Va1の印加時の消費電力及びカソード電極16の損傷を防止する目的で、分極を行うための第1の電圧Va1の絶対値を、第2の電圧Va2の絶対値よりも小さく設定しているからである。
【0113】
電子放出期間T2は、カソード電極16とアノード電極20間に第2の電圧Va2が印加される期間である。カソード電極16とアノード電極20間に第2の電圧Va2が印加されることによって、図5Aに示すように、少なくともエミッタ部14のうち、スリット18から露出する部分が分極反転される。この分極反転によって、カソード電極16とその近傍の双極子モーメントの正極側とで局所的な集中電界が発生することにより、カソード電極16から1次電子が引き出され、図5Bに示すように、前記カソード電極16から引き出された1次電子がエミッタ部14に衝突して、該エミッタ部14から2次電子が放出される。
【0114】
この実施の形態のように、カソード電極16、エミッタ部14及び真空の3重点Aを有する場合には、カソード電極16のうち、3重点Aの近傍部分から1次電子が引き出され、この3重点Aから引き出された1次電子がエミッタ部14に衝突して、該エミッタ部14から2次電子が放出される。なお、カソード電極16の厚みが極薄(〜10nm)である場合には、該カソード電極16とエミッタ部14との界面から電子が放出されることになる。
【0115】
このような原理によって電子が放出されることから、電子放出が安定して行われ、電子放出の回数も20億回以上を実現でき、実用性に富む。しかも、放出電子量は、カソード電極16とアノード電極20間に印加される駆動電圧Vaの振幅Vinにほぼ比例して増加することから、放出電子量を容易に制御できるという利点もある。
【0116】
そして、放出された2次電子のうち、一部の2次電子はコレクタ電極24(図1参照)に導かれて蛍光体28を励起し、外部に蛍光体発光として具現されることになる。他の一部の2次電子や1次電子は、アノード電極20に引かれる。
【0117】
ここで、2次電子の放出分布について説明する。図6に示すように、2次電子は、ほとんどエネルギーが0に近いものが大多数であり、エミッタ部14の表面から真空中に放出されると、周囲の電界分布のみに従って運動することになる。つまり、2次電子は、初速がほとんど0(m/sec)の状態から周囲の電界分布に従って加速される。このため、図5Bに示すように、エミッタ部14とコレクタ電極24間に電界Eが発生しているとすると、2次電子は、この電界Eに沿って、その放出軌道が決定される。つまり、直進性の高い電子源を実現させることができる。このような初速の小さい2次電子は、1次電子のクーロン衝突でエネルギーを得て、エミッタ部14の外へ飛び出した固体内電子である。
【0118】
また、コレクタ電極24のパターン形状や電位を適宜変更したり、エミッタ部14とコレクタ電極24との間に図示しない制御電極等を配置することによって、エミッタ部14とコレクタ電極24間の電界分布を任意に設定することにより、2次電子の放出軌道を制御し易くなり、電子ビーム径の収束、拡大、変形も容易になる。
【0119】
上述した直進性の高い電子源の実現、並びに2次電子の放出軌道の制御のし易さは、本実施の形態に係る電子放出素子10をディスプレイの画素として構成した場合に、画素の狭ピッチ化に有利になる。
【0120】
ところで、図6からもわかるように、1次電子のエネルギーE0に相当するエネルギーをもった2次電子が放出されている。この2次電子は、カソード電極16から放出された1次電子がエミッタ部14の表面近くで散乱したもの(反射電子)である。
【0121】
カソード電極16の厚みが10nmよりも厚い場合には、前記反射電子のほとんどがアノード電極20に向かうことになる。そして、本明細書内で述べている2次電子は、前記反射電子やオージェ電子も含んで定義するものとする。
【0122】
一方、カソード電極16の厚みが極薄(〜10nm)である場合、カソード電極16から放出された1次電子は、カソード電極16とエミッタ部14の界面で反射してコレクタ電極24に向かうことになる。
【0123】
アノード電極20に引かれた電子は、図5Aに示すように、主にアノード電極20の近傍に存在する気体又はアノード電極20を構成する原子等を、正イオンと電子とに電離する。アノード電極20の近傍に存在する該アノード電極20を構成する原子は、該アノード電極20の一部が蒸散した結果生じた原子であり、該原子はアノード電極20の近傍に浮遊している。そして、前記電離によって発生した電子が更に気体や前記原子等を電離するため、指数関数的に電子が増え、これが進行して電子と正イオンが中性的に存在すると局所プラズマとなる。
【0124】
そして、前記電離によって発生した正イオンが例えばカソード電極16に衝突することによってカソード電極16が損傷する場合がある。
【0125】
カソード電極16が例えば従来の円錐形状の電極であれば、損傷によって電極先端部分が丸くなってしまい、電子放出電圧が大きくなるという問題がある。そこで、電極の材質をモリブデン等のような高融点のものにすることが考えられるが、電極自体が高価になり、全体の製造コストが上昇するという問題がある。その他、カソード電極16に正イオンの衝突が集中しないように、別途ゲート電極等を配置することが考えられるが、電極構造が複雑になり、製造コストが高価になり易いという問題がある。
【0126】
そこで、本実施の形態では、以下に示す種々の具体例によって、小型化及び低コスト化を図りながら、電子放出の低電圧化と、カソード電極16(及びアノード電極20)への損傷を抑えて長寿命化を図るようにしている。
【0127】
まず、第1の具体例に示す電子放出素子10Aは、図2に示すように、カソード電極16とアノード電極20間のスリット18の幅dを小さくすることで、電子放出の低電圧化を図るようにしている。
【0128】
ここで、電界集中ポイントAでの電界の強さをE、カソード電極16とアノード電極20間の電圧(パルス発生源22から出力される駆動電圧Vaがカソード電極16とアノード電極20間に印加されることによって、該カソード電極16とアノード電極20間に現れる電圧)をVak、スリット18の幅をdとしたとき、電子放出には、上述した電界集中ポイントAでの電界の強さEとして、ある値以上が必要であるが、ここで、E=Vak/dであるから、電界の強さEを大きくするためには、電圧Vakを大きくするか、スリット18の幅dを小さくすればよい。
【0129】
電圧Vakを大きくすると、▲1▼:駆動回路の耐圧を大きくする必要があるため、駆動回路を小型化することができず、高価になるおそれや、▲2▼:プラズマで生成された正イオンが電圧Vakによってエネルギーを得て、例えばカソード電極16に衝突するため、カソード電極16の損傷量が多くなるおそれがある。
【0130】
そこで、この第1の具体例では、スリット18の幅dを小さくしている。従来の電界電子放出を用いた電子放出素子では、5×109V/m程度の電界が必要であることから、スリット18の幅dは、電圧Vakを例えば100V未満にする場合、20nm程度まで狭くすることが必要になる。
【0131】
これに対して、この第1の具体例では、誘電体にてエミッタ部14を構成するようにしているため、前記電圧Vakを例えば100V未満にする場合、スリット18の幅dを20nm程度まで狭くする必要はなく、20μm程度で十分である。もちろん、前記電圧Vakの選定によっては、スリット18の幅dを0.1μm〜50μmの範囲に設定することが好ましい。より好ましくは、0.1μm〜10μmであり、前記電圧Vakを10V程度とする場合には、0.1μm〜1μmの範囲に設定することが好ましい。
【0132】
スリット18の幅dを0.1μm以上としたのは、スリット18の加工のし易さやカソード電極16及びアノード電極20間の絶縁を確保する上で有利であり、50μm以下、10μm以下、あるいは1μm以下としたのは、前記電圧Vakの選定にもよるが、いずれにしても電子放出の低電圧化において有利となるからである。これらの範囲に設定することで、駆動回路の小型化、低コスト化を図ることができると共に、例えばカソード電極16の損傷を抑制することができ、長寿命化において有利となる。
【0133】
次に、第2の具体例に係る電子放出素子10Bについて図7〜図9を参照しながら説明する。
【0134】
上述した第1の具体例に係る電子放出素子10Aでは、図2に示すように、エミッタ部14の一方の面にカソード電極16とアノード電極20を形成し、スリット18を空隙とした場合を示した。
【0135】
この電子放出素子10Aにおいて、少なからずカソード電極16の損傷が進んだ場合、スリット18の幅dが徐々に拡大することから、上述の式E=Vak/dの関係により、一定の電界の強さEを得るためには、スリット18の幅dの拡大に伴って電子放出のための駆動電圧Vaの振幅Vinを大きくしていく必要がある。
【0136】
一方、この第2の具体例に係る電子放出素子10Bでは、図7に示すように、基板12上に幅dが0.1〜50μmのエミッタ部14が形成され、該エミッタ部14の一方の側面にカソード電極16が形成され、エミッタ部14の他方の側面にアノード電極20が形成されている。つまり、カソード電極16とアノード電極20との間のスリット18にエミッタ部14が存在した構造となっており、エミッタ部14をカソード電極16とアノード電極20とで挟んだ構造となっている。
【0137】
この第2の具体例に係る電子放出素子10Bにおいては、図8に示すように、カソード電極16が損傷したとしても、カソード電極16とアノード電極20間の距離、即ち、スリット18の幅dは不変であることから、一定電圧で安定した電子放出を実現させることができる。その結果、電圧Vakの低電圧化を維持させることができ、カソード電極16の長寿命化も達成させることができる。
【0138】
しかも、誘電体にて構成されたエミッタ部14がカソード電極16とアノード電極20で挟まれた構造であることから、図9に示すように、エミッタ部14での分極を完全に行うことができ、分極反転による電子放出を、安定して、かつ、効率よく行うことができる。
【0139】
ここで、第2の具体例に係る電子放出素子10Bをディスプレイの画素として構成する場合について図10及び図11を参照しながら説明する。
【0140】
基板12上に複数の電子放出素子10Bを例えばマトリックス状に配列し、これら複数の電子放出素子10Bに対向させて表示パネル190を設置し、更に、電子放出素子10Bに隣接してスペーサ192を設置する。
【0141】
この構成で、表示パネル190の裏面(電子放出素子10Bと対向する面)にコレクタ電極24を形成し、更に、コレクタ電極24上に蛍光体28を形成した場合、電子放出素子10Bから電子を放出させることで、電子放出素子10Bをディスプレイの画素として機能させることができる。
【0142】
ところで、図10の構成において、電子放出素子10Bから放出された電子の一部がスペーサ192に衝突し、この電子の衝突によって、スペーサ192が負に帯電するおそれがある。
【0143】
スペーサ192が負に帯電すると、電子放出素子10Bとコレクタ電極24との間の電界分布、即ち、電子放出素子10Bから放出された電子をコレクタ電極24に向かわせるための電界分布が変化し、電子ビームによる蛍光体28の励起が正確に行えなくなって、画質不良を招くおそれがある。
【0144】
また、電子の放出分布は、コレクタ電極24に向かって徐々に広がった分布となる場合もあるため、この場合、画素配列の狭ピッチ化(高精細度化)に不利になるおそれがある。電子の放出分布の広がりを抑えるために、電子放出素子10Bとコレクタ電極24との間に1以上の制御電極を配置する構造も考えられるが、構造が複雑になり、製造コストが高くなるおそれがある。
【0145】
そこで、図11に示すように、基板12の上面にコレクタ電極24を形成し、更に、該コレクタ電極24の上面に蛍光体28を形成する構成も好ましく採用される。この構成においては、スペーサ192が負に帯電したとしても、電子放出素子10Bから放出された電子をコレクタ電極24に向かわせるための電界分布はほとんど変化しない。そのため、電子ビームによる蛍光体28の励起を正確に行うことができ、画質不良を招くことがない。
【0146】
しかも、電子を表示パネル190まで飛ばす必要がないため、電子の放出分布の広がりを考慮する必要がない。従って、画素配列の狭ピッチ化(高精細度化)を図ることができ、高精細度化が容易になる。
【0147】
図11の構成において、電子放出素子10Bから放出された電子の一部が基板12上のコレクタ電極24に向かわずに、表示パネル190に向かう場合がある。そこで、表示パネル190の裏面に制御電極194を配置し、該制御電極194に負電圧Veを印加することが好ましい。これにより、電子放出素子10Bから放出された電子を効率よく、基板12上のコレクタ電極24に向かわせることができ、放出電子の蛍光体励起に対する寄与率を向上させることができる。
【0148】
次に、この第2の具体例に係る電子放出素子10Bの3つの変形例について図12〜図16を参照しながら説明する。
【0149】
まず、第1の変形例に係る電子放出素子10Baは、第2の具体例に係る電子放出素子10Bの考え方を踏襲させた例であるが、図12及び図13に示すように、エミッタ部14が平面から見て蛇行形状に形成されている。この場合も、カソード電極16とアノード電極20との間のスリット18の幅dを0.1〜50μmとすることが好ましい。
【0150】
このように構成することで、カソード電極16とエミッタ部14との接触面積並びにアノード電極20とエミッタ部14との接触面積が増大することから、効率よく電子を放出させることができる。
【0151】
第2の変形例に係る電子放出素子10Bbは、図14に示すように、基板12上に誘電体によるエミッタ部14が形成され、該エミッタ部14に形成された窓内にカソード電極16及びアノード電極20が埋め込まれて形成されている。このように、カソード電極16及びアノード電極20の電極断面積を大きくすることで、カソード電極16及びアノード電極20の低抵抗化を図り、ジュール熱の発生を抑止することができる。即ち、カソード電極16及びアノード電極20を保護することができる。この場合も、エミッタ部14のうち、カソード電極16とアノード電極20との間の部分、即ち、スリット18の幅dを0.1〜50μmとすることが好ましい。
【0152】
上述の第2の変形例では、カソード電極16及びアノード電極20の厚みをエミッタ部14の厚みとほぼ同じにした例を示したが、その他、図15及び図16に示す第3の変形例に係る電子放出素子10Bcのように、カソード電極16及びアノード電極20の厚みをエミッタ部14の厚みよりも薄くするようにしてもよい。この場合、図7に示す第2の具体例と同様に、カソード電極16及びアノード電極20が、エミッタ部14のうち、少なくともスリット18の部分に存在するエミッタ部14の側壁に接触して形成される。
【0153】
この第3の変形例では、第1の変形例と同様に、金属の量を少なくしてカソード電極16やアノード電極20を構成することができるため、カソード電極16やアノード電極20として、高価な金属(例えば白金や金)を用いることができ、特性の向上を図ることができる。
【0154】
ここで、電子放出に関する1つの実験例について説明する。この実験例は、1つの電子放出素子をサンプル10Bd(図17参照)として、該サンプル10Bdを真空チェンバ180(真空度=4×10-3Pa)内に収容し、更に、カソード電極16とアノード電極20間に図18Aに示す駆動電圧Vaを供給したときに各部分に流れる電流Ia、Ik、Icの波形と、カソード電極16とアノード電極20間の電圧Vakの波形を測定した。測定結果を図18B〜図18Eに示す。
【0155】
サンプル10Bdは、図17に示すように、上述した第3の変形例に係る電子放出素子10Bc(図15参照)と同様の構成を有する。サンプル10Bdの寸法は、基板12の厚みtaが140μm、エミッタ部14の厚みtbが40μm、カソード電極16の幅W1が40μm、アノード電極20の幅W2が40μm、スリット18の幅dが30μm、カソード電極16の端部(スリット18側の端部とは反対側の端部)からエミッタ部14の側端までの距離D1が40μm、アノード電極20の端部(スリット18側の端部とは反対側の端部)からエミッタ部14の側端までの距離D2が40μmである。
【0156】
また、カソード電極16及びアノード電極20は共に金(Au)にて構成し、エミッタ部14はPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)にて構成した。
【0157】
駆動電圧Vaは、図18Aに示すように、準備期間T1における第1の電圧Va1が50Vで、時点t0から電子放出期間T2に移行し、該電子放出期間T2における第2の電圧Va2は−120Vである。なお、駆動電圧Vaは、時点t1で準備期間T1に移行する。
【0158】
そして、測定結果である図18Bは、アノード電極20からGNDに流れる電流Iaの波形を示し、該電流IaのピークPaは、駆動電圧Vaの立ち下がり時点t0から約1μsecの時点t2で発生し、その値は約−80mAであった。
【0159】
図18Cは、パルス発生源22からカソード電極16に流れる電流Ikの波形を示し、該電流IkのピークPkは、前記電流Iaの場合と同様に、時点t0から約1μsecの時点t2で発生し、その値は約−110mAであった。
【0160】
図18Dは、コレクタ電極24からGNDに流れる電流Icの波形を示し、該電流IcのピークPcは、前記電流Iaや電流Ikの場合と同様に、時点t0から約1μsecの時点t2で発生し、その値は約−30mAであった。
【0161】
図18Eは、カソード電極16とアノード電極20間の電圧Vakの波形を示し、該電圧VakのピークVapは、駆動電圧Vaの立ち下がり時点t0から約2μsecの時点t3で発生し、その値は約−120Vであった。
【0162】
この実験例では、電子を確実に放出させる意図から、前記駆動電圧Vaの振幅Vinを大きく見積もって170V(=Va1−Va2)としている。しかし、上述の測定結果から、電子の放出は、前記電圧VakのピークVapが到来する時点t3よりも約1μsec前の時点t2で発生しており、そのときの電圧Vakの値Vsは約−77Vであった。この場合の電子放出効率は(Ic/Ik)=27%であった。
【0163】
このことは、実際の電子の放出に必要な駆動電圧Vaの振幅Vinとして170Vなどの大きなレベルは必要でないことを示している。この例の場合では、カソード電極16とアノード電極20間の電圧Vakが約−77Vの時点で電子の放出が行われており、駆動電圧Vaの低電圧化が可能であることを示している。
【0164】
駆動電圧Vaの低電圧化には、電子放出素子10自体の最適化のほか、駆動回路の最適化も好ましく採用される。以下に示す説明は、この実験例を基礎として駆動回路の最適化を図ったものである。
【0165】
次に、本実施の形態に係る電子放出素子10の駆動回路について説明する。まず、カソード電極16とアノード電極20間に駆動電圧Vaを印加することによって、カソード電極16のうち、電界集中ポイントA(図1参照)の近傍部分から1次電子を放出させるには、カソード電極16に対して急峻な電圧変化を与えることが必要である。これによって、電子放出素子10を安定に駆動することができる。
【0166】
通常、図19Aに示すように、パルス発生源22から出力される駆動電圧Vaのパルス波形が矩形であっても、カソード電極16とアノード電極20間の静電容量Cとその他の抵抗成分によるCR時定数によって、図19Bに示すように、カソード電極16とアノード電極20間の電圧Vakの波形は全体として緩やかなものとなる。
【0167】
この電圧Vakの波形のうち、駆動電圧Vaの立ち上がり又は立ち下がり直後の電圧波形は比較的急峻なものとなる。しかし、急峻に立ち上がる又は立ち下がる電圧レベルが低く、その後、規定電圧(駆動電圧Vaの振幅Vin)の例えば95%に到達するまでの電圧波形は緩やかなものとなる。そこで、駆動電圧Vaの振幅Vinを大きくすることで、見かけ上、必要な電圧レベルにわたって急峻な電圧変化を得ることが考えられる。
【0168】
この方法の場合、電子放出素子10を一種のコンデンサとしてみたとき、カソード電極16とアノード電極20間の電圧Vakが大きくなることから、大電流による高速充電によって、電子放出が行われることになる。しかし、その後の高電圧印加のために、過剰電流が流れ、この過剰電流によるジュール熱や正イオン衝突によってカソード電極16が損傷されるおそれがある。
【0169】
そこで、本実施の形態では、以下に示す種々の具体例に係る駆動回路によって、小型化及び低コスト化を図りながら、電子放出の低電圧化と、カソード電極16(及びアノード電極20)への損傷を抑えて長寿命化を図るようにしている。
【0170】
以下に説明する種々の具体例に係る駆動回路では、上述した本実施の形態に係る電子放出素子10(各種具体例並びに変形例を含む)が適用可能であるため、図20以降の図面では、電子放出素子10を代表的にコンデンサCと抵抗Rとの並列回路で表すこととする。
【0171】
まず、第1の具体例に示す駆動回路100Aは、図20に示すように、カソード電極16とパルス発生源22との間に接続された抵抗106(抵抗値R1)と、アノード電極20とGNDとの間に接続された抵抗108(抵抗値R2)とを有する。即ち、電子放出素子10に対して直列に抵抗106及び108が接続される。
【0172】
また、図21に示すように、駆動電圧Vaの電子放出期間をT2、カソード電極16とアノード電極20による静電容量C並びに抵抗106及び108とで決まる時定数をτとしたとき、0<T2≦3τに設定されている。
【0173】
抵抗106及び108により、電子放出素子10に流れる過剰電流を抑制することができる。また、電子放出期間T2が、電子放出に寄与する急峻な電圧変化の期間に設定されるため、無駄な電流供給がなくなり、消費電力の低減につながると共に、余分な電子の放出も抑制することができ、カソード電極16等への損傷を少なくすることができる。
【0174】
なお、上述の例では、それぞれ抵抗106及び108を接続した例を示したが、その他、抵抗106のみ、あるいは抵抗108のみを接続するようにしてもよい。
【0175】
第2の具体例に係る駆動回路100Bは、上述した第1の具体例に係る駆動回路100Aとほぼ同じ構成を有するが、図22に示すように、抵抗106として非線形抵抗特性を有する回路110を用いた点で異なる。この例では、回路110は、ドレイン・ソース間保護用ダイオード112が内蔵されたnチャネル型MOSFET(以下、n−MOSFET114と記す)と、ドレイン・ソース間保護用ダイオード116が内蔵されたpチャネル型MOSFET(以下、p−MOSFET118と記す)が直列に接続された構成を有する。この場合、n−MOSFET114のドレインとp−MOSFET118のソースとが接続点119にて互いに接続される。
【0176】
そして、n−MOSFET114のゲートが前記接続点119に接続され、p−MOSFET118のゲートがドレインに接続されている。
【0177】
これにより、図23Aに示すように、例えば電子放出期間T2の開始時点においてn−MOSFET114のソースが低レベルになると、電子放出素子10からp−MOSFET118のダイオード116並びにn−MOSFET114のドレイン・ソース間を介して電流が流れることになる。
【0178】
このとき、前記電流は、電子放出期間T2の開始時点において、ダイオード116及びn−MOSFET114の非線形抵抗特性によって急速に流れることになるため、カソード電極16とアノード電極20間の電圧Vakは、図23Bに示すように、第1の電圧Va1から第2の電圧Va2に急速に変化することとなり、急峻な電圧変化を得ることができる。これにより、カソード電極16での電子放出が効率的に行われる。
【0179】
なお、電子放出期間T2の終了時点においてn−MOSFET114のソースが高レベルになると、今度は、パルス発生源22からn−MOSFET114のダイオード112並びにp−MOSFET118のドレイン・ソース間を介して電流が流れる。
【0180】
このとき、図23Bに示すように、パルス発生源22からの前記電流は、電子放出期間T2の終了時点において、ダイオード112及びp−MOSFET118の非線形抵抗特性によって急速に流れることになるため、カソード電極16とアノード電極20間の電圧Vakは、第2の電圧Va2から第1の電圧Va1に急速に変化することとなる。
【0181】
従って、この回路110を用いた場合は、カソード電極16とアノード電極20間の電圧Vakの変化を急峻にすることができ、しかも、過剰電流の抑制をも実現することができる。また、抵抗106を用いた場合よりも電子放出期間T2を短く設定することができ、準備期間T1(図3参照)も短く設定することができる。このことから、電子放出素子10を例えばディスプレイの画素に適用した場合に、水平同期信号の周波数を高めることができる、あるいは高解像度を実現させることが可能となる。
【0182】
第2の具体例に係る駆動回路100Bの2つの変形例について図24及び図25を参照しながら説明する。
【0183】
まず、第1の変形例に係る駆動回路100Baは、上述した第2の具体例に係る駆動回路100Bとほぼ同様の構成を有するが、図24に示すように、前記回路110が、共にドレイン・ソース間保護用のダイオード120及び122が内蔵された2つのn−MOSFET(第1及び第2のn−MOSFET124及び126)がそれぞれドレインを共通に直列に接続された構成を有する点で異なる。この場合、第1及び第2のn−MOSFET124及び126の各ゲートがそれぞれ共通のドレインに接続される。
【0184】
この第1の変形例においては、電子放出期間T2の開始時点において第2のn−MOSFET126のソースが低レベルになると、電子放出素子10から第1のn−MOSFET124のダイオード120並びに第2のn−MOSFET126のドレイン・ソース間を介して電流が流れる。また、電子放出期間T2の終了時点において第2のn−MOSFET126のソースが高レベルになると、パルス発生源22から第2のn−MOSFET126のダイオード122並びに第1のn−MOSFET124のドレイン・ソース間を介して電流が流れる。
【0185】
この場合も、カソード電極16とアノード電極20間の電圧Vakの変化を急峻にすることができ、過剰電流の抑制をも実現することができる。
【0186】
第2の変形例に係る駆動回路100Bbは、上述した第2の具体例に係る駆動回路100Bとほぼ同様の構成を有するが、図25に示すように、前記回路110が、2つのツェナーダイオード(第1及び第2のツェナーダイオード130及び132)がそれぞれアノードを共通に直列に接続されて構成されている点で異なる。この場合、第1のツェナーダイオード130のカソードが電子放出素子10に接続され、第2のツェナーダイオード132のカソードがパルス発生源22に接続される。各ツェナーダイオード130及び132のツェナー電圧は例えば50Vに設定されている。
【0187】
この第2の変形例においては、電子放出期間T2の開始時点において第2のツェナーダイオード132のカソードが低レベルになると、第1のツェナーダイオード130が導通し、電子放出素子10から第1及び第2のツェナーダイオード130及び132を介して電流が流れる。このとき、電流は、第2のツェナーダイオード132の非線形抵抗特性によって急速に流れ、カソード電極16とアノード電極20間の電圧Vakは急峻な電圧変化となる。
【0188】
なお、電子放出期間T2の終了時点において第2のツェナーダイオード132のカソードが高レベルになると、第2のツェナーダイオード132が導通し、パルス発生源22から第1及び第2のツェナーダイオード130及び132を介して電流が流れることとなる。
【0189】
次に、第3の具体例に係る駆動回路100Cについて図26を参照しながら説明する。この第3の具体例に係る駆動回路100Cは、上述した第1の具体例に係る駆動回路100Aとほぼ同様の構成を有するが、電子放出素子10と直列に接続されたスイッチング素子140を有する点で異なる。もちろん、前記抵抗106に代えて図22、図24及び図25に示す回路110としてもよい。
【0190】
そして、図27A及び図27Bに示すように、カソード電極16とアノード電極20による静電容量C並びに抵抗106及び108とで決まる時定数をτ、電子放出期間をT2、スイッチング素子140のオン時間をtとしたとき、0<t≦3τ≦T2に設定している。
【0191】
この場合、電子放出に寄与する急峻な電圧変化の期間にスイッチング素子140がオン動作するため、無駄な電流供給がなくなり、消費電力の低減につながると共に、余分な電子の放出も抑制することができる。
【0192】
前記抵抗106に代えて図22、図24及び図25に示す回路110を用いることで、オン時間t並びに電子放出期間T2をより短く設定することができる。
【0193】
次に、第4の具体例に係る駆動回路100Dは、図26に示すように、上述した第3の具体例に係る駆動回路100Cとほぼ同じ構成を有するが、図28A及び図28Bに示すように、電子放出を行うためのスイッチング素子140のオン時間をt1、その後に続く電子放出を維持し、かつ、カソード電極16に流入する電流を抑制するためのスイッチング素子140のオフ時間をt2としたとき、0<t1≦3τ<t2≦T2に設定している点で異なる。なお、準備期間T1においてスイッチング素子140の状態(オン又はオフ)は任意である。
【0194】
この場合、スイッチング素子140のオン時間t1において、電子放出に寄与する急峻な電圧変化が行われ、オフ時間t2において、電子放出が維持され、かつ、カソード電極16に流入する電流が抑制されることから、無駄な電流供給がなくなり、消費電力の低減につながると共に、余分な電子の放出も抑制することができる。
【0195】
次に、第5の具体例に係る駆動回路100Eは、図29に示すように、電子放出素子10と直列に接続された1つの並列回路150を有する。該並列回路150は、抵抗152とコンデンサ154とが並列に接続されて構成されている。
【0196】
そして、電子放出期間T2のうち、実際に電子が放出する期間である実効電子放出期間T2aは、図30A及び図30Bに示すように、電子放出期間T2の開始時点から、カソード電極16とアノード電極20間の電圧Vakが駆動電圧Vaの振幅Vinの前記コンデンサ154に基づく分圧レベルVcに達するまでの期間である。
【0197】
具体的には、パルス発生源22での駆動電圧Vaの振幅をVin(=Va1−Va2)、カソード電極16とアノード電極20間の静電容量をC、並列回路150のコンデンサ154の容量をC1とし、電子放出素子10の抵抗値をR、並列回路150の抵抗152の抵抗値をR3としたとき、実効電子放出期間T2aは、カソード電極16とアノード電極20間の電圧Vakが高レベルVbから低レベルVc=Vin×{C1/(C+C1)}となる時間である。ここで、高レベルVb=Vin×{R/(R+R3)}である。
【0198】
実効電子放出期間T2aが経過した直後は、前記電圧Vakは高レベルVbに向けて途中まで急速に変化し、その後は緩やかに変化し、電子放出期間T2が経過する段階で最終的にVbに到達することになる。
【0199】
この場合、電子放出素子10におけるカソード電極16とアノード電極20とによる静電容量Cに、並列回路150によるコンデンサ154が直列に接続された形態となるため、全体の容量は、カソード電極16とアノード電極20とによる静電容量Cよりも小さくなり、それに応じてCR時定数も小さくなる。その結果、カソード電極16とアノード電極20間の電圧Vakとして電子放出において必要な電圧レベル(この場合、Vin×{C1/(C+C1)})まで急峻に立ち上がる電圧変化を得ることができ、放出電子の低電圧化を図ることができる。
【0200】
しかも、電子放出期間T2の終了と同時に、前記電圧Vakの絶対値が低下することから、過剰電流が抑制され、カソード電極16やアノード電極20への損傷を低減することができ、カソード電極16及びアノード電極20の長寿命化を図ることができる。
【0201】
この第5の具体例に係る駆動回路100Eにおいては、前記電圧Vakが、実効電子放出期間T2aが経過した後に、Vin×{R/(R+R3)}に到達することになるため、前記電圧Vakのダイナミックレンジを大きくしたい場合には、Vin×{R/(R+R3)}を0Vに近づけることが好ましい。
【0202】
そこで、並列回路150の抵抗152の抵抗値R3を、理想的には、無限大に設定することが好ましいが、抵抗152の選択性の自由度が狭くなるおそれがある。そこで、図31の変形例に係る駆動回路100Eaに示すように、電子放出素子10の抵抗(抵抗値R)に並列に低抵抗値R4の抵抗156を接続することで、電子放出素子10の合成抵抗を下げることができるため、並列回路150の抵抗152の選択性の自由度を向上させることができる。
【0203】
次に、第6の具体例に係る駆動回路100Fは、第1の具体例に係る駆動回路100Aとほぼ同様の構成を有するが、図32に示すように、パルス発生源22と抵抗106との間にインダクタ196が直列に接続されている点で異なる。
【0204】
これにより、駆動電圧Vaにおける第2の電圧Va2の印加開始時点からカソード電極16とアノード電極20間の電圧Vakが所定電圧(エミッタ部14を圧電材料にて構成した場合は抗電圧)になるまでの時間を小さくすることができる。しかも、抵抗106及び108の抵抗値を下げることなく高速な立ち上がりあるいは立ち下がり時間を実現させることができる。なお、インダクタ196は、カソード電極16へのリード線のパターン形状を一部蛇行させるなどして形成するようにしてもよい。
【0205】
次に、第7の具体例に係る駆動回路100Gは、第1の具体例に係る駆動回路100Aとほぼ同様の構成を有するが、図33に示すように、少なくとも電子放出期間T2に、アノード電極20の電位の極性をカソード電極16の電位とは異なる極性にする電圧Vbをアノード電極20に印加するパルス発生回路160が接続されている点で異なる。
【0206】
具体的には、図34A及び図34Bに示すように、準備期間T1において、パルス発生源22からは30Vの電圧Va1が出力され、パルス発生回路160からは−100Vの電圧Va2が出力される。また、電子放出期間T2においては、パルス発生源22からは−100Vの電圧Vb2が出力され、パルス発生回路160からは30Vの電圧Vb1が出力される。
【0207】
アノード電極20を一定電位とし、カソード電極16とアノード電極20間に駆動電圧Vaを印加する場合、該駆動電圧Vaのダイナミックレンジは、パルス発生源22の耐圧で決定されることになる。
【0208】
しかし、上述のパルス発生回路160を設けることで、前記駆動電圧Vaのダイナミックレンジは、パルス発生源22の耐圧とパルス発生回路160の耐圧を加算した耐圧まで広げることができる。従って、図34A及び図34Bの例では、電子放出期間T2における駆動電圧Vaの振幅Vinは260Vとなる。
【0209】
このことは、電子放出期間T2における駆動電圧Vaの振幅Vinを130Vとする場合は、パルス発生源22及びパルス発生回路160として、上述した通常の場合の1/2の耐圧(この例では65V)を有する回路を用いることが可能となり、駆動回路100Gの小型化及び低コスト化をより促進させることができる。
【0210】
次に、第8の具体例に係る駆動回路100Hについて図35を参照しながら説明する。この第8の具体例に係る駆動回路100Hは、上述した第7の具体例に係る駆動回路100Gとほぼ同様の構成を有するが、カソード電極16とGND間に駆動電圧を印加するパルス発生源として2つのパルス発生源(第1及び第2のパルス発生源22a及び22b)を有する点と、これらパルス発生源22a及び22bをスイッチング制御信号Scに基づいて切り換える第1のスイッチング回路170を有する点と、アノード電極20とGND間に駆動電圧を印加するパルス発生回路として2つのパルス発生回路(第1及び第2のパルス発生回路160a及び160b)を有する点と、これらパルス発生回路160a及び160bを前記スイッチング制御信号Scに基づいて切り換える第2のスイッチング回路172を有する点で異なる。
【0211】
第1のパルス発生源22aから出力される駆動電圧VA1は、図36Aに示すように、準備期間T1にカソード電極16とGND間に対して第1の電圧Va1(例えば30V)を印加し、電子放出期間T2にカソード電極16とGND間に対して第2の電圧Va2(例えば−100V)を印加する電圧波形を有する。
【0212】
第2のパルス発生源22bから出力される駆動電圧VA2は、図36Bに示すように、準備期間T1にカソード電極16とGND間に対して第2の電圧Va2(例えば−100V)を印加し、電子放出期間T2にカソード電極16とGND間に対して第1の電圧Va1(例えば30V)を印加する電圧波形を有する。
【0213】
第1のパルス発生回路160aから出力される駆動電圧VB1は、図36Cに示すように、準備期間T1にアノード電極20とGND間に対して第2の電圧Va2(例えば−100V)を印加し、電子放出期間T2にアノード電極20とGND間に対して第1の電圧Va1(例えば30V)を印加する電圧波形を有する。
【0214】
第2のパルス発生回路160bから出力される駆動電圧VB2は、図36Dに示すように、準備期間T1にアノード電極20とGND間に対して第1の電圧Va1(例えば30V)を印加し、電子放出期間T2にアノード電極20とGND間に対して第2の電圧Va2(例えば−100V)を印加する電圧波形を有する。
【0215】
一方、前記第1及び第2のスイッチング回路170及び172は、1つのスイッチング制御信号Scでそれぞれスイッチを切り換える連動型スイッチング回路となっている。スイッチング制御信号Scは、図示しないが、例えばコンピュータやタイマからの指示信号等を用いることができ、この具体例では、スイッチング制御信号Scの電圧レベル(高レベル及び低レベル)で各スイッチング回路170及び172を切り換えるように設定されている。
【0216】
そして、スイッチング制御信号Sc(例えば高レベル電圧)の供給によって、第1及び第2のスイッチング回路170及び172がそれぞれ第1のパルス発生源22a及び第1のパルス発生回路160を選択すると、準備期間T1において、カソード電極16とGND間に対して第1の電圧Va1が印加され、これによってエミッタ部14が分極され、電子放出期間T2において、カソード電極16とGND間に対して第2の電圧Va2が印加され、これによってエミッタ部14が分極反転されて、カソード電極16から1次電子が放出され、これに伴ってエミッタ部14から2次電子が放出されることになる。
【0217】
これを1ステップとしたとき、スイッチング制御信号Scが高レベルの期間にわたって、前記1ステップが1回のみ、あるいは複数回行われて1つのサイクル(第1のサイクル)を構成することになる。
【0218】
反対に、スイッチング制御信号Sc(例えば低レベル電圧)の供給によって、第1及び第2のスイッチング回路170及び172がそれぞれ第2のパルス発生源22b及び第2のパルス発生回路160bを選択すると、準備期間T1において、アノード電極20とGND間に対して第1の電圧Va1が印加され、これによってエミッタ部14が分極され、電子放出期間T2において、アノード電極20とGND間に対して第2の電圧Va2が印加され、これによってエミッタ部14が分極反転されて、アノード電極20から1次電子が放出され、これに伴ってエミッタ部14から2次電子が放出されることになる。
【0219】
これを1ステップとしたとき、スイッチング制御信号Scが低レベルの期間にわたって、前記1ステップが1回のみ、あるいは複数回行われて1つのサイクル(第2のサイクル)を構成することになる。
【0220】
そして、コンピュータやタイマからの指示に基づいて、第1及び第2のスイッチング回路170及び172にて第1のサイクルと第2のサイクルを例えば1ステップ毎に、あるいは数ステップ毎に任意に切り換えることができる。
【0221】
これにより、例えば第1のサイクルのみで駆動した際に、プラズマが発生した場合、該プラズマによって生成された正イオンがカソード電極16に衝突し、該カソード電極16が損傷することとなる。つまり、カソード電極16側のダメージだけで耐久性が決定される。一方、第2のサイクルのみで駆動すると、今度は、アノード電極20側のダメージだけで耐久性が決定される。
【0222】
従って、この具体例のように、第1のサイクルと第2のサイクルを任意に切り換えることで、片側の電極のみに発生していた損傷をそれぞれ両側の電極に分散させることができるため、電極の長寿命化を図ることができる。
【0223】
上述の第1〜第8の具体例に係る駆動回路100A〜100Hにおいては、主に、過剰電流の抑制を目的として構成したものである。従って、電子放出素子10をディスプレイの画素として利用した場合に輝度の向上に限界が生じるおそれがある。
【0224】
そこで、図37に示すように、輝度の低下が懸念される電子放出素子10に対応するコレクタ電極24について、電子放出素子10のスリット18に向けて近づけたり、当該コレクタ電極24に印加されるバイアス電圧源102の電圧V3を上げるなどの手法を好ましく採用することができる。
【0225】
なお、この発明に係る電子放出素子は、上述の実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0226】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る電子放出素子によれば、誘電体にて構成されたエミッタ部を有する電子放出素子において、電子放出に伴うカソード電極並びにアノード電極での損傷を抑制することができ、長寿命化及び信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る電子放出素子(第1の具体例に係る電子放出素子)を示す構成図である。
【図2】第1の具体例に係る電子放出素子の電極部分を示す平面図である。
【図3】パルス発生源から出力される駆動電圧を示す波形図である。
【図4】カソード電極に第1の電圧を印加した際の作用を示す説明図である。
【図5】図5Aは、カソード電極とアノード電極間に第2の電圧を印加した際の作用(1次電子の放出)を示す説明図であり、図5Bは、放出された1次電子に基づいて2次電子が放出される原理を示す説明図である。
【図6】放出された2次電子のエネルギーと2次電子の放出量の関係を示す特性図である。
【図7】第2の具体例に係る電子放出素子の主要部分を示す構成図である。
【図8】第2の具体例に係る電子放出素子において、駆動電極が一部損傷した状態を示す説明図である。
【図9】第2の具体例に係る電子放出素子の電子放出原理を示す説明図である。
【図10】第2の具体例に係る電子放出素子でディスプレイの画素を構成した場合の一例を示す構成図である。
【図11】第2の具体例に係る電子放出素子でディスプレイの画素を構成した場合の好ましい例を示す構成図である。
【図12】第2の具体例に係る電子放出素子の第1の変形例を示す平面図である。
【図13】図12におけるXIII−XIII線上の断面図である。
【図14】第2の具体例に係る電子放出素子の第2の変形例を示す断面図である。
【図15】第2の具体例に係る電子放出素子の第3の変形例を示す断面図である。
【図16】第2の具体例に係る電子放出素子の第3の変形例を示す平面図である。
【図17】実験例で用いたサンプルを示す構成図である。
【図18】図18Aは駆動電圧を示す波形図であり、図18Bはアノード電極からGNDに流れる電流を示す波形図であり、図18Cはパルス発生源からカソード電極に流れる電流を示す波形図であり、図18Dはコレクタ電極からGNDに流れる電流を示す波形図であり、図18Eはカソード電極とアノード電極間の電圧を示す波形図である。
【図19】図19Aは、パルス発生源から出力される駆動電圧を示す波形図であり、図19Bは、電子放出素子のカソード電極とアノード電極間の電圧を示す波形図である。
【図20】第1の具体例に係る駆動回路を示す構成図である。
【図21】第1の具体例に係る駆動回路におけるパルス発生源から出力される駆動電圧を示す波形図である。
【図22】第2の具体例に係る駆動回路を示す構成図である。
【図23】図23Aは、第2の具体例に係る駆動回路におけるパルス発生源から出力される駆動電圧を示す波形図であり、図23Bは、電子放出素子のカソード電極とアノード電極間の電圧を示す波形図である。
【図24】第2の具体例に係る駆動回路の第1の変形例を示す構成図である。
【図25】第2の具体例に係る駆動回路の第2の変形例を示す構成図である。
【図26】第3の具体例に係る駆動回路(及び第4の具体例に係る駆動回路)を示す構成図である。
【図27】図27Aは、第3の具体例に係る駆動回路におけるパルス発生源から出力される駆動電圧を示す波形図であり、図27Bは、スイッチング素子のオン時間を示すタイミングチャートである。
【図28】図28Aは、第4の具体例に係る駆動回路におけるパルス発生源から出力される駆動電圧を示す波形図であり、図28Bはスイッチング素子のオン時間及びオフ時間を示すタイミングチャートである。
【図29】第5の具体例に係る駆動回路を示す構成図である。
【図30】図30Aは、第5の具体例に係る駆動回路におけるパルス発生源から出力される駆動電圧を示す波形図であり、図30Bは、電子放出素子のカソード電極とアノード電極間の電圧を示す波形図である。
【図31】第5の具体例に係る駆動回路の変形例を示す構成図である。
【図32】第6の具体例に係る駆動回路を示す構成図である。
【図33】第7の具体例に係る駆動回路を示す構成図である。
【図34】図34Aは、第7の具体例に係る駆動回路におけるパルス発生源から出力される駆動電圧を示す波形図であり、図34Bは、パルス発生回路から出力される駆動電圧を示す波形図である。
【図35】第8の具体例に係る駆動回路を示す構成図である。
【図36】図36Aは、第8の具体例に係る駆動回路における第1のパルス発生源から出力される駆動電圧を示す波形図であり、図36Bは、第2のパルス発生源から出力される駆動電圧を示す波形図であり、図36Cは、第1のパルス発生回路から出力される駆動電圧を示す波形図であり、図36Dは、第2のパルス発生回路から出力される駆動電圧を示す波形図である。
【図37】本実施の形態に係る電子放出素子をディスプレイの画素に適用した場合の好ましい態様を示す説明図である。
【符号の説明】
10、10A、10B、10Ba〜10Bd…電子放出素子
12…基板 14…エミッタ部
16…カソード電極 18…スリット
20…アノード電極 22…パルス発生源
100A〜100H、100Ba、100Bb、100Ea…駆動回路
104、106、108…抵抗 110…回路
140…スイッチング素子 150…並列回路
160、160a、160b…パルス発生回路
170…第1のスイッチング回路 172…第2のスイッチング回路
T1…準備期間 T2…電子放出期間
T2a…実効電子放出期間
Claims (9)
- 誘電体にて構成されたエミッタ部と、
前記エミッタ部に接して形成された第1の電極と、
前記エミッタ部に接して形成され、前記第1の電極と共にスリットを形成する第2の電極とを有する電子放出素子において、
前記第1の電極と前記第2の電極間に駆動電圧が印加されることによって、少なくとも前記エミッタ部の前記スリットから露出する部分が分極反転されることで電子放出を行い、
前記スリットの幅が0.1μm〜50μmであり、
前記第1の電極と前記第2の電極間に前記駆動電圧が印加されることによって、少なくとも前記エミッタ部の前記スリットから露出する部分が分極反転され、この分極反転によって、前記第1の電極の周辺に双極子モーメントの正極側が配されることで、前記第1の電極から1次電子が引き出され、
前記第1の電極から引き出された1次電子が前記エミッタ部に衝突して、該エミッタ部から2次電子を放出させる駆動電圧印加手段を有することを特徴とする電子放出素子。 - 請求項1記載の電子放出素子において、
前記スリットの幅が0.1μm〜10μmであることを特徴とする電子放出素子。 - 請求項1記載の電子放出素子において、
前記スリットの幅が0.1μm〜1μmであることを特徴とする電子放出素子。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子放出素子において、
前記第1の電極及び前記第2の電極は共に、前記エミッタ部の上面に形成され、
前記スリットが空隙であることを特徴とする電子放出素子。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子放出素子において、
前記第1の電極は、前記エミッタ部の一方の側面に接して形成され、
前記第2の電極は、前記エミッタ部の他方の側面に接して形成され、
前記スリットに前記エミッタ部が存在していることを特徴とする電子放出素子。 - 請求項5記載の電子放出素子において、
前記エミッタ部が蛇行して形成されていることを特徴とする電子放出素子。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子放出素子において、
前記第1の電極と前記第2の電極間に前記駆動電圧が印加されることによって、少なくとも前記エミッタ部の前記スリットから露出する部分が分極反転され、前記第2の電極よりも電位が低い前記第1の電極の近傍から電子が放出されることを特徴とする電子放出素子。 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子放出素子において、
前記第1の電極、前記エミッタ部の前記スリットから露出する部分及び真空雰囲気の3重点を有し、
前記第1の電極のうち、3重点近傍の部分から1次電子が引き出され、
前記引き出された1次電子が前記エミッタ部に衝突して、該エミッタ部から2次電子が放出されることを特徴とする電子放出素子。 - 請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子放出素子において、
前記エミッタ部の上方のうち、少なくとも前記スリットに対向した位置に第3の電極が配置され、該第3の電極に蛍光体が塗布されていることを特徴とする電子放出素子。
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