JP3828976B2 - 液晶表示素子及びその製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子及びその製造方法に係り、特に、液晶表示素子用電極基板上に配設されるスペーサの方向と配向膜のラビング方向との関係の設定に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子の液晶セルを構成する2枚のガラス基板の間隔、即ち、セルギャップを適切な距離に設定し、かつ、各部で均一に保持することにより、適切かつ均一な液晶層の厚みを保持することは、液晶表示素子の高表示品質を実現する上で極めて重要な要素である。
【0003】
液晶セルのセルギャップを適切に設定し保持すべく2枚のガラス基板間に、配向膜形成前にフォトレジスト等により形成された角柱状やピラミッド型等のスペーサを用いることが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、配向膜形成前にフォトレジスト等により形成されたスペーサにおいても、以下のような問題がある。
【0005】
即ち、このようなスペーサは、配向膜形成前の基板上に形成されるため、スペーサ形成後に配向膜を形成し、スペーサにより凸部が生じた配向膜にラビング処理を施さなければならない。ラビング処理は、配向膜近傍の液晶分子をラビング方向に配向させるための処理であり、通常、織布、フェルト、ラバー、刷毛、ガーゼ等を用いて配向膜表面を一定方向に擦ることにより行う。従って、スペーサによる凸部が生じた配向膜を一定方向に擦ると、そのラビング方向から見た凸部の「影」になる部分には十分にラビング処理が施されず、その「影」の部分で液晶分子の配向不良による光漏れ等が発生し、表示不良領域が生ずるという問題がある。その対策として、この表示不良領域を遮光膜で覆うことも行われているが、画素開口率が低下し、表示が暗くなるという欠点がある。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、製造工程数を増加させることなく、表示性能が良く、かつ、高い歩留りを達成することができる構成の液晶表示素子及びその製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る液晶表示素子及びその製造方法は、液晶表示素子を構成する2枚の透明基板(電極基板)のうち少なくとも一方の透明基板上の画像表示領域内にあって画像を表示するために光透過率の制御を行う画素開口部以外の部分に基板間隔を設定し保持するスペーサを形成してから配向膜を形成し、基板と平行な平面内におけるスペーサの長手方向と配向膜のラビング方向とがほぼ直交するようにスペーサを配設しラビング処理を行う点に特徴がある。
【0008】
基板と平行な平面内における突起状のスペーサの長手方向がラビング方向とほぼ直交するようにスペーサを配設し、スペーサによる凸部が生じた配向膜を一定方向に擦ってラビング処理を行うことにより、そのラビング方向から見た凸部の「影」になる部分のラビング処理が不十分な領域、即ち、表示不良領域が最小限に抑制され、表示性能の高い液晶表示素子を安価に得ることができる。カラー表示型液晶表示素子の場合も、表示が明るく高品質表示のものを安価に得ることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る液晶表示素子及びその製造方法の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本発明に係る液晶表示素子を構成する電極基板の平面図、図2は、本発明に係る液晶表示素子の断面図である。図1及び図2は、アクティブマトリクス型液晶表示素子30の場合の構成を示しており、液晶表示素子用基板であるアレイ基板11及び対向基板16との間に液晶層20が挟持されている。本発明に係る液晶表示素子は、以下のように作製され構成されている。
【0011】
アレイ基板11は、透明基板上に、通常のプロセスにより成膜及びパターニングを繰り返して複数の走査線(図示せず)と複数の信号線31とを交差するように形成し、その交差部ごとにスイッチング素子であるTFT(薄膜トランジスタ)12及び画素電極13を配設して、縦横100画素、合計10000画素を有するものとする。次いで、配向膜材料としてAL−1051(商品名(日本合成ゴム(株)製))を、TFT、画素電極及び電極配線である走査線、信号線等を覆ってアレイ基板11全面に500オングストロームの厚さに塗布し、ラビング処理を行って配向膜14を形成した。
【0012】
一方、対向基板16は、以下のように作製する。最初に、透明基板上に感光性の黒色樹脂をスピンナを用いて塗布し、90℃の温度で10分間の乾燥をさせた後、所定のパターン形状のフォトマスクを用いて波長365nm、露光量300mJ/cm2 の光で露光したあとpH11.5のアルカリ水溶液により現像し、200℃の温度で60分間の焼成を行って膜厚2.0μmの遮光層17BMを格子状に形成する。次に、赤色顔料を分散させた紫外線硬化型アクリル樹脂レジストCR−2000(商品名((富士ハントテクノロジー(株)製))をスピンナにより全面に塗布し、スペーサ15、赤色着色層を配設する部分に光が照射されるようなフォトマスクを介して波長365nm、露光量100mJ/cm2 の光で露光したあと、水酸化カリウム(KOH)の1%水溶液で10秒間現像し、その部分にスペーサ15の一部を構成するスペーサ用赤色着色層15R、表示に関与する表示用赤色着色層17Rを形成する。ここでは、スペーサ15の配設箇所は、遮光層17BM上とし、この遮光層17BMは対向するアクティブマトリクス基板の配線にほぼ対応して配置されている。赤色着色層と同様に、緑色、青色各色ともスペーサ用着色層15G、15B、表示用着色層17G、17Bを形成した後、230℃の温度で1時間焼成する。ここでは、緑色、青色着色層17G、17Bの着色材料は、CG−2000、CB−2000(商品名((富士ハントテクノロジー(株)製))を用いた。
【0013】
スペーサ15は、各スペーサ用着色層15R、15G、15Bを積層することにより形成したが、その形状及び配置は、スペーサの太さがスペーサの厚さ方向にほぼ一定である柱型又はスペーサの太さがスペーサの厚さ方向に徐々に変化するピラミッド型のものを基板の所定の一辺に対し、スペーサ15の長手方向が45°の角度をなす向きとなるように配置した。ここで、スペーサ15の長手方向とは、基板に平行なスペーサの断面を横断又は縦断する線分が最長となる方向をいう。
【0014】
遮光層17BM、各着色層17R・G・B及びスペーサ15形成後、透明導電膜であるITO膜からなる共通電極18をスパッタ法により1500オングストロームの厚さに成膜する。
【0015】
さらに、共通電極18上全面に、TFTアレイ基板11上の配向膜14と同様の配向膜材料(AL−1051(商品名(日本合成ゴム(株)製)))を500オングストロームの厚さに塗布し、ラビング処理を行って配向膜21を形成した。この配向膜21のラビング方向Dは、基板の上記所定の一辺に対し135°の角度をなす向き、即ち、基板と平行な平面内におけるスペーサ15の長手方向とほぼ直交する向きとした。
【0016】
尚、本実施の形態では、スペーサの長手方向が基板の所定の一辺に対し45度の角度をなす向きとなるように配設しているが、これはラビング処理方向との関係で設定したものであり、スペーサの長手方向とラビング方向とがほぼ直交する関係になっていればよい。
【0017】
本発明に係る電極基板及び液晶表示素子並びにそれらの製造方法において、スペーサを覆って形成された配向膜のラビング方向Dと、基板と平行な平面内における当該スペーサの長手方向とがほぼ直交するように、スペーサを形成し、ラビング処理を行うこととしたのは、発明者による実験結果の分析に基づくものである。
【0018】
例えば、スペーサが4層の積層からなる柱型スペーサ(例えば、縦10μm×横20μm)の場合、基板と平行な平面内におけるスペーサの長手方向に沿ってラビング処理を行うと、スペーサの「影」となってラビング処理が不十分となり、液晶分子の配向不良による光漏れが発生する部分のスペーサからの距離の範囲は約10μm、軽度の表示不良領域となる部分のスペーサからの距離の範囲は約20μmであるのに対し、基板と平行な平面内におけるスペーサの長手方向にほぼ直交する向きにラビング処理を行うと、上記距離の範囲はそれぞれ約3μm、約7μmに縮小された。
【0019】
また、スペーサが4層の積層からなるピラミッド型スペーサであって、最上層が例えば、縦10μm×横20μmのサイズの場合においても、基板と平行な平面内におけるスペーサの長手方向に沿ってラビング処理を行うと、スペーサの「影」となってラビング処理が不十分となり、液晶分子の配向不良による光漏れが発生する部分のスペーサからの距離の範囲は約4μm、軽度の表示不良領域となる部分のスペーサからの距離の範囲は16μmであるのに対し、基板と平行な平面内におけるスペーサの長手方向にほぼ直交する向きにラビング処理を行うと、上記距離の範囲はそれぞれ約1μm、約7μmに縮小された。
【0020】
このほかにも多数のサンプルについて対照実験を行った結果、基板と平行な平面内におけるスペーサの長手方向にほぼ直交する向きにラビング処理を行うと、ほとんどすべての場合に、表示不良領域が最小限に縮小されることが判明したため、これらの実験結果に基づき、本発明に係る電極基板及び液晶表示素子並びにそれらの製造方法における条件設定を行うこととしたものである。
【0021】
さらに、配向不良領域は、スペーサの積層の形状に拘わらず最下層のスペーサパターンの大きさに影響される傾向にあることが判明した。また、スペーサの形状も、基板に平行な断面積が基板表面から離隔するに従い段階的又は連続的に減少するピラミッド型スペーサの方が、基板に平行な断面積がほぼ一定の柱型スペーサよりも、若干配向不良領域が小さい傾向にあることが判明した。
【0022】
尚、スペーサが、複数層が積層されて形成されたものであるときは、スペーサを構成する各層のうち最下層の基板と平行な平面内における長手方向が、配向膜のラビング方向Dとほぼ直交するように、スペーサを形成し、ラビング処理を行うとよい。また、スペーサは、単層で形成してもよい。
【0023】
配向膜21のラビング処理後、液晶材料注入口を除き対向基板16の周縁部に沿って接着剤19を印刷し、さらに、接着剤19の周囲の電極転移電極上に、アレイ基板11から対向基板16に電圧を印加するための電極転移材を形成した。そして、アレイ基板11上の配向膜14と対向基板16上の配向膜21とが対向し、かつ、配向膜14のラビング方向と配向膜21のラビング方向とが90°の角度をなすように、アレイ基板11と対向基板16とを対向させて接着剤を加熱して硬化させ、アレイ基板11と対向基板16とを貼り合わせた。最後に、通常の方法により、液晶材料注入口から液晶材料としてZLI−1565(商品名(E.メルク社製))にS811を0.1wt%添加したものを注入して液晶層20とし、液晶材料注入後、注入口を紫外線硬化型樹脂で封止した。
【0024】
以上のように作製したカラー用アクティブマトリクス型液晶表示素子は、コントラスト比が高く、高品質表示の画像表示を行うことができた。
【0025】
上述のように本発明は、透明基板上に形成されたスペーサの長手方向と、当該スペーサその他の配設物を覆って形成された配向膜のラビング方向との関係に関するものであり、透明基板に平行な平面内におけるスペーサの長手方向と配向膜のラビング方向とがほぼ直交する関係になっていれば、画素電極及びスイッチング素子が形成されたアレイ基板、共通電極が形成された対向基板のいずれにも適用できるものである。
【0026】
また、本発明の構成は、液晶表示素子を構成する2枚の基板のうちの一方の基板に対向電極、画素電極等が形成される横電界モードの液晶表示素子にも適用でき、この場合においても、対向電極、画素電極等が形成されたアレイ基板、電極が形成されていない対向基板のいずれにも適用することができる。
【0027】
尚、本発明に係る液晶表示素子においては、着色層は、2枚の透明基板のうちいずれの基板に形成してもよい。
【0028】
本発明に係る電極基板及び液晶表示素子並びにそれらの製造方法におけるスペーサは、上述のように、配向膜形成後の基板上に散布するスペーサではなく、配向膜形成前にフォトレジスト等により所定の位置に形成された角柱状やピラミッド型等のスペーサであるので、スペーサの配置の不均一による光漏れや表示不良も発生しない。
【0029】
【発明の効果】
本発明に係る電極基板及び液晶表示素子並びにそれらの製造方法によれば、液晶表示素子の液晶セルを構成することとなる2枚の透明基板のうち少なくとも一方の透明基板上の画像表示領域内にあって画像を表示するために光透過率の制御を行う画素開口部以外の部分に基板間隔を設定し保持すべく形成されたスペーサより上部の層として形成された配向膜のラビング方向は、透明基板に平行な平面内におけるスペーサの長手方向とほぼ直交する向きとしたので、製造工程数を増加させることなく、表示性能が良く、かつ、高い歩留りを達成することができる構成の液晶表示素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電極基板の平面図。
【図2】本発明に係る液晶表示素子の断面図。
【符号の説明】
11 アレイ基板
12 TFT(薄膜トランジスタ)
13 画素電極
14 配向膜
15 スペーサ
15R、15G、15B スペーサ用着色層
16 対向基板
17BM 遮光層
17R、17G、17B 着色層
18 対向電極(共通電極)
19 接着剤
20 液晶層
21 配向膜
30 液晶表示素子
31 信号線
D 配向膜のラビング方向
Claims (10)
- 2枚の透明基板と、
前記2枚の透明基板のうちいずれか一方の透明基板上の画像表示領域内にあって画像を表示するために光透過率の制御を行う画素開口部以外の部分に基板間隔を設定し保持すべく配設されたスペーサと、
前記2枚の透明基板間に挟持された液晶層とからなる液晶表示素子において、
前記スペーサが配設された透明基板上に前記スペーサより上部の層として形成され、前記スペーサが配設された透明基板に平行な平面内における前記スペーサの長手方向とほぼ直交する向きにラビング処理が施された配向膜を備えたことを特徴とする液晶表示素子。 - 請求項1に記載の液晶表示素子において、
前記スペーサは、前記透明基板に平行な断面積が前記透明基板表面から離隔するに従い段階的又は連続的に減少するものであることを特徴とする液晶表示素子。 - 請求項1又は2のいずれかに記載の液晶表示素子において、
前記スペーサは、複数層が積層されたものであることを特徴とする液晶表示素子。 - 請求項3に記載の液晶表示素子において、
前記スペーサが配設された透明基板上には着色層が配設され、
前記スペーサは、前記着色層が積層されたものであることを特徴とする液晶表示素子。 - 請求項3又は4のいずれかに記載の液晶表示素子において、
前記配向膜の前記ラビング処理の向きは、前記透明基板に平行な平面内における前記スペーサの最下層の長手方向とほぼ直交する向きであることを特徴とする液晶表示素子。 - 液晶表示素子の液晶セルを構成する予定の2枚の透明基板の基板間隔を設定し保持すべく前記2枚の透明基板のうちいずれか一方の透明基板上の画像表示領域内にあって画像を表示するために光透過率の制御を行う画素開口部以外の部分にスペーサを形成するスペーサ形成工程と、
画像を表示するために電圧が印加される透明電極を前記2枚の透明基板のうちの少なくともいずれか一方の透明基板上に形成する電極形成工程と、
前記スペーサより上部の層として配向膜を前記スペーサが形成された透明基板上に形成する配向膜形成工程と、
前記スペーサが形成された透明基板に平行な平面内における前記スペーサの長手方向とほぼ直交する向きに、前記配向膜に対してラビング処理を行うラビング処理工程と、
前記2枚の透明基板を貼り合わせて前記液晶セルを組み立て、かつ、前記液晶セルに液晶材料を封入する液晶セル組立工程とを備えたことを特徴とする液晶表示素子の製造方法。 - 請求項6に記載の液晶表示素子の製造方法において、
前記スペーサは、前記スペーサが形成された透明基板に平行な断面積が当該透明基板表面から離隔するに従い段階的又は連続的に減少するものであることを特徴とする液晶表示素子の製造方法。 - 請求項6又は7のいずれかに記載の液晶表示素子の製造方法において、
前記スペーサは、複数層が積層されたものであることを特徴とする液晶表示素子の製造方法。 - 請求項8に記載の液晶表示素子の製造方法において、
前記スペーサが配設された透明基板上には着色層が配設され、
前記スペーサは、前記着色層が積層されたものであることを特徴とする液晶表示素子の製造方法。 - 請求項8又は9のいずれかに記載の液晶表示素子の製造方法において、
前記配向膜に対する前記ラビング処理の向きは、前記スペーサが形成された透明基板に平行な平面内における前記スペーサの最下層の長手方向とほぼ直交する向きであることを特徴とする液晶表示素子の製造方法。
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