JP3827485B2 - 測定用伝送線路基板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、信号導体線と、その信号導体線の両側に形成されたグランド導体を具備する接続端子を有し、特にミリ波帯領域の高周波用半導体素子を備えた表面実装型パッケ−ジ等の高周波部品の特性を測定するのに用いる測定用伝送線路基板とそれを用いた高周波部品の特性測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高度情報化時代を迎え、情報伝達に用いられる電波は1〜30GHzのマイクロ波領域から、更に30〜300GHzのミリ波領域の周波数まで活用することが検討されており、例えば、オフィス内高速無線データ通信システム(無線LAN)のようなミリ波の電波を用いた応用システムも提案されるようになっている。
【0003】
かかる応用システム等に用いられる高周波用半導体素子(以下、単に高周波素子という)を収納するパッケージには、従来、高周波信号の伝送損失を小さく抑えるために金属製枠体にセラミック製高周波用接続端子を接合したいわゆるメタルパッケージが用いられている。図5は、従来のメタルパッケージに高周波素子を収納して外部回路基板に実装した実装構造を示す平面図(a)とその断面図(b)である。なお図5(a)では蓋体は省略した。
【0004】
図5によれば、金属製の基板31および蓋体32からなるメタルパッケージ33の一部に、セラミック基板34に信号導体線35を形成した接続端子36が取り付けられており、信号導体線35は、メタルパッケージ33内に搭載された高周波素子37とリボンなどによって電気的に接続されている。そして、メタルパッケージ33は、ベース基板38の表面にネジ39等によって固定され、ベース基板38の表面において、誘電体基板40の表面に信号導体線41が形成された回路基板42とは、接続端子36の信号導体線35とリボンやワイヤ等によって電気的に接続されている。
【0005】
このようなメタルパッケージにおいては、その組み立てが複雑であることから、モジュール製造時の量産性及び低コスト化に問題があった。
【0006】
このような問題を解消するために、誘電体基板内部をスルーホール導体等を用いて信号線路をパッケージの裏面に引き出して接続端子を形成し、はんだリフローによって外部回路基板の線路に表面実装することが提案されている。
【0007】
図6は、このようなスルーホール導体を用いた高周波パッケージPの概略を説明するための図である。この図6によれば、概略断面図(a)に示すように、誘電体基板51と蓋体52からなるキャビティ内に高周波素子53が収納されており、また、誘電体基板51の表面には一端が高周波素子53とリボンなどにより接続された信号導体線54が形成され、また、誘電体基板51の内部には、図6(b)に示すようなパターンのグランド層55が形成されている。
【0008】
そして、信号導体線54の他端は、誘電体基板51を貫通し、グランド層55に接触することなく形成されたスルーホール導体56によって誘電体基板51の裏面に導出され、誘電体基板51の裏面に形成された信号導体線57と電気的に接続されている。
【0009】
誘電体基板51の裏面においては、図6(c)に示すように、信号導体線57の端部には、接続端子部Sが形成されており、この接続端子部Sにおいて信号導体線57の両側に一対のグランド導体58が設けられており、このグランド導体58は、ビアホール導体59によって誘電体基板51内部のグランド層55と電気的に接続されている。
【0010】
一方、このパッケージPを実装する外部回路基板60においては、その内部にグランド層61が形成されており、その表面には、信号導体線62が形成され、パッケージPとの接続部Tにおいては、その両側にグランド導体63が形成されており、グランド層61とビアホール導体64によってそれぞれ電気的に接続されている。
【0011】
そして、上記パッケージPは、外部回路基板60の接続部Tに対して、はんだ65によって、パッケージPの接続端子Sおよび外部回路基板60の接続部Tの信号導体線57と62、グランド導体58と63同士をそれぞれ電気的に接続することにより実装される。かかる構造においては、図5のメタルパッケージに比較してパッケージPと外部回路基板30との機械的接続と電気的接続をリフローで一括して行うことが可能で、モジュール製造時の量産性向上及び低コスト化が可能である。
【0012】
このようなパッケージPはその内部に高周波素子53を搭載、封止した後、出荷の前に出荷検査測定を行う必要がある。特に高周波特性は高周波素子53の搭載状態や接続状態で大きく変化するため、パッケージング後の高周波特性の測定は必要不可欠である。また、このようなパッケージPにおける高周波特性、特に信号周波数が30GHz以上のミリ波帯の測定においては、高周波用コプレーナプローブが用いられる。
【0013】
この高周波用コプレーナプローブによるパッケージPの特性測定にあたっては、通常、図7に示すように、パッケージPの裏面における接続端子Sの信号導体線57とグランド導体59、59にプローブ65の信号線66とグランド線67、67とを押し当てて測定が行われる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、高周波用コプレーナプローブを用いた図7に示すような測定においては、パッケージP裏面の接続端子Sへのプローブ65の押し当て位置、押し当て圧力によってその測定値が大きく変化してしまうために、その位置や圧力を精密にコントロールする必要が有り、個々のパッケージの測定に長時間を要し、複数のパッケージの測定を自動化することが困難であった。
【0015】
また、測定にあたり、コプレーナプローブ65と接続端子Sとの接触状態を均一とし正確な測定を行うためにコプレーナプローブ65先端をパッケージPの接続端子Sに接触させ、さらにプローブ65が撓む程度に接続端子Sに押し当てて、このプローブ65先端を接続端子S上で一定距離滑らせる必要があり、測定の度にプローブ65先端が摩耗し、特に被測定物がセラミック基板の場合にはその摩耗が著しく、プローブ65の寿命が短くなりやすいという問題があった。
【0016】
従って、本発明の目的は、高周波素子を収納した表面実装型パッケージ等の高周波部品の高周波特性を効率良く、且つ低コストに評価できる測定用伝送線路基板とそれを用いた高周波部品の特性測定方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題に鑑み、表面実装型パッケージの高周波特性検査の自動化が可能で、プローブの摩耗が小さい評価方法について検討を重ねた結果、誘電体基板の表面にマイクロストリップ線路、グランド付きコプレーナ線路、コプレーナ線路などの高周波伝送線路を形成し、その一方の端部にコプレーナプローブを押し当てて固定するための端子部を形成し、他端に表面実装型パッケージ等の高周波部品の接続端子を押し当てて随時測定することにより、上記目的が達成されることを見いだしたものである。
【0018】
即ち、本発明の測定用伝送線路基板は、誘電体基板該誘電体基板表面に形成された信号導体線と、前記誘電体基板の内部あるいは裏面に前記信号導体線と平行に形成されたグランド層とからなるマイクロストリップ線路を一対具備する周波数30GHz以上の高周波信号伝送用の測定用伝送線路基板であって、前記一対のマイクロストリップ線路のそれぞれの一方の端部に、前記信号導体線と、その両側に形成された第1のグランド導体と、該第1のグランド導体と前記グランド層とを電気的に接続するための第1の接続導体とを具備する第1の端子部を形成し、該第1の端子部にコプレーナプローブを押し当て固定するとともに、前記一対のマイクロストリップ線路のそれぞれの他方の端部に、前記信号導体線と、その両側に形成された第2のグランド導体と、該第2のグランド導体と前記グランド層とを電気的に接続するための第2の接続導体とを具備し、且つ前記信号導体線上および前記一対の第2のグランド導体上に、高周波部品を離脱自在に搭載するための導電性突起部を取着してなる第2の端子部を形成し、前記一対のマイクロストリップ線路を前記第2の端子部同士が対向するように配置してなり、前記一対のマイクロストリップ線路のそれぞれの前記第2の端子部の延長線上に空洞部を設けて誘電体基板端部を形成し、該誘電体基板端部と前記第2の接続導体との距離を前記誘電体基板中の信号波長の0.3倍以下としたことを特徴とするものである。
【0019】
かかる測定用伝送線路基板においては、前記第1の端子部および/または前記第2の端子部における前記信号導体線幅を前記マイクロストリップ線路の信号導体線幅より小さくすることによって、端子部の電磁界分布をコプレーナ線路に近い分布に変換して、コプレーナプローブや被測定物である高周波部品のコプレーナ端子との高周波信号の反射を低減してさらに正確な測定が可能となる。
【0020】
また、他の測定用伝送線路基板は、誘電体基板該誘電体基板表面に形成された信号導体線と、前記誘電体基板の内部あるいは裏面に前記信号導体線と平行に形成されたグランド層と、前記信号導体線の両側の前記誘電体基板表面に形成された一対のグランド導体とからなるグランド付きコプレーナ線路を一対具備する周波数30GHz以上の高周波信号伝送用の測定用伝送線路基板であって、前記一対のグランド付きコプレーナ線路のそれぞれの一方の端部に、前記信号導体線と、その両側に形成された第1のグランド導体と、該第1のグランド導体と前記グランド層とを電気的に接続するための第1の接続導体とを具備する第1の端子部を形成し、該第1の端子部にコプレーナプローブを押し当て固定するとともに、前記一対のグランド付きコプレーナ線路のそれぞれの他方の端部に、前記信号導体線と、その両側に形成された第2のグランド導体と、該第2のグランド導体と前記グランド層とを電気的に接続するための第2の接続導体とを具備し、且つ前記信号導体線上および前記一対の第2のグランド導体上に、高周波部品を離脱自在に搭載するための導電性突起部を取着してなる第2の端子部を形成し、前記一対のグランド付きコプレーナ線路を前記第2の端子部同士が対向するように配置してなり、前記一対のグランド付きコプレーナ線路のそれぞれの前記第2の端子部の延長線上に空洞部を設けて誘電体基板端部を形成し、該誘電体基板端部と前記第2の接続導体との距離を前記誘電体基板中の信号波長の0.3倍以下としたことを特徴とするものである。
【0021】
なお、マイクロストリップ線路およびグランド付きコプレーナ線路を形成した上記の測定用伝送線路基板においては、それぞれの前記第2の端子部において、前記グランド層の少なくとも、前記第2の接続導体に挟まれ、且つ前記信号導体線と対向する領域を非グランド層形成領域とすることによって、測定時の高周波部品のグランドと前記グランド層との重なりによって発生する平行平板モードを低減しより正確な測定が可能となる。
【0022】
また、前記第2の端子部が前記誘電体基板の端部に形成されており、前記第2の接続導体と前記誘電体基板端部との距離を該誘電体基板中の信号波長の0.3倍以下とすることにより、前記接続導体と前記誘電体基板端部との間で発生する共振周波数を信号周波数よりも高くすることができ、共振の影響のない測定が可能となる。
【0023】
さらに、前記第2の端子部において、前記第2の接続導体と前記信号導体線中心との距離を該誘電体基板中の信号波長の0.25倍以下とすることにより、信号導体を伝送する信号電流の位相と,グランド層から接続導体を経由してグランド導体に伝送するグランド電流の位相との差を小さくでき、位相差による反射を小さくできることから、より正確な測定が可能となる。
【0024】
さらに、本発明の他の測定用伝送線路基板は、誘電体基板と、該誘電体基板表面に形成された信号導体線、該信号導体線の両側の前記誘電体基板表面に形成された一対のグランド導体とからなるコプレーナ線路を一対具備する周波数30GHz以上の高周波信号伝送用の測定用伝送線路基板であって、前記一対のコプレーナ線路のそれぞれの一方の端部に第1の端子部を形成し、該第1の端子部にコプレーナプローブを押し当て固定するとともに、前記一対のコプレーナ線路のそれぞれの他方の端部に、前記信号導体線および前記一対のグランド導体上に、高周波部品を離脱自在に搭載するための導電性突起部を取着してなる第2の端子部を形成し、前記一対のコプレーナ線路を前記第2の端子部同士が対向するように配置してなり、前記一対のコプレーナ線路のそれぞれの前記第2の端子部の延長線上に空洞部を設けて誘電体基板端部を形成し、該誘電体基板端部と前記第2の接続導体との距離を前記誘電体基板中の信号波長の0.3倍以下としたことを特徴とするものである。
【0025】
また、上記の測定用伝送線路基板を用いて、高周波部品の特性を測定するにあたり、前記第1の端子部にコプレーナプローブを押し当て固定したまま、前記第2の端子部に対して高周波部品に形成されたコプレーナ端子を順次押し当てて、複数の前記高周波部品の高周波特性を繰り返し測定することを特徴とするものである。
【0027】
【作用】
本発明によれば、上記のように測定用伝送線路基板の一方の端子部にコプレーナプローブを押し当て固定したまま、他方の端子部に表面実装型パッケージ等の高周波部品のコプレーナ端子を押し当てて多数の表面実装型パッケージの高周波特性を繰り返し評価することにより、プローブの押し当て位置、押し当て圧力の調整は測定開始時に行うのみで、それ以後は、プローブの押し当て条件を固定化することができ、後は表面実装型パッケージ等の高周波部品のコプレーナ端子を測定用伝送線路基板の他方の端子部に順次押し当てて測定すれば良く、例えばチップマウンタのような装置を応用すれば、自動化が可能で効率的な測定が可能になる。
【0028】
また、プローブの摩耗は、測定用伝送線路基板の一方の端部に測定開始時に発生するのみであるため、プローブ先端の摩耗を低減でき、プローブの長寿命化を図ることができ、測定のコストも低減できる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の測定用伝送線路基板を図面に基づき詳述する。
図1は、本発明の測定用伝送線路基板を用いた高周波部品の特性測定方法の一例を説明するための概略断面図(a)、測定用伝送線路基板の表面のパターン図(b)および測定用伝送線路基板のグランド層のパターン図(c)である。
【0030】
図1において、本発明の測定用伝送線路基板Aによれば、誘電体基板1の表面に信号導体線2が形成され、また、誘電体基板1の内部には、信号導体線2と平行にグランド層3が形成されており、かかる信号導体線2およびグランド層3によってマイクロストリップ線路構造の高周波伝送線路Xが形成されている。
【0031】
そして、この高周波伝送線路Xの一端には、信号導体線2と、その両側に一対のグランド導体4が形成され、さらにグランド導体4とグランド層3とを電気的に接続するための接続導体5とからなる、コプレーナプローブ9を接触させるためのプローブ用端子部Yが形成されている。
【0032】
また、高周波伝送線路Xの他方の端部には、信号導体線2と、その両側に一対のグランド導体6が形成され、さらにグランド導体6とグランド層3とを電気的に接続するための接続導体7とを具備し、且つ信号導体線2上および一対のグランド導体6上に、導電性突起部8を取着してなる部品用端子部Zが形成されている。
【0033】
また、図1の測定用伝送線路基板Aによれば、誘電体基板1に対して、上記プローブ用端子部Yおよび部品用端子部Zを両端に有する高周波伝送線路Xが所定の間隔をおいてそれぞの高周波伝送線路Xの部品用端子部Zが互いに対向するように2つ設けられている。
【0034】
一方、高周波特性を評価する高周波部品としては、特に表面実装型のパッケージのように、誘電体基板の底面に、コプレーナ線路構造、即ち、信号導体線とその両側にグランド導体を具備する3端子型の接続端子を具備する高周波部品が挙げられるが、この図1に示すように、図6(a)〜(c)に示したようなパッケージPの特性を評価する場合について好適である。
【0035】
本発明によれば、上記のようなパッケージPの周波数特性を評価するにあたり、図1(a)に示すように、測定用伝送線路基板Aに対して、まず、測定プローブ9、9’をそれぞれのプローブ用端子部Y、Y’に押し当て固定する。測定プローブは、x、y、z方向の微動装置と、左右の傾きを調整する回転装置を有するホルダーに取り付けられており、測定プローブの3本のプローブ線をそれぞれプローブ用端子部Y、Y’の信号導体線およびグランド導体に均等に接触させ、さらにプローブ線が撓む程度に接続端子に押し当てて、このプローブ先端をプローブ用端子部Y、Y’上で一定距離滑らせ、その状態にて測定プローブを位置固定する。
【0036】
そして、パッケージPの入力用の接続端子部Sおよび出力用接続端子部S’を測定用伝送線路基板Aの部品用端子部Z,Z’の導電性突起8、8’に対して押し当てて、パッケージPの高周波特性を評価する。そして、第1番目のパッケージの測定を終了した後、次に、プローブ9、9’のプローブ用端子部Y,Y’との取付状態を変えることなく、次のパッケージの接続端子部S、S’を部品用端子部Z,Z’の導電性突起8,8’に押し当てて同様に測定を行う。このような動作を繰り返すことによって、プローブ9、9’のプローブ用端子部Y,Y’との取付状態を変えることなく複数のパッケージの高周波特性を順次測定を行うことができる。
【0037】
図1の測定用伝送線路基板においては、高周波伝送線路Xとしてマイクロストリップ線路を具備した場合について説明したが、測定用伝送線路基板における高周波伝送線路としては、上記以外にグランド付きコプレーナ線路、コプレーナ線路によって形成することも可能である。
【0038】
図2は、測定用伝送線路基板における高周波伝送線路としてグランド付きコプレーナ線路を用いた場合の基板表面のパターン図である。なお、図中、図1の測定用伝送基板Aの各要素と同じものについては、同一の符号を記した。
【0039】
この図2の測定用伝送線路基板Bによれば、誘電体基板1の表面には信号導体線2が形成され、信号導体線2の両側には、一定の間隔をもって一対のグランド導体11が信号導体線2と平行に形成されている。さらに、誘電体基板1の内部にも、図1(c)と同様に信号導体線2と平行にグランド層3が形成されており、かかる信号導体線2、グランド導体11およびグランド層3によってグランド付きコプレーナ線路構造の高周波伝送線路X2 が形成されている。
【0040】
そして、この高周波伝送線路X2 の一端においては、信号導体線2と、グランド導体11と、グランド導体11と、グランド導体11とグランド層3とを電気的に接続するための接続導体5とからなるコプレーナプローブ9を接触させるためのプローブ用端子部Y2 が形成されている。
【0041】
また、高周波伝送線路X2 の他方の端部には、信号導体線2と、グランド導体11と、さらにグランド導体11とグランド層3とを電気的に接続するための接続導体7とを具備し、且つ信号導体線2上および一対のグランド導体11上に、導電性突起部8を取着してなる部品用端子部Z2 が形成されている。
【0042】
かかる構造の測定用伝送線路基板Bに対しても、図1に示したものと同様にしてコプレーナプローブ9およびパッケージPを接続して、パッケージPの高周波特性を測定することができる。
【0043】
は、測定用伝送線路基板における高周波伝送線路としてコプレーナ線路を用いた場合の平面図である。なお、図中、図1の測定用伝送基板Aの各要素と同じものについては、同一の符号を記した。
【0044】
この図の測定用伝送線路基板Cによれば、誘電体基板1の表面には信号導体線2が形成され、信号導体線2の両側には、一定の間隔をもって一対のグランド導体11が信号導体線2と平行に形成されており、かかる信号導体線2、グランド導体11を具備するコプレーナ線路構造の高周波伝送線路X3が形成されている。
【0045】
そして、この高周波伝送線路X3 の一端においては、信号導体線2と、グランド導体11とからなるコプレーナプローブ9を接触させるためのプローブ用端子部Y3 が形成されている。また、高周波伝送線路X3 の他方の端部には、信号導体線2と、グランド導体11とを具備し、且つ信号導体線2上および一対のグランド導体11上に、導電性突起部8を取着してなる部品用端子部Z3 が形成されている。
【0046】
かかる構造の測定用伝送線路基板Cに対しても、図1に示したものと同様にしてコプレーナプローブ9およびパッケージPを接続して、パッケージP等の高周波部品の高周波特性を測定することができる。
【0047】
上記の測定用伝送線路基板A〜Cにおいて、高周波伝送線路Xがマイクロストリップ線路構造やグランド付きコプレーナ線路構造のように信号導体線2に対向するグランド層3を有する基板A,Bにおいて、図1(c)に示すように、グランド層3の一対のビアホール導体7によって挟まれ、且つ信号導体線2と対向する領域aを非グランド層形成領域とすることにより、測定用伝送線路基板A、Bの部品用端子部Zに被測定パッケージPを押し当てた場合に、被測定パッケージPのグランド層と測定用伝送線路基板A、Bのグランド層3との重なりが小さくなり、2つのグランド層が重なることにより生じる並行平板モードが発生しにくくなるために表面実装型パッケージの高周波特性を良好に測定することが可能となる。なお、プローブ用端子部Y側のグランド層3もこれと同様な構造とすることが望ましい。
【0048】
また、マイクロストリップ線路構造およびグランド付きコプレーナ線路構造の高周波伝送線路X1 、X2 を具備する測定用伝送線路基板A、Bの部品用端子部Zの接続導体7,7’と信号導体線2、2’中心との距離Gを誘電体基板1中の信号波長λgの0.25倍以下にすることにより、部品用端子部Zでの信号電流とグランド電流との経路差を小さくし、位相差を小さくして高周波信号の伝送を良好にし、表面実装型パッケージの高周波特性をさらに良好に測定することが可能となる。なお、プローブ用端子部Y側の接続導体線5、5’もこれと同様な構造とすることが望ましい。
【0049】
さらに、測定伝送線路基板A〜Cの部品用端子部Zの延長線上に空洞部10を設けて誘電体基板1に端部bを形成し、接続導体7,7’と端部bとの距離Lを誘電体基板1中の信号波長λgの0.3倍以下にすることにより、接続導体7、7’と端部bとの間で発生する共振を抑制することが可能で、表面実装型パッケージの高周波特性をさらに良好に測定することが可能となる。
【0050】
【実施例】
本発明の測定用伝送線路基板を用いて、これに評価用基板を当接して高周波伝送特性を測定した。図4に測定時の概略断面図(a)、評価用基板21表面のパターン図(b)を示した。
【0051】
評価用基板21表面には信号導体線22が形成され、評価用基板21内部には信号導体線22と平行にグランド層23が形成されており、信号導体線22とグランド層23でマイクロストリップ線路24が構成されている。また、信号導体線22両端の両側にはグランド導体25が形成され、このグランド導体25は接続導体26でグランド層23と電気的に接続されている。信号導体線22とグランド導体25で接続端子27が構成されている。
【0052】
次に、この評価用基板21を用いて以下の種々の方法で77GHzにおける高周波特性を評価した。
【0053】
▲1▼ 測定用伝送線路基板による測定
本発明の図1(b)(c)に示した測定用伝送線路基板Aのプローブ用端子Y、Y’にそれぞれコプレーナプローブ9を微動装置を用いて調整して押し当て固定したまま、上記評価用基板21を測定用伝送線路基板Aの部品用端子部Zの突起部8に評価用基板21の接続端子27を当接して77GHzにおける伝送特性を測定した。また、図2、図3の測定用伝送線路基板B、Cを用いて同様に測定した。
【0054】
また、図1(b)(c)の構造の測定用伝送線路基板において、部品用端子部Zのグランド層に非グランド形成領域を設けない測定用伝送線路基板D,部品用端子部Zの延長線上に空洞を設け接続導体7と端部aとの距離Lを誘電体基板1中の信号波長λgの0.3倍にした測定用伝送線路基板E、
接続導体7と信号導体線中心との距離Gを誘電体基板1中の信号波長λgの0.25倍にした測定用伝送線路基板Fを用いて同様の測定を行った。
【0055】
▲2▼ 評価用基板単体の測定
評価用基板21の接続端子27にコプレーナプローブを直接接触させて同様に77GHzにおける伝送特性を測定した。
【0056】
▲3▼ 評価用基板の実装後の測定
上記の評価用基板21を実際にアルミナ基板からなる外部回路基板に対して図6に示すように共晶はんだを用いて実装し、外部回路基板に対してコプレーナプローブを接触させて評価用基板21の実装時の伝送特性を評価した。
【0057】
また、評価用基板と測定用伝送線路基板を用いた方法でそれぞれ50個ずつ測定を行い、測定に要した時間を計測した。
【0058】
なお、評価用基板および測定用伝送線路基板はいずれも、誘電率8.9のアルミナ焼結体を誘電体基板として形成し、信号導体線、グランド層、グランド導体、接続導体は、いずれもタングステンメタライズによって誘電体基板と同時焼成により形成した。また、表面に露出している信号導体線、グランド導体の表面には金メッキを施した。また、測定用伝送線路の突起部はいずれも金ボールを金−錫ロウ材で接合形成した
【0059】
【表1】
Figure 0003827485
【0060】
表1の結果から、評価用基板単体の特性(▲2▼)と実際に実装した場合の特性(▲3▼)で挿入損失が異なる。これは評価用基板の接続端子を実装時に挿入損失が最も小さくなる様に設計したためである。パッケージの検査では、実装後の特性と検査での特性との相関が取れていれば良く、挿入損失の絶対値の差は問題にならない。
【0061】
本発明の測定用伝送線路基板A〜Fを用いた測定(▲1▼)では、挿入損失は評価用基板単体の場合(▲2▼)と、実装した場合(▲3▼)の間の値になり、検査が可能なことを確認した。測定に要する時間は評価用基板単体の場合が120分間であるのに対し、本発明の測定用伝送線路基板を用いた場合8分間であり、圧倒的に短い時間で検査が可能であることがわかる。
【0062】
50個のパッケージを測定するには、パッケージ単体の場合、プローブ先端を接続端子上で合計50回往復させる必要があるが、本発明の測定治具を用いた場合、検査開始時と検査終了時を合わせて1往復させれば良く、プローブの摩耗も小さく、検査のコストを小さくすることができる。
【0063】
【発明の効果】
以上詳述した通り、高周波素子を収納した表面実装型パッケージ等の多くの高周波部品の高周波特性をそれぞれ測定するにあたり、本発明の測定用伝送線路基板を用いることにより、測定用伝送線路の一方の端子部にコプレーナプローブを押し当て固定したまま、他方の端子部に高周波部品のコプレーナ端子を押し当てて高周波特性を繰り返し評価することができるために、プローブの押し当て条件等の変化による測定した特性値のばらつきが低減され、表面実装型配線基板の高周波特性を効率良く測定でき、また、低コストに測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の測定用伝送線路基板を用いた高周波部品の特性測定方法の一例を説明するための(a)概略断面図、(b)測定用伝送線路基板表面のパターン図、(c)測定用伝送線路基板内部のグランド層のパターン図および(d)部品用端子部の拡大平面図である。
【図2】本発明の測定用伝送線路基板の他の例として、高周波伝送線路がグランド付きコプレーナ線路構造の場合の基板表面のパターン図である。
【図3】本発明の測定用伝送線路基板の他の例として、高周波伝送線路がコプレーナ線路構造の場合の基板表面のパターン図である。
【図4】本発明の実施例における評価方法と評価用基板を説明するための(a)概略断面図および(b)評価用基板表面のパターン図である。
【図5】従来のメタルパッケージの構造を説明するための(a)平面図、(b)断面図を示す。
【図6】表面実装型高周波用パッケージの構造を説明するための(a)概略断面図、(b)グランド層のパターン図、(c)誘電体基板裏面のパターン図、(d)パッケージを実装する外部回路基板のパターン図である。
【図7】図6の表面実装型高周波用パッケージの高周波特性を評価する場合の方法を説明するための図である。
【符号の説明】
1 誘電体基板
2 信号導体線
3 グランド層
4,6 グランド導体
5,7 接続導体
8 導電性突起部
9 測定用プローブ
X 高周波伝送線路
Y プローブ用端子部
Z 部品用端子部

Claims (6)

  1. 誘電体基板と、該誘電体基板表面に形成された信号導体線と、前記誘電体基板の内部あるいは裏面に前記信号導体線と平行に形成されたグランド層とからなるマイクロストリップ線路を一対具備する周波数30GHz以上の高周波信号伝送用の測定用伝送線路基板であって、
    前記一対のマイクロストリップ線路のそれぞれの一方の端部に、前記信号導体線と、その両側に形成された第1のグランド導体と、該第1のグランド導体と前記グランド層とを電気的に接続するための第1の接続導体とを具備する第1の端子部を形成し、該第1の端子部にコプレーナプローブを押し当て固定するとともに、
    前記一対のマイクロストリップ線路のそれぞれの他方の端部に、前記信号導体線と、その両側に形成された第2のグランド導体と、該第2のグランド導体と前記グランド層とを電気的に接続するための第2の接続導体とを具備し、且つ前記信号導体線上および前記一対の第2のグランド導体上に、高周波部品を離脱自在に搭載するための導電性突起部を取着してなる第2の端子部を形成し
    前記一対のマイクロストリップ線路を前記第2の端子部同士が対向するように配置してなり、
    前記一対のマイクロストリップ線路のそれぞれの前記第2の端子部の延長線上に空洞部を設けて誘電体基板端部を形成し、該誘電体基板端部と前記第2の接続導体との距離を前記誘電体基板中の信号波長の0.3倍以下としたことを特徴とする測定用伝送線路基板。
  2. 前記第1の端子部および/または前記第2の端子部における前記信号導体線幅を前記マイクロストリップ線路の信号導体線幅より小さくしたことを特徴とする請求項1記載の測定用伝送線路基板。
  3. 誘電体基板と、該誘電体基板表面に形成された信号導体線と、前記誘電体基板の内部あるいは裏面に前記信号導体線と平行に形成されたグランド層と、前記信号導体線の両側の前記誘電体基板表面に形成された一対のグランド導体とからなるグランド付きコプレーナ線路を一対具備する周波数30GHz以上の高周波信号伝送用の測定用伝送線路基板であって、
    前記一対のグランド付きコプレーナ線路のそれぞれの一方の端部に、前記信号導体線と、前記一対のグランド導体と、該一対のグランド導体と、前記グランド層とを電気的に接続するための第1の接続導体とを具備する第1の端子部を形成し、該第1の端子部にコプレーナプローブを押し当て固定するとともに、
    前記一対のグランド付きコプレーナ線路のそれぞれの他方の端部に、前記信号導体線と、前記一対のグランド導体と、該一対のグランド導体と前記グランド層とを電気的に接続するための第2の接続導体とを具備し、且つ前記信号導体線上および前記一対のグランド導体上に、高周波部品を離脱自在に搭載するための導電性突起部を取着してなる第2の端子部を形成し
    前記一対のグランド付きコプレーナ線路を前記第2の端子部同士が対向するように配置してなり、
    前記一対のグランド付きコプレーナ線路のそれぞれの前記第2の端子部の延長線上に空洞部を設けて誘電体基板端部を形成し、該誘電体基板端部と前記第2の接続導体との距離を前記誘電体基板中の信号波長の0.3倍以下としたことを特徴とする測定用伝送線路基板。
  4. 前記第2の端子部において、前記グランド層の少なくとも、前記第2の接続導体に挟まれ、且つ前記信号導体線と対向する領域を非グランド層形成領域としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の測定用伝送線路基板。
  5. 前記第2の端子部において、前記第2の接続導体と前記信号導体線中心との距離を該誘電体基板中の信号波長の0.25倍以下としたことを特徴とする請求項1乃至のいずれか記載の測定用伝送線路基板。
  6. 誘電体基板と、該誘電体基板表面に形成された信号導体線と、該信号導体線の両側の前記誘電体基板表面に形成された一対のグランド導体とからなるコプレーナ線路を一対具備する周波数30GHz以上の高周波信号伝送用の測定用伝送線路基板であって、
    前記一対のコプレーナ線路のそれぞれの一方の端部に第1の端子部を形成し、該第1の端子部にコプレーナプローブを押し当て固定するとともに、
    前記一対のコプレーナ線路のそれぞれの他方の端部に、前記信号導体線および前記一対のグランド導体上に、高周波部品を離脱自在に搭載するための導電性突起部を取着してなる第2の端子部を形成し
    前記一対のコプレーナ線路を前記第2の端子部同士が対向するように配置してなり、
    前記一対のコプレーナ線路のそれぞれの前記第2の端子部の延長線上に空洞部を設けて誘電体基板端部を形成し、該誘電体基板端部と前記第2の接続導体との距離を前記誘電体基板中の信号波長の0.3倍以下としたことを特徴とする測定用伝送線路基板。
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