JP3826987B2 - エステルシラン化合物のエステル交換法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エステルシラン化合物とアルコール類との反応によるエステル交換法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エステルシラン化合物は、シランカップリング剤や建材の表面処理剤等、様々な面で有用な化合物である。これらエステルシラン化合物の性質、例えば、加水分解速度や基材との反応性などは、エステルシラン化合物のアルコキシ基の長さに大きく依存する。そのため、多種多様なエステルシラン化合物を平易に合成する技術の出現が望まれる。
【0003】
従来、エステルシラン化合物のエステル交換反応としては、金属アルコラートを触媒として用いる方法が知られている。エステル交換法は、クロロシラン類とアルコール類との反応によるエステルシランの合成とは異なり、塩酸や塩酸塩の生成を伴わず安価で有用な方法であるが、一般に反応性が低く、特に嵩高い置換基を有するエステルシラン化合物やアルコール類では、エステル交換反応が極めて進行しにくく、平衡状態に達するまでに極めて長い時間を要するという問題点がある。また、一般にエステル交換法では、反応系よりアルコールを抜き出し、平衡状態を生成系にずらすことにより反応を完結させる。しかし、平衡状態に達するまでに長時間を要する場合、反応を完結させるために時間がかかり、かつ、大量のアルコールの抜き出しが必要となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決したもので、エステルシラン化合物とアルコール類とのエステル交換反応を速やかに行うことができるエステルシラン化合物のエステル交換法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、エステルシラン化合物とアルコール類とをエステル交換させる場合、触媒として金属アルコラートを加え、補助触媒としてポリエーテル化合物を用いることにより、エステル交換反応が活性化し、より短時間で平衡状態に到達し、効率よく反応を行うことができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
即ち、本発明は、下記一般式(1)
R1 nSi(OCH3)4-n (1)
(式中、R1は1級、2級又は3級の炭素数1〜12の置換又は非置換の1価炭化水素基、nは0〜3の整数である。)
で表わされるエステルシラン化合物と下記一般式(2)
R2OH (2)
(式中、R2は1級、2級又は3級の炭素数2〜10のアルキル基である。)
とアルコールとをエステル交換反応させるに際し、下記一般式(3)
R3OM (3)
(式中、R3は1級、2級又は3級の炭素数1〜8のアルキル基を示し、MはLi,Na又はKである。)
で表される金属アルコラート及び環状ポリエーテル化合物又は非環状ポリエーテルアミン化合物の存在下にエステル交換反応を行うことを特徴とするエステルシラン化合物のエステル交換法を提供する。
【0007】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明に係るエステルシラン化合物のエステル交換法において、エステルシラン化合物としては、下記一般式(1)
R1 nSi(OCH3)4-n (1)
で表わすものが用いられる。
【0008】
ここで、R1は1級、2級又は3級の炭素数1〜12の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、アルキル基、アリール基や、これらの水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、アルコキシ基などで置換した基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、t−アミル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、フェニル基、アルキル基により置換されたフェニル基、ハロゲン原子により置換されたフェニル基、アルコキシ基により置換されたフェニル基等が挙げられる。フェニル基に置換されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基などが挙げられる。また、フェニル基に置換されるハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが例示され、フェニル基に置換されるアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ヘキシロキシなど炭素数1〜8のものが挙げられる。
また、式(1)において、nは0,1,2又は3である。
【0009】
上記エステルシラン化合物とエステル交換するアルコール類としては、下記一般式(2)
R2OH (2)
で表わされるものである。
【0010】
ここで、R2は1級、2級又は3級の炭素数2〜10のアルキル基であり、具体的には、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、i−ペンチルアルコール、t−アミルアルコール、シクロペンチルアルコール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、4−t−ブチルシクロヘキシルアルコール、n−オクタノール、1−デカリルアルコール、2−デカリルアルコール、1−アダマンチルアルコール、2−アダマンチルアルコールなどが挙げられる。
【0011】
なお、メタノールは、本エステル交換反応の上で意味がなく、メタノールは除外する。
【0012】
本発明においては、上記エステルシラン化合物とアルコールとの交換反応を金属アルコラート及びポリエーテル化合物の存在下で行う。
【0013】
金属アルコラートとしては、下記一般式(3)
R3OM (3)
で表されるものを使用する。
【0014】
ここで、R3は1級、2級又は3級の炭素数1〜8のアルキル基であり、MはLi,Na又はKである。金属アルコラートとして具体的には、リチウムメチラート、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート、リチウムエチラート、ナトリウムエチラート、カリウムエチラート、リチウム第3ブチラート、ナトリウム第3ブチラート、カリウム第3ブチラート、リチウムヘキシラート、ナトリウムヘキシラート、カリウムヘキシラート、リチウムオクチラート、ナトリウムオクチラート、カリウムオクチラートなどが挙げられる。
【0015】
金属アルコラートの添加量としては、エステルシラン化合物に対して0.1〜10mol%程度が好ましく、特に0.5〜5mol%の範囲が好ましい。また、金属アルコラートを添加する状態は、固体でも構わないが、アルコール溶液として添加する方が取り扱いの良さから好ましい。例えば、12%リチウムメチラートメタノール溶液、28%ナトリウムメチラートメタノール溶液、20%ナトリウムエチラートエタノール溶液などが挙げられる。
【0016】
一方、ポリエーテル化合物としては、環状ポリエーテル化合物と非環状ポリエーテルアミン化合物が用いられる。環状ポリエーテル化合物としては、12−クラウン−4−エーテル、ベンゾ−12−クラウン−4−エーテル、シクロヘキシル−12−クラウン−4−エーテル、ジベンゾ−12−クラウン−4−エーテル、ジベンゾ−14−クラウン−4−エーテル、ジ(t−ブチルベンゾ)−14−クラウン−4−エーテル、ジシクロヘキシル−14−クラウン−4−エーテル、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−14−クラウン−4−エーテル、15−クラウン−5−エーテル、ベンゾ−15−クラウン−5−エーテル、t−ブチルベンゾ−15−クラウン−5−エーテル、2,3−ナフト−15−クラウン−5−エーテル、シクロヘキシル−15−クラウン−5−エーテル、t−ブチルシクロヘキシル−15−クラウン−5−エーテル、2,3−デカリル−15−クラウン−5−エーテル、ジベンゾ−15−クラウン−5−エーテル、ジベンゾ−16−クラウン−5−エーテル、ジシクロヘキシル−15−クラウン−5−エーテル、ジシクロヘキシル−16−クラウン−5−エーテル、18−クラウン−6−エーテル、ベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、t−ブチルベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、2,3−ナフト−18−クラウン−6−エーテル、シクロヘキシル−18−クラウン−6−エーテル、t−ブチルシクロヘキシル−18−クラウン−6−エーテル、ジベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、ジ(t−ブチルベンゾ)−18−クラウン−6−エーテル、ジ(2,3−ナフト)−18−クラウン−6−エーテル、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6−エーテル、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−18−クラウン−6−エーテル、トリベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、トリベンゾ−19−クラウン−6−エーテル、ジベンゾ−21−クラウン−7−エーテル、ジシクロヘキシル−21−クラウン−7−エーテル、トリベンゾ−21−クラウン−7−エーテル、ジベンゾ−24−クラウン−8−エーテル、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8−エーテル、ジ(2,3−ナフト)−24−クラウン−8−エーテル、テトラベンゾ−24−クラウン−8−エーテル、ジベンゾ−30−クラウン−10−エーテル、ジシクロヘキシル−30−クラウン−10−エーテルなどが挙げられる。非環状ポリエーテルアミン化合物を例示すると、トリス(3−オキサブチル)アミン、トリス(3−オキサヘプチル)アミン、トリス(3,6−ジオキサヘプチル)アミン、トリス(3,6−ジオキサオクチル)アミン、トリス(3,6−ジオキサノニル)アミン、トリス(3,6−ジオキサデシル)アミン、トリス(3,6,9−トリオキサデシル)アミン、トリス(3,6,9−トリオキサウンデシル)アミン、トリス(3,6,9−トリオキサドデシル)アミン、トリス(3,6,9−トリオキサトリデシル)アミン、トリス(3,6−ジオキサ−4−メチルヘプチル)アミン、トリス(2,6,9,12−テトラオキサドデシル)アミン、トリス(3,6−ジオキサ−2,4−ジメチルヘプチル)アミン等がある。
【0017】
環状ポリエーテル化合物と非環状ポリエーテルアミン化合物の添加量は金属アルコラートの添加量と同等で、エステルシラン化合物に対して0.1〜10mol%程度が好ましく、特に0.5〜5mol%の範囲が好ましい。
【0018】
本発明のエステル交換反応は平衡反応であり、通常平衡状態に達した後、メトキシシラン化合物とアルコールとの反応により生成するメタノールを抜き出しながら平衡状態を生成系に移動させることにより反応が完結する。反応温度としては、任意の温度で行うことができるが、平衡に達するまでの時間やメタノールの抜き出し等を考慮し、60〜100℃の範囲が特に好ましい。また、メタノールを抜き出す際に、メタノールと共沸する抜き出し溶媒を用いても差し支えない。抜き出し溶媒としては、ヘキサン、ヘプタンなどの飽和炭化水素、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、四塩化炭素、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素が例示される。反応時間としては、通常2〜10時間程度である。本発明のエステル交換反応におけるエステルシラン化合物とアルコール類との配合比率は、反応性や生産性を考慮し、エステルシラン化合物のメトキシ基1つに対してアルコールを0.5〜10当量程度であり、特に1〜4当量の範囲が好ましい。配合化率0.5以下では反応性が悪く、10以上ではポットイールドが悪くなり、生産性の面で問題が生じる場合がある。なお、溶媒は使用しなくてもよい。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、エステルシラン化合物とアルコール類とのエステル交換を短時間で行うことができる。
【0020】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0021】
[実施例1]
撹拌機、還流管、温度計、滴下ロートを備えたフラスコに、エタノールを46.1g(1.0mol)、ジシクロペンチルジメトキシシランを57.1g(0.25mol)、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液を2.41g(0.0125mol)、18−クラウン−6−エーテルを3.30g(0.0125mol)入れ、80℃で2時間反応させた。反応後の反応溶液をガスクロマトグラフィーにより分析し、エステル交換反応により生成する置換体の存在比を算出したところ、ジシクロペンチルジメトキシシラン:ジシクロペンチルメトキシエトキシシラン:ジシクロペンチルジエトキシシラン=28:62:10であり、ほぼ平衡に達していた。
【0022】
[実施例2]
撹拌機、還流管、温度計、滴下ロートを備えたフラスコに、エタノールを46.1g(1.0mol)、ジシクロペンチルジメトキシシランを57.1g(0.25mol)、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液を2.41g(0.0125mol)、トリス(3,6−ジオキサヘプチル)アミンを4.04g(0.0125mol)入れ、80℃で2時間反応させた。反応後の反応溶液をガスクロマトグラフィーにより分析し、エステル交換反応により生成する置換体の存在比を算出したところ、ジシクロペンチルジメトキシシラン:ジシクロペンチルメトキシエトキシシラン:ジシクロペンチルジエトキシシラン=38:56.2:5.8であった。
【0023】
[比較例1]
撹拌機、還流管、温度計、滴下ロートを備えたフラスコに、エタノールを46.1g(1.0mol)、ジシクロペンチルジメトキシシランを57.1g(0.25mol)、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液を2.41g(0.0125mol)入れ、80℃で2時間反応させた。反応後の反応溶液をガスクロマトグラフィーにより分析し、エステル交換反応により生成する置換体の存在比を算出したところ、ジシクロペンチルジメトキシシラン:ジシクロペンチルメトキシエトキシシラン:ジシクロペンチルジエトキシシラン=69:31:0であり、エステル交換反応は極めて遅いものであった。
【0024】
[実施例3]
撹拌機、還流管、温度計、滴下ロートを備えたフラスコに、エタノールを46.1g(1.0mol)、ジシクロペンチルジメトキシシランを57.1g(0.25mol)、カリウムメトキシドを0.88g(0.0125mol)、18−クラウン−6−エーテルを3.30g(0.0125mol)入れ、80℃で2時間反応させた。反応後の反応溶液をガスクロマトグラフィーにより分析し、エステル交換反応により生成する置換体の存在比を算出したところ、ジシクロペンチルジメトキシシラン:ジシクロペンチルメトキシエトキシシラン:ジシクロペンチルジエトキシシラン=18:60:22であり、ほぼ平衡に達していた。
【0025】
[比較例2]
撹拌機、還流管、温度計、滴下ロートを備えたフラスコに、エタノールを46.1g(1.0mol)、ジシクロペンチルジメトキシシランを57.1g(0.25mol)、カリウムメトキシドを0.88g(0.0125mol)入れ、80℃で2時間反応させた。反応後の反応溶液をガスクロマトグラフィーにより分析し、エステル交換反応により生成する置換体の存在比を算出したところ、ジシクロペンチルジメトキシシラン:ジシクロペンチルメトキシエトキシシラン:ジシクロペンチルジエトキシシラン=65:34:1であり、エステル交換反応は極めて遅いものであった。
【0026】
[実施例4]
蒸留管と温度計を備えた200mlのフラスコにテトラメトキシシラン38.1g(0.25mol)、イソプロパノール120g(2.0mol)、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液0.96g(0.005mol=2mol%)、18−クラウン−6−エーテル1.32g(0.005mol=2mol%)を加え、30分間加熱還流させた後、2時間かけてメタノール及びイソプロパノールを留出除去した。反応後の反応溶液をガスクロマトグラフィーにより分析し、エステル交換反応により生成する置換体の存在比を算出したところ、テトラメトキシシラン:トリメトキシイソプロポキシシラン:ジメトキシジイソプロポキシシラン:メトキシトリイソプロポキシシラン:テトライソプロポキシシラン=0:0:0.3:9.4:90.3であった。得られた反応液から、減圧蒸留により63〜65℃/5mmHgの留分を分取することにより、テトライソプロポキシシラン56.3gを得た(収率85%)。
【0027】
[比較例3]
蒸留管と温度計を備えた200mlのフラスコにテトラメトキシシラン38.1g(0.25mol)、イソプロパノール120g(2.0mol)、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液0.96g(0.005mol=2mol%)を加え、30分間加熱還流させた後、2時間かけてメタノール及びイソプロパノールを留出除去した。反応後の反応溶液をガスクロマトグラフィーにより分析し、エステル交換反応により生成する置換体の存在比を算出したところ、テトラメトキシシラン:トリメトキシイソプロポキシシラン:ジメトキシジイソプロポキシシラン:メトキシトリイソプロポキシシラン:テトライソプロポキシシラン=0:1.6:12.1:40.6:45.7であった。
Claims (1)
- 下記一般式(1)
R1 nSi(OCH3)4-n (1)
(式中、R1は1級、2級又は3級の炭素数1〜12の置換又は非置換の1価炭化水素基、nは0〜3の整数である。)
で表わされるエステルシラン化合物と下記一般式(2)
R2OH (2)
(式中、R2は1級、2級又は3級の炭素数2〜10のアルキル基である。)
とアルコールとをエステル交換反応させるに際し、下記一般式(3)
R3OM (3)
(式中、R3は1級、2級又は3級の炭素数1〜8のアルキル基を示し、MはLi,Na又はKである。)
で表される金属アルコラート及び環状ポリエーテル化合物又は非環状ポリエーテルアミン化合物の存在下にエステル交換反応を行うことを特徴とするエステルシラン化合物のエステル交換法。
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JP21111399A JP3826987B2 (ja) | 1999-07-26 | 1999-07-26 | エステルシラン化合物のエステル交換法 |
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WO2009131038A1 (ja) * | 2008-04-22 | 2009-10-29 | 東亞合成株式会社 | 硬化性組成物及び有機ケイ素化合物の製造方法 |
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