JP3826563B2 - コンバイン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、農業機械であるコンバインに関する。
【0002】
【従来の技術、及び発明が解決しようとする課題】
コンバインにおける作業時に、刈取装置によって刈り取った穀稈を脱穀装置へ搬送供給して脱穀作業を行うものにおいて、刈取作業を行う圃場にはその区画の周囲に必ず畦が設けられており、刈取装置が通常の刈高さのままでは刈り取り終端位置で畦と衝突するため高刈りに変更する必要がある。
【0003】
この高刈り時に、刈取装置の所定高さ位置の検出により脱穀装置に対する穀稈の供給深さを深扱ぎ側へ調節する畦際制御スイッチと、刈取装置が基準高さ位置まで上昇したときにその駆動を停止する刈取自動停止スイッチとを同時にONさせたときは、この刈取装置を自動停止させる基準高さ位置よりも畦際制御を行う所定高さ位置の方が上方域に設定される場合が多く、畦際制御によって刈り取りを行う際に高刈りにより自動停止の基準高さ位置を通り超すため、刈取装置が自動的に停止して穀稈を押し倒してしまう不具合が発生していた。
【0004】
そこでこの発明は、畦際制御スイッチと刈取自動停止スイッチを同時にONしたときは、刈取装置を自動停止させる基準高さ位置を畦際制御の所定高さ位置よりも上方域に設定する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、刈取作業時に、畦際で畦との衝突を避けて高刈りを行う刈取装置(1)の所定高さ位置(A)を刈高位置センサ(57)により検出して、脱穀装置(2)へ供給される穀稈の扱深さを深扱ぎ側へ調節する畦際制御をON・OFFさせる畦際制御スイッチ(3)と、この畦際制御のOFF時において刈取装置(1)の基準高さ位置(B)を刈高位置センサ(57)により検出して、刈取駆動を停止させる刈取自動停止をON・OFFさせる刈取自動停止スイッチ(4)とを有するコンバインにおいて、畦際制御及び刈取自動停止が共にONしたときは、刈取自動停止の基準高さ位置(B)を畦際制御における所定高さ位置(A)よりも上方域の上側高さ位置(Ba)に変更設定する停止位置変更手段(5)を設ける構成とし、さらに、機体(21)の前後傾斜を検出する前後傾斜センサ(67)、及び、土壌面と刈取装置(1)との間の距離を測定して穀稈の刈り高さを検出する刈高さセンサ(70)を設け、前記畦際制御スイッチ(3)がON状態で、前記前後傾斜センサ(67)が機体(21)の前傾斜状態を検出した状態又は前記刈高さセンサ(70)による検出値が予め設定した一定値(α)以下を検出した状態においては、前記刈取装置(1)が刈高位置センサ(57)の検出により高刈り位置にあるときは、畦際制御無効手段(68)により前記脱穀装置(2)へ供給される穀稈の扱深さを深扱ぎ側へ調節する畦際制御を中止させるように構成したことを特徴とするコンバインの構成とする。
【0006】
【作用】
上記の構成により、コンバインにおける刈取作業時に、畦際において畦との衝突を避けるため刈取装置1を上昇させて高刈りを行うが、この高刈り時に、畦際制御スイッチ3をONさせて刈取装置1の所定高さ位置Aを検出したときは、脱穀装置2へ供給する穀稈の扱深さを深扱ぎ側へ調節する。
【0007】
この深扱ぎ側への調節と同時に、刈取自動停止スイッチ4がONしているときは、刈取装置1の上昇により駆動を停止させる自動停止位置を、基準高さ位置Bから畦際制御時の所定高さ位置Aを通り超して上昇させた、上方域の上側高さ位置Baに停止位置変更手段5により変更設定することによって、畦際制御中に刈取装置1が自動的に停止することがない。また、畦際制御スイッチ3がOFFのときは基準高さ位置Bにより停止させることができる。
そして、畦際制御スイッチ3がON状態で、前後傾斜センサ67が機体21の前傾斜状態を検出した状態又は刈高さセンサ70による検出値が予め設定した一定値α以下を検出した状態おいて、刈取装置1が刈高位置センサ57の検出により高刈り位置にあるときは、畦際制御無効手段68により脱穀装置2へ供給する穀稈の扱深さを深扱ぎ側へ調節する畦際制御を中止させる。
【0008】
【発明の効果】
上記の作用の如く、コンバインの刈取作業において畦際での高刈り時に、畦際制御スイッチ3と刈取自動停止スイッチ4を同時にONしたときは、刈取装置1の駆動を自動停止させる基準高さ位置Bを、停止位置変更手段5により畦際制御における所定高さ位置Aよりも上方域の上側高さ位置Baに変更設定する。
【0009】
この変更設定により、畦際制御における所定高さ位置Aが自動停止の上側高さ位置Baを通り超すことがないから、刈取装置1の駆動が自動的に停止して穀稈を押し倒す等の不具合を防止することができる。また、畦際制御スイッチ3をOFFしたときは、変更前の基準高さ位置Bに戻して停止させることが可能であり不必要な刈取装置1の上昇によって作業能率を阻害されることがない。
そして、畦際制御スイッチ3がON状態で、前後傾斜センサ67が機体21の前傾斜状態を検出した状態又は刈高さセンサ70による検出値が予め設定した一定値α以下を検出した状態においては、畦際制御無効手段68により脱穀装置2へ供給する穀稈の扱深さを深扱ぎ側へ調節する畦際制御を中止させる。これにより、機体21が前傾斜姿勢のとき刈取装置1が高刈り位置になっても、穀稈を深扱ぎにしないので、脱穀負荷が増大して作業を阻害されることなく、効率の良い脱穀作業を行うことができるようになる。
また、湿田等における機体21の沈下により刈取装置1が高刈り位置になっても、穀稈を深扱ぎにしないので、脱穀負荷が増大して作業を阻害されることなく、効率の良い脱穀作業を行うことができるようになる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施例をコンバインについて図面に基づき説明する。
図22はコンバインの全体構成を示すもので、車台6の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ7を張設した走行装置8を配設すると共に、該車台6上にはフィードチェン9に挟持搬送して供給される穀稈を脱穀し、この脱穀された穀粒を選別回収して一時貯留するグレンタンク10と、このタンク10に貯留された穀粒を機外へ排出する排穀オーガ10aを備えた脱穀装置2を載置構成している。
【0011】
なお、該フィードチェン9の奥側に隣接して、供給穀稈が短稈のとき一部の極短稈では入口部のみ挟持し、以後は解放する脱穀短稈チェン9aを配置させる。
該脱穀装置2の前方に、前端側から植立穀稈を分草する分草体11と、分草された穀稈を引き起こす引起部12と、引き起こされた穀稈を刈り取る刈刃部13と、この刈り取られた穀稈を掻き込むと共に搬送途上において扱深さを調節する扱深さ調節搬送部14と、この搬送される穀稈を引き継いで該フィードチェン9又は脱穀短稈チェン9aへ受け渡しする供給調節搬送部15等を有する刈取装置1を、油圧駆動による伸縮シリンダ16により土壌面に対して昇降自在なるよう該車台6の前端部へ懸架構成している。
【0012】
該刈取装置1の一側にコンバインの操作制御を行う操作装置17と、この操作のための操作席18を設け、この操作席18の後方側に前記グレンタンク10を配置すると共に下方側にエンジン19を搭載し、該操作装置17と操作席18を覆うキャビン20を配設する。これらの刈取装置1,脱穀装置2,走行装置8,操作装置17,エンジン19,キャビン20等によってコンバインの機体21を構成している。
【0013】
該刈取装置1は図4,図5,図6,図7に示す如く、前記車台6の前端部に装架した走行用ミッションケース22の上端部に刈取架台23を固定すると共に、この刈取架台23に刈取入力ケース24を上下回動可能に支承して設け、この刈取入力ケース24から下方側に向け延長したパイプ状の刈取主フレーム25とを接合すると共に、刈取入力プ−リ26を一端部に軸止した刈取入力軸27を該入力ケース24に内装軸支し、該入力軸27と主フレーム25に内装した刈取主軸28とをべベルギヤを介して連動連結して構成させる。
【0014】
該刈取主フレーム25と、刈取装置1の下部にその全幅に亘って設けた下部横伝動ケ−ス29とを接合し、該刈取主軸28と下部横伝動ケ−ス29に内装した下部横軸30とを連動連結すると共に、該下部横伝動ケ−ス29の左端部近傍から前方斜上方へ向けて中間縦フレーム31を延設し、該下部横軸30と中間縦フレーム31に内装した中間縦軸32とをべベルギヤを介して連動連結して構成させる。
【0015】
該中間縦フレーム31と、刈取装置1の上部にその全幅に亘って設けた上部横伝動ケ−ス33とをギヤ変速による変速ケース34を介して接合し、該中間縦軸32からべベルギヤ及びベルトクラッチ35を経由すると共に、該変速ケース34のギヤを介し上部横伝動ケ−ス33に内装した上部横軸36の左端部とを連動連結して構成させる。
【0016】
該上部横伝動ケ−ス33に接合する、中央の1条と左右側の各2条による5条列の植立穀稈を引き起す前記引起部12に対応する5本の引起駆動ケ−ス37を下方へ向け突設し、該上部横軸36と引起駆動ケ−ス37に内装した各引起駆動軸38とを各々べベルギヤを介して連動連結すると共に、該各引起駆動軸38と引起ラグ39aを取り付けた引起チェン39bを駆動する引起スプロケット39を軸止した引起軸40とをべベルギヤを介して各々連動連結して構成させる。
【0017】
前記各分草体11の後方側に刈り取った穀稈の株元側を掻き込む左一対・中・右一対の各掻込ラグベルト41a,41b,41cと、この各掻込ラグベルト41a,41b,41cによって掻き込まれた穀稈を、更に掻き込み保持する各掻込スターホイル42a,42b,42cを配設し、この各掻込スターホイル42a,42b,42cからY字状に配設した各株元搬送チェン43a,43b,43cの合流部から、搬送穀稈の扱深さを深・浅に調節する扱深さ調節チェン44に引き継ぎ連動連結して構成させる。
該扱深さ調節チェン44をその前端部を支点として扱深さ調節モータ45により上下揺動可能に配設すると共に、該各株元搬送チェン43a,43b,43c及び扱深さ調節チェン44の上方側に、穀稈の株元側に対応して各々その穂先側を搬送させる左・中・右の各穂先搬送ラグ46a,46b,46cを配設して前記扱深さ調節搬送部14を構成させる。
【0018】
図8に示す如く、該扱深さ調節チェン44から引き継いで前記脱穀装置2へ供給する穀稈を、その稈長に応じて通常では標準状態としてのフィードチェン9側へ、また特に畦際制御時における極短稈等では脱穀短稈チェン9aによる深扱ぎ側へ供給を変更する供給調節チェン47を、前記刈取入力軸27にべベルギヤを介して連動連結した供給駆動軸48により駆動可能に配設して構成させる。
【0019】
該供給調節チェン47を案内するチェンガイド47aを調節アーム49aを介して供給調節モータ49の駆動により前後移動可能に配設すると共に、該供給調節モータ49の駆動を検出するモータリミットスイッチ50を配置して前記供給調節搬送部15を構成させる。
図9に示す如く、植立穀稈を刈り取る刈刃部13を、前記各掻込スターホイル42a,42b,42cの下方側で、各分草体11を支持する分草杆11aを固着した下部フレーム51に刈取装置1の全幅に亘り左右に分割して配設し、この下部フレーム51を前記下部横伝動ケース29に接合すると共に、左右の刈刃部13を前記下部横軸30の両端部へ各々軸止した左右のクランク機構52によって左右往復動可能に構成させる。
【0020】
図3に示す如く、該扱深調節搬送部14の左右の掻込ラグベルト41a,41cの各前端位置近傍において搬送穀稈の有無をON・OFF検出する左右の穀稈センサ前53と、該供給調節チェン47の前部位置近傍において搬送穀稈の有無をON・OFF検出する穀稈センサ後54とを各々配置して構成させる。
前記引起部12の上部近傍位置に刈取り穀稈の稈長の長・短をON・OFF検出する稈長センサ55と、該右穂先搬送ラグ46cの後部近傍位置に搬送穀稈の扱深さ位置を、穂先側検出杆56a又は株元側検出杆56bのON・OFFにより検出する扱深さ適応センサ56とを各々配置して構成させる。
【0021】
該刈取装置1の上下回動支点の近傍位置に、その昇降位置をポテンショメータ等の回動角度により検出する刈高位置センサ57と、前記扱深さ調節チェン44の上下揺動支点の近傍位置に、搬送穀稈の扱深さ調節位置をポテンショメータ等の回動角度により検出する扱深さ位置センサ58とを各々配置して構成させる。
該扱深さ適応センサ56による検出値を扱深さ位置センサ58により確認を行いながら、扱深さ調節チェン44を前記扱深さ調節モータ45によって深・浅に調節させ扱深さ調節部を構成させる。
【0022】
刈取作業時に、刈取装置1の昇降による基準高さ位置Bを刈高位置センサ57により検出して、自動的に刈取作動及び前記フィードチェン9を停止する刈取自動停止スイッチ4を設けたパワステレバー59と、畦際において刈取装置1の上昇による所定高さ位置Aを刈高位置センサ57により検出して、自動的に扱深さ調節チェン44を深扱ぎ側へ調節する畦際制御スイッチ3と、コンバインのメインスイッチ60とを前記操作装置17の一側に各々配置して構成させる。
【0023】
前記ミッションケース22に内装するギヤ伝動経路の適宜位置に配置した車速を検出する車速センサ61と、刈取装置1の駆動を入・切する刈取クラッチ62と、フィードチェン9の駆動を入・切するチェンクラッチ63とを各々配置して構成させる。
図2に示す如く、CPUを主体的に配して自動回路の演算制御を行うと共に、刈取装置1の駆動を自動停止させる基準高さ位置Bを、畦際制御における所定高さ位置Aよりも上方高さ位置Baに変更設定する停止位置変更手段5を内蔵するコントローラ64を設けて構成させる。
【0024】
該コントローラ64の入力側へ、入力インタフェース64aを介して前記畦際制御スイッチ3,刈取自動停止スイッチ4,左右の穀稈センサ前53,穀稈センサ後54,稈長センサ55,扱深さ適応センサ56,刈高位置センサ57,扱深さ位置センサ58,モータリミットスイッチ50,メインスイッチ60,車速センサ61等を各々接続して構成させる。
【0025】
該コントローラ64の出力側へ、出力インタフェース64bを介して前記扱深さ調節モータ45を深扱ぎ側へ駆動させる深扱ぎ調節リレー65aと浅扱ぎ側へ駆動させる浅扱ぎ調節リレー65b,供給調節モータ49を脱穀短稈チェン9a側へ駆動させる供給調節リレー66,刈取クラッチ62,チェンクラッチ63等を各々接続して構成させる。
【0026】
分草体11を土壌面に近接させ走行装置8によって機体21を前進させて刈取装置1により植立穀稈の刈り取りを行うが、この刈り取り時に中央の1条と左右側の各2条の穀稈5条列を左・中・右の各引起部12により引き起し作用を行うと同時に、左・中・右の各掻込ラグベルト41によって株元側を掻き込み、この掻き込まれた株元側を各掻込スターホイル42によって挟持すると同時に刈刃部13によって刈り取りを行う。
【0027】
この刈り取られた株元側を左・中・右の各株元集送部の株元搬送チェン43により集送合流させ、この合流部から扱深さ調節チェン44を経て供給調節チェン47へ引き継いで、扱深さの調節を行いながら脱穀装置2へ搬送供給させると共に、穂先側を左・中・右の各穂先集送部の穂先搬送ラグ46により集送して右穂先搬送ラグ46cの中間位置に合流させ、この合流部から更に右穂先搬送ラグ46cによって脱穀装置2へ搬送供給させる。
【0028】
このようなコンバイン作業において畦際での刈取りを行うときは、図1のフローチャートに示す如く、まず、各種センサ・スイッチ類の情報の読み込みを行い、畦際制御スイッチ3をONして、畦際においてパワステレバー59の操作により刈取装置1を上昇させたときの刈高位置を、刈高位置センサ57によって検出する。(畦際制御時は扱深さ適応センサ56による検出値は無視する)
穀稈センサ前53がONでこの刈高さが、例えば20センチメートル以上で且つ稈長センサ55により検出した刈取り穀稈の稈長が、例えば60センチメートル以上であれば扱深さ調節チェン44を稈長に応じて一定時間深扱ぎ側への調節を行い、稈長が60センチメートル以下であれば扱深さ調節チェン44を最深扱ぎ側へ調節すると共に、供給調節チェン47を脱穀短稈チェン9a側へ供給させる位置へ調節を行う。 この畦際制御時に、刈取自動停止スイッチ4を同時にONしているときは、このONにより刈取装置1とフィードチェン9の駆動を停止させる刈取装置1の自動停止高さを、畦際制御スイッチ3がOFFのときに自動停止させる基準高さ位置Bから、停止位置変更手段5の作用により畦際制御時における所定高さ位置Aより上方域の上側高さ位置Baに変更設定を行い、この条件が成立したときは刈取クラッチ62とチェンクラッチ63を切り出力させる。
【0029】
このように、刈取自動停止スイッチ4のONによる刈取装置1の自動停止高さを、畦際制御スイッチ3のOFF時には、刈取装置1の上昇位置を比較的低い基準高さ位置Bに設定することにより、不必要な刈取装置1の上昇により作業能率を阻害されることがないと共に、畦際制御スイッチ3のON時には、基準高さ位置Bを上方高さ位置Baに変更設定することにより、刈取装置1の駆動が自動的に停止して穀稈を押し倒す等の不具合を防止することができる。
【0030】
また、図10のフローチャートに示す如く、各種センサ・スイッチ類の情報の読み込みを行い、前記扱深さ位置センサ58の位置を記憶させると共に、畦際制御スイッチ3をONして、前記刈高位置センサ57によって刈取装置1の所定高さ位置Aを検出したときは扱深さ調節チェン44を深扱ぎ側へ調節制御する。
次に、畦際制御スイッチ3のOFFにより畦際刈取作業が終了し、前記穀稈センサ前53及び穀稈センサ後54が共に非検出となったときは、畦際制御の開始前に記憶している扱深さ位置センサ58の位置より、一定量深扱ぎ側の位置となるよう扱深さ調節チェン44を扱深さ調節モータ45により戻し調節制御する。
【0031】
このように、畦際における刈取作業の終了時に、深扱ぎ側へ調節制御していた扱深さ調節チェン44の戻し位置を、畦際制御の開始前に記憶させた位置よりも一定量深扱ぎ側の位置に戻すことにより、従来の如く、畦際制御の開始前の位置にそのまま戻していたため、斜め刈り等により未刈り部への再侵入の際に搬送穀稈の薄層化により発生していた、引継ぎ部での稈こぼれや浅扱ぎによる扱ぎ残し等を抑制することができる。
【0032】
また、前記の如き畦際制御時に、刈取装置1の引起部12上部側の穀稈通路に配置している穀稈の長・短を検出する稈長センサ55について、従来では、図11に示す如く、引起部12における穀稈の引き起こしの際に、長稈では稈長センサ55の検出杆55aに穀稈が接当しノーマルオープン回路がクローズしてONとなり長稈検出を行い、短稈では該検出杆55aに穀稈の接当がなく回路はオープンのままでOFFとなり短稈検出を行う形態のものが一般的であった。
【0033】
しかし、このように短稈の検出時に稈長センサ55の回路がOFF状態となるものでは、回路の断線等による故障時にはOFF状態を持続することにより、該扱深さ調節チェン44及び供給調節チェン47が深扱ぎ側の調節のまま固定されてしまうという不具合が発生する。
このため、稈長センサ55をノーマルクローズ回路に変更することにより、該検出杆55aへ穀稈の接当がない短稈時に回路がクローズのままでON状態となり、穀稈が接当する長稈時にオープンしてOFF状態となるから、回路の断線等による故障時には長稈の検出時と同様のOFF状態となり、当面通常の扱深さによる作業続行が可能となる。
【0034】
また、図12のフローチャートに示す如く、該畦際制御スイッチ3がON状態で、前記供給調節モータ49のモータリミットスイッチ50が供給調節チェン47の深扱ぎ側でON状態にあり、前記穀稈センサ後54もON状態において、前記メインスイッチ60をONしたときは、各センサ・スイッチ類の情報を読み込んで、穀稈センサ後54による穀稈検出情報によって供給調節チェン47を深扱ぎ側に調節するよう構成させる。
【0035】
この構成により、畦際制御スイッチ3がON状態で供給調節チェン47が深扱ぎ側のときに、メインスイッチ60をOFFからONに切り替えた場合に、従来の如く、穀稈が供給調節搬送部15に残っている状態において供給調節チェン47が深扱ぎ側から標準側へ戻ろうとするため、供給調節チェン47及び供給調節モータ49が過負荷状態となる現象を防止することができる。(図2参照)
また、図13のフローチャートに示す如く、該畦際制御スイッチ3がON状態で、該モータリミットスイッチ50が供給調節チェン47の深扱ぎ側でON状態にあり、前記扱深さ適応センサ56の穂先側検出杆56a又は株元側検出杆56bがON状態において、該メインスイッチ60をONしたときは、各センサ・スイッチ類の情報を読み込んで、扱深さ適応センサ56による穀稈検出情報によって供給調節チェン47を深扱ぎ側に調節するよう構成させる。
【0036】
この構成により、畦際制御スイッチ3がON状態で供給調節チェン47が深扱ぎ側のときに、メインスイッチ60をOFFからONに切り替えた場合、従来の如く、穀稈が供給調節搬送部15に残っている状態において供給調節チェン47が深扱ぎ側から標準側へ戻ろうとするため、供給調節チェン47及び供給調節モータ49が過負荷状態となる現象を防止することができる。(図2参照)
また、図14のフローチャートに示す如く、該畦際制御スイッチ3がON状態で、該モータリミットスイッチ50がOFF状態にあり、前記扱深さ位置センサ58による検出値が深扱ぎ側の状態において、該メインスイッチ60をONしたときは、各センサ・スイッチ類の情報を読み込んで、扱深さ位置センサ58の深扱ぎ側の検出情報により該供給調節チェン47を深扱ぎ側に調節するよう構成させる。
【0037】
この構成により、畦際制御スイッチ3がON状態で供給調節チェン47が深扱ぎ側のとき、メインスイッチ60をOFFからONに切り替えた場合、従来の如く、穀稈が供給調節搬送部15に残っている状態においてモータリミットスイッチ50がOFF状態のときは、供給調節チェン47が深扱ぎ側から標準側へ戻ろうとするため、供給調節チェン47及び供給調節モータ49が過負荷状態となる現象を防止することができる。(図2参照)
また、図15のフローチャートに示す如く、該畦際制御スイッチ3がON状態で、該供給調節チェン47が深扱ぎ側へ調節されている状態において、該メインスイッチ60をONしたときは、各センサ・スイッチ類の情報を読み込んで、前記車速センサ61による車速パルスの入力を行うが、この入力が予め設定した一定時間を経過するまで供給調節チェン47を深扱ぎ側に維持させる構成とする。
【0038】
この構成により、畦際制御スイッチ3がON状態で供給調節チェン47が深扱ぎ側のときに、メインスイッチ60をOFFからONに切り替えた場合、従来の如く、穀稈が供給調節搬送部15に残っている状態において供給調節チェン47が深扱ぎ側から標準側へ戻ろうとするため、供給調節チェン47及び供給調節モータ49が過負荷状態となる現象を防止することができると共に、機体21が前進を開始したときに、供給調節チェン47を穀稈が無い状態で円滑に標準側へ戻すことが可能となる。(図2参照)
また、図16のフローチャートに示す如く、該畦際制御スイッチ3がON状態で、該メインスイッチ60をONしたときは、各センサ・スイッチ類の情報を読み込んで、該供給調節チェン47の深扱ぎ側又は標準側への出力を行うが、この出力時に該モータリミットスイッチ50が予め設定した一定時間を経過してもONしない場合は、供給調節チェン47に対する調節を停止させる構成とする。
【0039】
この構成により、畦際制御スイッチ3がON状態で供給調節チェン47が途中で止まっているとき、メインスイッチ60をOFFからONに切り替えた場合、従来の如く、他の作業者が供給調節搬送部15に手を入れる等の動作を行っているとき、不意に供給調節チェン47に対し出力されて手を挟まれるという危険性等を、障害物のためモータリミットスイッチ50がONしないから回避することができる。(図2参照)
また、図17に示す如く、コンバインを農道等から圃場へ乗り入れる際に、農道側が圃場より高位置にあるときは、機体21が前後方向に傾斜するため刈取装置1を上昇させて土壌面に対する衝突を回避させる必要がある。
【0040】
この刈取装置1が上昇による高位置において畦際制御をONしているときは、畦際制御が作用して前記扱深さ調節チェン44及び供給調節チェン47によって搬送穀稈を最深扱ぎ側へ調節することになるが、実際の穀稈は略通常に近い稈長で刈り取られているため脱穀装置2の負荷が増大し、脱穀作業が阻害される恐れがある。
【0041】
このため、図18に示す如く、CPUを主体的に配し自動回路の演算制御を行うと共に、機体21の適宜位置に設けた前後傾斜センサ67により機体21の一定の傾斜状態を検出したときは畦際制御を無効とする畦際制御無効手段68を内蔵するコントローラ69を設けて構成させる。
このコントローラ69の入力側へ、入力インタフェース69aを介して前記畦際制御スイッチ3,刈高位置センサ57,前後傾斜センサ67等を各々接続すると共に、出力側へ、出力インタフェース69bを介して前記深扱ぎ調節リレー65a,浅扱ぎ調節リレー65b,供給調節リレー66等を各々接続して構成させる。
【0042】
図19のフローチャートに示す如く、畦際制御スイッチ3がON状態で、各センサ・スイッチ類の情報を読み込み、前後傾斜センサ67によって機体21の前傾状態を検出したときに、刈取装置1が刈高位置センサ57の検出により高刈り位置にあるときは、畦際制御無効手段68により畦際制御を中止させる構成とする。
【0043】
この構成により、コンバインを圃場へ乗り入れる際に、機体21が前傾姿勢となって刈取装置1を上昇させたときは畦際制御を無効とすることにより、従来の如く、刈取装置1が上昇しても略通常の稈長で刈り取られる穀稈に対し畦際制御が作用して穀稈を深扱ぎ側へ調節し、脱穀負荷が増大して作業を阻害されるということがなく、機体21が前傾姿勢のとき刈取装置1が高刈り位置となっても穀稈を深扱ぎにしないから効率の良い脱穀作業を行うことができる。
【0044】
また、図17に示す如く、刈取装置1の下端部適宜位置に、超音波の土壌面からの反射波によって刈高さを検出する刈高さセンサ70を配設すると共に、この刈高さセンサ70を、前記、図18に示す如きコントローラ69の入力側へ入力インタフェース69aを介して接続させる。
図20のフローチャートに示す如く、畦際制御スイッチ3がON状態で、各センサ・スイッチ類の情報を読み込み、刈取装置1が刈高位置センサ57の検出により高刈り位置にあるときに、刈高さセンサ70による検出値が予め設定した一定値α以下のときは、畦際制御無効手段68によって畦際制御を中止させる構成とする。
【0045】
この構成により、コンバインを圃場へ乗り入れる際に機体21が前傾姿勢となり刈取装置1を上昇させたときや、湿田等における機体21の沈下により刈取装置1を上昇させたときに、刈高さセンサ70の検出値が一定値α以下のときは、畦際制御を無効として穀稈を深扱ぎにしないから効率の良い脱穀作業を行うことができる。
【0046】
また、図17に示す如く、刈取装置1の前端下部側に配置した穀稈センサ前53を、前記、図18に示す如きコントローラ69の入力側へ入力インタフェース69aを介して接続させる。
図21のフローチャートに示す如く、畦際制御スイッチ3がON状態で、各センサ・スイッチ類の情報を読み込み、刈取装置1が刈高位置センサ57の検出により高刈り位置にあるときに、穀稈センサ前53がOFFのときは畦際制御を無効とし穀稈の深扱ぎ側への調節を行わないようにすると共に、穀稈センサ前53がONしたときは畦際制御を行わせる構成とする。
【0047】
この構成により、コンバインを圃場へ乗り入れる際に、機体21が前傾姿勢となって刈取装置1を上昇させさせたとき、穀稈センサ前53がOFFのときは、刈取穀稈が無いことから刈取作業前と判定して畦際制御を無効とし、穀稈センサ前53がONしたときは、畦際刈りと判定して畦際制御を実行させることにより、畦際制御の実行・無効を的確に選択することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 刈取自動停止を作用させる高さ位置を変更する手順を示すフローチャート。
【図2】 自動制御関係の電気回路を示すブロック図。
【図3】 刈取装置における各センサ及びスイッチ類の配置状態を示す概略側面図。
【図4】 刈取装置の穀稈穂先側を主体とした集送機構を示す平面図。
【図5】 刈取装置の穀稈株元側を主体とした集送機構を示す平面図。
【図6】 刈取装置の全体構成を示す側面図。
【図7】 刈取装置の動力伝達経路を示すブロック図。
【図8】 刈取装置の供給調節搬送部の構成を拡大して示す平面図。
【図9】 刈取装置の刈刃部の全体構成を示す平面図。
【図10】 刈取装置の扱深さ調節チェンの調節位置制御の手順を示すフローチャート。
【図11】 刈取装置における稈長センサとその検出杆の配置状態を示す斜視図。
【図12】 刈取装置の供給調節チェンの調節位置を制御する手順を示すフローチャート。
【図13】 刈取装置の供給調節チェンの調節位置を制御する手順を示すフローチャート。
【図14】 刈取装置の供給調節チェンの調節位置を制御する手順を示すフローチャート。
【図15】 刈取装置の供給調節チェンの調節位置を制御する手順を示すフローチャート。
【図16】 刈取装置の供給調節チェンの調節位置を制御する手順を示すフローチャート。
【図17】 刈取装置を上昇させた前傾姿勢によって圃場に乗り入れる状態を示す作業図。
【図18】 自動制御関係の電気回路を示すブロック図。
【図19】 刈取作業時に畦際制御の実行を無効とする判定手順を示すフローチャート。
【図20】 刈取作業時に畦際制御の実行を無効とする判定手順を示すフローチャート。
【図21】 刈取作業時に畦際制御の実行と無効との選択手順を示すフローチャート。
【図22】 コンバインの全体構成を示す側面図。
【符号の説明】
1. 刈取装置
2. 脱穀装置
3. 畦際制御スイッチ
4. 刈取自動停止スイッチ
5. 停止位置変更手段
A. 所定高さ位置
B. 基準高さ位置
Ba. 上側高さ位置
21. 機体
57. 刈高位置センサ
67. 前後傾斜センサ
68. 畦際制御無効手段
70. 刈高さセンサ
α. 一定値

Claims (1)

  1. 刈取作業時に、畦際で畦との衝突を避けて高刈りを行う刈取装置(1)の所定高さ位置(A)を刈高位置センサ(57)により検出して、脱穀装置(2)へ供給される穀稈の扱深さを深扱ぎ側へ調節する畦際制御をON・OFFさせる畦際制御スイッチ(3)と、この畦際制御のOFF時において刈取装置(1)の基準高さ位置(B)を刈高位置センサ(57)により検出して、刈取駆動を停止させる刈取自動停止をON・OFFさせる刈取自動停止スイッチ(4)とを有するコンバインにおいて、畦際制御及び刈取自動停止が共にONしたときは、刈取自動停止の基準高さ位置(B)を畦際制御における所定高さ位置(A)よりも上方域の上側高さ位置(Ba)に変更設定する停止位置変更手段(5)を設ける構成とし、さらに、機体(21)の前後傾斜を検出する前後傾斜センサ(67)、及び、土壌面と刈取装置(1)との間の距離を測定して穀稈の刈り高さを検出する刈高さセンサ(70)を設け、前記畦際制御スイッチ(3)がON状態で、前記前後傾斜センサ(67)が機体(21)の前傾斜状態を検出した状態又は前記刈高さセンサ(70)による検出値が予め設定した一定値(α)以下を検出した状態においては、前記刈取装置(1)が刈高位置センサ(57)の検出により高刈り位置にあるときは、畦際制御無効手段(68)により前記脱穀装置(2)へ供給される穀稈の扱深さを深扱ぎ側へ調節する畦際制御を中止させるように構成したことを特徴とするコンバイン。
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