以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1はコンバインの全体左側面図、図2はコンバインの全体右側面図、図3はコンバインの全体平面図、図4はコンバインの全体正面図である。これらの図に示すように、本実施形態で例示するコンバインは、走行車体1の前部右側に搭乗運転部2を形成してある。走行車体1の前部左側には、作業走行時に水稲や麦などの作物Cの穀稈を刈り取って搬送する刈取搬送部3を昇降揺動可能に連結してある。走行車体1の左半部には、刈取搬送部3が搬送する刈り取り後の穀稈を受け取り、その刈り取り後の穀稈に脱穀処理を施し、この脱穀処理で得た処理物に選別処理を施す脱穀装置4を搭載してある。脱穀装置4の後部には、脱穀処理後の穀稈である排ワラを車外に排出する排ワラ処理装置5を連結してある。走行車体1の後部右側には、揚送スクリュー6が搬送する脱穀装置4からの単粒化穀粒を貯留し、貯留した単粒化穀粒の袋詰めを可能にする袋詰め装置7を搭載してある。
図5はコンバインの伝動構成を示す概略図である。図1〜5に示すように、走行車体1は、車体フレーム8に搭載したエンジン9からの動力を、ベルト式伝動装置10、トランスミッションケース(以下、T/Mケースと略称する)11に一体装備した静油圧式無段変速装置(以下、HSTと略称する)12、および、T/Mケース11の内部に備えた走行伝動系(図示せず)、などを介して、車体フレーム8の下部に備えた左右一対のクローラ13A,13Bに伝達するように構成してある。
図示または符号の付設は省略するが、車体フレーム8は、角パイプからなる複数のサイドメンバやクロスメンバにより形成した基枠フレームに、種々の鋼材からなる補強部材や支持部材などの多数を連結して構成してある。エンジン9は、水冷式で、車体フレーム8における前部の右側部分にラジエータとともに配置してある。T/Mケース11は、左右2分割構造で、車体フレーム8における前部の左右中央側部分に車体右寄りに位置するように配備してある。T/Mケース11の内部には、対応するクローラ13A,13Bを制動する左右一対のサイドブレーキなどを備えてある。HST12は、T/Mケース11における左側ケースの上部に位置し、変速後の動力を走行用として走行伝動系に伝達する。走行伝動系は、対応するクローラ13A,13Bへの伝動を断続する左右一対のサイドクラッチなどを備えて構成してある。左右のクローラ13A,13Bは、対応するサイドクラッチを介して伝達された動力で作動し、対応するサイドブレーキの作動で制動する。左右のサイドクラッチおよびサイドブレーキは油圧操作式に構成してある。
ちなみに、走行車体1においては、HST12の代わりにギア式変速装置をT/Mケース11の内部に備えて、エンジン9からの動力を、ベルト式伝動装置10、ギア式変速装置、およびサイドクラッチ、などを介して左右のクローラ13A,13Bに伝達するように構成してもよい。また、走行伝動系に、HST12による変速後の動力を変速する副変速装置を装備してもよい。
図1〜4に示すように、搭乗運転部2は、車体フレーム8の前部右側に、フロントパネル14、サイドパネル15、およびエンジンカバー16、などを配備して、車体右側からの乗降が可能となるように形成してある。また、その右端部が、右側のクローラ13Bの右端部(車体横外方側の端部)13Baよりも車体右外方側に位置するように設定してある。フロントパネル14には、十字揺動式で中立復帰型の操縦レバー17などを装備してある。サイドパネル15には、揺動式で位置保持型の変速レバー18などを装備してある。エンジンカバー16には運転座席19を装備してある。
図6は刈取搬送部3の左側面図、図7は刈取搬送部3の右側面図、図8は刈取搬送部3の要部の横断平面図である。図1〜8に示すように、刈取搬送部3は、車体フレーム8の前部左側に昇降揺動可能に連結した刈取フレーム20に、3つの分草部材21A〜21C、左右一対の引起装置22A,22B、バリカン型の刈取装置23、左右一対の掻込搬送装置24A,24B、および供給搬送装置25、などを備えて構成してある。そして、3つの分草部材21A〜21Cを左右方向に所定間隔をあけて配置し、それらの分草部材21A〜21Cのうちの隣接する2つの間に、左右いずれかの対応する引起装置22A,22Bを配置することにより、刈取搬送部3の前部に左右一対の引起枠26A,26Bを形成してある。
3つの分草部材21A〜21Cは、刈取搬送部3の左端部に位置する左分草部材21A、刈取搬送部3の右端部に位置する右分草部材21B、および、それらの間に位置する中分草部材21Cであり、作業走行時に収穫対象となる作物Cの穀稈を引起枠26A,26Bごとに分ける。左右の引起装置22A,22Bは、対応する分草部材21A〜21Cの間に導入された作物Cの穀稈を引き起こす。刈取装置23は、左右の引起装置22A,22Bが引き起こした作物Cの穀稈を刈り取る。左右の掻込搬送装置24A,24Bは、刈り取り後の穀稈を刈取搬送部3の左右中央部に設けた穀稈通過部27に向けて掻き込み搬送し、穀稈通過部27を通過させる。供給搬送装置25は、穀稈通過部27を通過した穀稈を左右の掻込搬送装置24A,24Bから受け取り、受け取った穀稈を、受け取り時の起立姿勢から脱穀用の右倒れ姿勢に姿勢変更しながら脱穀装置4に向けて供給搬送する。
図5に示すように、刈取搬送部3には、エンジン9からの動力を、ベルト式伝動装置10、HST12の入力軸28、および、ベルトテンション式の刈取クラッチ29、などを介して伝達する。
ちなみに、図示は省略するが、HST12による変速後の動力を刈取搬送部3に伝達するように構成してもよい。また、刈り取り搬送専用の変速装置を備えて、エンジン9からの動力を、ベルト式伝動装置10、HST12の入力軸28、刈り取り搬送専用の変速装置、および、刈取クラッチ29、などを介して刈取搬送部3に伝達するように構成してもよい。なお、刈り取り搬送専用の変速装置にはギア式の変速装置やHSTなどを採用することができる。
図1に示すように、刈取搬送部3は、車体フレーム8と刈取フレーム20とにわたって架設した昇降シリンダ30の作動により昇降揺動する。昇降シリンダ30には単動型の油圧シリンダを採用してある。
図示は省略するが、操縦レバー17は、その前後方向への揺動操作に基づいて昇降シリンダ30の作動が制御されるように、昇降用の油圧制御系を介して昇降シリンダ30に連係してある。これにより、操縦レバー17を前後方向に揺動操作することにより、刈取搬送部3を、下限側の作業領域と上限側の非作業位置とにわたって昇降揺動させることができる。そして、その作業領域では、刈取搬送部3の昇降揺動により、収穫する作物Cに対する刈取装置23の高さ位置を調節する刈り高さ調節を行なうことができる。
また、操縦レバー17は、その左右方向への揺動操作に基づいて、その操作方向に応じた左右のサイドクラッチおよびサイドブレーキの作動が制御されるように、操舵用の油圧制御系を介して左右のサイドクラッチおよびサイドブレーキに連係してある。変速レバー18は、その揺動操作に基づいてHST12が作動するように、HST12の変速操作軸に連係機構を介して連係してある。これにより、変速レバー18を揺動操作することにより、左右のクローラ13A,13Bを、停止状態と前進駆動状態と後進駆動状態とに無段階に切り換えることができる。また、前進駆動状態と後進駆動状態のそれぞれにおいては、左右のクローラ13A,13Bの駆動速度を無段階に変更することができる。そして、前進駆動状態または後進駆動状態において、操縦レバー17を左右方向に揺動操作することにより、走行状態を、左右のクローラ13A,13Bを等速駆動させる直進状態と、クラッチ操作で左右のクローラ13A,13Bを差動させる緩旋回状態と、左右一方(旋回内側)のクローラ13A,13Bを制動する急旋回状態とに切り換えることができる。
図1〜4に示すように、脱穀装置4は、その左側部に備えた挟持搬送機構31が、左側のクローラ13Aの左端部(車体横外方側の端部)13Aaよりも車体左外方側に位置するように設定してある。また、その挟持搬送機構31により、刈取搬送部3から右倒れ姿勢で搬送された穀稈の株元側を受け取るとともに、その穀稈の穂先側が脱穀装置4の内部に供給されるように、刈取搬送部3からの穀稈を後方の排ワラ処理装置5に向けて挟持搬送する。そして、図示は省略するが、脱穀装置4の内部に備えた扱胴により、その内部に供給した穀稈の穂先側に脱穀処理を施し、脱穀装置4の内部に備えた篩い式や風力式などの選別機構により、その脱穀処理で得た処理物に選別処理を施す。この選別処理で得た単粒化穀粒は、1番回収部に回収し、1番スクリューにより揚送スクリュー6に向けて搬送する。未単粒化穀粒などは、2番回収部に回収し、2番スクリューにより2番還元装置に搬送し、2番還元装置において再脱穀処理を施した後、選別機構による再選別処理が施されるように、2番還元装置により選別機構に向けて搬送する。切れワラやワラ屑などの塵埃は、脱穀装置4の後端部に形成した排塵口から車外に排出する。脱穀装置4に備えた挟持搬送機構31、扱胴、選別機構、1番スクリュー、2番スクリュー、および2番還元装置などは、揚送スクリュー6とともに、脱穀クラッチなどを介して伝達されるエンジン9からの動力で作動する。
図1に示すように、排ワラ処理装置5は、その上部に備えた排ワラ搬送機構32により、挟持搬送機構31によって脱穀装置4から搬出された排ワラを受け取って後方に向けて搬送する。そして、図示は省略するが、排ワラを長尺のまま車外に放出する長ワラ放出状態と、内部に備えたディスクカッタにより排ワラを細断する細断処理を施した後に車外に放出する細断放出状態とに、排ワラ放出形態の切り換えが可能となるように構成してある。排ワラ搬送機構32およびディスクカッタはエンジン9からの動力で作動する。
図9は刈取搬送部3の要部の縦断正面図、図10は刈取搬送部3の要部の縦断背面図、図11は刈取搬送部3の要部の縦断右側面図である。図1〜11に示すように、刈取フレーム20は、その後端部に走行車体1に連結する左右向きの連結部材33を備えている。連結部材33は、刈取搬送部3を昇降揺動する際の揺動支点となるように丸パイプ材などにより構成してある。連結部材33には、車体の前後方向に沿って走行車体1の前下方に向けて延出する延出部材34を連結してある。延出部材34の延出端には、刈取搬送部3の底部に位置する中間部材35を左右向きに連結してある。中間部材35は、その左右中間部よりも左側の位置に、延出部材34に対する連結部35Aを、その背面から車体の前後方向に沿って車体後方に向けて延出するように形成してある。中間部材35の左端部には、左分草部材21Aを、その前部側が車体の前後方向に沿って車体前方に向けて延出するように連結してある。また、左側の引起装置22Aを支持する支持部材36を立設してある。中間部材35の右端部には、右分草部材21Bを、車体の前後方向に沿って車体前方に向けて延出するように連結してある。中間部材35の左右中間部には、中分草部材21Cを、車体の前後方向に沿って車体前方に向けて延出するように連結してある。
連結部材33の内部には、刈取クラッチ29の出力プーリ37と一体回転する入力軸38などを備えてある。延出部材34の内部には、一対のベベルギア39を介して入力軸38と連動する伝動軸40などを備えてある。中間部材35の内部には、一対のベベルギア41を介して伝動軸40と連動する前後向きの中継軸42や、一対のベベルギア43を介して中継軸42と連動する動力分配軸44などを備えてある。支持部材36の内部には、一対のベベルギア45を介して動力分配軸44と連動する左伝動軸46などを備えてある。中間部材35の右端部には、一対のベベルギア47を介して動力分配軸44と連動する右伝動軸48を、右側の引起装置22Bに向けて立設してある。
図6〜10に示すように、左分草部材21Aは、中間部材35の左端部に連結したL字状の左分草パイプ49Aの前端部に、左分草支持杆50Aを介して板金製の左分草具51Aを連結することにより、刈取搬送部3の左端部に位置するように構成してある。右分草部材21Bは、中間部材35の右端部に連結した右分草パイプ49Bの前端部に、右分草支持杆50Bを介して板金製の右分草具51Bを連結することにより、刈取搬送部3の右端部に位置するように構成してある。中分草部材21Cは、中間部材35の左右中間部に連結した中分草パイプ49Cの前端部に、中分草支持杆50Cを介して板金製の中分草具51Cを連結することにより、刈取搬送部3の略左右中間位置に位置するように(左分草具51Aと右分草具51Bとの間の略左右中間位置に中分草具51Cが位置するように)構成してある。そして、各分草部材21A〜21Cは、隣り合う2つの分草部材21A,21Cまたは21B,21Cとの間に最大2条の作物Cの導入が可能となるように、左右方向に所定間隔をあけて配置してある。また、刈取搬送部3を作業領域に位置させた場合に、それらの姿勢が水平姿勢または略水平姿勢になるように設定してある。
図12は引起装置22A,22Bの構成を示す要部の縦断正面図である。図1〜12に示すように、左右の引起装置22A,22Bは左右対称形状に構成してある。詳述すると、左右の引起装置22A,22Bは、それらの引起ケース52A,52Bの上部に入力軸53A,53Bを備えている。各引起ケース52A,52Bの内部には、入力軸53A,53Bと一体回転する駆動スプロケット54A,54B、駆動スプロケット54A,54Bの横側方に隣接するテンションスプロケット55A,55B、引起ケース52A,52Bの下部に配備した第1ガイドローラ56A,56Bと第2ガイドローラ57A,57B、および、それらにわたって回し掛けた無端チェーン58A,58B、などを備えている。各無端チェーン58A,58Bには、複数の引起爪59A,59Bを一定ピッチで整列配備してある。各引起爪59A,59Bは、それらの遊端側が引起ケース52A,52Bの内部に位置する格納姿勢と、引起ケース52A,52Bの外方に延出して作物Cに作用する作用姿勢とに、それらを無端チェーン58A,58Bに連結する連結ピン60A,60Bを支点にして揺動する。第1ガイドローラ56A,56Bと第2ガイドローラ57A,57Bとの間には、引起爪59A,59Bを下向きの作用姿勢に保持する第1ガイドレール61A,61Bを配備してある。第2ガイドローラ57A,57Bと駆動スプロケット54A,54Bとの間には、引起爪59A,59Bを横向きの作用姿勢に保持する第2ガイドレール62A,62Bを配備してある。
左側の引起装置22Aは、その入力軸53Aが一対のベベルギア63を介して左伝動軸46と連動する。この連動により、その無端チェーン58Aが正面視において右回りに回動する。この回動により、各引起爪59Aが、第1ガイドレール61Aにより下向きの作用姿勢に保持される領域Aa1では、刈取搬送部3の左端側から左右中央側に向けて移動し、この移動により、左分草部材21Aと中分草部材21Cとの間に導入された最大2条の作物Cの穀稈を刈取搬送部3の左右中央側に向けて掻き込み案内する。また、第2ガイドレール62Aにより横向きの作用姿勢に保持される領域Aa2では、引起ケース52Aの下端部から上部に向けて移動し、この移動により、掻き込み案内後の作物Cの穀稈を引き起こす。
右側の引起装置22Bは、その入力軸53Bがチェーン式伝動機構64と一対のベベルギア65とを介して右伝動軸48と連動する。この連動により、その無端チェーン58Bが正面視において左回りに回動する。この回動により、各引起爪59Bが、第1ガイドレール61Bにより下向きの作用姿勢に保持される領域Ab1では、刈取搬送部3の右端側から左右中央側に向けて移動し、この移動により、右分草部材21Bと中分草部材21Cとの間に導入された最大2条の作物Cの穀稈を刈取搬送部3の左右中央側に向けて掻き込み案内する。また、第2ガイドレール62Bにより横向きの作用姿勢に保持される領域Ab2では、引起ケース52Bの下端部から上部に向けて移動し、この移動により、掻き込み案内後の作物Cの穀稈を引き起こす。
つまり、左右の引起装置22A,22Bには、それらに備えた複数の引起爪59A,59Bにより、3つの分草部材21A〜21Cのうちの対応するものの間に導入された作物Cの穀稈を刈取搬送部3の左右中央側に向けて掻き込み案内する案内領域Aa1,Ab1と、掻き込み案内した作物Cの穀稈を引き起こす引き起こし領域Aa2,Ab2とを形成してある。
そして、左側の引起装置22Aは、刈取搬送部3の入力軸38から、伝動軸40、中継軸42、動力分配軸44、および左伝動軸46、などを介して伝達される動力により作動し、この作動により、左分草部材21Aと中分草部材21Cとの間に導入された最大2条の作物Cの穀稈を引き起こすように構成してある。
また、右側の引起装置22Bは、刈取搬送部3の入力軸38から、伝動軸40、中継軸42、動力分配軸44、右伝動軸48、およびチェーン式伝動機構62、などを介して伝達される動力により作動し、この作動により、右分草部材21Bと中分草部材21Cとの間に導入された最大2条の作物Cの穀稈を引き起こすように構成してある。
これにより、左右の引起枠26A,26Bを最大2条の穀稈を引き起こす2条用に構成することができ、刈取搬送部3を、左右一対の引起枠26A,26Bにより最大4条の作物Cの収穫を行う2枠4条刈り仕様に構成することができる。その結果、4つの分草部材と3つの引起装置とを備えて最大4条の作物Cの収穫を行なうように構成した一般的な3枠4条刈り仕様の刈取搬送部に比較して、同様の広い作業幅を有するように構成しながら、構成の簡素化やコストの削減を図ることができる。
また、左右の引起装置22A,22Bに案内領域Aa1,Ab1と引き起こし領域Aa2,Ab2とを形成することにより、構成の簡素化が図られた2枠4条仕様でありながら、4条の作物穀稈を円滑かつ良好に引き起こすことができる。
しかも、刈取搬送部3を、左右の引起装置22A,22Bの上部にわたって、それらの上部に配備した入力軸53A,53Bを連動連結するための重量の大きい軸式伝動機構を架設する必要のないアーチレス構造に構成することができ、これにより、左右の引起装置22A,22Bの上部にわたって軸式伝動機構を架設するアーチ構造を採用する場合に比較して、刈取搬送部3の重心位置を低くすることができ、車体の安定性を向上させることができる。
ところで、図示は省略するが、3枠4条刈り仕様の刈取搬送部にアーチレス構造を採用する場合には、刈取搬送部の左右中央側に配置する引起装置に対する伝動系を、穀稈の搬送通路の下方となる刈取搬送部の左右中央側の底部に配備する必要がある。このような位置に伝動系を配置すると、伝動系のケース上に泥や雑草などの異物が堆積しやすくなり、この堆積した異物に穀稈が接触すると、穀稈の搬送姿勢に乱れが生じるようになり、この乱れに起因して、供給搬送装置25により穀稈を脱穀装置4に向けて搬送する際の穂先側の揃いが悪くなる。すると、脱穀装置4での脱穀処理の際に扱き残しが発生しやすくなり、穀粒回収効率の低下を招きやすくなる。
これに対し、本発明に係る刈取搬送部3は、4条刈りでありながら左右中央側の引起装置を必要としない2枠4条刈り仕様であることから、そのような異物の堆積に起因した穀粒回収効率の低下を未然に回避することができる。
図6〜8、図10および図11に示すように、左側の引起ケース52Aは、その下部を左分草パイプ50Aに左支持部材66Aを介して支持させてある。また、その上部を支持部材36に支持させてある。右側の引起ケース52Bは、その下部を右分草パイプ50Bに右支持部材66Bを介して支持させてある。また、その上部を、アーチ状の連結部材67により、左側の引起ケース52Aの上部に連結してある。つまり、右側の引起ケース52Bは、その上部を、連結部材67と左側の引起ケース52Aとを介して支持部材36に支持させてある。そして、これらの支持構造により、左右の引起装置22A,22Bを、それらの上部側ほど車体後方側に位置する後倒れ姿勢で刈取搬送部3に装備してある。
なお、左右の引起装置22A,22Bとして、複数の引起爪59A,59Bを左右方向に掻き込み移動させることにより案内領域Aa1,Ab1を形成する構造のものに代えて、車体の走行に伴って、作物Cの穀稈を引き起こし領域Aa2,Ab2に向けて左右方向に摺動案内するガイド部材により案内領域Aa1,Ab1を形成する構造のもの採用するようにしてもよい。
図4〜9に示すように、刈取装置23は、各分草部材21A〜21Cの分草パイプ50A〜50Cに支持させてある。そして、その上側において左右方向に一直線状に連続して並ぶように整列配置した複数の可動刃68が、その下側において左右方向に一直線状に連続して並ぶように整列配置した複数の固定刃69に対して、左右方向に一定ストロークで往復摺動することにより、左右の引起装置22A,22Bにより引き起こした作物Cの穀稈を刈り取る。各可動刃68は、クランク式の刈刃駆動装置70を介して動力分配軸44と連動することにより、固定刃69に対して左右方向に一定ストロークで往復摺動する。
つまり、刈取装置23は、刈取搬送部3の動力分配軸44から刈刃駆動装置70を介して伝達される動力により作動し、この作動により、左右の引起装置22A,22Bにより引き起こした作物Cの穀稈を刈り取るように構成してある。
図13は掻込搬送装置24A,24Bの構成を示す要部の横断平面図、図14は掻込搬送装置24A,24Bおよび供給搬送装置25の構成を示す要部の横断平面図である。図5〜10、図13および図14に示すように、左右の掻込搬送装置24A,24Bは、穀稈の株元側の上部に掻き込み作用するベルト式の掻込搬送機構71A,71Bと、穀稈の株元側の下部に掻き込み作用する回転体としてのパッカ72A,72Bとを上下に配置し、かつ、それらの間に、掻込搬送機構71A,71Bおよびパッカ72A,72Bの掻き込み搬送領域に穀稈を案内する案内部材73A,73Bを備えて構成してある。左右の掻込搬送機構71A,71Bは、掻き込み搬送用の複数の突出部74a,74bを一定ピッチで一体形成したゴム製の掻込ベルト74A,74Bを、大径の駆動プーリ75A,75Bと小径の従動プーリ76A,76Bとにわたって回し掛けて構成してある。左右の掻込搬送機構71A,71Bの上部には、掻込ベルト74A,74Bのベルト側とともに駆動プーリ75A,75Bと従動プーリ76A,76Bとを上方から覆うことにより、掻込搬送機構71A,71Bに対する穀稈の巻き付を防止するカバー77A,77Bを装備してある。左右のパッカ72A,72Bは、その外周部に掻き込み搬送用の複数の突出部72a,72bを一定ピッチで一体形成してある。
左側の掻込搬送装置24Aは、その掻込搬送機構71Aの駆動プーリ75Aとパッカ72Aとを、刈取搬送部3の左右中央側に回転可能な状態で位置するように、L字状の支軸78を介して支持部材36に支持させてある。また、その掻込搬送機構71Aの従動プーリ76Aを、刈取搬送部3の左端部において、駆動プーリ75Aよりも車体前側に位置するように、左支持部材66Aの左端部に一体装備した左補助部材79Aに支持させてある。
右側の掻込搬送装置24Bは、その掻込搬送機構71Bの駆動プーリ75Bとパッカ72Bとを、刈取搬送部3の左右中央側に位置するように、右伝動軸48に外嵌した筒軸80に装備してある。つまり、右伝動軸48および筒軸80が、掻込搬送機構71Bの駆動プーリ75Bとパッカ72Bとを支持する支持部材として機能する。また、その掻込搬送機構71Bの従動プーリ76Bを、刈取搬送部3の右端部において、駆動プーリ75Bよりも車体前側に位置するように、右支持部材66Bの右端部に一体装備した右補助部材79Bに支持させてある。
そして、この支持構造により、左右の掻込搬送装置24A,24Bは、刈取搬送部3を作業領域内に位置させた状態では、それらの掻込搬送機構71A,71Bの姿勢が、刈取搬送部3の左右中央側ほど車体後方側に位置する傾斜姿勢で、後上がりの傾斜姿勢となり、また、それらのパッカ72A,72Bの姿勢が、後上がりの傾斜姿勢となるように刈取搬送部3に装備してある。
これにより、左右の掻込搬送装置24A,24Bは、それらの掻込ベルト74A,74Bの突出部74a,74bやパッカ72A,72Bの突出部72a,72bにより、刈取搬送部3の左右両側では、それらの搬送領域内に位置する刈り取り後の穀稈を左右外方の下方側から受け止めて持ち上げるようにしながら穀稈通過部27に向けて掻き寄せ、穀稈通過部27の直前では、掻き寄せた穀稈を前下方側から受け止めて持ち上げるようにしながら穀稈通過部27に掻き入れ、穀稈通過部27では、掻き入れた穀稈を前下方側から受け止めて持ち上げるようにしながら穀稈通過部27の後方に位置する供給搬送装置25に向けて掻き出すことにより、穀稈通過部27を通過させる。
その結果、左右の掻込搬送装置24A,24Bにより刈り取り後の穀稈を掻き込み搬送する際には、その穀稈の株元側を刈取装置23に接触しにくくすることができ、これにより、その接触により穀稈の搬送姿勢が乱れ、その乱れに起因して、供給搬送装置25により穀稈を脱穀装置4に向けて搬送する際の穂先側の揃いが悪くなり、脱穀装置4での脱穀処理において扱き残しが発生しやすくなる、といった穀粒回収率の低下を未然に回避することができる。
左側の掻込搬送装置24Aは、その掻込搬送機構71Aの駆動プーリ75Aとパッカ72Aとが一体回転するように、その駆動プーリ75Aとパッカ72Aとを一体形成してある。右側の掻込搬送装置24Bは、その掻込搬送機構71Bの駆動プーリ75Bとパッカ72Bとが筒軸80と一体回転するように、その駆動プーリ75Bとパッカ72Bとを筒軸80に連結してある。筒軸80は、ギア式の減速機構81を介して右伝動軸48と連動する。左側のパッカ72Aは右側のパッカ72Bと噛み合い連動する。
つまり、左右の掻込搬送装置24A,24Bは、右伝動軸48から減速機構81および筒軸80を介して伝達される動力により作動し、この作動により、刈り取り後の穀稈を、左右のパッカ72A,72Bの噛合部である穀稈通過部27に向けて掻き込み搬送し、穀稈通過部27から後方の供給搬送装置25に向けて掻き出し搬送するように構成してある。
図1、図3、図4〜7および図14に示すように、供給搬送装置25は、左右の掻込搬送装置24A,24Bにより穀稈通過部27の後方に掻き出された穀稈の株元側を挟持して脱穀装置4の挟持搬送機構31に向けて搬送する株元挟持搬送機構82と、その穀稈の穂先側を係止して脱穀装置4の供給口4Aに向けて搬送する穂先係止搬送機構83とを上下に配置して構成してある。株元挟持搬送機構82および穂先係止搬送機構83は、それらの入力軸として機能する伝動軸84が一対のベベルギア85を介して刈取搬送部3の入力軸38と連動することにより、穀稈通過部27を通過した穀稈を起立姿勢から脱穀用の右倒れ姿勢に姿勢変更しながら脱穀装置4に向けて供給搬送するように構成してある。
供給搬送装置25は、その搬送終端部25aに位置する刈取搬送部3の入力軸38を支点にした上下揺動が可能となるように構成してある。そして、この上下揺動により、その搬送始端部25bを、穀稈通過部27を通過した穀稈に対して、その稈長方向に位置調節することができ、この位置調節により、搬送する穀稈における脱穀装置4の内部に対する穂先側の供給長さを変更することができ、脱穀装置4による穀稈の扱き深さを調節する扱き深さ調節を行なうことができる。
刈取搬送部3には、供給搬送装置25の左右方向への振れを抑制しながら、供給搬送装置25の搬送始端部25bを上下方向に揺動案内するガイド杆86を立設してある。ガイド杆86は、供給搬送装置25の揺動支点を中心とする円弧状に湾曲形成してある。
供給搬送装置25には、刈取搬送部3の入力軸38を支点にして供給搬送装置25を上下方向に揺動駆動することにより、供給搬送装置25の搬送始端部25bを、穀稈通過部27を通過した穀稈に対して稈長方向に位置調節する調節手段87を装備してある。また、供給搬送装置25の穀稈搬送経路88を跨いで株元挟持搬送機構82の挟持ガイド杆89を支持する支持フレーム90を備えてある。
調節手段87は、刈取搬送部3に備えた電動モータ91の作動により、電動モータ91の出力軸(図示せず)に備えたピニオンギア(図示せず)と、このピニオンギアと噛合するセクタギア92とを介して、セクタギア92に一体装備した揺動アーム93を揺動することにより、揺動アーム93に吊下ロッド94を介して連係した供給搬送装置25を上下方向に揺動駆動するように構成してある。
支持フレーム90には、供給搬送装置25により搬送される穀稈の穂先位置を検出する穂先センサ95を備えてある。穂先センサ95には、一対のセンサアーム96A,96Bを備えている。一対のセンサアーム96A,96Bは、供給搬送装置25により搬送される穀稈の穂先側において、稈長方向に所定間隔をあけて位置するように配置してある。そして、穂先センサ95は、一対のセンサアーム96A,96Bにより検出した穀稈の穂先位置を、マイクロコンピュータを利用して構成した制御装置97に出力する。制御装置97には、穂先センサ95の出力に基づいて、脱穀装置4の内部に供給する穀稈の穂先側の長さが一定になるように調節手段87の電動モータ91の作動を制御する扱き深さ調節用の制御手段97Aを備えてある。制御手段97Aは、穀稈の株元側に位置するセンサアーム96Aが穀稈の穂先側を検出し、かつ、穀稈の穂先側に位置するセンサアーム96Bが穀稈の穂先側を検出しない状態が維持されるように、電動モータ91の作動を制御することにより、脱穀装置4の内部に供給する穀稈の穂先側の長さを一定にする。
図示は省略するが、一対のセンサアーム96A,96Bは、供給搬送装置25が搬送する穀稈に対する稈長方向での位置変更を一体的に行えるように構成してある。そして、この位置変更により、両センサアーム96A,96Bの位置を穀稈の株元側に変更することにより、脱穀装置4による穀稈の扱き深さを、脱穀装置4の内部に供給する穀稈の穂先長さを短くする浅扱き側に調節することができる。また、両センサアーム96A,96Bの位置を穀稈の穂先側に変更することにより、脱穀装置4による穀稈の扱き深さを、脱穀装置4の内部に供給する穀稈の穂先長さを長くする深扱き側に調節することができる。
図1〜3、図6および図7に示すように、穂先センサ95には、一対のセンサアーム96A,96Bの位置変更操作を可能にする操作レバー98を装備してある。操作レバー98は、穂先センサ95における搭乗運転部2に近い位置に位置するように配置設定してある。これにより、搭乗運転部2に居ながら操作レバー98を操作することができ、脱穀装置4による穀稈の扱き深さを調節することができる。
図8、図9および図13に示すように、刈取搬送部3において、中分草部材21Cは、穀稈通過部27の左右幅内である左右のパッカ72A,72Bの谷径da,dbの間に位置するように配置してある。
この配置により、左右の掻込搬送装置24A,24Bによって刈り取り後の穀稈を穀稈通過部27に向けて搬送する際に、その穀稈が中分草部材21Cを跨ぐようにして移動することを防止することができる。その結果、穀稈が中分草部材21Cを跨ぐ場合に比較して、その穀稈の株元側を中分草部材21Cに接触しにくくすることができ、これにより、その接触により穀稈の搬送姿勢が乱れることに起因して、供給搬送装置25により穀稈を脱穀装置4に向けて搬送する際の穂先側の揃いが悪くなり、脱穀装置4での脱穀処理において扱き残しが発生しやすくなる、といった穀粒回収率の低下を未然に回避することができる。
また、前述したように、左右の掻込搬送装置24A,24Bは、刈取搬送部3を作業領域内に位置させた状態では、それらの掻込搬送機構71A,71Bの姿勢が、刈取搬送部3の左右中央側ほど後方に位置する傾斜姿勢で、かつ、後上がりの傾斜姿勢となり、また、それらのパッカ72A,72Bの姿勢が、後上がりの傾斜姿勢となることにより、刈取搬送部3を作業領域内に位置させた場合に水平姿勢または略水平姿勢になる中分草部材21Cに対しては、その搬送方向下手側ほど中分草部材21Cから上方に離れるようになる。これにより、左右の掻込搬送装置24A,24Bによって穀稈通過部27に向けて掻き込み搬送される穀稈が、穀稈通過部27において中分草部材21Cに接触することを防止することができ、結果、その接触による穀稈の搬送姿勢の乱れに起因した穀粒回収率の低下を阻止することができる。
図15は4条刈りの作業状態を示す要部の概略平面図、図16は3条刈りの作業状態を示す要部の概略平面図である。図3、図4、図15および図16に示すように、刈取搬送部3の左側端(刈取搬送部3における搭乗運転部2から離れる側の左右一側端)に位置する左分草部材21Aと、左側(搭乗運転部2から離れる側)のクローラ13Aは、左分草部材21Aの分草始端21Aaと左側のクローラ13Aの左端部13Aaとの車体左右方向での位置が一致するように配置してある。また、刈取搬送部3の右側端(刈取搬送部3における搭乗運転部側の左右一側端)に位置する右分草部材21Bと、右側(搭乗運転部側)のクローラ13Bは、右側のクローラ13Bの右端部13Baが、右分草部材21Bの分草始端21Baから車体右外方側に少しだけ食み出す状態で、右分草部材21Bの分草始端21Baと右側のクローラ13Bの右端部13Baとの車体左右方向での位置が略一致するように配置してある。
つまり、左右のクローラ13A,13Bは、それらの車体横外方側の端部間距離Lが、最大4条の刈り取り搬送が可能となるように構成した刈取搬送部3の作業幅Wよりも大きくなるように、左右方向に所定間隔をあけて配置してある。これにより、左右のクローラ13A,13Bの轍間距離を長くすることができ、各クローラ13A,13Bの接地長さを長くすることによる旋回性能の低下を招くことなく、湿田性能を向上させることができる。
また、左側のクローラ13Aは、その左端部13Aaの位置が左分草部材21Aの分草始端21Aaと左右方向で一致することにより、その分草始端21Aaから車体左側に食み出さないようになっている。これにより、走行車体1の左外側方に未刈りの作物Cxが存在する回り刈りや走行車体1の左右両外側方に未刈りの作物Cx,Cyが存在する中割りなどの作業走行時に、左側のクローラ13Aにより、その左外側近傍に位置する未刈りの作物Cxを踏み付ける、あるいは、左側のクローラ13Aにより、その左外側近傍に位置する未刈りの作物Cxに泥寄せする、などの不都合の発生を防止することができ、その踏み付けや泥寄せに起因した作業効率の低下を回避することができる。
一方、右側のクローラ13Bは、その右端部13Baの位置が右分草部材21Bの分草始端21Baと左右方向で略一致することにより、走行車体1の左右両外側方に未刈りの作物Cx,Cyが存在する中割りなどの作業走行時に、右分草部材21Bの分草始端21Baが、刈取搬送部3の作業幅内最右の作物Cbと、この作物Cbと隣り合う作業幅外の作物Cyとの間における、作業幅内の作物Cbの側近を通るように設定すれば、右側のクローラ13Bにより、その右外側近傍に位置する未刈りの作物Cyを踏み付ける、といった不都合の発生を防止することができ、その踏み付けに起因した作業効率の低下を回避することができる。
ちなみに、右側のクローラ13Bにおける右分草部材21Bの分草始端21Baから車体右外方側への食み出し長さLzは、右側のクローラ13Bによる車体右外側近傍の未刈り作物Cyの踏み付けを防止できる長さであれば、例えば、作物Cの植え付け間隔Scとの関係から、Lz=1/3*ScやLz=1/4*Scなどの種々の長さに設定することが可能であるが、Lz≦1/6*Scとすることが好ましい。そして、その食み出し長さLzが短いほど、右側のクローラ13Bによる車体右外側近傍の未刈り作物Cyに対する泥寄せを抑制することができ、その泥寄せに起因した作業効率の低下を抑制することができる。逆に、その食み出し長さLzが長いほど、左右のクローラ13A,13Bの轍間距離を長くすることができ、湿田性能を向上させることができる。
つまり、回り刈りや中割りなどの作業走行時に、左右のクローラ13A,13Bによる未刈り作物Cx,Cyの踏み付けや未刈り作物Cx,Cyへの泥寄せを防止することのできる全面狩り仕様に構成することができる。
なお、右側のクローラ13Bを、その右端部13Baが右分草部材21Bの分草始端21Baと左右方向で一致する、または、右分草部材21Bの分草始端21Baよりも車体内方側に位置するように配置してもよい。また、左側のクローラ13Aを、その左端部13Aaが左分草部材21Aの分草始端21Aaよりも車体内方側に位置するように配置してもよく、また、左側のクローラ13Aによる車体左外側近傍の未刈り作物Cxの踏み付けを防止でき、かつ、未刈り作物Cxに対する泥寄せを抑制できる範囲内で、その左端部13Aaが左分草部材21Aの分草始端21Aaよりも車体左外方側に位置するように配置してもよい。
図15に示すように、3つの分草部材21A〜21Cは、4条の作物Cを収穫する作業走行時に、右分草部材21Bを、その分草始端21Baが、刈取搬送部3の作業幅内最右の作物Cbと、この作物Cbと隣り合う右側の作業幅外の作物Cyまたは作物の刈り跡Czとの間における、作業幅内の作物Cbの側近を通るように、作物Cに対して位置合わせした場合には、中分草部材21Cが、その作用対象となる作業幅内の左右中央側に位置する2つの作物Cc,Cdの中間位置または略中間位置を通り、かつ、左分草部材21Aが、刈取搬送部3の作業幅内最左の作物Caと、この作物Caと隣り合う左側の作業幅外の作物Cxまたは作物の刈り跡Czとの間における、それらの中間位置よりも作業幅内の作物Caに近い位置を通るように配置してある。
つまり、4条刈りの作業走行時には、搭乗運転部2の前下方に位置することにより搭乗運転部2からの視認性の高い右分草部材21Bの分草始端21Baを、作業幅内の最右に位置する作物Cbの右横側近を通るように位置合わせすることにより、搭乗運転部2から離れることにより搭乗運転部2からの視認性の低い左分草部材21Aおよび中分草部材21Cを、それらの視認を行なうことなく、作物Cの植え付け位置から外れた適切な位置に通すことができ、それらの分草部材21A,21Cによる作物Cの押し倒しや踏み付けを回避することができる。
これにより、作物Cの倒伏が激しい場合であっても、各分草部材21A〜21Bを作物Cに対する適切な位置に容易かつ確実に位置合わせすることができ、各分草部材21A〜21Bおよび左右の引起装置22A,22Bによる穀稈の引き起こしを効率よく行うことができる。
また、中分草部材21Cが、作業幅内の左右中央側に位置する2つの作物Cc,Cdの中間位置または略中間位置を通ることにより、左側の引起枠26Aの枠内に導入される2条の作物Ca,Ccの穀稈と、右側の引起枠26Bの枠内に導入される2条の作物Cb,Cdの穀稈とを、中分草部材21Cの真上に位置する穀稈通過部27を挟んだ左右対称の位置に位置させることができ、その左右対象となる穀稈の穀稈通過部27からの距離を一様に短くすることができる。
これにより、左右の引起枠26A,26Bに2条ずつの作物Cの穀稈を導入するようにしながらも、中分草部材21Cが、作業幅内の左右中央側に位置する2つの作物Cc,Cdの中間位置から大きく外れることにより、左右の引起枠26A,26Bのいずれか一方に導入される穀稈の穀稈通過部27からの距離が不必要に長くなり、左右いずれか一方の掻込搬送装置24A,24Bによる穀稈の搬送効率が低下することを防止することができる。また、左右いずれか一方の掻込搬送装置24A,24Bによる穀稈の搬送に不必要な遅れが生じることを防止することができ、この遅れに起因した穀稈の搬送姿勢の乱れにより、供給搬送装置25により穀稈を脱穀装置4に向けて搬送する際の穂先側の揃いが悪くなり、脱穀装置4での脱穀処理において扱き残しが発生しやすくなる、といった穀粒回収率の低下を防止することができる。
しかも、左分草部材21Aが、作業幅内の最左に位置する作物Caの左横近くを通ることにより、4条の作物Cを収穫する作業走行時には、常に、右分草部材21Bの分草始端21Baを、作業幅内の最右に位置する作物Cbの右横側近を通るように位置合わせする必要が生じることになる。
これにより、4条の作物Cを収穫する作業走行時には、常に、各分草部材21A〜21Cを、作物Cに対する上述した適切な位置に確実に通すことができるようになり、結果、4条の作物Cを収穫する作業走行時における作業性の向上を図ることができる。
図16に示すように、3つの分草部材21A〜21Cは、3条の作物Cを収穫する作業走行時に、右分草部材21Bを、その分草始端21Baが、刈取搬送部3の作業幅内最右の作物Cbと隣り合う右側の作物の刈り跡Czの上方を通るように、右側の作物の刈り跡Czに対して位置合わせした場合には、中分草部材21Cが、その作用対象となる作業幅内の右側と左右中央側とに位置する2つの作物Cb,Ccの間における右側の作物Cbよりも左右中央側の作物Ccに近い位置を通り、かつ、左分草部材21Aが、その作用対象となる、刈取搬送部3の作業幅内最左の作物Caと、この作物Caと隣り合う左側の作業幅外の作物Cxまたは作物の刈り跡Czとの間の中間位置または略中間位置を通るように配置してある。
つまり、3条刈りの作業走行時には、搭乗運転部2の前下方に位置することにより搭乗運転部2からの視認性の高い右分草部材21Bの分草始端21Baを、右側の刈り跡Czの上方を通るように位置合わせすることにより、搭乗運転部2から離れることにより搭乗運転部2からの視認性の低い左分草部材21Aおよび中分草部材21Cを、それらの視認を行なうことなく、作物Cの植え付け位置から外れた適切な位置に通すことができ、それらの分草部材21A,21Cによる作物Cの押し倒しや踏み付けを回避することができる。
これにより、作物Cの倒伏が激しい場合であっても、右分草部材21Bおよび中分草部材21Cを作物Cに対する適切な位置に容易かつ確実に位置合わせすることができ、各分草部材21A〜21Bおよび左右の引起装置22A,22Bによる穀稈の引き起こしを効率よく行うことができる。
また、中分草部材21Cが、作業幅内の左右中央側に位置する作物Ccの右横近くを通ることにより、左側の引起枠26Aの枠内に導入される2条の作物Ca,Ccの穀稈と、右側の引起枠26Bの枠内に導入される1条の作物Cbの穀稈のうち、中分草部材21Cの真上に位置する穀稈通過部27から最も離れる左側の作物Caの穀稈を、穀稈通過部27からの距離が最短になるようにすることができる。
これにより、左右の掻込搬送装置24A,24Bにより3条の穀稈を穀稈通過部27に向けて掻き込み搬送する際の搬送効率を向上させることができる。また、左右いずれか一方の掻込搬送装置24A,24Bによる穀稈の搬送に不必要な遅れが生じることを防止することができ、この遅れに起因した穀稈の搬送姿勢の乱れにより、供給搬送装置25により穀稈を脱穀装置4に向けて搬送する際の穂先側の揃いが悪くなり、脱穀装置4での脱穀処理において扱き残しが発生しやすくなる、といった穀粒回収率の低下を防止することができる。
しかも、左分草部材21Aが、作業幅内の最左に位置する作物Caと、左側の作業幅外の作物Cxまたは作物の刈り跡Czとの間の中間位置または略中間位置を通ることにより、3条の作物Cを収穫する作業走行時には、搭乗運転部2からの視認性が最も低い左分草部材21Aを、その作用対象の作物Cの植え付け位置から、その作用範囲内での最も離れた位置に位置させることができる。
これにより、3条の作物Cを収穫する作業走行時には、搭乗運転部2からの視認性が最も低い左分草部材21Aを、その作用対象の作物Cに良好に作用させることができるとともに、左分草部材21Aが作用対象の作物Cの植え付け位置に位置することをより確実に防止することができる。
ちなみに、上述した3つの分草部材21A〜21Cと作物Cの位置関係を満たすための3つの分草部材21A〜21Cの具体的な配置としては、3つの分草部材21A〜21Cの左右間隔Sa,Sbと作物Cの植え付け間隔Scとの関係が、Sa=Sb=1.75*Scとなる配置や、Sa=Sb≒1.75*Scとなる配置、あるいは、Sa>SbでSa≒1.75*ScかつSb≒1.75*Scとなる配置や、Sa<SbでSa≒1.75*ScかつSb≒1.75*Scとなる配置、などが考えられる。そして、4条の作物Cを収穫する作業走行時には、左分草部材21Aとその右横に位置する作業幅内最左の作物Caとの離間距離Laが、右分草部材21Aとその左横に位置する作業幅内最右の作物Cbとの離間距離Lbよりも大きくなることが好ましい。
図3、図4および図8に示すように、左右の分草部材21A,21Bは、それらの分草具51A,51Bの姿勢が、車体後部側ほど車体左右方向の車体内方側に位置する傾斜姿勢となるように構成してある。これにより、刈取搬送部3の作業幅内の左右両端部に位置する作物Ca,Cbを、作業幅内の左右中央に向けて寄せやすくすることができる。
図1〜4および図6〜9に示すように、刈取搬送部3には、左分草杆99Aと右分草杆99Bと中分草杆99Cとを備えてある。
図1、図3、図4および図6に示すように、左分草杆99Aは、刈取搬送部3の左側部に、走行車体1の左外方に張り出すように傾倒した作用姿勢と、走行車体側に退避するように起立した格納姿勢とに、揺動による姿勢変更が可能となるように装備してある。そして、左分草杆99Aを作用姿勢に切り換えることにより、走行車体1の左外側方に存在する未刈り作物Cxの車体内方側への倒伏を阻止することができる。
図17は左分草杆99Aの分草終端部側の取り付け構造を示す要部の斜視図である。図1、図3、図4、図6および図17に示すように、左分草杆99Aは、その分草始端部99aを左分草具51Aに第1連結部100を介して揺動可能に連結してある。また、その分草終端部側から延出した連結杆101の延出端部101aを刈取搬送部3の支持部材36に第2連結部102を介して揺動可能に連結してある。
第1連結部100は、左分草具51Aに溶接したL字状のブラケット103、および、このブラケット103に左分草杆99Aの分草始端部99aを揺動可能に連結する連結ピン104により、連結ピン104が左分草具51Aの左側部に近接するように構成してある。
第2連結部102は、支持部材36に溶接したブラケット105、このブラケット105に連結杆101の延出端部101aを揺動可能に連結する連結ピン106、および、左分草杆99Aの姿勢保持を可能にする保持機構107により構成してある。そして、左側の引起枠26Aにおける左側端部の直後方箇所に存在する空間を有効利用して、第1連結部100よりも刈取搬送部3の左右中央側で、かつ、左側のクローラ13Aの左端部13Aaよりも走行車体1の左右中央側に位置するように配置してある。
保持機構107は、連結ピン106を中心とする円弧状の長孔105aをブラケット105に形成し、この長孔105aにボルト108を挿通した後、このボルト108の挿通始端側に圧縮バネ109を外嵌し、一対のナット110を螺合して、圧縮バネ109の作用により、連結杆101の延出端部101aとブラケット105とを圧接することにより、長孔105aに沿った左分草杆99Aの作用姿勢と格納姿勢とにわたる揺動操作を許容しながら、左分草杆99Aの姿勢保持を行うように構成してある。
上記の構成により、第2連結部102を、保持機構107を備える大型に構成しても、左分草杆99Aの姿勢を格納姿勢に切り換えた状態で刈取搬送部3の左端部を畦際に位置させて畦際の作物Cを収穫する作業走行時などにおいて、第2連結部102が畦などの他物に接触して変形する虞を未然に回避することができる。これは、畦をコンクリートブロックなどにより低く形成した圃場において、そのコンクリートブロックとの接触による第2連結部102の変形を阻止する上において特に有効である。
また、第1連結部100の連結ピン104と第2連結部102の連結ピン106との中心を通る左分草杆99Aの揺動軸心Pが、その刈取搬送部3の後部側ほど刈取搬送部3の左右中心側に位置する傾斜姿勢になることにより、左分草杆99Aの揺動軸心Pを刈取搬送部3の前後方向に沿う姿勢に設定する場合に比較して、左分草杆99Aを、格納姿勢と作用姿勢とにわたって揺動操作する際の操作角を小さくすることができ、左分草杆99Aの操作性を向上させることができる。
図18は左分草杆99Aを格納姿勢に切り換えた状態を示す要部の平面図である。図4および図18に示すように、左分草杆99Aは、その格納姿勢では、その分草終端部99bが刈取搬送部3の左側端よりも走行車体1の左右中央側に位置する状態で、その分草終端部99bと刈取搬送部3の左側端との車体左右方向での位置が略一致するように構成してある。
これにより、左分草杆99Aは、その格納姿勢では、その分草終端部99bが左側のクローラ13Aの左端部13Aaよりも走行車体1の左右中央側に位置する状態で、その分草終端部99bと左側のクローラ13Aの左端部13Aaとの車体左右方向での位置が略一致するようになる。
つまり、左分草杆99Aを格納姿勢に切り換えることにより、左分草杆99Aの分草終端部99bを、刈取搬送部3の左側端および左側のクローラ13Aの左端部13Aaよりも走行車体1の左右中央側に位置させることができ、これにより、左分草杆99Aの全体を、左側のクローラ13Aの左端部13Aaよりも車体左外方側に位置する挟持搬送機構31の左外側端よりも車体左右方向での車体内方側に位置させることができる。その結果、左分草杆99Aの分草終端部99bなどが、挟持搬送機構31の左外側端よりも車体左外方側に位置する場合に比較して、左分草杆99Aを格納姿勢に切り換えた状態でのコンバイン全体としての左右幅を小さくすることができ、納屋などに対する収納性を向上させることができる。
左分草杆99Aは、その格納姿勢では、その分草終端部99bが供給搬送装置25の穀稈搬送経路88よりも車体上方側に位置するように構成してある。これにより、左分草杆99Aを格納姿勢に切り換えた状態においても、穀稈を、供給搬送装置25によって、左分草杆99Aの分草終端部99bに接触させることなく脱穀装置4に向けて搬送することができる。
つまり、左分草杆99Aを格納姿勢に切り換えた状態で作業走行を行なっても、供給搬送装置25により搬送される穀稈が左分草杆99Aの分草終端部99bに接触する虞を未然に回避することができる。その結果、その接触に起因して穀稈の搬送姿勢に乱れが生じることにより、穀稈の穂先側の揃いが悪くなり、脱穀装置4での脱穀処理において扱き残しが発生しやすくなる、といった穀粒回収率の低下を未然に回避することができる。
しかも、左分草杆99Aを格納姿勢に切り換えた状態では、左分草杆99Aの全体が、脱穀装置4の挟持搬送機構31の左外側端よりも車体左右方向での車体内方側に位置することにより、畦際で作業走行を行なう場合には、車体をより畦に近づけた状態で作業走行させることができ、畦際の作物Cに対する左分草部材21Aの位置合わせが行ないやすくなる。その結果、畦際での作業性を向上させることができる。
また、稈長が65〜75cm程度で倒伏の虞が少ない短稈の作物Cに対しては、その穂先に左分草杆99Aが作用しないように左分草杆99Aを格納姿勢に切り換えておくことにより、左分草杆99Aが作物Cの穀稈に分草作用することによって穀稈から穀粒が離脱する虞を未然に回避することができ、その結果、穀粒回収効率を向上させることができる。これは、脱粒しやすいインディカ米などを収穫する際に特に有効である。
図1〜4および図6〜8に示すように、中分草杆99Cは、刈取搬送部3の前端部において、左右の引起装置22A,22Bの略左右中間位置に位置するように、中分草具51Cから連結部材67にわたって立設してある。
これにより、左右の各引起装置22A,22Bの案内領域Aa1,Ab1における各引起爪59A,59Bの掻き込み作用により、他方の引起装置22A,22Bに向けて倒伏することにより、各引起装置22A,22Bの引き起こし領域Aa1,Ab1の車体前方側において車体正面視で交差するようになる作物Cの穀稈を、中分草杆99Cの分草作用により、対応する引起装置22A,22Bの引き起こし領域Aa1,Ab1に向けて左右に分けることができる。
その結果、収穫する作物Cの穀稈が、各引起装置22A,22Bの案内領域Aa1,Ab1における各引起爪59A,59Bの掻き込み作用により、各引起装置22A,22Bの引き起こし領域Aa1,Ab1の車体前方側において、車体正面視で交差して絡み合う虞を回避することができ、その絡み合いに起因した作物穀稈の引き起こし効率の低下や引き起こし不良の発生を防止することができる。
図3、図4、図8、図12および図13に示すように、右側の引起枠26Bに備えた2条用の引起装置22Bは、その引き起こし領域Ab2が搭乗運転部2から離れる左側に位置するように構成してある。
これにより、右側の引起枠26Bに、引き起こし領域Ab2が搭乗運転部側となる右側に位置するように構成した2条用の引起装置を装備する場合に比較して、搭乗運転部2からの車体前方に対する視界を良好にすることができ、車体前方の作業地などに対する搭乗運転部2からの視認性を向上させることができる。
左右の引起装置22A,22Bは、それらの引き起こし領域Aa2,Ab2の左右幅Wa,Wbを、最大2条の穀稈の引き起こしに対応する幅広に形成してある。また、左右の引起装置22A,22Bに備える引起爪59A,59Bは、幅広の引き起こし領域Aa2,Ab2に対応する長尺に形成してある。
これにより、左右の引起装置22A,22Bが常に2条ずつの穀稈を引き起こす4条刈りの作業走行時において、穀稈が左右の対応する引き起こし領域Aa2,Ab2を通過する際の抵抗が許容範囲を超えることを防止することができる。その結果、4条刈りの作業走行時においても、左右の引起装置22A,22Bによる穀稈の引き起こしを円滑かつ良好に行なうことができる。
また、各引起爪59A,59Bを、幅広の引き起こし領域Aa2,Ab2に対応する長尺に形成することにより、幅広の引き起こし領域Aa2,Ab2において引起爪59A,59Bが穀稈に作用しなくなるデッドゾーンが形成されることを防止することができる。その結果、左右の引起装置22A,22Bの各引き起こし領域Aa2,Ab2を、2条の穀稈の通過を許容する幅広に形成しながらも、左右の引起装置22A,22Bによる穀稈の引き起こしを確実に行なうことができる。
ちなみに、3条刈りの作業走行時と4条刈りの作業走行時とにかかわらず、常に2条の穀稈が供給される左側の引起装置22Aのみを、その引き起こし領域Aa2の左右幅Waが、最大2条の穀稈の引き起こしに対応する幅広になり、かつ、その引起爪59Aが、幅広の引き起こし領域Aa2に対応する長尺になるように構成してもよい。
図2、図5および図7〜9に示すように、刈刃駆動装置70は、刈取搬送部3の右側端に位置するように中間部材35の右端部に配備してある。これにより、刈刃駆動装置70を刈取搬送部3の左右中央側に配備する場合に招く虞のある、刈り取り後の穀稈が刈刃駆動装置70に絡み付く不都合や、刈刃駆動装置70を刈取搬送部3の左側端に配備する場合に招く虞のある、走行車体1の左外側方のみに未刈りの作物Cxが存在する作業頻度の高い回り刈りの作業走行時に、その未刈りの作物Cxが刈刃駆動装置70に絡み付く不都合の発生を未然に回避することができる。
また、供給搬送装置25を、穀稈通過部27に掻き込み搬送された穀稈を車体左側の脱穀装置4に向けて供給搬送するように刈取搬送部3における左寄りの位置に配備することにより、その左側が重くなる刈取搬送部3の右側端に、比較的に重量の大きい刈刃駆動装置70を配備することにより、刈取搬送部3の左右バランスを向上させることができる。
刈取搬送部3の右側端には、刈刃駆動装置70を覆う板金製のカバー111を配備してある。カバー111は、右分草部材21Bを中間部材35の右端部に連結する3本のボルト112のうち、上側の2本のボルト112を利用して、中間部材35の右端部に、右分草杆99Bとともに共締め連結してある。
これにより、走行車体1の右外側方にも未刈りの作物Cyが存在する中割りの作業走行時には、右分草杆99Bおよびカバー111により、その車体右外側方の未刈り作物Cyが刈刃駆動装置70に絡み付く虞を未然に回避することができる。
また、右分草部材21Bと右分草杆99Bとカバー111とを、中間部材35の右端部に個々にボルト連結する場合に比較して、組み付け製の向上を図ることができる。しかも、右分草杆99Bやカバー111の交換を行う場合には、右分草部材21Bが中間部材35の右端部から完全に取り外されることを防止しながら、それらの交換を行うことができる。
図2〜4に示すように、走行車体1の前部右側端に位置するサイドフレーム113は、その前半部を、前端側ほど右側のクローラ13Bの右端部13Baに近づくように車体左右方向に傾斜させてある。これにより、走行車体1の右外側方にも未刈りの作物Cyが存在する中割りの作業走行時には、サイドフレーム113の外側面113aを、車体右外側方の未刈り作物Cyを車体右外側方に案内する案内面として機能させることができる。その結果、走行車体1の右外側方に存在する未刈り作物Cyの車体内方側への倒伏を右分草杆99Bとともに阻止することができる。
ところで、左右の掻込搬送装置24A,24Bにおいて、左右の掻込搬送機構71A,71Bは、ゴム製の掻込ベルト74A,74Bによって穀稈の掻き込み搬送を行なうことにより、刈り取り前の穀稈に作用した場合には、掻込ベルト74A,74Bの突出部74a,74bが、刈り取り前の穀稈の強度に負けて変形し、この変形により、その穀稈が刈り取られるまでの間、その穀稈を穀稈通過部27に向けて掻き込み搬送しなくなる。また、このときの作業走行により、刈り取り前の穀稈を車体前方に向けて押し曲げるようになる。
そして、このように押し曲げられた穀稈が、刈取装置23の刈り取り位置に達して刈り取られると、その刈り取りとともに、車体前方に向けて押し曲げられた状態からまっすぐの状態に戻ろうとする復元作用により、左右の掻込搬送機構71A,71Bから離れる車体前方側に飛び出して、左右の掻込搬送機構71A,71Bの搬送領域から外れて、刈取装置12の前方にこぼれ落ちることがある。
このような現象が発生すると、刈取装置12の前方にこぼれ落ちた穀稈は、作業走行に伴って左右の掻込搬送機構71A,71Bの搬送領域に向けて次々と導入される後続の未刈りの穀稈により、刈取装置12の刈り取り位置に押し戻され、その株元側が、未刈りの穀稈とともに再び刈り取られることになる。
このような穀稈の二度刈りが発生すると、穀稈の稈長が不揃いになり、この不揃いに起因して、穀稈を脱穀装置4に向けて搬送する際の穂先側の揃いが悪くなって、脱穀装置4での脱穀処理の際に扱き残しが発生しやすくなり、結果、穀粒回収効率の低下を招きやすくなる。
そこで、図8、図9、図13および図14に示すように、このコンバインでは、左右の掻込搬送装置24A,24Bにおける左右の掻込搬送機構71A,71Bを、それらの直線搬送経路114A,114Bの車体前後方向に対する車体左右方向への傾斜角θa,θbが同じになるように構成してある。また、左側の掻込搬送機構71Aの直線搬送経路114Aと右側の掻込搬送機構71Bの直線搬送経路114Bとの挟角θAが、左側の掻込搬送機構71Aの直線搬送経路114Aと供給搬送装置25における株元挟持搬送機構82の直線搬送経路115との挟角θBよりも大きくなるように、左右の掻込搬送機構71A,71Bおよび供給搬送装置25の姿勢を設定してある。
このように左右の掻込搬送機構71A,71Bの姿勢を設定すると、それらの直線搬送経路114A,114Bを、刈取装置23の上方において、複数の可動刃68および固定刃69を左右方向に一直線状に連続して並ぶように整列配置することにより、左右方向に一直線状に並んで位置するようになる各可動刃68および固定刃69の刈り取り位置に対して、それらの刈り取り位置に略沿った状態で位置させることができる。
これにより、左右の掻込搬送装置24A,24Bが、刈取装置23による刈り取り前の穀稈に作用することを効果的に抑制することができ、左右の掻込搬送装置24A,24Bが刈り取り前の穀稈に作用することに起因した穀粒回収効率の低下を効果的に抑制することができる。
また、刈取装置23による刈り取り直後の穀稈を、左右の掻込搬送装置24A,24Bによって素早く穀稈通過部27に向けて掻き込み搬送することができ、その結果、左右の掻込搬送装置24A,24Bによる穀稈の掻き込み搬送効率を向上させることができる。
図8および図13に示すように、左右の掻込搬送装置24A,24Bにおいて、それらの案内部材73A,73Bには、刈取搬送部3の左右の端部から対応する左右のパッカ72A,72Bの回転中心に向けて延出する直線案内部73a,73bを備えてある。各直線案内部73a,73bは、車体前後方向と直行する横一直線状に形成してある。
これにより、左右の案内部材73A,73Bの直線案内部73a,73bが、作業走行時に、刈り取り前の穀稈に作用して、その穀稈を車体前方に向けて押し曲げることを防止することができる。その結果、その押し曲げられた穀稈が、刈り取りとともに、押し曲げ状態からの復元作用により、刈取装置12の前方にこぼれ落ちて二度刈りされる虞を未然に回避することができる。
図3および図14に示すように、供給搬送装置25は、その搬送始端部25bが車体正面視で搭乗運転部2と重なり合うように、その搬送姿勢を設定してある。これにより、刈取搬送部3を2枠4条刈り仕様で、左分草部材21Aの分草始端21Aaと左側のクローラ13Aの左端部13Aaとの車体左右方向での位置が一致し、かつ、右分草部材21Bの分草始端21Baと右側のクローラ13Bの右端部13Baとの車体左右方向での位置が略一致するように構成したことにより、走行車体1の左右中間部に位置するようになる穀稈通過部27に対して、供給搬送装置25の搬送始端部25bを、穀稈通過部27を通過した穀稈を直に受け取ることが可能な穀稈通過部27の直後方の位置に位置させることができる。
つまり、左右の掻込搬送装置24A,24Bと供給搬送装置25との間に、穀稈の受け渡しを中継する補助搬送装置を装備することなく、2枠4条刈り仕様に構成した刈取搬送部3に適した供給搬送構造を得ることができる。
搭乗運転部2は、供給搬送装置25の搬送始端部25bと車体正面視で重なり合うサイドパネル15の前端部に、供給搬送装置25の搬送始端部25bが入り込むことを許容する凹部2aを形成してある。
供給搬送装置25は、その搬送始端部25bが搭乗運転部2の凹部2aに入り込むように、車体前後方向に対する株元挟持搬送機構82の直線搬送経路115の車体左右方向への傾斜角θc、および、車体前後方向に対する穂先係止搬送機構83の直線搬送経路116の車体左右方向への傾斜角θdを大きくしてある。
これにより、搭乗運転部2に凹部2aを形成しない場合に比較して、供給搬送装置25の搬送始端部側を搭乗運転部2に近づけることができ、これにより、供給搬送装置25の車体前後方向での長さを短くすることができ、コンバイン全体としての全長を短くすることができる。
また、供給搬送装置25の搬送始端側ほど搭乗運転部2に更に近づくようになり、これにより、供給搬送装置25の支持フレーム90に備えた扱き深さ調節用の操作レバー98も、搭乗運転部2に更に近づくようになり、結果、搭乗運転部2からの扱き深さ調節用の操作レバー98の操作が更に行いやすくなる。
ところで、供給搬送装置25の車体前後方向に対する車体左右方向への傾斜角θc,θdを大きくすると、供給搬送装置25が左側の掻込搬送機構71Aに近づくことになる。そのため、供給搬送装置25により搬送する穀稈の株元側が左側の掻込搬送機構71Aに接触して、その穀稈の搬送姿勢が乱れる不都合を招く虞がある。
そこで、図1、図2、図5〜7および図9に示すように、このコンバインでは、左側の掻込搬送機構71Aを右側の掻込搬送機構71Bよりも高さ位置が低くなるように配置してある。これにより、供給搬送装置25により搬送する穀稈の株元側が左側の掻込搬送機構71Aに接触して、その穀稈の搬送姿勢が乱れることを防止することができ、その乱れに起因して、供給搬送装置25により穀稈を脱穀装置4に向けて搬送する際の穂先側の揃いが悪くなり、脱穀装置4での脱穀処理において扱き残しが発生しやすくなる、といった穀粒回収率の低下を防止することができる。
また、左側の掻込搬送機構71Aを2条用に構成し、かつ、供給搬送装置25の車体前後方向に対する車体左右方向への傾斜角θc,θdを大きくすると、左側の引起枠26Aで刈り取った穀稈は、左側の掻込搬送機構71Aと供給搬送装置25によって略U字状に搬送されるようになる。そのため、その略U字状に搬送される穀稈の搬送方向切り換え地点となる穀稈通過部27においては、その穀稈の株元側が遠心力によって大きく振り回される傾向にある。
そこで、図1、図2、図6〜10および図13に示すように、このコンバインでは、延出部材34と中間部材35との間に前後向きの連結部35Aを介装して、延出部材34を穀稈通過部27から車体後方側に離すことにより、延出部材34と中間部材35との間に、左右の掻込搬送装置24A,24Bから供給搬送装置25に受け渡す穀稈の株元側の通過を許容する前後幅の広い受け渡し経路117を形成してある。
これにより、穀稈通過部27において、穀稈の株元側が遠心力によって大きく振り回されるようになったとしても、その穀稈の株元側が延出部材34の延出端に接触することを防止することができ、その接触による穀稈の搬送姿勢の乱れに起因して穀稈の穂先側の揃いが悪くなり、脱穀装置4での脱穀処理において扱き残しが発生しやすくなる、といった穀粒回収率の低下を防止することができる。
また、延出部材34を、穀稈通過部27よりも刈取搬送部3の左端側に位置するように配置してある。これにより、穀稈通過部27において、遠心力によって大きく振り回される穀稈の株元側が、延出部材34の延出端に接触することをより確実に防止することができ、その接触に起因した穀粒回収率の低下をより確実に防止することができる。
さらに、左右の掻込搬送装置24A,24Bの案内部材73A,73Bを、穀稈通過部27を通過する穀稈の株元側を供給搬送装置25に向けて案内するように形成し、かつ、左側の案内部材73Aの案内終端部73cを支持部材36に固定し、右側の案内部材73Aの案内終端部73dを延出部材34の延出端部に固定してある。
これにより、穀稈通過部27において、穀稈の株元側が遠心力によって大きく振り回されるようになったとしても、その振り回しを右側の案内部材73Bによって効果的に抑制することができ、その穀稈の株元側を、左右の案内部材73A,73Bによって供給搬送装置25の株元挟持搬送機構82に速やかにかつ確実に受け渡すことができる。その結果、受け渡し不良に起因した穀稈詰まりや、受け渡し不良による穀稈の搬送姿勢の乱れに起因した穀粒回収率の低下を防止することができる。
図6、図9および図13に示すように、連結部35Aの上方には、左右の掻込搬送装置24A,24Bから供給搬送装置25に受け渡す穀稈の下端を下方から受け止め支持する支持プレート118を、延出部材34の延出端から中間部材35にわたるように装備してある。
これにより、左右の掻込搬送装置24A,24Bから供給搬送装置25に受け渡す穀稈の株元側を揃えやすくすることができる。その結果、穀稈の穂先側が揃うようになり、脱穀装置4での脱穀処理において扱き残しが発生しにくくなり、穀粒回収率を向上させることができる。
図19は刈取搬送部3の別の形態を示す刈取搬送部3の左側面図、図20は刈取搬送部3の別の形態を示す刈取搬送部3の正面図である。これらの図に示すように、刈取搬送部3は、左分草部材21Aを交換することにより、その左側端部における左分草具51Aと左側の引起装置22Aとの間に、駆動式の分草装置119を装備することができる。
図5、図19および図20に示すように、分草装置119は、左側の引起装置22Aの入力軸53Aからベベルギア式の補助伝動機構120を介して取り出した動力により駆動することができる。そして、その駆動により、その上部に配備した駆動スプロケット121と、その下部に配備した従動スプロケット122とにわたって回し掛けた無端チェーン123が回動することにより、その無端チェーン123に一定ピッチで整列配備した複数の引起爪124により、刈取搬送部3の作業幅内最左の作物Caと、この作物Caと隣り合う左側の作業幅外の作物Cxとを梳き分ける。
つまり、左分草具51Aと左側の引起装置22Aとの間に駆動式の分草装置119を装備することにより、刈取搬送部3の作業幅内最左の作物Caと、この作物Caと隣り合う左側の作業幅外の作物Cxとの分草精度および分草効率を向上させることができる。この効果は、作物Cの倒伏が激しい圃場で収穫作業を行う場合に特に顕著に現れる。
分草装置119は、車体左右方向の車体内方に向けて傾倒する傾斜姿勢で装備してある。これにより、刈取搬送部3の作業幅内最左の作物Caと、この作物Caと隣り合う左側の作業幅外の作物Cxとを梳き分けながら、作業幅内最左の作物Caの穂先側を、左側の引起装置22Aの引き起こし領域Aa1に向けて梳き寄せることができる。
これにより、左側の引起装置22Aによる作物Cの引き起こし精度および引き起こし効率を向上させることができる。この効果は、左側の引起装置22Aによって2条の作物Cを引き起こす場合に特に顕著に現れる。
〔別実施形態〕
〔1〕刈取搬送部3としては、搭乗運転部側の引起枠26Bを1条用に構成した2枠3条刈り仕様のものであってもよい。
〔2〕走行車体1の右側に刈取搬送部3を連結し、走行車体1の左側に搭乗運転部2を形成するようにしてもよい。
〔3〕連結部35Aを延出部材34の延出端に一体形成するようにしてもよく、また、連結部35Aを独立形成して、中間部材35と延出部材34とに連結するようにしてもよい。