JP3825497B2 - 光学活性キノリルアルキルアルコール及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学純度の増加を伴う不斉自己触媒反応を行う光学活性キノリルアルキルアルコール、及び高光学純度の光学活性キノリルアルキルアルコールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から光学活性な有機化合物は、活性型ビタミン等をはじめとする、農薬、医薬等として用いられ、また、それらを合成するための触媒として用いられてきた。これら光学活性化合物を製造する方法としては、不斉源として光学活性な物質を不斉触媒ないし不斉配位子として用いるエナンチオ選択的不斉合成法や、光学活性な物質を反応基質に結合させて反応させるジアステレオ選択的不斉合成法が広く知られている。また、円偏光等の物理的不斉源を用いた絶対不斉合成法(H.B.Kagenら,Tetrahedron Letters,27巻、2479ページ,1971年)が知られている。また、結晶化の過程を含む方法により光学活性化合物を得る方法があり、例えば無機化合物である塩素酸ナトリウムの溶液から塩素酸ナトリウムが結晶化するとき、析出する結晶が、偶然により自発的に右巻き又は左巻きのいずれかの構造になること(Kondepudiら,Science,250巻,975ページ,1990年)が知られている。
【0003】
上記エナンチオ選択的不斉合成法における不斉触媒反応による不斉合成は、他の光学活性化合物の合成手段と比べて、少量の不斉源から多量の光学活性化合物を合成できるので非常に有用である。しかしながら、従来の不斉触媒反応においては使用する不斉触媒と反応後の生成物との構造が異なっているため、反応終了後に反応生成物と不斉触媒とを分離する煩雑な操作を必要とした。また、反応生成物以外の不斉触媒を使用する必要があり、この不斉触媒は高価であった。
【0004】
そこで、この煩雑な操作、及び高価な不斉触媒の使用を不要とする不斉触媒による不斉反応として、生成物と同一物質かつ同一構造である不斉触媒を用いる方法、即ち不斉自己触媒反応が当業者の間で研究されてきた。この不斉自己触媒反応においては、反応生成物と不斉触媒との分離、及び高価な不斉触媒の使用を不要とする点において、非常に有用である。
【0005】
従来までの不斉自己触媒反応としては、ベンゼン環をヘテロ原子1個置換したピリジン誘導体である光学活性ピリジルアルコールを不斉自己触媒として用いる方法(▲そ▼合ら、Journal of Chemical Society, Chemical Communications, 1990年982ページ)がある。更に光学純度を増加させる不斉自己触媒反応として、光学活性ピリミジルアルキルアルコールによる▲そ▼合らの不斉自己触媒反応(K.Soai, T.Shibata, H.Morioka, K.Choji, Nature, 378巻, 767ページ,1995年)による方法がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前掲の光学活性ピリジルアルコールを不斉自己触媒として用いる方法においては、はじめに光学純度86%(鏡像異性体過剰率)のピリジルアルコールを用いて不斉自己触媒反応を行っても、新たに生成するピリジルアルコールの光学純度は、著しく低下してわずか35%(鏡像異性体過剰率)となり、この反応を繰り返すごとに光学純度が著しく低下してしまった。
【0007】
そこで光学活性を増加させる不斉自己触媒反応として、前掲の光学活性ピリミジルアルキルアルコールを用いた不斉自己触媒反応があるが、この方法で光学活性が増加するのは6員環であるピリミジン環を1つ有する化合物であり、不斉自己触媒反応において、反応前の光学活性化合物の光学純度より反応後の光学活性化合物の光学純度の方が高くなる不斉自己触媒反応を行う光学活性化合物であって、現在までに知られている光学活性化合物は、ピリミジン環を1つ有する光学活性化合物のみである。
【0008】
そこで上述の事情を鑑み、本発明は、ピリミジン環を持たない化合物における不斉自己触媒反応による不斉合成において、反応を繰り返すたびに光学純度が増加する製造方法、及び高光学純度の光学活性化合物を生成するための触媒となる光学活性化合物を開発することを本発明の基本的な目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上述の目的に従い鋭意研究を進めた結果、キノリン環を有する光学活性化合物を用いた不斉自己触媒反応において、光学純度の低下が無く、逆に著しい光学純度の増加を伴うことを特徴とする光学活性化合物の製造方法及び高光学純度の光学活性化合物を生成するための触媒となる、キノリン環を有する光学活性化合物を開発し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明によれば、一般式(1)
【0011】
【化3】
(式中、Rは直鎖か又は分岐した炭素数1〜22のアルキル基又はアルケニル基を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される光学活性キノリルアルキルアルコールを提供する。
【0012】
更に、上記の光学活性キノリルアルキルアルコールを触媒として、一般式(2)
【0013】
【化4】
【0014】
で表される3−キノリンカルボキシアルデヒドに、一般式(3)
RnX ・・・・・ (3)
(式中、Rは直鎖か又は分岐した炭素数1〜22のアルキル基又はアルケニル基を示し、Xは金属元素を示し、nは1〜4の数を示す。)
で表されるアルキル金属を反応させて反応前の光学活性キノリルアルキルアルコールより光学純度の高い光学活性キノリルアルキルアルコールを生成する製造方法を提供する。
【0015】
本発明によれば、前記一般式(1)で表される化合物を触媒として用いることにより、反応前の光学活性化合物より光学純度の増加した光学活性化合物を製造することができる。更に、前記反応は不斉自己触媒反応であるので、反応終了後に生成物と不斉触媒とを分離する必要がない点において優れている。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明による一般式(1)で表される光学活性キノリルアルキルアルコールは、下記一般式で表される、(1S,2R)−N,N−ジイソプロピルノルエフェドリン(4a)又は(1R,2S)−N,N−ジイソプロピルノルエフェドリン(4b)を触媒として、一般式(2)で表される3−キノリン−カルボキシアルデヒドに一般式(3)で表されるアルキル金属を反応させて生成することができる。
【0017】
【化5】
【0018】
本発明における一般式(1)及び一般式(3)のRにおいて、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ウンエイコシル基、ドエイコシル基等の直鎖若しくは分岐した基が使用し得る。また、アルケニル基としては、エテニル基(ビニル基)、プロペニル基(アリル基)、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、エイコセニル基、ウンエイコセニル基、ドエイコセニル基等の直鎖若しくは分岐した基が使用し得る。また、Rにおいては、アルキル基若しくはアルケニル基の誘導体も使用し得る。
【0019】
更に、本発明における一般式(1)及び一般式(3)において、Rとしては、直鎖もしくは分岐したアルキル基もしくはアルケニル基(炭素数1〜22)であることが好ましい。更に好ましくは直鎖もしくは分岐したアルキル基もしくはアルケニル基(炭素数1〜10)であり、特に好ましくは、直鎖もしくは分岐したアルキル基もしくはアルケニル基(炭素数1〜5)であり、最も好ましくはイソプロピル基である。
【0020】
本発明による反応においては、反応有機溶媒として、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、ベンゼン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル等炭化水素系化合物、ジエチルエーテル、ジアルキルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジグリム、アニソール等のエーテル系化合物を用いるのが好ましい。特に好ましくはトルエンである。即ち、トルエンに溶解したアルデヒド、アルキル金属トルエンを用いることが好ましい。金属元素としては亜鉛を用いることが好ましい。即ち、ジアルキル亜鉛をトルエンに溶解し、ジアルキルトルエン溶液として用いることが好ましい。反応を確実に行うため、前記化合物の混合は時間をかけて攪拌するのが好ましい。反応温度は、−30℃〜50℃の範囲で行うことができる。更に確実に行うため、反応は低温で行うことが好ましい。最も好ましくは0℃である。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の実施例について更に詳説する。但し、本発明はこれらの実施例に決して限定されるものではない。尚、下記実施例中、「e.e.」とは、「鏡像異性体過剰率(%)」を表すこととする。
【0022】
<実施例1>
2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オール(光学純度9%e.e.,R体:S体=54.5:45.5=1.0:0.83)40.3mg(0.20mmol)をトルエンに溶解し(20mol%)、0℃に冷却した。この溶液に1Mジイソプロピル亜鉛トルエン溶液を1.2ml滴下した後、更に0℃で30分間攪拌した。3−キノリンカルボキシアルデヒドをトルエンに溶解した溶液(157.2mg,1.00mmol)4.0mlを上記混合液に0℃において滴下した後、72時間攪拌した。その後、この反応液に1mol・dm-3塩酸を5ml及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液15mlを加え、混合液をアルカリ性にし、セライトろ過した。ろ液を酢酸エチルで抽出し、乾燥後、濃縮した。この濃縮液を、シリカゲル薄層クロマトグラフで分離精製し、収率76%で光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オール(光学純度43.3%e.e.,R体:S体=71.6:28.4,触媒である2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを含む)を得た。新しく生成された2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールの光学純度は55.8%であった。また、反応前の2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールのR体の量を1.0とすると、反応後のR体は5.0、S体は2.0であった。
【0023】
<実施例2>
実施例1で得られた光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オール(光学純度43.3%e.e.)を触媒として実施例1と同様の反応を行ったところ、光学純度67%の光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オール(触媒を含む)を得た。新しく生成された2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールの光学純度は67%であった。また、実施例1の反応前の2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールのR体の量を1.0とすると、反応後のR体は25.3、S体は5.0であった。
【0024】
<実施例3>
実施例2で得られた光学純度67%e.e.の光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを触媒として、実施例1と同様の反応を行ったところ、光学純度81.6%e.e.の光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを得た。新しく生成された2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールの光学純度は52%であった。また、実施例1の反応前の2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールのR体の量を1.0とすると、反応後のR体は99.5、S体は9.8であった。
【0025】
<実施例4>
実施例3で得られた光学純度81.6%e.e.の光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを触媒として、実施例1と同様の反応を行ったところ、光学純度85.5%e.e.の光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを得た。新しく生成された2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールの光学純度は72%であった。また、実施例1の反応前の2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールのR体の量を1.0とすると、反応後のR体は467、S体は35.1であった。
【0026】
<実施例5>
実施例4で得られた光学純度85.5%e.e.の光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを触媒として、実施例1と同様の反応を行ったところ、光学純度86.2%e.e.の光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを得た。新しく生成された2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールの光学純度は78%であった。また、実施例1の反応前の2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールのR体の量を1.0とすると、反応後のR体は1828、S体は138であった。
【0027】
<実施例6>
実施例5で得られた光学純度86.2%e.e.の光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを触媒として、実施例1と同様の反応を行ったところ、光学純度88.1%e.e.の光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを得た。新しく生成された2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールの光学純度は63%e.e.であった。また、実施例1の反応前の2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールのR体の量を1.0とすると、反応後のR体は7628、S体は486であった。即ち実施例1〜6により、光学純度8.9%(R体)の2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールから光学純度88.1%(R体)の2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを多量に生成することができた。
【0028】
<実施例7>
R体の代わりにS体が過剰な光学純度37.2%e.e.の光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを用いて上記実施例1〜6と同様の不斉自己触媒反応を行ったところ、光学純度70.5%e.e.(S体)の光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを生成することができた。即ち、反応前のR体又はS体の過剰率により生成されるR体又はS体の過剰率が決定し、またR体又はS体のいずれでも光学純度を増加させることができることを示している。
【0029】
<実施例8>
(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オール(光学純度94%e.e.)をトルエンに溶解し(3.0×10-2mol・dm3)、0℃に冷却した。この溶液にジイソプロピル亜鉛トルエン溶液を滴下した後、更に30分間攪拌した。3−キノリンカルボキシアルデヒドをトルエンに溶解した溶液を上記混液に0℃において滴下し、攪拌して30時間反応させた。ここで、(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オール(A)と、3−キノリンカルボキシアルデヒド(B)と、ジイソプロピル亜鉛(C)と、のモル比は、A:B:C=0.2:1.0:2.0である。次に、この反応液に1mol・dm-3塩酸5ml及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液15mlを加え、混合液をアルカリ性にし、セライトろ過した。ろ液を酢酸エチルで抽出し、乾燥後、濃縮した。この濃縮液を、シリカゲル薄層クロマトグラフで分離精製し、収率92%で光学純度83%e.e.の(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オール(触媒である光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを含む)を得た。新たに生成された光学活性(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールは、収率72%、光学純度80%であった。
【0030】
<実施例9>
反応時間を48時間とし、触媒である2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールの濃度を3.0×10-2mol・dm-3とした他は実施例8と同様に光学純度94%の(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを触媒として反応を行ったところ、収率85%で光学純度88%e.e.の(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オール(触媒である光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを含む)を得た。新たに生成された光学活性(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールは、収率65%、光学純度86%であった。
【0031】
<実施例10>
反応時間を72時間とし、A:B:C=0.2:1.0:1.2とし、触媒である2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールの濃度を3.0×10-2mol・dm-3とした他は実施例8と同様に光学純度94%の(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを触媒として反応を行ったところ、収率85%で光学純度91%e.e.の(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オール(触媒である光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを含む)を得た。新たに生成された光学活性(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールは、収率65%、光学純度90%であった。
【0032】
<実施例11>
反応時間を72時間とし、A:B:C=0.2:1.0:1.2、有機溶媒としてトルエン及び石油エーテルを用い、触媒である2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールの濃度を3.0×10-2mol・dm-3とした他は実施例8と同様に光学純度94%の(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを触媒として反応を行ったところ、収率68%で光学純度91%e.e.の(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オール(触媒である光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを含む)を得た。新たに生成された光学活性(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールは、収率48%、光学純度90%であった。
【0033】
<実施例12>
反応時間を72時間とし、A:B:C=0.2:1.0:1.2、有機溶媒としてクメンを用い、触媒である2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールの濃度を3.0×10-2mol・dm-3とした他は実施例8と同様に光学純度94%の(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを触媒として反応を行ったところ、収率75%で光学純度94%e.e.の(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オール(触媒である光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを含む)を得た。新たに生成された光学活性(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールは、収率55%、光学純度94%であった。
【0034】
<実施例13>
反応時間を72時間とし、A:B:C=0.2:1.0:1.2、有機溶媒としてCH2Cl2を用い、触媒である2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールの濃度を3.0×10-2mol・dm-3とした他は実施例8と同様に光学純度94%の(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを触媒として反応を行ったところ、収率20%以下で光学純度93%e.e.の(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オール(触媒である光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを含む)を得た。
【0035】
<実施例14>
反応時間を72時間とし、A:B:C=0.2:1.0:1.2、触媒である2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールの濃度を3.0×10-2mol・dm-3とし、光学純度92%の(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを触媒とした他は実施例8と同様に反応を行ったところ、収率80%で光学純度89%e.e.の(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オール(触媒である光学活性2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールを含む)を得た。新たに生成された光学活性(S)−2−メチル−1−(3−キノリル)−プロパン−1−オールは、収率60%、光学純度90%であった。
【0036】
【発明の効果】
本発明による光学活性キノリルアルキルアルコールは、著しく高い光学活性化合物を生成できる不斉反応の触媒となる。更に本発明による方法により極めて高い光学純度の光学活性化合物を多量、安価かつ容易に製造できるので、不斉反応の触媒、例えばビタミン合成をはじめとする医薬、農薬の製造のための不斉触媒として有用である。また本発明の製造方法によれば、上記化合物を触媒として用いた不斉自己触媒反応において、上記化合物の光学純度を著しく増加させることができ、反応生成物はそのまま前記反応の触媒として用いることができるため、上記反応を繰り返すことによって生成物の光学純度を必要なだけ高く、かつ多量に不斉合成できる点において優れている。更に、不斉反応の生成物と触媒とが同一物質であるため反応後、それらの分離を行う必要がなく、また他の不斉触媒を用いて反応を行う必要がない点で優れている。
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