JP3824710B2 - ハロゲン化銀写真乳剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はハロゲン化銀写真乳剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
平板状ハロゲン化銀粒子を写真感光材料に用いると、色増感性、カバリングパワー、鮮鋭性、粒状性等が改良されることが知られている。一方、平板状粒子はその形状に起因してか耐圧力性能、即ち擦り傷黒化、折り曲げ黒化等の故障が発生しやすいという欠点を有していることも知られている。
【0003】
近年、互いに平行な双晶面を有する平板状粒子が多用されるようになった。これらの平板状粒子は主平面が{111}面であって、その形状は{111}面の格子構造から六角形や三角形をしている。一方、ハロゲン化銀粒子に増感色素を多量に吸着させた場合、{100}面を有する粒子の方が、通常増感特性が良いことから、主平面が{100}面の平板状粒子の開発が望まれている。
【0004】
米国特許第4,063,951号には、平行する2つの{100}面を主平面とするアスペクト比1.5〜7の平板状粒子からなるハロゲン化銀乳剤の製造方法が開示されている。また米国特許第4,386,156号には、平行する2つの{100}面を主平面とするアスペクト比8以上の臭化銀平板状粒子からなるハロゲン化銀乳剤及びその製造方法が開示されている。そして、これらの乳剤によれば立方体の如く{100}面で構成されたハロゲン化銀粒子からなる乳剤よりも感光材料のコントラストを増加させ、最高濃度を高めることができることが示されている。
【0005】
しかしながらこれらの乳剤を使用すると、銀画像の色調がクリアーではなく純黒調ではなく黄色味を帯びた黒色になってしまい、例えば直接銀画像を観察する医療用ハロゲン化銀写真感光材料に用いると、観察者及び病変の診断者に不快な印象を与えていた。
【0006】
一方、写真感光材料の迅速処理化は市場ニーズの高まりもあって、近年は自動現像処理機による処理方法が急速に発達の一途をたどっている。ハロゲン化銀写真感光材料の迅速処理化にはイオン結晶性を有する塩化銀含有率の高い乳剤を用いた方が好ましいことが一般に知られているが、塩化銀乳剤はカブリ易く、しかも写真感度が低いため、例えば、放射線の人体への影響をなるべく少なくするために高感度を要する医療用ハロゲン化銀写真感光材料に用いることは困難であった。塩化銀系の平板状乳剤に関しては、米国特許第5,275,930号に塩化銀50モル%以上でアスペクト比8以上の{100}主平面の平板状粒子にエピタキシャル成長させた技術が、同5,314,798号に塩化銀50モル%以上でアスペクト比2以上の{100}主平面の沃塩化銀平板状粒子が記載されている。これらの乳剤も、写真感度が低く、しかも医療用ハロゲン化銀写真感光材料の様なシート状フィルムに用いると、これらは人が手で直接取り扱うため折れ曲がったりすることが頻繁にあり、“圧力カブリ”と呼ばれる黒化が生じてしまう。この故障は誤診につながる危険があり、特に医療分野では迅速処理性に優れ圧力黒化が改良されたハロゲン化銀写真感光材料が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情によりなされたものであり、その目的は、銀画像の色調及び迅速処理性に優れ、圧力黒化の改良された医療用ハロゲン化銀写真感光材料に好適なハロゲン化銀写真乳剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、
互いに平行する2つの{100}主平面を有する平板状ハロゲン化銀粒子から実質的になり、臭化銀含有率50モル%以上で、平均アスペクト比2以上の乳剤を、種晶として成長させた、互いに平行する2つの{100}主平面を有する平板状ハロゲン化銀粒子が全投影面積の50%以上の、塩化銀含有率50モル%以上であるハロゲン化銀写真乳剤、種晶の平板状ハロゲン化銀粒子の厚さの平均(a)に対する成長させた平板状ハロゲン化銀粒子の厚さの平均(b)の比(b/a)が3.0以下であること、種晶乳剤の脱塩水洗工程までに還元増感が施されること、及びカルコゲン増感されること、
によって達成される。
【0009】
本発明について、以下に詳しく説明する。
【0010】
前述の様に、平板状粒子の利点は、分光増感効率の向上、画像の粒状性及び鮮鋭性の改良などが得られるとして例えば、英国特許第2,112,157号、米国特許第4,439,520号、同4,433,048号、同4,414,310号、同4,434,226号等に開示されている。
【0011】
本発明の平板状ハロゲン化銀粒子は{100}面からなる2つの主平面を有する。
【0012】
本発明の平板状ハロゲン化銀粒子の平均粒径は、0.3〜3.0μmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2.2μmである。尚、本発明において平板状ハロゲン化銀粒子の平均粒径とは粒子の主平面の辺の長さの平均をいう。
【0013】
本発明において、平板状ハロゲン化銀粒子の主平面の辺の長さは、ハロゲン化銀乳剤粒子の電子顕微鏡写真の観察から粒子の投影面積に等しい面積を有する正方形の辺の長さとして定義する。
【0014】
本発明の平板状粒子は主平面内の辺の長さの比(長辺の長さ/短辺の長さ)が、1〜1.4が好ましく、特に1〜1.3が好ましい。
【0015】
本発明の平板状ハロゲン化銀粒子は、粒子の辺の長さ/厚さ(アスペクト比と呼ぶ)の平均値(平均アスペクト比と呼ぶ)が2.0以上であり、好ましくは2.0〜40.0、特に好ましくは4.0〜30.0である。平均アスペクト比を求めるためには、最低100サンプルの測定を行う。
【0016】
本発明の平板状ハロゲン化銀粒子の平均厚さは0.5μm以下が好ましく、特に好ましくは0.3μm以下である。
【0017】
本発明において、ハロゲン化銀粒子の厚さとは、平板状ハロゲン化銀粒子を構成する二つの平行な最も面積の大きい{100}面の距離のうち最小のもの(即ち、主平面間の距離)として定義される。
【0018】
平板状ハロゲン化銀粒子の厚さは、ハロゲン化銀粒子の影の付いた電子顕微鏡写真又はハロゲン化銀乳剤を支持体に塗布し乾燥したサンプル断層の電子顕微鏡写真から求めることができる。
【0019】
本発明におけるハロゲン化銀乳剤の製造工程は、種晶粒子の調製工程と種晶粒子の成長を含む工程に大別される。ここに言う種晶粒子の調製工程は核発生、成長、熟成を含む粒子形成工程とそれに続く脱塩水洗工程からなる。又、種晶粒子の成長を含む工程は、上述の種晶粒子の存在下に粒子を更に成長させる工程と、脱塩、水洗工程及び化学増感等の工程からなる。
【0020】
本発明の種晶粒子の乳剤は臭化銀含有率50モル%以上、好ましくは65モル%以上、更には80モル%以上の、{100}面を主平面とする、アスペクト比2以上50以下の平板状粒子からなる。
【0021】
本発明の平板状ハロゲン化銀乳剤は、上記種晶乳剤を成長させて最終的に得られる{100}主平面を有する平板状ハロゲン化銀粒子を含有する乳剤であって、その塩化銀含有率が、50モル%以上、好ましくは60モル%以上、更には70モル%以上であり、該本発明の平板状粒子を全投影面積の50%以上、好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上で有する乳剤である。
【0022】
本発明においては、種晶の平板状ハロゲン化銀粒子の厚さの平均(a)に対する該種晶粒子を成長させた平板状ハロゲン化銀粒子の厚さの平均(b)の比(b/a)が3.0以下が好ましく、更に0.3以上2.8以下が好ましく、特に0.7以上2.6以下が好ましい。
【0023】
本発明に関わる平板状ハロゲン化銀粒子は、主平面と同じ{100}面以外の例えば、{111}面、{110}面等の結晶面を有していてもよい。
【0024】
本発明の平板状ハロゲン化銀乳剤は単分散性であるものが好ましく用いられ、主平面の辺の長さの変動係数が30%以内の範囲が好ましく、更には20%以内の範囲に含まれるものが特に好ましく用いられるが、主平面の辺の長さの平均の異なる単分散性の平板状ハロゲン化銀乳剤、或いは粒子サイズ分布の広い多分散平板状乳剤、更には立方体、八面体、14面体等の正常晶乳剤、双晶面を有する双晶乳剤を本発明の効果を低下させない範囲内で混合してもよい。
【0025】
本発明でいう変動係数は、粒径(各粒子の主平面面積に等しい面積を有する正方形の辺の長さ)のバラツキ(標準偏差)を平均粒径で割った値を100倍した値(%)で示す。
【0026】
又、本発明の平板状ハロゲン化銀粒子はハロゲン組成が粒子内で均一であってもよく、内部に沃化銀の局在部分を有する粒子でもよく、更には粒子表面近傍に沃化銀含有率の高い部分を有してもよい。本発明の平板状ハロゲン化銀粒子の好ましい沃化銀含有率は0.01モル%以上2.0モル%未満であり、より好ましくは0.1モル%以上1.0モル%未満である。
【0027】
平板状ハロゲン化銀乳剤の製造方法は、米国特許第4,063,951号、同4,386,156号、同5,275,930号、同5,314,798号等を参考にすることもできる。
【0028】
平板状ハロゲン化銀粒子の大きさ及び形状は、粒子形成時の温度、pAg(pBr、pCl)、pH、銀塩及びハロゲン化物水溶液の添加速度等によってコントロールできる。
【0029】
本発明の平板状ハロゲン化銀粒子形成時のpAgは4.0〜9.0が好ましい。
【0030】
平板状ハロゲン化銀乳剤の平均沃化銀含有率は、添加するハロゲン化物水溶液の組成即ち塩化物、臭化物及び沃化物の比を変えることによりコントロールすることができる。
【0031】
又、平板状ハロゲン化銀乳剤の製造時に、必要に応じてアンモニア、チオエーテル、チオ尿素等のハロゲン化銀溶剤を用いることもできる。
【0032】
上述した乳剤は、粒子表面に潜像を形成する表面潜像型或いは粒子内部に潜像を形成する内部潜像型、表面と内部に潜像を形成する型のいずれの乳剤であってもよいが、表面潜像型乳剤が好ましい。これらの乳剤は、物理熟成或いは粒子調製の段階で鉄塩、カドミウム塩、鉛塩、亜鉛塩、タリウム塩、ルテニウム塩、オスミウム塩、イリジウム塩、ロジウム塩又はそれらの錯塩等を用いてもよい。
【0033】
乳剤は可溶性塩類を除去するためにヌーデル水洗法、フロキュレーション沈降法等の水洗方法がなされてよい。好ましい水洗法としては、例えば特公昭35−16086号に記載のスルホ基を含む芳香族炭化水素系アルデヒド樹脂を用いる方法、又は特開昭63−158644号に記載の凝集高分子剤例示G3、G8等を用いる方法が挙げられる。
【0034】
本発明のハロゲン化銀乳剤の調製時に、例えば分散媒中に用いられる保護コロイドとして、及びその他の親水性コロイド層のバインダーとしては、ゼラチンを用いるのが有利であるが、それ以外の親水性コロイドも用いることができ、例えばゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン,カゼイン等の蛋白質、ヒドロキシエチルセルロース,カルボキシメチルセルロース,セルロース硫酸エステル類等の如きセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ,澱粉誘導体等の糖誘導体、ポリビニルアルコール,ポリビニルアルコール部分アセタール,ポリ−N−ビニルピロリドン,ポリアクリル酸,ポリメタクリル酸,ポリアクリルアミド,ポリビニルイミダゾール,ポリビニルピラゾール等の単一或いは共重合体の如き合成親水性高分子物質が挙げられる。
【0035】
ゼラチンとしては、石灰処理ゼラチンの他、酸処理ゼラチンやBull.Sci.Phot.Japan,No.16,p.30(1966)に記載の酵素処理ゼラチン、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物も用いることができるが、本発明のハロゲン化銀乳剤の調製時には、米国特許第4,713,323号に記載のメチオニン含有量がゼラチン1g当たり30マイクロモル未満(好ましくは12マイクロモル未満)のゼラチンを用いることが好ましい。
【0036】
本発明のハロゲン化銀乳剤は化学増感される。貴金属増感としては金増感が好ましく、金化合物、主に金−チオシアン錯塩等の金錯塩が増感剤として用いられる。金以外の貴金属としては白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等の錯塩を用いることができる。
【0037】
金増感には、金増感剤として例えば塩化金酸塩、金チオ尿素錯体、カリウムクロロオーレート、オーリックトリクロライド、カリウムオーリックチオシアネート、カリウムヨードオーレート、テトラシアノオーリックアミド、アンモニウムオーロチオシアネート、ピリジルトリクロロゴールドなどが挙げられる。これら金増感剤の添加量は種々の条件下で広範囲に変化できるが目安としては、ハロゲン化銀1モル当たり5×10-7〜5×10-3モルが好ましく、2×10-6〜4×10-4モルが更に好ましい。
【0038】
更にカルコゲン増感される(好ましくは硫黄増感法)ことが好ましく、更にセレン増感法、テルル増感法等も好ましく用いることができる。
【0039】
硫黄増感には増感剤として例えばチオ硫酸塩、アリルチオカルバミドチオ尿素、アリルイソチアシアネート、シスチン、p−トルエンチオスルホン酸塩、ローダニンなどが挙げられる。その他米国特許第1,574,944号、同3,656,955号、ドイツ特許第1,422,869号、特公昭56−24937号、特開昭55−45016号等に記載されている硫黄増感剤も用いることができる。硫黄増感剤の添加量は乳剤の感度を効果的に増大させるに十分な量でよい。この量は種々の条件、即ちハロゲン化銀粒子の大きさなど広範囲に変化できるが、目安としては、ハロゲン化銀1モル当たり5×10-8〜5×10-5モルが好ましい。
【0040】
セレン増感剤としては、従来公知の化合物を用いることができる。即ち、通常不安定型セレン化合物及び/又は非不安定型セレン化合物を添加して高温、好ましくは40℃以上で乳剤を一定時間撹拌することにより用いられる。
【0041】
不安定型セレン化合物としては例えば特公昭44−15748号、同43−13489号、特開平2−130976号、等に記載の化合物を用いることができる。具体的な不安定型セレン増感剤としては、イソセレノシアネート類(例えばアリルイソセレノシアネートの如き脂肪族イソセレノシアネート類)、セレノ尿素類、セレノケトン類、セレノアミド類、セレノカルボン酸類(例えば2−セレノプロピオン酸、2−セレノ酪酸)、セレノエステル類、ジアシルセレニド類(例えばビス−3−クロロ−2,6−ジメトキシベンゾイルセレニド)、セレノフォスフェート類、ホスフィンセレニド類、コロイド状金属セレン等が挙げられる。
【0042】
不安定型セレン化合物の好ましい類型を上に述べたが、これらは限定的なものではない。当業技術者には写真用乳剤の増感剤として不安定型セレン化合物といえば、セレンが不安定で有る限りにおいて該化合物の構造はさして重要なものではなく、セレン増感剤分子の有機部分はセレンを担持し、それを不安定な形で乳剤中に存在せしめる以外何らの役割りを持たないことが一般に理解されている。
【0043】
本発明においては、かかる広範な概念の不安定セレン化合物が有利に用いられる。本発明で用いられる非不安定型セレン化合物としては例えば特公昭46−4553号、同53−34492号、同52−34491号等に記載の化合物が用いられる。非不安型セレン化合物としては例えば亜セレン酸、セレンシアン化カリウム、セレナゾール類、セレナゾール類の四級塩、ヂアリールセレニド、ヂアリールジセレニド、ジアルキルセレニド、ジアルキルジセレニド、2−セレナゾリジンジオン、2−セレノオキサゾリヂンチオン及びこれらの誘導体が挙げられる、以下本発明に好ましく用いられるセレン化合物の具体例を示す。
【0044】
【化1】
Figure 0003824710
【0045】
【化2】
Figure 0003824710
【0046】
セレン増感剤の使用量は、使用するセレン化合物、ハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等により変わるが、一般にハロゲン化銀1モル当たり1×10-8以上である。より好ましくは1×10-6モル以上1×10-3モル以下を化学増感時に添加する。添加方法は使用するセレン化合物の性質に応じて、水またはメタノール、エタノールなどの有機溶媒の単独または混合溶媒に溶解して添加する方法或いは、ゼラチン溶液と予め混合して添加する方法でも、特開平4−140739号に開示されている方法である有機溶媒可溶性の重合体との混合溶液の乳化分散物の形態で添加する方法でもよい。
【0047】
本発明で用いられるテルル増感剤としては、米国特許第3,772,031号、英国特許第235,211号、カナダ特許第800,958号、J.Chem.Soc.Chem.Commun.;635(1980)、ibid 1102(1979)、ibid 645(1979)、J.Chem.Soc.Perkin Trans.;1,2191(198)等に記載の化合物を用いることが好ましい。
【0048】
具体的なテルル増感剤としては、コロイド状テルル、テルロ尿素類(例えばアリルテルロ尿素、N,N−ジメチルテルロ尿素、テトラメチルテルロ尿素、N−カルボキシエチル−N′,N′−ジメチルテルロ尿素、N,N′−ジメチルエチレンテルロ尿素、N,N′−ジフェニルエチレンテルロ尿素)、イソテルロシアナート類(例えばアリルイソテルロシアナート)、テルロケトン類(例えばテルロアセトン、テルロアセトフェノン)、テルロアミド類(例えばテルロアセトアミド、N,N−ジメチルテルロベンズアミド)、テルロヒドラジド(例えばN,N′,N′−トリメチルテルロベンズヒドラジド)、テルロエステル(例えばt−ブチル−t−ヘキシルテルロエステル)、ホスフィンテルリド類(例えばトリブチルホスフィンテルリド、トリシクロヘキシルホスフィンテルリド、トリイソプロピルホスフィンテルリド、ブチル−ジイソプロピルホスフィンテルリド、ジブチルフェニルホスフィンテルリド)、他のテルル化合物(例えば英国特許第1,295,462号に記載の負電荷のテルライドイオン含有ゼラチン、ポタシウムテルリド、ポタシウムテルロシアナート、テルロペンタチオネートナトリウム塩、アリルテルロシアネート)等が挙げられる。
【0049】
これらのテルル化合物のうち、好ましくは以下の一般式(I)又は(II)で表される化合物である。
【0050】
【化3】
Figure 0003824710
【0051】
式中、R11、R12及びR13は脂肪族基、芳香族基、複素環基、OR14、NR15(R16)、SR17、OSiR18(R19)(R20)、X又は水素原子を表す。R14及びR17は脂肪族基、芳香族基、複素環基、水素原子又はカチオンを表し、R15及びR16は脂肪族基、芳香族基、複素環基、又は水素原子を表し、R18、R19及びR20は脂肪族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。
【0052】
一般式(I)において、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20で表される脂肪族基は好ましくは炭素数1〜30のものであって、特に炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基である。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アリル、ブテニル、3−ペンテニル、プロパルギル、3−ペンチニル、ベンジル、フェネチルが挙げられる。一般式(I)において、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17で表される芳香族基は好ましくは炭素数6〜30のものであって、特に炭素数6〜20の単環又は縮環のアリール基であり、例えばフェニル、ナフチルが挙げられる。
【0053】
一般式(I)において、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17で表される複素環基は窒素原子、酸素原子及び硫黄原子のうち少なくとも一つを含む3〜10員環の飽和若しくは不飽和の複素環基である。これらは単環であってもよいし、更に他の芳香環若しくは複素環と縮合環を形成してもよい。複素環基としては、好ましくは5〜6員環の芳香族複素環基であり、例えばピリジル、フリル、チエニル、チアゾリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリルが挙げられる。一般式(I)において、R14及びR17で表されるカチオンは、例えばアルカリ金属、アンモニウムを表す。一般式(I)においてXで表されるハロゲン原子は、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子及び沃素原子を表す。又、この脂肪族基、芳香族基及び複素環基は置換されていてもよい。代表的な置換基としては例えば、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、ウレタン基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、リン酸アミド基、ジアシルアミノ基、イミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、ホスホノ基、ニトロ基、及びヘテロ環基が挙げられる。これらの基は更に置換されていてもよい。置換基が2つ以上あるときは同じでも異なっていてもよい。
【0054】
11、R12、R13は互いに結合してリン原子と一緒に環を形成してもよく、又、R15とR16は結合して含窒素複素環を形成してもよい。一般式(I)中、好ましくはR11、R12及びR13は脂肪族基または芳香族基を表し、より好ましくはアルキル基又は芳香族基を表す。
【0055】
【化4】
Figure 0003824710
【0056】
式中、R21は脂肪族基、芳香族基、複素環基又は−NR23(R24)を表し、R22は−NR25(R26)、−N(R27)−N(R28)R29又は−OR30を表す。R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29及びR30は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基又はアシル基を表す。ここでR21とR25、R21とR27、R21とR28、R21とR30、R23とR25、R23とR27、R23とR28及びR23とR30は結合して環を形成してもよい。
【0057】
一般式(II)において、R21、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29及びR30で表される脂肪族基は好ましくは炭素数1〜30のものであって、特に炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基である。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル、プロパルギル、3−ペンチニル、ベンジル、フェネチルが挙げられる。一般式(II)において、R21、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29及びR30で表される芳香族基は好ましくは炭素数6〜30のものであって、特に炭素数6〜20の単環又は縮環のアリール基であり、例えばフェニル、ナフチルが挙げられる。
【0058】
一般式(II)において、R21、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29及びR30で表される複素環基は窒素原子、酸素原子及び硫黄原子のうち少なくとも一つを含む3〜10員環の飽和若しくは不飽和の複素環基である。これらは単環であってもよいし、更に他の芳香環若しくは複素環と縮合環を形成してもよい。複素環基としては、好ましくは5〜6員環の芳香族複素環基であり、例えばピリジル、フリル、チエチル、チアゾリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリルが挙げられる。一般式(II)において、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29及びR30で表されるアシル基は好ましくは炭素数1〜30のものであって、特に炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアシル基であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル、デカノイルが挙げられる。ここでR21とR25、R21とR27、R21とR28、R21とR30、R23とR25、R23とR27、R23とR28及びR23とR30は結合して環を形成する場合は例えばアルキレン基、アリーレン基、アラルキル基又はアルケニレン基が挙げられる。
【0059】
又、この脂肪族基、芳香族基及び複素環基は一般式(I)であげた置換基で置換されていてもよい。一般式(II)中、好ましくはR21は脂肪族基、芳香族基又は−NR23(R24)を表し、R22は−NR25(R26)を表す。R23、R24、R25及びR26は脂肪族基又は芳香族基を表す。一般式(II)中、より好ましくはR21は芳香族基又は−NR23(R24)を表し、R22は−NR25(R26)を表す。R23、R24、R25及びR26はアルキル基又は芳香族基を表す。ここで、R21とR25及びR23とR25はアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基又はアルケニレン基を介して環を形成することもより好ましい。
【0060】
以下に一般式(I)および(II)で表される化合物の具体例(例示化合物)を示す。
【0061】
【化5】
Figure 0003824710
【0062】
【化6】
Figure 0003824710
【0063】
【化7】
Figure 0003824710
【0064】
一般式(I)及び(II)で表される化合物は既に知られている方法に準じて合成することができる。例えばJ.Chem.Soc.(A);1969,2927;J.Organome.Chem.;4,320(1965);ibid.1,200(1963);ibid.113.C35(1976);Phosphorus Sulfur;15,155(1983);Chem.Ber.;109,2996(1976);J.Chem.Soc.Chem.Commun.;635(1980);ibid.1102(1976);ibid.645(1979);ibid.820(1987);J.Chem.Soc.Perkin.Trans.;1,2191(1980);The Chemistry of Organo Selenium and TelluriumCompounds;2巻の216〜267(1987)に記載の方法で合成することができる。
【0065】
テルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等により変わるが、一般にハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-2モル、好ましくは10-7〜5×10-3モル程度を用いる。化学増感の条件は、特に制限はないが、pAgとしては6〜11、好ましくは7〜10であり、温度としては40〜95℃、好ましくは45〜60℃である。
【0066】
本発明に関る種晶乳剤は、種晶乳剤調製工程のうち脱塩水洗工程までに還元増感が施されることが好ましい。好ましい還元増感剤としては、二酸化チオ尿素及びアスコルビン酸及びそれらの誘導体、ヒドラジン,ジエチレントリアミン等のポリアミン類、ジメチルアミンボラン類、亜硫酸塩類等が挙げられる。
【0067】
還元増感剤の添加量は、還元増感剤の種類、ハロゲン化銀粒子の粒径、組成及び晶癖、反応系の温度、pH、pAg等の環境条件によって変化させることが好ましいが、例えば二酸化チオ尿素の場合は、ハロゲン化銀1モル当たり0.01〜2mg程度で好ましい結果が得られる。アスコルビン酸の場合は、ハロゲン化銀1モル当たり50mg〜2gである。
【0068】
高pH、即ちpH5〜11、低pAg即ち1〜6の還元的雰囲気にすることでも還元増感を施すことができる。
【0069】
即ち、還元増感の条件としては、温度が約40〜70℃、時間が約5〜200分、pH約5〜11、pAg約1〜6の範囲が好ましい。
【0070】
水溶性銀塩の添加によりpAgを低下させ還元増感の1種である所謂銀熟と呼ばれる方法でもよい。水溶性銀塩としては硝酸銀が好ましく、銀熟成時のpAgは1〜6程度、好ましくは2〜4である。温度、pH、時間等の条件は上記の還元増感と同様である。
【0071】
還元増感を施されたハロゲン化銀粒子を含むハロゲン化銀乳剤の安定剤としては、後述の一般的な安定剤を用いることができるが、特開昭57−82831号に記載の酸化防止剤、V.S.Gahler著の論文“Zeitshriftfur wissenschaftliche Photographie Bd.63,133(1969)及び特開昭54−1019号に記載のチオスルホン酸類を併用するとしばしば良好な結果が得られる。
【0072】
本発明のハロゲン化銀乳剤は分光増感することができる。
【0073】
分光増感色素としては通常メチン色素が用いられるが、これにはシアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素及びヘミオキソノール色素等が包含される。例えば特願平3−95310号に記載されているようなオキサカルボシアニン、ベンゾイミダゾロカルボシアニン、ベンゾイミダゾローオキサカルボシアニン等が挙げられる。又、特願平5−121484号に記載されている青色光域に増感効果を有する色素も好ましく用いられる。これらの分光増感色素は、それぞれ単一若しくは組み合わせて用いることができる。
【0074】
分光増感色素の添加は、メタノールのような有機溶媒に溶解した溶液として添加することが好ましい。
【0075】
分光増感色素の添加量は色素の種類や乳剤条件によって一様ではないが、乳剤の銀1モル当たり10〜900mgが好ましく、60〜400mgが特に好ましい。
【0076】
分光増感色素は、化学熟成工程の終了前に添加するのが好ましく、化学熟成工程の終了前に数回に分けて添加しても良い。更に好ましくはハロゲン化銀粒子の成長工程終了後から、化学熟成工程の終了前であり、特に化学熟成開始前が好ましい。化学増感(化学熟成)を停止させるには乳剤の安定性などを考慮すると、化学熟成停止剤を用いる方法が好ましい。この化学熟成停止剤としては、ハロゲン化物(臭化カリウム、塩化ナトリウム等)カブリ防止剤又は安定剤として知られている有機化合物(4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン等)が挙げられる。これらは単独で若しくは複数の化合物を併用して用いてもよい。
【0077】
本発明に係る乳剤は、物理熟成又は化学熟成前後の工程において、各種の写真用添加剤を用いることができる。公知の添加剤としては、例えばリサーチ・ディスクロージャー(RD)No.17643(1978年12月)、同No.18716(1979年11月)及び同No.308119(1989年12月)に記載された化合物が挙げられる。これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
【0078】
Figure 0003824710
次に本発明に係る感光材料の好ましい現像処理について述べる。現像液に用いられる好ましい現像主薬としては、特開平4−15641号、同4−16841号等に記載のジヒドロキシベンゼン(ハイドロキノン等)、パラアミノフェノール類(p−アミノフェノール、N−メチル−p−アミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール等)、3−ピラゾリドン類(1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、5,5−ジメチル−1−フェニル−3−ピラゾリドン等)が挙げられ、パラアミノフェノール類、3−ピラゾリドン類の好ましい使用量は0.004モル/l以上、更には0.04〜0.12モル/lである。又、現像液中に含まれるジヒドロキシベンゼン類、パラアミノフェノール類、3−ピラゾリドン類の総量は0.1モル/l以下が好ましい。
【0079】
保恒剤として亜硫酸塩類(亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム等)、レダクトン類(ピペリジノヘキソースレダクトン等)を含んでもよく、これらは好ましくは0.2〜1モル/l、より好ましくは0.3〜0.6モル/lで用いる。又アスコルビン酸類を多量に添加することも処理安定性につながる。
【0080】
アルカリ剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、第三燐酸ナトリウム、第三燐酸カリウムの如きpH調節剤を含む。
【0081】
更に特開昭61−28708号に記載の硼酸塩、特開昭60−93439号に記載のサッカローズ、アセトオキシム、5−スルホサリチル酸、燐酸塩、炭酸塩等の緩衝剤を用いてもよい。これらの薬剤の含有量は現像液のpHを9.0〜13、好ましくは10〜12.5とするように選ぶ。
【0082】
溶解助剤としてはポリエチレングリコール類、及びこれらのエステル等、増感剤としては例えば四級アンモニウム塩等、現像促進剤、界面活性剤等を含有させることができる。
【0083】
銀スラッジ防止剤としては例えば特開昭56−106244号に記載の銀汚れ防止剤、特開平3−51844号に記載のスルフィド、ジスルフィド化合物、特願平4−92947号に記載のシステイン誘導体或いはトリアジン化合物が好ましく用いられる。
【0084】
有機抑制剤としてアゾール系有機カブリ防止剤、例えばインダゾール系、イミダゾール系、ベンツイミダゾール系、トリアゾール系、ベンツトリアゾー系、テトラゾール系、チアジアゾール系化合物が用いられる。
【0085】
無機抑制剤としては、臭化ナトリウム、臭化カリウム、沃化カリウム等を含有する。この他、L.F.A.メンソン著「フォトグラフィック・プロセッシング・ケミストリー」フォーカルプレス社刊(1966年)の226〜229頁、米国特許第2,193,015号、同2,592,364号、特開昭48−64933号等に記載のものを用いてもよい。
【0086】
処理液に用いられる水道水中に混在するカルシウムイオンを隠蔽するためのキレート剤には、有機キレート剤として特開平1−193853号に記載の鉄とのキレート安定化定数が8以上のキレート剤が好ましく用いられる。無機キレート剤としてヘキサメタ燐酸ナトリウム、ヘキサメタ燐酸カルシウム、ポリ燐酸塩等がある。
【0087】
現像硬膜剤としてはジアルデヒド系化合物を用いてもよい。この場合グルタルアルデヒドが好ましく用いられる。但し迅速処理のためには硬膜剤は現像処理工程で作用させるより予め感光材料の塗布工程で硬膜剤を含有させて作用させるほうが好ましい。
【0088】
現像剤の処理温度は好ましくは25〜50℃で、より好ましくは30〜40℃である。
【0089】
現像時間は3〜90秒が好ましく、より好ましくは5〜60秒である。処理時間はDry to Dryで15〜90秒が好ましいが、より好ましくは15〜50秒である。
【0090】
処理液の補充は、処理剤疲労と酸化疲労相当分を補充する。補充法としては特開昭55−126243号に記載の幅、送り速度による補充、特開昭60−104946号に記載の面積補充、特開平1−149156号に記載の連続処理枚数によりコントロールされた面積補充でもよく、好ましい補充量は500〜150cc/m2である。
【0091】
好ましい定着液としては当業界で一般に用いられている定着素材を含むことができる。pHは3.8以上、好ましくは4.2〜5.5である。
【0092】
定着剤はチオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム等のチオ硫酸塩であり、定着速度の点からチオ硫酸アンモニウムが特に好ましい。該チオ硫酸アンモニウムの濃度は0.1〜5モル/lの範囲が好ましく、より好ましくは0.8〜3モル/lの範囲である。定着液は酸性硬膜を行うものであってもよい。この場合、硬膜剤としてはアルミニウムイオンが好ましく用いられる。例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、カリ明礬等の形態で添加するのが好ましい。その他定着液には所望により亜硫酸塩、重亜硫酸塩等の保恒剤、酢酸、硼酸等のpH緩衝剤、鉱酸(硫酸、硝酸)や有機酸(クエン酸、蓚酸、リンゴ酸等)、塩酸等の各種酸や金属水酸化物(水酸化カリウム、ナトリウム)等のpH調整剤や硬水軟化能を有するキレート剤を含むことができる。定着促進剤としては例えば特公昭45−35754号、同58−122535号、同58−122536号等に記載のチオ尿素誘導体、米国特許第4,126,459号に記載のチオエーテル等が挙げられる。
【0093】
本発明に係る感光材料に用いることのできる支持体としては、例えば前述のRD−17643の28頁及びRD−308119の1009頁に記載されているものが挙げられる。
【0094】
適当な支持体としてはポリエチレンテレフタレートフィルムなどで、これら支持体の表面は塗布層の接着をよくするために、下塗層を設けたり、コロナ放電、紫外線照射などを施してもよい。
【0095】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0096】
《種乳剤SD−1の調製》
(A1液)
不活性ゼラチン2000gに水を加えて10lとする
(B1液)
硝酸銀850gに水を加えて5lとする
(C1液)
臭化カリウム595g、沃化カリウム4gに水を加えて5lとする。
【0097】
反応容器中でA1液を高速撹拌しながら40℃に保持し、pHを6.2に調整した。これに、B1液とC1液とを1分間かけてダブルジェット法で添加した。添加終了後、反応容器内のpAgは7.0、pHは6.2であった。次に反応容器内の液温度を65℃に上昇させて、60分間撹拌保持した。この間、反応容器内のpAgは6.8、pHは6.2に維持した。
【0098】
過剰な塩類を除去するために、デモール(花王アトラス社製)水溶液、硫酸マグネシウム水溶液を用いて脱塩水洗を行い、追加ゼラチンを加え冷却した。得られた乳剤を走査型電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、平均アスペクト比8.2、平均の辺の長さ0.49μm、辺長の変動係数25%、平均粒子厚み0.06μmの主平面が四角形の{100}面からなる平板状粒子で、臭化銀含有率99.5モル%の沃臭化銀乳剤であった。この乳剤を種乳剤SD−1とする。
【0099】
《種乳剤SD−2の調製》
(A2液)
不活性ゼラチン600gに水を加えて30lとする
(B2液)
硝酸銀75gに水を加えて475mlとする
(C2液)
臭化カリウム56g、沃化カリウム0.38gに水を加えて475mlとする。
【0100】
反応容器中でA2液を高速撹拌しながら40℃に保持し、pHを6.2に調整した。これに、B2液とC2液とを30秒間かけてダブルジェット法で添加した。添加終了後、反応容器内のpAgは7.4、pHは6.2であった。次に反応容器内の液温度を65℃に上昇させて、60分間撹拌保持した。この間、反応容器内のpAgは6.7、pHは6.2に維持した。
【0101】
過剰な塩類を除去するために、デモール(花王アトラス社製)水溶液、硫酸マグネシウム水溶液を用いて脱塩水洗を行い、追加ゼラチンを加え冷却した。得られた乳剤を走査型電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、平均アスペクト比6.1、平均の辺の長さ0.55μm、辺長の変動係数22%、平均粒子厚み0.09μmの主平面が四角形の{100}面からなる平板状粒子で、臭化銀含有率99.5モル%の沃臭化銀乳剤であった。この乳剤を乳剤SD−2とする。
【0102】
《種乳剤SD−3の調製》
種乳剤SD−1の調製において、反応容器内の液温度を65℃に上昇させて、60分間撹拌保持するのに代えて、65℃で40分間撹拌保持した後、1.0NのKOHでpHを9.0に調整し20分間撹拌保持し、その後硝酸を用いてpHを6.2に調整した以外は同様にして種乳剤SD−3を得た。得られた乳剤を走査型電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、平均アスペクト比9.2、平均の辺の長さ0.55μm、辺長の変動係数22%、平均粒子厚み0.06μmの主平面が四角形の{100}面からなる平板状粒子で、臭化銀含有率99.5モル%の沃臭化銀乳剤であった。
【0103】
《乳剤Em−1の調製》
(A3液)
酸化ゼラチン350g、塩化ナトリウム3.27g、沃化カリウム0.25gに水を加えて10lとする。
【0104】
(B3液)
硝酸銀770gに水を加えて9.1lとする。
【0105】
(C3液)
塩化ナトリウム266gに水を加えて9.1lとする。
【0106】
反応容器中でA3液を高速撹拌しながら40℃に保持し、種乳剤SD−1を0.49モル相当溶解して添加しpHを6.2に調整した。これに、B3液とC3液とを40ml/分の速度で40分間かけてダブルジェット法で添加した後、80ml/分の速度にして約95分かけてダブルジェット法で添加を終了した。この間、反応容器内のpClを0.5Nの塩化ナトリウムを用いて2.45に終始保持した。pHは6.1であった。その後フタル化ゼラチン100gを添加した。
【0107】
過剰な塩類を除去するために、デモール(花王アトラス社製)水溶液、硫酸マグネシウム水溶液を用いて脱塩水洗を行い、追加ゼラチンを加え冷却した。得られた乳剤を走査型電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、平均の辺の長さ1.93μm、辺長の変動係数30%、平均粒子厚さ0.08μmの主平面が四角形の{100}面からなる平板状粒子が全投影面積の85.0%を占める塩化銀含有率90.20モル%の塩沃臭化銀であった。この乳剤をEm−1とする。
【0108】
《乳剤Em−2の調製》
Em−1の調製において、A3液に代えて以下の(A4液)を用いた以外は同様にしてEm−2を調製した。
【0109】
(A4液)
酸化ゼラチン350g、塩化ナトリウム3.27g、沃化カリウム0.5gに水を加えて10lとする。
【0110】
得られた乳剤を走査型電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、平均の辺の長さ1.65μm、辺長の変動係数27%、平均粒子厚み0.11μmの主平面が四角形の{100}面からなる平板状粒子が全投影面積の85.0%を占める塩化銀含有率90.18モル%の塩沃臭化銀であった。
【0111】
《乳剤Em−3の調製》
Em−1の調製において、A3液に代えて以下の(A5液)を用いた以外は同様にしてEm−3を調製した。
【0112】
(A5液)
酸化ゼラチン350g、塩化ナトリウム3.27g、沃化カリウム0.7gに水を加えて10lとする。
【0113】
得られた乳剤を走査型電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、平均の辺の長さ1.41μm、辺長の変動係数27%、平均粒子厚み0.15μmの主平面が四角形の{100}面からなる平板状粒子が全投影面積の83.5%を占める塩化銀含有率90.15モル%の塩沃臭化銀であった。
【0114】
《Em−4の調製》
Em−1の調製において、A3液に代えて以下の(A6液)を用いた以外は同様にしてEm−4を調製した。
【0115】
(A6液)
酸化ゼラチン350g、塩化ナトリウム3.27g、沃化カリウム0.9gに水を加えて10lとする。
【0116】
得られた乳剤を走査型電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、平均の辺の長さ1.22μm、辺長の変動係数25%、平均粒子厚み0.20μmの主平面が四角形の{100}面からなる平板状粒子が全投影面積の83.0%を占める塩化銀含有率90.13モル%の塩沃臭化銀であった。
【0117】
以下、種乳剤SD−2を用い、それぞれ(A3液)、(A4液)、(A5液)、(A6液)を用いた以外はそれぞれ乳剤Em−1〜Em−4の調製法と同様にして、表1,2に示す乳剤Em−5〜Em−8を、更に種乳剤SD−3を用い、それぞれ(A3液)、(A4液)、(A5液)、(A6液)を用いた以外はそれぞれ乳剤Em−1〜Em−4の調製法と同様にして、表1,2に示す乳剤Em−9〜Em−12を調製した。
【0118】
《化学増感》
得られた各乳剤を60℃にして、増感色素(5,5′−ジクロロ−1,1′,3,3′−テトラエチルベンゾイミダゾロカルボシアニン)を銀1モル当たり0.7ミリモル、固体微粒子状の分散物として添加し、10分後に銀1モル当たりチオシアン酸アンモニウム95mg、塩化金酸2.5mg及びチオ硫酸ナトリウム2.0mgの混合水溶液、セレン増感するものは銀1モル当たりトリフェニルフォスフィンセレナイド0.2mgの分散液(テルル増感するものはこれに代えて同量の例示増感剤I−1)を加え、30分後に沃化銀微粒子乳剤を銀1モル当たり4.0×10-3モル添加し、総計2時間程の熟成を施した。熟成終了時に安定剤として4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン(TAI)280mgを添加した。
【0119】
増感色素の固体微粒子状分散物は、色素の所定量を予め27℃に調整した水に加え高速撹拌機(ディゾルバー)で3500r.p.m.で30〜120分間に亙って撹拌することによって得た。
【0120】
トリフェニルフォスフィンセレナイドの分散液は、トリフェニルフォスフィンセレナイド120gを50℃の酢酸エチル30kg中に添加して撹拌し、完全に溶解し、写真用ゼラチン3.8kgを純水38kgに溶解しドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム25重量%水溶液93gを添加した液と混合して直径10cmのディゾルバーを有する高速撹拌型分散機により50℃下において分散翼周速40m/秒で30分間分散を行った。その後速やかに減圧下で、酢酸エチルの残留濃度が0.3重量%以下になるまで撹拌を行いつつ、酢酸エチルを除去した。その後、この分散液を純水で希釈して80kgに仕上げた。
【0121】
《塗布液の調製と塗布》
乳剤層塗布液
ハロゲン化銀1モル当たり
1,1−ジメチロール−1−ブロム−1−ニトロメタン 70mg
t−ブチル−カテコール 400mg
2,6−ビス(ヒドロキシアミノ)−4−ジエチルアミノ
−1,3,5−トリアジン 0.15mg
ポリビニルピロリドン(分子量10000) 1.0g
スチレン−無水マレイン酸共重合体 2.5g
ニトロフェニル−トリフェニルホスホニウムクロリド 50mg
1,3−ジヒドロキシベンゼン−4−スルホン酸アンモニウム 2g
【0122】
【化8】
Figure 0003824710
【0123】
49OCH2CH(OH)CH2N(CH2COOH)2 2g
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 15mg
フィルター層塗布液
グリシジルメタクリレート50モル%、メチルアクリレート10モル%、ブチルメタクリレート40モル%の3種のモノマーからなる共重合体の10重量%水性分散液300gに下記のフィルター染料20g及びゼラチン200gを分散させた。
【0124】
【化9】
Figure 0003824710
【0125】
Figure 0003824710
【0126】
【化10】
Figure 0003824710
【0127】
これらの塗布液を、塗布量が片面当たり銀量1.3g/m2、ゼラチン量2.5g/m2(保護層0.8g/m2、乳剤層1.5g/m2、フィルター層0.2g/m2)となるように2台のスライドホッパー型コーターを用いて、毎分120mの塗布速度で、175μmの青色着色(濃度0.20)したポリエチレンテレフタレートフィルム支持体上に、支持体側からフィルター層、乳剤層、保護層の構成で両面同時に塗布し、2分20秒で乾燥して試料No.1〜28を得た。
【0128】
《センシトメトリー(写真性能)の評価》
得られた試料をそれぞれ2枚の増感紙(コニカ(株)製;SRO−250)で挟み、アルミウエッジを介して管電圧60kvp、管電流100mAで0.064秒間X線照射した。次いでローラ搬送型自動現像機(コニカ(株)線;SRX−503)を改造して25秒処理可能としたものを用い、下記処方の現像液、定着液をセットした。
【0129】
Figure 0003824710
現像液の調製は水約5lにPart−A、Part−Bを同時添加し、撹拌溶解しながら水を加え12lに仕上げKOHでpHを10.60に調整し、これに1l当たり氷酢酸2.5g/l、臭化カリウム7.9g/lを添加し、KOHでpHを10.45に調整して使用液とした。
【0130】
Figure 0003824710
硫酸又は水酸化ナトリウムを加えて仕上がりpHが4.35となるようにし、撹拌しながら水で希釈して18lに仕上げ、使用液とした。
【0131】
次にDry to dry 25秒で、タングステン光にて透過光黒化濃度が1.0となるように均一露光した4つ切りサイズフィルム2000枚のランニング処理を行って処理レベルが平衡状態になるようにし、平衡レベルの処理剤で処理して得られた画像で写真性能を評価した。但し、カブリ+1.0の濃度を与える露光量の逆数を感度とし、試料No.1の感度を100とした相対感度で評価した。尚、現像は200cc/m2、定着は190cc/m2の補充を行い、現像温度35℃、定着温度33℃、水洗温度20℃、乾燥温度50℃とした。
【0132】
《耐圧性の評価》
各試料の13mm×35mmに裁断したものについて、23℃、42%RHにて約1時間放置した後、曲率半径4mmで折り曲げ、未露光のまま現像処理した。このときの折り曲げによって生じた黒化部分の濃度とカブリ濃度との差をΔDとして、圧力カブリの目安とした。この値の小さいほど圧力耐性がよいことになる。
【0133】
《画像色調の評価》
各試料に胸部ファントームで蛍光増感紙SRO−250(コニカ(株)製)を用い、管電圧90kvpで実写し、現像処理して得られた銀画像の透過光による色調をシャーカステン上で観察して、以下の評価基準で目視評価した。
【0134】
1:黄色を帯びた黒色
2:やや黄色を帯びた黒色
3:赤味を帯びた黒色
4:やや赤味を帯びた黒色
5:純黒色
ここに、評価1では実用に耐えず、4以上が実用上好ましい。
【0135】
以上の結果を表1,2に示す。
【0136】
【表1】
Figure 0003824710
【0137】
【表2】
Figure 0003824710
【0138】
【発明の効果】
本発明により、銀画像の色調及び迅速処理性に優れ、圧力黒化の改良されたハロゲン化銀写真乳剤を得ることができる。

Claims (3)

  1. 互いに平行する2つの{100}主平面を有する平板状ハロゲン化銀粒子から実質的になり、臭化銀含有率50モル%以上で、平均アスペクト比2以上の乳剤を、種晶として成長させた、互いに平行する2つの{100}主平面を有する平板状ハロゲン化銀粒子が全投影面積の50%以上の、塩化銀含有率50モル%以上であるハロゲン化銀写真乳剤であって、前記種晶の平板状ハロゲン化銀粒子の厚さの平均(a)に対する前記平板状ハロゲン化銀粒子の厚さの平均(b)の比(b/a)が3.0以下であることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
  2. 種晶乳剤の脱塩水洗工程までに還元増感が施されることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
  3. カルコゲン増感されることを特徴とする請求項1又は2に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
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