JP3822345B2 - 固体潤滑膜構造および固体潤滑転がり軸受 - Google Patents

固体潤滑膜構造および固体潤滑転がり軸受 Download PDF

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  • Physical Vapour Deposition (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、摩擦面の固体潤滑膜構造および固体潤滑膜の形成方法並びに固体潤滑転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体潤滑転がり軸受は、通常の潤滑剤を使用できない宇宙空間や原子炉のような特殊な環境、真空搬送用装置、ターボ分子ポンプなどの真空を利用する機器などに適用されるものであって、転がり軸受を構成する部品(内・外輪、転動体および保持器を含む部品)の摩擦面には、二硫化モリブデンなどの固体潤滑膜がスパッタリングによって形成されている。
【0003】
スパッタ法による二硫化モリブデン膜の形成方法は、例えば特開平6−272715号公報に記載されているように、ホットプレスによって成形したMoS2 バルク材(塊材)をスパッタリング装置の上部に配置した上部電極に取り付け、この電極に対向する下部電極に被処理物を取り付け、放電ガス雰囲気中で両電極間に高周波電流を印加して行なわれる。
【0004】
このようなスパッタ法によると、通常、二硫化モリブデン被膜は被処理物の表面に網目状または小丘が密集した緻密な被膜構造を形成する。
【0005】
このような二硫化モリブデン被膜を形成した転がり軸受は、その保持器を四フッ化エチレン樹脂(PTFE)などの潤滑性に優れたフッ素系樹脂で形成すると、摩擦状態の初期に二硫化モリブデン被膜によって潤滑され、その後はPTFE等のフッ素系樹脂が保持器から内・外輪や転動体に転移して潤滑される。
【0006】
したがって、前記二硫化モリブデン被膜の摩耗寿命は、摩擦開始からフッ素樹脂の転移膜が形成される時間より少し長ければ足りると考えられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、より過酷な使用条件では、保持器からフッ素樹脂転移膜が形成される以前に二硫化モリブデン被膜が摩耗寿命に達することも想定される。
【0008】
このような過酷な摩擦状態では、フッ素系樹脂製の保持器から潤滑剤が安定供給されることなく軸受全体が摩耗寿命に達することになるから、将来のより過酷な使用条件に対応するような固体潤滑転がり軸受にならない。
【0009】
そこで、本願の発明の第1の課題は、上記した問題点を解決して、硫化モリブデンの潤滑性結晶被膜を形成した摩擦面の固体潤滑膜構造を改良し、より耐摩耗性の優れた摩擦面の固体潤滑膜構造とすることである。または、機械部品の摩擦面に硫化モリブデン被膜をスパッタリングにより形成する際に、より耐摩耗性に優れた硫化モリブデン被膜を形成する方法を提供することである。
【0010】
そして、本願の発明の第2の課題は、固体潤滑転がり軸受の潤滑特性を改善して、固体潤滑転がり軸受の硫化モリブデン被膜における耐摩耗性を改善することである。
【0011】
また、本願の発明の第3の課題は、特に、保持器がフッ素系樹脂またはこれを含む合成樹脂からなる固体潤滑転がり軸受において、その硫化モリブデン被膜の耐摩耗性を改善することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記した第1の課題を解決するため、本願の発明においては、摩擦面に硫化モリブデンの潤滑性結晶被膜を形成した固体潤滑膜構造において、前記硫化モリブデンの結晶の二次構造が、分岐を有する短繊維状結晶体の連続した樹枝状結晶体表面に、多数の短毛状結晶を成長させた構造であることを特徴とする摩擦面の固体潤滑膜構造としたのである。
【0013】
または、機械部品の摩擦面に硫化モリブデンの潤滑性結晶被膜をスパッタリングで形成する固体潤滑膜の形成方法において、硫化モリブデン粉末からなるターゲットを、被膜を形成する部品の下方に配置し、前記ターゲットと部品間に電力密度5〜8w/cm2 で高周波電力を印加してスパッタリングすることを特徴とする固体潤滑膜の形成方法としたのである。
【0014】
硫化モリブデンの結晶の二次構造が、上述のように樹枝状結晶体表面に多数の短毛状結晶を成長させた状態であれば、多数の短毛状結晶を有する樹枝状結晶体の隙間を埋めるように存在するので、摩擦面に硫化モリブデンの潤滑性結晶被膜が極めて緻密な組織に形成され、固体潤滑被膜の耐摩耗性が顕著に向上する。
【0015】
また、前記所定の固体潤滑膜の形成方法では、樹枝状結晶体表面に多数の短毛状結晶を成長させた耐摩耗性に優れた硫化モリブデンの結晶の二次構造が、スパッタリングによって確実に得られる。また、硫化モリブデン粉末からなるターゲットは、スパッタ処理によって劣化した面を処理毎に簡単に除去し、かつ平坦にならすことができるので、常に新生面で安定したスパッタ処理が可能となり、安定した品質の所定結晶二次構造の硫化モリブデン皮膜が形成できる。
【0016】
また、前記の第2の課題を解決するため、本願の発明においては、転がり軸受を構成する部品の摩擦面に、硫化モリブデンの潤滑性結晶被膜を形成した固体潤滑転がり軸受において、前記硫化モリブデンの結晶の二次構造が、分岐を有する短繊維状結晶体の連続した樹枝状結晶体表面に、多数の短毛状結晶を成長させた構造であることを特徴とする固体潤滑転がり軸受としたのである。
【0017】
上記固体潤滑転がり軸受は、固体潤滑転がり軸受の潤滑特性が改善され、特に固体潤滑転がり軸受の摩擦面に緻密な所定の結晶二次構造からなる硫化モリブデン被膜を形成しているので、摩擦面の耐摩耗性が改善されて長寿命の固体潤滑転がり軸受になる。
【0018】
また、前記した第3の課題を解決するため、本願の発明においては、硫化モリブデンの潤滑性結晶被膜を形成する部品が、鋼製の内・外輪および転動体から選ばれる一種以上の部品であり、かつ転動体の保持器が、フッ素系樹脂またはこれを含む合成樹脂で形成された保持器である上記構成の固体潤滑転がり軸受としたのである。
【0019】
このように保持器がフッ素系樹脂またはこれを含む合成樹脂からなる固体潤滑転がり軸受は、運転初期のトルクが低く安定し、保持器からのフッ素系樹脂の転移潤滑に移行するまでの潤滑は安定し、動作の信頼性が格段に向上する。そのため、上記構成の固体潤滑転がり軸受は、より過酷な使用条件に耐える長寿命の固体潤滑転がり軸受になる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本願の発明に採用する硫化モリブデン被膜は、二硫化モリブデンの他、所期した結晶構造の被膜を形成可能なものであればよく、例えば3、4、5および6価の硫化モリブデン化合物のうち、適当な化合物を採用できる。
【0021】
なお、分子式MoSx (式中、xは1.6〜2.7である。)で示され、二硫化モリブデン分子の硫黄とモリブデンの組成比S/Moが1.6以上2.7以下のものは、硫黄成分が豊富に含まれ潤滑性に優れているので、好ましいものである。
【0022】
本願の発明に用いる転がり軸受を構成する部品は、主として内・外輪、転動体および保持器からなるが、保持器を形成する材料は、フッ素系樹脂またはこれを含む合成樹脂とし、スパッタリングをしないことが好ましい。また、内・外輪、転動体および保持器は、軸受鋼、ステンレス鋼またはセラミックスなどの周知の材料を選択的に採用できる。
【0023】
保持器の形成材料として用いるフッ素系樹脂は、フッ素を含有する樹脂であれば特に限定使用されるものではなく、例えばPTFEのほか、クロロトリフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロフルオロエチレン共重合体などである。
【0024】
フッ素系樹脂を含む合成樹脂は、上記したフッ素系樹脂を混合した混合樹脂またはフッ素系樹脂を表面に被覆または積層した複合体(複合材料)であり、その場合の合成樹脂は特に限定されるものではなく、熱硬化性または熱可塑性のいずれの樹脂であってもよい。すなわち、前記合成樹脂の具体例としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミンフェノール共縮合樹脂、キシレン変性フェノール樹脂、ユリアグアナミン共縮合樹脂、アミノ樹脂、アセトグアナミン樹脂、メラミングアナミン樹脂、ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリアミド、メタクリル樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネイト、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンオキサイド、メチルペンテンポリマー、ポリアリルスルホン、ポリアリルエーテル、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、全芳香族ポリエステルなどを例示できる。
【0025】
本願の発明において硫化モリブデン被膜をスパッタリングにより形成する際に用いるスパッタリング装置は、高周波スパッタリング、または高周波マグネトロンスパッタリングのいずれであってもよい。
【0026】
図1に示すように、高周波スパッタリング装置は、流動性のある二硫化モリブデン粉末からなるターゲット1を、被膜を形成する部品2の下方に配置し、すなわちターゲット(膜材料)1を上面開放容器に収容した下部電極3と、被膜を形成する転がり軸受の部品2などを下面に係止した上部電極4を設けたものである。そして、これら両電極間に高周波電源5を接続して所定の電力密度の電力を印加し、その際にターゲット1や部品2を比較的低温でスパッタリングするために、両電極3、4内にはそれぞれ冷却水を流通させる流路6、7を設けている。なお、この高周波スパッタリング装置は、図外の油拡散ポンプおよびターボ分子ポンプを備えた真空排気装置およびスパッタガス注入装置付きの真空容器8に収容されており、さらに上・下部電極3、4間には絶縁性シャッタ9を付設し、これを適宜に開閉操作する。また、図中の符号10はシールド板を示している。
【0027】
【実施例】
〔実施例1〕
図1に示した高周波スパッタリング装置を用い、上部電極4に転がり軸受の内輪、外輪および転動体から選ばれる部品2(ステンレス鋼SUS440C製)を装着し、その下方に対抗する下部電極3の上面には、二硫化モリブデンの粉体(平均粒径1.0μm )をターゲット1として設置した。
【0028】
真空容器8内は、予め図外のターボ分子ポンプと油拡散ポンプによって10-6〜10-7Torrに真空排気し、純度99.999%のアルゴンガスを導入後、3×10-2Torrまで昇圧し、上部電極4に13.56MHzの高周波電力を印加し、シャッタ9を閉じた状態でイオンボンバードによるクリーニングを10分間実施した。
【0029】
次に、下部電極3に前記した同じ周波数の高周波電力を電力密度6.4w/cm2 で印加し、電極間距離20mmでシャッタ9を開けて120分間スパッタリング(スパッタアップ)を行なって潤滑性結晶被膜を形成した。これらの処理を行う際には、両電極内の流路6、7に20℃の冷却水を流通させた。
【0030】
そして、実施例1の内輪、外輪および転動体について、成膜の潤滑特性(被膜寿命)を調べるためにステンレス鋼(SUS304)製爪曲げ保持器を用いて軸受(転がり軸受608相当)を製造し、これを10-6Torrの真空雰囲気で面圧0.9(GPa)、回転速度2500rpmの条件で、軸受試験機の摩擦トルクが10-2N・mに達した時(寿命時の総回転数:rev.)を調べた。これらの結果は、試験軸受数n=5のそれぞれについて、図2中に○印で示した。
【0031】
また、実施例1の試験軸受のうち、一つ(代表例)の表面の結晶状態を走査型電子顕微鏡(×15000)で観察し、その写真を図3に示し、また結晶状態の模式図を図4に示した。
【0032】
〔実施例2〕
高周波マグネトロンスパッタリング装置を用い、実施例1で使用した高周波スパッタリング装置と同様に部品(軸受の内・外輪、転動体)およびターゲット(二硫化モリブデンの粉体(平均粒径1.0μm ))を設置し、真空容器内を予め図外のターボ分子ポンプと油拡散ポンプによって10-6〜10-7Torrに真空排気し、純度99.999%のアルゴンガスを導入後、2×10-2Torrまで昇圧し、上部電極4にマグネトロンによる高周波電力を印加し、シャッタ9を閉じた状態でイオンボンバードによるクリーニングを10分間実施した。
【0033】
次に、下部電極3に前記したマグネトロンによる高周波電力を印加し、シャッタ9を開けて60分間スパッタリング(スパッタアップ)を行なって潤滑性結晶被膜を形成した。これらの処理を行う際には、両電極内の流路6、7に20℃の冷却水を流通させた。
【0034】
そして、実施例2の内輪、外輪および転動体について、実施例1と全く同様にして成膜の潤滑特性(被膜寿命)を調べ、これらの結果は、試験軸受数n=3のそれぞれについて、図2中に▲印で示した。
【0035】
〔比較例1〕
実施例1において、スパッタリングの電力密度を3.2w/cm2 としたこと以外は、全く同様にして転がり軸受を製造し、実施例1と全く同様にして成膜の潤滑特性(被膜寿命)を調べ、これらの結果を試験軸受数n=2のそれぞれについて、図2中に○印で示した。
【0036】
また、比較例1の試験軸受のうち、一つ(代表例)の表面の結晶状態を走査型電子顕微鏡(×15000)で観察し、その写真を図5に示した。
【0037】
〔比較例2〕
実施例2において、スパッタリングの電力密度を3.2w/cm2 としたこと以外は、全く同様にして転がり軸受を製造し、実施例1と全く同様にして成膜の潤滑特性(被膜寿命)を調べ、これらの結果を試験軸受数n=1のそれぞれについて、図2中に▲印で示した。
【0038】
また、比較例2の試験軸受の表面の結晶状態を走査型電子顕微鏡(×15000)で観察し、その写真を図6に示した。
【0039】
〔比較例3〕
実施例1において、スパッタリングの電力密度を8.9w/cm2 としたこと以外は、全く同様にして転がり軸受を製造し、実施例1と全く同様にして成膜の潤滑特性(被膜寿命)を調べ、これらの結果を試験軸受数n=2のそれぞれについて、図2中に○印で示した。
【0040】
図2の結果からも明らかなように、電力密度が4.5w/cm2 以下の範囲でスパッタリングした比較例1、2と、電力密度が8w/cm2 を越える範囲でスパッタリングした比較例3の転がり軸受は、その寿命が7×106 〜11.5×106 回転(rev)であり、被膜の寿命が実施例1、2の約1/5〜1/2であった。
【0041】
また、図5に示すように、電力密度が4.5w/cm2 以下の範囲でスパッタリングした比較例1の二硫化モリブデンの結晶の二次構造は、短繊維状(またはウォーム状)の結晶が連結して網目構造であるように観察された。
【0042】
さらに図6に示すように、電力密度が8w/cm2 を越える範囲でスパッタリングした比較例3の二硫化モリブデンの結晶の二次構造は、分岐を有する短繊維状結晶に少しの短毛状結晶の成長が認められるが、短繊維状結晶同士は連続(または連結)しておらず、緻密性が不充分な被膜構造であった。
【0043】
これに対して、電力密度が5〜8w/cm2 の範囲でスパッタリングした実施例1と実施例2の転がり軸受は、その被膜寿命が22×106 〜37×106 回転(rev)であり、比較例1、2の2倍から5倍程度に長寿命であった。
【0044】
また、図3および図4に示すように、電力密度が5〜8w/cm2 の範囲でスパッタリングした実施例1の二硫化モリブデンの結晶の二次構造は、分岐11aを有する短繊維状結晶11の連続した樹枝状結晶体12表面に、多数の短毛状結晶13を成長させた構造であり、緻密性が充分な結晶性被膜構造であった。
【0045】
また、実施例2において、処理部品のターゲット間の距離(電極間距離という。)を15mm、20mm、35mm、50mmまたは60mmに設定したこと以外は、全く同様にして転がり軸受を製造し、実施例2と全く同様にして成膜の潤滑特性(被膜寿命)を調べ、この結果を表1に示した。
【0046】
【表1】
Figure 0003822345
表1の結果からも明らかなように、電極間距離が20〜50mmの場合には、同距離が20mm未満または50mmを越える場合よりも長寿命であった。そして、前記同様に軸受の表面の結晶状態を走査型電子顕微鏡(×15000)で観察した結果、電極間距離が20〜50mmの軸受の摩擦面には、図3または図4に示されるような緻密性が充分な結晶性被膜構造が形成されていた。
【0047】
【発明の効果】
本願の固体潤滑膜構造に係る発明は、以上説明したように、硫化モリブデンの結晶の二次構造を樹枝状結晶体表面に多数の短毛状結晶を成長させた構造としたので、摩擦面に硫化モリブデンの潤滑性結晶被膜が極めて緻密な組織に形成され、固体潤滑被膜の耐摩耗性が顕著に向上する利点がある。
【0048】
また、本願の固体潤滑膜の形成方法に係る発明は、硫化モリブデンからなる膜材料を粉末状として、所定の配置で所定の電力密度の高周波電力を印加してスパッタリングしたので、摩擦面に硫化モリブデン被膜をスパッタリングにより形成する際に、より耐摩耗性に優れた硫化モリブデン被膜を形成できる利点がある。
【0049】
また、本願の固体潤滑転がり軸受に係る発明は、硫化モリブデンの結晶の二次構造を樹枝状結晶体表面に多数の短毛状結晶を成長させたものを部品の摩擦面に形成したので、軸受の潤滑特性が改善され、摩擦面の耐摩耗性が改善されて長寿命の固体潤滑転がり軸受になる利点がある。
【0050】
また、保持器がフッ素系樹脂またはこれを含む合成樹脂からなる固体潤滑転がり軸受に係る発明では、保持器からのフッ素系樹脂の転移潤滑に移行するまでの潤滑は安定するので、運転初期のトルクが低く安定し、動作の信頼性が格段に向上する。また、所定結晶構造の硫化モリブデン被膜により摩擦面の耐摩耗性が改善されるので、より過酷な使用条件に耐える長寿命の固体潤滑転がり軸受になる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】スパッタリング装置の一例を示す模式図
【図2】実施例および比較例のスパッタリングの電力密度と寿命の関係を示す図表
【図3】実施例1の二硫化モリブデン被膜の走査型電子顕微鏡写真
【図4】実施例1の二硫化モリブデン被膜の結晶二次構造の模式図
【図5】比較例1の二硫化モリブデン被膜の走査型電子顕微鏡写真
【図6】比較例3の二硫化モリブデン被膜の走査型電子顕微鏡写真
【符号の説明】
1 ターゲット
2 被膜を形成する部品
3 下部電極
4 上部電極
5 高周波電源
6、7 流路
8 真空容器
9 シャッタ
10 シールド板
11 短繊維状結晶
11a 分岐
12 樹枝状結晶体
13 短毛状結晶

Claims (4)

  1. 摩擦面に形成される硫化モリブデンの潤滑性結晶被膜からなる固体潤滑膜構造において、
    前記硫化モリブデンの結晶の二次構造が、分岐を有する短繊維状結晶の連続した樹枝状結晶体表面に、多数の短毛状結晶を成長させた構造であることを特徴とする固体潤滑膜構造。
  2. 機械部品の摩擦面に硫化モリブデンの潤滑性結晶被膜をスパッタ法で形成する固体潤滑膜の形成方法において、
    硫化モリブデン粉末からなる膜材料を、被膜を形成する部品の下方に配置し、前記膜材料と部品間に電力密度5〜8w/cm2 で高周波電力を印加してスパッタリングすることを特徴とする固体潤滑膜の形成方法。
  3. 転がり軸受を構成する部品の摩擦面に、硫化モリブデンの潤滑性結晶被膜を形成した固体潤滑転がり軸受において、
    前記硫化モリブデンの結晶の二次構造が、分岐を有する短繊維状結晶の連続した樹枝状結晶体表面に、多数の短毛状結晶を成長させた構造であることを特徴とする固体潤滑転がり軸受。
  4. 硫化モリブデンの潤滑性結晶被膜を形成する部品が、鋼製の内・外輪および転動体から選ばれる一種以上の部品であり、かつ転動体の保持器が、フッ素系樹脂またはこれを含む合成樹脂で形成された保持器である請求項3記載の固体潤滑転がり軸受。
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