JP3821987B2 - プロペラシャフト用軸受けの支持装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用プロペラシャフトに取付けられた軸受けを車体側に連結支持する支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用プロペラシャフトにあっては、プロペラシャフトを複数に分割し、この分割した複数のプロペラシャフトを軸方向に連結して使用されるものがあり、この場合には、プロペラシャフトの所定位置に軸受けを設け、この軸受けが支持装置を介して車体側に連結支持されるようになっている。
【0003】
前記軸受けの支持装置は、プロペラシャフトに取付けられた軸受けの外周側に可撓性を有するインシュレータを設け、このインシュレータの外周側にブラケットが設けられており、このブラケットが車体側に連結されるようになっている。なお、類似の構成は、例えば実開昭62−73119号公報に示されている。
【0004】
ところで、自動車は静粛性が求められるところから、プロペラシャフトの回転に伴う振動の低減の要求度は高く、捩じり振動の低減と共に、プロペラシャフトに取付けられた軸受けの回転振動の低減が求められる。
【0005】
前記プロペラシャフトに取付けられた軸受けは、プロペラシャフトの自重や曲げモーメントによるラジアル荷重が加わった状態で回転するために、軸受けの転動体が内外輪の軌道面を転動する場合に生じる振動(以下、転動体通過振動と称す。)が生じることが知られており、この転動体通過振動を減じることが軸受けの振動を減じる上で有効である。
【0006】
また、一般に軸受けの転動体通過振動を低減するためには、軸受けに適当な大きさのスラスト荷重を与えるか、転動体と内外輪との間の軸受け隙間を可及的に小さくすることが有効であることが知られている(例えば、振動工学ハンドブック、1976年、養賢堂発行、参照)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来例にあっては、プロペラシャフトに取付けられた軸受けが可撓性を有するインシュレータを備えた支持装置によって支持されているから、適当な大きさのスラスト力を与えることが困難である。また、前記軸受けの転動体と内外輪との間の軸受け隙間を小さくすると、軸受け及び支持装置の取付け精度によっては逆に振動が増加する虞があるから、所定の隙間よりも小さくすることができない。
【0008】
このため、前記プロペラシャフトに取付けられた軸受けの振動を所期するレベルに低減させることが困難であった。
【0009】
本発明は前記従来の実情に鑑みて案出されたもので、プロペラシャフトに取付けられた軸受けの振動を低減させることが容易に可能な、プロペラシャフト用軸受けの支持装置を提供することを目的とする。
ことを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、請求項1記載の発明は、プロペラシャフトに取付けられる軸受けの外周側に可撓性を有するインシュレータを設け、このインシュレータの外周側にリテーナリングを設け、このリテーナリングと車体とをブラケットを介して連結してなる、プロペラシャフト用軸受けの支持装置において、取付け前の状態において前記車体の取付け面とブラケットの取付け面との間に前記軸受けの軸方向に対して角度を持たせるように構成し、前記車体と前記ブラケットを前記両取付け面により連結した取付け状態において、前記リテーナリングを前記軸受けの軸方向に略直交する水平軸廻りに偏倚させることにより前記インシュレータ全体を撓ませるようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、前記ブラケットの車体への取付け面が、軸受けの軸方向に対して傾斜している構成にしてある。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、前記ブラケットを取り付ける車体の取付け面が、軸受けの軸方向に対して傾斜している構成にしてある。
【0013】
斯かる構成において、前記プロペラシャフトは、自動車のトランスミッションとファイナルドライブとの間を連繋して、エンジンで発生する駆動トルクを伝達する。
【0014】
このとき、前記プロペラシャフトの所定位置に取付けられた軸受けは、支持装置を介して車体側に連結されており、プロペラシャフトの自重や曲げモーメントによるラジアル荷重が加わった状態で回転する。
【0015】
ここで、前記軸受けの支持装置は、インシュレータを撓ませることによって、軸受けに対して、この軸受けの軸方向に直交する水平軸廻りのトルクが与えられるようにしてある。
【0016】
具体的には、請求項2記載の発明によれば、前記ブラケットの車体への取付け面を、軸受けの軸方向に対して傾斜させることによってトルクが与えられるようにしてある。また、請求項3記載の発明によれば、前記ブラケットを取付ける車体の取付け面を、軸受けの軸方向に対して傾斜させることによってトルクが与えられるようにしてある。
【0017】
これによって、前記軸受けの内輪に対して外輪が傾き、軸受けに作用するラジアル荷重の荷重方向における軸受け隙間が小さくなる。
【0018】
このため、前記プロペラシャフトに取付けられた軸受けの転動体と内外輪との間の軸受け隙間が小さくなって、転動体通過振動が減じられる。
【0019】
また、前記軸受けにはラジアル荷重に加えて水平軸廻りのトルクによる荷重が作用することになるから、軸受けの転動体は大きな押圧力を受けることになる。前記軸受けの転動体が大きな押圧力を受けると、多くの転動体が常に軌道面と接触するようになるから、転動体の幾何学的配置の変化(図3において実線で示す位置と破線で示す位置との変化)が小さくなり、結果として、転動体通過振動が減じられる。
【0020】
したがって、プロペラシャフトに取付けられた軸受けの振動を低減させることが容易に可能な、プロペラシャフト用軸受けの支持装置が得られる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳述する。
【0022】
図1は本発明の実施の形態を示す、プロペラシャフト用軸受けの支持装置の一部断面して示す説明図、図2は図1に示す支持装置を拡大して示す断面図で、インシュレータの自由状態を示す図面、図3は軸受けに対して、この軸受けの軸方向に直交する水平軸廻りのトルクが与えられた状態を説明する図面、図4は軸受けに対して、この軸受けの軸方向に直交する水平軸廻りのトルクと、垂直軸廻りのトルクとを変化させた場合の振動レベルの変化を示す線図である。
【0023】
図において、1はプロペラシャフト、2はプロペラシャフト1に取付けられた軸受けで、この軸受け2が支持装置3を介して車体4側に連結支持されるようになっている。
【0024】
前記プロペラシャフト1はこの実施の形態において2個のシャフト5,6が軸方向に連結して構成され、3個の自在接手7,8,9を備えている。また、前記プロペラシャフト1には、軸方向の略中央に位置する自在接手8の近傍に軸受け2が取付けられている。詳しくは、図2に示すように、一方のシャフト5を形成するプロペラチューブ11の端部にスタブシャフト12が取付けられ、このスタブシャフト12に軸受け2が取付けられている。
【0025】
13はシャフト5とシャフト6とを連結するコンパニオンフランジ、14はスタブシャフト12にコンパニオンフランジ13を連結するするためのナットである。
【0026】
前記軸受け2はこの実施の形態において単列玉軸受けが採用されており、内輪14がスタブシャフト12に圧入され、外輪15に支持装置3が取付けられるようになっている。
【0027】
前記支持装置3は、軸受け2の外周側に設けられるインシュレータ19と、このインシュレータ19の外周側に設けられるブラケット20とを主要素として構成されている。前記インシュレータ19は、ゴム等の可撓性材料から形成されており、内周端がハウジング21を介して軸受け2の外輪16に取付けられ、中央部分で折り返された状態で、外周端がリテーナリング22を介してブラケット20に取付けられている。
【0028】
前記ブラケット20の車体4への取付け面23は、軸受け2の軸方向に対して傾斜した構成にしてある。即ち、前記取付け面23は、インシュレータ19の自由状態において、軸受け2の軸芯線zに対して傾斜している。なお、前記ブラケット20を取付ける車体4の取付け面4aは、軸受け2の軸方向に対して略平行に形成されている。
【0029】
これによって、前記ブラケット20を車体4側に連結したとき、プロペラシャフト1は略水平に配置されるからインシュレータ19が撓むことになり、軸受け2に対して、この軸受け2の軸方向に略直交する水平軸(図3のy軸)廻りのトルクが与えられるようになっている。
【0030】
斯かる構成において、前記プロペラシャフト1は、自動車のトランスミッションとファイナルドライブ(図示せず)との間を連繋して、エンジンで発生する駆動トルクを伝達する。
【0031】
このとき、前記プロペラシャフト1の所定位置に取付けられた軸受け2は、支持装置3を介して車体4側に連結されており、プロペラシャフト1の自重や曲げモーメントによるラジアル荷重が加わった状態で回転する。
【0032】
ここで、前記軸受け2の支持装置3は、インシュレータ19を撓ませることによって、軸受け2に対して、この軸受け2の軸方向に直交する水平軸(図3のy軸)廻りのトルクが与えられるようにしてある。具体的には、前記ブラケット20の車体4への取付け面23を、軸受け2の軸方向に対して傾斜させることによってトルクが与えられるようにしてある。換言すれば、リテーナリング22を軸受け2の軸方向に略直交する水平軸廻りに偏倚させることになって、これにより、インシュレータ19全体が撓むことになる。
【0033】
これによって、前記軸受け2の内輪15に対して外輪16が傾き、軸受け2に作用するラジアル荷重の荷重方向における軸受け隙間が小さくなることになる(図3参照)。
【0034】
このため、前記プロペラシャフト1に取付けられた軸受け2の転動体17と内外輪15,16との間の軸受け隙間が小さくなって、転動体通過振動が減じられる。
【0035】
また、前記軸受け2にはラジアル荷重に加えて水平軸廻りのトルクによる荷重が作用することになるから、軸受け2の転動体17は大きな押圧力を受けることになる。前記軸受け2の転動体17が大きな押圧力を受けると、多くの転動体17が常に軌道面と接触するようになるから、転動体17の幾何学的配置の変化(図3において実線で示す位置と破線で示す位置との変化)が小さくなり、結果として、転動体通過振動が減じられる。
【0036】
したがって、プロペラシャフト1に取付けられた軸受け2の振動を低減させることが容易に可能な、プロペラシャフト用軸受けの支持装置3が得られる。
【0037】
図5及び図6は本発明の別の実施の形態を示す図面で、この実施の形態が前記実施の形態と変わるところは、前記ブラケット20を取付ける車体4の取付け面4aを、軸受け2の軸方向に対して傾斜させることによって、軸受け2に対して、この軸受け2の軸方向に直交する水平軸廻りのトルクが与えられるようにした点である。
【0038】
即ち、前記ブラケット20の車体4への取付け面23は、インシュレータ19の自由状態において軸受け2の軸方向に対して略平行としてあり、このブラケット20を取付ける車体4の取付け面4aが、軸受け2の軸方向に対して傾斜した構成にしてある。つまり、前記車体4の取付け面4は、軸受け2の軸芯線zに対して傾斜している。
【0039】
これによって、前記ブラケット20を車体4側に連結したとき、プロペラシャフト1は略水平に配置されるからインシュレータ19が撓むことになり、軸受け2に対して、この軸受け2の軸方向に略直交する水平軸(図3のy軸)廻りのトルクが与えられるようになっている。
【0040】
なお、その他の構成は前記実施の形態と同様であるから、同一構成部分には同一符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0041】
斯かる構成においても、前記軸受け2の内輪15に対して外輪16が傾き、軸受け2に作用するラジアル荷重の荷重方向における軸受け隙間が小さくなる(図3参照)。
【0042】
このため、前記プロペラシャフト1に取付けられた軸受け2の転動体17と内外輪15,16との間の軸受け隙間が小さくなって、転動体通過振動が減じられる。
【0043】
また、前記軸受け2にはラジアル荷重に加えて水平軸廻りのトルクによる荷重が作用することになるから、軸受け2の転動体17は大きな押圧力を受けることになる。前記軸受け2の転動体17が大きな押圧力を受けると、多くの転動体17が常に軌道面と接触するようになるから、転動体17の幾何学的配置の変化(図3において実線で示す位置と破線で示す位置との変化)が小さくなり、結果として、転動体通過振動が減じられる。
【0044】
したがって、この実施の形態においても、プロペラシャフト1に取付けられた軸受け2の振動を低減させることが容易に可能な、プロペラシャフト用軸受けの支持装置3が得られる。
【0045】
以上、実施の形態を図面に基づいて説明したが、具体的構成はこの実施の形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0046】
【実施例】
具体的には、軸受け2に対して、この軸受け2の軸方向に直交する水平軸(図3のy軸)廻りのトルクと、垂直軸(図3のx軸)廻りのトルクとを変化させた場合の振動レベルを測定した結果、図4に示すような結果が得られた。
【0047】
即ち、前記軸受け2の軸方向に直交する水平軸廻りのトルクが零の場合には実線に示す結果が得られ、トルクが2.0Nmの場合には破線に示す結果が得られ、トルクが6.0Nmの場合には鎖線に示す結果が得られ、トルクが10.0Nmの場合には一点鎖線に示す結果が得られた。
【0048】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、プロペラシャフトに取付けられた軸受けの振動を低減させることが容易に可能な、プロペラシャフト用軸受けの支持装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す、プロペラシャフト用軸受けの支持装置の一部を断面して示す説明図である。
【図2】図1に示す支持装置を拡大して示す断面図で、インシュレータの自由状態を示す図面である。
【図3】軸受けに対して、この軸受けの軸方向に直交する水平軸廻りのトルクが与えられた状態を説明する図面である。
【図4】軸受けに対して、この軸受けの軸方向に直交する水平軸廻りのトルクと、垂直軸廻りのトルクとを変化させた場合の振動レベルの変化を示す線図である。
【図5】本発明の別の実施の形態を示す、図1と同様な図面である。
【図6】図5に示す支持装置を拡大して示す断面図で、インシュレータの自由状態を示す図面である。
【符号の説明】
1 プロペラシャフト
2 軸受け
3 支持装置
4 車体
19 インシュレータ
20 ブラケット
Claims (3)
- プロペラシャフトに取付けられる軸受けの外周側に可撓性を有するインシュレータを設け、このインシュレータの外周側にリテーナリングを設け、このリテーナリングと車体とをブラケットを介して連結してなる、プロペラシャフト用軸受けの支持装置において、
取付け前の状態において前記車体の取付け面とブラケットの取付け面との間に前記軸受けの軸方向に対して角度を持たせるように構成し、
前記車体と前記ブラケットを前記両取付け面により連結した取付け状態において、前記リテーナリングを前記軸受けの軸方向に略直交する水平軸廻りに偏倚させることにより前記インシュレータ全体を撓ませるようにしたことを特徴とするプロペラシャフト用軸受けの支持装置。 - 前記ブラケットの車体への取付け面が、軸受けの軸方向に対して傾斜していることを特徴とする、請求項1記載のプロペラシャフト用軸受けの支持装置。
- 前記ブラケットを取付ける車体の取付け面が、軸受けの軸方向に対して傾斜していることを特徴とする、請求項1記載のプロペラシャフト用軸受けの支持装置。
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