JP3821733B2 - レジンボンドホイール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコンウエハおよびデバイスウエハの加工において用いられるレジンボンドホイールに関する。
【0002】
【従来の技術】
レジンボンドホイールは、ダイヤモンド砥粒やcBN砥粒などをレジンボンドと混合して加熱、加圧成形して砥粒層を形成する。レジンボンドはメタルボンドやビトリファイドボンドに比べて軟質であり、研削加工時に切刃である砥粒が摩滅して切れ味が低下する前にボンド層が摩耗して砥粒が脱落する。このため、研削面の目詰まりや砥粒の摩滅による切れ味の低下が生じにくい。また、レジンボンドはメタルボンドに比べて弾性があるため、被研削材の仕上がり面が良好である。これらのことから、レジンボンドホイールはシリコンウエハの鏡面研削など、小さな面粗さが要求される研削に用いられる。
【0003】
シリコンウエハの加工工程は、シリコンインゴットを外周刃ブレードやカップ型ホイールなどで所定寸法の円柱状のインゴットに成形し、この円柱状インゴットを内周刃ブレードやワイヤソーで所定の厚さにスライスしてウエハとする。このウエハの外周部を面取り研削し、その後にウエハ片面もしくは両面を研削、ラッピング、エッチング、ポリッシングしたものがサブストレートである。このサブストレートに集積回路などのデバイスを形成し、形成面の裏面を研削、ポリッシングしたものがデバイスウエハである。本発明はシリコンウエハによるサブストレートおよびデバイスウエハを製造する過程において使用するレジンボンドホイールに関するものである。
【0004】
上記の加工工程のなかで、ウエハの外周部を面取り研削する加工は、図1に示すようなベベリングホイールを使用し、図2に示すようにして研削加工が行われる。図1は面取り加工用ベベリングホイールの外観の一例を示す斜視図であり、ベベリングホイール10には、台金11の外周面に1条または複数条の溝を形成した砥粒層12が固着されている(図1は複数条の溝の例を示す)。台金11は鉄製またはアルミニウム製の円盤状台金であり、砥粒層12はダイヤモンド砥粒またはcBN砥粒とレジンボンドからなる砥粒層である。図2はシリコンウエハの面取り加工方法の一例を示す図であり、ウエハ20を真空チャック30により保持し、ウエハ20とベベリングホイール10を回転させて、ウエハ20の外周部を研削加工する。
【0005】
ウエハの表面の研削加工および集積回路裏面の研削加工では、図3に示すようなカップ型の研削ホイールを使用し、図4に示すようにして研削加工が行われる。図3は研削ホイールの外観の一例を示す斜視図であり、研削ホイール40には、鉄製またはアルミニウム製の台金41の外周部側面42にダイヤモンド砥粒またはcBN砥粒とレジンボンドからなるセグメント状の砥粒層43が固着されている。図4はシリコンウエハの表面研削加工方法の一例を示す図であり、研削装置に配設されたチャックテーブル60の吸着面61にウエハ50を吸引保持し、研削ホイール40の下部に配設された砥粒層43とウエハ50の表面とが平行な状態を維持すると共にチャックテーブル61の回転中心を通るように研削ホイール40を回転させながら下降させ、砥粒層43をウエハ50に接触させることにより研削を行う。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ウエハの外周部を面取り研削する加工では、研削ホイールの砥粒層形状がウエハの形状精度に大きく影響する。レジンボンドホイールは比較的摩耗が大きいため砥粒層の形状崩れが生じるのが早い。形状崩れが生じると、研削装置から研削ホイールをいったん取り外し、形状修正を行う必要がある。従来の研削ホイールでは形状修正のインターバルが短く効率が悪い。
【0007】
またウエハの表面を研削する加工では、研削ホイールのレジンボンドの弾性が大きいため、研削時に砥粒がボンド層の中にもぐり込みやすく、レジンボンドがウエハと接触して摩擦が生じる。ウエハは極めて脆い材質であり、また厚さがサブストレートで約700〜800μm、集積回路が形成されたデバイスウエハでは30〜200μmと極めて薄いため、研削加工時にレジンボンドとの間に摩擦が生じると、劈開クラックを生じたり破損したりすることがある。
【0008】
レジンボンドが軟質であるために研削時の摩耗が大きく、ホイール寿命が短いという問題に対して、たとえば特開2001−36835号公報では、フィラーとしてほぼ球状のSiO2を分散配置することが提案されている。また特開2001−38638号公報では、ZnOおよび個体潤滑剤を含むフィラーを分散配置することが提案されている。このようにフィラーを添加することにより砥粒層の耐摩耗性を向上させる試みがなされている。
【0009】
しかしながら、上記したシリコンウエハの研削加工時における問題を解決しようとすると、フィラーを多量に添加する必要がある。フィラー添加量が多くなると相対的にレジンボンドの量が減少し、フィラーの保持力が低下してフィラーの脱落が生じやすくなる。このため、多量のフィラーを添加すると、逆に摩耗の進行が早くなり、砥粒層の形状崩れが激しくなり、ホイール寿命が短くなるという問題がある。
【0010】
これに対し特許第276516号では、多孔質ケイ酸カルシウムを砥粒層中に分散させることにより、多孔質ケイ酸カルシウムの気孔内に樹脂が入り込んで固化し、粒子の架橋作用により砥粒層強度が向上して砥粒の早期脱落や砥粒層の形状崩れを防止することができるとしている。しかしながらこの発明では、多孔質ケイ酸カルシウムが研削時に破砕してチップポケットを形成するとしている。したがって、多孔質ケイ酸カルシウムを多量に添加しても耐摩耗性を向上する効果はなく、ホイール寿命を向上することはできない。また、シリコンウエハ研削において重要な課題であるコンタミネーション(金属汚染)を考慮すると、Si以外の金属元素(Al)を含む多孔質ケイ酸カルシウムは、シリコンウエハ研削用ホイールのフィラーとしては適当でない。
【0011】
本発明が解決すべき課題は、レジンボンドホイールの耐摩耗性を高めるためにフィラーを添加するにあたり、フィラーの保持力を低下させることなく、フィラーの添加量の増大を可能にし、砥粒層の耐摩耗性を向上させ、さらに、被研削材上にコンタミネーションとなる反応生成物を形成させないことにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、台金の外周部の周面または側面に砥粒層が固着された、シリコンウエハおよびデバイスウエハの加工に使用するレジンボンドホイールにおいて、砥粒層を構成する材料として多孔質二酸化珪素をフィラーとして添加したことを特徴とする。
【0013】
砥粒層に添加するフィラーとして多孔質二酸化珪素を添加することにより、砥粒とレジンボンドとフィラーを混合して成形するときに、レジンボンドがフィラー表面の細孔に入り込み、レジンボンドがフィラーを保持する力が大きく向上する。
【0014】
前記多孔質二酸化珪素は、粒径1〜100nmの微細な1次粒子を造粒、焼成によって集合させた粒径1〜20μmの2次粒子であり、表面および内部に細孔が多数形成されている。細孔の大きさおよび数は、1次粒子を造粒、焼成する際の条件設定によって調整することができる。また、多孔質二酸化珪素は構成元素がシリコンと酸素である為、シリコンウエハの研削時にウエハ上にコンタミネ−ションとなる反応生成物を形成することがない。また二酸化珪素としては高純度(98%以上)のものを使用することが望ましい。
【0015】
多孔質二酸化珪素の圧縮強度は50MPa以上とするのが望ましい。圧縮強度が50MPaより小さいと研削時に破砕することがあり、砥粒層の耐摩耗性を十分に向上することができない。
【0016】
また、多孔質二酸化珪素の含有量は、砥粒層全体の5〜60体積%とするのが望ましい。多孔質二酸化珪素の含有量が5体積%より少ないと、砥粒層の摩耗を十分に抑制することができない。一方、多孔質二酸化珪素の含有量が60体積%を超えて多すぎると、レジンボンドの量が少ないために多孔質二酸化珪素の充分な保持力が得られず、多孔質二酸化珪素が脱落しやすくなり、かえって砥粒層の摩耗進行が早くなる。
【0017】
多孔質二酸化珪素を添加した砥粒層を台金に固着したレジンボンドホイールは従来のレジンボンドホイールと同様の製造方法によって製造することができる。すなわち、砥粒と樹脂と多孔質二酸化珪素を混練し、150〜300℃程度の温度で成形して砥粒層を形成し、砥粒層を台金の外周面または外周部側面に固着させることにより、図1または図3に示したようなレジンボンドホイールとなる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、試験例に基づき本発明の実施形態を説明する。試験に供したレジンボンドホイールは、図3に示したカップ型ホイールであり、台金31はアルミ製で外径約250mmである。砥粒層33は、粒度#3000のダイヤモンド砥粒とレジンボンドとしてのフェノール樹脂とフィラーとからなるものである。樹脂の種類としてはフェノール樹脂に限定されるものではない。また、ダイヤモンド砥粒の粒度についても#325〜#8000の粒度から要求される面精度に応じて適宜選定して使用する。ここで、本発明のホイールはフィラーとして平均粒径3μmの多孔質二酸化珪素(純度99%以上)を用い、多孔質二酸化珪素の配合比を変えた発明品1〜3のホイールであり、比較例のホイールは多孔質二酸化珪素の圧縮強度が低い比較品のホイールであり、従来例のホイールは細孔のない無孔質二酸化珪素の配合比を変えた従来品1〜3のホイールである。試験条件は下記の通りである。
試験条件
研削機械:縦軸平面研削盤
ホイール回転速度:3600min−1
被研削材:8インチシリコンウエハ
取代:20μm
加工数:1000枚
【0019】
表1に各ホイールの砥粒層の配合と二酸化珪素の圧縮強度および研削試験によるホイール寿命を示す。
【表1】
【0020】
表1からわかるように、発明品1〜3のホイールは、多孔質二酸化珪素の添加量に比例してホイール寿命が向上している。多孔質二酸化珪素の添加量が増加して相対的にフェノール樹脂の量が減少しても、多孔質二酸化珪素を保持する力が低下することなく、砥粒層の耐摩耗性が向上することが確認された。
【0021】
比較品のホイールは、ホイール寿命が従来品1のホイールの1/10であった。試験後の砥粒層を観察した結果、フィラーである多孔質二酸化珪素が破砕していた。多孔質二酸化珪素の強度が低いことにより、研削時に多孔質二酸化珪素が破砕し、耐摩耗性向上の効果が得られていない。従来品2、3のホイールは従来品1に比べてフィラー量が増加したにもかかわらず、ホイ−ル寿命が低下している。無孔質二酸化珪素を使用しているので、フィラ−量の増加に伴ってフェノ−ル樹脂によるフィラーの保持力が低下して脱落し、砥粒層の耐摩耗性が低下している。
【0022】
【発明の効果】
レジンボンドホイールの砥粒層に多孔質二酸化珪素をフィラーとして添加することにより、フィラーの保持力を低下させることなく、フィラーの添加量の増大を可能にし、砥粒層の耐摩耗性を向上させることができる。
その結果シリコンウエハの面取り加工用レジンボンドホイールでは、砥粒層の形状崩れを抑制することができ、形状修正のインターバルが長くなって生産効率を向上させることができる。またシリコンウエハの表面加工用レジンボンドホイールでは、ボンド層の弾性を小さくすることができ、ボンド層がウエハと接触してウエハに劈開クラックや破損が生じるのを防止することができる。また、Si以外の金属元素を含まないので、コンタミネ−ションとなる反応生成物を形成することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 シリコンウエハの面取り加工用ベベリングホイールの外観の一例を示す斜視図である。
【図2】 シリコンウエハの面取り加工方法の一例を示す図である。
【図3】 シリコンウエハの表面研削用カップホイールの外観の一例を示す斜視図である。
【図4】 シリコンウエハの表面研削加工方法の一例を示す図である。
【符号の説明】
10 ベベリングホイール
11 台金
12 砥粒層
20 ウエハ
30 真空チャック
40 カップホイール
41 台金
42 外周部側面
43 砥粒層
50 ウエハ
60 チャックテーブル
61 吸着面
Claims (1)
- 台金の外周部の周面または側面に砥粒層が固着された、シリコンウエハおよびデバイスウエハの加工に使用するレジンボンドホイールにおいて、砥粒層を構成する材料として多孔質二酸化珪素をフィラーとして添加し、前記多孔質二酸化珪素は、粒径1〜100nmの微細な1次粒子を造粒、焼成によって集合させた粒径1〜20μmの2次粒子であり、前記多孔質二酸化珪素の圧縮強度が50MPa以上であり、前記多孔質二酸化珪素の含有量が砥粒層全体の5〜60体積%であるレジンボンドホイール。
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