JP3821468B2 - 回転塗布装置及びその塗布方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基体(例えば、半導体ウエハ、液晶用基板、あるいはフォトマスク用基板)処理に用いられる回転塗布装置及びその塗布方法に関し、特に基体の周囲を密閉空間にし、その上に樹脂等の液体をコーテイングし、基体上に均一な膜形成を行うための塗布装置およびその方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体ウエハ、液晶用基板、あるいはフォトマスク用基板等の基体を処理するために液体を塗布する工程が行われている。例えば、半導体集積回路を製造する場合、フォトリソグラフや平坦化処理工程において、フォトレジスト、SOG、あるいはポリイミド樹脂等の液体を半導体ウエハ上に塗布する。かかる液体塗布において必要とされることは、それらの塗布によって均一な厚さの膜を形成すること、あるいは段差を含む半導体ウエハ上に平坦な膜を形成することである。こうした要求に応えるべく種々の回転塗布装置(スピンコーター)の改良が行われている。
【0003】
例えば特開平6−160404号公報に示される発明は、図1に示すように、モータ9に取付けられたチャック7上に半導体ウエハ5を載置し、ウエハの周囲をカップと蓋により密閉する構造を採用する。これによって気流の乱れを抑制し、レジストの塗布を均一にし塗布ムラをなくすものである。
上記刊行物の他にも、半導体ウエハの周囲を密閉構造とする技術として、以下のものが開示されている。
【0004】
特開平5−136041号は、チャンバー9aを密閉型とすることにより気圧の変動を小さくし、これによって半導体ウエハ上の膜厚の変動を小さくする技術を開示している(図1参照)。
【0005】
特開平5−208163号は、密閉された制御チャンバー10を用い、スプレイノズル18からレジストを半導体ウエハ14上に供給し、均一なレジスト膜を形成する技術を開示している(図1参照)。
【0006】
特開平2001−23879号は、下方容器3と上方容器4とからなる密閉式の処理容器2を用い、フォトレジストコーテイング時に生じるミストの付着を防止する技術を開示している(図1参照)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の回転塗布装置を用いて半導体ウエハ上に液体を塗布した場合、特に、凹凸、あるいはV溝などの段差形状が形成された半導体ウエハ上にポリイミド樹脂を塗布して膜を形成しようとした場合、半導体ウエハ上の膜厚分布が必ずしも所望の精度に達し得ないことがあった。特に、半導体ウエハの径が大きくなるに従い膜厚の均一性に困難を伴うのが実情であった。さらに、上記従来例の回転塗布装置は、密閉型、あるいは密閉式のチャンバー等を用い、半導体ウエハの周囲を密閉にし、気圧や気流を調整するものであるが、チャンバーもしくは容器の最適形状を検討し、膜厚の均一性を研究するものではない。さらに、基体が角型形状を有する(液晶用基板やフォトマスク用基板)場合、必ずしも滴下する液体を均一に塗布することが容易でなく、角型の周囲あるいは端部において塗布ムラが発生することがある。本発明者は、円形状の半導体ウエハう角型形状の基板上に形成される膜厚の均一性が、最終的に基体(あるいは基板)の周囲の密閉空間の形状に起因することを見出した。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記従来例の課題を解決し、基体上に均一性のある膜を形成可能な液体塗布装置およびその塗布方法を提供する。
【0009】
さらに、本発明の目的は、表面に段差が形成された基体上に平坦な膜を形成可能な液体塗布装置およびその塗布方法を提供する。さらに、表面に段差が形成された基体上にその段差形状に倣うような膜形成が可能なステップカバレッジに優れた液体塗布装置およびその塗布方法を提供する。
【0010】
さらに、本発明の目的は、生産性に優れ、かつ比較的低コストな基体処理用液体塗布装置およびその塗布方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明の目的は、基体上に均一な膜を形成するのに最適な形状を有する密閉型チャックを備えた液体塗布装置およびその塗布方法を提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る液体塗布装置は、基体を保持する保持手段と、基体上に液体を滴下する手段と、基体を回転させる回転手段とを備え、保持手段は、回転手段に結合され、密閉された空間を提供可能であり、該空間内に前記基体をほぼ水平に固定する固定部と、該固定部から外側に傾斜して延在する傾斜面によって画定された空間を含む外周部とを有し、外周部は固定部より下方に位置する空間を含むものである。
【0013】
好適には、保持手段は、外周部の傾斜面と貫通孔を介して連通する液体貯蔵部を有し、液体貯蔵部は外周空間部よりも下方に空間を含む。好適には、液体貯蔵部は、外周部の円周方向にほぼ均等に配置されている。例えば、90度間隔で4つ配置することが望ましい。
【0014】
好適には、保持手段は、回転手段に結合され、一面を開口する容器手段と、開口された一面を密封するシール手段とを有し、これによって内部に密閉された空間を提供する。密閉空間は、必ずしも気密あるいは真空状態である必要はなく、基体の周囲が外部空間から遮断されていれば良い。
【0015】
好適には、シール手段は、容器手段内へ不活性ガス、例えば、窒素ガスを導入するための導入孔を備えている。さらに、導入孔にフィルターを接続し、ゴミ等の粒子を除去することができる。
【0016】
好適には、回転塗布装置は、シール手段を前記容器手段から着脱させるための着脱機構を備えている。着脱機構は、シール手段を容器手段から上方へ移動させるための機構と、シール手段を回転可能に支持する機構とを含む。
【0017】
好適には、滴下手段は移動可能であり、シール手段が容器手段から外されたとき、容器手段内の基体上に液体を滴下する。
【0018】
好適には、保持手段は、回転手段の回転軸に結合される密閉型チャックを含み、該密閉型チャックが前記固定部および外周部を有する。すなわち、密閉型チャックが基体の保持と回転手段への結合とを一体構造で行うため、基体の保持と回転軸への結合とを別体で構成し両者を接続する必要はなくなり、工数およびコストを削減できる。他方、そのような一体構造により密閉空間をより効果的に密閉状態として保持することができる。
【0019】
好適には、密閉型チャックは、その裏面に結合されるリアフランジを有し、チャックの裏面に形成された凹部と該リアフランジとによって液体貯蔵部を形成する。また、密閉型チャックの固定部は、基体の裏面を真空吸引するための孔が形成されている。基体は、例えば円形状の半導体ウエハや、角型形状を有する基板として液晶用基板やフォトマスク用基板であっても良い。
【0020】
本発明に係る基体上に液体を塗布する方法は、次の工程を含む。基体取付け面よりも外周にかつ下方に空間が形成された密閉型チャックの基体取付け面上に基体を取付ける工程、停止された基体上に液体を滴下する工程、密閉型チャックの開口面をシール部材で密閉する工程、密閉型チャックの内部の密閉空間において基体を回転させ、基体上に液体を塗布する工程。
【0021】
好適には、液体塗布方法は、液体を滴下するノズルを前記密閉型チャックの開口面上に位置させる工程と、液体の滴下終了後、ノズルを開口面から退避させる工程を含み、さらに密閉空間内に不活性ガスを注入しても良い。
【0022】
好適には、基体は半導体ウエハであり、液体はポリイミド樹脂である。さらに、半導体ウエハ表面には段差が形成され、ポリイミド樹脂の塗布により基体表面に平坦化されたポリイミド膜を形成する。また段差は、その表面に格子状に走るV字型溝である。また、基体は、角型形状を有する液晶用基板やフォトマスク基板であっても良い。
【0023】
本発明の液体塗布装置およびその塗布方法によれば、基体を保持する保持手段は回転手段に結合されているため、基体とともに回転可能し、密閉空間内の気流の乱れを抑えることができる。さらに保持手段の外周部は、固定部よりも低い位置に、かつ固定部から延在する傾斜面によって画定される空間を含むため、基体上に塗布された液体が遠心力によって基体から流れ落ち、あるいは飛ばされたとき、これら液体が傾斜面を通じて下方の空間へ導くことが可能であり、これによって密閉空間内の気流の乱れを最小限に抑制することができる。
【0024】
さらに、記外周部の傾斜面には液体貯蔵部が連通されているため、遠心力により適量の液体が液体貯蔵部へ貯蔵される。即ち、傾斜面を通じて液体貯蔵部の空間に液体が充満されると、傾斜面と液体貯蔵部とを連通する貫通孔は実質的に液体によって遮蔽されたこととなる。このため、密閉空間でありながら、基体上からこぼれる液体を適切に保持し、これによって、気流が乱されたり、あるいは基体上へのミストの付着を好適に防止することができる。さらに、使用される液体によっては、貯蔵された液体の再利用を図ることも可能となる。
【0025】
このように本発明によれば、液体塗布装置の保持手段の形状を最適化することによって、基体上に形成される膜厚をより均一にすることができ、また、段差を含む基体に対しては、より平坦な膜を形成することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る半導体ウエハ処理用の回転塗布装置の要部構成を示す組立図である。回転塗布装置1は、モータカバー10内にACサーボモータ11を備え、ACサーボモータ11からの駆動軸12はカップリング13内においてキー14によりスピンシャフト15の一端に接続される。スピンシャフト15の他端は、密閉型チャック30に接続され、ACサーボモータ11からの回転駆動を密閉型チャック30へ伝達する。
【0027】
スピンシャフト15の他端の表面からその真中部分近くまで中心部を軸方向に延びる吸着孔16が形成されている。吸着孔16は、さらに真中部分からほぼ水平へ延び、スピンシャフト15の外周面へ通じる孔を含む。
【0028】
スピンシャフト15は、ハウジング17内において一対のベアリング18により回転可能に支持される。一対のベアリング18はカラースペーサー19によって離間されるとともに、各ベアリング18の外面は軸用C型留め輪20によって固定される。さらに、スピンシャフト15はモータフランジ21内において一対のモータシール22によってシールされる。モータフランジ21には、水平方向に延在する貫通孔が形成され、この貫通孔が一対のモータシール22間においてスピンシャフト15の吸着孔16と連通するように、モータフランジ21の位置決めが行われる。モータフランジ21の貫通孔は、図示しない外部の真空吸引装置に接続され、半導体ウエハの真空吸引時にモータシール22によってシールされる。
【0029】
モータフランジ21の上面はリテイナー23によって固定され、またその上部には、フォトセンサー24が設けられる。フォトセンサー24は、スピンシャフト15上に固定されたフォトセンサーカム25によりシャフトの回転数を検知し、これを回転塗布装置の各部を制御する制御部へ出力する。
【0030】
スピンシャフト15の他端は、密閉型チャック30の下部に設けられた軸受け部31の孔内に受容され、ロックリング26によって固定される。支持体27は、ハウジング17をモータカバー10に固定し、カップキャップ28は密閉型チャック30の下方を保護する。
【0031】
密閉型チャック30は、ほぼ薄型の円筒形状を有し、その内部に密閉空間を提供する。密閉型チャック30は、半導体ウエハ32を載置し固定するための真空吸着部33と、この真空吸着部33の面より一段低い面34を介して外側に延在する傾斜面35によって画定された空間を含む外周部36を有する。外周部36の空間は、半導体ウエハ32の載置面よりも外側にかつそれよりも低い位置にあり、断面はほぼU字型をしている。
【0032】
真空吸着部33のウエハ載置面のほぼ中央には吸着孔37が形成され、吸着孔37は軸受け部31の孔に連通する。吸着孔37は、軸受け部31に受容されたスピンシャフト15の吸着孔16と連通し、これによって真空吸着部33に載置された半導体ウエハ33の裏面を吸引可能とする。
【0033】
密閉型チャック30の上面は開放されており、この開口面をシール部材38によって閉じることができる。シール部材38は、開口面に対応した円板形状を有し、その外周端にはパッキン39とパッキン押え40が取付けられる。パッキン39はリング形状を有し、その上面がパッキン押え40によって固定され、その下面が密閉型チャック30の開口面と接触される。こうして、シール部材38によって密閉型チャック30の内部を密閉状態の空間を提供する。密閉型チャック30の裏面には、リアフランジ41が取付けられ、ここには後述する液体貯蔵部が形成される。
【0034】
次に、上記密閉型チャック及びおよびこれらに取付けられる各部について詳細に説明する。図2は密閉型チャックの上面図、図3は図2のX−X線断面図、図4は密閉型チャックの下面図、図5は図3の外周部の拡大図である。
【0035】
密閉型チャック30は、デルリン樹脂から成型される。密閉型チャック30の最大外径は200mm、開口面の内径は150mm、真空吸着部33の外径は90mmであり、本実施例では5インチ径の半導体ウエハ用に設計されている。真空吸着部33より外側の一段低い面34の外径は120mmであり、真空吸着部33より3mm程度低くなっている。一段低い面34からさらに下方に傾斜する傾斜面35が底面に当接する位置の外径は160mmである。真空吸着部33と開口面までの距離は15mmであり、底面から開口面までの距離は30mmである。こうして密閉型チャック30の内部には、真空吸着部15より外側にかつそこよりも低い位置に空間を有する外周部36が形成される。外周部36の最外郭部の内壁は曲率半径6ミリメートルにて形成されている。
【0036】
外周部36の傾斜面35には貫通孔42が形成されている。貫通孔42は円周方向に90度間隔で配置される。傾斜面35の裏側は、その傾斜を利用して凹部もしくは窪み43が形成される。また、その裏面には、その円周方向に複数のネジ穴44が形成される。
【0037】
図6はリアフランジの平面図である。リアフランジ41は、中央部分に開口が形成された円板形状をしており、デルリン樹脂によって成型される。外径は、200mmで、中央部の開口は110mm、厚さは6mmである。円周方向には複数のネジ穴45が形成され、これらは密閉型チャックのネジ穴44と対応する位置にある。また、リアフランジ41には、円周方向に90度間隔で4箇所の凹部43aが形成される。リアフランジ41を密閉型チャック30の裏面にねじ留めすることにより、上述した凹部43はリアフランジ41の凹部43aと合体し、そこに密閉された空間を形成する。この空間は、半導体ウエハ上に滴下された液体を貯蔵する液体貯蔵部43として機能する。
【0038】
図7はシール部材の断面図である。シール部材38は円板形状であり、デルリン樹脂を成型したものである。外径は146mmであり、密閉型チャック30の開口径より若干小さくなっている。シール部材38の中心部には、環状の突起を有するシャフト取付け部が形成され、この部分に後述する着脱機構が取付けられる。
【0039】
図8はパッキンの断面図、図9はパッキン押えの断面図である。パッキン39はシリコーンゴム製であり、外径は164mm、内径は125mmの円盤形状を有する。パッキン押え40はデルリン樹脂製で、外径は168mmである。外周底面には、パッキン39を位置きめ保持するための突起46を有する。パッキン39はシール部材38よりもやや大きい外径を有しているため、パッキン押えの突起46によってその上部が固定された状態で密閉型チャック30に取付けられると、ちょうどパッキン39が密閉型チャック30の開口面と当接し、両者のシーリングが行われる。
【0040】
図10は、シール部材を密閉型チャックから着脱させるための着脱機構を示す図である。本実施例による着脱機構50は、鉛直方向に移動可能なリニア−シリンダー60と、リニアシリンダー60にブラケット61を介して接続されたステー62と、ステー62に接続されたベアリングケース70と、ベアリングケース70と結合されるモータシールハウジング80と、ベアリングケース70内に回転可能の取付けられるシャフト90とを有している。
【0041】
シャフト90は、図11に示すように、その一端91にフランジが形成され、これは、シール部材38の中心部のシャフト取付け部51にネジによって固定される。シャフト90の内部には、内径が大きな空間92とこれに連通される内径が小さな空間93が形成されている。本実施例では、密閉型チャック30内に不活性ガスとして窒素ガスを供給可能な構成を採用するため、シール部材38の軸取付け部51に内径2ミリメートルほどのガス導入孔52が形成されている。但し、不活性ガスの供給が不要な場合には、必ずしもガス導入孔が形成されたシール部材を用いなくても良い。シャフト90をシール部材38に取付けることによってガス導入孔52はシャフト90内の空間92、93と連通される。シャフト90の他端側において空間93は閉じているが、その半径方向すなわち軸方向と垂直方向に孔94(2.5ミリ径)が形成され、空間93は、孔94を介して外部と連通可能である。
【0042】
窒素ガスを密閉型チャック30に供給するに際して、ゴミ等のパーテイクルを除去するのが好ましく、このためシャフト90の空間92にはフィルター95が配置される。フィルター95の一方の面と空間93との間にはスプリング96が介挿され、これによってフィルター95の他方の面がシャフト取付け部51に押圧される。
【0043】
ベアリングケース70は円筒形状を有し、その内部においてC型留め輪71によりベアリング72を固定し、他方、その下部においてベアリング押さえ73を取付け、シャフト90を回転可能に支持する。
【0044】
モータシールハウジング80は、図12に示すように、環状のフランジ81と円筒状の内径の大きな空間82と、該空間82と連通される内径の小さな空間83と、空間83に連通され窒素ガス導入ポートとして機能する孔84とを有する。モータハウジング80は、フランジ81によりベアリングケース70に取付けられ、空間82においてナット85によりスペーサ86を介してシャフト90をベアリング73上に固定する。シャフト90の他端すなわち外径の小さな部分は、環状のリテイナー87を介して空間83内に挿入される。モータシールハウジング80の空間83には環状のモータシール88を取付ける凹所89が形成される。モータシール88は、凹所89に配され、空間83にあるシャフト90の他端をシールする。シャフト90の孔94はモータシールハウジングの孔84とほぼ同じ高さにあり、孔84から注入される窒素ガスは、モータシール88によって囲まれた密閉空間においてシャフト90の孔94に導入可能となる。従って、シャフト90が停止中でも回転中でも、孔84から導入された窒素ガスは孔94内へ供給することができる。孔94へ導入された窒素ガスは、内部空間93、92、フィルタ95、及びガス導入孔52を介して密閉型チャック30内に供給される。
【0045】
モータシールフランジ80の上部には、リテイナー63が固定され、モータシールハウジング80の空間83は密閉される。
【0046】
密閉型チャック30からシール部材38を開閉もしくは着脱するとき、回転塗布装置の制御部(図中省略)からの指令によりリニアシリンダー60が鉛直方向に移動する。シール部材38の最下位地点および最上位地点を予めメモリ等に記憶させておくことで、リニアシリンダー60の鉛直方向のストロークを自動制御することが可能である。
【0047】
シール部材38が最下位地点にあるとき、パッキン39は密閉型チャック30の開口面に押圧され、パッキン39の弾性により好適なシーリングが成される。密閉型チャック30がACサーボモータ11によって回転されるとき、シール部材38も一緒に回転し、シール部材38に取付けられたシャフト90がベアリング72によって回転可能に支持される。
【0048】
シール部材が最上位地点にあるとき、すなわち密閉型チャック30の一面が開放されているとき、半導体ウエハ32が真空吸着部33上に載置され、その後真空吸着される。さらに、密閉型チャック30のほぼ中心上にノズル(図中省略)を移動することが可能であり、ノズルから半導体ウエハ上に塗布すべき液体、例えばフォトレジスト液、SOG、ポリイミドなどを滴下する。
【0049】
次に、本実施例の好ましい液体塗布方法について説明する。ここでは、表面にV字型の溝が形成された半導体基板上にポリイミド樹脂を塗布しこれの平坦化処理を行う例を説明する。
【0050】
半導体基板の表面にV字型の溝が形成された半導体ウエハを用意する。V字型溝は、シリコン基板内に約45度の角度で傾斜する面を有し、これらの面の交差角は約90度である。溝の深さは、100−200ミクロンであり、これが半導体ウエハ上に格子状に形成される。なお、溝はシリコン基板にシリコン酸化膜や窒化膜等の薄膜を含むものであっても良い。V字型の溝は、最終的にパッケージ化された際に光導波路として機能するものである。
【0051】
次に、リニアシリンダー60を駆動して着脱機構50によりシール部材38を密閉型チャック30から最上位地点まで持ち上げる。半導体ウエハを真空吸着部33上に載置し、真空吸着装置により吸着孔16、37を介して半導体ウエハの裏面を吸着する。次に、ノズルを密閉型チャック30のほぼ中央付近に移動し、ここからポリイミド樹脂を滴下する。このとき、半導体ウエハ32は未だ停止したままであり、滴下されたポリイミド樹脂はある程度の表面張力をもってウエハの外周まで進み、そこから僅かにポリイミド樹脂がこぼれた時点で滴下を終了する。半導体ウエハ32からこぼれ落ちたポリイミド樹脂は、一段低い面34を通過し、さらに傾斜面35を通り、貫通孔42へと進み、リアフランジ41と窪み43とによって形成された液体貯蔵部へわずかに溜まる。
【0052】
次に、ノズルをホーム位置に退避させ、再びリニアシリンダー60を駆動してシール部材38を下降させる。シール部材38が最下位地点に到達すると、パッキン39が弾性をもって密閉型チャック30の開放端に押圧される。この時点で、密閉型チャック30の内部空間は外部から遮蔽される。
【0053】
密閉型チャック30内に窒素ガスを充填し、ACモータ11の駆動により密閉型チャック30を回転させる。窒素ガスを導入するタイミングは、密閉型チャック30の回転前でも、あるいは回転中であってもよい。また、本実施例では窒素ガスを用いたが、これ以外にも不活性ガスとしてアルゴンガス等を用いても良い。ポリイミド樹脂の塗布条件は、後述するが、例えば500rpmで40秒間回転させ、さらにその後1500rpmで1秒間高速回転を行う。密閉型チャック30及びシール部材38は、半導体ウエハ32とともに回転し、このとき内部空間は窒素ガスが充填された密閉状態であるため、外部からの空気が流入し内部の気流が乱されることはない。さらに、密閉型チャック30の回転により液体貯蔵部43に僅かに蓄えられていた液体は、その遠心力により貫通孔42の垂直壁側に押し寄せられ、貫通孔42を実質的に閉塞する。このため密閉型チャック30内の外周部36と液体貯蔵部(窪み43)とは遮蔽される。他方、半導体ウエハ32上に滴下され表面張力によってある程度の厚さに保持されていたポリイミド樹脂は、回転と同時に遠心力により外周に押され、ウエハ端から落下し、面34、傾斜面35を流れ落ちるが、上述したように貫通孔42は実質的に閉塞されているので、ほとんどは貫通孔42を通らずに外周部36内に留まる。こうして、内部空間の気流あるいは気圧の変動を極力抑えることができる。
【0054】
ポリイミド樹脂の塗布、回転が終了した後、必要であればさらに半導体ウエハを低速で回転させポリイミド樹脂の乾燥を行うようにしても良い。例えば、300rpmで120秒間程度乾燥回転させることが望ましい。密閉型チャック30の回転が停止されると、遠心力により貫通孔42の垂直壁に押されていたポリイミド樹脂は元の状態に戻り、外周部36に溜まっていたポリイミド樹脂が貫通孔42を介して液体貯蔵部43に自動的に回収される。半導体ウエハ32上には5−10ミクロンの厚さのポリイミド樹脂がコーテイングされ、V字型の溝を含む表面がほぼ平坦な膜で塗布され、ウエハ全体の膜厚分布を均一化しかつ薄膜化することができる。
【0055】
本発明者は、上記密閉型チャックを用い以下に示す種々の条件においてポリイミド樹脂の塗布を行った結果、これらのすべての条件において半導体ウエハ上に平坦な膜を塗布することが可能であることを見出した。この判定は、ポリイミド樹脂が塗布された半導体ウエハを60度で5分間ベークし、その後半導体ウエハ表面の複数の地点を段差計で測定し、それらのばらつき度合いをチェックして行った。なお、乾燥回転は、いずれも300rpm/120秒である。
条件1:500rpm/40秒+1500rpm/1s 乾燥回転有り
条件2:500rpm/20秒+1000rpm/30s 乾燥回転なし
条件3:500rpm/80秒 回転乾燥なし
【0056】
以上のように本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0057】
本実施例では、基体として半導体ウエハを対象にしたが、これ以外にも液晶用基板やフォトマスク用基板にも適用することが可能である。特に、液晶用基板やフォトマスク用基板等の角型形状を有する基体上に液体と塗布した場合、フリンジフリー(縁無し)として非常にムラのない均一性のある液体を塗布することができた。
【0058】
さらに、本実施例では、滴下する液体としてポリイミド樹脂を用いたが、これ以外の樹脂や液体であっても良い。処理すべき基体に適用される液体を用いることが可能である。
【0059】
さらに、本実施例では、半導体ウエハの平坦化処理プロセスにおける液体の塗布を例にしたが、これ以外のプロセス、例えばフォトリソ工程におけるフォトレジストの塗布であっても良い。さらに、本実施例では、密閉型チャックやシール部材の材質にデルリン樹脂を用いたが、これ以外にも例えば他のテフロン系樹脂やアルミニウム等の金属製であっても良い。
【0060】
さらに、本実施例ではV字型溝を有する5インチ径の半導体ウエハを用いたが、これに限らず多層配線構造により表面に種々の段差あるいは凹凸形状を含むものや、5インチよりも大口径の半導体ウエハにおいても適用可能であることは言うまでもない。
【発明の効果】
以上詳述したところから明らかなように、本発明によれば、基体を保持する保持手段は回転手段に結合されているため、基体とともに回転可能し、密閉空間内の気流の乱れを抑えることができる。さらに、液体塗布装置の保持手段の形状を最適化することによって、基体上に形成される膜厚をより均一にすることができ、段差を含む半導体ウエハに対しては、ステップカバレッジの優れた膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る回転塗布装置の要部を示す組立図である。
【図2】図1に示す密閉型チャックの上面図である。
【図3】図2に示す密閉型チャックのA−A線断面図である。
【図4】図2に示す密閉型チャックの背面図である。
【図5】図3に示す密閉型チャックの外周部の拡大図である。
【図6】図1に示すリアフランジの平面図である。
【図7】図1に示すシール部材の断面図である。
【図8】図1に示すパッキンの断面図である。
【図9】図1に示すパッキン押えの断面図である。
【図10】本実施例に係る回転塗布装置のシール部材の着脱機構の構成を示す組立図である。
【図11】図10に示すシャフトの断面図である。
【図12】図10に示すモータハウジングの断面図である。
【符号の説明】
11 ACサーボモータ 15 スピンシャフト
30 密閉型チャック 32 半導体ウエハ
33 真空吸着部 35 傾斜面
36 外周部 38 シール部材
39 パッキン 40 パッキン押え
41 リアフランジ 42 貫通孔
43 凹部(液体貯蔵部) 60 リニアシリンダー
80 モータシールハウジング 90 シャフト
95 フィルター

Claims (23)

  1. 基体を保持する保持手段と、
    前記基体上に液体を滴下する手段と、
    前記基体を回転させる回転手段とを備え、
    前記保持手段は、前記回転手段に結合され、密閉された空間を提供可能であり、該空間内に前記基体をほぼ水平に固定する固定部と、該固定部から外側に傾斜して延在する傾斜面によって画定された空間を含む外周部と、該外周部の裏面に結合される部材とを有し、前記外周部は前記固定部より下方に位置する空間を含み、前記外周部の傾斜面には貫通孔が形成され、前記傾斜面の裏面には凹部が形成され、当該凹部は前記貫通孔よりも回転軸側に位置しかつ前記貫通孔に連通し、前記凹部は前記部材に覆われて液体貯蔵部を形成する、回転塗布装置。
  2. 前記貫通孔は、鉛直方向に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の回転塗布装置。
  3. 前記液体貯蔵部は、前記外周部の円周方向にほぼ均等に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の回転塗布装置。
  4. 前記保持手段は、前記回転手段に結合され、一面を開口する容器手段と、該開口された一面を密封するシール手段とを有し、これによって内部に密閉された空間を提供することを特徴とする請求項1ないし3に記載の回転塗布装置。
  5. 前記シール手段は、前記容器手段内へ不活性ガスを導入するための導入孔を備えていることを特徴とする請求項4に記載の回転塗布装置。
  6. 前記回転塗布装置は、前記シール手段を前記容器手段から着脱させるための着脱機構を備えていることを特徴とする請求項4または5に記載の基体処理用回転塗布装置。
  7. 前記着脱機構は、前記シール手段を前記容器手段から上方へ移動させるための機構と、前記シール手段を回転可能に支持する機構とを含むことを特徴とする請求項6に記載の基体処理用回転塗布装置。
  8. 前記滴下手段は移動可能であり、前記シール手段が前記容器手段から外されたとき、前記容器手段内の基体上に液体を滴下することを特徴する請求項7に記載の回転塗布装置。
  9. 前記保持手段は、回転手段の回転軸に結合される密閉型チャックを含み、該密閉型チャックが前記固定部および外周部を有することを特徴とする請求項1ないし8いずれかに記載の回転塗布装置。
  10. 前記保持手段は、リアフランジを含み、当該リアフランジは、前記密閉型チャックの裏面に形成された凹部を塞ぐことで前記液体貯蔵部を形成することを特徴とする請求項9に記載の回転塗布装置。
  11. 前記密閉型チャックの固定部は、前記基体の裏面を吸引するための孔が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の回転塗布装置。
  12. 前記基体は、半導体ウエハであることを特徴とする請求項1ないし11いずれか記載の回転塗布装置。
  13. 前記基体は、角型形状を有する基板であることを特徴とする請求項1ないし11いずれか記載の回転塗布装置。
  14. 前記基体は、液晶用基板であることを特徴とする請求項13記載の回転塗布装置。
  15. 前記基体は、フォトマスク用基板であることを特徴とする請求項13記載の回転塗布装置。
  16. 基体上に液体を塗布する方法であって、
    回転手段に結合され、密閉された空間を提供可能であり、該空間内に基体取り付け面と、該基体取り付け面から外側に傾斜して延在する傾斜面によって画定された空間を含む外周部と、該外周部の裏面に結合されるリアフランジとを有し、前記外周部は前記固定部より下方に位置する空間を含み、前記外周部の傾斜面には貫通孔が形成され、前記傾斜面の 裏面には凹部が形成され、当該凹部は前記貫通孔よりも回転軸側に位置しかつ前記貫通孔に連通し、前記凹部は前記リアフランジに覆われて液体貯蔵部を形成する密閉型チャックを用意し、
    密閉型チャックの前記基体取付け面上に基体を取付け、
    停止された前記基体上に液体を滴下し、
    前記密閉型チャックの開口面をシール部材で密閉し、
    前記密閉型チャックの内部の密閉空間において基体を回転させ、前記基体上に液体を塗布することを特徴とする液体塗布方法。
  17. 前記液体塗布方法は、液体を滴下するノズルを前記密閉型チャックの開口面上に位置させる工程と、液体の滴下終了後、前記ノズルを前記開口面から退避させる工程を含む、請求項16に記載の液体塗布方法。
  18. 前記液体塗布方法は、前記密閉空間内に不活性ガスを注入する工程を含む、請求項16または17に記載の液体塗布方法。
  19. 停止された記基体に滴下された液体は、前記液体貯蔵部に貯蔵され、前記基体が回転されたとき、前記液体貯蔵部の液体の遠心力によって前記貫通孔が塞がれ、前期外周部と前記液体貯蔵部とが実質的に分離される、請求項16に記載の液体塗布方法。
  20. 前記基体は半導体ウエハであり、前記半導体ウエハ表面には段差が形成され、前記液体としてポリイミド樹脂が塗布され、前記半導体ウエハ表面に平坦化されたポリイミド膜を形成することを特徴とする請求項19記載の液体塗布方法。
  21. 前記基体は、角型形状を含む基板であることを特徴とする請求項16ないし18いずれか記載の液体塗布方法。
  22. 前記基体は、液晶用基板であることを特徴とする請求項21記載の液体塗布方法
  23. 前記基体は、フォトマスク用基板であることを特徴とする請求項21記載の液体塗布方法
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