JP3820910B2 - レーザ溶接方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、レーザ溶接方法に関し、とくに溶加材の成分組成を、珪素鋼材や極低炭素鋼材のレーザ溶接に適合させることにより、溶接後の加工時における破断の防止を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】
レーザ溶接は、アーク溶接等の他の溶接方法に比して、溶接時に、溶加材および溶接母材が溶融して形成される部分、すなわち溶接金属の領域が小さいため、溶接により熱影響を受ける溶接母材の領域(熱影響部。HAZ(Heat Affected Zone)ともいう)も比較的小さい。
このため、溶接母材に生じる溶接歪みが少ないことから、かかる溶接歪を許容し難い鋼材の溶接に使用されている。
【0003】
また、レーザ溶接は、極めて高い溶接速度が得られることから、溶接を迅速に行うことがとくに必要とされる場合に広く用いられている。
【0004】
近年では、とくに上述した高い溶接速度を利用して、レーザ溶接によるコイル継ぎ溶接等が行われており、たとえば、特開昭61−242777号公報には、電磁鋼板の酸洗ラインにコイル継ぎ溶接設備を導入して、レーザ溶接を実施することが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、上記した従来のレーザ溶接方法では、溶接金属の領域が小さく、しかも溶接速度が極めて高いことから、溶接金属が急熱急冷によって硬化し、溶接金属の硬度が著しく上昇するため、溶接金属自体の靭性を十分に確保できないという問題があった。
【0006】
このような問題の解決策として、特開平5−305466号公報には、Si含有量が1.2mass%以上の高級珪素鋼板の溶接に際し、Niを主成分とするフィラーワイヤもしくは粉末フィラーを溶加材として用い、溶接金属の成分組成を好適に制御することで、優れた靭性を具える溶接金属を形成する技術が提案されている。
【0007】
しかしながら、上記の技術は、Si含有量が高い高級珪素鋼板を対象とするものであり、この技術をそのままSi含有量が1.0mass%以下の珪素鋼材や極低炭素鋼材のレーザ溶接に使用するということはできなかった。
というのは、かような珪素鋼材や極低炭素鋼材では、母材や熱影響部の強度が溶接金属の強度に比べて相対的に低くなるため、溶接後にこれらの鋼材に曲げ加工もしくは圧延加工を施すと、母材または熱影響部で破断する傾向が大きかったからである。
【0008】
この発明は、上記の現状に鑑みて開発されたものであり、その目的は、珪素鋼材や極低炭素鋼材を溶接母材のレーザ溶接において、溶接後に行う種々の加工時に、母材や熱影響部で破断を生ずることのない溶接金属を形成し得る、レーザ溶接方法を提案することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、この発明で対象とする珪素鋼材や極低炭素鋼材についても、溶加材の成分組成を適切に調整すれば、溶接後の急冷焼入れ後の溶接金属の硬度を、母材や熱影響部の硬度と同等程度にすることができ、ひいては加工時における破断の発生を効果的に防止できることの知見を得た。
この発明は、上記知見に立脚するものである。
【0010】
すなわち、この発明は、珪素鋼材同士もしくは極低炭素鋼材同士を、溶加材を用いてレーザ溶接するに当たり、
上記溶加材として、
C:0.030mass%以下、
Si :1.0mass%以下、
Mn:0.75mass%以下、
Al:0.50mass%以下および
Ti:3.0mass%以下
を含有し、残部はNiおよび不可避的不純物の組成になるものを用いることを特徴とするレーザ溶接方法である。
【0011】
以下、この発明を具体的に説明する。
まず、この発明で使用する溶加材の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。
【0012】
Ni主体:
この発明では、珪素鋼材や極低炭素鋼材を溶接母材とするレーザ溶接に用いる溶加材について、その組成をNi主体とすることが重要である。というのは、このようにNi主体とすることで、溶接時に溶接金属をオーステナイトとして、急冷による焼入れ後に、溶接金属と母材および熱影響部との硬度差を小さくすることができ、これにより、溶接後に鋼材に曲げ加工もしくは圧延加工を施した場合に、母材および熱影響部への歪みの集中を抑制して、母材や熱影響部における破断を防止することができるからである。
【0013】
以下、その他の必須元素について説明する。
C:0.030mass%以下
Cは、溶接金属の引張強さ等の強度を向上させる有用元素であり、溶加材中に0.030mass%以下で含有させることにより、溶接金属の強度を、母材および熱影響部の強度と同程度に調整することができ、その結果、加工時に母材や熱影響部での破断を有利に防止することができる。
しかしながら、C含有量があまりにも少ないと、上記効果を得ることが難しくなるので、C含有量の下限値は、0.001mass%程度とすることが好ましい。
【0014】
Si:1.0mass%以下
Siも、Cと同様に、溶接金属の引張強さ等の強度を向上させる有用元素であるため、溶加材中に1.0mass%以下の範囲で含有させることにより、所望の目的を達成することができる。
しかしながら、Siは、脱酸元素でもあるため、含有量があまりに少なくなると、ブローホールが発生することになって、溶接強度の低下を招くので、Siは0.1mass%以上含有させることが好ましい。
【0015】
Mn:0.75mass%以下
Mnも、溶接金属の引張強さ等の強度を上昇させる有用元素であるため、溶加材中に0.75mass%以下の範囲で含有させることにより、所望の目的を達成することができる。
しかしながら、MnもSiと同様に、脱酸元素であることから、上記理由により、0.1mass%以上含有させることが好ましい。
【0016】
Al:0.50mass%以下
Alは、脱酸剤として有用な元素であるが、溶加材中に過剰に含有させると溶接金属の靱性を低下させるので、溶加材中に0.50mass%以下の範囲で含有させることにより、溶接金属の靱性の向上を図るものとした。
なお、Alは、溶接作業性を向上させる元素であるため、溶加材中に0.01mass%以上含有させることが好ましい。
【0017】
Ti:3.0mass%以下
Tiも、Alと同様に、脱酸剤として有効に寄与するが、過剰に含有させると溶接金属の靱性を低下させるので、3.0mass%以下の範囲で含有させるものとした。なお、Alと同様、溶接作業性を向上させる作用があるので、溶加材中に0.01mass%以上含有させることが好ましい。
【0018】
不可避的不純物
不可避的不純物としては、P,S,Cu,Fe等の各元素が挙げられるが、これらの元素については、以下の範囲に限定することが好ましい。
P:0.03mass%以下、S :0.01mass%以下、Cu:0.1mass%以下、Fe:0.30mass%以下。
【0019】
なお、この発明で溶加材としては、フィラーワイヤが最適であるが、その他粉末フィラーや溶加棒等も用い得ることはいうまでもない。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の実施の形態について説明する。
この発明において、対象とする珪素鋼材、極低炭素鋼材の厚みは、とくに限定されることはないが、たとえば熱延鋼板のコイル継ぎ溶接の場合の好適厚みは、極低炭素熱延鋼板で板厚2.0〜4.0 mm、珪素熱延鋼板で板厚1.0〜3.0 mmである。また、溶接装置としては、CO2レーザ溶接装置を使用し得ることは勿論、その他YAGレーザ溶接装置等を使用することもできる。溶接条件は、開先形状をI型、U型、V型等のいずれの形状とすることもできる。
さらに、たとえばCO2レーザ溶接装置を使用する場合には、その出力を5kw以上、また溶接速度を1.0〜5.0 mm/min程度とすることが好適である。
【0021】
【実施例】
この発明にかかるレーザ溶接方法を、突合わせ継手の溶接に適用し、その際の破断状況について調査した。
表1に、この発明のレーザ溶接方法の実施に用いたフィラーワイヤ(以下「ワイヤ1」とする)の成分組成を示す。また、比較のため、フィラーワイヤとしてJIS Z 3312に規定されているYGW12(以下「ワイヤ2」とする)およびJIS Z 3321に規定されているY310(以下「ワイヤ3」とする)も用いた。なお、ワイヤ径は、ワイヤ1〜3に関して全て1.2mmとした。
【0022】
【表1】
【0023】
上記の各ワイヤを用いて、板厚:2.0 mmの極低炭素熱延鋼板と、同厚の珪素熱延鋼板とをそれぞれレーザ溶接した。レーザ溶接装置は、CO2レーザ溶接装置を使用し、溶接条件は、開先形状をI型とし、上記装置の出力を10kwして、溶接速度を3.0 mm/minとした。
表2に、極低炭素熱延鋼板(以下「鋼板A」とする)および珪素熱延鋼板(以下「鋼板B」とする)の、成分組成をそれぞれ示す。
【0024】
【表2】
【0025】
上記した、ワイヤ1〜3を溶加材とし、一方鋼板A,Bを溶接母材として作製した溶接継手の破断のし難さ、すなわち耐破断性を評価するために、各溶接継手の溶接金属部を90度に曲げる操作を行い、溶接継手の亀裂発生に到る曲げ回数を測定した。
得られた結果を表3に示す。
【0026】
【表3】
【0027】
表3から明らかなように、鋼板Aの溶接にワイヤ1を使用して溶接継手を作製した場合には、ワイヤ2を使用して溶接継手を作製した場合に比して、亀裂発生に到る曲げ回数が多く、また、鋼板Bの溶接にワイヤ1を使用して溶接継手を作製した場合には、ワイヤ3を使用して溶接継手を作製した場合に比して、亀裂発生に到る曲げ回数が多く、いずれの溶接母材についても、この発明にしたがって成分組成を調整した溶加材を使用した場合には、耐破断性に優れた溶接継手が得られることが判明した。
【0028】
さらに、検証のため、上記各継手の溶接金属の硬さを、各溶接母材の硬さと比較した。
その結果を図1に示す。
なおここでは、溶接母材Aには鋼板Aを用い、溶接母材Bには鋼板Bを用い、また、溶接金属Aは溶接母材を鋼板Aとし、かつ溶加材をワイヤ1として作製し、溶接金属Bは溶接母材を鋼板Bとし、かつ溶加材をワイヤ1として作製し、溶接金属Cは溶接母材を鋼板Aとし、かつ溶加材をワイヤ2として作製し、溶接金属Dは溶接母材を鋼板Bとし、かつ溶加材をワイヤ3として作製したものである。
【0029】
図1から明らかなように、鋼板Aを溶接母材とした際には、ワイヤ2を溶加材とした場合の溶接金属のビッカース硬さに比して、ワイヤ1を溶加材とした場合の溶接金属のビッカース硬さが、溶接母材のビッカース硬さに近く、また、鋼板Bを溶接母材とした際には、ワイヤ3を溶加材とした場合の溶接金属のビッカース硬さに比して、ワイヤ1を溶加材とした場合の溶接金属のビッカース硬さが、溶接母材のビッカース硬さに近く、これにより、母材や熱影響部で破断し難い溶接継手になっていることが判る。
【0030】
【発明の効果】
かくして、この発明によれば、極低炭素鋼材および珪素鋼材のレーザ溶接において、母材や熱影響部で破断し難い溶接継手を安定して作製することができる。また、この発明は、極低炭素鋼材および珪素鋼材のレーザ溶接全般に寄与するのは勿論のこと、特に長尺の鋼材を接合して、連続圧延や連続表面処理する場合に、母材および熱影響部における破断を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 各母材および各溶接金属それぞれのビッカース硬さを比較して示した図である。
【発明の属する技術分野】
この発明は、レーザ溶接方法に関し、とくに溶加材の成分組成を、珪素鋼材や極低炭素鋼材のレーザ溶接に適合させることにより、溶接後の加工時における破断の防止を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】
レーザ溶接は、アーク溶接等の他の溶接方法に比して、溶接時に、溶加材および溶接母材が溶融して形成される部分、すなわち溶接金属の領域が小さいため、溶接により熱影響を受ける溶接母材の領域(熱影響部。HAZ(Heat Affected Zone)ともいう)も比較的小さい。
このため、溶接母材に生じる溶接歪みが少ないことから、かかる溶接歪を許容し難い鋼材の溶接に使用されている。
【0003】
また、レーザ溶接は、極めて高い溶接速度が得られることから、溶接を迅速に行うことがとくに必要とされる場合に広く用いられている。
【0004】
近年では、とくに上述した高い溶接速度を利用して、レーザ溶接によるコイル継ぎ溶接等が行われており、たとえば、特開昭61−242777号公報には、電磁鋼板の酸洗ラインにコイル継ぎ溶接設備を導入して、レーザ溶接を実施することが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、上記した従来のレーザ溶接方法では、溶接金属の領域が小さく、しかも溶接速度が極めて高いことから、溶接金属が急熱急冷によって硬化し、溶接金属の硬度が著しく上昇するため、溶接金属自体の靭性を十分に確保できないという問題があった。
【0006】
このような問題の解決策として、特開平5−305466号公報には、Si含有量が1.2mass%以上の高級珪素鋼板の溶接に際し、Niを主成分とするフィラーワイヤもしくは粉末フィラーを溶加材として用い、溶接金属の成分組成を好適に制御することで、優れた靭性を具える溶接金属を形成する技術が提案されている。
【0007】
しかしながら、上記の技術は、Si含有量が高い高級珪素鋼板を対象とするものであり、この技術をそのままSi含有量が1.0mass%以下の珪素鋼材や極低炭素鋼材のレーザ溶接に使用するということはできなかった。
というのは、かような珪素鋼材や極低炭素鋼材では、母材や熱影響部の強度が溶接金属の強度に比べて相対的に低くなるため、溶接後にこれらの鋼材に曲げ加工もしくは圧延加工を施すと、母材または熱影響部で破断する傾向が大きかったからである。
【0008】
この発明は、上記の現状に鑑みて開発されたものであり、その目的は、珪素鋼材や極低炭素鋼材を溶接母材のレーザ溶接において、溶接後に行う種々の加工時に、母材や熱影響部で破断を生ずることのない溶接金属を形成し得る、レーザ溶接方法を提案することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、この発明で対象とする珪素鋼材や極低炭素鋼材についても、溶加材の成分組成を適切に調整すれば、溶接後の急冷焼入れ後の溶接金属の硬度を、母材や熱影響部の硬度と同等程度にすることができ、ひいては加工時における破断の発生を効果的に防止できることの知見を得た。
この発明は、上記知見に立脚するものである。
【0010】
すなわち、この発明は、珪素鋼材同士もしくは極低炭素鋼材同士を、溶加材を用いてレーザ溶接するに当たり、
上記溶加材として、
C:0.030mass%以下、
Si :1.0mass%以下、
Mn:0.75mass%以下、
Al:0.50mass%以下および
Ti:3.0mass%以下
を含有し、残部はNiおよび不可避的不純物の組成になるものを用いることを特徴とするレーザ溶接方法である。
【0011】
以下、この発明を具体的に説明する。
まず、この発明で使用する溶加材の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。
【0012】
Ni主体:
この発明では、珪素鋼材や極低炭素鋼材を溶接母材とするレーザ溶接に用いる溶加材について、その組成をNi主体とすることが重要である。というのは、このようにNi主体とすることで、溶接時に溶接金属をオーステナイトとして、急冷による焼入れ後に、溶接金属と母材および熱影響部との硬度差を小さくすることができ、これにより、溶接後に鋼材に曲げ加工もしくは圧延加工を施した場合に、母材および熱影響部への歪みの集中を抑制して、母材や熱影響部における破断を防止することができるからである。
【0013】
以下、その他の必須元素について説明する。
C:0.030mass%以下
Cは、溶接金属の引張強さ等の強度を向上させる有用元素であり、溶加材中に0.030mass%以下で含有させることにより、溶接金属の強度を、母材および熱影響部の強度と同程度に調整することができ、その結果、加工時に母材や熱影響部での破断を有利に防止することができる。
しかしながら、C含有量があまりにも少ないと、上記効果を得ることが難しくなるので、C含有量の下限値は、0.001mass%程度とすることが好ましい。
【0014】
Si:1.0mass%以下
Siも、Cと同様に、溶接金属の引張強さ等の強度を向上させる有用元素であるため、溶加材中に1.0mass%以下の範囲で含有させることにより、所望の目的を達成することができる。
しかしながら、Siは、脱酸元素でもあるため、含有量があまりに少なくなると、ブローホールが発生することになって、溶接強度の低下を招くので、Siは0.1mass%以上含有させることが好ましい。
【0015】
Mn:0.75mass%以下
Mnも、溶接金属の引張強さ等の強度を上昇させる有用元素であるため、溶加材中に0.75mass%以下の範囲で含有させることにより、所望の目的を達成することができる。
しかしながら、MnもSiと同様に、脱酸元素であることから、上記理由により、0.1mass%以上含有させることが好ましい。
【0016】
Al:0.50mass%以下
Alは、脱酸剤として有用な元素であるが、溶加材中に過剰に含有させると溶接金属の靱性を低下させるので、溶加材中に0.50mass%以下の範囲で含有させることにより、溶接金属の靱性の向上を図るものとした。
なお、Alは、溶接作業性を向上させる元素であるため、溶加材中に0.01mass%以上含有させることが好ましい。
【0017】
Ti:3.0mass%以下
Tiも、Alと同様に、脱酸剤として有効に寄与するが、過剰に含有させると溶接金属の靱性を低下させるので、3.0mass%以下の範囲で含有させるものとした。なお、Alと同様、溶接作業性を向上させる作用があるので、溶加材中に0.01mass%以上含有させることが好ましい。
【0018】
不可避的不純物
不可避的不純物としては、P,S,Cu,Fe等の各元素が挙げられるが、これらの元素については、以下の範囲に限定することが好ましい。
P:0.03mass%以下、S :0.01mass%以下、Cu:0.1mass%以下、Fe:0.30mass%以下。
【0019】
なお、この発明で溶加材としては、フィラーワイヤが最適であるが、その他粉末フィラーや溶加棒等も用い得ることはいうまでもない。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の実施の形態について説明する。
この発明において、対象とする珪素鋼材、極低炭素鋼材の厚みは、とくに限定されることはないが、たとえば熱延鋼板のコイル継ぎ溶接の場合の好適厚みは、極低炭素熱延鋼板で板厚2.0〜4.0 mm、珪素熱延鋼板で板厚1.0〜3.0 mmである。また、溶接装置としては、CO2レーザ溶接装置を使用し得ることは勿論、その他YAGレーザ溶接装置等を使用することもできる。溶接条件は、開先形状をI型、U型、V型等のいずれの形状とすることもできる。
さらに、たとえばCO2レーザ溶接装置を使用する場合には、その出力を5kw以上、また溶接速度を1.0〜5.0 mm/min程度とすることが好適である。
【0021】
【実施例】
この発明にかかるレーザ溶接方法を、突合わせ継手の溶接に適用し、その際の破断状況について調査した。
表1に、この発明のレーザ溶接方法の実施に用いたフィラーワイヤ(以下「ワイヤ1」とする)の成分組成を示す。また、比較のため、フィラーワイヤとしてJIS Z 3312に規定されているYGW12(以下「ワイヤ2」とする)およびJIS Z 3321に規定されているY310(以下「ワイヤ3」とする)も用いた。なお、ワイヤ径は、ワイヤ1〜3に関して全て1.2mmとした。
【0022】
【表1】
【0023】
上記の各ワイヤを用いて、板厚:2.0 mmの極低炭素熱延鋼板と、同厚の珪素熱延鋼板とをそれぞれレーザ溶接した。レーザ溶接装置は、CO2レーザ溶接装置を使用し、溶接条件は、開先形状をI型とし、上記装置の出力を10kwして、溶接速度を3.0 mm/minとした。
表2に、極低炭素熱延鋼板(以下「鋼板A」とする)および珪素熱延鋼板(以下「鋼板B」とする)の、成分組成をそれぞれ示す。
【0024】
【表2】
【0025】
上記した、ワイヤ1〜3を溶加材とし、一方鋼板A,Bを溶接母材として作製した溶接継手の破断のし難さ、すなわち耐破断性を評価するために、各溶接継手の溶接金属部を90度に曲げる操作を行い、溶接継手の亀裂発生に到る曲げ回数を測定した。
得られた結果を表3に示す。
【0026】
【表3】
【0027】
表3から明らかなように、鋼板Aの溶接にワイヤ1を使用して溶接継手を作製した場合には、ワイヤ2を使用して溶接継手を作製した場合に比して、亀裂発生に到る曲げ回数が多く、また、鋼板Bの溶接にワイヤ1を使用して溶接継手を作製した場合には、ワイヤ3を使用して溶接継手を作製した場合に比して、亀裂発生に到る曲げ回数が多く、いずれの溶接母材についても、この発明にしたがって成分組成を調整した溶加材を使用した場合には、耐破断性に優れた溶接継手が得られることが判明した。
【0028】
さらに、検証のため、上記各継手の溶接金属の硬さを、各溶接母材の硬さと比較した。
その結果を図1に示す。
なおここでは、溶接母材Aには鋼板Aを用い、溶接母材Bには鋼板Bを用い、また、溶接金属Aは溶接母材を鋼板Aとし、かつ溶加材をワイヤ1として作製し、溶接金属Bは溶接母材を鋼板Bとし、かつ溶加材をワイヤ1として作製し、溶接金属Cは溶接母材を鋼板Aとし、かつ溶加材をワイヤ2として作製し、溶接金属Dは溶接母材を鋼板Bとし、かつ溶加材をワイヤ3として作製したものである。
【0029】
図1から明らかなように、鋼板Aを溶接母材とした際には、ワイヤ2を溶加材とした場合の溶接金属のビッカース硬さに比して、ワイヤ1を溶加材とした場合の溶接金属のビッカース硬さが、溶接母材のビッカース硬さに近く、また、鋼板Bを溶接母材とした際には、ワイヤ3を溶加材とした場合の溶接金属のビッカース硬さに比して、ワイヤ1を溶加材とした場合の溶接金属のビッカース硬さが、溶接母材のビッカース硬さに近く、これにより、母材や熱影響部で破断し難い溶接継手になっていることが判る。
【0030】
【発明の効果】
かくして、この発明によれば、極低炭素鋼材および珪素鋼材のレーザ溶接において、母材や熱影響部で破断し難い溶接継手を安定して作製することができる。また、この発明は、極低炭素鋼材および珪素鋼材のレーザ溶接全般に寄与するのは勿論のこと、特に長尺の鋼材を接合して、連続圧延や連続表面処理する場合に、母材および熱影響部における破断を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 各母材および各溶接金属それぞれのビッカース硬さを比較して示した図である。
Claims (1)
- 珪素鋼材同士もしくは極低炭素鋼材同士を、溶加材を用いてレーザ溶接するに当たり、
上記溶加材として、
C:0.030mass%以下、
Si :1.0mass%以下、
Mn:0.75mass%以下、
Al:0.50mass%以下および
Ti:3.0mass%以下
を含有し、残部はNiおよび不可避的不純物の組成になるものを用いることを特徴とするレーザ溶接方法。
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JP2001129740A JP3820910B2 (ja) | 2001-04-26 | 2001-04-26 | レーザ溶接方法 |
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2001
- 2001-04-26 JP JP2001129740A patent/JP3820910B2/ja not_active Expired - Lifetime
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