JP2003170274A - ステンレス鋼板のフラッシュバット溶接方法 - Google Patents

ステンレス鋼板のフラッシュバット溶接方法

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JP2003170274A
JP2003170274A JP2001373119A JP2001373119A JP2003170274A JP 2003170274 A JP2003170274 A JP 2003170274A JP 2001373119 A JP2001373119 A JP 2001373119A JP 2001373119 A JP2001373119 A JP 2001373119A JP 2003170274 A JP2003170274 A JP 2003170274A
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butt welding
welding
welded
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Shinji Yamazaki
伸次 山崎
Kazuhiro Otani
和弘 大谷
Junichiro Hirasawa
淳一郎 平澤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フェライト系ステンレス鋼に用いても溶接部
の破断を有効に防止できるフラッシュバット溶接方法を
提案する。 【解決手段】 フラッシュバット溶接時のアップセット
量を被溶接材の板厚の2倍以上とし、さらに、該溶接部
を850℃以上に加熱する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ステンレス鋼板の
フラッシュバット溶接方法に係り、とくに、連続酸洗ラ
イン、連続焼鈍ライン等の連続処理ラインにおいて、先
行するステンレス鋼板と後行するステンレス鋼板とを接
合するのに好適なフラッシュバット溶接方法に関するも
のである。なお、ここで、ステンレス鋼板とは、クロム
含有量が、概ね10mass%以上の鋼板を意味し、JIS G 43
12 で規定されているような耐熱鋼板も含む。
【0002】
【従来の技術】普通鋼板あるいはフェライト系やマルテ
ンサイト系といったステンレス鋼板は、一般に、連続酸
洗ライン、連続焼鈍ライン等の連続処理ラインにおい
て、先行鋼板と後行鋼板とを上記処理投備の入側で接合
し、連続化した通板処理が行われる。このような連続化
のための先行材・後行材の接合技術の一つに、フラッシ
ュバット溶接方法がある。この溶接方法は、板厚が比較
的厚い鋼板の接続に適用される技術であって、先行・後
行する鋼板を突合わせ、その突合わせ面が接触したとき
に流れる電流によって発生するジュール熱、および接触
部が溶融飛散した後で発生するアーク熱を、利用して加
熱溶融し、その後、被処理鋼材どうしを高圧力で突合わ
せて接合接着する方法である。
【0003】ところで、連続処理ラインには、通常、ル
ーパー、テンションレベラー、ブライドルロール等、多
数のロールが設置されている。そして、被処理鋼板は、
これらのロールを通過する際に、繰返し曲げや引張り変
形を受けることになる。このとき、フラッシュバット溶
接部の内部に、酸化物等の介在物や溶接欠陥が残存して
いると、溶接部の延性や靭性が悪化し、鋼板の処理中に
溶接部で破断する恐れがある。これを防止する目的で、
従来、溶接の際に、溶接部を不活性ガスでシールドした
り、また、溶接部近傍に油を塗布し、溶接部周辺を大気
からシールドすること等が行われている。
【0004】一方、被溶接材が高張力鋼板である場合に
は、溶接後に焼入れ焼戻し処理を行うことにより、溶接
部の強度や靭性を確保するようにしている。例えば、特
開昭50-51941号公報には、高張力鋼をフラッシュバット
溶接後、溶接部を後熱処理する方法が開示されている。
この方法は、溶接後に900℃以上1250℃以下の間で大
気、不活性ガス又は還元雰囲気中で加熱した後、大気又
は水、塩水等の冷媒中でAr3点温度以下に冷却し、さら
に再びAr3点以上1000℃以下の温度に加熱し、急冷し
て、主組織をマルテンサイト及び下部ベーナイト組織と
するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、被溶接
材がフェライト系等のステンレス鋼板である場合、溶接
部を不活性ガスでシールドする方法あるいは溶接部近傍
に油を塗布する方法では、溶接部に十分な靭性や延性を
付与することはできない。また、溶接部に後熱処理を施
す方法についても、例えば、フェライト系ステンレス鋼
に関しては、従来、有効な熱処理条件は提案されておら
ず、特開昭50-51941号公報に開示されるような、溶接後
に熱処理し急冷するという方法では、溶接部の靭性、機
械的特性が悪くなり、連続処理ラインでの溶接部の破断
を防止することはできない。このため、フェライト系ス
テンレス鋼板には、フラッシュバット溶接が適用できな
いという問題点があった。
【0006】本発明の目的は、フェライト系等のステン
レス鋼板の溶接部破断防止に効果的なフラッシュバット
溶接方法を提案することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明者らは、フェライト
系ステンレス鋼板のフラッシュバット溶接部の機械的特
性が劣化する原因について種々検討を行った。その結
果、フェライト系ステンレス鋼板における溶接部の破断
の主原因は、溶接後の突合わせ面に、Cr等の元素の欠乏
層が生じ、このためマルテンサイト相が生成するためで
あることを見出した。発明者らは、上記知見にもとづ
き、本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち、本発明は、突き合せるステンレ
ス鋼板をフラッシュバット溶接する際に、被溶接鋼板に
加えるアップセット量を被溶接鋼板の板厚の2倍以上と
することを特徴とするステンレス鋼板のフラッシュバッ
ト溶接方法である。
【0009】本発明においては、フラッシュバット溶接
後、該溶接部を850℃以上に加熱することが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】発明者らは、SUH409、SU
S430等のC:0.005〜0.15mass%、Cr:10〜18mass
%を含有するフェライト系ステンレス鋼板のフラッシュ
バット溶接部の組織について調査を行ったところ、突合
わせ面に相当する位置にマルテンサイト組織が生成して
いることを確認した。そして、溶接部における破断は、
このマルテンサイト組織を起点に発生していることがわ
かった。
【0011】フェライト系ステンレス鋼板の突合わせ溶
接面にマルテンサイト組織が生成する理由は、以下のよ
うに考えられる。突合わせ面が接触して発熱した際、突
合わせ面においては、雰囲気中の酸素により、Cr,Si,
Al,Ti等が優先的に酸化される。この結果、突合わせ面
近傍にはこれら元素の欠乏層が生じる。これらの元素
は、フェライト安定化元素であるため、これら元素の欠
乏層は、高温域においてオーステナイトになり易く、溶
接後の冷却過程において、マルテンサイト変態を起こ
す。
【0012】この考え方によれば、アップセット量、す
なわち、被溶接材を突合わせてから溶接を終了するまで
の被溶接材同士の突合わせ方向への相対移動量を大きく
すれば、Cr欠乏層が被溶接材の表面側に押し出され、溶
接部の内部にCr欠乏層を残留するのを防ぐことができ、
溶接部内部へのマルテンサイト相生成の阻止に有効であ
る。
【0013】そこで、溶接部内部のCr欠乏層を解消する
ための適正アップセット量を求めるため、以下の実験を
行った。 (実験1)板厚3.0mmのSUH409(11.5Cr−0.007C
−0.015Ti)鋼板を用いて、アップセット量を4〜9mmに
1mm間隔で変化して、大気中でフラッシュバット溶接を
行い、空冷した。この溶接部について、溶接部を中心と
して、ダイス径50mmφ、ポンチ径30mmφ、張出し高さ20
mmのエリクセン試験を行い、割れの有無を調査した。割
れの有無は、目視観察で行い、割れ発生を不合格、割れ
無しを合格とし、合格率を求めた。
【0014】その結果を図1に示した。この図から、ア
ップセット量が6mm以上すなわち被溶接材の板厚の2倍
以上とすることにより、割れ無しの合格率が向上するこ
とがわかる。また、アップセット量を板厚の2倍超えで
ある7mm、すなわち板厚の2.3倍以上とすることによ
り、合格率が向上することがわかる。しかし、アップセ
ット量を3倍まで増加させても、合格率の向上は飽和
し、100%の合格率を得ることはできなかった。
【0015】そこで、発明者らはさらに、フラッシュバ
ット溶接部を加熱してマルテンサイト組織を消失させる
とともに、突合わせ面に沿って生成したCr,Si,Al,Ti
等の元素の欠乏層に、これら元素を母相から拡散させ、
欠乏層を消失させることを試み、以下の実験を行った。 (実験2)板厚3.0mmのSUS409(11.5Cr−0.007C
−0.015Ti)鋼板を、大気雰囲気中で、アップセット量を
7mmとしてフラッシュバット溶接を行い、その後、溶接
部を、ガスバーナを用いて表1に示す温度に加熱し、空
冷した。この空冷後の溶接部から組織観察用サンプル
し、光学顕微鏡による組織観察を行いマルテンサイト相
の有無を調査した。さらに、上記溶接部から溶接部を含
むようにして、JIS 13号B引張試験片およびJIS 4号
(V欠き)サブサイズシャルピー試験片を採取し、引張試
験による伸びと、25℃におけるシャルピー試験での脆性
破面率を求めた。その結果を併せて表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】表1に示したように、引張試験の伸びは、
溶接部の加熱温度に関係なくいずれも20%以上の伸びを
示している。しかし、シャルピー衝撃試験の脆性破面率
は、加熱温度により変化し、後加熱処理無しも含めて加
熱温度790℃以下では、脆性破面率が60%以上と大き
く、靭性が劣るのに対し、850℃以上に加熱した場合に
は、脆性破面率が40%以下となり、靭性が改善されてい
る。また、溶接部の組織観察においても、加熱温度が79
0℃以下では、マルテンサイト相が観察されたのに対
し、850℃以上では、マルテンサイトの発生は認められ
なかった。
【0018】本発明は、上記2つの実験結果に基づき、
想到したものである。以下、本発明のフラッシュバット
溶接方法を限定した理由を説明する。 アップセット量 本発明において、アップセット量は、被溶接材(ステン
レス鋼板)の板厚の2倍以上とすることが必要である。
2倍未満では、溶接時に生成されたCr欠乏層を十分に除
去できないためである。しかし、アップセット量を板厚
の3倍以上に高めても、その効果は飽和し、逆に溶接部
に歪が残留し、溶接部の靭性を劣化させる可能性がある
ので、3倍以下とするのが好ましい。より好ましくは、
アップセット量は、板厚の2倍超え、さらにより好まし
くは2.3倍以上とするのがよい。なお、板厚が異なる鋼
板を突合わせて溶接する場合には、溶接部の内部にCr欠
乏相が残存することを防止すればよいので、板厚が薄い
方の板厚を採用して、アップセット量を板厚の2倍以上
と設定すればよい。
【0019】加熱処理 溶接後の加熱処理は、加熱温度を850℃以上とする必要
がある。さらに、熱処理の効果を安定して得るために
は、好ましくは900℃以上とするのがよい。850℃未満で
はマルテンサイト相を消失できないか、あるいは消失で
きても加熱時間が長時間化するため連続処理ラインのよ
うな短時間の処理が求められる場合には現実的ではな
い。また、加熱温度の上限は、鋼板の融点以下であれば
よいが、加熱時間、コスト等から1100℃以下が好まし
い。なお、溶接後の加熱方法は、特に限定するものでは
ないが、LPGを用いたガスパーナー方式や誘導加熱方
式などを用いることができる。
【0020】加熱後の冷却は、通常行われている空冷で
あればよく、その冷却速度は、概ね10℃/s以下とする
ことが好ましい。
【0021】ステンレス鋼板のフラッシュバット溶接に
おいては、上記したアップセット量の増加のみでも効果
はあるが、高い信頼性を要求される実操業ラインに適用
するためには、アップセット量の増加とともに、溶接後
に熱処理を行うことが好ましい。さらに、上記組み合わ
せに加え、突合わせ溶接部に機械油等を塗布すると、溶
接時の油の燃焼によりCrの酸化が防止され、より安定し
た溶接性改善効果が得られるので好ましい。
【0022】なお、本発明を適用することが効果的な被
溶接材としては、上記したSUH409、SUS430
のような、フラッシュバット溶接後の冷却条件によって
はマルテンサイト組織が発生する可能性があるフェライ
ト系ステンレス鋼板やマルテンサイト系ステンレス鋼板
であり、C:0.005〜0.15mass%、Cr:10〜18mass%の
鋼組成を有する鋼板が好適である。なお、Si:1.0mass
%以下、Mn:2.0mass%以下、Ti:1.0mass%以下、Nb:
2.0mass%以下、V:0.1mass%以下、Zr:0.1mass%以
下、Ca:0.1mass%以下等を、機械的特性や耐食性、溶
接性の改善等を目的として添加したステンレス鋼板であ
っても本発明は適用可能である。
【0023】
【実施例】(実施例1)板厚3.0mmのSUH409(11.5
Cr−0.007C−0.015Ti)鋼板を用いて、アップセット量
を4mmと7mmとし、大気中でフラッシュバット溶接を行
い、その後、900℃に加熱後、空冷する後熱処理を行
い、試験材とした。この溶接部について、溶接部を中心
として、ダイス径50mmφ、ポンチ径30mmφ、張出し高さ
20mmのエリクセン試験を行い、割れの有無を調査した。
割れの有無は、目視観察で行い、割れ発生を不合格、割
れ無しを合格とし、合格率を求めた。
【0024】結果を図2に示した。なお、比較として、
溶接後、熱処理を行わない時の実験1の結果も、図2に
併記した。この図から、アップセット量を被溶接材の板
厚の2倍以上とし、さらに、この条件に溶接後の加熱処
理を組合せた場合には、100%の合格率が得られてい
る。
【0025】(実施例2)連続酸洗ラインにおいて、S
UH409(11.5Cr−0.007C−0.015Ti)およびSUS4
30(17Cr−0.004C)のフェライト系ステンレス鋼板(平
均板厚:3mm)を、工程的に通板処理した。ライン入側
でのコイル間の接続は、フラッシュバット溶接(アップ
セット量:5mm)にて行った。しかしながら、この条件
では、通板中に溶接部での破断が頻発し、安定操業はで
きなかった。そこで、本発明を適用し、フラッシュバッ
ト溶接時のアップセット量を板厚の2.5倍(板厚が異なる
鋼板を接合する場合は、薄い方の2.5倍)としてフラッ
シュバット溶接を行った。この条件では、通板中の破断
は改善されたものの、安定操業を行うには十分ではなか
った。そこでフラッシュバット溶接時のアップセット量
を板厚の2.5倍とするとともに、溶接機の後方にガスバ
ーナを用いた加熱装置を設置し、この装置を用いて加熱
処理(加熱設定温度:900℃)を施した。その結果、溶接
部の破断はほぼ皆無となり、破断にともなうダウンタイ
ムを大幅に低減することができた。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
フラッシュバット溶接法によりフェライト系ステンレス
鋼板の突合わせ溶接を行っても、溶接部のマルテンサイ
ト相を消失させることができるので、溶接部の靭性、機
械的特性が良好となり、溶接部を連続処理ラインに通板
させても破断が生ずることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 溶接部のエリクセン試験合格率に及ぼすアッ
プセット量の影響を示した図である。
【図2】 溶接部のエリクセン試験合格率に及ぼすアッ
プセット量と後熱処理の影響を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平澤 淳一郎 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】突合わせるステンレス鋼板をフラッシュバ
    ット溶接する際に、被溶接鋼板に加えるアップセット量
    を被溶接鋼板の板厚の2倍以上とすることを特徴とする
    ステンレス鋼板のフラッシュバット溶接方法。
  2. 【請求項2】フラッシュバット溶接後、該溶接部を850
    ℃以上に加熱することを特徴とする請求項1に記載のフ
    ラッシュバット溶接方法。
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Cited By (3)

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