JP3820907B2 - 熱定着装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録媒体に付着されたトナーを定着させる熱定着装置、特に定着装置が備える加熱手段の表面温度を正確に測定する温度測定手段を備えた熱定着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電子写真方式の画像形成装置では、画像形成部にて記録媒体にトナー像を付着させて画像を形成し、この画像を記録媒体に定着させるために、熱定着部で熱定着が行われている。良好な画像を得るためには、熱定着させる際の熱定着部を構成する加熱手段の温度管理が極めて重要である。このため、加熱手段の温度を温度センサーで検出し、加熱手段の温度をフィードバック制御している。
【0003】
従来、熱電対等を加熱手段の表面に接触させて温度を測定することが一般に行われていた。しかし、熱電対等を接触さて温度を測定すると、加熱手段の表面を傷付けてしまう。そのため、記録媒体に定着される画像には、加熱手段の表面の傷に対応する接触痕を形成してしまい、定着不良の原因となっていた。
【0004】
かかる不具合を防止するために、赤外線温度センサー等の非接触式センサーで表面温度を測定することが行われている。その一方で、1つのサーミスタ等を使用して加熱手段の表面近傍の雰囲気温度を測定し、雰囲気温度から表面温度を近似的に求めることも行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、赤外線温度センサーは高価であるため、赤外線センサーを温度センサーとして採用すると、熱定着装置のコストを引き上げてしまう。
【0006】
一方、1つのサーミスタ等の温度センサーで加熱手段の表面近傍の雰囲気温度を測定し、この測定結果から加熱手段の表面温度を近似して求める場合、温度センサーの取り付け誤差による測定誤差が生じる。すなわち、設計上、予め設定した理論上の取り付け位置に温度センサーを取り付けることは極めて困難であり、温度センサーが実際に取り付けられる位置は、この理論上の取り付け位置からずれてしまう。理論上の位置からずれた位置の温度から表面温度を推定した場合には、そのずれの分だけ温度にも誤差が生じてしまう。
【0007】
そこで、本発明では、低廉なコストで製造でき、しかも、加熱手段を傷つけることなくその表面温度を正確に測定できる温度測定手段を備えた熱定着装置を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明では、記録媒体を加熱しつつトナー像を前記記録媒体に定着する加熱手段と、この加熱手段の温度を測定する温度測定手段とを備えた熱定着装置において、前記温度測定手段は、加熱手段の表面から離されて配されて、相対的に近い位置に配置された第1の温度センサーと、相対的に遠い位置に配置された第2の温度センサーと、これらの温度センサーが検知した値に基づいて前記加熱手段の表面温度を決定する温度決定手段とを備え、前記加熱手段の表面の法線方向において、前記加熱手段の表面から前記第1の温度センサーまでの設計上の設定距離をL1、前記加熱手段の表面から前記第2の温度センサーまでの設計上の設定距離をL2とし、前記法線方向における前記加熱手段の表面から前記第1の温度センサーまでの距離をM1、前記加熱手段の表面から前記第2の温度センサーまでの距離をM2、前記第1の温度センサーの取り付け誤差を | M1−L1 | 、前記第2の温度センサーの取り付け誤差を | M2−L2 | としたとき、前記第1の温度センサーが、|M1−L1|<L2−L1、を満たすM1の位置に、かつ、前記第2の温度センサーが、|M2−L2|<L2−L1、を満たすM2の位置に、前記2つの温度センサーは取り付けられ、前記第1の温度センサーにより測定された温度をT1,前記第2の温度センサーにより測定された温度をT2として、前記加熱手段の中心から表面までの距離をR0とし、このR0と前記L1,L2とがそれぞれ、L1/R0≪1、(L2−L1)/(R0+L1)≪1となる関係に前記L1,L2を設定したときに、前記法線方向に関する前記加熱手段の中心からの距離Rの位置の雰囲気温度Tを、T=A×logR+C(A,Cは定数)として算出する理論式から得られる近似式T0=(T1−T2)×L1/(L2−L1)+T1にて前記加熱手段の表面温度を、前記温度決定手段が近似的に算出する熱定着装置により上記課題を解決する。
【0009】
請求項1の発明によれば、加熱手段の周囲に配された2つの温度センサーで加熱手段の表面温度を求めているので、表面温度を正確に求めることができる。すなわち、1つの温度センサーにより表面温度を求めた場合、温度センサーの配置される位置に誤差があると、この誤差が求められた表面温度にそのまま反映されてしまい不正確となる。これに対し、2つの温度センサーにより検知された値に基づいて表面温度を求めた場合には、温度センサーの配置の誤差をより少なくすることができる。これにより、記録媒体にトナーを定着させる際、加熱手段を確実に定着温度に加熱でき、定着不良、オフセット等の不具合を防止できる。
【0010】
また、前記2つの温度センサーは、前記加熱手段と非接触で配置されているので、温度センサーが加熱手段の表面を傷つけることがない。これにより、接触痕などの定着不良のない良好な画像を得ることができる。さらに、温度センサーが取り付けられる設計上の位置と、実際に温度センサーが取り付けられる位置との差、すなわち、取り付け誤差が、加熱手段から各温度センサーまでの距離の差より小さくなるように温度センサーが配置されて いる。このように取り付け誤差自体を小さく抑えることにより、求められる温度から効果的に誤差を排除できる。
【0011】
請求項2の発明では、記録媒体を加熱しつつトナー像を前記記録媒体に定着する加熱手段と、この加熱手段の温度を測定する温度測定手段とを備えた熱定着装置において、
前記温度測定手段は、加熱手段の表面から離されて配されて、相対的に近い位置に配置された第1の温度センサーと、相対的に遠い位置に配置された第2の温度センサーと、これらの温度センサーが検知した値に基づいて前記加熱手段の表面温度を決定する温度決定手段とを備え、前記加熱手段の表面の法線方向において、前記加熱手段の表面から前記第1の温度センサーまでの設計上の設定距離をL1、前記加熱手段の表面から前記第2の温度センサーまでの設計上の設定距離をL2とし、前記法線方向における前記加熱手段の表面から前記第1の温度センサーまでの距離をM1、前記加熱手段の表面から前記第2の温度センサーまでの距離をM2、前記第1の温度センサーの取り付け誤差を | M1−L1 | 、前記第2の温度センサーの取り付け誤差を | M2−L2 | としたとき、前記第1の温度センサーが、|M1−L1|<L2−L1、を満たすM1の位置に、かつ、前記第2の温度センサーが、|M2−L2|<L2−L1、を満たすM2の位置に、前記2つの温度センサーは取り付けられ、前記第1の温度センサー及び前記第2の温度センサーは、一つの保持部材によって保持されて一体化されたユニットとして構成され、前記保持部材は、その先端面が相対的に前記加熱手段の表面近傍まで延びて前記第1の温度センサーを保持する第1の温度センサー保持部と、その先端面が相対的に前記加熱手段表面から離された位置まで延びて、前記第2の温度センサーを保持する第2の温度センサー保持部とから構成され、前記第1の温度センサーにより測定された温度をT1,前記第2の温度センサーにより測定された温度をT2として、前記加熱手段の中心から表面までの距離をR0とし、このR0と前記L1,L2とがそれぞれ、L1/R0≪1、(L2−L1)/(R0+L1)≪1となる関係に前記L1,L2を設定したときに、前記法線方向に関する前記加熱手段の中心からの距離Rの位置の雰囲気温度Tを、T=A×logR+C(A,Cは定数)として算出する理論式から得られる近似式T0=(T1−T2)×L1/(L2−L1)+T1にて前記加熱手段の表面温度を、前記温度決定手段が近似的に算出する熱定着装置により上記課題を解決する。
【0012】
請求項2の発明では、温度センサーが取り付けられる設計上の位置と、実際に温度センサーが取り付けられる位置との差、すなわち、取り付け誤差が、加熱手段から各温度センサーまでの距離の差より小さくなるように温度センサーが配置されている。このように取り付け誤差自体を小さく抑えることにより、求められる温度から効果的に誤差を排除できる。加えて、一体化されたユニットとして第1の温度センサーと第2の温度センサーとを構成するため、2つの温度センサー同士の間隔を所定の距離に設定することが極めて容易となる。
【0013】
請求項3の発明では、記録媒体を加熱しつつトナー像を前記記録媒体に定着する加熱手段と、この加熱手段の温度を測定する温度測定手段とを備えた熱定着装置において、前記温度測定手段は、加熱手段の表面から離されて配されて、相対的に近い位置に配置された第1の温度センサーと、相対的に遠い位置に配置された第2の温度センサーと、これらの温度センサーが検知した値に基づいて前記加熱手段の表面温度を決定する温度決定手段とを備え、前記第1の温度センサー及び前記第2の温度センサーは、一つの保持部材によって保持されて一体化されたユニットとして構成され、前記保持部材は、その先端面が相対的に前記加熱手段の表面近傍まで延びて前記第1の温度センサーを保持する第1の温度センサー保持部と、その先端面が相対的に前記加熱手段表面から離された位置まで延びて、前記第2の温度センサーを保持する第2の温度センサー保持部とから構成されている熱定着装置より上記課題を解決する。
【0014】
請求項3の発明によれば、一体化されたユニットとして第1の温度センサーと第2の温度センサーとを構成するため、2つの温度センサー同士の間隔を所定の距離に設定することが極めて容易となる。
【0015】
請求項4の発明では、請求項2又は請求項3に記載の熱定着装置において、前記保持部材は、単一の成形部材が使用されていることを特徴とする。
【0016】
成形部材は、成形される部品間の個体差がほとんどない。このため、請求項4の発明によれば、2つの温度センサー間の距離について、定着装置毎の個体差を生じさせることなく量産できる。また、成形してユニットを形成することで、一体化をいっそう容易にする。
【0017】
請求項5の発明では、請求項2〜4いずれか1項に記載の熱定着装置において、前記保持部材は、前記加熱手段の上方に配置されたカバーと共に成形されることを特徴とする。
【0018】
請求項5の発明によれば、成形部材は、成形される部品間の個体差がほとんどない。このため、2つの温度センサー間の距離について、定着装置毎の個体差を生じさせることなく量産できる。また、成形してユニットを形成することで、一体化をいっそう容易にする。
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0031】
最初に、本発明にかかる画像形成装置全体の概略構成について説明する。図1は、本発明の画像形成装置としてのレーザープリンタの一実施形態を示す要部側断面図である。図1において、レーザープリンタ1は、本体ケーシング2内に、用紙3を給紙するためのフィーダ部4や、給紙された用紙3に所定の画像を形成するための画像形成部5等を備えている。
【0032】
フィーダ部4は、本体ケーシング2内の底部に、着脱可能に装着される給紙トレイ6と、給紙トレイ6内に設けられた用紙押圧板7と、給紙トレイ6の一端部の上方に設けられる給紙ローラ8および給紙パット9と、給紙ローラ8に対し用紙3の搬送方向の下流側(以下、用紙3の搬送方向上流側または下流側を、単に、上流側または下流側という場合がある。)に設けられる搬送ローラ10および11と、搬送ローラ10および11に対し用紙3の搬送方向の下流側に設けられるレジストローラ12とを備えている。
【0033】
用紙押圧板7は、用紙3を積層状にスタック可能としている。この用紙押圧板7は、給紙ローラ8に対して遠い方の端部が枢動可能に支持されると共に、給紙ローラ8の下方の位置にてその裏側から図示しないばねによって上方向に付勢されている。一方、給紙ローラ8および給紙パット9は、用紙押圧板7の右端部にて上下に対向しており、給紙パット9は、その裏側に配設されるばね13によって、給紙ローラ8に向けて押圧されている。用紙押圧板7上の最上位にある用紙3は、用紙押圧板7の裏側から図示しないばねによって給紙ローラ8に向かって押圧され、その給紙ローラ8の回転によって給紙ローラ8と給紙パット9とで挟まれた後、1枚毎に給紙される。給紙された用紙3は、搬送ローラ10,11によってレジストローラ12に送られる。レジストローラ12は、一対のローラから構成されており、用紙3を所定のレジスト後に、画像形成部5に送るようにしている。
【0034】
さらに、このフィーダ部4は、本体ケーシング2の外側に向けて張り出すマルチパーパストレイ14と、マルチパーパストレイ14上に積層される用紙3を給紙するためのマルチパーパス側給紙ローラ15と、マルチパーパス側給紙パット15aとを備えている。マルチパーパス側給紙ローラ15およびマルチパーパス側給紙パット15aは、互いに対向しており、マルチパーパス側給紙パット15aは、その裏側に配設される図示しないばねによってマルチパーパス側給紙ローラ15に向けて付勢されている。マルチパーパストレイ14上に積層される用紙3は、マルチパーパス側給紙ローラ15の回転によってマルチパーパス側給紙ローラ15とマルチパーパス側給紙パット15aとで挟まれた後、1枚毎に給紙される。
【0035】
画像形成部5は、スキャナユニット16、プロセスカートリッジ17、転写ローラ24および熱定着部18等を備えている。
【0036】
スキャナユニット16は、本体ケーシング2内の上部に設けられ、レーザ発光部(図示せず。)、回転駆動されるポリゴンミラー19、レンズ20および21、反射鏡22等を備えている。このスキャナユニット16は、レーザ発光部から発光される所定の画像データに基づくレーザービームを、鎖線で示すように、ポリゴンミラー19、レンズ20、反射鏡22、レンズ21の順に通過あるいは反射させて、後述するプロセスカートリッジ17の感光ドラム23の表面上に高速走査にて照射させている。
【0037】
プロセスカートリッジ17は、スキャナユニット16の下方に配設され、本体ケーシング2に対して着脱自在に装着されるように構成されている。このプロセスカートリッジ17は、感光ドラム23を備えるとともに、図示しない、スコロトロン型帯電器、現像ローラ、トナー収容部等を備えている。
【0038】
トナー収容部には、現像剤として、正帯電性の非磁性1成分の重合トナーが充填されており、そのトナーが、現像ローラに薄層として担持される。一方、感光ドラム23は、現像ローラと対向して配置されており、ドラム本体が接地されるとともに、その表面がポリカーボネート等から構成される正帯電性の感光層により形成されている。
【0039】
そして、感光ドラム23の表面は、感光ドラム23の回転に伴って、スコロトロン型帯電器により一様に正帯電された後、スキャナユニット16からのレーザービームの高速走査により露光され、所定の画像データに基づく静電潜像が形成される。その後、感光ドラム23の表面が現像ローラと対向した時に、現像ローラ上に担持されかつ正帯電されているトナーが、その感光ドラム23の表面に形成される静電潜像に対して現像される。すなわち、トナーは、一様に正帯電されている感光ドラム23の表面のうち、レーザービームによって露光され電位が下がっている部分に供給され、選択的に担持されることによって可視像化され、これによって反転現像が達成される。
【0040】
転写ローラ24は、感光ドラム23の下方において、本体ケーシング2側において回転可能に支持された状態で、感光ドラム23と対向するように配置されている。この転写ローラ24は、金属製のローラ軸に、導電性のゴム材料からなるローラが被覆されており、感光ドラム23に対して所定の転写バイアスが印加されている。そのため、感光ドラム23上に担持されたトナーからなる可視像は、用紙3が感光ドラム23と転写ローラ24との間を通る間に用紙3に転写される。可視像が転写された用紙3は、搬送ベルト25を介して、熱定着部18に搬送される。
【0041】
熱定着部18は、プロセスカートリッジ17の側方下流側に配設され、加熱手段としての加熱ローラ26と、加熱ローラ26と用紙3を挟んで互いに対向配置される加圧ローラ27と、用紙3を加熱ローラ26と加圧ローラ27とが接触するニップ部に案内するガイド板38とを備えている。そして、この熱定着部18においては、プロセスカートリッジ17において用紙3上に転写されたトナーを、用紙3が加熱ローラ26と加圧ローラ27との間を通過する間に熱定着させている。
【0042】
熱定着部18においてトナーの定着された用紙3は、その後、熱定着部18の下流側に設けられる搬送ローラ28,29によって、排紙ローラ30に搬送され、排紙ローラ30に送られた用紙3は、その排紙ローラ30によって排紙トレイ31上に排紙される。
【0043】
熱定着部18は、図2に示すように、加熱ローラ26の上方にカバー34を備えている。このカバー34は下側が開放された箱状に形成されている。カバー34の上面と加熱ローラ26の上端との間には、スペースが設けられており、このスペースには、カバー34の上面から加熱ローラ26に向けて延びる温度センサー保持体35が設けられている。この温度センサー保持体35は、成形された部材であり、加熱ローラ26の表面近くまで接近する第1保持部36と、加熱ローラ26の表面から比較的離れた位置に下端の形成された第2保持部37とから構成されている。なお、この図2に示す温度センサー保持体35は、カバー34とは別体に設けられ、カバー34に温度センサー保持体35が取り付けられる構成であるが、カバーと温度センサー保持体とを成形することで、1ユニットとして構成しても構わない。
【0044】
これら温度センサー保持部36,37の下端面には、加熱ローラ26の周囲の雰囲気温度を検知する温度センサーとしての熱電対40,41が保持されている。第1保持部36に取り付けられた熱電対40が加熱ローラ26の表面から相対的に近い位置に配置される第1の温度センサーを構成し、第2保持部37に取り付けられた熱電対41が加熱ローラ26の表面から相対的に遠い位置に配置される第2の温度センサーを構成している。そして、熱電対40は、第1保持部36により加熱ローラ26の表面の法線方向における表面からの距離がL1の位置に、熱電対41は、第2保持部37により加熱ローラ26の表面の法線方向における表面からの距離がL2の位置にそれぞれ配置されている。
【0045】
このプリンタ1では、当該プリンタ1が備えるコントローラCが、次の(1)の理論式を利用して第1の温度センサーである熱電対40が検知した温度と、第2の温度センサーである熱電対41が検知する温度とから加熱ローラ26の表面温度T0を近似的に求めている。
【0046】
T0=(T1−T2)×L1/(L2―L1)+T1・・・(1)
なお、T1は、熱電対40が配された位置における温度を、T2は熱電対41が配された位置における温度をそれぞれ表している。
【0047】
一般に、ある発熱体の周囲の雰囲気温度Tは、発熱体の中心からの距離をRとすれば、対数関数を用いて式(2)のように表すことができる。
【0048】
T=A×logR+C・・・(2)
ただし、A,Cは定数である。
【0049】
従って、図3に示すように、加熱ローラ26の中心から加熱ローラ26の表面までの距離をR0、第1の温度センサーである熱電対40までの距離をR1、第2の温度センサーである熱電対41までの距離をR2とすれば、各熱電対40,41の配置された位置の温度は、
T0=A×logR0+C・・・(3)
T1=A×logR1+C・・・(4)
T2=A×logR2+C・・・(5)
とそれぞれ表すことができる。
【0050】
(3)式〜(4)式から
T0=(T1−T2)×log(R0/R1)/log(R1/R2)+T1と書き表すことができる。
ここで、
log(R0/R1)=log(R0/(R0+L1))・・・(6)
log(R1/R2)=log(R1/(R1+L2−L1))・・・(7)
ここで、ε1=L1/R0≪1、ε2=(L2−L1)/R1≪1・・・(8)
となるように各熱電対40,41を配置すれば、(3)式〜(7)式より、
T0=(T1−T2)×(−ε1+ε1 2+・・・)/(−ε2+ε2 2+・・・)+T1
≒(T1−T2)×ε1/ε2+T1・・・(9)
と加熱ローラ26の表面温度を表すことができる。
そして、(8)式の関係を考慮すれば、加熱ローラ26の表面温度は、(1)の理論式に示すように、
T0=(T1−T2)×L1/(L2―L1)+T1
と書き表すことができる。
【0051】
このように、本プリンタでは、加熱ローラ26の表面温度を、加熱ローラ26の周囲における2点間の雰囲気温度の温度勾配により近似的に求めている。
【0052】
ここで、ポイントとなるのは、(8)式に示すように、2つの熱電対40,41の間の距離(L2−L1)が、加熱ローラ26の表面から熱電対40までの距離L1よりかなり大きくなるように、熱電対40,41が配置されていることである。すなわち、本発明では、(1)の理論式で表された温度曲線上の大きく離れた2点間の温度勾配で、他の1点の温度を近似することである。
【0053】
ただし、取り付け誤差による温度測定誤差を極力さけるため、実際に熱電対40の配置される位置をM1、熱電対41配置される位置をM2とすれば、熱電対40が、|M1−L1|<L2−L1、を満たすM1の位置に、かつ、熱電対41が、|M2−L2|<L2−L1、を満たすL2の位置にそれぞれ配されるように、2つの熱電対40,41を取り付けるとよい。なお、|M1−L1|、及び|M2−L2|は、各熱電対40,41の取り付け誤差を、(L2−L1)は、両熱電対40,41の加熱ローラ26の方面における法線方向における設計上の設定距離の差をそれぞれ表している。具体的には、取り付け誤差|M1−L1|、及び|M2−L2|が、(L2−L1)の1/5以下となるように、好ましくは、1/10以下となるように各熱電対40,41を取り付けるとよい。
【0054】
そして、(1)の理論式によって求められた加熱ローラ26の表面温度は、種々の要因により発生する誤差を補正するために、温度データテーブルの対象温度と対比される。
【0055】
すなわち、コントローラCには、後述する記憶装置54が設けられており、この記憶装置54には、熱電対40,41が検知した値と対応する加熱ローラ26の表面温度を記憶した温度データテーブルを有している。(1)の理論式により求められた値と温度データテーブルの対応する値とが比較され、両者の差が大きい場合には、コントローラCは、温度データテーブルの値を加熱ローラ26の表面温度として採用する。このように、本プリンタ1では、熱電対40,41により測定された値から求められる加熱ローラ26の表面温度が誤差を含まないように適切な処理がなされている。
【0056】
以上のようにして求められた加熱ローラ26の表面温度に基づいて、本プリンタ1では、内蔵する各アクチュエータの作動を制御している。
【0057】
図4は、本プリンタ1の制御系についてのブロック図を示している。第1の温度センサーである熱電対40及び、第2の温度センサーである熱電対41は、バス50を介してコントローラCに接続されている。また、コントローラCには、バス50を介して加熱ローラ26の加熱源であるヒータ33、ニップ圧を変化させているニップモータ60等に接続されている。そして、コントローラCには、入力信号に基づいてプログラム等を実行するCPU52、入力信号に対応するデータやCPU52により行われた演算結果などを一時的に保存したり、演算の際に作業領域として使用されるRAM51、コントローラCの立ち上げなどの基本的な作動を行うためのプログラムの記憶されたROM53が設けられている。なお、加熱ローラ26の温度を求めるための(1)の理論式はこのROM53に記憶されている。さらに、コントローラCには加熱ローラ26の表面温度を求めるために必要な演算式や温度データの温度データテーブル等が記憶された記憶装置54が設けられている。
【0058】
かかる制御系により、プリンタ1は、2つの熱電対40,41が検知した値に基づいて加熱ローラ26の表面温度を求め、この求められた温度に基づいて、ヒータ33の作動や、トナー定着の際のニップ圧を適切な圧力にするためにニップモータ60の作動を適宜制御している。
【0059】
以上、加熱ローラ26の表面温度を求めるに際し、(1)の理論式に求めた温度と記憶装置54に記憶された温度データテーブルの対応する温度とを対比し、適宜補正を加える場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、(1)の理論式のみに基づいて温度を求めてもよいし、記録装置54に記憶された温度データテーブルから対応する温度を選択し、選択された温度を加熱ローラ26の表面温度として採用しても構わない。
【0060】
また、加熱ローラ26は、その軸方向にける加熱温度が均一ではなく、軸方向において少なからず温度の分布が形成される。このため、2つの熱電対40,41が加熱ローラの軸方向において、ずれた位置に配置されると、正確な表面温度の検知ができなる。かかる不都合を防止すべく、これら熱電対40,41の配置される位置は、図5に示すように、用紙3の搬送される方向に直交する加熱ローラ26の軸方向において、用紙の通紙範囲内にてほぼ同位置に配置されている。ただし、2つの熱電対が、加熱ローラ26の軸方向において、全く同一の位置に配置されることまでは必要ない。
【0061】
例えば、第2の温度センサーである熱電対41の配置される位置が、図5に示す符号の41aや41bのように、用紙の搬送方向で熱電対40と若干でも重なり合う程度であれば、誤差はほとんど生じないが、図5の41cに示すように、熱電対41が熱電対40と全く重なり合うことのない位置にずれていると測定誤差が生じるおそれがある。かかる測定誤差が生じるのを防止するため、熱電対40と熱電対41とは、用紙3の搬送方向に直交する加熱ローラ26の軸方向において、配置される位置が概ね一致するように保持されている。
【0062】
以上、温度センサーとして熱電対を用いたもののについて説明したが、これに限定されるものではなく、サーミスタ等、その他の温度センサーを使用して構わない。
【0063】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、加熱手段の周囲に配された2つの温度センサーで加熱手段の表面温度を求めているので、表面温度を正確に求めることができる。すなわち、1つの温度センサーにより表面温度を求めると、温度センサーの配置される位置に誤差があると、この誤差が求められた表面温度にそのまま反映されてしまい不正確となる。これに対し、2つの温度センサーにより検知された値に基づいて表面温度を求めた場合には、温度センサーの配置の誤差をより少なくできる。これにより、記録媒体にトナーを定着させる際、加熱手段を確実に定着温度に加熱でき、定着不良、オフセット等の不具合を防止できる。
【0064】
また、前記2つの温度センサーは、前記加熱手段と非接触で配置されているので、温度センサーが加熱手段の表面を傷つけることがない。これにより、接触痕などの定着不良のない良好な画像を得ることができる。さらに、温度センサーが取り付けられる設計上の位置と、実際に温度センサーが取り付けられる位置との差、すなわち、取り付け誤差が、加熱手段から各温度センサーまでの距離の差より小さくなるように温度センサーが配置されている。このように取り付け誤差自体を小さく抑えることにより、求められる温度から効果的に誤差を排除できる。
【0065】
請求項2の発明では、温度センサーが取り付けられる設計上の位置と、実際に温度センサーが取り付けられる位置との差、すなわち、取り付け誤差が、加熱手段から各温度センサーまでの距離の差より小さくなるように温度センサーが配置されている。このように取り付け誤差自体を小さく抑えることにより、求められる温度から効果的に誤差を排除できる。加えて、一体化されたユニットとして第1の温度センサーと第2の温度センサーとを構成するため、2つの温度センサー同士の間隔を所定の距離に設定することが極めて容易となる。
【0066】
請求項3の発明によれば、一体化されたユニットとして第1の温度センサーと第2の温度センサーとを構成するため、2つの温度センサー同士の間隔を所定の距離に設定することが極めて容易となる。
【0067】
請求項4の発明によれば、成形部材は、成形される部品間の個体差がほとんどない。このため、2つの温度センサー間の距離について、定着装置毎の個体差を生じさせることなく量産できる。また、成形してユニットを形成することで、一体化をいっそう容易にする。
【0068】
請求項5の発明によれば、成形部材は、成形される部品間の個体差がほとんどない。このため、2つの温度センサー間の距離について、定着装置毎の個体差を生じさせることなく量産できる。また、成形してユニットを形成することで、一体化をいっそう容易にする。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の画像形成装置としてのレーザープリンタの一実施形態を示す要部側断面図。
【図2】 熱定着部の詳細を示す前後方向の縦断面図。
【図3】 加熱手段の表面温度を求める際に使用する理論式に用いられる文字同士の関係を示した説明図。
【図4】 プリンタの制御系のブロック図。
【図5】 温度センサーの取り付け位置を示す説明図。
【符号の説明】
1 レーザープリンタ
5 画像形成部
18 熱定着部
26 加熱ローラ(加熱手段)
27 加圧ローラ
33 ヒータ
34 カバー
35 温度センサー保持体
36 第1保持部
37 第2保持部
40,41 熱電対
54 記憶装置
Claims (5)
- 記録媒体を加熱しつつトナー像を前記記録媒体に定着する加熱手段と、この加熱手段の温度を測定する温度測定手段とを備えた熱定着装置において、
前記温度測定手段は、加熱手段の表面から離されて配されて、相対的に近い位置に配置された第1の温度センサーと、相対的に遠い位置に配置された第2の温度センサーと、これらの温度センサーが検知した値に基づいて前記加熱手段の表面温度を決定する温度決定手段とを備え、
前記加熱手段の表面の法線方向において、前記加熱手段の表面から前記第1の温度センサーまでの設計上の設定距離をL1、前記加熱手段の表面から前記第2の温度センサーまでの設計上の設定距離をL2とし、前記法線方向における前記加熱手段の表面から前記第1の温度センサーまでの距離をM1、前記加熱手段の表面から前記第2の温度センサーまでの距離をM2、前記第1の温度センサーの取り付け誤差を | M1−L1 | 、前記第2の温度センサーの取り付け誤差を | M2−L2 | としたとき、前記第1の温度センサーが、|M1−L1|<L2−L1、を満たすM1の位置に、かつ、前記第2の温度センサーが、|M2−L2|<L2−L1、を満たすM2の位置に、前記2つの温度センサーは取り付けられ、
前記第1の温度センサーにより測定された温度をT1,前記第2の温度センサーにより測定された温度をT2として、前記加熱手段の中心から表面までの距離をR0とし、このR0と前記L1,L2とがそれぞれ、L1/R0≪1、(L2−L1)/(R0+L1)≪1となる関係に前記L1,L2を設定したときに、前記法線方向に関する前記加熱手段の中心からの距離Rの位置の雰囲気温度Tを、T=A×logR+C(A,Cは定数)として算出する理論式から得られる近似式T0=(T1−T2)×L1/(L2−L1)+T1にて前記加熱手段の表面温度を、前記温度決定手段が近似的に算出することを特徴とする熱定着装置。 - 記録媒体を加熱しつつトナー像を前記記録媒体に定着する加熱手段と、この加熱手段の温度を測定する温度測定手段とを備えた熱定着装置において、
前記温度測定手段は、加熱手段の表面から離されて配されて、相対的に近い位置に配置された第1の温度センサーと、相対的に遠い位置に配置された第2の温度センサーと、これらの温度センサーが検知した値に基づいて前記加熱手段の表面温度を決定する温度決定手段とを備え、
前記加熱手段の表面の法線方向において、前記加熱手段の表面から前記第1の温度センサーまでの設計上の設定距離をL1、前記加熱手段の表面から前記第2の温度センサーまでの設計上の設定距離をL2とし、前記法線方向における前記加熱手段の表面から前記第1の温度センサーまでの距離をM1、前記加熱手段の表面から前記第2の温度センサーまでの距離をM2、前記第1の温度センサーの取り付け誤差を | M1−L1 | 、前記第2の温度センサーの取り付け誤差を | M2−L2 | としたとき、前記第1の温度センサーが、|M1−L1|<L2−L1、を満たすM1の位置に、かつ、前記第2の温度センサーが、|M2−L2|<L2−L1、を満たすM2の位置に、前記2つの温度センサーは取り付けられ、
前記第1の温度センサー及び前記第2の温度センサーは、一つの保持部材によって保持されて一体化されたユニットとして構成され、
前記保持部材は、その先端面が相対的に前記加熱手段の表面近傍まで延びて前記第1の温度センサーを保持する第1の温度センサー保持部と、その先端面が相対的に前記加熱手段表面から離された位置まで延びて、前記第2の温度センサーを保持する第2の温度センサー保持部とから構成され、
前記第1の温度センサーにより測定された温度をT1,前記第2の温度センサーにより 測定された温度をT2として、前記加熱手段の中心から表面までの距離をR0とし、このR0と前記L1,L2とがそれぞれ、L1/R0≪1、(L2−L1)/(R0+L1)≪1となる関係に前記L1,L2を設定したときに、前記法線方向に関する前記加熱手段の中心からの距離Rの位置の雰囲気温度Tを、T=A×logR+C(A,Cは定数)として算出する理論式から得られる近似式T0=(T1−T2)×L1/(L2−L1)+T1にて前記加熱手段の表面温度を、前記温度決定手段が近似的に算出することを特徴とする熱定着装置。 - 記録媒体を加熱しつつトナー像を前記記録媒体に定着する加熱手段と、この加熱手段の温度を測定する温度測定手段とを備えた熱定着装置において、
前記温度測定手段は、加熱手段の表面から離されて配されて、相対的に近い位置に配置された第1の温度センサーと、相対的に遠い位置に配置された第2の温度センサーと、これらの温度センサーが検知した値に基づいて前記加熱手段の表面温度を決定する温度決定手段とを備え、
前記第1の温度センサー及び前記第2の温度センサーは、一つの保持部材によって保持されて一体化されたユニットとして構成され、
前記保持部材は、その先端面が相対的に前記加熱手段の表面近傍まで延びて前記第1の温度センサーを保持する第1の温度センサー保持部と、その先端面が相対的に前記加熱手段表面から離された位置まで延びて、前記第2の温度センサーを保持する第2の温度センサー保持部とから構成されていることを特徴とする熱定着装置。 - 前記保持部材は、単一の成形部材が使用されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の熱定着装置。
- 前記保持部材は、前記加熱手段の上方に配置されたカバーと共に成形されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の熱定着装置。
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