JP3820873B2 - スタータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スタータに関し、特にピニオンギヤを有する移動筒部材の移送をする規制手段(シフトレバー部とも呼ぶ)に関する。
【0002】
【従来の技術】
ピニオンギヤを有する移動筒部材の移送をするシフトレバー部をばね材を用いて形成し、ピニオンギヤとエンジンのリングギヤとの噛み合い性を向上させる車両用スタータがある(特開昭50−65806号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来構造では、シフトレバー部自身が板ばねで形成されていることに起因して、シフトレバー部全体が変形してしまって弾発力が十分得られ難い。このため、噛み合い性が向上するように十分な配慮がなされていない。
【0004】
この対策としては、規制手段であるシフトレバー部を板ばねとレバーホルダとからなる構成とし、板ばねがレバーホルダにより保持されることで、シフトレバー部の一部のみを弾性体とするものが考えられる。このとき、板ばねをレバーホルダに挿入等により組付ける構成においては、板ばねがレバーホルダからずれてしまって板ばねによる弾発力が発揮できなくなる場合がある。
【0005】
そこで、図4に示すように、板ばね152aの途中を切欠いて係止部152aSを形成し、この係止部152aSがレバーホルダ152に引掛ける構成が考えられる。しかしながら、この構造であると、移動筒部材を押出して移送するとき、板ばねに応力集中が加わり、板ばね152a(詳しくは係止部152aS)が折損する可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、板ばねを備えた規制手段によるピニオンギヤとリングギヤの噛み合い性を向上しつつ、規制手段の折損等を防止可能なスタータを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1によると、スタータモータに駆動されると共に外周にヘリカルスプラインを有する出力軸と、エンジンのリングギヤと噛み合うピニオンギヤを有し出力軸のヘリカルスプラインに嵌合すると共に、出力軸のヘリカルスプラインに沿って軸方向に進退可能に設けられた移動筒部材と、移動筒部材に当接して移動筒部材を前進させる規制手段と、規制手段を移動筒部材の当接位置へ移動させる駆動手段とを備え、規制手段は、レバーホルダと板ばねとを含む弾発力発生装置であって、前記レバーホルダに当接する板ばねの端部に、板ばねのずれを防止するための、レバーホルダに引っ掛ける突起部を設けている。このように、板ばねの端部に、レバーホルダに引っ掛ける突起部を設けているので、板ばねとレバーホルダとのずれ防止ができる。また、板ばねの端部がレバーホルダに当接するため、突起部への応力集中が緩和される。
さらに、上記弾発力発生装置は、板ばねにセット荷重を付与する支持部材と、前記支持部材を支承する支持部を有し、レバーホルダの外縁部には、板ばねを囲むための、軸方向に延びるリブ部が形成され、支持部材は、レバーホルダと共に板ばねを挟み込むとともに、リブ部に対して垂直方向に配置されてレバーホルダに固定されている。これにより、板ばねをレバーホルダ内に収容するとともに、板ばねにセット荷重を与えることができる。
またさらに、上記支持部材は、支持部に支承されてレバーホルダを回動させるものであって、レバーホルダは移動筒部材に当接するブレーキシュ部を有し、ブレーキシュ部は、端部の据わり性向上のためのガイドする。このように、ブレーキシュ部は、板ばねの端部をガイドするので、レバーホルダに突起部を引っ掛けて端部の位置決めを行なうとき、板ばねの位置決めがし易い。
【0008】
本発明の請求項2によると、上記の端部は、板ばねの先端部に設けられている。これにより、端部が板ばねの途中でなく、先端部に設けるので、板ばねの長さに応じて荷重吸収が可能である。
【0010】
本発明の請求項によれば、支持部材は、円筒状のピンであって、レバーホルダ貫通するように固定されている。支持部材が円筒状であるので、板ばねにセット荷重を付与する作用点の移動が、四角形等の多角形状より小さくできるので、板ばねの移動に伴う過大荷重が端部に生じ難くすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のスタータを車両用スタータに適用し、具体化した実施形態を図面に従って説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態のスタータの概略構成を示す断面図である。図2は図1中の本発明の要部である規制手段のレバー周りの構造を表す図であって、図2(b)はIIからみた側面図、図2(a)は図2(b)のa−aからみた断面図である。また、図3は、規制手段のレバーの動作を説明する模式的断面図であって、図3(a)は、駆動手段が非作動時のレバーの状態を示す図、図3(b)は、駆動手段が作動時のレバーの状態を示す図である。
【0014】
図1に示すように、スタータ1は、通電を受けて回転力を発生するスタータモータ2、このスタータモータ2の回転軸と同軸に配された出力軸3、この出力軸3のヘリカルスプライン3aに嵌合すると共にこのヘリカルスプライン3aに沿って軸方向に進退可能な移動筒部材4、この移動筒部材4の歯部(以下ピニオンギヤと呼ぶ)4aがエンジンのリングギヤ100と噛み合せるため、移動筒部材4の後退を規制しつつピニオンギヤ4aがリングギヤ100と噛み合って所定量前進するように移動筒部材4を飛出させる規制部材5、およびこの規制部材5のレバー52を移動筒部材4側方向へ押出す駆動手段6とを含んで構成されている。
【0015】
スタータモータ2は、アーマチャ21、固定磁極22、ヨーク23、およびブラシ24とを含んで構成される周知の直流電動機であり、図示しないキースイッチ(詳しくはスタータスイッチ)がONされてマグネットスイッチ6の内部接点(図示せず)が閉じると、ブラシ24を通じてアーマチャ21に給電されてアーマチャ21が回転する。
【0016】
なお、このスタータ1には、スタータモータ2の回転力を出力軸3に伝達する減速装置25が備えられている。この減速装置25は、アーマチャシャフト21aの外周に外歯を形成するサンギヤ25aと、このサンギヤ25aの径方向に内歯を形成するリング状のインターナルギヤ25bと、サンギヤ25aとインターナルギヤ25bとの間に配置されて、両ギヤ25a、25bに噛み合うプラネットギヤ25cにより構成され、このプラネットギヤ25cがサンギヤ25aの外周を自転しながら公転することにより、そのプラネットギヤ25cの公転がピン25dを介して出力軸3に伝達される。減速装置25は、前述のヨーク23とこのヨーク23の前後に配置されて固定されているセンタケース26、エンドカバー27により、上述のアーマチャ21等と共に収容されている。
【0017】
移動筒部材(以下、ピニオンと呼ぶ)4は、エンジンのリングギヤ100と噛み合うピニオンギヤ4aと、出力軸3のヘリカルスプライン3aに嵌合すると共にこのヘリカルスプライン3aに沿って軸方向に進退可能な一方向クラッチ4bとを含んで構成されている。
【0018】
すなわち、一方向クラッチ4bは、出力軸3の外周にヘリカルスプライン3aを介して摺動自在にヘリカルスプライン嵌合して、ピニオンギヤ4と一体に出力軸3上を前後移動可能に設けらている。次に、ピニオンギヤ4aは、出力軸3の外周に軸受4a1を介して摺動自在に嵌合し、後述のレバー52を介して一方向クラッチ4bと一体的に出力軸3上を前方へ押し出され、リングギヤ100と噛み合うことでリングギヤ100に回転力を伝達する。一方、一方向クラッチ4bは、出力軸3の回転をピニオンギヤ4aに伝達すると共に、エンジンの始動によってピニオンギヤ4aの回転速度が出力軸3の回転速度を上回ると、出力軸3とピニオンギヤ4aとの間で動力伝達を遮断する。
【0019】
規制部材(以下、シフトレバー部と呼ぶ)5は、支持部51と、この支持部51に支承され、板ばね52aを備えたレバー52と、支持部51に支承されレバーを回動させるピンとから構成されている。このシフトレバー部5は、支持部51を支点として、レバー52の一方は、後述の駆動手段6の可動部6aに当接し、この可動部6aの軸方向の往復移動をピニオン4へ伝達可能に配置されており、他方は、エンジンを始動するとき、駆動手段6の作動により、支持部51を支点として、ピニオン4の当接面4b1へ移動可能に配置されている。また、シフトレバー部5は、駆動手段6、スタータモータ2、およびこのスタータモータ2と一体的に回転する出力軸3と共に、図1の如く、フロントカバー7に収容され、スタータ1に内包されている。
【0020】
なお、シフトレバー部5の詳細については後述する。
【0021】
駆動手段(以下、マグネットスイッチと呼ぶ)6は、図1の如く、プランジャ61と、コイル62と、内部接点(図示せず)とを含んで構成されている。このプランジャ61には、コイル62が非通電時にレバー52側に付勢するリターンスプリング63が設けられている。マグネットスイッチ6が作動状態になると、すなわち、コイル62に通電して吸引力を発生させると、内蔵されるプランジャ61は図1中の右方向に移動する。このプランジャ61の移動に伴って前述の内部接点の開閉を行うと共に、シフトレバー部5のレバー52に当接しうる可動部6aをプランジャ61と一体的に前後(図1中では左右方向に)移動させて、レバー52を介してピニオン4を出力軸上を前後(図1中では左右方向に)移動させる。
【0022】
なお、可動部6aは、レバー52側のプランジャ61の先端に備えられている。また、プランジャ61は、プランジャ端部61bを軸方向に進退自在に配置される内部接点の可動接点(図示せず)にセット荷重を加える接点スプリング64を有する。
【0023】
次に、上述の構成のスタータ1の作動を以下説明する。図示しないキースイッチ(詳しくはスタータスイッチ)のON操作により、マグネットスイッチ6に内蔵されたコイル62が通電されると、プランジャ61が図1の右方向へ吸引される。これにより、プランジャ61と一体的に前後移動可能な可動部6aが、シフトレバー部5の支持部51に支承されるレバー52に当接し、プランジャ61の移動量に応じて、ピニオン4を所定量移動さる。すなわち、マグネットスイッチ6を作動させると、レバー52を介して、ピニオンギヤ4aが一方向クラッチ4bと一体となって出力軸3上を前方へ押し出される。これにより、ピニオン4は前進し、リングギヤ100に当接する。
【0024】
次に、ピニオン4がリングギヤ100に当接されることで、レバー52を介して、プランジャは右方向にさらに移動して駆動手段6の内部接点を閉じる。この内部接点が閉じられるとアーマチャ21が通電されて回転し、そのアーマチャ21の回転が減速装置25で減速されて出力軸3に伝達される。
【0025】
この出力軸3の回転は、リングギヤ100に当接するピニオンギヤ4aに伝達され、このピニオンギヤ4aがリングギヤ100と噛み合い可能な回転角度位置まで回転すると、ピニオンギヤ4aは、レバー52に保持された板ばね52aの弾発力により勢いよく押し出されるので、リングギヤ100と噛み合うことができる。これにより、ピニオンギヤ4aの回転がリングギヤ100に伝達されてエンジンを始動させる。
【0026】
なお、シフトレバー部5のレバー52の弾発力を有する構成と作動の詳細については、後述する。
【0027】
次にエンジン始動後、前述のキースイッチのOFF操作によりマグネットスイッチ6のコイル62への通電が停止すると、それまで吸引されていたプランジャ61がリターンスプリング63の付勢力により初期位置へ復帰する。これにより、レバー52が図2の右方向へ後退する。このとき、ピニオン4の後退を規制するものがなくなるので、リングギヤ100から離脱可能な状態となる。このため、一方向クラッチ4bの作用により、ピニオンギヤ4aは一方向クラッチ4bと一体となってリングギヤ100を離脱し、出力軸3上を後退する。また、マグネットスイッチ6の内部接点が開くことにより、アーマチャ21への通電が停止されて回転が停止する。
【0028】
ここで、本発明の要部である規制手段5のレバー52周りの構造を、図1および図2に従って以下説明する。
【0029】
図2(a)に示すように、規制手段であるシフトレバー部5は、支持部51と、この支持部51に支承され、板ばね52aを備えたレバー52とからなる。
【0030】
まず、レバー52について以下説明する。レバー52は、板ばね52aと、板ばねを保持するレバーホルダ52bと、板ばね52aをレバーホルダ52bと共に挟み込むピン52cとを含んで構成されている。なお、レバー52を弾発力発生装置Sと呼ぶ。
【0031】
レバーホルダ52bは、金属性材料で形成され、図1および図2に示す如く、板ばね52aを囲むようにスタータ1軸方向に延びるリブ部52bRを備えている。言換えると、レバーホルダ52bは金属性材料で形成され、板ばね52aを収容するリブ部52bRを有している。
【0032】
このレバーホルダ52bの一方のピニオン4側には、ピニオン4の回転を規制するように、図2(b)の如く、ピニオン4の当接面4b1の外周側に当接する二股状に分岐形成された2個の当接部52dを有する二股状部52bFが設けられいる。また、他方のマグネットスイッチ6側には、マグネットスイッチ6の可動部6aと板ばね52aが当接できるように、図2(b)の如く、切欠き部52Kを設けている。
【0033】
なお、ピニオン4が静止時、すなわちマグネットスイッチ6がシフトレバー部5をピニオン4へ移動させる前には、切欠き部52Kを形成するリブ部(以下、角部と呼ぶ)52bTは、板ばね52a、つまり後述の当接部52aTが可動部6aに当接しないように、プランジャ61に当接している。このため、ピニオンギヤ4aがリングギヤ100に噛み合い時、板ばね52aが開放されたとき、または、噛み合い後、可動部6aが戻るとき、板ばねに加わる荷重いわゆる衝撃荷重が抑えられ、レバーホルダ52bの角部52bTで受けることができる。これにより、衝撃荷重によるシフトレバー部5、特に板ばね52aの折損等を防止することができる。
【0034】
次に、板ばね52aは、ばね材で形成され、この外形形状は、レバーホルダ52bの板ばね52aを収容するリブ部52bRに沿うように形成されており、レバーホルダ52bの二股状部52bFに対応する二股部52aFを有する。
【0035】
なお、可動部6aと当接する当接部52aTは、図2(a)の如く、板ばねを湾曲に形成することが望ましい。これにより、板ばね52aの当接部52aTと、マグネットスイッチ6の可動部6aの当接面に片当たりが生じ難くなるので、マグネットスイッチ6を作動させて可動部6aを図1右方向に移動させるとき、可動部6aと係合するレバー52のピニオン4へ前進が安定してスムーズにできる。しかも、湾曲させた当接部52aTで面接触が可能となるので、可動部6aと当接部52aTは、耐摩耗性の信頼性向上が図れる。
【0036】
次に、ピン52c(以下、支持部材とも呼ぶ)は、金属性材料で形成され、出力軸3に対して垂直方向に配置され、レバーホルダ52bのリブ部52bRを貫通するように、レバーホルダ52bに固定されている。このレバーホルダ52bより突出するピン端部52c1は、支持部51に、レバー52の支点として支承されている。これにより、ピン52cは支持部51に支承されレバー52を回動可能とすると共に、ピン52cとレバーホルダ52bとで板ばね52aを挟み込むことで、板ばね52aにセット荷重を与えることができる。言換えると、板ばね52aにセット荷重を付与する作用部材であるピン52cを用いて、支持部51に支承されるピン端部52c1として兼用できるので、構成が簡素化できるので、スタータ1の小型化、特にレバー52の小型化が可能である。
【0037】
一方、支持部51は、樹脂材で形成され、上述のように構成するレバー52を、ピン52cを支点として支承する。
【0038】
ここで、本発明のレバー52を構成するレバーホルダ52bとピン52cが前述のように金属性材料で形成されているので、板ばね52aにセット荷重を付与するレバーホルダ52bとピン52cは、熱処理等により材料改質或いは表面硬化を実施すれば、体格を大きくすることなく強度アップが図れるので、板ばね52aのセット荷重の設定可能範囲が拡大できる。言換えると、レバーホルダ52bとピン52cは、金属性材料で形成されるので、所望のセット荷重を得るために熱処理等による強度向上が可能である。このため、強度向上のためレバーホルダ52bとピン52cの体格を大きくするという手段を選択する必要がない。したがって、樹脂材の如く、熱処理等の材料改質、表面硬化による強度向上手段がとれない材料に比べて、体格の小型化が可能である。
【0039】
しかも、ピン52cをレバーホルダ52bに固定させる手段として、溶接等の接着部材を用いることなく、ピン52cをレバーホルダ52bの貫通孔52bcに圧入することで確実に固定できる。
【0040】
また、本発明のレバー52の板ばね52aは、前述の二股部52aFを有する。これにより、板ばね52aを長くすることができるので、板ばね52aにセット荷重を付与する場合、荷重を加えられて生じる変形量が長さに応じて大きくできる。つまり、板ばね52aにセット荷重を付与するピン52cが、板ばね52aを挟み込み易くすることができる。
【0041】
さらに、板ばね52aには、レバーホルダ52bの切欠き部52bKに係止される突起部52aKを有する。この突起部52aKは、図2(b)の如く、二股部52aFの先端部分である端部52aSに設けられる。これにより、レバーホルダ52bとピン52cとで板ばね52aを挟み込むことで板ばね52aにセット荷重を付与する組付け作業において、板ばね52aとレバーホルダ52bとがずれ難くなるので、ピン52aをレバーホルダ52bへ組付ける組付作業が容易にできる。
【0042】
ここで、本発明の弾発力発生装置Sであるレバー52において、板ばね52aのずれ防止構造と、板ばね52aの過大荷重等による折損防止の構造について、以下説明する。
【0043】
板ばね52a、レバーホルダ52bの切欠き部52bKに係止される突起部52aKを有する。これにより、レバーホルダ52bとピン52cとで板ばね52aを挟み込むことで板ばね52aにセット荷重を付与する組付け作業において、板ばね52aとレバーホルダ52bとがずれ難くなるので、ピン52aをレバーホルダ52bへ組付ける組付作業が容易にできる。
【0044】
また、この突起部52aKは、曲げ加工を施してレバーホルダ52bを引掛けるのではなく、図2(a)に示すように板ばね52aの展開平面上に形成されるものであれば、レバーホルダ52bの切欠き部52bKを引掛けようとも、その突起部52aKが形成された端部52aSがレバーホルダ52bと当接するので、突起部52aKに、応力集中が作用し難い構成とすることができる。
【0045】
さらに、突起部52aKは、図2(b)の如く、二股部52aFの先端部分である端部52aSに設けることが望ましい。これにより、弾発力発生装置Sであるレバー52は、板ばね52a突起部52aKまでの長さに応じて過重吸収ができる。
【0046】
次に、支持部材であるピン52cは、図2(a)に示すように円筒形状であるので、板ばね52aにセット荷重を付与する作用点の移動が、四角形等の多角形状より小さくできるので、板ばね52aの移動に伴う過大荷重が突起部52aKに生じ難くすることができる。
【0048】
また、図2(a)に示すように、ピニオン4の当接面4b1と当接する当接部(以下、ブレーキシュ部と呼ぶ)52dは、樹脂材で形成され、金属性材料で形成されたレバーホルダ52bに固定されている。このため、ピニオン4のピニオンギヤ4aを勢いよく飛ばしてリングギヤ100に噛み合った後、エンジンが始動し始めた瞬間、ピニオン4がエンジンに駆動され続けるときにはピニオン4が過回転しまう場合がある。しかし、本例では、ピニオン4が過回転しても、レバー52は、樹脂材で形成されたブレーキシュ部52dを介してピニオン4に当接するので、樹脂材の熱伝導性に起因して、板ばね52aを収容するレバーホルダ52bに熱が伝わるのを軽減できる。
【0049】
上記ブレーキシュ部52dにおいて、図2(b)に示すように板ばね52aの端部52aをガイドするガイド部52dGを設けることが望ましい。これにより、レバーホルダ52bを引掛けて突起部52aKを固定するとき、端部52aの据わり性が向上するので、板ばね52aの位置決めがし易い。
【0050】
次に、本発明の要部のシフトレバー部5の作用を図3に従って以下説明する。前述で本実施形態のスタータ1の作動については既に説明したので、ここでは、シフトレバー部5が、レバー52のセット荷重の弾発力を用いてピニオン4を勢いよく飛び出させて、ピニオンギヤ4aとリングギヤ100の噛み合い性を向上させる特徴について説明する。
【0051】
図3(a)は、キースイッチがOFF状態、つまりさらに詳しく説明すると、車両のキースイッチのイグニッションスイッチ、スタータマグネットスイッチのうち、イグニションスイッチがON、スタータマグネットスイッチがOFFの状態にある始動準備状態、およびエンジン始動後の状態、あるいはエンジンを停止してイグニションスイッチがOFF、スタータマグネットスイッチがOFFの状態にある放置状態の3モードに対応するレバー52状態を表す模式的断面図である。図3(b)は、キースイッチがON状態、つまりスタータマグネットスイッチがON状態におけるレバー52の状態を表す模式的断面図である。
【0052】
図3(a)に示すように、スタータマグネットスイッチ6が非作動状態では、支持部51に支承されるレバー52は、ピン52cを支点として垂直に配置されている。板ばね52aにセット荷重が付与されているので、可動部6aとレバー52の板ばね52aは当接させて板ばね52aをたわませておく必要はない。したがって、本実施形態のレバー52は、板ばね52a、つまりレバー52を可動部6aに当接させる必要がなく、当接するか、当接せずに可動部6aの近傍にあればよい。
【0053】
次に、キースイッチがON、つまりスタータマグネットスイッチがON状態になると、図3(b)に示すように、マグネットスイッチ6が作動状態となる。すなわち、プランジャ61と共に一体的に可動部6aが図3(a)から図3(b)の状態へ右方向移動する。このとき、シフトレバー部5のレバー52に収容された板ばね52aの当接部52aTは、可動部6aと当接する。さらに可動部6aが右方向移動すると、支持部51に支承されているレバー52の当接部52dは、可動部6aの移動量に応じて、ピニオン4の当接面4b1側へ所定量だけ移動するので、この当接部52aは、当接面4b1に当接して、さらにピニオン4のピニオンギヤ4aをリングギヤ100に当接するまで押し出し前進させる。すなわち、ピニオンギヤ4aは、出力軸3上を前方へ押し出され、リングギヤ100に当接する。
【0054】
次に、レバー52を介して押出されるピニオンギヤ4aがリングギヤ100に当接すると、レバー52の板ばね52aで形成された当接部52dが当接する可動部6a、すなわちプランジャ61は、レバー52のセット荷重に抗して、さらに右方向に移動してマグネットスイッチ6の内部接点を閉じる。
【0055】
さらに、この内部接点が閉じられると、アーマチャ21が通電されて回転し、そのアーマチャ21の回転が減速装置25で減速されて出力軸3に伝達される。この出力軸3の回転は、リングギヤ100に当接するピニオンギヤ4aに伝達される。このとき、ピニオンギヤ4aには、図3(b)に示すように、レバーホルダ52bのセット荷重作用点52Sから離脱して、さらにたわまされたレバー52の板ばね52aのセット荷重とたわみ分の荷重が加算された荷重に相当する弾発力を付与されている。このため、ピニオンギヤ4aがリングギヤ100と噛み合い可能な回転角度位置まで回転すると、ピニオンギヤ4aは、セット荷重とたわみ分の荷重が加算された荷重に相当する弾発力により、図3(b)中の左方向に勢いよく押し出される。
【0056】
言換えると、マグネットスイッチ6の作動により、可動部6aに当接するレバー52がピニオン4をリングギヤ100に当接させるまでの所定の移動量に応じてセット荷重作用点52Sから離脱してたわまされるたわみ分の荷重と、セット荷重とが加算しうる荷重に相当する弾発力を備えた本発明のレバー52、すなわち、シフトレバー部5は、この弾発力により、ピニオンギヤ4aを勢いよく押し出すことができる。これにより、ピニオンギヤ4aとリングギヤ100の噛み合い性の向上が可能となる。したがって、噛み合い不十分となることなく、ピニオンギヤ4aとリングギヤ100が噛み合って速やかにエンジンが始動できる。
【0057】
なお、 ピニオンギヤ4aがリングギヤ100に当接後、プランジャ61をさらに右方向に移動させてマグネットスイッチ6の内部接点を閉じさせるための付勢手段として、レバー52のセット荷重を用いることで、プランジャ内に配設しプランジャ61を右方向に付勢するための付勢手段(所謂、ドライブスプリング)を内蔵する必要がないので、図1に示す如く、プランジャ61は中空でない円筒形状に形成できる。このため、板ばね52aのセット荷重を有するレバー52を用いることにより、スタータマグネットスイッチ6のプランジャ61の小型化、すなわちスタータ1の小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態のスタータの概略構成を示す断面図である。
【図2】図1中の本発明の要部である規制手段のレバー周りの構造を表す図であって、図2(b)はIIからみた側面図、図2(a)は図2(b)のa−aからみた断面図である。
【図3】本発明の要部である規制手段のレバーの動作を説明する模式的断面図であって、図3(a)は、駆動手段であるマグネットスイッチが非作動時のレバーの状態を示す図、図3(b)は、マグネットスイッチが作動時のレバーの状態を示す図である。
【図4】本発明と比較するスタータのレバー周りの構造を示す図であって、図4(b)は側面図、図4(a)は図4(b)のa−aからみた断面図である。
【符号の説明】
1 スタータ
2 スタータモータ
3 出力軸
3a ヘリカルスプライン
4 移動筒部材(ピニオン)
4a ピニオンギヤ
4b1 当接面(当接位置)
5 規制手段(シフトレバー部)
51 支持部
52 レバー
52a 板ばね
52aF 二股部
52aK 突起部
52aS 端部
52aT 当接部
52b レバーホルダ
52bF 二股状部
52bK 切欠き部
52bT 角部
52c 支持部材(ピン)
52c1 ピン端部
52d 当接部(ブレーキシュ部)
52dG ガイド部
6 駆動手段(マグネットスイッチ)
6a 可動部
100 リングギヤ
S 弾発力発生装置

Claims (3)

  1. スタータモータに駆動されると共に、外周にヘリカルスプラインを有する出力軸と、
    エンジンのリングギヤと噛み合うピニオンギヤを有し、前記出力軸のヘリカルスプラインに嵌合すると共に、前記出力軸のヘリカルスプラインに沿って軸方向に進退可能に設けられた移動筒部材と、
    該移動筒部材に当接して前記移動筒部材を前進させる規制手段と、
    前記規制手段を前記移動筒部材の当接位置へ移動させる駆動手段とを備え、
    前記規制手段は、レバーホルダと板ばねとを含む弾発力発生装置であって、前記レバーホルダに当接する前記板ばねの端部に、前記板ばねのずれを防止するための、前記レバーホルダに引っ掛ける突起部を設け、
    かつ、前記弾発力発生装置は、前記レバーホルダと共に前記板ばねを挟み込むことで前記板ばねにセット荷重を付与する支持部材と、前記支持部材を支承する支持部を有し、
    前記レバーホルダの外縁部には、前記板ばねを囲むための、軸方向に延びるリブ部が形成され、
    前記支持部材は、前記レバーホルダと共に板ばねを挟み込み、かつ前記リブ部に対して垂直方向に配置されて前記レバーホルダに固定されているとともに、前記支持部に支承されて前記レバーホルダを回動させるものであって、
    前記レバーホルダは前記移動筒部材に当接するブレーキシュ部を有し、該ブレーキシュ部は、前記端部の据わり性向上のためのガイドすることを特徴とするスタータ。
  2. 前記端部は、前記板ばねの先端部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスタータ。
  3. 前記支持部材は、円筒状のピンであって、前記レバーホルダを貫通するように固定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスタータ。
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