JP3820767B2 - 新規なポリイミド、その製造方法および積層基板 - Google Patents

新規なポリイミド、その製造方法および積層基板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、新規なポリイミド、その製造方法および積層基板に関するものであり、さらに詳しくはピロメリット酸二無水物と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とが出発酸二無水物成分であり、パラフェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルとが出発ジアミン成分である低線膨張係数のポリイミド、その製造方法および積層基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
耐熱性のポリイミドを与えるピロメリット酸二無水物系のポリイミドとしてはピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルとをそれぞれ出発酸二無水物成分および出発ジアミン成分とするポリイミドが一般的であり、低線膨張係数のポリイミドを与えると考えられるピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンとをそれぞれ出発酸二無水物成分および出発ジアミン成分とするポリイミドは、熱処理中に粉化しやすく、製膜しても非常に脆い成形体しか得られないことが知られている。
【0003】
このため、芳香族テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物を出発酸二無水物として得られるポリイミドは、線膨張係数が大きいものが一般的であり、弾性率が400kg/mm2 以上で線膨張係数(100−250℃)が10×10-6cm/cm/℃以下の高弾性率で低線膨張係数のポリイミドは知られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、従来脆いポリイミドしか得られなかったピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンとをそれぞれ出発酸二無水物成分および出発ジアミン成分の主成分とし、特定の共重合成分と組み合わせることによって、高弾性率で低線膨張係数のポリイミド、その製造方法および積層基板を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、この発明は、下記の構成単位(A)と、
【化3】
Figure 0003820767
(式中、Xはピロメリット酸二無水物のカルボン酸二無水物残基であり、Yはパラフェニレンジアミンのジアミン残基であり、mは整数である。)
下記の構成単位(B)とからなり、
【化4】
Figure 0003820767
(式中、Sは2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のカルボン酸二無水物残基であり、Tは4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルのジアミン残基であり、nは整数である。)
ポリイミド構成単位全量中、(A)が70重量%以上95重量%以下、(B)が5重量%以上30重量%以下である新規なポリイミドに関するものである。
【0006】
また、この発明は、(a)ピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンとを有機溶媒中で重合させたポリイミド前駆体溶液(ポリイミド前駆体合計重量中70重量%以上95重量%以下)と(b)2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルとを有機溶媒中で重合させたポリイミド前駆体溶液(ポリイミド前駆体合計重量中5重量%以上30重量%以下)とを混合してポリイミド前駆体溶液を得た後、
このポリイミド前駆体溶液を使用して熱および/または化学イミド化することを特徴とする新規なポリイミドの製造方法に関するものである。
【0007】
さらに、この発明は、前記のポリイミドからなる層の少なくとも片面に直接あるいは耐熱性接着剤を介して基材が積層されてなる積層基板に関するものである。
【0008】
この発明のポリイミドを与える前記のポリイミド前駆体組成物は、例えば(a) ピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンとを有機溶媒中で重合させたポリイミド前駆体溶液(ポリイミド前駆体合計重量中70重量%以上95重量%以下、好ましくは80重量%以上95重量%以下)と(b) 2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルとを有機溶媒中で重合させたポリイミド前駆体溶液(ポリイミド前駆体合計重量中5重量%以上30重量%以下、好ましくは5重量%以上20重量%以下)とを混合して得ることができる。
【0009】
前記の(a) ポリイミド前駆体溶液と(b) ポリイミド前駆体溶液とは、カルボン酸二無水物成分とジアミン成分とをそれぞれ等モル量反応させてもよく(a) 、(b) のいずれかを酸過剰とし他をジアミン過剰にしてもよい。
いずれの場合にも、加熱によってポリイミド前駆体がイミド化される過程でポリマ−鎖の切断−再結合が生じてブロック結合を有する又はランダムなシ−ケンスとなったポリイミドが得られる。
【0010】
この発明においては、ピロメリット酸二無水物、パラフェニレンジアミン、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルを前記の範囲内の割合で使用することが必要あり、さらに弾性率および線膨張に悪影響を及ぼさない範囲で他の追加のジアミン成分、例えば4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよび/または他の酸成分、例えば3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を使用してもよい。
【0011】
また、ポリイミド前駆体溶液の両成分を混合した後、ポリイミド前駆体のアミン末端を封止するため、ジカルボン酸無水物、例えば無水フタル酸およびその置換体(例えば3−メチル又は4−メチルフタル酸無水物)、ヘキサヒドロ無水フタル酸およびその置換体、無水コハク酸およびその置換体など、好適には無水フタル酸を添加してもよい。
【0012】
また、フィルムのゲル化を制限する目的でリン系安定剤、例えば亜リン酸トリフェニル、リン酸トリフェニル等をポリイミド前駆体重合時に固形分(ポリマ−)濃度に対して0.01〜1%の範囲で添加することができる。
【0013】
前記のポリイミド前駆体を製造に使用する有機溶媒は、(a) および(b) のいずれに対しても、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタムなどが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
前記各成分を使用し、前記の(a) および(b) のポリイミド前駆体を与えるジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物とを、それぞれ有機溶媒中で0−100℃、好ましくは5−50℃の温度で重合させてポリイミド前駆体の溶液(均一な溶液状態が保たれていれば一部がイミド化されていてもよい)とし、両ポリイミド前駆体の溶液を混合して、最終的に得られるポリイミド前駆体の酸成分とジアミン成分とが略等モルで各成分の割合が前記の範囲内であるポリイミド前駆体溶液から塗膜化あるいはフィルム化・乾燥・イミド化・加熱乾燥(キュア)することによってこの発明のポリイミドを製造することができる。
この加熱乾燥の最高加熱処理温度は、350−600℃の範囲であることが好ましい。
【0015】
この発明によれば、モノマ−各成分が前記の範囲内であるポリイミド前駆体を使用することによって、ピロメリット酸二無水物/パラフェニレンジアミンのホモポリイミドの有する対称性が良好であり結晶化しやすく、熱処理中に粉化しやすく製膜しても非常に脆い成形体しか得られない欠点が改善される。すなわち2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は非対称性であり、大部分のジアミンと非結晶性ポリイミドを与えるが、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物によりピロメリット酸二無水物/パラフェニレンジアミン系ポリイミドを変性することにより、ホモポリマ−の結晶性を大幅に低減し結晶生長による分子量増大の阻害要因を低減させて成形体の脆さを低減するとともに、ピロメリット酸二無水物/パラフェニレンジアミン系ホモポリマ−が本来有している耐熱性、高弾性率、低線膨張係数を維持することが可能になった。
【0016】
このためには、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルによる変性率は、5−30重量%の範囲であり、ピロメリット酸二無水物/パラフェニレンジアミンの組成分率は70−95重量%の範囲が必要である。ピロメリット酸二無水物/パラフェニレンジアミンが95重量%より多くなると結晶生長の進んだ不透明のポリイミドを与える。また70重量%以下ではピロメリット酸二無水物/パラフェニレンジアミンの本来有する物性が損なわれ、弾性率が低下し線膨張係数が増大する。
【0017】
この発明のポリイミドは、コ−ティング剤やフィルム(未キュアフィルムをピンテンタ−を使用して熱処理し、実質的に延伸をかける)のいずれにも適用可能である。
【0018】
この発明のポリイミドフィルム(膜)は、弾性率が400kg/mm2 以上、特に400−800kg/mm2 で線膨張係数(100−250℃)が10×10-6cm/cm/℃、特に1×10-6−5×10-6cm/cm/℃の高弾性率で低線膨張係数のポリイミドである。
【0019】
この発明のポリイミドは、ホットメルト法により、ポリミドフィルムの片面あるいは両面に、耐熱性接着剤、例えば熱可塑性接着剤あるいは熱硬化性接着剤を介して銅、金、アルミニウム、42%Ni−Fe合金などの金属箔を接着する方法、あるいはこのポリイミド前駆体溶液を同種あるいは異種の基材、例えばポリイミドフィルムあるいは前記アモルファスシリコンとの積層体である太陽電池用ベ−スフィルムとして有用である。またLSI等のベ−ス基材等の線膨張係数の小さい材料上に形成する絶縁膜、保護膜等の用途に有用である。
【実施例】
以下、この発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明する。
【0020】
原料ド−プの合成例1
反応容器にN−メチル−2−ピロリドンを加え、攪拌および窒素流通下、パラフェニレンジアミン(PPD)を添加し、50℃に保温し完全に溶解させた。この溶液にジアミン成分とジカルボン酸成分とが等モル量となる割合のピロメリット酸二無水物(PMDA)を発熱に注意しながら徐々に添加し、添加終了後50℃を保ったまま3時間反応を続けて、モノマ−濃度20重量%のポリイミド前駆体溶液(黄色粘調液体、30℃における溶液粘度は約1000ポイズ)を得た。この溶液をA液と称する。
【0021】
原料ド−プの合成例2
反応容器にN−メチル−2−ピロリドンを加え、攪拌および窒素流通下4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル(ODA)を添加し、30℃で完全に溶解させた。この溶液にジアミン成分とジカルボン酸成分とが等モル量となる割合の2,3,3’,4’−ビフェニルテットラカルボン酸二無水物(a−BPDA)を発熱に注意しながら徐々に添加し、添加終了後30℃を保ったまま反応を続けて、モノマ−濃度20重量%のポリイミド前駆体溶液(淡黄色粘調液体、30℃における溶液粘度は約1000ポイズ)を得た。この溶液をB液と称する。
【0022】
実施例1−3
A液とB液とを表1の比率で混合し、ガラス基板上に最終膜厚15μm程度となるように塗布し、100℃で10分、140℃で10分、180℃で2分、200−450℃まで20分で昇温し、450℃に10分保持して熱処理することによりガラス基板上にポリイミド膜を得た。
このポリイミド膜の各種物性を評価した。
【0023】
実施例4
A液とB液とが9:1の比率の前駆体溶液を、ガラス基板上に最終膜厚15μm程度となるように塗布し、100℃で10分、140℃で10分熱処理した後自己支持性フィルムを引き剥がし、ピンシ−トにセットし、180℃で2分、200−480℃まで10分で昇温し、480℃に3分保持して製膜し、ポリイミドフィルムを得た。
このポリイミドフィルムの各種物性を評価した。
【0024】
比較例1
A液のみを用いて、実施例1と同様に実施した。
このポリイミド膜の各種物性を評価した。
【0025】
【表1】
Figure 0003820767
【0026】
【発明の効果】
この発明のポリイミドは、ピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンとを主成分とするにもかかわらず、粘り強さを有し、耐熱性があって、高弾性率で低線膨張係数である。
【0027】
この発明の製造方法によれば、従来脆くて使用することができなかったピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンとを主成分とし、耐熱性があって、高弾性率で低線膨張係数のポリイミドフィルム(膜)を得ることができる。
【0028】
この発明の積層基板は、ポリイミド層が新規であり、耐熱性があって、高弾性率で低線膨張係数である。

Claims (4)

  1. 下記の構成単位(A)と、
    Figure 0003820767
    (式中、Xはピロメリット酸二無水物のカルボン酸二無水物残基であり、Yはパラフェニレンジアミンのジアミン残基であり、mは整数である。)
    下記の構成単位(B)とからなり、
    Figure 0003820767
    (式中、Sは2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のカルボン酸二無水物残基であり、Tは4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルのジアミン残基であり、nは整数である。)
    ポリイミド構成単位全量中、(A)が70重量%以上95重量%以下、(B)が5重量%以上30重量%以下である新規なポリイミド。
  2. (a)ピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンとを有機溶媒中で重合させたポリイミド前駆体溶液と
    (b)2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルとを有機溶媒中で重合させたポリイミド前駆体溶液とを混合し、この混合して得られるポリイミド前駆体溶液を使用し、熱および/または化学イミド化して得られることを特徴とする請求項1に記載の新規なポリイミド。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のポリイミドからなる層の少なくとも片面に直接あるいは耐熱性接着剤を介して基材が積層されていることを特徴とする積層基板。
  4. (a)ピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンとを有機溶媒中で重合させたポリイミド前駆体溶液(ポリイミド前駆体合計重量中70重量%以上95重量%以下)と(b)2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルとを有機溶媒中で重合させたポリイミド前駆体溶液(ポリイミド前駆体合計重量中5重量%以上30重量%以下)とを混合して、
    この混合したポリイミド前駆体溶液を使用して熱および/または化学イミド化することを特徴とする新規なポリイミドの製造方法。
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