JP3818740B2 - 平版印刷版材用版下材料および平版印刷方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版材用版下材料およびそれを用いた平版印刷方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
平版印刷用印刷機においては、印刷版を版胴に巻付け、機械的に固定し、この状態で印刷を行うのが一般的である。
【0003】
しかし、取扱が容易な金属以外の材料(例えば、プラスチックフィルム、紙等)を基板とする平版印刷版は、寸法安定性に難点があり、例えば、印刷中にブランケット胴と版との摩擦によって、版が部分的に歪みを生じ、印刷寸法および印刷の精度を損ねてしまうという問題があった。
【0004】
したがって、上記のような基体材料を用いた版の場合には、従来、印刷物の見当精度をあまり必要としない少ない枚数を印刷する簡便用に限られており、多色で精巧な高級印刷や大型印刷機を用いた本格的な印刷にはそのままでは用いられていなかった。
【0005】
このような問題を改善するため、実開昭58−1046号公報では、版材を例えばアクリル系ないしゴム系の両面粘着シート、スプレー接着剤を用いて版胴または仕立て合わせ用の版下板に直接接着する方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、このような方法では、印刷版が版胴から剥がれなくなってしまうため、印刷版の版胴上での位置の微調整ができなかったり、印刷後の排版などの作業性が極めて悪化するという問題が新たに生ずる。
【0007】
さらに、特公平7−425号公報では、特定のシリコーンゴムの皮膜を印刷機の版胴に設け、印刷精度等を向上する方法が提案されている。
【0008】
しかしながら、この方法では、シリコーンゴム皮膜が印刷機から剥がれないため、例えばこれまでの仕立て用版下材料のように簡単に取り外すことが困難であり、同じ印刷機で異なる厚の印刷版を用いる場合、仕立て用版下材料をその版厚に合わせて交換しなければならなくなるが、この交換の作業性が極めて悪くなるという問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、印刷時に版が部分的に歪みを生じ印刷寸法および印刷の精度を損ねてしまうことをなくし、かつ、前記従来法の問題点である印刷時の作業性が悪くなることを解消することのできる平版印刷版材用版下材料および平版印刷方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(3)のいずれかの構成により達成される。
(1) 基体、およびこの基体の少なくとも片面に設けられ、静摩擦係数が0.2〜5の粘着層を備え、前記粘着層側が平版印刷版材側となるように版胴に設置され、かつ前記粘着層が、酢酸ビニル共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンおよびニトロブタジエンゴムから選択された少なくとも1種からなる平版印刷版材用版下材料。
(2) 基体、およびこの基体の少なくとも片面に設けられ、粘着力が1〜20kgf/cm2で、180°剥離力が50gf/cm未満の粘着層を備え、前記粘着層側が平版印刷版材側となるように版胴に設置され、かつ前記粘着層が、酢酸ビニル共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンおよびニトロブタジエンゴムから選択された少なくとも1種からなる平版印刷版材用版下材料。
(3) 上記(1)または(2)の平版印刷版材用版下材料を、その粘着層側が平版印刷版材側となるように版胴に設置して印刷を行う平版印刷方法。
【0011】
【作用】
本発明は、印刷版と仕立て合わせ用版下材料または、版胴との静摩擦係数0.2以上の粘着層を少なくとも片面に設けた版下材料を挟むまたは印刷版と同時にくわえることによって、印刷版は、粘着層面との摩擦抵抗によって印刷時に発生する歪みを抑える作用を発揮し、さらにこの粘着層は、180°剥離力が50gf/cm未満であることから印刷版の取り外しが容易になる作用を発揮する。
【0012】
したがって、本発明の平版印刷用版下材料は作業性を犠牲にすることなく、印刷版の歪みを確実に防止する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的構成について詳細に説明する。
本発明に用いることのできる印刷機は、少なくともインキ着けローラー表面に一定の厚さのインキ膜を形成するインキ供給装置と、インキを受容する画像部とインキを付着しない非画像部から成る印刷版の版頭部を把持固定し、必要に応じて版尻を引っ張り付勢して印刷版を装着した版胴と、前記版胴へ被印刷材を押圧して印刷する版胴を具備した印刷機であればいずれであってもよく、例えば、前記印刷機の版胴と圧胴との間に、前記版胴に圧接して画像を転写し、その画像を被印刷材へ押圧して印刷するゴム胴が付加されたオフセット印刷機などが上げられる。
【0014】
次に本発明における印刷版材伸び防止用の版下材料について説明する。
【0015】
版下材料に用いられる粘着層は、静摩擦係数が0.2以上であり、好ましくは0.5以上が良い。この静摩擦係数に特に上限値はないが、通常5程度であり、好ましくは3である。あるいは、粘着層の粘着力が1〜20kgf/cm2であることが好ましい。この範囲において、粘着層と印刷版との摩擦抵抗によって印刷時に発生する歪みを押さえる作用を充分に発揮することができる。
【0016】
さらに前記粘着層の180°剥離力は50gf/cm未満であり、好ましくは30gf/cm未満が良い。この180°剥離力は、上記の静摩擦係数や粘着力の値との関係にもよるが小さければ小さいほど好ましい。この範囲において、版下材料と印刷版を容易に剥がすなど良好な作業性を維持できる。
【0017】
ここで、上記物性値は、以下のとおりに測定した。
【0018】
静摩擦係数は、JIS K7125の摩擦係数試験方法に従い行った。ここでいう静摩擦係数とは、試験片として本発明の版下材料、相手材料としてELP−IIX(富士写真フイルム(株)社製)、滑り片として一辺が60mmの正方形、荷重1kgのものを使用し、滑り速度を300mm/minで行った試験結果である。
【0019】
180°剥離強度は、JIS K6854の180°剥離強度試験方法に従い行った。試験片は本発明の版下材料、たわみ性材料として50μm のポリエチレンテレフタレートフィルム(富士写真フイルム(株)社製)を用い、版下材料の粘着層側とたわみ性材料を張り合わせた後、プレス機((有)丸協技研社製)を25kgfの荷重をかけた後、寸法を幅20mmにし、剥離速度100mm/minでただちに室温にて測定を行った。
【0020】
粘着力は、JIS K6850の接着剤の引っ張りせん断接着強さ試験方法に従い行った。試験片は本発明の版下材料、相手材料として150μm のポリエチレンテレフタレートフィルム(富士写真フイルム(株)社製)を用い、版下材料の粘着層側と相手材料を張り合わせた後、プレス機((有)丸協技研社製)を用い、5kgfの荷重をかけた後、ただちに室温にて測定を行った。
【0021】
また、前記粘着層は、従来のゴム系粘着材または、樹脂粘着材が用いることができ、上記物性値を満足するものであればいずれでもよい。さらに、上記粘着材は、重量平均分子量が1×103〜5×106、好ましくは5×103〜1×106のものが良い。
【0022】
具体的には、小野昌孝編「接着と接着剤」日本規格協会(1989年発行)、日本接着学会編「接着剤データブック」日刊工業新聞社(1990年発行)、福沢敬司著「接着技術」高分子刊行会(1978年発行)、室井宗一著「高分子ラテックス接着剤」高分子刊行会(1984年発行)等に記載されている化合物を用いることができる。
【0023】
代表的なものは塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−メタクリレート共重合体、メタクリレート共重合体、ポリビニルブチラール、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、ポリエステル樹脂等、また水溶性高分子化合物としてポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、澱粉、酸化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、ポリアミド、ポリアクリルアミド、酢酸ビニル共重合体、アクリレート共重合体、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロロヒドリンゴム、ニトロブタジエンゴム、ニトロイソプレンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。好ましくは、酢酸ビニル共重合体、アクリレート共重合体、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロロヒドリンゴム、ニトロブタジエンゴム、ニトロイソプレンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムがよい。
【0024】
架橋剤としては、通常架橋剤として用いられる化合物を挙げることができる。具体的には、山下普三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981年)、高分子学会編「高分子データハンドブック、基礎編」培風館(1986年)等に記載されている化合物を用いることができる。
【0025】
例えば、塩化アンモニウム、金属イオン、有機過酸化物、有機シラン系化合物(例えば、トリメトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等)、ポリイソシアナート系化合物(例えば、トルイレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、ポリメチレンポリフェニルイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、高分子ポリイソシアナート等)、ポリオール系化合物(例えば、1,4−ブタンジオール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、1,1,1−トリメチロールプロパン等)、ポリアミン系化合物(例えば、エチレンジアミン、γ−ヒドロキシプロピル化エチレンジアミン、フェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、変性脂肪族ポリアミン類等)、チタネートカップリング系化合物(例えばテトラブトキシチタネート、テトラクロロエポキシチタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート等)、アルミニウムカップリング系化合物〔例えばアルミニウムブチレート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムオキシドオクテート(アルミニウムトリス(アセチルアセテート)等〕、ポリエポキシ基含有化合物およびエポキシ樹脂(例えば、垣内弘編著「新エポキシ樹脂」昭晃堂(1985年刊)、橋本邦之編著「エポキシ樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、メラミン樹脂(例えば、三輪一郎、松永英夫編著「ユリア・メラミン樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、ポリ(メタ)クリレート系化合物〔例えば、大河原信、三枝武夫、東村敏延編著「オリゴマー」講談社(1976年刊)、大森英三「機能性アクリル系樹脂」テクノシステム(1985年刊)等に記載された化合物類)が挙げられる。
【0026】
本発明では、粘着層中での架橋反応を促進させるために、必要に応じて反応促進剤を添加してもよい。
【0027】
架橋反応が官能基間の化学結合を形成する反応様式の場合には、例えば有機酸類(酢酸、プロピオン酸、酪酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸類)、フェノール類(フェノール、クロロフェノール、ニトロフェノール、シアノフェノール、ブロモフェノール、ナフトール、ジクロロフェノール類)、有機金属化合物(アセチルアセテートジルコニウム塩? 、アセチルアセトンジルコニウム塩、アセチルアセトンコバルト塩、ジラウリン酸ジブトキシスズ等)、ジチオカルバミン酸化合物(ジエチルジチオカルバミン酸塩類)、チノウラムジスルフィド化合物(テトラメチルチノウラムジスルフィド等)、カルボン酸無水物(無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、ブチルコハク酸無水物、3,3’,4,4’−テトラカルボン酸ベンゾフェノンジ無水物、トリメリット酸無水物等)等が挙げられる。架橋反応が重合性反応様式の場合には、重合開始剤(過酸化物、アゾビス系化合物等)が挙げられる。
【0028】
樹脂は、粘着層組成物を塗布した後、光および/または熱硬化されることが好ましい。熱硬化を行うためには、例えば、乾燥条件を従来の受理層作製時の乾燥条件より厳しくする。例えば、乾燥条件を高温度および/または長時間とするか、あるいは塗布溶剤の乾燥後、さらに加熱処理することが好ましい。例えば60℃〜150℃で1〜120分間処理する。上述の反応促進剤を併用すると、より穏やかな条件で処理することができる。
【0029】
樹脂中の特定の官能基を光照射で硬化する方法としては、化学的活性光線で光照射する工程を入れる様にすればよい。化学的活性光線としては、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、γ線、α線などいずれでもよいが、好ましくは紫外線、より好ましくは波長310nmから波長500nmの範囲の光線である。一般には低圧、高圧あるいは超高圧の水銀ランプ、ハロゲンランプ類が用いられる。光照射の処理は通常5cm〜50cmの距離から10秒〜10分間の照射で充分に行うことができる。ただし、これら材料に限るものではない。
【0030】
本発明の版下材料は、繰り返し使用に耐えられるが、条件によっては粘着層裏面に版材裏面に付着したほこり、湿り水成分などが付着し、版材寸度安定性の性能を低下させる場合がある。その場合は、水、または石油系溶剤(アイソパーE)で洗浄することで性能を回復させ繰り返し使用が可能である。
【0031】
耐繰り返し性は、粘着層を水またはアイソパーEを含ませた布(綿製)を粘着層との接触面積が0.5×0.5mm2となるように専用治具に固定し、表面性測定機HEIDON−14型にて荷重0.5kgで接触部を平行に往復させ、粘着層が溶解または膜損したときの繰り返し往復回数を測定した。往復回数が50回以上なら耐繰り返し性は良好である。
【0032】
さらに、膜の物性を調整するために、膜中に粘着樹脂材料の他の成分として無機の微粒子を添加してもよい。好ましい微粒子の平均粒径は、0.01μm 〜30μm 、より好ましくは0.02μm 〜20μm である。微粒子としては、例えば、カオリンクレー、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、シリカ、アルミナ等が挙げられる。これらの粒子は、粘着樹脂材料100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部の割合で用いることができる。より好ましくは0.5〜30重量部である。
【0033】
版下材料に用いられる基体はポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのプラスチック、またはアルミ、SUSなどの金属、または紙、合成紙、布など印刷機の版胴とフィット性が良いものならよい。好ましくは寸度安定性がすぐれ、剛性のあるポリエチレンテレフタレートが良い。
【0034】
版下材料の膜厚は、0.03mm〜0.4mm、好ましくは0.05mm〜0.3mmである。この範囲内で、大型のサイズでの取り扱い性、印刷機の版胴とのフィット性が良好で、さらに印刷機の仕立て合わせなどの作業性を損なうことがない。
【0035】
基体への粘着層の塗布は、粘着層が均一に塗布できるものなら何でもよく、例えばロールコーター、スプレーガン、バーコーターなどが上げられる。このようにして得られた粘着層の膜厚は、0.5μm 〜60μm 、好ましくは1μm 〜30μm が良い。この範囲内で印刷版の寸度および精度を保つことができる。
【0036】
本発明の版下材料の装着方法は、印刷版と印刷機版胴との間に版下材料を粘着層が印刷版裏面と向き合うように挟み込むだけで印刷版をクワエ万力で固定する。または、版下材料の少なくとも一端を印刷版と共にクワエ万力により版胴に固定する。このことにより、版下材料の粘着層と印刷版裏面を密着させることで、印刷版の印刷時にかかる歪み、例えば印刷中にブランケットと版との摩擦によっておこる版の歪みを押さえることができ、結果的に印刷寸法および精度を維持することができる。
【0037】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0038】
実施例1
基体として100μm のポリエチレンテレフタレートフィルム(富士写真フイルム(株)社製)を用い、粘着層としては、NBR樹脂を主成分とするラテックスのニッポールSX−1503(日本ゼオン社製)を固形分40wt%になるように水で希釈した後、ワイヤーバーにて塗布、100℃×3分間乾燥して塗布量10g/m2(膜厚10μm )の粘着層を持つ目的の版下材料を得た。
【0039】
このようにして得られた版下材料は、下記で述べる印刷機で印刷版と版胴との間に挟み込むことで装着した。
【0040】
平版印刷版として支持体がポリエチレンでラミネートされた紙であるELP−IIX(富士写真フイルム(株)社製)をELP415VX製版機で製版し不感脂化処理したものを用いた。印刷機は、菊四裁サイズのオリバー52(桜井株式会社製)を用い毎分8000枚の印刷スピードで5000枚印刷した。
【0041】
比較例1
粘着層としてアクリルゴムラテックスAE945(JSR社製)を用いた以外は実施例1と同様な材料および作成方法で版下材料を作成した。
【0042】
比較例2
粘着層としてアクリルゴムラテックスAE606(JSR社製)を用いた以外は実施例1と同様な材料および作成方法で版下材料を作成した。
【0043】
比較例3
粘着層がない以外は実施例1と同様である。
【0044】
表1に、上記実施例および比較例の版下材料の膜物性およびそれらを用いての印刷特性を示した。
【0045】
なお、本実施例における評価項目の実施の態様は以下のとおりである。
【0046】
摩擦係数
JIS K7125の摩擦係数試験方法に従い行った。ここでいう摩擦係数とは、試験片として本発明の版下材料、相手材料としてELP−IIX(富士写真フイルム(株)社製)で、表面性測定機HEIDON−14型(HEIDON社製)を用いた試験結果であり、静摩擦係数のことをいう。
【0047】
180°剥離強度
JIS K6854の180°剥離強度試験方法に従い行った。試験片は本発明の版下材料、たわみ性材料として50μm のポリエチレンテレフタレートフィルム(富士写真フイルム(株)社製)を用い、版下材料の粘着層側とたわみ性材料を張り合わせた後、プレス機((有)丸協技研社製)を用い、25kgfの荷重をかけた後、引張り試験機テンシロン(東洋ボールドウイン社製)を用いただちに室温にて測定した。
【0048】
粘着力
JIS K6850の接着剤の引っ張りせん断接着強さ試験方法に従い行った。試験片は本発明の版下材料、相手材料として150μm のポリエチレンテレフタレートフィルム(富士写真フイルム(株)社製)を用い、版下材料の粘着層側と相手材料を張り合わせた後、プレス機((有)丸協技研社製)を用い、5kgfの荷重をかけた後、引張り試験機テンシロン(東洋ボールドウイン社製)を用い、ただちに室温にて測定した。
【0049】
印刷寸度安定性
評価に用いた印刷機は、菊四裁サイズのオリバー52(桜井(株)社製)、印刷版はELP−IIX(富士写真フイルム(株)社製)を用い、刷り出しから印刷5000枚後の印刷物トンボ間(トンボ−トンボは、印刷方向で300mm)の変位で評価した。変位が小さいほど印刷寸度安定性が良いことになる。
【0050】
印刷作業性
印刷版位置修正性は、印刷機に印刷版および版下材料を装着した後、印刷版だけを縦、横にずらした場合に安易に印刷版をずらすことができるかであり、印刷版に支障つまりしわ、破れがでないかで評価した。
【0051】
排版性は、印刷5000枚終了後、印刷版と版下材料を容易に剥がせるかをみたものであり、剥がすときに印刷版に破れ、さらに排版までの時間で評価した。印刷版に破れが起きたり、排版までの時間がかかるものは印刷作業性が悪いことになる。
【0052】
耐繰り返し性は、粘着層を水またはアイソパーE(アイソパー:エクソン社の商品名)を含ませた布(綿製)を粘着層との接触面積が0.5×0.5mm2となるように専用治具に固定し、表面性測定機HEIDON−14型にて荷重0.5kgで接触部を平行に往復させ、粘着層が溶解または膜損したときの繰り返し往復回数を測定した。往復回数が50回以上なら繰り返し性は良好である。
【0053】
以上の評価により得られた結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
以上上記の版下材料を用いて、版材の寸度安定性および印刷作業性の評価を行ったところ、本発明の版下材料のみが、良好な印刷特性および印刷作業性を示した。
【0056】
実施例2〜4
粘着層材料を下記のように変更したこと以外は実施例1と同様にして版下材料を作製し、粘着層の膜物性を測定した。その結果を表2に示した。
【0057】
実施例2 酢酸ビニル樹脂主成分水分散ラテックス セビアンAMY−7200(ダイセル(株))を水で固形分40wt%に希釈して塗布
【0059】
実施例3 CSM樹脂ラバー TOSO−CSM TS340(東ソー(株))をトルエンで溶解し、固形分10wt%溶液にして塗布
【0060】
実施例4 CPE樹脂ラバー ダイソラックMR104(ダイソー(株))をトルエンで溶解し、固形分5wt%溶液にして塗布
【0061】
【表2】
【0062】
以上、上記の版下材料を用いて、実施例1と同様として版材の寸度安定性および印刷作業性の評価を行ったところ、すべて良好であった。
【0065】
実施例5
基体として100μm のポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株))を用い、粘着層としては、酢酸ビニル樹脂主成分水分ラテックス セビアンAMY−7200(ダイセル(株))を水で固形分40wt%に希釈、さらに平均粒径が0.02μm の微粒子酸化亜鉛FINEX50(堺化学工業(株))を上記酢酸ビニル100重量部に対して0.7重量部添加し、この混合溶液をホモジナイザー(日本精機製作所)を用い5000回転/分で1分間分散させた後、ワイヤーバーにて塗布、110℃×5分間乾燥して塗布量7.0g/m2(膜厚7.0μm)の粘着層を持つ目的の版下材料を得た。
【0066】
このようにして得られた版下材料は、下記で述べる印刷機で印刷版と版胴との間に挟み込むことで装着した。
【0067】
上記の方法で作成した版下材料を実施例1と同様な方法で評価した結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
以上、上記の版下材料を用いて、実施例1と同様として版材の寸度安定性および印刷作業性の評価を行ったところ、すべて良好であった。
【0070】
実施例6
基体として100μm のポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株))を用い、粘着層としては、酢酸ビニル/2−エチルヘキシルアクリレート/ヒドロキシエチルメタアクリレート=50/40/10wt%ランダム共重合体、重量平均分子量5×104の樹脂10gをテトラヒドロフランで固形分40wt%に希釈し、さらに架橋剤としてトリレンジイソシアネートを1g、架橋促進剤としてジ−n−ブチルすずジラウレートを0.02g添加し、この混合溶液をホモジナイザー(日本精機製作所)を用い5000回転/分で1分間分散させた後、ワイヤーバーにて塗布、110℃×7分間乾燥して塗布量10g/m2(膜厚9.0μm )の粘着層を持つ目的の版下材料を得た。
【0071】
このようにして得られた版下材料は、下記で述べる印刷機で印刷版と版胴との間に挟み込むことで装着した。
【0072】
実施例7
基体として100μm のポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株))を用い、粘着層としては、酢酸ビニル/2−エチルヘキシルアクリレート/グリシジルメタアクリレート=50/35/15wt%ランダム共重合体、重量平均分子量4×104の樹脂10gをテトラヒドロフランで固形分40wt%に希釈し、さらに架橋剤として無水フタル酸を0.1g、架橋促進剤としてo−クロロフェノールを0.05g添加し、この混合溶液をホモジナイザー(日本精機製作所)を用い5000回転/分で1分間分散させた後、ワイヤーバーにて塗布、110℃×10分間乾燥して塗布量10.5g/m2(膜厚10μm )の粘着層を持つ目的の版下材料を得た。
【0073】
このようにして得られた版下材料は、下記で述べる印刷機で印刷版と版胴との間に挟み込むことで装着した。
【0074】
上記方法で作成した版下材料を実施例1と同様な方法で評価した結果を表4に示す。
【0075】
【表4】
【0076】
以上、上記の版下材料を用いて、実施例1と同様として版材の寸度安定性および印刷作業性の評価を行ったところ、すべて良好であった。
【0077】
実施例8
基体として100μm のポリエチレンテレフタレートフィルム(富士写真フイルム(株)社製)を用い、印刷版側の粘着層としては、NBRラテックスニッポールSX−1503(日本ゼオン社製)を10g/m2となるようにワイヤバーで塗布し、110℃×3分間乾燥し、さらに、塗布した粘着層とは反対側にも、ウレタンゴムサンプレンIB422(三洋化成社製)からなる粘着材を5g/m2となるようにワイヤーバーで塗布し、110℃×1分間乾燥して目的の版下材料を作成した。
【0078】
このようにして得られた版下材料は、下記で述べる印刷機で印刷版と版胴との間に挟み込むことで装着した。
【0079】
実施例9
印刷版側粘着層の反対側の粘着層として酢酸ビニル樹脂主成分水分散ラテックス セビアンAMY−7200(ダイセル(株))を5g/m2となるようにワイヤーバーで塗布し、110℃×1分間乾燥して目的の版下材料を作成した以外は実施例1と同様な材料および作成方法で版下材料を作成した。
【0080】
上記方法で作成した版下材料を実施例1同様な方法で評価した結果を表5に示す。
【0081】
【表5】
【0082】
以上、上記の版下材料を用いて、実施例1と同様として版材の寸度安定性および印刷作業性の評価を行ったところ、すべて良好であった。
【0083】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、平版印刷機における版材の寸法安定性および印刷作業性を良好に向上することができる。
Claims (3)
- 基体、およびこの基体の少なくとも片面に設けられ、静摩擦係数が0.2〜5の粘着層を備え、前記粘着層側が平版印刷版材側となるように版胴に設置され、かつ前記粘着層が、酢酸ビニル共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンおよびニトロブタジエンゴムから選択された少なくとも1種からなる平版印刷版材用版下材料。
- 基体、およびこの基体の少なくとも片面に設けられ、粘着力が1〜20kgf/cm2で、180°剥離力が50gf/cm未満の粘着層を備え、前記粘着層側が平版印刷版材側となるように版胴に設置され、かつ前記粘着層が、酢酸ビニル共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンおよびニトロブタジエンゴムから選択された少なくとも1種からなる平版印刷版材用版下材料。
- 請求項1または2の平版印刷版材用版下材料を、その粘着層側が平版印刷版材側となるように版胴に設置して印刷を行う平版印刷方法。
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