JP3817907B2 - オフセット印刷用新聞用紙およびその製造方法 - Google Patents

オフセット印刷用新聞用紙およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷作業性に優れ、かつ優れたカラー印刷品質を有するオフセット印刷用新聞用紙およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、新聞印刷についてはオフセット化、カラー化、高速化が急速に進んでおり、それに付随して印刷媒体となる新聞用紙に対してもより優れたカラー印刷適性や印刷作業性が求められている。従来より、新聞用紙としてはメカニカルパルプや古紙再生パルプが主体となる紙が使用されている。
近年、環境保護(省資源)の観点から、古紙再生パルプの高率配合や、新聞用紙の増頁に対応する一環として、用紙のより一層の低坪量化等が強く求められている。
ところで、オフセット印刷方式は、比較的タックの強い印刷インキを使用するために用紙表面の強度が強いことが要求される。また、印刷過程で湿し水を使用するために紙面の耐水性が要求される。因みに、表面強度の弱い用紙、あるいは耐水性が低いまたは無い表面を持つ用紙を使用すると、紙粉が原紙表面より遊離してブランケットに堆積したり、インキに混入することにより、印刷面に所謂カスレを発生させるといった問題を抱えている。
【0003】
また、近年の新聞用紙の軽量化に伴い、その用紙に対する高い不透明性が求められている。用紙の不透明性を高めるためにホワイトカーボンや酸化チタン、タルク等の無機顔料が抄紙填料として多く使われるようになった。
一方、これらの填料は、オフセット印刷時に印刷過程で使用される湿し水によって容易に紙層内から浸みだす傾向があり、ブランケットにパイリングする紙粉の主要な成分の一つとなっている。また、環境面で重要視されているDIP(古紙脱墨パルプ)の高率配合化はDIPがGPやRGP、TMP等のメカニカルパルプに比較し不透明度が出難い。その結果、不透明度や紙粉の改良とDIPの高率配合化を両立させるのが極めて困難な状況にあるのが実状である。
【0004】
このようなオフセット印刷時の新聞用紙の難点に対処するため、従来から新聞用紙の表面に澱粉、PVA、あるいはポリアクリルアミド等を主成分とする表面処理剤を塗布することが一般に行われている。これらの表面処理剤は、紙面強度を向上させ、紙表面の微細繊維や填料をパルプ繊維等に接着させる働きはあるものの、いずれも耐水性に乏しく、湿し水によって紙匹より遊離し易いために、印刷時にブランケット上に堆積したり、表面粘着性のために貼り付いて断紙が誘発され易いといった難点がある。
【0005】
上記の如き実状より、オフセット印刷用新聞用紙に関しては、表面粘着性(以後、ネッパリ性と称す)を抑制し、表面強度を高めるために従来より種々の方法が提案されてきた。例えば、特定のポリアクリルアミド系化合物を表面に塗布することにより用紙表面の強度を高め、さらに多価アルデヒド類を併用することによって、表面耐水性を高める方法(特開平8−13384号公報)や、PVAにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体を加えた組成物を塗布することにより、表面サイズ性、表面強度、ネッパリ性を改良する方法(特開平5−59689号公報)、および特定のポリアクリルアミドと疎水性置換基を有する特定の水溶性アニオン性共重合体を塗布する方法(特開平8−232193号公報)等が提案されている。しかしながら、特に43g/m2 以下の低米坪領域のものやDIPが40%以上の高率配合品においては、紙粉発生に対する抑制効果が十分でないのが実状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は優れたオフセット印刷作業性と印刷品質(カラー品質)を有する新聞用紙を得るべく鋭意研究を重ねた。その結果、本発明は新聞用紙に外添塗布する表面処理剤に特定のラテックスを使用することによって、本発明が所望とする品質を具備したオフセット印刷用新聞用紙およびその製造方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、原紙の両面に、表面処理剤を塗布、乾燥してなるオフセット印刷用新聞用紙において、該表面処理剤が固形分比率で30重量%以上のアクリル系アルカリ膨潤型合成樹脂ラテックスを有してなり、かつ、表面処理剤の粘度が10〜100cpsであって、該表面処理剤の塗布量が乾燥重量で片面当たり0.05〜2g/m 2 であることを特徴とするオフセット印刷用新聞用紙、表面処理剤の原紙への塗布にあたり、固形分比率で30重量%以上のアクリル系アルカリ膨潤型合成樹脂ラテックスを有する表面処理剤の粘度をアルカリ液で10〜100cpsに調整し、かつ該表面処理剤の塗布量が乾燥重量で片面当たり0.05〜2g/m2 となるように塗布、乾燥することを特徴とする前記のオフセット印刷用新聞用紙の製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
前述したように、オフセット印刷用新聞用紙には、従来から、澱粉やPVA、ポリアクリルアミド等をその表面に塗布することが一般に行われている。これらの外添塗布剤は、いずれも紙粉発生を抑えるのにはある程度の効果が認められるものの、耐水性に乏しいため、印刷時に湿し水によって、ブランケット上に溶出、累積するため、長時間の連続印刷では、必ずしも十分に紙粉を抑え切れないといった難点を抱えている。
【0009】
ところで、一般塗被紙の製造分野で塗被組成物(以後、単に塗料と称す)の接着剤として広く使用されている合成樹脂ラテックスは、これまでに新聞用紙の表面処理剤としても検討された。しかしながら、ラテックスエマルジョンは、澱粉やポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子接着剤に比べ、低濃度で塗工した場合、粘度が低いためにラテックス粒子が紙層内部に浸透し、十分な表面強度が得られないといった欠点があった。また、高濃度での塗工を行うと、必然的に塗工量が多くなってしまい、ネッパリ性が悪化し、コスト的にも好ましくないものであった。
【0010】
本発明者等は、この耐水性の強い合成樹脂ラテックスを新聞用紙の表面処理剤として利用することについての見直し、検討を鋭意重ねてきた。その結果、通常の合成樹脂ラテックスに代えて、アクリル系アルカリ膨潤型合成樹脂ラテックスを使用することにより、新聞用紙の表面強度、ネッパリ性の軽減、および耐水性を同時に改良することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明で使用するアクリル系アルカリ膨潤型合成樹脂ラテックスとは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステルを重合または共重合して得られる重合体、あるいは上記アクリル酸エステルとスチレン、あるいはアクリル酸エステルと酢酸ビニルとを共重合して得られる重合体であって、特に、重合時にアクリル酸やメタクリル酸等の不飽和カルボン酸を多く(全モノマー成分の2〜10重量%)共重合することによって得られるpH8以下、中性〜酸性状態の重合体ラテックスであり、ソールバインダーラテックスとして従来からグラビア用塗工紙などに使用されているものである。
【0012】
本発明におけるアクリル系アルカリ膨潤型合成樹脂ラテックスがネッパリ性の軽減効果、および表面強度や耐水性の向上に優れる理由については、必ずしも定かではないが、以下のように推察される。
即ち、カルボン酸が比較的多量に共重合されているアクリル系アルカリ膨潤型合成樹脂ラテックスは、その使用に際し、苛性ソーダやアンモニア水等のアルカリを添加して、粒子を膨潤もしくは溶解させて、当該合成樹脂ラテックス水性液の粘度を上昇させて使用する。そのために低濃度、低塗工量の領域では通常のラテックスに比較して高い粘度状態で塗工することができるため、ラテックス粒子の紙層内部への浸透が抑えられ、紙層表面近くでのラテックス被膜が多くなり、表面強度が強くなると推定される。
また、澱粉やポリアクリルアミド等の水溶性バインダーに比較して、乾燥後のラテックスフィルムは、水に溶けにくい、耐水性の強い被膜となっているので、表面強度は向上し、ネッパリ性は解消〜軽減されるものと考えられる。
【0013】
本発明においては、表面処理剤として、前記のアクリル系アルカリ膨潤型合成樹脂ラテックスを主成分とするものの、それ以外に本発明の効果を損なわない範囲で接着剤を適宜併用することもできる。因みに、そのような接着剤としては、例えば酸化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン化澱粉、あるいはエステル化澱粉等の変性澱粉類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースなどの水溶性セルロース化合物、ポリビニルアルコールやポリアクリルアミド類、あるいはカゼイン等が挙げられる。
本発明で特定される、アクリル系アルカリ膨潤型合成樹脂ラテックスの総接着剤中に占める割合は、固形分比率で30重量%以上が必要である。因みに、30重量%未満の場合には、本発明で所望するブランケットパイリングの改良効果が得られなくなる虞れがある。また、表面処理剤中には、上記接着剤の他に抄紙分野で通常使用されている離型剤、表面サイズ剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤等が適宜併用される。
【0014】
かくして得られる表面処理剤は固形分濃度1〜20重量%に調整され、新聞用紙用原紙上に塗布されるが、塗布量は、通常乾燥重量で片面当たり0.05〜2g/m2 、好ましくは0.1〜1g/m2 の範囲で原紙両面に塗被される。因みに、塗布量が0.05g/m2 (片面)未満の場合には、十分な表面強度が得られ難く、他方2g/m2 を越えると、強い耐水性のために損紙の離解が困難となり、古紙パルプとして再生回収が難しくなる虞れがある。
【0015】
また、塗布時の表面処理剤塗液は、塗液を増粘させるために苛性ソーダやアンモニア水等のアルカリを添加して、一般にpH7以上、より好ましくは、8〜11の範囲に調節される。さらに、塗液の粘度はB型粘度計で10〜100cpsに調節されることが望ましい。因みに、10cps未満の場合には十分な表面強度が得られ難く、一方、100cpsを越えると、塗布量の調節が難しく、塗布量過多になる虞れがある。
【0016】
本発明における新聞用紙用原紙を構成する原料パルプとしては、化学パルプ(NBKP、LBKP等)、機械パルプ(GP、CGP、RGP、PGW、TMP等)、古紙再生パルプ(DIP等)等を単独または任意の比率で混合して使用される。また、抄紙に際しては、ホワイトカーボン、クレー、無定形シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム等の填料が紙料に添加されて抄紙される。さらに、紙力増強剤、歩留り向上剤、強化ロジンサイズ剤、エマルジョンサイズ剤等のサイズ剤、耐水化剤、あるいは紫外線防止剤等の一般に公知公用の抄紙用薬品が添加され、公知公用の抄紙機にて抄紙される。そして原紙の坪量としては、特に限定されるものではないが、一般に35〜50g/m2 の範囲である。
【0017】
上記の如き条件で抄紙された原紙上には、本発明の特徴となる合成樹脂ラテックスを含有した表面処理剤が塗布、乾燥せしめて新聞用紙に仕上げられる。
その場合の塗布装置としては特に限定されるものではなく、例えば2ロールサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、エアーナイフコーター等が適宜使用される。
【0018】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。勿論、本発明はそれらの例に限定されるものではない。なお、例中の部および%は特に断らない限り、それぞれ「重量部」および「重量%」を示す。
【0019】
実施例1
(新聞用紙用原紙の抄造)
針葉樹クラフトパルプ10部、サーモメカニカルパルプ40部、グラウンドパルプ10部、および脱墨古紙パルプ40部の配合割合になる混合パルプスラリーを離解し、レファイナーでフリーネス130mlcsf(カナダ標準フリーネス)になるように調製したパルプスラリーに、平均粒子径20μmのホワイトカーボンを填料として対絶乾パルプ当たり2%添加し、ツインワイヤー型抄紙機にて抄造を行い、米坪42g/m2 の新聞用紙用原紙を得た。
【0020】
(表面処理剤の塗布)
表面処理剤として、アクリル/酢酸ビニル系アルカリ膨潤型合成樹脂ラテックス(商品名:プライマルAR−74/ローム&ハース社)100部を水で希釈し(pH=7.5)、さらにアンモニア水を加えてpH9の固形分濃度5%の表面処理剤(粘度=30cps)を得た。かくして調製された表面処理剤を上記原紙の両面にゲートロールコーターを使用して、乾燥重量で片面あたり0.15g/m2 となるように塗布、乾燥した後、線圧100kg/cmの条件でキャレンダー(1ニップ通紙)処理を行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0021】
実施例2
実施例1において、表面処理剤として、アクリル系アルカリ膨潤型合成樹脂ラテックス(商品名:L−1793−15,pH=4/旭化成社)70部、酸化澱粉(商品名:エースA/王子コーンスターチ社)30部からなる塗液にアンモニア水を加えてpH9.0、粘度40cpsに調整された表面処理剤を使用した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0022】
実施例3
実施例1において、表面処理剤として、アクリル系アルカリ膨潤型合成樹脂ラテックス(商品名:L−1793−15,pH=4/旭化成社)80部、熱水で溶解したポリビニルアルコール(商品名:PVA−117/クラレ社)溶液20部からなる塗液を調製し、さらに水で希釈、アンモニア水を加えてpH9となるように調整して固形分濃度5%の表面処理剤(粘度50cps)を調製した。この塗液を実施例1で使用した新聞用紙用原紙の両面にゲートロールコーターを使用して、乾燥重量で片面あたり0.1g/m2 となるように塗布、乾燥した後、線圧100kg/cmの条件でキャレンダー通紙処理(1ニップ通紙)を行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0023】
実施例4
実施例1において、表面処理剤の固形分濃度を3%とし、片面あたりの乾燥塗布量を0.08g/m2 とした以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0024】
実施例5
実施例3において、表面処理剤の固形分濃度を6%とし、片面あたりの乾燥塗布量を0.2g/m2 とした以外は、実施例3と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0025】
比較例1
実施例1において、表面処理剤として、酸化澱粉(商品名:エースA/前記)100部を90℃の熱水に溶解し、希釈して固形分濃度5%の表面処理剤(塗液)を得た。この塗液を実施例1で使用した原紙と同じ原紙を使用して、その両面にゲートロールコーターを使用して、乾燥重量で片面あたり0.25g/m2 となるように塗布、乾燥した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0026】
比較例2
実施例1において、アクリル系アルカリ膨潤型合成樹脂ラテックスに代えて、ポリアクリルアミド重合体(商品名:サンタックスNP−14/三井東圧化学社)100部からなる塗液を使用し、乾燥重量で片面あたり0.1g/m2 となるように塗布、乾燥した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0027】
比較例3
実施例1において、アクリル系アルカリ膨潤型合成樹脂ラテックスに代えて、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:0696/日本合成ゴム社)100部を使用し、乾燥重量で片面あたり0.1g/m2 となるように塗布、乾燥した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0028】
比較例4
実施例1において、表面処理剤による処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0029】
なお、上記の各実施例や比較例で得られた印刷用新聞用紙について、下記に示す評価試験を行い、得られた結果を表1に示す。
【0030】
〔評価試験〕
(ブランケット紙粉パイリング)
オフセット印刷機(小森 SYSTEM C−20)を使用し、5000部の印刷を行った後、カラー4色刷りを行い、ブランケット非画線部の紙粉の堆積の状態を目視判定した。
○ : 紙粉の発生が認められない。
△ : 紙粉の発生がやや認められる。
× : ブランケット上に紙粉が多く堆積している。
【0031】
(ネッパリ性;ブランケット粘着性)
新聞用紙サンプル2枚を適当な大きさに切り、水に10秒間浸漬した後、2枚を素早く密着させ、カレンダーに線圧100kg/cmで通紙し、24時間室温乾燥した後、引っ張り試験機を用いて、2枚の紙の剥離強度を測定した。数値が大きい程粘着性が強い(ネッパリ性が大きい)。
【0032】
【表1】
Figure 0003817907
【0033】
【発明の効果】
表1より明らかなように、本発明に係る実施例で得られるオフセット印刷用新聞用紙は、ブランケット紙粉パイリングやブランケット貼り付きがなく、紙流れ等の印刷時の走行トラブルの無い印刷操業性に優れるオフセット印刷用新聞印刷用紙を得ることができる。

Claims (2)

  1. 原紙の両面に、表面処理剤を塗布、乾燥してなるオフセット印刷用新聞用紙において、該表面処理剤が固形分比率で30重量%以上のアクリル系アルカリ膨潤型合成樹脂ラテックスを有してなり、かつ、表面処理剤の粘度が10〜100cpsであって、該表面処理剤の塗布量が乾燥重量で片面当たり0.05〜2g/m 2 であることを特徴とするオフセット印刷用新聞用紙。
  2. 表面処理剤の原紙への塗布にあたり、固形分比率で30重量%以上のアクリル系アルカリ膨潤型合成樹脂ラテックスを有する表面処理剤の粘度をアルカリ液で10〜100cpsに調整し、かつ該表面処理剤の塗布量が乾燥重量で片面当たり0.05〜2g/m2 となるように塗布、乾燥することを特徴とする請求項1記載のオフセット印刷用新聞用紙の製造方法。
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