JP3816856B2 - 画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法により画像形成を行う画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機、ファクシミリ、プリンターなどの電子写真法による画像形成装置において採用される現像方法は、デジタル機の普及に伴い、現在、反転現像法が主流となっている。
【0003】
このような有機感光体は、導電性基板上に、電荷発生剤と電荷輸送剤とを含有する感光層を設けたものであり、感光層が電荷発生剤と電荷輸送剤とをバインダー樹脂中に単分散させた単一の層から形成されている単層型のものと、電荷発生剤がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層と電荷輸送剤がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層との積層体から感光層が形成されている積層型のものとがある。近年、オゾン等の放電生成物の生成量を少なくして画像形成を行い得る正帯電型の画像形成装置が注目され、実用化されている。
またそのため、感光体としては、正帯電型の有機感光体が、特に十分な感度、ライフを通じての安定性を発現し得る正帯電単層型有機感光体が注目され、実用されている。
正帯電単層型有機感光体では、電荷輸送剤として正孔輸送剤に加え電子輸送剤が使用される(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−159838号公報
【0005】
上記の有機感光体において、電子輸送剤としては、多くのものが知られており、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水コハク酸、無水フタル酸、3−ニトロ無水フタル酸、4−ニトロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸等のカルボン酸エステル誘導体、フタルイミド、4−ニトロフタルイミド、ナフタルイミド、ベンゼンテトラカルボン酸ジイミド化合物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物等のイミド化合物、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、マロノニトリル等のシアノ化合物、o−ニトロ安息香酸、トリニトロフルオレノン、トリニトリチオキサントン、ジニトロベンゼン、ニジトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン等のニトロ化合物、クロルアニル、ブロモアニル、ベンゾキノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、スチルベンキノン系化合物、ジナフトキノン化合物、アゾキノン化合物等のキノン系化合物などの電子吸引性物質などが使用されている。
【0006】
一方、正孔輸送剤としても多くのものが知られており、例えば次のものが使用されている。
ピレン;
N−エチルカルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−メチル−N−フェニルヒドラジノ−3−メチリデン−9−カルバゾール、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−9−エチルカルバゾール、などのカルバゾール化合物;
N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−10−エチルフェノチアジン;
N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−10−エチルフェノキサジン;
p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−α−ナフチル−N−フェニルヒドラゾン、p−ピロリジノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、1,3,3−トリメチルインドレニン−ω−アルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、p−ジエチルベンズアルデヒド−3−メチルベンズチアゾリノン−2−ヒドラゾン、などのヒドラゾン塩;
2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジゾール;
1−フェニル−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[キノニル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[6−メトキシ−ピリジル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(3)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[レピジル(3)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−4−メチル−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(α−メチル−p−ジエチルアミノスチリル)−3−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−フェニル−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−4−メチル−5−(p−ジエチルアミノフフェル)ピラゾリン、スピロピラゾリン、などのピラゾリン化合物;
2−(p−ジエチルアミノスチリル)−3−ジエチルアミノベンズオキサゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)−4−(p−ジメチルアミノフェニル)−5−(2−クロロフェニル)オキサゾール、などのオキサゾール系化合物;
2−(p−ジエチルアミノスチリル)−6−ジエチルアミノベンゾチアゾールなどのチアゾール系化合物;
ビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタンなどのトリアリ−ルメタン系化合物;
1,1−ビス(4−N,N−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)ヘプタン、1,1,2,2−テトラキス(4−N,N−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)エタン、などのポリアリールアルカン類;
N,N´−ジフェニル−N,N´−ビス(メチルフェニル)ベンジジン、N,N´−ジフェニル−N,N´−ビス(エチルフェニル)ベンジジン、N,N´−ジフェニル−N,N´−ビス(プロピルフェニル)ベンジジン、N,N´−ジフェニル−N,N´−ビス(ブチルフェニル)ベンジジン、N,N´−ビス(イソプロピルフェニル)ベンジジン、N,N´−ジフェニル−N,N´−ビス(第2級ブチルフェニル)ベンジジン、N,N´−ジフェニル−N,N´−ビス(第3級ブチルフェニル)ベンジジン、N,N´−ジフェニル−N,N´−ビス(2,4−ジメチルフェニル)ベンジジン、N,N´−ジフェニル−N,N´−ビス(クロロフェニル)ベンジジンなどのベンジジン系化合物;
フェニレンジアミン誘導体;
ジアミノナフタレン誘導体;
ジアミノフェナントレン誘導体;
トリフェニルアミン;
ポリ−N−ビニルカルバゾール;
ポリビニルピレン;
ポリビニルアントラセン;
ポリビニルアリクジン;
ポリ−9−ビニルフェニルアントラセン;
ピレン−ホルムアルデヒド樹脂;
エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂。
【0007】
上記のような正帯電型感光体を備えた画像形成装置では、一般に、以下のようにして反転現像による画像形成が行われる。
感光体(正帯電型有機感光体)を正極性に一様に主帯電し、所定の画像情報に基づいての光照射により画像露光して静電潜像を形成する。この場合、光照射部が画像部となり、光が照射されない部分が画像のバックグラウンド部となる。
上記で形成された静電潜像を、現像バイアス電圧が印加された状態で反転現像方式により現像し、感光体表面にトナー像を形成する。即ち、現像剤として使用されるトナー粉末は、感光体の帯電極性と同じ正極性に帯電されており、光照射されて電位が低下した部分にトナーが付着する。
このようにして感光体表面に形成され且つ正極性に帯電されているトナー像は、転写ローラや転写用のコロナ帯電器を用い、静電力を利用して転写紙に転写される。
この転写紙は負極性に帯電されているため、正に帯電されている感光体に引き寄せられ紙搬送を妨げる場合があるので、必要に応じて紙分離手段を用いる場合がある。
トナー像が転写した転写紙は、定着装置に導入され、熱、圧力により、トナー像の転写紙表面への定着が行われる。一方、転写終了後においては、感光体表面に残存するトナーがクリーニングされ、さらに必要により除電(除電光の照射)が行われ、これにより、画像形成行程の1サイクルが完了し、次の画像形成が行われる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近では、コスト軽減や資源の再利用のため、転写紙として、安価な紙や再生紙等の低品質の紙が多く利用されるようになってきている。
例えば、正帯電単層型有機感光体を使用し、反転現像方式により画像形成を行う場合において、上記のような低品質の紙を転写紙として用いると、得られる画像品質が短期間で低下し、長期間にわたって良質の画像を得ることが困難となっていた。
【0009】
従って、本発明の目的は、正帯電型有機感光体を使用しての反転現像により画像形成を行う方法において、高品質の転写紙を用いた場合には勿論のこと、低品質の転写紙を用いた場合にも、長期間にわたって安定して良質の画像を形成することが可能な画像形成方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、低品質の転写紙を用いた場合に短期間で画像品質の低下が生じる原因について鋭意研究した結果、転写紙中に充填剤或いは表面処理剤として使用されるタルクに画像品質低下の要因があることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、有機感光体の周囲に、正帯電の帯電手段、露光手段、現像手段、負の電荷を付与する転写手段、及びクリーニング手段が配置され、且つ、必要により前記転写手段に隣接して紙分離手段が配置された反転現像方式の画像形成装置を用い、帯電手段及び露光手段により形成された静電潜像を、現像手段によって現像することにより形成されたトナー像を有する有機感光体表面と転写手段との間に転写紙を通すことによって該転写紙上に画像を形成する画像形成方法において、
前記クリーニング手段は、ポリアミドからなるブラシ材として植毛したファーブラシと、感光体の移動方向に対して該ファーブラシよりも下流側に配置されているクリーニングブレードとから構成されており、
前記有機感光体として、ポリカーボネートからなるバインダー樹脂中に電荷発生剤、正孔輸送剤及び電子輸送剤を分散させてなる単層の感光層を有するものであって、且つ全ての電荷輸送剤が、無機性値/有機性値の比が0.6以下の化合物であるものを使用することを特徴とする画像形成方法が提供される。
【0011】
本発明の画像形成方法においては、
(1)前記ポリカーボネートが、下記式(1):
【化2】
式中、Rは、非置換または置換一価炭化水素基を示し、
xは、1乃至6の整数、
yは、1乃至6の整数、
zは、0乃至200の整数である、
で表される構成単位を0.05乃至1モル%含有している共重合ポリカーボネートであること、
(2)転写紙として再生紙を用いること、
が好適である。
【0012】
本発明において第1の特徴は、クリーニング手段として、ブラシ材が、感光体の最表面層のバインダー樹脂に対して帯電列で正の帯電系列である高分子を植毛したブラシであることにある。
【0013】
即ち、本発明者等の研究によると、低品質の転写紙には、表面処理剤或いは充填剤として多量のタルクが配合されており、反転現像による画像形成を繰り返し行うと、タルクが感光体表面に付着する。このタルクは、マイナスに帯電し易いという性質を有している。
しかるに、例えば、正帯電型の画像形成装置において反転現像を行った場合には、正極性に帯電されているトナー像を転写紙表面に移行するために、負極性のバイアス電位が印加された転写手段(例えば、転写チャージャ、転写ローラ)が使用され、或いは転写紙の背面(トナー像が転写される面とは反対側の面)が負極性にコロナ帯電され、この結果、タルクは負極性に帯電しており、感光体表面(特に非露光部の暗電位部)に対して大きな付着力を示す。一般に、感光体表面に付着したタルクは、クリーニングブレードにより除去されるのであるが、正帯電型の感光体を用いて反転現像を行った場合には、上記のようにタルクが負極性に帯電して感光体表面に強く付着しており、しかも非常に細かい粒子であるため、クリーニングブレードをすり抜けたり、あるいはクリーニングブレードにより感光体表面に擦り付けられてしまい、反転現像による画像形成を繰り返していくうちに、感光体表面にタルクが蓄積し、フィルミングが生じてしまう。このようなタルクのフィルミングが生じると、感光体の表面電位が変化してしまい、良質の画像を得ることが困難となってしまうわけである。
【0014】
しかるに、本発明によれば、ブラシ材が感光体の最表面層のバインダー樹脂(ポリカーボネート)に対して正の摩擦帯電系列である高分子を植毛したブラシであるファーブラシを、好ましくはクリーニングブレードの上流側に配置することにより、タルクのフィルミングを有効に防止することが可能となる。
本発明において、このような正の摩擦帯電系列にあるブラシ材の高分子としてはポリアミドが使用される。ポリアミドは、摩擦帯電極系列がプラス側に大きく偏っているだけでなく、ポリアミド自身が耐摩耗性に優れており、かつ硬度的には低いため感光体に対しての耐傷性ならびに耐摩耗性にも優れている。このため、本発明のブラシ材として極めて好適である。ブラシ材が感光体の最表面層のバインダー樹脂に対して帯電列で正の帯電系列である高分子を植毛したブラシは、感光体との摩擦接触により正極性に帯電する。この結果、負極性に帯電したタルクは、ファーブラシにより感光体表面から引き離されて回収され、或いは感光体表面に残ったタルクも、感光体表面との付着力が低下しているため、クリーニングブレードにより容易に回収されるのである。
帯電系列とは2つの物体を接触させたときの、帯電極性の順列を表す。例えば、物体Aと物体Bを接触(摩擦)させた場合、Aが正極性に帯電、Bが負極性に帯電したとするならば、(+)A>B(−)ということとなる。材料毎にこれらの序列化した物が摩擦帯電系列である。環境によって序列が変わる場合があるが、通常、主な高分子に関して序列は以下の表1に示す通りである。
【表1】
例えば、感光層の最表面層のバインダー樹脂として使用されるポリカーボネートに対して、ポリアミドは大きく帯電系列がプラスに偏っているのがわかる。
本発明がこれらの要件を満たしているかどうか簡単に確認するためには、クリーニングブラシと感光体のみを接触させた状態で、駆動をかけた場合、感光体が負に帯電することを確認すればよい。
【0015】
また、本発明の第二の特徴は、有機感光体の少なくとも表面の感光層中に配合されている全ての電荷輸送剤が、無機性値/有機性値の比が0.6以下の化合物であることである。
【0016】
本発明において、無機性値/有機性値(以下、I/O値と呼ぶことがある)とは、各種有機化合物の極性を有機概念的に取り扱った値であり、例えばKUMAMOTO PHARMACEUTICAL BULLETIN,第1号、第1〜16項(1954年);化学の領域、第11巻、第10号、719〜725項(1957年);フレグランスジャーナル、第34号、第97〜111項(1979年);フレグランスジャーナル、第50号、第79〜82項(1981年);などの文献に詳細に説明されており、炭素(C)1個を有機性20とし、それに対し各種極性基の無機性、有機性の値を下記の表2の如く定め、無機性値の和と有機性値の和を求め両者の比をとった値を意味する。
【0017】
【表2】
尚、上記の表2において、Rは、主にアルキル基を示し、φは、主にアルキル基もしくはアリール基を示す。
【0018】
I/O値の概念を簡単に説明すると、化合物の性質を、共有結合性を表わす有機性基と、イオン結合性を表わす無機性基とに分け、すべての有機化合物を有機軸と無機軸と名付けた直行座標上の1点ずつに位置づけて示すものである。
この場合において、無機性値とは、有機化合物が有している種々の置換基や結合等の沸点への影響力の大小を、水酸基を基準に数値化したものである。具体的には、直鎖アルコールの沸点曲線と直鎖パラフィンの沸点曲線との距離を炭素数5の付近で取ると約100℃となるので、水酸基1個の影響力を数値で100と定め、この数値に基づいて、各種置換基或いは各種結合などの沸点への影響力を数値化した値が、有機化合物が有している置換基の無機性値である。例えば、上記表1に示されている通り、−COOH基の無機性値は150であり、2重結合の無機性値は2である。従って、ある種の有機化合物の無機性値とは、該化合物が有している各種置換基や結合等の無機性値の総和を意味する。
一方、有機性値とは、分子内のメチレン基を単位とし、そのメチレン基を代表する炭素原子の沸点への影響力を基準にして定めたものである。即ち、直鎖飽和炭化水素化合物の炭素数5〜10付近での炭素1個加わることによる沸点上昇の平均値は20℃であるから、これを基準に、炭素原子1個の有機性値を20と定め、これを基礎として、各種置換基や結合等の沸点への影響力を数値化した値が有機性値である。例えば、上記表1に示されている通り、ニトロ基(−NO2)の有機性値は70である。従って、ある種の有機化合物の無機性値とは、該化合物が有している各種置換基や結合等の有機性値の総和を意味する。
【0019】
例えば、下記式(2a)で表される化合物は、本発明において使用し得る電荷輸送剤(電子輸送剤)の代表例であるが、この化合物I/O値は、以下のようにして算出される。
【化3】
【0020】
有機性因子
・有機性20の炭素原子を30個有している。
・有機性-20のtert分岐(アルキル基)を2個有している。
よって、有機性値は20×30+ (-20)×2 =560 となる。
無機性因子
・無機性が60のナフタレン環を2個有している。
・無機性が65のケトン(>CO)を2個有している。
・無機性が2の二重結合(ナフタレン環部を除く)を1個有している。
よって、無機性値は 60×2+65×2+2×1 = 252 となる。
従って、この化合物のI/O値は、
252/560 = 0.4500
となる。
【0021】
上記のようにして算出されるI/O値は、これが0に近いほど非極性(疎水性、有機性の大きな)の有機化合物であることを示し、大きいほど極性(親水性、無機性の大きな)の有機化合物であることを示す。
本発明では、用いる正帯電型有機感光体の感光層表面に配合されている電荷輸送剤は、全て、上述したI/O値が0.6以下である。即ち、例えば、正帯電型有機感光体を用いて反転現像を行った場合には、タルクやカオリンといった転写紙に含まれる物質が感光体表面に付着しにくくなり、長期間にわたって高品位な画像を得ることができるのである。例えば、後述する実施例で示されているように、電荷輸送剤(電子輸送剤)としてI/O値が0.6以下の化合物が使用されて単層型感光層が形成されている有機感光体を用いた場合には(実施例1〜7)では、タルクのフィルミングは、10万枚の耐刷でも生じなかったが、I/O値が0.6よりも大きな化合物を電荷輸送剤(電子輸送剤)として使用している場合には(比較例1〜8)では、10万枚に到達する以前にタルクのフィルミングが発生しており、I/O値が大きな化合物を電子輸送剤として用いた場合ほど、タルクのフィルミングが早く生じている(表3参照)。
【0022】
このように、I/O値が0.6以下の化合物を電荷輸送剤として使用することにより、タルクの付着が生じにくくなることは現象として見出されたものであり、その正確な理由は不明であるが、本発明者等は、以下のように推定している。即ち、上述した範囲のI/O値を有する電荷輸送剤は、極性の小さな(有機性の大きな)ものであるため、タルクのごとき無機化合物に対する親和性が極めて乏しい。従って、このようなI/O値を有する電荷輸送剤を感光層の表面層に分布させて露出させておくことにより、タルクの感光体表面への付着が生じにくくなると考えられる。
【0023】
このように有機感光体を用いて転写手段もしくは紙分離手段において、少なくとも一方が負極性の電位が印加することで画像形成を行う本発明の画像形成装置では、上記のような電荷輸送剤が使用されている有機感光体の使用により、感光体表面へのタルクの付着が生じにくく、しかも感光体の最表面層のバインダー樹脂に対して帯電列で正の帯電系列である高分子を植毛したブラシの使用により、付着したタルクを容易にクリーニングすることができるという顕著な利点を有しており、長期間にわたって画像形成を繰り返し行ってもタルクのフィルミングが有効に防止され、安定して良好な画質の画像を得ることができ、耐久性が極めて優れている。
【0024】
【発明の実施形態】
本発明の画像形成装置の全体構造の概略を図1に示す。以下の発明の形態は正帯電反転現像方式で感光体は正帯電単層型感光体に関してものだが本発明はこれに限定されるものではない。
この画像形成装置は、正帯電型の有機感光体ドラム1を備えており、この有機感光体ドラム1の周囲には、主帯電を行うための帯電手段2、画像露光を行うための光学系3、現像装置4、転写手段5、クリーニング手段6及び除電手段7が配置されており、感光体ドラム1と転写手段との間に転写紙(図示せず)が通過し、この転写紙上に、感光体ドラム1の表面に形成されたトナー像が転写されるようになっている。さらに、図示されていないが、転写紙の排出側経路には、定着装置が設けられており、転写紙上に形成されたトナー像の定着が行われるように構成されている。
【0025】
帯電装置2としては、コロトロン、スコロトロン等のコロナ帯電器や、導体ローラなどが使用され、画像形成に際しては、この帯電装置により、感光体ドラム1の表面が正極性に主帯電される。かかる主帯電は、その表面電位が+200V〜+1000Vの範囲となる程度に行われる。
【0026】
上記の主帯電後に、光学系3により、所定の画像情報に基づいて、レーザ光等の光を照射することにより画像露光が行われる。この光照射により、光が照射された部分の電位が低下し、静電潜像が形成される。
【0027】
現像装置4は、例えば内部に多数の磁極を有するマグネットを備えた現像ローラを備えており、この現像ローラにより、正極性に帯電されたトナーを含有する現像剤を、例えば穂切ブレード等により厚み調整して感光体ドラム1表面に供給し、反転現像方式により上記静電潜像を現像し、感光体ドラム1表面にトナー像を形成する。即ち、光が照射されて電位が低下した部分に正帯電したトナーが付着してトナー像が形成される。
現像剤としては、非磁性或いは磁性のトナーからなる一成分系現像剤、非磁性或いは磁性のトナーと磁性キャリヤ(例えば鉄粉、フェライトなど)とからなる二成分系現像剤が使用される。現像は、接触現像で行ってもよいし、非接触現像で行ってもよい。また、現像に際しては、一般に、+50〜900V程度の現像バイアス電位が現像ローラに印加される。
【0028】
転写手段5としては、転写ローラやコロナ帯電器が使用される。
転写ローラを用いた場合には、この転写ローラに負極性の転写バイアス電位を印加し、この転写ローラと感光体ドラム1との間に転写紙を通過させることにより、プラス帯電しているトナー像を転写紙上に転写する。
一方、コロナ帯電器を用いた場合には、転写紙の背面を負極性に帯電させ、転写紙の表面にプラス帯電しているトナー像を転写紙上に転写する。この場合には、転写用のコロナ帯電器とセットで分離用の交流コロナ帯電器を使用することが好ましい。即ち、トナー像を転写紙表面に転写した後に、転写紙の背面を交流コロナ帯電することにより、転写紙を感光体ドラム1表面から引き離し、転写紙の感光体ドラム1への巻き付きを防止する。
【0029】
上記の転写終了後、トナー像が転写された転写紙は、図示されていない定着装置内に導入され、熱及び圧力により、トナー像が転写紙表面に定着される。
【0030】
一方、転写終了後の感光体ドラム1は、クリーニング手段6により、クリーニングされ、表面に残存するトナー及び表面に付着したタルクの除去が行われる。このクリーニング手段6は、クリーニングブレード10とファーブラシ11とからなっており、ファーブラシ11は、感光体ドラム1の回転方向に対して、クリーニングブレード10よりも上流側に配置されており、ファーブラシ11により表面に付着したタルクをクリーニングした後に、クリーニングブレード10によるクリーニングが行われるようになっている。本発明において、クリーニング手段はファーブラシだけでのクリーニングも適用範囲内であるが、クリーニングブレードを有さないファーブラシによるクリーニングでは感光体に付着したトナーを回収効率が低いことと、また、十分な回収効率を確保するためにファーブラシの接触圧を上げると、駆動の際、感光体に対して傷が入りやすくなってしまうために、クリーニングブレードも併設することが好ましい。即ち、感光体の最表面層のバインダー樹脂に対して帯電列で正の帯電系列である高分子を植毛したブラシ以外のブラシを用いた場合、もしくはクリーニングブラシを有さない場合は、感光体ドラム1表面にタルクが付着した状態でブレードクリーニングが行われることになり、タルクが感光体ドラム1表面に擦り付けられてしまい、感光体ドラム1表面に強固に付着して、そのクリーニングが困難となってしまうからである。
【0031】
また、本発明において、ファーブラシ11のブラシ材11aは、感光体の最表面層のバインダー樹脂に対して帯電列で正の帯電系列である高分子を植毛したブラシであることが必要である。材質としてはポリアミドが好ましい。
ポリアミドは、摩擦帯電系列がプラス側に大きく偏った樹脂であり、感光体との摩擦接触により、タルクの帯電極性(マイナス)とは対極のプラスに摩擦帯電することができる。これにより、マイナスに帯電したタルクは、ファーブラシ11のブラシ材11aにより感光体ドラム1表面から容易に回収されるのである。このようなポリアミドとしては、これに限定されるものではないが、例えばナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6/6・6共重合体、ナイロン6・10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン13等を挙げることができる。
また、上記のポリアミド製のブラシ材11aは、非導電性であることが好ましい。即ち、感光体ドラム1との摩擦接触によりブラシ材11aは、プラスに摩擦帯電するが、非導電性であるときには、この摩擦電荷はグラウンドに逃げず、有効に保持されるからである。即ち、ブラシ材が導電性であると、ファーブラシ11の軸がグラウンドされた機枠に保持されているため、摩擦電荷がグラウンドに逃げてしまい、摩擦帯電性が低下し、タルクの除去効果が低下してしまうおそれがあるが、非導電性とすることにより、このような不都合を有効に回避することができる。尚、このような非導電性は、一般に、ブラシ材の体積抵抗が1014Ω以上であればよい。
また、ブラシ材11aの径や密度は、適度な柔軟性を有し且つ感光体ドラム1からのタルクの掃き取りを有効に行い得るように、用いるブラシ材の材質に応じて適宜設定される。
【0032】
また、クリーニングブレード10としては、従来公知のもの、例えばポリウレタン等のゴムブレードが使用され、感光体ドラム1表面に圧接して設けられ、これにより、感光体ドラム1表面に残存するトナー及び掃き取られずに残ったタルクや再付着したタルクが掻き取られる。
【0033】
上記のようにして感光体ドラム1表面のクリーニングが行われた後、除電手段7により感光体ドラム1表面の除電が行われ、これにより、画像形成の一サイクルが完了する。除電手段としては、除電用のコロナ帯電器、除電用の帯電ローラ或いは除電用ランプなどが使用される。
【0034】
以上、正帯電反転現像方式の画像形成装置を例にとって本発明を説明したが、転写手段もしくは紙分離手段において、少なくとも一方が負極性の電位が印加された画像形成および紙搬送が行われる画像形成装置であれば、負帯電型の画像形成装置であっても良い。
例えば、負帯電型の正転現像型画像形成装置の場合、転写手段は負極性の電位が印可されるので、負極性に帯電したタルクは、負帯電型感光体の露光部(明電位部)に付着することとなる。また、負帯電型の反転現像型画像形成装置の場合においては、転写手段は正極性の電位が印可されるが、必要に応じて、紙分離手段として負極性の電位が印可されるものがある。
これらに関しては本発明の範囲内となる。
ただし、通常、「露光部面積<非露光部面積」であることと、「紙分離手段の電位の印可量<転写手段の電位の印可量 」であることから、本発明の効果を最大限に引き出すのは、正帯電反転現像方式の画像形成装置に関してであり、加えて、それに備え付けられる有機感光体は、感度およびライフを通じての安定性の面から正帯電単層型感光体であることが好ましい。
【0035】
[有機感光体ドラム]
−電荷輸送剤−
本発明において、有機感光体ドラム1としては、感光層の少なくとも表面層に電荷輸送剤が分散されているものが使用され、この限りにおいて、有機感光体ドラム1表面に形成される感光層は、電荷輸送剤(CTM)と電荷発生剤(CGM)とを含有する単一の層からなる単層型感光層であってもよいし、電荷発生剤を含有する電荷発生層(CGL)と電荷輸送剤を含有する電荷輸送層(CTL)とからなる積層型感光層であってもよい。この場合において、積層型感光層においては、少なくとも上層が電荷輸送層となっているものが使用される。
【0036】
電荷輸送剤としては、単層型においては、電子輸送剤と正孔輸送剤とを組み合わせで使用するのがよい。
既に述べた通り、本発明で用いる電荷輸送剤は、電子輸送剤及び正孔輸送剤の何れも、I/O値が0.6以下の化合物が使用される。
【0037】
例えば電子輸送剤としては、先に述べた通り、種々のものが知られているが、これらの中でも、I/O値が0.6以下の化合物を選択して、単独または組み合わせで使用する。このようなI/O値を有する電子輸送剤としては、これに限定されるものではないが、以下のものを好適に使用することができる。
【0038】
前記式(2a)で表される化合物
I/O値=0.4500
【0039】
下記式(2b)で表されるナフトキノン誘導体
I/O値=0.5833
【化4】
【0040】
下記式(2c)で表されるジフェノキノン誘導体
I/O値=0.3375
【化5】
【0041】
下記式(2d)で表されるジフェノキノン誘導体
I/O値=0.4050
【化6】
【0042】
下記式(2e)で表されるアゾキノン誘導体
I/O値=0.3956
【化3】
【0043】
下記式(2f)で表されるアゾキノン誘導体
I/O値=0.3262
【化8】
【0044】
下記式(2g)で表されるスチルベンキノン誘導体
I/O値=0.3727
【化9】
【0045】
同様に、正孔輸送剤もI/O値が0.6以下の化合物であり、これに限定されるものではないが、以下のものを好適に使用することができる。
【0046】
下記式(3a)で表されるアミン誘導体
I/O値=0.2394
【化10】
【0047】
下記式(3b)で表されるアミン誘導体
I/O値=0.2707
【化11】
【0048】
下記式(3c)で表されるアミン誘導体
I/O値=0.3177
【化12】
【0049】
下記式(3d)で表されるアミン誘導体
I/O値=0.3359
【化4】
【0050】
下記式(3e)で表されるアミン誘導体
I/O値=0.2875
【化14】
【0051】
下記式(3f)で表されるアミン誘導体
I/O値=0.4429
【化5】
【0052】
−電荷発生剤−
感光層形成に使用する電荷発生剤としては、それ自体公知のもの、例えば、セレン、セレン−テルル、アモルファスシリコン、ピリリウム塩、アゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、アンサンスロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジコ系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料等が例示され、所望の領域に吸収波長域を有するよう、一種または二種以上混合して用いられる。これらの中でも、フタロシアニン顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料等が好適である。さらに具体的には感度の面から、α型、Y型のチタニルフタロシアニン、X型、?型の無金属フタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン等が挙げられる。
【0053】
−バインダー樹脂−
本発明において、前述した電荷輸送剤を含有する感光層は、ポリカーボネートをバインダー樹脂として形成されるが、ポリカーボネートとして、特に下記式(1):
【化6】
式中、Rは、非置換または置換一価炭化水素基を示し、
xは、1乃至6の整数、
yは、1乃至6の整数、
zは、0乃至200の整数である、
で表されるシロキサンに由来する構成単位を含有している共重合ポリカーボネートを用いることが好適である。即ち、このようなシロキサンに由来する構成単位を有する共重合ポリカーボネートは、高い表面エネルギーを有している。従って、このようなバインダー樹脂を用いて形成されている感光層では、タルクの付着が一層生じにくくなっているからである。
尚、上記の式(1)において、基Rが示す非置換一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、フェニルエチル基等のアラルキル基等を挙げることができる。また、これらの基が有する置換基としては、特にフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子が好適である。
また、上記のシロキサンに由来する構成単位の含有量は、0.05乃至1モル%の範囲にあることが好適である。かかる構成単位の含有量が上記範囲よりも多いと、電荷発生剤や電荷輸送剤などの分散性が低下したり、溶媒に対する溶解性や分散性も低下するおそれがあり、一方、上記範囲よりも少ないと、満足すべきタルクの付着防止効果を得ることが困難となるためである。
【0054】
また、上記のようなシロキサン由来の構成単位以外の他の構成単位は、従来公知のポリカーボネートに含まれているもの(例えばビフェニルやビスフェノールなどに由来する炭酸エステル単位)でよいが、本発明で用いるバインダー樹脂は、シロキサン由来の構成単位と共に、特に下記式(4):
【化17】
式中、
R1は、水素原子、またはアルキル基(特に炭素数4以下の低級アルキル基を示し、
環Zは、飽和脂肪族の5員環または6員環を示す、
で表される構成単位を、例えば70モル%以上含有していることが好ましい。このような式(4)で表される構成単位を含有する共重合ポリカーボネートは、耐摩耗性に優れているという特性を有しており、このようなバインダー樹脂を用いて形成された感光層を有する有機感光体を用いた場合に、本発明の利点は、特に顕著なものとなる。
【0055】
即ち、画像形成を長期間にわたって繰り返し行うと、クリーニングブレード等との摩擦により、感光層が摩耗していくため、耐久性の点で、耐摩耗性に優れたバインダー樹脂を用いて感光層を形成することが望まれる。しかしながら、耐摩耗性の高いバインダー樹脂で形成された感光層は、耐久性に優れている反面、タルクのフィルミングを生じ易いという欠点がある。摩耗し易い感光層であれば、タルクが付着したとしても、感光層の摩耗により、付着したタルクも取り除かれるが、感光層が摩耗しにくければ、このような摩耗によるタルクの除去効果が期待できないためである。
しかるに、本発明によれば、前述した特定のブラシ材11aを有するファーブラシ11の使用や特定の電荷輸送剤の使用により、タルクの付着やフィルミングが有効に抑制されているため、上記のような耐摩耗性に優れたバインダー樹脂を用いて感光層を形成した場合にも、タルクのフィルミングを有効に抑制することができ、感光層の耐久性を有効に向上させることが可能となるわけである。
【0056】
上述したバインダー樹脂の分子量は、その種類によっても異なるが、一般に粘度平均分子量(PC−A換算)で1万乃至20万、好ましくは18,000乃至80,000の範囲にあるのがよい。
【0057】
−単層型感光層−
本発明において、有機感光体ドラム1上に形成される単層型感光層は、電荷発生剤(CGM)と、前述した範囲のI/O値を有する電荷輸送剤(CTM)を前述したバインダー樹脂中に分散させることにより形成される。
かかる単層型感光層において、電荷発生剤(CGM)は、樹脂固形分100重量部当たり0.1乃至20重量部、特に0.5乃至10重量部の範囲の量で感光層中に含有されるのがよく、一方、電荷輸送剤(CTM)の内、電子輸送剤(ET)は、樹脂固形分100重量部当たり5乃至200重量部、特に10乃至100重量部の範囲の量で感光層中に含有されるのがよい。
また、電子輸送剤(ET)と正孔輸送剤(HT)とは、重量比で、ET:HT=10:1乃至1:10、特に1:5乃至13:1の範囲にあるのが最もよい。かかる単層型感光層において、その初期厚みは、一般に2乃至100μm、特に5乃至50μmの厚みに設けることが、電子写真学的特性の点及び耐久寿命の点で好ましい。
本発明は、単層型感光層を有する感光体を用いた場合に最も優れた効果が発現する。即ち、単層型感光層は、正帯電型で十分な感度とライフを通じての安定性を有するためである。
【0059】
−感光層の作成−
上述した感光層の形成に用いる感光層形成用組成物には、電子写真学的特性に悪影響を及ぼさない範囲で、それ自体公知の種々の配合剤例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、UV吸収剤、軟化剤、表面改質剤、消泡剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合させることができる。
【0060】
また、感光層の表面側の層に、感光層の耐久性向上を目的に、
全固形分当たり0.1乃至50重量%の立体障害性フェノール系酸化防止剤を配合してもよい。
【0061】
感光層を設ける導電性基板としては、導電性を有する種々の材料が使用でき、例えば、アルミニウム、銅、錫、白金、金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属単体や、上記金属が蒸着またはラミネートされたプラスック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化錫、酸化インジウム等で被覆されたガラス、カーボンブラック等の導電性微粒子が分散されたプラスチック材料等が例示される。は本発明の感光体では、通常のアルミニウム素管が好適に用いられ、引き抜き管をそのまま用いても、また引き抜いた後、切削加工や鏡面加工したものを用いてもどちらもよく使用される。さらに、それらに膜厚が1乃至50μmとなるようにアルマイト処理を施した素管を用いても良い。
【0062】
感光体を形成させるには、電荷発生剤、電子輸送剤及び結着樹脂の組み合わせ、電荷発生剤と結着樹脂との組み合わせ、或いは電子輸送剤とバインダー樹脂等の組み合わせを、従来公知の方法、例えば、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェイカーあるいは超音波分散器等を用いて塗布用組成物を調製し、従来公知の塗布手段により塗布し、必要により積層し、乾燥すればよい。
【0063】
塗布液を形成するのに使用する溶剤としては、種々の有機溶剤が使用でき、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等、種々の溶剤が例示され、一種または二種以上混合して用いられる。塗布液の固形分濃度は、一般に5乃至50%とするのがよい。
【0064】
また、上述した単層の感光層は、これを直接導電性基板上に形成してもよいが、下引き層を介して形成することもできる。
このような下引き層としては、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリアミド、メラミン、フェノール、セルロース、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリスチレン等の高分子膜を例示することができる。下引き層の厚みは、0.01μm乃至20μmの範囲が好ましい。下引き層に導電性を付与するために、金、銀、アルミ等の金属粉末、酸化チタン、酸化スズ等の酸化金属粉末、カーボンブラック等の導電性微粉末を分散させることもできる。またこれら酸化金属微粉末はポリジメチルシロキサン等の有機の表面処理、アルミナ等の異種金属酸化物等の無機の表面処理をしても良い。
【0065】
【実施例】
本発明を次の実験例で説明する。
以下の実験例において、感光層形成用の材料として、以下のものを用いた。
【0066】
バインダー樹脂:以下のResin-1(粘度平均分子量50,000)
【化18】
【0067】
【0068】
(実施例1)
電子輸送剤(ETM)として、前述した式(2a)で表されるジナフチルキノン誘導体(I/O値:0.4500)を使用し、下記処方により、前述したバインダー樹脂(resin-1)、電荷発生剤、正孔輸送剤、界面活性剤、及びレベリング剤(ジメチルシリコンオイル)と共に、テトラヒドロフランに超音波分散機にて混合分散して単層型感光層用塗布液を調製した。
バインダー樹脂(resin-1): 100重量部
電荷発生剤: 3.5重量部
正孔輸送剤(I/O値:0.2394): 50重量部
電子輸送剤(I/O値:0.4500): 40重量部
界面活性剤: 5重量部
レベリング剤: 0.1重量部
テトラヒドロフラン(溶媒): 750重量部
上記の塗布液をアルミ素管に塗布した後、120℃で40分間熱風乾燥することにより膜厚30μmの単層型感光層を備えた感光体ドラムを作製した。
【0069】
(実施例2)
電子輸送剤(ETM)として、前述した式(2b)で表されるナフトキノン誘導体(I/O値=0.5833)を用いた以外は、実施例1と同様にして、単層型感光層を備えた感光体ドラムを作製した。
【0070】
(実施例3)
電子輸送剤(ETM)として、前述した式(2c)で表されるジフェノキノン誘導体(I/O値=0.3375)を用いた以外は、実施例1と同様にして、単層型感光層を備えた感光体ドラムを作製した。
【0071】
(実施例4)
電子輸送剤(ETM)として、前述した式(2d)で表されるジフェノキノン誘導体(I/O値=0.4050)を用いた以外は、実施例1と同様にして、単層型感光層を備えた感光体ドラムを作製した。
【0072】
(実施例5)
電子輸送剤(ETM)として、前述した式(2e)で表されるアゾキノン誘導体(I/O値=0.3630)を用いた以外は、実施例1と同様にして、単層型感光層を備えた感光体ドラムを作製した。
【0073】
(実施例6)
電子輸送剤(ETM)として、前述した式(2f)で表されるアゾキノン誘導体(I/O値=0.3262)を用いた以外は、実施例1と同様にして、単層型感光層を備えた感光体ドラムを作製した。
【0074】
(実施例7)
電子輸送剤(ETM)として、前述した式(2g)で表されるスチルベンキノン誘導体(I/O値=0.3727)を用いた以外は、実施例1と同様にして、単層型感光層を備えた感光体ドラムを作製した。
【0075】
(比較例1〜8)
電子輸送剤(ETM)として、下記式(H−1)〜(H−8)で表される化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、単層型感光層を備えた感光体ドラムを作製した。
【0076】
ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体(I/O値=0.7656)
【化19】
【0077】
ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体(I/O値=1.1364)
【化20】
【0078】
ベンゼンテトラカルボン酸ジイミド誘導体(I/O値=0.7946)
【化21】
【0079】
ナフタレンジカルボン酸イミド誘導体(I/O値=0.8023)
【化22】
【0080】
ナフトキノン誘導体(I/O値=0.6196)
【化23】
【0081】
ナフトキノン誘導体(I/O値=0.6406)
【化24】
【0082】
ベンゾキノン誘導体(I/O値=0.6042)
【化25】
【0083】
ベンゾキノン誘導体(I/O値=0.9063)
【化26】
【0084】
(実験)
実施例1〜7及び比較例1〜8で作製された単層型有機感光体を、京セラミタ製デジタル複写機「Creage 7340」の改造機(主帯電器としてスコロトロン(正帯電)、転写手段として負極性の電荷を印可する転写チャージャ、及び現像剤として二成分系磁性現像剤を使用)に装着した。
また、上記改造機には、ナイロン製の非導電性ブラシ(体積抵抗1014Ω−cm以上)を有するファーブラシを図1に示されているようにクリーニングブレードと共に取り付けた。
転写紙として、タルクを2〜5重量%含有する低品位の紙(A4サイズ)を使用し、主帯電電位を+700V、現像バイアス電圧を+550Vに設定して、転写紙を通して反転現像による画像形成サイクルを繰り返し行い、タルクのフィルミングが行うまでの耐刷枚数を測定した。その結果を表3に示す。
尚、実施例1〜7で作製された感光体を用いた場合には、10万枚の画像形成サイクルを繰り返したときにもフィルミングは生じていなかった。
さらに比較のために、ファーブラシを、ポリプロピレン製の非導電性ブラシ(体積抵抗107〜1010Ω−cm)を有するものに取り換えて、上記と同じ試験を行い、その結果を表3に併せて示した。
【0085】
【表3】
【0086】
【発明の効果】
本発明によれば、有機感光体を使用し、反転現像方式を利用して画像形成する画像形成装置において、転写紙に由来するタルクの付着及びタルクに起因する表面電位の低下を有効に防止することができる。従って、タルクの付着が多くみられる低品質の転写紙を用いて画像形成を行った場合にも、長期間にわたって安定して良質の画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成装置の構造を示す概略図。
Claims (3)
- 有機感光体の周囲に、正帯電の帯電手段、露光手段、現像手段、負の電荷を付与する転写手段、及びクリーニング手段が配置され、且つ、必要により前記転写手段に隣接して紙分離手段が配置された反転現像方式の画像形成装置を用い、帯電手段及び露光手段により形成された静電潜像を、現像手段によって現像することにより形成されたトナー像を有する有機感光体表面と転写手段との間に転写紙を通すことによって該転写紙上に画像を形成する画像形成方法において、
前記クリーニング手段は、ポリアミドからなるブラシ材として植毛したファーブラシと、感光体の移動方向に対して該ファーブラシよりも下流側に配置されているクリーニングブレードとから構成されており、
前記有機感光体として、ポリカーボネートからなるバインダー樹脂中に電荷発生剤、正孔輸送剤及び電子輸送剤を分散させてなる単層の感光層を有するものであって、且つ全ての電荷輸送剤が、無機性値/有機性値の比が0.6以下の化合物であるものを使用することを特徴とする画像形成方法。 - 前記転写紙として再生紙を使用する請求項1または2に記載の画像形成方法。
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