JP3816611B2 - 外科用処置具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内視鏡検査や内視鏡下外科手術に用いられる鉗子等の外科用処置具に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、内視鏡観察下での外科手術が盛んに行われている。こうした手術ではモニターに表示された内視鏡画像を見ながら体腔内に挿入した処置具により各種の処置を行う。この際に用いる処置具(把持鉗子)は、長尺な挿入部の先端に開閉自在な把持部を設け、挿入部の基端にはハンドルを備えた手元操作部を設け、ハンドルと把持部を挿入部内に挿通した長尺な操作軸を介して連結したものである。そして、手元操作部のハンドルで体外から先端の把持部を開閉操作するようになっている。
【0003】
この種の処置具は挿入部の軸長がかなり長いために、手元操作部のハンドルに加える操作力と、先端の把持部により体組織に与える力とは厳密に対応していない。このため、ハンドルに必要以上の力を加えてしまう傾向にある。本来、内視鏡下外科手術は患者に対する侵襲を低減することを目的とするために必然的にその挿入部、及び操作軸の太さ(外径)は制限を受け、強度面においてある限界がある。
さらに、このような処置具に大きな操作力を加えると先端の把持部が破損したり変形したりし易く、破損すると、その破損部品は体腔内に脱落し、内視鏡視下で体外に摘出することは非常に困難なものとなる。また、先端把持部が変形すると、体腔内からの処置具の抜去が困難となり、挿入孔を広げる等の新たな処置が必要になる。
【0004】
これらの問題を解決するために、例えばUSP5,395,375では、先端作動部(鉗子部)と作動操作手段とを連結する操作軸の途中部分に、少なくとも2つの平行に相対する平坦な表面を有する板状の折れ易いリンク部を設け、操作軸に大きな過剰な操作力が加えられたとき、このリンク部が先端部より先に破断し、これにより先端部の破損を未然に防止するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
(従来技術の欠点)
USP5,395,375によれば、破断しやすいリンク部は板状の部材に略円形状の孔を切り欠いて形成したものである。しかし、このような形状ではその部分の破断強度を正確に設定することが難しく、また、変形も生じ易いために安定した破断強度を得るのが困難である。さらに、板状の部材であるために、ハンドル操作の際、板面方向に力が加えられると、その部分が容易に疲労破壊を起こす等、繰り返して使用する上での耐久性がないという欠点もあった。
(発明の目的)
本発明は前述した課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、繰り返し使用に対する耐久性があり、脆弱部に変形が起き難く、安定した破断強度を得ることができ、より安全性の高い安全保証機構を備えた外科用処置具を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段および作用】
前記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、近位端と遠位端を有する管状部材と、前記管状部材の遠位端に結合された処置作業手段と、前記管状部材の近位端に結合された操作手段と、前記管状部材の管路内に前記管状部材の軸方向に進退可能に挿入され、前記操作手段により前記軸方向へ移動させられるときの動きを前記処置作業手段に伝える操作ロッドと、前記操作ロッドの近位端に形成された孔内に挿入される、前記操作ロッドに結合された結合部と、前記結合部よりも近位端側に形成され、前記操作ロッドに加わる第1の引張り力により破損する脆弱部と、前記脆弱部よりも近位端側に形成され、前記孔の内面に密着して嵌合される固定部とを含み、前記結合部と前記脆弱部と前記固定部を一体に形成した、前記操作手段に接続される結合部材と、を具備し、前記第1の引張り力は、前記操作手段により前記操作ロッドを引張り操作した場合、前記処置作業手段が破損する第2の引張り力と、前記操作ロッドが破損する第3の引張り力に比べて小さいことを特徴とする外科用処置具である。
請求項2に係る発明は、近位端と遠位端を有する管状部材と、前記管状部材の遠位端に結合された処置作業手段と、前記管状部材の近位端に結合された操作手段と、
前記管状部材の管路内に前記管状部材の軸方向に進退可能に挿入され、前記操作手段により前記軸方向へ移動させられるときの動きを前記処置作業手段に伝える操作ロッドと、前記操作ロッドの近位端に形成された、雌ねじ部を有した孔内に挿入される、前記雌ねじ部にねじ込まれる雄ねじ部と、前記雄ねじ部よりも近位端側に形成され、前記雄ねじ部の谷の径より小径に形成され前記操作ロッドに加わる第1の引張り力により破損する脆弱部となる小径部と、前記小径部よりも近位端側に形成され、前記孔の内面に密着して嵌合される固定部とを含み、前記雄ねじ部と前記小径部と前記固定部を一体に形成した、前記操作手段に接続される結合部材と、を具備し、前記第1の引張り力は、前記操作手段により前記操作ロッドを引張り操作した場合、前記処置作業手段が破損する第2の引張り力と、前記操作ロッドが破損する第3の引張り力に比べて小さいことを特徴とする外科用処置具である。
請求項3に係る発明は、近位端と遠位端を有する管状部材と、前記管状部材の遠位端に結合された処置作業手段と、前記管状部材の近位端に結合された操作手段と、
前記管状部材の管路内に前記管状部材の軸方向に進退可能に挿入され、互いに連結される前方の操作ロッドと後方の操作ロッドを有し、一方の操作ロッドの連結端には前記各操作ロッドの外径以下の幅の平板部が突設され、他方の操作ロッドの連結端には前記平板部を嵌め込むスリットが形成され、前記スリットを形成した前記操作ロッドには前記スリットに嵌め込まれた前記平板部を貫通するとともに前記操作ロッドに加わる第1の引張り力により破損するピンとを含み、前記操作手段により前記軸方向へ移動させられるときの動きを前記処置作業手段に伝える伝達手段と、前方の操作ロッドと後方の操作ロッドにわたり前記ピンを含む領域に被嵌して前記領域を密に覆う嵌合部を有したパイプ状の保護部材と、を具備し、前記第1の引張り力は、前記操作手段により前記伝達手段を引張り操作した場合、前記処置作業手段が破損する第2の引張り力と、前記伝達手段が破損する第3の引張り力に比べて小さいことを特徴とする外科用処置具である。
【0007】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
図1乃至図4を参照して、本発明の第1実施形態に係る外科用処置具を説明する。
図1は内視鏡下外科手術に用いられる外科用処置具の一例の把持鉗子1の全体を概略的に示す外観図である。この把持鉗子1は直管シースから形成した硬性の挿入部2を有してなり、挿入部2の先端には処置作業手段としての把持部3が設けられている。挿入部2の基端部には操作部接続部材5を介して操作手段としての操作部6が取り付けられている。
【0008】
挿入部2の管腔には操作手段の動きを先端側の処置作業手段に伝える伝達手段としての操作ロッド7が前後に移動自在に配設されている。操作ロッド7は先端側の把持部3と手元側の操作部6とを連結し、操作部6での操作を受け、その操作力を先端の把持部3に伝える伝達手段を構成している。
【0009】
把持部3は図1に示す如く、一対の把持部材11a,11bがリンク機構12を介して開閉される形式のものであり、図2で示す如くのものであってもよい。この他に後述する実施形態でのものであってもよい。図2に示す形式の把持部3は次のような構造になっている。すなわち把持部3は挿入部2の先端チップ13のU字アームに取着された支点ピン14に対して一対の把持部材11a,11bを開閉自在に枢着してなり、各把持部材11a,11bの基端にはそれぞれ開閉用駆動ピン15を設けると共に、その開閉駆動ピン15を操作ロッド7の先端連結部材16の両面に設けた略円弧状のカム溝17にそれぞれ個別的に嵌め込んで係合させたものである。カム溝17は反対向きで挿入部2の軸方向に対して傾斜している。
【0010】
そして、操作ロッド7がその軸方向にスライドしたとき、カム溝17に係合する駆動ピン15がそれぞれ反対向きに対称的に動き、支点ピン14を中心として把持部材11a,11bが旋回し、これにより把持部3の開閉が行われる。そこで、図2(a)で示す如く、操作ロッド7を後退させると、把持部3の把持部材11a,11bが閉じ、図2(b)で示す如く、操作ロッド7を前進させると、把持部3の把持部材11a,11bが開く。
【0011】
操作部接続部材5には挿入部2の管腔内に通じる洗滌ポート18と、回転操作用のノブ19が設けられている。洗滌ポート18にはキャップ20が装着されている。操作部接続部材5は操作部6に対して挿入部2の軸を中心として回転自在に取り付けられている。このため、操作部6を保持して、ノブ19により操作部6に対して挿入部2の軸を中心に操作部接続部材5を回転させれば、先端の把持部3を挿入部2と一緒に回転させ、その把持部3の向きを変更することができる。
【0012】
次に、先端の把持部3を開閉する操作部6の構造について説明する。この操作部6は操作部接続部材5に取着される操作部本体22を備えてなり、操作部本体22には逆L字状の固定ハンドル23が一体に形成されている。操作部本体22には図示しない、高周波電源からの送電コードの口金を接続するための接続ピン24が設けられている。固定ハンドル23の途中部分には枢支ピン部付きの接続ねじ25がねじ込んで設けられ、接続ねじ25の枢支ピン部には可動ハンドル26が枢着されている。
【0013】
操作部体22には挿入部2の管腔と同軸的に形成された挿通孔27が設けられている。この挿通孔27には操作部接続部材5側に接続されたパイプ状の抜止め具28が貫通されている。操作部本体22は抜止め具28により操作部接続部材5側からの抜止めがなされている。操作部接続部材5は操作部本体22に対して挿入部2と同軸まわりに回転自在に取り付けられている。前述した操作ロッド7は抜止め具28内を貫通して可動ハンドル26の位置まで突き出している。
【0014】
操作部本体22の手元側端には抜止め具28の突出し部分と抜止め具28から突き出した操作ロッド7の外周にわたりこれらを覆うゴムキャップ29が取着されている。
【0015】
操作部本体22の手元側端にはわずかに径を拡大した径拡大縁部31を有したゴムキャップ取付け部32が形成されている。ゴムキャップ29はその口元部33を広げて径拡大縁部31に被せることによりその径拡大縁部31を越えてゴムキャップ取付け部32に装着する。ゴムキャップ29は操作ロッド7を貫通させる操作ロッド挿通孔34を有し、この操作ロッド挿通孔34は操作ロッド7の手元部を形成する後述する結合部材35の外径よりも小さい。そして、ゴムキャップ29はゴムキャップ取付け部32の径拡大部と、抜止め具28から突き出した操作ロッド7の外周にわたりこれらを密に覆ってシールする。これにより洗滌ポート18に通じる挿入部2の管腔内からの液漏れを防止する。特に操作ロッド挿通孔34の内径は操作ロッド7の手元部の外径よりも小さいために操作ロッド7が回転しても十分な気密性が得られる。
【0016】
図4で示すように、操作ロッド7の手元端には操作部6の可動ハンドル26に連結される結合部材35が取り付けられている。この結合部材35は操作ロッド7の手元端部には座ぐりにより形成された孔36に密に嵌め込まれる細めの固定部37を一端側に形成しており、他端には結合用球部38を形成してある。結合用球部38は図3で示すように、可動ハンドル26の作用端に形成した結合溝39内に嵌め込まれてそれに係合する。結合溝39は可動ハンドル26の回動面上で回転中心から径方向へ直線的に形成され、開口縁には結合部材35の球部38の抜けを防止する突縁41が形成されている。結合溝39の回動中心側は球部38を導入する入り口42が開口されている。
【0017】
さらに、結合部材35における固定部37の先端部には雄ねじ部45が形成され、この雄ねじ部45を操作ロッド7の孔36内の一部に形成した雌ねじ部46にねじ込んで結合部材35を操作ロッド7に結合している。この場合、図4(a)で示すように、固定部37はその基端に形成される突当て段部端面47が操作ロッド7の端面に当るまでねじ込まれて結合される。さらに、操作ロッド7の孔36内に位置した固定部37の領域において雄ねじ部45より手元側には孔36の内径よりも僅かに小さい外径のねじ逃げ部48が形成されている。ここではねじ逃げ部48の外径が雄ねじ部45の谷の径よりも小さいが、例えば、ねじ逃げ部48は雄ねじ部45の谷の径と同じ程度でもよい。そして、ねじ逃げ部48は伝達手段を構成する操作ロッド7において最も強度の弱い脆弱部を形成する。
【0018】
結合部材35における固定部37は操作ロッド7の孔36内に挿入され、操作ロッド7の孔36内で、その操作ロッド7のパイプ状の端部で覆われる。つまり、結合部材35における脆弱部を含む固定部37はパイプ状の端部からなる保護部材で覆われ、脆弱部のたわみが防止されるようになっている。従って、結合部材35の雄ねじ部45を雌ねじ部46にねじ込んで、操作ロッド7に結合部材35を結合した後は脆弱部を含む固定部37には操作部6の操作により図中矢印方向の力Pのみが働く。そして、この力Pがねじ逃げ部48の引張り耐力よりも大きな場合にはそのねじ逃げ部48で引張り破断する。ねじ逃げ部48の引張り耐力は操作ロッド7の他の部分や他の手段の把持部3や操作部6、特に把持部3の強度より小さく設定してある。
さらに詳しく言えば、図2に示す支点ピン14が把持部3で最も弱い場合は (支点ピン14のせん断強さ)>(ねじ逃げ部48の引張り強さ)とする。他の部材についても同様である。
【0019】
前記把持鉗子1を使用する場合、操作部6において固定ハンドル23を基準として可動ハンドル26を回動操作することにより、可動ハンドル26の回動に応じて結合部材35の球部38は可動ハンドル26の結合溝39内を摺動しながら移動し、操作ロッド7を挿入部2の軸方向に進退させ、把持部3における把持部材11a,11bを開閉する。
【0020】
ここで、操作ロッド7における結合部材35にねじ逃げ部48を設けて他の部分より強度の弱い脆弱部材としたから操作部6のハンドル操作により必要以上に強い操作力を操作ロッド7に加えた場合、その力Pが操作ロッド7における結合部材35のねじ逃げ部48の引張り耐力よりも大きくなると、その最も脆弱なねじ逃げ部48が引張り破断する。他の部分、特に先端の把持部3の部材を破損させない。
【0021】
ところで、操作部6のハンドル操作は支点を中心とする旋回動作であるため、操作ロッド7の手元部における結合部材35にはその軸方向の牽引力や引張り力だけではなく、上下左右方向のあおり力が同時に加わることになる。しかし、結合部材35の脆弱部のある固定部37は操作ロッド7の手元端部にある孔36内に密に嵌め込まれて保護されているため、操作ロッド7のあおり力が遮断され、ねじ逃げ部48にはあおり力は加わらない。従って、ねじ逃げ部48はあおり力による疲労破壊を起こすことなく、繰り返し使用に耐え得る。
さらに、同様な理由で、ねじ逃げ部48にかかる力は略引張り力だけとなるので、正確な破断強度を設定することができると共に、安定した引張り強さが得られるという効果もある。
また、このような構造は加工上も簡単なものであるため、コスト面でも有利なものである。
【0022】
[第2実施形態]
図5及び図6を参照して、本発明の第2実施形態に係る外科用処置具を説明する。図5は操作ロッド7の途中部分の分解図、図6は図5に示す部品を組み立てたときの断面図である。
この実施形態での把持鉗子1は操作ロッド7に組み込む脆弱部の構造が前述した第1実施形態のものと異なり、これ以外の部分については同様の構成である。
図5で示すように、操作ロッド7はその途中部分で前後に分割されており、前方のロッド部51の後端には一体に平板部52が突設され、後方のロッド部53の前端部には平板部52を密に嵌め込むスリット54が形成されている。平板部52及びスリット54の幅はロッド部51,53の外径よりも狭い。平板部52には平板側ピン孔55が形成され、スリット54を形成した後方のロッド部53の前端部にはスリット側ピン孔56が形成されている。そして、平板部52をスリット54に収めて組み付けた状態で平板側ピン孔55とスリット側ピン孔56を一致させ、この両方のピン孔55,56にわたってピン57を挿通し、前後のロッド部51,53を同軸的に連結し、一体的な操作ロッド7を構成するようになっている。ピン57の長さはロッド部51,53の外径以内であり、ピン孔55,56にわたってピン57を嵌め込んだとき、その両端がロッド部51,53の外周面から突き出さないように設定されている。さらに、ロッド部51,53の連結部分には保護部材としてのカバーパイプ58が被嵌され、連結部分の平板部52、スリット54、及びピン57の部分を完全にカバーするようになっている。
【0023】
ここで、ピン57と把持部3の支点ピン14との関係は以下のように設定される。
(1)両者の材質が同じである場合において、それぞれの外径が
(支点ピン14の外径)>(ピン57の外径)、または
(2)両者の外径が同じで材質が異なる場合において、それぞれの材質のせん断強度が
(支点ピン14のせん断強度)>(ピン57のせん断強度)
となっている。
尚、把持部3の中で最も強度の小さい部材は支点ピン14であり、操作ロッド7の中で最も強度の小さい部材はピン57である。
【0024】
この構成によれば、操作部6の作動に伴い、操作軸7には引張り力が加えられるが、この力はピン57に対し、せん断力として働くことになる。一方で、把持部3の支点ピン14に対しても、せん断力として働くので、本構成では過度の操作力が加えられたときには、操作軸7におけるピン57の方がせん断破壊する。
また、把持部3における支点ピン14、及び操作ロッド7におけるピン57共に、同じ操作ロッド7の軸方向の力に対しせん断力が加えられるので、強度比較が簡単である。つまり、材質と外径を考慮することにより、安定した破断特性が得られるという利点がある。従って設計的にも楽である。
【0025】
また、操作ロッド7の分割部分をカバーパイプ58で覆うことにより、操作ロッド7の分割部分はピン57を中心に旋回したり変形したりすることなく、忠実に操作軸力のみを把持部3に伝え、また耐久性が高い。
【0026】
[第3実施形態]
図7を参照して、本発明の第3実施形態に係る外科用処置具を説明する。図7はその把持鉗子1の操作部6のゴムキャップ取付部近傍の部分断面図である。
把持鉗子1の他の全体的な構成は前述した第1実施形態のものと同様であり、この第3実施形態ではその操作部6の構成が異なる。すなわち、ゴムキャップ29はその口元部33と操作ロッド挿通孔34との間の領域においてその内周に沿ってリング状に突出して形成された内径縮小部61があり、この内径縮小部61は抜止め具28の最大径の突出し部分62の外径よりも小さな内径を有し、内径縮小部61は抜止め具28の外周に弾性的に押し当って密着する。このため、この部分においても十分な気密を保持できる。また、ゴムキャップ29の操作ロッド挿通孔34は第1実施形態のものと同様、操作ロッド7の結合部材35の外周に弾性的に押し当って密着しており、従って、挿入部2の管腔先端側が圧力を高くした腹腔内にあってもこの手元側部分からの空気が漏れ出すことはない。
ゴムキャップ29の装着状態ではノブ19を回転させると、抜止め具28と操作ロッド7の手元部は一緒に回転するために、内径縮小部61と抜止め具28、及び操作ロッド挿通孔34と操作ロッド7の手元部との間にはそれぞれ摩擦抵抗が生じる。簡単な構造で把持部3の向きを変える際、その摩擦抵抗によって適度な回転力量が得られる。
【0027】
この構成によれば、ゴムキャップ29はゴムキャップ取付け部32に着脱自在であり、ゴムキャップ29を図7の破線で示す位置までずらすことができる。そこで、可動ハンドル26の支点における接続ねじ25を取り外し、可動ハンドル26を外すことによりゴムキャップ29を外すことができる。また、ゴムキャップ29の装着も可能である。この構成によりゴムキャップ29の着脱交換を簡単に行うことが可能である。内径縮小部61の異なるゴムキャップ29を交換するだけで、把持部3の向きを変える際の回転力量を好みの値に設定することができる。さらに、簡単な構造であるために、洗滌性、滅菌性に優れるという利点もある。
尚、この機能を得るためには操作ロッド7における結合部材35の取付け構造は前述した第1実施形態と同様でなくとも図7で示すように操作ロッド7の端部外周に結合部材35をねじ込む形式のものでもよい。
【0028】
[第4実施形態]
図8を参照して、本発明の第4実施形態に係る外科用処置具を説明する。図8はその把持鉗子1の操作部6のゴムキャップ取付部近傍の部分断面図である。
この実施形態は前述した第3実施形態におけるゴムキャップ取付け部構造の変形例であり、これ以外は第3実施形態と同じである。
【0029】
ゴムキャップ29は抜止め具28の突出部における外周にくぼみがなく、等径な外周部になっている。ゴムキャップ29の口元部33にはその抜止め具28の突出部外周の外径よりもわずかに小さな内径を持つ縮小部を内周全体に沿ってリング状に突出して形成した圧着部65を有する。このゴムキャップ29の口元部33を抜止め具28に装着した状態では十分な気密性を有すると共に回転方向に対しても十分な耐力を持っている。
【0030】
そこで、ゴムキャップ29の装着状態でノブ19を回転させると、操作ロッド7の手元部と、抜止め具28及びこれに圧着しているゴムキャップ29とは一緒に回転するために、操作部6のゴムキャップ取付け部32とゴムキャップ29の口元の内径縮小部61との間には摩擦抵抗が生じる。把持部3の向きを変える際に適度の回転力量を与える。第3実施形態と同じ効果を与える。
【0031】
[第5実施形態]
図9を参照して、本発明の第5実施形態に係る外科用処置具を説明する。図9(a)はその把持鉗子1の操作部6のゴムキャップ取付部近傍の部分断面図、図9(b)は図9(a)中A−A線に沿う断面図である。
この実施形態は前述した第3実施形態におけるゴムキャップ取付け部構造の変形例であり、これ以外は第3実施形態と同じである。
【0032】
すなわち、ゴムキャップ29の内面にはその口元部33と操作ロッド挿通孔34との間の領域における内周に沿って等間隔で配置された略半球状の複数の突起部71が突出して形成されている。突起部71の数は1つでもよいが、ここでは図9(b)で示す如く、6ケの突起部71が設けられている。抜止め具28の突出し部分62の外周にはその各突起部71と係合する形状の凹部72が、その突起部71と同じ数だけのものが等間隔で配設されている。つまり、突起部71及び凹部72はその内径及び外径中心に対し等角度の間隔で同心的に配置されている。
【0033】
そこで、ゴムキャップ29の装着状態でノブ19を回転させると、抜止め具28と操作ロッド7の手元部は一緒に回転するが、この際、抜止め具28の凹部72に埋没していた突起部71はそれまで埋没して嵌合していた凹部72を乗り越え、ゴムキャップ29が変形して隣接した凹部72に再び没入して嵌合する位置まで比較的軽いトルクで回転する。従って、簡単な構造でありながらノブ19を回転させる際の操作にクリック感を与えることができる。その他は第3実施形態と同じような効果が得られる。
【0034】
[第6実施形態]
図10を参照して、本発明の第6実施形態に係る外科用処置具を説明する。図10(a)はその把持鉗子1の操作部6のゴムキャップ取付部近傍の部分断面図、図10(b)は図10(a)中B−B線に沿う断面図である。
この第6実施形態は前述した第3実施形態におけるゴムキャップ取付け部構造の変形例であり、これ以外は第3実施形態と同じである。
【0035】
すなわち、抜止め具28の突出し部分62の外周には複数の突起部75が等間隔で配設されている。ゴムキャップ29の内面には各突起部75に対応する位置でその突起部75を嵌め込む凹部76が内周に沿って等間隔で配設されている。突起部75の数は1つでもよいが、ここでは図10(b)で示す如く、4ケの突起部75が設けられている。また、突起部75及び凹部76はその内径及び外径中心に対し等角度の間隔で同心的に配置されている。
【0036】
そこで、ゴムキャップ29の装着状態でノブ19を回転させると、抜止め具28と操作ロッド7の手元部は一緒に回転するが、この際、抜止め具28の凹部76に埋没していた突起部75はそれまで埋没して嵌合していた凹部76を乗り越え、ゴムキャップ29が変形して隣接した凹部76に再び没入して嵌合する位置まで比較的軽いトルクで回転する。従って、簡単な構造でありながらノブ19を回転させる際の操作にクリック感を与えることができる。その他は第3実施形態と同じような効果が得られる。
【0037】
[第7実施形態]
図11乃至図15を参照して、本発明の第7実施形態に係る外科用処置具を説明する。
把持鉗子1は前述した内視鏡下外科手術に用いられる把持鉗子と同じく構成されるが、細長の挿入部2の先端に設けられる把持部3の構成が以下のように構成される点で前述した各実施形態のものと相違する。
【0038】
すなわち、把持部3はその一対の把持部材11の形状が図11で示すように側方の点Oを中心とする略円弧状に湾曲している。把持部材11の外側面81が点Oを中心とする円弧状に形成されている。また、把持部材11の把持面82には図12で示すように点Oを中心とする放射状に多数の溝83が設けられている。この場合、把持部材11の把持面82に形成される溝83は図12(a)で示されるように、その突き当てたときの把持面82を中心として対称に設けられている。つまり、把持部材11の溝83は他方の把持部材11の溝83と向き合い、その向き合う溝83の間に縫合針84を嵌め込む把持空間85を形成するようになっている。
【0039】
図13で示すように、把持部材11の外面には把持部材11に挟み込む縫合針84の向きを矢印と数字で示す針角度表示手段86が設けられており、保持した縫合針84の向きの目安となる。
【0040】
図14は縫合作業を示したものである。通常、把持部3の把持部材11で把持する縫合針84の向きは縫合部位87と把持鉗子1の挿入部2の位置関係により例えば図14(a),(b)のように異なってくる。そして、縫合ラインl1 、l2 は縫合部位87に対し約90゜とし、縫合針84は運針ラインl1 、l2 と平行になる姿勢が好ましい。
従って、実際には、把持鉗子1の挿入部2の軸方向と縫合針84とのなす角度α、βは状況により様々であり、状況に応じて把持向きを変えることが必要になる。この把持鉗子1では把持部材11の把持面82に放射状に設けた多数の溝83内に収め、位置決めして縫合針84を確実に把持するので、縫合針84の把持向きを容易に変更でき、かつ選択した向きに確実に保持することができる。また、針角度表示手段86によって縫合針84の向きの目安と確認ができる。
【0041】
把持部材11の把持面82に形成される溝83は図12(a)で示されるように、その突き当てたときの把持面82を中心として対称に設けられているため、縫合針84はその溝83内に確実に収めることができる。図12(b)は溝83を非対称に配置した場合を示したものであるが、この場合には縫合針84が安定しないので、図12(a)で示した溝83のものに比べて把持状態が不安定である。
【0042】
本構成によれば、把持部材11に縫合針84を把持する位置を変えるだけで容易に所望の向きで縫合針84を把持することができる。さらに、対称に設けた溝83内に収めて把持することによりより確実に縫合針84を把持し、その把持する向きを正確に出すことが可能となる。
【0043】
また、放射状の溝83は把持部材11の側面形状の接線に対し、法線の位置関係であるため、組織に縫合針84を通す場合、その針の根本まで組織に通すことができるため、厚い組織の縫合もミスなく確実に行えるというメリットがある。尚、角度表示手段は矢印と数字で向きを示したが、その他、図15で示すように複数の領域88a,88b,88cを色等により区別して表示しても良い。
【0044】
[第8実施形態]
図16乃至図17を参照して、本発明の第8実施形態に係る外科用処置具を説明する。
この第8実施形態の把持鉗子1は先端の把持部3を変形した例であり、その他の構成は前述した第7実施形態と同じである。
【0045】
ここでの把持部3はその一方の把持部材11の把持面82にのみ、側方の点Oを中心とする湾曲放射状に溝83を形成し、他方の把持部材11の把持面82は平面である。さらに、平面の把持面82には縫合針84の把持位置を検出する針検知手段89が装着されている。針検知手段89は縫合針84の把持位置を検出した後、これを縫合針角度に変換して外部のモニタ装置90に表示する。
【0046】
この構成では片側の把持面82を平面とすることで、より放射状の溝83が確実に機能する。さらに、把持した縫合針84の角度を表示することで、簡単に縫合針84を取り扱うことができるようになる。
【0047】
[第9実施形態]
図18乃至図21を参照して、本発明の第9実施形態に係る外科用処置具を説明する。
この第9実施形態の把持鉗子1は先端の把持部3を変形した例であり、その他の構成は前述した第3実施形態と同じである。把持鉗子1の把持部3は図18に示すように、一対の把持部材11がリンク機構12を介して開閉する構造であるが、その他にカム溝等によって開閉する形式のものであっても良い。
【0048】
一対の把持部材11は湾曲した形状をしており、その湾曲外側の外周101から2〜3mmおいた位置にはその外周に沿って同じピッチで配置された複数の小孔102が設けられている。小孔102は把持面11を中心として一対の把持部材11の両方にその把持面103に直交するように設けられている。
【0049】
小孔102の直径は通常、内視鏡下手術に用いられる縫合針104よりも幾分大きくなっている。さらに小孔102から外周101に向かって縫合針104の太さよりも狭く、かつ縫合糸105よりも幅広のスリット106が設けられている。
【0050】
次に、この実施形態の把持鉗子1を用いて内視鏡観察下で病変部108の縫合と切除を行う方法を、図19及び図20を参照して説明する。まず、図19で示すように、病変部108のまわりの体組織109の部位を把持部3で取り囲み、その把持部材11の把持面103の間に把持する。この状態で別の持針器等の処置具で縫合針104を列の端でその片側の把持部材11の小孔102に通す。この縫合針104は小孔102の内面にガイドされ、体組織109を貫いた後、反対側の把持部材11の小孔102に導かれる。
【0051】
ついで、縫合針104が導かれた他側の隣接した小孔102から同様に反対側の小孔102に縫合針104を通す。この作業を先端側の小孔102から手元側へ、或いは手元側から先端側へ順次進め、図20で示すようにする。さらに、把持部3の一対の把持部材11を若干開き、縫合糸105を緩めて、この縫合糸105をスリット106を通して抜き、一対の把持部材11を取り外す。
ここで、縫合糸105の末端(始点側)はクリップ等で止めても良いが好ましくは予め縫合糸105でループを作っておき、初めの小孔102を貫通させた時点でループに縫合針104と縫合糸105を通過させて固定するのが良い。縫合糸105の他端(終端側)についても同様にクリップで固定しても良いが、通常の内視鏡下外科手術のように、結紮するのが好ましい。以上で狙った縫合ラインに沿った縫合が完了する。
この後、切除ラインに沿って、体組織109を鋏などの処置具で切除する。
【0052】
図21は自動縫合具による切除ライン(L1、L2)と、本把持鉗子1を用いた切除ラインL3を比較して示すものである。直線的な切除ラインしか得られない場合は病変部108と処置具とを適切な位置関係にするのが難しく、従って、L1、L2のような切除ラインになりがちであり、不必要に大きな切除片になってしまう。これに対し、本把持鉗子1ではその把持部3の湾曲に合わせて病変部108を取り囲むようにして縫合できるため、このような問題は発生しにくい。以上の如く、本実施形態では目的の組織部位を把持した状態で縫合を進めることができるため、狙った縫合ラインを容易に得ることができる。さらに縫合ピッチは把持部材11に設けた小孔102のピッチによって決められ、片側の把持部材11の小孔102に縫合針104を挿入するだけで組織を貫通し、他側の小孔102から縫合糸105が出てくるため、縫合操作が楽である。また、小孔102を把持部3の湾曲形状に沿うように設けることで必要以上の組織を切除せずに済むというメリットもある。
【0053】
[第10実施形態]
図22を参照して、本発明の第10実施形態に係る外科用処置具を説明する。
この第11の実施形態は前述した第9実施形態における把持部3の変形例を示すものであり、その他は前述した第9実施形態のものと同様である。
【0054】
この第10実施形態での把持部3の把持部材11はその略中央で屈曲し、その内周111から2〜3mmおいた位置にその内周111に沿って小孔102を設けたものである。小孔102の外面112側端及び把持面82側端にはそれぞれ縫合針ガイド用テーパ部114が設けられている。尚、把持部材11の屈曲角αは30゜〜90゜程度のものであれば良い。
【0055】
この第10実施形態においては小孔102の端部にガイド用テーパ部114を設けたので、小孔102に縫合針104を簡単かつ容易に案内することができる。さらに内周111に沿って小孔102を設けることで、より病変に近い位置を把持、縫合することができるため、必要最小限の切除片とすることができる。
【0056】
[第11実施形態]
図23を参照して、本発明の第11実施形態に係る外科用処置具を説明する。
この第11の実施形態は前述した第9実施形態における把持部3の変形例を示すものであり、その他は前述した第9実施形態のものと同様である。
この第11実施形態での把持部3は挿入部2から着脱可能に構成したものである。つまり、図23に示すように把持部3は先端側から順に把持部材121、腕部122、支持部123、ばね部124からなる部材をばね部124で接続して一対の把持部材121を連結したものである。このため、把持部3はばね部124の弾性付勢力により常に把持面83同士が圧着するようになっている。
支持部123を押して中心方向に移動させることにより把持部3の一対の把持部材121は開く。
【0057】
通常、これを使用する場合には、挿入部2の先端に設けられたもう一つの把持部で支持部を把持し、把持部3を開いて目的の部位を挟み込んだ後、把持部3のみを残して縫合作業を行う。目的とする組織を把持した後、把持部3のみを体腔内に留置できるためトラカール孔を減らすことができる。さらに、把持部3の動きを拘束する挿入部2がないため、縫合時の操作性が向上するというメリットがある。
【0058】
[第12実施形態]
図24及び図25を参照して、本発明の第12実施形態に係る外科用処置具を説明する。この第12実施形態は前述した第10実施形態における把持部3の変形例を示すものであり、その他の構成は前述した第10実施形態のものと同様である。
【0059】
すなわち、一対の把持部材11の各把持面82にはその把持面82と同じ形状で、把持部材11の小孔102と孔位置が一致する孔131を有した板状の部材132がそれぞれ係止して取り付けられている。この板状の部材132は生体吸収性の材質で作られている。
【0060】
図25は縫合終了時の状態を示したものである。この縫合終了後、切除ライン133に沿って病変部134を含む組織部分を切除する。この縫合切除後において、組織部分はを板状の部材132で圧着させられるために、把持部材11の小孔102のピッチが大きくても十分な縫合機能が期待できる。
さらに、板状の部材132の内周と、縫合ラインとの間には一定の幅があるため、切開を進める際、誤って縫合糸105を切ってしまうことも防止できる。
【0061】
[第13実施形態]
図26を参照して、本発明の第13実施形態に係る外科用処置具を説明する。この第13の実施形態は鋏鉗子140に係るものであるが、その先端の鋏部(切断部)141以外は前述した把持鉗子1の例えば第1実施形態のものと同様なものであるため、その全体的な説明を省略する。
【0062】
鋏部141は一対の鋏ブレード142a,142bを備えてなり、この鋏ブレード142a,142bは支点ピン143を中心に旋回することにより開閉が行われる。この動作は操作ロッド7の先端に配置された駆動部材144に設けられた駆動用カム溝17に沿って鋏ブレード142a,142bの末端の駆動ピン15が動くことにより行われる(第1実施形態での図2を参照)。
【0063】
また、2枚の鋏ブレード142a,142bが先端まで閉じた後、さらに操作ロッド7が操作部6の動きに伴って手元側に引かれたとき、駆動部材144が突き当る突当て部146が、鋏ブレード142a,142bを枢着した支点ピン143を架設するU字アーム片145の基端付近に形成されている。
【0064】
図26(b)は2枚の鋏ブレード142a,142bが支点ピン143の位置における断面図を示している。この図から知れるように2枚の鋏ブレード142a,142bは支点ピン143に被嵌される管状のカシメ部材147によって両側から挟まれるようにして密着される。図26(c)はカシメ部材147の組み込み前の形態を示す。この組み込み前のカシメ部材147はパイプ状の部材で一方の端には根元にテーパ状の皿部148をもち、他端を図26(d)に示すようにカシメ(叩いて変形)することにより、2枚の鋏ブレード142a,142bを密着させるようになっている。
【0065】
鋏ブレード142a,142bの枢着用孔149にはカシメ部材147の皿部148が納まるような形状(テーパ皿孔部)が設けられている。そこで、鋏ブレード142a,142bの枢着用孔149にカシメ部材147を組み付けた状態でカシメ部材147内に、同様にテーパ皿部を持つカシメ用ピン151を挿入し、図26(d)に示す矢印方向に力を加えることによりカシメ部材147は図26(b)のような形状に変形し、鋏ブレード142a,142bを両側から押し付ける。
このようにカシメ付けしたこれらの部材はU字アーム片145にセットした後、カシメ部材147の内部に支点ピン143を挿入し、U字アーム片145に支点ピン143を例えばレーザー溶接により固定することにより取り付ける。
【0066】
この第14の実施形態の鋏鉗子140によれば、簡単な構造で作動力量の小さい鋏鉗子ができる。また、挿入部2の先端部分にあるU字アーム片145は一般に寸法的に余裕がないが、このような構造をとることでU字アーム片145には鋏ブレード同士を密着させるような力は不要となり、腐蝕割れも防ぐことができる。よって、カシメを強くすることができる。
さらに、鋏ブレード142a,142bが閉じた後は駆動部材144とU字アーム片145とが突当て部146で突き当たるため、支点ピン143には力はかからない。従って、操作部6に過大な力が加わった場合でも細い支点ピン143が破壊するようなことがなく、安心して使用できる。
【0067】
[第14実施形態]
図27及び図28を参照して、本発明の第14実施形態に係る外科用処置具を説明する。この第14実施形態は鋏鉗子140の変形例である。
すなわち、本実施形態では管状のカシメ部材155の一端にフランジ状の皿部156が形成されており、鋏ブレード142a,142bの枢着用孔149の穴まわりにはこの皿部156が納まる形状をなしている。その他、皿部156の形状は必要に応じて様々なものとする。また、支点ピン143は図28に示すように両端部の外径が小さく中央部の外径が大きくなっている。一方、カシメ部材155の内径とU字アーム片145のピン取付け用孔157の径も支点ピン143の形状に合わせて、(カシメ部材155の内径)>(U字アーム片145のピン取付け用孔157の径)の関係に設定する。
【0068】
図28(b)はU字アーム片145のピン取付け用孔157に支点ピン143を取り付ける方法を示すものである。つまり、U字アーム片145を左右の向き158に広げてピン取付け用孔157に支点ピン143を差し込み、U字アーム片145を元の位置に戻すことにより取り付けることができる。図28(b)ではカシメ部材155、鋏ブレード142a,142bや駆動部材144は省略してある。このとき、U字アーム片145の変形は弾性変形の範囲内であるために繰り返して取付け取外しが可能である。
【0069】
この実施形態によれば、カシメ部材155のフランジ状の皿部156で鋏ブレード142a,142bを挟み込むためにより大きな力でカシメすることができる。また、支点ピン143はU字アーム片145から着脱自在であるため、切れ味の落ちた鋏ブレード142a,142bをを交換することができるというメリットがある。さらに、支点ピン143の固定は機械的に行われるため、組立も容易である。
尚、これ以外については第13実施形態と同じである。
【0070】
[第15実施形態]
図29及び図30を参照して、本発明の第15実施形態に係る外科用処置具を説明する。この第15実施形態の外科用処置具は以下に述べる点に矛盾しない限り前述したものと同様なものである。
図29で示すように、挿入部2の管腔内には操作ロッド7が配設されており、操作ロッド7は操作部6の動きを先端の作業部材に伝えるようになっている。挿入部2と操作部6とを接続する操作部接続部材5には挿入部2の管路内に通じる洗滌ポートを形成する洗滌ポート(口金)18が設けられている。洗滌ポート18には例えばゴム、シリコン等の弾性部材で作られたキャップ29が取り付けられている。
【0071】
操作ロッド7の途中には洗滌ポート18の管腔入口部162付近には挿入部2の管腔の内径よりも大きな外径の円板ヒダ状の弾性材、例えばシリコンゴム製の流路切換え部材163からなる流路切換え手段が設けられている。先端の把持部3を開くために操作ロッド7を先端側(図29中B方向側)に移動したときには流路切換え部材163は図29で示すように管腔入口部162よりも先端側に位置して先端側の管路を閉鎖する。逆に把持部3を閉じるために操作ロッド7を手元側(図29中A方向側)に移動したときには流路切換え部材163は図30で示すように管腔入口部162よりも手元側に位置して、手元側の管路を閉鎖する位置に配置される。つまり、図29は把持部3を開いた位置状態であり、図30は把持部3を閉じた位置状態を示すものである。尚、流路切換え部材163の形状はこれに限らず、この他にOリング状のものでも円筒状のものであってもよく、同様の機能が得られる。
【0072】
次に、挿入部2の管腔内の洗滌を行う場合の作用について説明する。洗滌する場合、まず、洗滌ポート18からゴムキャップ20を取り外し、洗滌ポート18に、洗滌液を入れたシリンジなどを接続し、操作部6を操作して把持部3を全開にする。この状態で、洗滌ポート18内にシリンジより洗滌液を注入する。このとき、流路切換え部材163は図29の様に管腔入口部162よりも先端側に位置するために洗滌液は手元側(A側)に流れ、手元側の管路内部分を洗滌する。
【0073】
同様に把持部3を閉じることにより流路切換え部材163を図30で示すように管腔入口部162よりも手元側に位置させて、洗滌ポート18内に洗滌液を注入することにより洗滌液は先端側(B側)へ流れ、先端側の管路内部分の汚れを洗い流す。
【0074】
この実施形態によれば、挿入部2の動きに連動して挿入部2の管腔内に注入する洗滌液の流れ方向を切り換えることができるため、特殊な切換え手段が不要で、その管腔全長に渡って洗滌液を流すことができ、効果的でかつ簡単に洗滌を行うことができる。さらに、流れ方向が規定されているため、汚れで各方向の管腔が塞がっていないかの確認も容易に可能である。
【0075】
[第16実施形態]
図31乃至図32を参照して、本発明の第16実施形態を説明する。以下に述べる以外の構成は前述した第15実施形態と同じである。
【0076】
この第16実施形態はまず、図31に示すように、操作部接続部材5内で、挿入部2の延長上においてその管腔の手元側一部に内径が拡大している第1管腔拡大部171が形成されており、この第1管腔拡大部171の内部には操作ロッド7上に設けられた第1流路切換弁172が収納されている。この第1流路切換弁172の外径は第1管腔拡大部171の内径よりも小さく、かつ挿入部2の管腔の内径よりも大きい。第1流路切換弁172は弾性部材、例えばシリコンゴムのようなもので作られている。また、挿入部2の先端側の管腔から手元側の第1管腔拡大部171に移行する段差部分は第1弁圧着面173を形成している。そして、操作ロッド7を先端側へスライドさせたとき、第1流路切換弁172が第1弁圧着面173に圧着させられ、これにより挿入部2の管路内を閉鎖するようになっている。
【0077】
一方、図32で示すように、把持鉗子1の先端側部分にも同様に第2管路拡大部175及びその内部に位置する弾性部材よりなる第2流路切換弁176が設けられている。さらに挿入部2の手元側の内腔から先端側の第2管腔拡大部175に移行する段差部分は第2弁圧着面177を形成している。そして、操作ロッド7を手元側へスライドさせたとき、第2流路切換弁176が第2弁圧着面177に圧着させられ、これにより挿入部2の管路内を閉鎖するようになっている。
以上の如く、操作ロッド7をスライドさせることにより、挿入部2の管路内を開放/閉鎖する経路用切換え手段を構成している。
【0078】
また、第2管腔拡大部175内には駆動部材としての先端連結部材16が設けられており、この先端連結部材16は円筒形部材の両側面部をそれぞれ切除してなるいわゆるダブルカットしたものであり、この部分で形成される各隙間が流路178となる。
【0079】
各弁圧着面173,177、及び各流路切換弁172,176の位置関係は把持部3を閉じた状態では図31及び図32で示すように先端側が閉じ、手元側が開く。このため、洗滌ポート18から注入された洗滌液は手元側(A側)の管腔に向かって流れる。また、把持部3を開いた状態では図33及び図34で示すように先端側が開く、手元側が閉じる。このため、洗滌液は先端側(B側)の管路へ向かって流れる。
【0080】
この実施形態によれば、前述した第15実施形態の効果に加え、第2流路切換弁176を弾性部材とすることで、その弾性部材が変形するため、把持部3(作業部材)が閉じたときに第2流路切換弁176が第2弁圧着面177に圧着するような第2流路切換弁177の位置決めを厳密に行わなくて良いという利点がある。
【0081】
[第17実施形態]
図35乃至図37を参照して、本発明の第17実施形態を説明する。以下に述べる以外の構成は前述した第16実施形態と同じである。
挿入部2のシース181における手元側末端部が操作部6の操作部本体22を貫通して手元側に突き出しており、シース181の手元側末端にはフランジ状の抜止め部182があり、この抜止め部182により操作部6の操作部本体22から挿入部2のシース181が外れるのを防止している。
【0082】
この抜止め部182の手元側で操作ロッド7を通す挿通孔の開口端にはテーパ状の弁圧着面183が設けられている。抜止め部182と可動ハンドル26の間の操作ロッド7上には弾性部材よりなる円筒状の流路切換弁184が配置されている。図35は可動ハンドル26により操作ロッド7を後退させて、先端の把持部3を閉じた状態を示す。このとき、流路切換弁184は弁圧着面183から退避し、挿入部2の管腔終端を開口させる。また、図37で示す通り、可動ハンドル26により操作ロッド7を前進させたときには、把持部3を開くと共に流路切換弁184が弁圧着面183に圧着し、挿入部2の管路を閉鎖する。
【0083】
一方、図36で示す如く、挿入部2の先端側部分における第2管路拡大部175には先端連結部材16があり、その両側面部はそれぞれカットされた流路178を形成し、この流路178を通じて洗滌水が通るように形成されている。先端連結部材16は把持部3を開くために前進させたときに挿入部2の管腔先端から露出し、流路178の長さを短くする。
ここで流路178の流路長lが(把持部閉時のl1 )>(把持部開時のl2 )であるため、開時は抵抗が小さくなり洗滌水が流れやすく、閉時は抵抗が大きく洗滌水が流れにくい。
【0084】
すなわち、これと、手元側の流路切換弁184の作用を加味すると、把持鉗子閉状態で洗滌水の流れ方向は手元側(A側)となり、開状態では先端側(B側)に切り替わり先端側へ洗滌水を流すことができる。その他、第15実施形態と同様の効果が得られる。
【0085】
[第18実施形態]
図38及び図39を参照して、本発明の第18実施形態に係る外科用処置具を説明する。この第18実施形態の外科用処置具は以下に述べる点に矛盾しない限り前述したものと同様なものである。
図38で示すように、挿入部2の管腔内には操作ロッド7が配設されており、操作ロッド7は操作部6の動きを先端の作業部材に伝えるようになっている。ここでの操作部6は可動ハンドル26が固定ハンドル23の前方に位置しており、可動ハンドル26はリンク186,187を介して操作ロッド7の後端に連結されていて、操作ロッド7を前後に移動操作するようになっている。操作ロッド7の脆弱部は図示しない操作ロッド7の途中に設けられている。
【0086】
挿入部2と操作部6を接続する操作部接続部材5には挿入部2の管路内に通じる洗滌ポートを形成する洗滌ポート18が設けられている。洗滌ポート18には例えばゴム、シリコン等の弾性部材で環状に作られたキャップ190が取り付けられている。
【0087】
洗滌ポート18の内径φXは、これに挿入されるシリンジ191の最大外径φZよりも大きい。
シリンジ191の筒先が多くとも3mm程度挿入可能なように洗滌ポート18の深さLが設定されている。また、キャップ190の口元部の内径φYは、挿入されるシリンジ191の筒先の最大外径φZより小さい。そして、シリンジ191の筒先を締め付けるキャップ190の厚さtは厚くとも1mm程度に設定してある。キャップ190は洗滌ポート18より着脱可能なものである。また、洗滌ポート18を境に管腔内の先端側と基端側のクリアランスを比較すると、基端側の方が狭い。
【0088】
シリンジ191の先端は洗滌ポート18に挿入される。この時、キャップ190の口元部ではそのキャップ190の弾性力によってシリンジ191の先端の外周を締め付ける。これにより、シリンジ191の先端の固定及び水密を確保する。シリンジ191から送り出された水または洗滌液は挿入部2の管腔内に流れる。管腔内では洗滌ポート18を境に基端部のクリアランスより先端部の方が広いため、水または洗滌液は積極的に先端部へ流れ、管腔内を効果的に洗滌できる。
【0089】
本構造によれば、洗滌ポート18の深さLとキャップ190の厚さtも合わせても、従来のルアロック構造による7mmのテーパ部よりも小型化が可能である。また、キャップ190と洗滌ポート18を取り外すことにより、キャップ190と洗滌ポート18の接続部分を洗滌することができる。従って、キャップ190と洗滌ポート18の接続部を簡単かつ効果的に洗滌可能である。
【0090】
[第19実施形態]
図40及び図41を参照して、本発明の第19実施形態に係る外科用処置具を説明する。これは第18実施形態の変形例を示すものである。
すなわち、キャップ190の代わりに洗滌ポート18の内周部に段差のある溝192を設け、この溝192内にパッキン193またはOリング194を嵌め込んで配設した。また、洗滌ポート18の深さL´は7mm以下に設定してある。
【0091】
パッキン193またはOリング194によって、シリンジ191の先端の固定及び水密を確保する。洗滌ポート18の深さL´は、従来のルアロック構造のテーパ部長の7mmより小さく設定してあるので、小型化できる。その他は第18実施形態と同様である。
【0092】
[第20実施形態]
図42を参照して、本発明の第20実施形態に係る外科用処置具を説明する。これは第19実施形態の変形例を示すものである。
第19実施形態と同様、洗滌ポート18の内周部に段差のある溝192を設け、これにパッキン193を配設してある。また、洗滌ポート18は操作部接続部材22とねじ固定してある。L''は7mmより小さくは設定していない。
【0093】
これによると、洗滌ポート18は操作部接続部材5とねじにより着脱可能であり、また、洗滌ポート18とシリンジ191の固定及び水密については第18実施形態のものと同様である。
そして、洗滌時のみ、洗滌ポート18を取り付け、術中は外しておけるので、邪魔にならない。
【0094】
[第21実施形態]
図43を参照して、本発明の第21実施形態に係る外科用処置具を説明する。これは第19実施形態の変形例を示すものである。
これは洗滌ポート18と操作部接続部材5とをスナップフィット方式で固定するものである。洗滌ポート18は操作部接続部材5とはスナップフィット方式により着脱可能であるので、洗滌ポート18を簡単に着脱できる。その他は第20実施形態のものと同じである。
【0095】
本発明は前述した各実施形態の記載内容に限定されるものではなく、種々の変形が可能なものである。また、前述した説明によれば以下に列記する事項が得られる。各項の内容に組み合わせも自由である。
【0096】
<付記>
(1群)
1.近位端と遠位端を有する管状部材と、前記管状部材の遠位端に結合された第1の強度をもつ処置作業手段と、前記管状部材の近位端に結合された操作手段と、前記管状部材の管路内に配置され前記操作手段の動きを前記処置作業手段に伝える第2の強度をもつ棒状の伝達手段と、前記伝達手段の途中に介在して配置された第3の強度をもつ脆弱部と、前記脆弱部の部材を覆うパイプ状の保護部材とを具備し、前記第3の強度は前記第1の強度及び第2の強度よりも弱いことを特徴とする外科用処置具。
2.前記処置作業手段は把持手段であり、これは一対の把持部材からなり、これらの少なくとも1つの把持部材が支点ピンを中心に旋回することにより開閉し、かつ前記支点ピンのせん断強さが前記第1の強度に相当し、一方、脆弱部の部材はピンによって構成されこのピンが伝達手段の軸に対し垂直に配置され、かつ前記脆弱部のピンのせん断強さが前記第3の強度に相当することを特徴とする第1項に記載の外科用処置具。
3.前記把持部材は一対の把持部材からなり、前記伝達手段とは1つ以上のリンク及びピンによって連結され、これにより開閉動作が行われ、前記第1の強度は前記ピンのうちで最も弱いピンの強度に相当し、一方、脆弱部の部材はピンによって構成され伝達手段の軸に対し垂直に配置され、かつ前記脆弱部の部材のピンの剪断強さが前記第3の強度に相当することを特徴とする第1項ないし第2項に記載の外科用処置具。
【0097】
4.前記第1の強度を有する支点ピン及び前記ピンと、前記脆弱部の部材のピンとは同じ材質からなり、前記脆弱部の部材のピンの外径が、前記第1の強度を有するピンより小さいことを特徴とする第2項または第3項に記載の外科用処置具。
5.前記支点ピンと前記脆弱部の部材のピンとは外径が同じで、前記脆弱部のピンの材質が前記第1の強度を有するピンより弱いことを特徴とする第2項ないし第3項に記載の外科用処置具。
6.前記脆弱部の部材は前記伝達手段の一部をくびれさせ、かつくびれ部の引張り強さが前記第3の強度に相当することを特徴とする第1項に記載の外科用処置具。
7.前記脆弱部の部材と前記パイプ状部材とはねじにより係合され、前記脆弱部の部材に設けられた雄ねじのねじ逃げ部が前記くびれに相当することを特徴とする第6項に記載の外科用処置具。
【0098】
(1群の効果)
1項のものによれば、操作手段に過大な力が加えられたとき把持部が破損し破損部品が体内に脱落・飛散することを防ぐことができる。さらに、脆弱部材をパイプ状の部材で覆うことにより、曲げ等の軸力以外の力に対し強くなるという効果がある。また、繰り返し使用に対しても効果的である。
2,3項のものによれば、把持手段と脆弱部材の強度はそれぞれのピンのせん断強度によってのみ比較できるので、確実に脆弱部材を弱くすることができる (破壊はより安全に行われる)という利点がある。従って、設計の面からも簡単であるといえる。
4,5項のものによれば、ピンの強度比較がより単純となる。
6.脆弱部材(くびれ部)は伝達手段の引張り力によって破断するが、構造が簡単であるため破断力量にバラつきが少なく、2〜4と同様、より確実な安全性が得られる。さらに、くびれ部は特に繰り返しの曲げに対し弱いため、この部分をパイプで覆うという組み合わせが効果的になる。
7項のものによれば、脆弱部材周りの構成部材数が少なくてすみ、加工も簡単である。
【0099】
(2群)
1.近位端と遠位端を有する管状部材と、前記管状部材の遠位端に結合された把持手段と、前記管状部材の近位端に結合された操作手段と、前記管状部材の管路内に配置され前記操作手段の動きを前記把持手段に伝える棒状の伝達手段とを具備し、前記把持部材と前記管状部材とは互いに回転方向に締結されて前記操作手段に対して一体となって回転し、前記伝達手段と前記管状部材の間には弾性部材が配置されこの間隙をシールし、さらに前記弾性部材は前記操作手段に装着されており、前記回転運動の際前記管状部材・伝達手段に対し摺動して摩擦力を発生することを特徴とする外科用処置具。
2.近位端と遠位端を有する管状部材と、前記管状部材の遠位端に結合された把持手段と、前記管状部材の近位端に結合された操作手段と、前記管状部材の管路内に配置され前記操作手段の動きを前記把持手段に伝える棒状の伝達手段とからなり、前記把持部材と前記管状部材とは互いに回転方向に締結されており、前記操作手段に対して一体となって回転し、前記伝達手段と前記管状部材の間には弾性部材が配置されこの間隙をシールし、さらに前記弾性部材は前記管状部材に装着されており、前記回転運動の際、前記操作手段・伝達手段に対して摺動して摩擦力を発生することを特徴とする外科用処置具。
【0100】
3.前記摺動面は一定の膜厚をもった径縮小部となっていることを特徴とする第1項ないし第2項記載の外科用処置具。
4.前記弾性部材の摺動面には1つ以上の半球状の突起が設けられており、前記管状部材にはこれと係合する1つ以上の半球状の凹みとなっていることを特徴とする第1項ないし第2項に記載の外科用処置具。
5.前記弾性部材の摺動面には1つ以上の半球状の突起が設けられており、前記伝達手段にはこれと係合する1つ以上の半球状の凹みとなっていることを特徴とする第1項ないし第2項に記載の外科用処置具。
6.前記弾性部材の摺動面には1つ以上の半球状の突起が設けられており、前記操作手段にはこれと係合する1つ以上の半球状の凹みとなっていることを特徴とする第2項に記載の外科用処置具。
【0101】
7.前記管状部材の摺動面には1つ以上の半球状の突起が設けられており、前記弾性部材にはこれと係合する1つ以上の半球状の凹みとなっていることを特徴とする第1項に記載の外科用処置具。
8.前記伝達手段の摺動面には1つ以上の半球状の突起が設けられており、前記弾性部材にはこれと係合する1つ以上の半球状の凹みとなっていることを特徴とする第1項に記載の外科用処置具。
9.前記操作手段の摺動面には1つ以上の半球状の突起が設けられており、前記弾性部材にはこれと係合する1つ以上の半球状の凹みとなっていることを特徴とする第2項に記載の外科用処置具。
【0102】
10.前記弾性部材は前記伝達部材・前記操作手段・前記管状部材から着脱自在であることを特徴とする第1項ないし第8項に記載の外科用処置具。
【0103】
(2群の従来技術)
近年、内視鏡観察下で行われる外科手術が盛んに行われている。本術式の拡大と共に処置具類も変化し、ハンドルに対し挿入部/先端部が回転可能な処置具が一般的になっている。更に、使用上この回転力量は軽過ぎず重過ぎない適度な回転力量が要求される。
これらを実現するために、例えばUSP4,674,501では回転ノブのフランジ面に凹を設け、これに係合するボール状の部材がハンドル内に収納されており、回転ノブの凹部にボール状の部材を押しつける方向にバネ付勢することにより回転抵抗或いはクリック感を生み出している。
更に、DE G9114306.3 U1ではグリップとこれに回転可能なように配置された管軸とはバネの圧力の下に相互に係合関係にあり、さらにこの係合面には歯切りを設け構造的に正確な回転固定が得られるようになっている。回転時には、この歯切りにより発生する限界トルク以上のトルクにて管軸に接続された円盤状の部材(ノブ)を回転させれば良い。
この他、回転位置関係を変更するために、ハンドル及び挿入軸とを固定するネジを設け、これを緩めたり締め付けたりすることによるもの等多くの方法が示されている。
【0104】
(2群の課題)
USP4,674,501、DE G9114306.3 U1両タイプとも回転を規制するためにバネを用いており、この部分をハンドルや挿入軸で覆っている。このような構造は操作性には優れるものの洗滌性、滅菌性に劣るため実用的ではない。また、一般に行われている気腹下の内視鏡下外科手術では気密性が要求されるためにシール部材を設けるなど更に構造的に複雑なものとなり加工性、組立性ともに煩雑なものとなる。
ハンドルと挿入軸とをネジにより固定するタイプでは術中に挿入部を回転するのは面倒であり、現実には回転操作は不可能である。
【0105】
2群のものは、簡単な構造で、洗滌滅菌性に優れ、適度な回転力量を有する操作性に優れた処置具を提供することを目的とする。
【0106】
(2群の効果)
1〜3項のものによれば、簡単な構造で、管状部材と伝達部材の間の気密を確保し、かつ適度な回転力量を得ることができる。従って、部品数が少なく、コスト的にも有利であるし、洗滌滅菌の点でも有利である。
4〜9項のものによれば、摺動面に凹凸を付けることにより回転時適度なクリック感を作り出すことができる。
10項のものによれば、回転力量を弾性部材の摺動によって得るために、摩擦による弾性部材の消耗が起り、回転力量が変化(小さくなる)した場合、それを交換することにより、コストの削減になる。さらに、滅菌時に取り出すことによって弾性部材に保たれていた部分に隙間ができ、滅菌ガスがスムーズに流入することによって、より滅菌性が確実なものとなる。
【0107】
(3群)
1.近位端と遠位端を有する管状部材と、前記管状部材の遠位端に結合された把持手段と、前記管状部材の近位端に結合された操作手段と、前記管状部材の管路内に配置され前記操作手段の動きを前記把持手段に伝える棒状の連結手段とからなる外科用縫合具において、前記把持手段は1対の把持部材からなり、これらの少なくとも1つの把持部材が支点ピンを中心に旋回することにより開閉し、さらに、少なくとも前記把持部材の1つの把持面には把持部材の側面側に中心をもつ放射状溝が複数設けられ、前記放射溝群は縫合用針を把持・固定するのに適当な溝深さを有し、各々のなす角度が最大約90゜をなすことを特徴とする。
2.前記把持部材の側面は前記放射状溝と同一中心の円弧形状をなすことを特徴とする第2項に記載の外科用処置具。
3.前記放射溝は一対の把持面同士が対称な形状となっていることを特徴とする第1項ないし第2項に記載の外科用処置具。
4.前記放射溝の方向を示す指示手段を備えることを特徴とする第1項ないし第2項に記載の外科用処置具。
【0108】
(3群の従来技術)
内視鏡下外科手術では処置具(鉗子)の操作は体外からモニター表示を通じて行うが、これらの操作は訓練を要し、特に針糸による縫合等の作業は細かいために非常に難しくかなりの熟練を必要とする。
これらの問題を解決するために、例えば特開平4−212337号公報では、先端部に横方向の開口をもつパイプ状部材とこのパイプ内で軸方向に移動可能な部材とで針を開口部で係合する持針器を示している。開口部は軸に対し、傾斜しているため、常にこの傾斜角で針をつかむことができる。
その他、USP5,417,701 では先端針把持部に、針を予定の角度に向ける溝手段を設け、さらに、溝手段と隣接するように磁石を埋め込み、針を落とさない様にするものもある。
【0109】
(3群の解決しようとする課題)
特開平4−212337号公報では、針の向きは開口部の軸に対する傾斜角で決まってしまうため、これ以外の角で針を保持することが出来ない。
更にこの構造では把持対象は針のみであり組織等を把持することは出来ない。つまり、汎用性のない鉗子である。
USP5,417,701 でも同様に針の方向は一方向に限られてしまうので、様々な状況下では好ましくない向きに針が向いてしまう可能性がある。また、把持部の溝に磁石を埋め込むなど原価が高くなる傾向があるという欠点を有する。 3群のものでは簡単な構造で、針を所望の向きに保持することができ、かつ体組織を把持することが出来る汎用性の高い鉗子を提供することを目的とする。
【0110】
(3群の効果)
1項のものによれば、縫合針向きは溝によってガイドされるため、把持する位置をかえるだけで容易に所望の向きに針を把持することができる。針の向きは溝方向が把持部材の長軸垂直方向に対し45゜程度の自由度があれば十分であり実用的である。
2項のものによれば、溝は把持部の側面形状の接線に対し法線の位置関係にあるため、組織に針を通す場合、把持部のうち最初に対象組織に当たる(触れる)のは針を把持している位置である。従って、効率よく(深く)針を剌入でき、確実な縫合操作ができるというメリットがある。
3項のものによれば、通常外科処置に使用されるような、非対称な把持面であると縫合針の方向性が出しにくい。(ガイドとしての機能という点で劣る)対称な把持面にすることで本欠点は解消される。
4項のものによれば、溝の方向を示す手段を設けることにより、より簡単に縫合針を扱うことができる。
【0111】
(4群)
1.近位端と遠位端を有する管状部材と、前記管状部材の遠位端に結合された把持手段と、前記管状部材の近位端に結合された操作手段と、前記管状部材の管路内に配置された前記操作手段の動きを前記把持手段に伝える棒状の伝達手段とからなる外科用処置具において、前記把持手段は一対の把持部材からなり、前記1対の把持部材の側面に沿ってある距離(2mm程度)隔てた位置に縫合用針の外径よりも大きい直径をもつ孔が設けられ、前記孔は把持面を貫き、他方の把持部材に抜け得ると共に、前記孔につながり縫合糸の太さよりも大きく縫合針よりも細い幅をもつスリットが前記把持手段の側面に開放しており、これら孔とスリットの組み合わせが少なくとも1つ以上設けられており、前記把持手段を閉じた状態で前記両把持部材の両把持面にて孔及びスリットの位置が一致することを特徴とする。
【0112】
2.前記複数孔の中心を結んだ仮想線は前記把持面において、1つ以上の屈曲点をもつことを特徴とする第1項に記載の外科用処置具。
3.前記複数孔の中心を結んだ仮想線は前記把持面において、湾曲形状をなしていることを特徴とする第1項に記載の外科用処置具。
4.前記把持部材の遠位端に前記孔及び前記スリットが1つ設けられていることを特徴とする第1項ないし第3項に記載の外科用処置具。
5.前記把持部材には把持面形状及び前記孔位置が一致する板状の部材が少なくとも1つ取り付けられていることを特徴とする第1項ないし第4項に記載の外科用処置具。
6.前記板状部材は生体吸収材料でできていることを特徴とする第5項に記載の外科用処置具。
7.前記把持手段と前記管状部材とは着脱自在であり、把持手段を閉じた状態で分割することを特徴とする第1ないし第6項記載の外科用処置具。
【0113】
8.前記孔の把持部材側と把持面側に座ぐりがあることを特徴とする第1項ないし第7項に記載の外科用処置具。
【0114】
(4群の従来例)
内視鏡下外科手術では、処置具(鉗子)の操作は体外からモニター表示を通じて行うため、通常の開腹手術に比べて難しくかなりの熟練を要する。特に、組織の切除断端のように縫合を密に行うような操作は難しく多くの時間を費やすことになる。
【0115】
(4群の解決しようとする課題)
これらの問題を解決する為に、自動縫合具と呼ばれる装置が用いられる。すなわち、長く幅広の把持部には中央部にはカッターなどの切除手段があり、その両側にホッチキスの様な金属部品が複数個、複数例に渡って配置され、この把持部にて切除組織の切除ラインを把持した後、ホッチキス状の金属部品により組織を縫合し、その中央を切除手段によって切除するというものである。これにより縫合と切除が一度に行えるという利点がある。
しかし、この装置は高価であり、また切除ラインが直線的であるため必要以上に長い切除ライン(必要以上に組織を切除してしまう)をとってしまうという欠点がある。金属部品が永久に体内に残ってしまうという点も挙げられる。
一方、針糸を用いて一針毎に縫い合わせる場合は、縫合を進めるに従って縫合ラインが狙いからずれてしまったり、その際縫合ピッチがばらつくため、縫合不全を引き起こす可能性があり、かつ時間のかかる現実的な方法ではない。
4群のものは狙った縫合ラインを簡単にかつ確実に針糸で縫合することのできる鉗子を提供することを目的とする。
【0116】
(4群の効果)
1項によれば、臓器を把持・圧着しながら縫合操作が行えるため、肺等の臓器の一部を手縫いで一定のピッチで、更に正確な縫合ラインで縫合することができる。また、自動縫合具による縫合のようにコストがかからず、しかも金属等の異物を体内に残すことがない、という利点もある。
2,3項によれば、曲がっていない(ストレート)タイプに比べて病変部に対してのセーフティーマージンがとり易い。更に、病変部の周りを縫合(切除)する場合も、必要最小限の縫合(切除)で済む。また、ストレートタイプでは2回の縫合が必要なケースでも1回で済むこともある。
4項によれば、縫合開始位置を把持部材の先端にすることにより、縫合始点部における縫合不全の恐れが無い。
5項によれば、縫合後においても、板状の部材が組織を圧着するために、孔のピッチが大きくても十分縫合機能がある。
6項によれば、自動縫合具のように金属等の異物を残さずに請求項5の効果が得られる。
7項によれば、組織を把持圧着した状態で体内に留置できるためトラカール孔を1つ減らすことができる。更に、体外からの操作と異なり、その動きを拘束する挿入部(管状部材)がないため、縫合時の自由度が増すというメリットがある。
8項によれば、座ぐりがあることにより、縫合針を把持部の孔に入れやすくなるというメリットがある。
【0117】
(5群)
1.近位端と遠位端を有する管状部材と、前記管状部材の遠位端に結合された切断手段と、前記管状部材の近位端に結合された操作手段と、前記管状部材の管路内に配置され前記操作手段の動きを前記切断手段に伝える棒状の伝達手段からなる外科用処置具において、前記切断手段は第1、第2の刃付きブレードを有し、前記刃付きブレードを密着させるパイプ状のカシメ部材と、その中に配置された支点ピンによって前記刃付きブレードを前記管状部材に固定することを特徴とする外科用処置具。
2.前記支点ピンの両端部は直径が小さくなっており、前記管状部材の支点ピン取り付け孔は前記支点ピンの両端部の直径よりも大きく、かつ中央部の直径よりも小さいことを特徴とする第1項に記載の外科用処置具。
【0118】
3.前記棒状の伝達手段の遠位端には前記刃付きブレードを作動せしめる駆動部材が配置され、駆動部材と前記管状部材には刃付きブレードが閉じた後に突き当たる付き当て部が設けられていることを特徴とする第1項ないし第2項に記載の外科用処置具。
【0119】
(5群の従来の技術)
従来、鋏の切れ味をだすために、例えばUSP5,392,789では、2枚の鋏ブレードと、それらを両側からはさみ込んでピン固定するU字アームにおいて、一方の鋏ブレードのピン孔或いはU字アームの一方のピン孔にネジを形成し、ネジを設けたピンによって2枚の鋏ブレードを密着させて切れ味を出すというものがある。
その他、U字アームのピン孔を座ぐり穴とし、鋏ブレードをU字アームに装着した後、皿付のピンでカシメ作業を行い、2枚の鋏ブレードを密着させることによって切れ味を出すのが一般的である。
【0120】
(5群のものが解決しようとする課題)
一般に、内視鏡下外科手術用の処置具は細いものであるために、構造、強度的にかなりの制約を受ける。
中でも先端鋏部は構造的に複雑になりやすく個々の部品はかなり細いものとなる。
従来のU字アームをカシメピンでカシメして、2枚の鋏ブレードを密着させる方法ではU字アームをカシメピンまわりには常に応力が加わっており、アームの肉厚が薄いためにオートクレーブ等の滅菌と使用を繰り返すうちに、この部分が腐蝕割れをおこす可能性がある。こうなると、切れ味がなくなるばかりでなく、使用中に先端部から部品が脱落することも考えられる。
さらに鋏ブレードとU字アームとの摩擦が大きく切れ味を出すために鋏ブレードを密着させようとすればするほど作業力量が大きくなるという欠点もあった。また、USP5,392,789ではU字アーム或いはブレードにねじ加工を施し、ねじのあるピンで固定しているが、大きさに制約があるため実際にはこのような加工は難しい。加工できたとしてもこのピンには大きな力が加わるため強度不足となる可能性が大きい。
5群のものは簡単な加工(構造)で、作業力量が小さく切れ味の良い安全な鋏鉗子を提供することを目的とする。
【0121】
(5群の効果)
1項によれば、鋏ブレードを密着する力は、カシメ部材によってのみ発生するため、U字アームのピン孔まわりには力は加わらない。従って、カシメを強くすることが出来、同時にU字アームの腐蝕割れも防ぐことができる。
さらに、鋏ブレードとカシメ部材との摺動部面積が小さいため作動力量が小さくなるという効果もある。
【0122】
2項によれば、機械的に固定するために組立が簡単である。また、切れ味の悪くなった鋏ブレードを容易に交換することが可能となる。
3項によれば、操作部に過大な力が加わった場合、鋏ブレードが閉じた後は、支点ピンに力が加わることはなく、従ってピンが破壊するようなこともなく安全である。
【0123】
(6群)
1.近位端と遠位端を有する管状部材と、前記管状部材の遠位端に結合された把持手段と、前記管状部材の近位端に結合された操作手段と、前記管状部材の管路内に配置された前記操作手段の動きを前記把持手段に伝える棒状の伝達手段を有する外科手術用処置具において、前記管状部材と前記伝達手段との間に管腔を有し、管状部材はこの管腔に通じる口金を備え、前記口金につながる経路を前記管腔内で規定する経路用切換え手段を有することを特徴とする。
2.前記切換え手段は前記伝達手段に連動(操作手段にも連動)することを特徴とする第1項に記載の外科用処置具。
3.前記切換え手段は前記口金の前記管腔入り口付近に配置され、前記管状部材の内径にほぼ等しい外径をもつ部材で構成され、前記切換え手段は、管腔の経路を遠位端側に切り換える第1の位置と、前記経路を近位端側に切り換える第2の位置を形成することを特徴とする第1項ないし第2項に記載の外科用処置具。
【0124】
4.前記切換え手段は弾性部材よりなることを特徴とする第1項ないし第3項に記載の外科用処置具。
5.前記伝達手段の遠位端に配置された切換え手段は、前記管路部材との間隙をなくす第1の状態と、前記間隙を形成する第2の状態を形成することを特徴とする第1項に記載の外科用処置具。
6.前記切り換え手段は弾性部材よりなることを特徴とする第5項に記載の外科用処置具。
7.前記口金より遠位端側の流路抵抗が近位端側の流路抵抗よりも大きく、かつ近位端側の流路を閉鎖する手段を備えたことを特徴とする第1項ないし第2項に記載の外科用処置具。
【0125】
(6群の従来例)
本術式と用いられる鉗子は長いパイプ状の挿入部をもち、手元側の操作部の動きを先端鉗子部に伝える駆動軸を挿入部の内部に備えているのが一般的である。これらの処置具は挿入部が長いため、この内部(管腔)に体液や血液などの汚れが入り込むと取り除くことが難しくなる。
この問題を解決する為に多くの処置具は、挿入部の途中に送水用の口金を設け、この口金より管腔内に洗滌液を注入し、内部に入り込んだ汚れを洗い流す方式をとっている。
また、鉗子の先端と手元側の挿入部にチューブを取り付け、専用の洗滌機に接続し内部に強制的に水流を与える方式をとるものもある。
【0126】
(6群のものが解決しようとする課題)
前述の洗滌口金より送水し、内部の汚れを洗い流す方式では管路内の流れ方向は管路の抵抗によって決まってしまう。すなわち、内部に汚れが溜っている部分は他の部分に比べ管路抵抗が大きいために、流れはより抵抗の小さい方向(汚れの少ない方向)に向かう。従って、この方式では効果的に汚れを洗い流すことが困難である。
また、専用の洗滌機を使う場合は前記のような不具合はないものの、洗滌する手間(主にセッティング)がかかり、さらに専用機を用いるということで取り回しが不便でコスト面でも不利である。
6群のものは挿入部管腔内の先端側及び基端側の任意の方向へ送水可能な、効果的に管腔内の汚れを取り除くことのできる洗滌性も向上する外科用処置具を提供することを目的とする。
【0127】
(6群の効果)
1項のものによれば、鉗子の管腔内に洗滌液を流すとき、その流れ方向を限定することにより、汚れのひどい部分(方向)をより効果的に洗滌することができる。また、管腔内全長に渡って洗滌液が流れるため、洗滌性も向上する。
2項のものによれば、切り換え手段が操作手段に連動するため、洗滌時の作業が楽になる。
3項のものによれば、切り換え手段を管腔入り口に設けるため、管腔内に洗滌液がよどんでいる個所(よどみ点:流速=0)がない。よって、確実に管路内の汚れを洗い流せる。
4項のものによれば、弾性部材を圧着して流れを切り換える為、確実な流路切換が可能である。
【0128】
(7群)
1.挿入部に管腔があり、管腔内に操作ロッドを配設し、基端部にある操作部の動作を前記操作ロッドによって、先端部にある作業部材に動作を伝える外科用処置具において、挿入部管腔内に通じシリンジ筒先が挿入可能な洗滌ポートを形成する口金と、口金に取り付けられ、挿入されたシリンジ筒先の外周を締め付けるように配置された弾性部材とを備えることを特徴とする。
2.弾性部材がシリコンまたはゴムであることを特徴とする前記第1項の外科用処置具。
3.弾性部材は口金にかぶせることが可能なキャップ形状であり、口金と弾性部材は着脱可能であることを特徴とする前記第1項の外科用処置具。
4.シリンジの筒先が挿入される口金の深さを深くとも3mmに設定し、シリンジの筒先を締めつける部分の弾性部材の厚さを厚くとも1mmに設定したことを特徴とする前記第1項の外科用処置具。
【0129】
(7群の従来例)
従来、特願6−179194号出願や特開平8−38495号公報に示すように挿入部管腔内の洗滌ポートとしてルアロック形状を使用していた。
【0130】
(7群のものが解決しようとする課題)
特願6−179194号の出願のもので用いられているルアロック形状の場合、確実にシリンジとの水密を確保する為、ルアロックのテーパ形状を、JIS T3201ガラス注射筒の筒先検査ゲージに従って設計するとテーパ部長は7mm程度必要となり洗滌ポート口金が大型化する。大型化した洗滌ポート口金は術中に邪魔になるという不具合があった。そこで、7群のものは洗滌ポート口金を小型化することを目的とする。
【0131】
(7群の効果)
1項のものによれば、鉗子の管腔内に洗滌液を流すとき、その流れ方向を限定することにより、汚れのひどい部分(方向)をより効果的に洗滌することができる。また、管腔内全長に渡って洗滌液が流れるため、洗滌性も向上する。
【0132】
2項のものによれば、切換え手段が操作手段に連動するため、洗滌時の作業が楽になる。
3項のものによれば、切換え手段を管腔入り口に設けるため、管腔内に洗滌液がよどんでいる個所(よどみ点:流速=0)がない。よって、確実に管路内の汚れを洗い流せる。
4項のものによれば、弾性部材を圧着して流れを切り換える為、確実な流路切換が可能である。
【0133】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、操作手段に過大な力が加えられたとき、先端作業手段の部材の変形が防止され、また、破損して破損部分が体内に脱落したり飛散したりすることを防ぐことができる。さらに脆弱部材をパイプ状の保護部材で覆うことにより脆弱部材が曲げ等の所定方向以外の力に対して強くなり、脆弱部材は安定した所定の破壊強度を得、その破壊強度の設定も容易であると共に、繰り返し使用に対しても耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る把持鉗子の全体を概略的に示す外観図。
【図2】第1実施形態に係る把持鉗子の把持部の説明図。
【図3】第1実施形態に係る把持鉗子の操作部の説明図。
【図4】第1実施形態に係る把持鉗子の操作部における結合部材とその作用の説明図。
【図5】第2実施形態に係る把持鉗子の操作ロッドの途中部分の分解図。
【図6】第2実施形態に係る把持鉗子の操作ロッドの途中部分の縦断面図。
【図7】第3実施形態に係る把持鉗子の操作部におけるゴムキャップ取付部近傍の部分断面図。
【図8】第4実施形態に係る把持鉗子の操作部におけるゴムキャップ取付部近傍の部分断面図。
【図9】第5実施形態に係る把持鉗子の操作部におけるゴムキャップ取付部近傍の部分断面図。
【図10】(a)は第6実施形態に係る把持鉗子の操作部におけるゴムキャップ取付部近傍の部分断面図、(b)は(a)中B−B線に沿う断面図。
【図11】第7実施形態に係る把持鉗子の把持部の説明図。
【図12】(a)は第7実施形態に係る把持鉗子の把持部材における一部の側面図、(b)は他の把持鉗子の把持部材における一部の側面図。
【図13】第7実施形態に係る把持鉗子の把持部の側面図。
【図14】第7実施形態に係る把持鉗子の説明図。
【図15】第7実施形態に係る他の把持鉗子の把持部の側面図。
【図16】第8実施形態に係る把持鉗子の把持部の側面図。
【図17】第8実施形態に係る把持鉗子の把持部の一部分の側面図。
【図18】第9実施形態に係る把持鉗子の把持部の側面図。
【図19】(a)は第9実施形態に係る把持鉗子を用いての使用説明図、 (b)は(a)中A−A線に沿う断面図。
【図20】第9実施形態に係る把持鉗子を用いた縫合の使用説明図。
【図21】自動縫合具による切除ラインと第9実施形態に係る把持鉗子を用いた切除ラインとの比較を示す説明図。
【図22】(a)は第10実施形態に係る把持鉗子の把持部の側面図、(b)は(a)中A−Aに沿う断面図。
【図23】(a)は第11実施形態に係る把持鉗子の把持部の側面図、(b)はその把持状態の説明図。
【図24】(a)は第12実施形態に係る把持鉗子の把持部の把持状態の側面図、(b)は(a)中A−A線に沿う断面図。
【図25】第12実施形態に係る把持鉗子による把持状態の側面図。
【図26】(a)は第13実施形態に係る把持鉗子における把持部の側面図、(b)は(a)中B−Bに沿う断面図、(c)はカシメ部材の斜視図、(d)はカシメ作業の説明図。
【図27】第14実施形態に係る把持鉗子におけるカシメ部材の斜視図。
【図28】(a)は第14実施形態に係る把持鉗子の把持部の縦断面図、(b)はその把持部の斜視図。
【図29】第15実施形態に係る把持鉗子の操作部接続部材の断面図。
【図30】第15実施形態に係る把持鉗子の操作部接続部材の断面図。
【図31】第16実施形態に係る把持鉗子の操作部接続部材の断面図。
【図32】第16実施形態に係る把持鉗子の把持部の断面図。
【図33】第17実施形態に係る把持鉗子の操作部接続部材の断面図。
【図34】(a)は第17実施形態に係る把持鉗子の把持部材の断面図、 (b)は(a)中B−B線に沿う断面図。
【図35】第17実施形態に係る把持鉗子の操作部接続部材の断面図。
【図36】(a)は第17実施形態に係る把持鉗子の把持部材の断面図、 (b)は(a)中B−B線に沿う断面図。
【図37】第17実施形態に係る把持鉗子の操作部接続部材の断面図。
【図38】第18実施形態に係る外科用処置具の外観図。
【図39】(a)は第18実施形態に係る外科用処置具の操作部の断面図、(b)は(a)中B−B線に沿う断面図。
【図40】第19実施形態に係る外科用処置具の操作部接続部材の断面図。
【図41】第19実施形態に係る外科用処置具の操作部接続部材の変形例の断面図。
【図42】第20実施形態に係る外科用処置具の操作部接続部材の断面図。
【図43】第20実施形態に係る外科用処置具の操作部接続部材の断面図。
【符号の説明】
1…把持鉗子、2…挿入部、3…把持部、5…操作部接続部材、6…操作部、7…操作ロッド、11a,11b…一対の把持部材、14…支点ピン、15…開閉用駆動ピン、35…結合部材、36…孔、37…固定部、38…結合用球部、45…雄ねじ部、46…雌ねじ部、48…ねじ逃げ部。

Claims (3)

  1. 近位端と遠位端を有する管状部材と、
    前記管状部材の遠位端に結合された処置作業手段と、
    前記管状部材の近位端に結合された操作手段と、
    前記管状部材の管路内に前記管状部材の軸方向に進退可能に挿入され、前記操作手段により前記軸方向へ移動させられるときの動きを前記処置作業手段に伝える操作ロッドと、
    前記操作ロッドの近位端に形成された孔内に挿入される、前記操作ロッドに結合された結合部と、前記結合部よりも近位端側に形成され、前記操作ロッドに加わる第1の引張り力により破損する脆弱部と、前記脆弱部よりも近位端側に形成され、前記孔の内面に密着して嵌合される固定部とを含み、前記結合部と前記脆弱部と前記固定部を一体に形成した、前記操作手段に接続される結合部材と、
    を具備し、
    前記第1の引張り力は、前記操作手段により前記操作ロッドを引張り操作した場合、前記処置作業手段が破損する第2の引張り力と、前記操作ロッドが破損する第3の引張り力に比べて小さいことを特徴とする外科用処置具。
  2. 近位端と遠位端を有する管状部材と、
    前記管状部材の遠位端に結合された処置作業手段と、
    前記管状部材の近位端に結合された操作手段と、
    前記管状部材の管路内に前記管状部材の軸方向に進退可能に挿入され、前記操作手段により前記軸方向へ移動させられるときの動きを前記処置作業手段に伝える操作ロッドと、
    前記操作ロッドの近位端に形成された、雌ねじ部を有した孔内に挿入される、前記雌ねじ部にねじ込まれる雄ねじ部と、前記雄ねじ部よりも近位端側に形成され、前記雄ねじ部の谷の径より小径に形成され前記操作ロッドに加わる第1の引張り力により破損する脆弱部となる小径部と、前記小径部よりも近位端側に形成され、前記孔の内面に密着して嵌合される固定部とを含み、前記雄ねじ部と前記小径部と前記固定部を一体に形成した、前記操作手段に接続される結合部材と、
    を具備し、
    前記第1の引張り力は、前記操作手段により前記操作ロッドを引張り操作した場合、前記処置作業手段が破損する第2の引張り力と、前記操作ロッドが破損する第3の引張り力に比べて小さいことを特徴とする外科用処置具。
  3. 近位端と遠位端を有する管状部材と、
    前記管状部材の遠位端に結合された処置作業手段と、
    前記管状部材の近位端に結合された操作手段と、
    前記管状部材の管路内に前記管状部材の軸方向に進退可能に挿入され、互いに連結される前方の操作ロッドと後方の操作ロッドを有し、一方の操作ロッドの連結端には前記各操作ロッドの外径以下の幅の平板部が突設され、他方の操作ロッドの連結端には前記平板部を嵌め込むスリットが形成され、前記スリットを形成した前記操作ロッドには前記スリットに嵌め込まれた前記平板部を貫通するとともに前記操作ロッドに加わる第1の引張り力により破損するピンとを含み、前記操作手段により前記軸方向へ移動させられるときの動きを前記処置作業手段に伝える伝達手段と、
    前方の操作ロッドと後方の操作ロッドにわたり前記ピンを含む領域に被嵌して前記領域を密に覆う嵌合部を有したパイプ状の保護部材と、
    を具備し、
    前記第1の引張り力は、前記操作手段により前記伝達手段を引張り操作した場合、前記処置作業手段が破損する第2の引張り力と、前記伝達手段が破損する第3の引張り力に比べて小さいことを特徴とする外科用処置具。
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