JP3816358B2 - 中空外壁パネル用吊具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物の外壁工事において、中空部が形成された中空外壁パネルを吊上げて、所定の取付け位置に搬送するために使用される中空外壁パネル用吊具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、建物の外壁工事において、中空外壁パネル(以下、単に外壁パネルという)Pを吊下げて、所定の取付け位置へ搬送する場合には、図8に示すように、外壁パネルPを、ナイロンスリングR2で巻付けるようにして玉掛けをおこない、この状態で外壁パネルPを図外のクレーン等で吊下げて搬送して、所定の取付け位置に取付けていた。
【0003】
また、図7に示すように、吊具100を使用して、外壁パネルPを図外のクレーン等で吊上げて搬送して、所定の取付け位置に取付けるようにもしていた。このときの吊具100は、外壁パネルPの中空部Sに出入可能な本体101と、該本体101が外壁パネルPの中空部Sに挿入された状態で、外壁パネルPに係止して、本体101を外壁パネルPに固定することができる係止片102と、吊上げ用ロープR1を掛止するための掛止部103とから構成されている。
【0004】
吊上げ手順としては、本体101に配設された操作片104を引き上げて、係止片102を本体101内に格納し、この状態で吊具100を、外壁パネルPに穿設された挿通孔P1の位置に合わせた後、操作片104を引き下げて、係止片102を本体101から延出させて、外壁パネルPの挿通孔P1に係止させて、掛止部103に図外の吊下げ用ロープを掛止して、図外のクレーン等で吊下げて搬送して、所定の取付け位置に取付けることとしていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、外壁パネルPにナイロンスリングR2を玉掛けして、吊上げる手段では、外壁パネルPの重心を失わないように、注意深く玉掛けをおこなわなければならず、玉掛けを怠ると、外壁パネルPがナイロンスリングR2から脱落する恐れがあるという問題点があった。
また、正確に玉掛けがおこなわれていたとしても、強風や突風で、外壁パネルPが回転して、作業上危険であるという問題点があった。
【0006】
更に、既に取付けられた別の外壁パネルPに隣接させて、外壁パネルPを取付ける場合、ナイロンスリングR2を玉掛けした状態のままで、外壁パネルPに固定すると、ナイロンスリングR2を取外すことができないので、外壁パネルPを、その下端部で仮固定し、やや前傾させた状態で、ナイロンスリングR2を取外し、この後外壁パネルPを本固定するようにしていた。このため、外壁パネルPの固定が不完全な状態で、ナイロンスリングR2を取外すことになるので、この作業の際にも、外壁パネルPが落下する恐れがあるという問題点があった。
【0007】
更にまた、前述の吊上げ手段では、ナイロンスリングR2の着脱が面倒であると共に、外壁パネルPを所定の取付け位置に取付ける前に、一旦仮固定して不安定な態勢に支持する必要があり、作業性がよくないという問題点があった。
【0008】
次に、外壁パネルPを、吊具100に係止させて、吊上げる手段では、外壁パネルPを図外のクレーン等で吊上げて搬送する際に、吊具100は、外壁パネルPの上方を係止させて、外壁パネルPを吊上げているので、強風や突風で、外壁パネルPの下方が煽られて外壁パネルPが回転して、作業上危険であるという問題点があった。
また、外壁パネルPに挿通孔P1を穿設しなければならないので、外見上好ましくないという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、中空部が形成された中空外壁パネルの吊上げおよび建物への取付けを安全におこなうことができて、かつ作業性を向上させることができる吊具を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するためになされた本発明の請求項1に記載の中空外壁パネル用吊具は、中空外壁パネルの中空部に出入可能であって、吊上げ用ロープを掛着させる掛着部を備えた断面略U字形の受具と、該受具が前記中空部に挿入された状態で、前記受具の下端近傍に穿設された挿通孔に着脱自在に挿着されて、中空外壁パネルの下面を支持する中空外壁パネルの厚さより大きい長さ寸法を有する管状の支持具とからなり、前記支持具は、下方に隣接して施工される中空外壁パネルとの間のクリアランスより小さい高さ寸法を有するとともに、その側面に穿設された孔から出没可能に設けられたボール及び該ボールを前記孔から突出する方向へ付勢する圧縮ばねを備えてなるラッチ具と、側面から突出するストッパとが、前記受具の幅より広い間隔をおいてそれぞれ配設されたものであることを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。本実施の形態に係る中空外壁パネル用吊具(以下、単に吊具という)10は、図1に示すように、中空部Sが形成された中空外壁パネル(以下、単に外壁パネルという)Pを吊上げて、建物の所定の取付け位置へ搬送する際に使用される吊具であって、外壁パネルPの中空部Sの出入可能であって、吊上げ用ロープR1を掛着させる掛着部20を備えた断面略U字形の受具30と、該受具30が前記中空部Sに挿入された状態で、前記受具の下端近傍に穿設された挿通孔31に着脱自在に挿着されて、中空外壁パネルの下面を支持する中空外壁パネルPの厚さより大きい長さ寸法を有する管状の支持具40とからなるものである。以下、更に詳細に説明する。
【0012】
なお、本実施の形態に係る外壁パネルPは、押出し成形セメント板よりなり、長手方向、すなわち取付け状態における上下方向に沿って延びて外壁パネルPを貫通する複数の中空部Sが、外壁パネルPの幅方向に所定の間隔をおいて並列するようにして形成されている。
また、本実施の形態に係る吊上げ用ロープR1とは、建築部材の揚重に使用可能なロープ類を意味し、ワイヤーロープ、ナイロンスリング等がいずれも包含されるものとする。
【0013】
前記掛着部20は、図2に示すように、その長さが前記受具30の側板32間の内法寸法より短い丸鋼であって、吊上げ用ロープR1を掛着させるために、前記各側板32の内側面に、その両端を溶接接合させることによって受具20に具備されている。
【0014】
前記受具30は、図2に示すように、鋼板を断面略U字形に折曲させて形成させたものであって、外壁パネルPの中空部Sに出入可能なものとなっている。本実施の形態において、前記中空部Sは、略四角形の横断面形状を有しており、受具30の寸法は、中空部Sの横断面に内包される寸法となっている。
【0015】
また、受具30の各側板32の下端には、挿通孔31が穿設されている。該挿通孔31は、受具30が外壁パネルPの中空部Sに挿入された状態で、前記支持具40を、挿通孔31に挿通させて、外壁パネルPを支持具40上に支持させるためのものである。
【0016】
前記支持具40は、図3に示すように、その横断面が受具30の挿通孔31よりわずかに小さい寸法であり、その長さLが外壁パネルPの厚さTより長い細長い角管であって、前記挿通孔31に挿通することにより、前記受具30に挿着されて、外壁パネルPをその上面で支持するためのものである。
【0017】
このとき、支持具40の高さHは、施工時の上下位置に取付けられる外壁パネルP間のクリアランスCを考慮して設定されるものであり、施工後の取外しが容易なように、該クリアランスCより小さい寸法となっている。
【0018】
そして、支持具40の横側面には、図2に示すように、支持具40が受具30の挿通孔31に挿通された状態で、支持具40から脱落しないようにするために、ストッパ50とラッチ具51とからなるロック手段52が配設されている。前記ストッパ50は、短尺の丸鋼であり、その両端が、支持具40の横側面から突出するように、支持具40に貫通されて配設されている。
【0019】
また、前記ラッチ具51は、図4に示すように、一対のボール53と圧縮ばね54とから構成されて、支持具40の側面に穿設した孔41からボール53が突出するように、支持具40を、その短軸方向に孔41をあけ、この孔41に圧縮ばね54がボール53を外側へ付勢するようにして、圧縮ばね54及びボール53を入れる。そして、支持具40の孔41の外縁を図外のたがね等を用いてかしめてボール53が外側に脱落しないようにする。ストッパ50とラッチ具51との間隔は、受具30の幅よりも大きい寸法を有していれば特に限定されないが、受具30の幅よりも10mm乃至15mm程度の余裕を持たせて設定することが望ましい。
【0020】
なお、本実施の形態では、ラッチ具51のボール53の形状を球形としたが、これに限定されるものではなく、ボール53が支持具40の孔41から脱落しないようにすることができればよい。
【0021】
支持具40の挿脱は、以下の手順でおこなわれる。まず、支持具40を把持して、受具30の挿通孔31に挿通するようにすると、挿通孔31の側縁に、ラッチ具51の各ボール53がそれぞれ押圧されて、互いに接近するように内側へ移動し、ボール53の頂部が、支持具40の側面と略面一となると、支持具40が受具30の挿通孔31内を自在に移動し得る状態となる。そして、受具30の挿通孔31の側縁による押圧が解除されると、各ボール53がそれぞれコイルばね54に付勢されて、互いに離間するように外側へ移動し、ボール53の頂部が、支持具40の側面から突出するようになる。このようにして、支持具40は、受具30の挿通孔31に沿って自在に移動することができると共に、ロック手段52により、受具30に挿着された状態で外れないようになっている。
【0022】
なお、本実施の形態では、ロック手段52は、ストッパ50とラッチ具51とから構成されているが、これに限定されるものではなく、またロック手段52を支持具40ではなく受具30に配設してもよく、支持具40が、受具30への挿脱が容易であると共に、受具30に挿着後は容易に受具30から脱落しないものであれば、特に限定されない。
【0023】
また、図5に示すように、図外のクレーン等で外壁パネルPを吊上げる際に、吊上げ用ロープR1と外壁パネルPの中空部Sの端縁が擦れ合って、吊上げ用ロープR1と外壁パネルPに中空部Sの端縁がそれぞれ摩損することを防ぐために、外壁パネルPの上面に保護具60が配設される。
【0024】
該保護具60は、外壁パネルPの中空部Sに出入可能とする管体61と、該管体61の一方の端縁を外側に折曲させて形成し、管体61が外壁パネルPの中空部Sに挿入された状態で、外壁パネルPの上面に係止されて、管体61を外壁パネルPに係止させる係止片62とからなる。このとき、管体61の口径を、受具30の幅よりも小さい寸法にしておくと、吊上げ用ロープR1を引き上げるときに、受具30の上面に保護具60の下端部が支持されるので、受具30と同時に外壁パネルPから取外すことができる。
【0025】
次に、本実施の形態に係る吊具10を使用した、外壁パネルPの吊上げ手順について説明する。
まず、図1に示すように、吊上げ用ロープR1を図外のシャックル等により受具30の掛着部20に掛着させて、この状態で、受具30を外壁パネルPの中空部Sに上方から挿入し、中空部S内を貫通させる。また、図5に示すように、保護具60の係止片62を上側にして、保護具60の管体61内に吊上げ用ロープR1を挿通させた状態で、保護具60を外壁パネルPの中空部Sに上方から挿入し、外壁パネルPの上面に係止させる。
【0026】
次に、外壁パネルPを取付けたときに、ストッパ50が屋外側、ラッチ具51が屋内側となるように、支持具40を受具30の挿通孔31に挿通して、ある程度吊上げ用ロープR1を引張り、外壁パネルPの重心を失わないように吊上げ用ロープR1の玉掛けをおこなう。
【0027】
そして、図6に示すように、吊上げ用ロープR1を図外のクレーン等で吊上げることにより、外壁パネルPを吊上げて、所定の位置に搬送し取付け固定する。このとき、保護具60が、外壁パネルPの上面に係止されているので、吊上げ作業にって、外壁パネルPおよび吊上げ用ロープR1が摩損することを防ぐことができる。また、支持具40の高さHを、上下位置に取付けられる外壁パネルP間のクリアランスCより小さい寸法としているので、仮固定することなく、吊具10を外壁パネルPに挿着させた状態で外壁パネルPを取付け(本固定)することができる。
【0028】
外壁パネルPを取付け固定後、支持具40を把持して受具30の挿通孔31から引抜いてから、吊上げ用ロープR1を外壁パネルPの上方から引張って、受具30を取り出す。このとき、前述のように、保護具60の本体の長さを、受具30の長さよりも短くしておくと、吊上げ用ロープR1を引張ることにより、受具30と同時に保護具60を取り出すことができる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1に記載の中空外壁パネル用吊具は、中空外壁パネルの中空部に出入可能であって、吊上げ用ロープを掛着させる掛着部を備えた断面略U字形の受具と、該受具が前記中空部に挿入された状態で、前記受具の下端近傍に穿設された挿通孔に着脱自在に挿着されて、中空外壁パネルの下面を支持する中空外壁パネルの厚さより大きい長さ寸法を有する管状の支持具とからなり、前記支持具は、下方に隣接して施工される中空外壁パネルとの間のクリアランスより小さい高さ寸法を有するとともに、その側面に穿設された孔から出没可能に設けられたボール及び該ボールを前記孔から突出する方向へ付勢する圧縮ばねを備えてなるラッチ具と、側面から突出するストッパとが、前記受具の幅より広い間隔をおいてそれぞれ配設されたものであるので、受具を中空外壁パネルの中空部に挿入し、支持具を前記挿通孔に挿通することにより、受具に挿着させると共に、前記掛着部に吊上げ用ロープを掛着させることにより、吊上げ用ロープを外壁パネルに容易かつ確実に玉掛けすることができるという利点がある。そして、中空外壁パネル用吊具により、中空外壁パネルを確実に保持した状態で吊上げることができるので、中空外壁パネルが脱落する事態を生じ難くすることができるという利点がある。
【0030】
また、中空外壁パネル用吊具を取付けた状態のままで中空外壁パネルの取付け(本固定)を完了しても、この後で中空外壁パネル用吊具を容易に取外すことができるので、中空外壁パネルの落下の危険性を大幅に少なくすることができるという利点がある。
【0031】
更に、前述のように、中空外壁パネル用吊具を、中空外壁パネルに取付けた状態のままで中空外壁パネルを取付け位置に直接本固定することができるので、従来のように、中空外壁パネルを取付け前に、一旦仮固定することが不要であり、このため、中空外壁パネルの取付けを大幅に簡易化することができ、作業性を向上させることができるという利点がある。
【0032】
更にまた、中空外壁パネルの吊上げの際に、中空外壁パネルの配置状態の如何を問わずに、中空外壁パネル用吊具を取付けることができるので、この点においても作業性を向上させることができるという利点がある。
【0033】
すなわち、本発明の中空外壁パネル用吊具によれば、中空外壁パネルの吊上げおよび建物への取付けを安全におこなうことができて、かつ作業性の向上させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る中空外壁パネル用吊具を示す斜視図である。
【図2】受具および支持具を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の一形態を示す断面図である。
【図4】ロック手段の一例を示す断面図である。
【図5】保護具を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の一形態を示す斜視図である。
【図7】従来の中空外壁パネルの吊上げ手段の一例を示す斜視図である。
【図8】従来の中空外壁パネルの吊上げ手段の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 中空外壁パネル用吊具
20 掛着部
30 受具
31 挿通孔
40 支持具
P 中空外壁パネル
S 中空部
R1 吊上げ用ロープ
Claims (1)
- 中空部が形成された中空外壁パネルを吊上げて、建物の所定の取付け位置へ搬送する際に使用される吊具であって、
中空外壁パネルの中空部に出入可能であって、吊上げ用ロープを掛着させる掛着部を備えた断面略U字形の受具と、
該受具が前記中空部に挿入された状態で、前記受具の下端近傍に穿設された挿通孔に着脱自在に挿着されて、中空外壁パネルの下面を支持する中空外壁パネルの厚さより大きい長さ寸法を有する管状の支持具とからなり、
前記支持具は、下方に隣接して施工される中空外壁パネルとの間のクリアランスより小さい高さ寸法を有するとともに、その側面に穿設された孔から出没可能に設けられたボール及び該ボールを前記孔から突出する方向へ付勢する圧縮ばねを備えてなるラッチ具と、側面から突出するストッパとが、前記受具の幅より広い間隔をおいてそれぞれ配設されたものであることを特徴とする中空外壁パネル用吊具。
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