JP3815120B2 - 微収縮性ポリエステルフィラメント糸 - Google Patents
微収縮性ポリエステルフィラメント糸 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3815120B2 JP3815120B2 JP16498699A JP16498699A JP3815120B2 JP 3815120 B2 JP3815120 B2 JP 3815120B2 JP 16498699 A JP16498699 A JP 16498699A JP 16498699 A JP16498699 A JP 16498699A JP 3815120 B2 JP3815120 B2 JP 3815120B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- yarn
- polyester filament
- winding
- filament yarn
- less
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Artificial Filaments (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、伸長弾性率、及び沸騰水収縮率が低いポリエステルフィラメント糸に関する。更に詳しくは、混繊糸とした際にふくらみ、ソフト感、反発感に優れた織編物を提供できる微収縮性ポリエステルフィラメント糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフィラメント糸は、機械的特性をはじめ様々な優れた特性から一般衣料用分野をはじめ各種分野に広く利用されている。衣料用途では天然繊維をターゲットとして品質の改良が行われてきているが、特にふくらみ、ソフト感のある風合いを得るために様々な検討が行われている。その手段のひとつとして、熱による収縮特性の異なる繊維を混繊する収縮差混繊糸が広く用いられている。このタイプの収縮差混繊糸を用いれば織物組織の密度が増加しても十分な糸長差を染色加工後に得ることができ、ふくらみ、ソフト感に優れた布帛を得ることができる。この収縮差混繊糸の低収縮側の糸として、沸騰水収縮率が極めて低い繊維(以下、微収縮糸と称す)や熱処理時に熱処理前の糸に対して伸長性を示す自発伸長糸が使用され、布帛のふくらみ、ソフト感を引き出している。これら微収縮糸や自発伸長糸は従来のポリエステルフィラメント糸に比べ、伸長弾性率が低いという特徴を有する。
【0003】
自発伸長糸の製造方法は、例えば、特開平4-352836号公報にはポリエステル部分配向糸(以下POYと略す)を一旦延伸した後弛緩熱処理する方法、特開平2-293410号公報にはPOYを弛緩熱処理する方法等が開示されており、弛緩熱処理工程を要するのが一般的である。また、特開平9-228167号公報や特開平9-21060号公報には、POYの定長(緊張)熱処理による方法が開示されている。しかしながら、これらの方法では、20〜50%の弛緩熱処理が必要となるため工程安定性が悪く、糸斑や染め斑の発生等品質面に問題があった。また、加工速度が遅く、熱処理加工の際の巻き上げ、ドッフ後の加工再スタート成功率も低いため生産性が低く、更に弛緩熱処理可能な特別な糸加工機が必要であり、生産コストが高くなっていた。このため、特開平9-273043号公報にはPOYを低張力で熱板を用いて接触熱処理することにより低収縮糸を得る方法が提案されており、ドラム形状に巻き取る製造工程図が開示されている。しかしながら、収縮率を十分低下させるためには熱処理時の糸張力を0.12g/d以下まで低くする必要があり、熱板での接触熱処理では走行糸条と熱板との擦過抵抗により糸走行が安定しないため、糸斑が大きくなり、ひいては断糸に至るといった問題があった。また、ドラム形状に巻き取るという点で本発明の巻き取り方法とは異なるものである。さらに、これら低収縮糸は伸長弾性率が低いため、従来の延伸工程で用いられている巻き取り方法では、巻取張力の変化により、パーン内での品質変化やパーンでの糸ずれ、崩れの発生、高次工程での解舒不良といった問題がある。従って、従来技術では品質面での不安定さやコスト高により、微収縮性ポリエステルフィラメント糸を得ることが困難であるのが実状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、伸長弾性率、及び沸騰水収縮率が低いポリエステルフィラメント糸を弛緩熱処理、定長熱処理で製造する際に発生する様々な問題を解決し、パッケージの崩れや高次工程での解舒不良を起こすことなく、糸切れ等の発生しない安定した生産性で、かつ混繊糸とした際にふくらみ、ソフト感、反発感に優れ、繊細なピーチタッチを有する織編物を提供できる高品位の微収縮性ポリエステルフィラメント糸を得ることを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記した課題は、ポリエステルフィラメント糸の未延伸糸または部分配向糸を少なくとも1対のホットローラー系を有する延伸機で延伸、熱セットするに際し、延伸倍率を1.05〜1.20、延伸温度を90℃以上110℃以下、熱セット温度を110℃以上140℃以下として得られた、以下の特性を同時に満足することを特徴とする微収縮性ポリエステルフィラメント糸によって達成できる。
【0006】
A.3%伸長時の伸長弾性率が60%以上85%以下。
【0007】
B.沸騰水収縮率が0%以上3%以下。
【0008】
C.乾熱収縮率が沸騰水収縮率と等しいか、または沸騰水収縮率以下。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明でいう微収縮性ポリエステルフィラメント糸とはポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が原料として用いられるが、PETが最も汎用的であり好ましい。また、ジオール成分および酸成分の一部が各々15mol%以下の範囲で他の共重合可能な成分で置換されたものであってもよい。ただし、ポリエチレングリコールの場合は10重量%以下が好ましい。また、これらは他のポリマや、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料などの添加物を含有していてもよい。以下PETを原料とした微収縮性ポリエステルフィラメント糸の製造方法を説明する。
【0010】
本発明で得られるポリエステルフィラメント糸の3%伸長時の伸長弾性率は、60〜85%であることが必須である。図1は、伸長弾性率測定での荷重−伸長曲線の一例である。伸長弾性率は、伸長後の残留伸びが大きい程、低くなる。つまり、低伸長弾性率ポリエステルフィラメント糸は、伸長後の残留伸びが大きいため、収縮差混繊糸として布帛とする際の拘束力による伸長がリラックス精錬等で緩和された後も糸長を保持できる。この糸長保持が収縮差混繊糸での糸長差を形成し、布帛のふくらみ感やソフト感を引き出している。
【0011】
伸長弾性率が85%を超えると、布帛にした際のふくらみ感やソフト感が不足してしまう。また、60%未満ということは、繊維構造がルーズであることを意味し、寸法安定性が低下する結果となる。また、製造工程においても糸条の走行が極めて不安定となり、安定した生産が困難である。
【0012】
また、本発明で得られる微収縮性ポリエステルフィラメント糸の沸騰水収縮率は、0%以上3%以下であることが必須であり、布帛にした際のふくらみ感やソフト感を向上させるためには、0%以上1%以下であるのが好ましい。沸騰水収縮率が3%より高いと布帛にした際、ふくらみ感やソフト感が不足する。一方、沸騰水収縮率が0%より低くなると、伸長弾性率が60%未満の場合と同様、寸法安定性が低下し、製造工程での糸条走行も極めて不安定となる。
【0013】
本発明で得られる微収縮性ポリエステルフィラメント糸の乾熱収縮率は、沸騰水収縮率と等しいか、もしくは沸騰水収縮率以下であることが必要である。乾熱収縮率が沸騰水収縮率より大きくなると、布帛のリラックス精錬で形成されたクリンプや糸長差が中間セット等の高次加工工程での熱処理により減少し、布帛のふくらみ感やソフト感が不十分となる。
【0014】
本発明で得られる微収縮性ポリエステルフィラメント糸の単糸繊度は、0.2d程度の極細から5d程度の太繊度まで任意に採用することができるが、単糸繊度を1.0d以下の極細とすると、布帛に繊細なピーチタッチを付与することができ、好適である。また、フィラメント糸の断面形状は、丸断面以外にドライ感や光沢を得るために三葉断面等の多葉断面を採用したり、軽量感を得るために中空断面等を採用したりすることも可能である。さらに、単糸繊度を極細にした場合、フィラメント糸に交絡を付与することが、高次加工工程での糸切れや毛羽発生を防止するために好ましい。また、高収縮性ポリエステルフィラメント糸と交絡混繊させ収縮差混繊糸とするためには、フィラメント糸の交絡度は20以下とすることが好ましい。
【0015】
図2は本発明の好ましい実施態様を示す延伸、熱処理工程の概略図である。未延伸糸または部分配向糸1はフィードロール2を経て第1ホットロール3とセパレートロール4に数回巻き付けられ予備加熱され、第1ホットロール3と第2ホットロール5の間で所定の倍率で延伸され、且つ第2ホットロール5で熱処理され延伸糸となる。次いで加熱していないストレッチロール6、ラペットガイド7を経て、上下方向にトラバースするリング8上を滑走するトラベラ9によりパーン10として巻き取られる。
【0016】
本発明の微収縮性ポリエステルフィラメント糸の製造方法は、ポリエステルフィラメント糸の未延伸糸または部分配向糸を少なくとも1対のホットローラー系を有する延伸機を用いて、延伸倍率を1.05〜1.20、延伸温度を90℃以上110℃以下、熱セット温度を110℃以上140℃以下で延伸、熱セットすることが肝要である。ホットローラーを有する延伸機で熱セットを行うことにより、熱セット時の糸道が安定し、断糸が減少するため大幅に工程安定性が向上する。
【0017】
本発明では、延伸倍率を1.05〜1.20倍とする必要がある。延伸倍率が1.05より低いとホットローラー上での糸揺れが増大し、糸条走行が安定せず、均一な品質を得ることができず、ひいては断糸を引き起こす。また、延伸倍率が1.20倍を超えると延伸による歪みを抑制することができず、沸騰水収縮率を低下させることが困難になる。
【0018】
また、本発明では延伸、熱セットの際の温度条件が重要である。本発明では延伸温度は延伸直前の糸条の予熱温度を意味し、図2の実施態様では、延伸直前の第1ホットロール温度を指すものである。本発明においては、この延伸温度を90℃以上110℃以下とする必要がある。延伸温度が90℃以上であると、延伸前に分子鎖のモビリティーが十分向上し、不均一延伸による糸斑を抑制することが可能である。また、延伸前のPOYの過度の結晶化を防止し、低収縮化に有利となる。
【0019】
本発明では熱セット温度は延伸後の糸条の熱処理温度を意味し、図2の実施態様では、延伸後の第2ホットローラー温度を指すものである。本発明においては、この熱セット温度を110℃以上140℃以下とする必要がある。熱セット温度を110℃以上とすることで延伸糸の結晶化が十分進行し配向非晶分子鎖の固定が十分となり、低収縮化に有利となるが、140℃より高くなると、熱セットの際の糸揺れが大きくなり、熱セット不良となる。
【0020】
さらに、本発明の製造方法では、パーンとして巻き取る際に巻き上げ時のパーンの回転数(以下、スピンドル回転数と称す)を巻き始めから巻き終わりまで随時制御し、使用するトラベラを適正化し、巻取張力を巻き始めから巻き終わりに亘るまでの間、巻き始めの巻取張力に対して、±20%以内とすることが好適であり、これにより、低伸長弾性率繊維を品質が均一で、パッケージの崩れや高次工程での解舒不良が発生させず安定して生産することができる。品質の均一性や解舒性をさらに向上させるには、巻取張力を巻き始めの巻取張力に対して、±10%以内として巻き取ることがさらに好ましい。
【0021】
巻取張力が巻き始めの巻取張力に対し±20%の範囲内で有ると、品質の均一性が良好となり、高次工程での解舒時に解舒性が良好となる。
【0022】
巻取張力を巻き始めから巻き終わりに亘って巻き始めの巻取張力に対して、±20%以内とする手段として、スピンドル回転数を巻き始めからの経過時間に応じて設定し、巻取張力の変動を抑えることが有効である。また、巻き始めから巻き終わりまでの間の品質変化を抑えるために、低伸長弾性率ポリエステルフィラメント糸の繊度に対応して、使用するトラベラを適正化することも有効である。
【0023】
伸長弾性率が95〜100%である通常のポリエステルフィラメント糸では、高次工程でのパーン崩れを防止し、解舒性を向上させるため、巻取張力を暫減させて巻き取っている。また、巻き始めから巻き終わりまでの巻取張力の暫減幅は、巻き始めの巻取張力に対し50〜70%ほどである。巻取張力の暫減とパーン直径の増加に伴い、スピンドル回転数も巻き終わりに向かって暫減させている。
【0024】
本発明の巻取方法についても巻き始めと巻き終わりのスピンドル回転数を比較すると暫減させているが、巻き取り中のパーン直径の増加割合が一定でないことによる巻取張力の局所的な増加を含めて、巻き始めの巻取張力に対して±20%以内とするため、巻き時間に対応してスピンドル回転数を設定している。また、巻取張力による品質変化を抑制するため、巻き始めの巻取張力は、0.08〜0.12g/dとすることが好ましく、パーンの崩れや解舒不良を防止するため、パーン硬度は60〜80゜とすることが好適である。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により更に具体的に説明する。なお、実施例中の測定方法、評価方法は以下の方法を用いた。測定結果、評価結果は、表3の通りである。
A.伸長弾性率
ORIENTEO社製RTC1210Aを用いて、初期試料長=20mm、引っ張り速度=2mm/分とし、JIS L1013 A法に従い3%伸長時の伸長弾性率(%)を求めた。
B.交絡度
ROTHSCHILD社製ENTANGLEMENT−TESTERを用いて、予備張力を0.1g/d、トリップテンションを(予備張力+(延伸糸デニール/フィラメント数))g、試料供給速度を4cm/秒として交絡距離を50回測定し、その平均値を用いて以下の式により交絡度を算出した。
【0026】
交絡度=1000/交絡距離の平均値
C.パーン硬度
高分子計器製HARDNESS TESTER ”Type C”を使いパーン中央部を測定した。
D.巻取張力と巻取張力変動幅
巻取張力は、金井工機社製テンションチェッカーCB型を用いてラペットガイド上の走行糸張力を測定し、横河電機製作所社製TYPE3047 2ペンレコーダにて巻き取りの間、連続して記録した。
【0027】
巻取張力変動幅は、巻き始めの巻取張力と巻取張力の最大値、最小値を用いて次式により算出した。
【0028】
ΔTmax=(Tmax−Ts)/Ts
ΔTmin=(Tmin−Ts)/Ts
ΔTmax:巻取張力変動幅の最大値(%)
ΔTmin:巻取張力変動幅の最小値(%)
Ts:巻き始めの巻取張力(g)
Tmax:巻取張力の最大値(g)
Tmin:巻取張力の最小値(g)
E.パーン内における品質の均一性評価
パーン内での品質の均一性を評価する尺度として、糸条の長手方向における沸騰水収縮率の標準偏差を用いた。東レエンジニアリング社製FTA−500を用いて、低収縮糸の糸長手方向の沸騰水収縮率の連続測定を行った。この時、糸の供給速度20m/分、走行糸応力0.01g/dで長さ15.5cmの100℃に加熱した湿熱処理装置に通した。そして10分間測定を行い、収縮率の標準偏差を求めた。この時、測定糸長3.3cm毎に生の収縮率をポイントデータとして取り込み、これを6点合わせて平均して1データとした。そしてそのデータを1000個収集し標準偏差を計算し、0.25以下を合格とした。
F.パッケージフォーム評価
巻き上がったパーンのパッケージフォームを目視により観察し、糸層ずれやパッケージの崩れについて発生度合いを評価した。評価方法は、○:糸層ずれ、パッケージの崩れなし、△:解舒不良発生につながる糸層ずれ有り、×:パッケージの崩れ発生とし、○を合格とした。
G.解舒性評価
600m/minの解舒速度でパーンから糸条を解舒し、輪抜けや解舒不良の発生度合いを観察し、解舒性を評価した。
H.布帛評価
実施例、比較例で得られた低伸長弾性率ポリエステルフィラメント糸を沸騰水収縮率が21.5%、乾熱収縮率が19.5%である30デニール、12フィラメントの高収縮性ホモポリエステルフィラメント糸とインターレースノズルを用いてエア混繊し収縮差混繊糸を作製し、これに300ターン/mのS撚りを施し平織りした。これに、98℃でリラックス精錬を施し、180℃で中間セットした。さらに常法により10重量%のアルカリ減量を行い、染色、180℃での仕上げセットを行った。以上の方法で得た布帛について、ふくらみ感、ソフト感について1〜5級で官能評価し、3級以上を合格とした。
実施例1
三酸化アンチモンを重合触媒として用い、テレフタル酸とエチレングリコールから常法に従い、極限粘度(オクソクロルフェノール溶媒中で25℃で測定)0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)を得た。この時、艶消し剤として平均一次粒径0.5μmの酸化チタンを0.4wt%添加した。得られた重合体を紡糸温度284℃、紡糸速度2500m/minで溶融紡糸を行い、56.7デニール36フィラメントのPOYを巻き取った。
【0029】
上記POYを図2の1対のホットローラーを有する延伸機を用い、第1ホットローラー3の温度を95℃、第2ホットローラー5の温度を125℃、延伸速度を970m/分として、延伸倍率を表1の如く設定して延伸糸を得た。得られた微収縮性ポリエステルフィラメント糸は、均一な品質を有する微収縮性ポリエステルフィラメント糸であった。該ポリエステルフィラメント糸から得られた収縮差混繊糸からなる布帛は、ふくらみ感、ソフト感が優れたものであった。
比較例1
延伸倍率を表1の如く設定した以外は、実施例1と同様な条件で製糸を行った(実験No.4,5)。延伸倍率を1.25倍とした実験No.4では、伸長弾性率、沸騰水収縮率、乾熱収縮率がともに高くなり、布帛評価においてもふくらみ感、ソフト感に欠けるものであった。延伸倍率を1.02倍とした実験No.5では、伸長弾性率、沸騰水収縮率が本発明の範囲より低く、繊維構造がルーズで寸法安定性が低下するため、パッケージの崩れが生じ、布帛評価を行うことができなかった。また、収縮率の標準偏差も0.42と大きく、品質に大きなばらつきを有するポリエステルフィラメント糸であった。
【0030】
【表1】
実施例2
POYの繊度を136.5デニール、フィラメント数を144本と192本とし、延伸倍率を1.14倍、延伸温度を100℃、熱セット温度を130℃とすること以外は実施例1と同様な条件で製糸し、120デニール144フィラメントと120デニール192フィラメントの延伸糸を得た(実験No.6、7)。得られたポリエステルフィラメント糸を用いた収縮差混繊糸により得られた布帛は、ふくらみ感、ソフト感に優れ、取扱い性も良好であった。特に、単糸繊度が1.0d以下であるため、繊細なピーチタッチを有する布帛であった。
実施例3
延伸倍率を1.14倍、熱セット温度を表2の如く変更した以外は実施例1と同様な方法で製糸し、50デニール36フィラメントの延伸糸を得た(実験No.8〜10)。熱セット温度が110〜140℃であれば、伸長弾性率、沸騰水収縮率、乾熱収縮率が本発明の範囲内となり、収縮率の標準偏差も0.17以下で均一な品質を有する微収縮性ポリエステルフィラメント糸であり、収縮差混繊糸で得られた布帛は、ふくらみ感、ソフト感が優れたものであった。
比較例2
延伸倍率を1.14倍、熱セット温度を表2の如く変更した以外は実施例1と同様な方法で製糸し、50デニール36フィラメントの延伸糸を得た(実験No.11、12)。熱セット温度を105℃とした実験No.11は、沸騰水収縮率が不十分であった。また、得られたポリエステルフィラメント糸を用いた収縮差混繊糸により得られた布帛は、ふくらみ感、ソフト感に欠けるものであった。熱セット温度を145℃とした実験No.12は、沸騰水収縮率が−0.3%の自発伸長糸であり、収縮率の標準偏差が0.37と大きく、品質に大きなばらつきを有するポリエステルフィラメント糸であった。また、糸条の走行状態が不安定であり、ホットロールやストレッチロール上で糸条の巻付きが発生し、布帛評価を行うのに必要な量の延伸糸を得ることができなかった。
【0031】
【表2】
実施例4
延伸倍率を1.14倍、熱セット温度を130℃、延伸温度を表3の如く変更した以外は実施例1と同様な方法で製糸し、50デニール36フィラメントの延伸糸を得た(実験No.13、14)。延伸温度が90〜110℃であれば、伸長弾性率、沸騰水収縮率、乾熱収縮率が本発明の範囲内となり、収縮率の標準偏差も0.18以下であり、均一な品質を有する微収縮性ポリエステルフィラメント糸を得ることができた。また、得られたポリエステルフィラメント糸を用いた収縮差混繊糸により得られた布帛は、ふくらみ感、ソフト感が優れたものであった。
比較例3
延伸倍率を1.14倍、熱セット温度を130℃、延伸温度を表6の如く変更した以外は実施例1と同様な方法で製糸し、50デニール36フィラメントの延伸糸を得た(実験No.15、16)。延伸温度を85℃とした実験No.15は、延伸直前の予熱が不十分であるため、収縮率の標準偏差が0.41と大きく、品質に大きなばらつきを有するポリエステルフィラメント糸であった。延伸温度を115℃とした実験No.16は、収縮率の標準偏差が0.38と大きく、品質に大きなばらつきを有するポリエステルフィラメント糸であった。
【0032】
【表3】
実施例5
三酸化アンチモンを重合触媒として用い、テレフタル酸とエチレングリコールから常法に従い、極限粘度(オクソクロルフェノール溶媒中で25℃で測定)0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)を得た。この時、艶消し剤として平均一次粒径0.5μmの酸化チタンを0.4wt%添加した。得られた重合体を紡糸温度284℃、紡糸速度2500m/minで溶融紡糸を行い、136.5デニール48フィラメントのPOYを巻き取った。
【0033】
上記POYを図2の1対のホットローラーを有する延伸機を用い、第1ホットローラー3の温度を100℃、第2ホットローラー5の温度を130℃、延伸倍率を1.14倍、延伸速度を970m/分、トラベラを金井重要工業(株)社製の#23として、スピンドル回転数を表4の如く設定して、3.0kg巻きのパーンに巻き取り、伸長弾性率が76%の120デニール48フィラメントの低伸長弾性率ポリエステルフィラメント糸を得た。巻取張力変動幅が±20%の範囲内であれば、沸騰水収縮率の標準偏差は0.18以下で均一な品質を有し、かつ糸層ずれやパッケージの崩れ、解舒不良も発生しなかった。また、布帛評価においてもふくらみ感、ソフト感に優れた布帛が得られた(実験No.17〜19)。巻取張力変動幅が±20%の範囲外となると、糸層ずれによる解舒性低下や収縮率のばらつきによる布帛でのヒケやスラブ状の欠点が生じた(実験No.20〜22)。
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【発明の効果】
本発明の微収縮性ポリエステルフィラメント糸を用いることにより、従来自発伸長糸が有していた製造工程での問題や寸法安定性の不良を改善し、ふくらみ感、ソフト感に優れたポリエステル布帛を製造するための微収縮性ポリエステルフィラメント糸を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】伸長弾性率測定時の荷重−伸長曲線の一例図
【図2】本発明の実施態様を示す延伸、熱処理工程の概略図
【符号の説明】
1.未延伸糸または部分配向糸
2.フィードロール
3.第1ホットロール
4.セパレートロール
5.第2ホットロール
6.ストレッチロール
7.ラペットガイド
8.リング
9.トラベラ
10.パーン
Claims (3)
- ポリエステルフィラメント糸の未延伸糸または部分配向糸を少なくとも1対のホットローラー系を有する延伸機で延伸、熱セットするに際し、延伸倍率を1.05〜1.20、延伸温度を90℃以上110℃以下、熱セット温度を110℃以上140℃以下として得られた、下記の特性を同時に満足することを特徴とする微収縮性ポリエステルフィラメント糸。
(1)3%伸長時の伸長弾性率が60%以上85%以下。
(2)沸騰水収縮率が0%以上3%以下。
(3)乾熱収縮率が沸騰水収縮率と等しいか、または沸騰水収縮率以下。 - 単糸繊度が1.0d以下で、交絡度が20以下であることを特徴とする請求項1記載の微収縮性ポリエステルフィラメント糸。
- 微収縮性ポリエステルフィラメント糸を延伸に引き続きパーンとして巻き取るに際し、巻取張力を巻き始めから巻き終わりに亘るまでの間、巻き始めの巻取張力に対して、±20%以内として巻き取ることを特徴とする請求項1または2記載の微収縮性ポリエステルフィラメント糸。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP16498699A JP3815120B2 (ja) | 1999-06-11 | 1999-06-11 | 微収縮性ポリエステルフィラメント糸 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP16498699A JP3815120B2 (ja) | 1999-06-11 | 1999-06-11 | 微収縮性ポリエステルフィラメント糸 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000355828A JP2000355828A (ja) | 2000-12-26 |
JP3815120B2 true JP3815120B2 (ja) | 2006-08-30 |
Family
ID=15803672
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP16498699A Expired - Fee Related JP3815120B2 (ja) | 1999-06-11 | 1999-06-11 | 微収縮性ポリエステルフィラメント糸 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3815120B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN1321230C (zh) * | 2002-06-10 | 2007-06-13 | 中国石油化工股份有限公司 | 高模量低收缩型涤纶工业丝的制备工艺及其涤纶工业丝 |
CN114045593B (zh) * | 2021-11-19 | 2023-02-03 | 平顶山神马帘子布发展有限公司 | 一种紧张热定型处理装置及高模量锦纶66工业用长丝生产方法 |
-
1999
- 1999-06-11 JP JP16498699A patent/JP3815120B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2000355828A (ja) | 2000-12-26 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR100901325B1 (ko) | 폴리유산 섬유 | |
US6824869B2 (en) | Polyester type conjugate fiber package | |
WO2003100145A1 (fr) | Fibre composite et procede de production | |
WO2001036724A1 (fr) | Fil de polyester et son procede de production | |
JP2009150022A (ja) | 芯鞘複合繊維およびその繊維布帛 | |
JP3815120B2 (ja) | 微収縮性ポリエステルフィラメント糸 | |
JP7476619B2 (ja) | ポリエステル複合繊維 | |
JP4505960B2 (ja) | 高伸縮耐久性ポリエステル系複合繊維および製造方法 | |
JP2001192942A (ja) | 嵩高加工糸およびその製造方法 | |
JP2007247107A (ja) | 嵩高性ポリエステル複合繊維 | |
JP2000345442A (ja) | 低伸長弾性率ポリエステルフィラメント糸の製造方法 | |
JP4985358B2 (ja) | 収縮差混繊糸 | |
WO2005071149A1 (ja) | ポリエステル異収縮混繊糸およびその製造方法 | |
JP2003342843A (ja) | 仮撚加工糸及びその製造法 | |
JP2002161436A (ja) | カチオン染料可染ポリトリメチレンテレフタレート繊維 | |
JPS6410607B2 (ja) | ||
JP4059681B2 (ja) | ポリトリメチレンテレフタレート前配向糸の製造方法 | |
JP2003342843A5 (ja) | ||
CN118176331A (zh) | 聚酯纤维和织物 | |
JPH11117125A (ja) | 太細異収縮混繊マルチフィラメント、その編織物及びその製造方法 | |
JP2596236B2 (ja) | ポリエステルマルチフィラメント糸の製造方法 | |
JP4374704B2 (ja) | 仮撚加工糸の製造方法および仮撚加工糸の製造装置 | |
JPS6399340A (ja) | 異繊度異収縮混繊糸 | |
JPH11241220A (ja) | ポリエステル低収縮性極細繊維の製造方法 | |
JPH1136138A (ja) | ポリエステル異収縮混繊糸の製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040907 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20060202 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060221 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060418 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20060516 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20060529 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |