JP3814723B2 - 形状記憶合金の接合構造形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は機能材料の電気的機械的接合に利用し、形状記憶合金の特性を損ねることがないとともに、応力集中がなく、容易に電気的機械的接合を同時に可能にするための形状記憶合金の接合構造形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
Ni−Ti合金は形状記憶と超弾性の両特性を併せ持つ機能性が早くから注目されているが、未だその特長を十分に活かした応用は見つかっておらず、アクチュエータとして産業的に成功した例はほとんどなく、現状ではNi−Ti合金の超弾性のみを使ったバネ材や構造材としての応用がほとんである。その利用が限られる理由の一つは、接合性の低さにあると考えられている(例えば、非特許文献1参照。)
【0003】
形状記憶合金は、加熱すると記憶された形状に戻る性質を有しているが、形状記憶合金の大きさが小さい場合、通常、形状記憶合金の加熱は、形状記憶合金に電流を直接流し、ジュール熱により加熱を行う。そのため、形状記憶合金と電極又は配線とを電気的に接続する必要がある。
また、形状記憶合金の通電加熱による変形のため電気的接続部に応力が働くことが多いので、電気的接続と機械的固定の両方が同時に必要になる。
形状記憶合金の形状記憶合金同士又は配線との機械的な固定、及び電気的接続の従来の方法は、主に溶接、機械的圧着、はんだ付け及び導電性接着剤などが挙げられる。
【0004】
形状記憶合金の溶接技術について、電子ビーム溶接及び熱間圧接ともいうべき細線の突き合わせ抵抗溶接の報告があり、圧接では形状記憶効果を失うことなく溶接できるとされているが(非特許文献2、第60頁「4.おわりに」を参照)、溶接箇所で形状記憶特性及び超弾性特性が失われる旨の指摘もされている(特許文献1の〔従来の技術〕欄の段落0002を参照)。
【0005】
機械的圧着については、形状記憶合金のコイルばねの端部を固定するための方法として、マイクロコイルとパイプを一体化する提案がある(例えば、特許文献2参照)。
また、はんだ付けでは、形状記憶合金表面に酸化チタンの層が形成されることにより良好な金属結合を形成できないこと、さらにこの解決方法として境界材料の付加的な層を形成して形状記憶合金と接合材料の両方を固着させることが指摘され、この境界材料を形成する方法として電気めっきを掲げているが、この方法でも形状記憶特性及び超弾性特性が失われると指摘されている(特許文献1の〔従来の技術〕欄の段落0004を参照)。
【0006】
このはんだ付けによるニチノール(ニッケル−チタン合金で形状記憶特性を有する)の接合方法では、ニチノールの表面から汚染物質を除去する為にフラックスを活性化温度まで加熱し、ニッケル含有境界表面の酸化を最小化し、このフラックスを冷却してフラックスの固体コーティングを形成後、このフラックスを除去して表面から汚染物質とチタンを除去し、ニッケル含有境界表面に、ニチノールの溶融温度以下のアニール温度を有する溶融ハンダ材料を配置し、他の金属をこの溶融ハンダ材料に接触させ、このハンダ材料を冷却して、ニチノールを他の金属に接合する提案がされている(特許文献1を参照)。
また、導電性接着剤については本発明者らの提案がある(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【非特許文献1】
本間 大、「バイオメタル解説:形状記憶合金アクチュエータとバイオメタル」、パンフレット、トキ・コーポレーション、2000年12月、p.9−10
【非特許文献2】
西川雅弘、「形状記憶合金の溶接技術」、日本金属学会会報、1985年、第24巻、第1号、p.56−60
【特許文献1】
特開平5−185216号公報(第1頁〜第3頁、第1図)
【特許文献2】
特開2000−257611号公報(フロントページ、第1図)
【特許文献3】
特開平11−48171号公報(第8頁〜第9頁、第4図〜第8図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、溶接では材料が脆化し、また機械的圧着では接合部で応力集中が起きて破断してしまうことがあるため、改善の余地がある。
さらに、上記はんだ付けによる接合方法の提案では工程が簡易でなく、また電気めっきによる境界材料層を形成する方法の検討も実現に向けて再考可能であり、改善の余地がある。
また、導電性接着剤による固定では、加熱硬化型は接着剤塗布後硬化のために形状記憶合金ごと加熱する必要があるため、形状記憶合金の特性を損なうことがあり、常温硬化型は機械的強度が弱いといった解決すべき課題があり、改善の余地がある。
【0009】
そこで、本発明はこのような課題を解決するものであり、形状記憶合金の特性を損ねることがないとともに、応力集中がなく、容易に電気的機械的接合ができる形状記憶合金の接合構造形成方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の形状記憶合金の接合構造形成方法は、難接合性を有する形状記憶合金の接合方法において、接合箇所を有する形状記憶合金の全体に接合膜を形成する第1工程と、接合箇所に形成した接合膜をはんだ付けする第2工程と、はんだ付けされた箇所以外の形状記憶合金に形成された接合膜を取り除く第3工程とを備えたことを特徴とするものである。前記形状記憶合金の接合箇所はコイル状に形成されている。また、前記形状記憶合金は、形状記憶合金コイル及び形状記憶合金ワイヤのいずれかであってよい。
【0015】
このような構成の形状記憶合金の接合構造形成方法では形状記憶合金上に、はんだ付けをすることができる接合構造を形成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図10に基づき、実質的に同一又は対応する部材には同一符号を用いて、本発明による形状記憶合金の接合構造の好適な実施の形態を説明する。本実施の形態は基本的には形状記憶合金に接合膜が形成された箇所、例えばめっきにより接合膜として金属膜が形成された箇所と電極、配線及び形状記憶合金の接合膜が形成された箇所とをはんだ付けした接合構造である。
めっきによる接合膜には、銅、ニッケル、クロム、錫及び亜鉛等の金属が利用でき、また金やパラジウムなどの貴金属も利用可能である。
ここで、接合膜はめっきによる形成に限らず、例えば蒸着、スパッタリングなども可能である。但し、蒸着及びスパッタリング等による成膜だけでは膜厚が薄すぎ、はんだ接合の際に容易にはんだに吸い取られてしまうため、めっきなどで金属膜を厚くしておくのがよい。
【0017】
以下、接合膜として銅薄膜を例に挙げて実施の形態を説明する。
この形状記憶合金はNi−Ti系の形状記憶合金であり、例えば形状記憶合金コイルでは素線直径50μm、コイル外形直径200μmで適宜の長さのものである。はんだは共晶はんだであり、工業用途にはSn−Pb系、医療用途にはSn−Ag系を使用するのがよい。はんだは、特に断らない限り共晶はんだを意味する。
【0018】
この実施形態の接合構造には、(1)形状記憶合金コイルと、電極、配線、形状記憶合金コイル及び形状記憶合金ワイヤとの接合構造、(2)形状記憶合金ワイヤと、配線、電極及び形状記憶合金ワイヤとの接合構造、(3)形状記憶合金板と、電極、配線、形状記憶コイル、形状記憶ワイヤ及び形状記憶合金板との接合構造、の組み合わせがある。
【0019】
ここで、形状記憶合金と銅薄膜の付着力は、はんだの強度よりも弱い。したがって、形状記憶合金ワイヤと形状記憶合金コイル、形状記憶合金ワイヤ、配線、電極とをはんだ付けする際、形状記憶合金ワイヤの軸方向に力が働くと、形状記憶合金ワイヤと銅薄膜の間に剪断応力が生じて銅薄膜が剥がれてしまうことがある。これは形状記憶合金の形状回復力の作用方向と同じ向きに銅薄膜が形成されている結果である。
【0020】
このようなことが起こらないようにするため、本実施形態では、第1に、形状記憶合金ワイヤの表面を薬品やヤスリがけなどによって表面を荒らして洗浄し銅薄膜の付着力を強くしておくこと、第2は、形状記憶合金ワイヤの先端の固定部のみをコイル状などの形状にして、形状記憶合金ワイヤの軸方向に力が働かないようにする構造としている。これは形状記憶合金の形状回復力の作用方向と異なる向きに銅薄膜を形成する構造である。
【0021】
それ以外の形状記憶合金コイルをはんだ付けする場合は、働く力がコイルの素線の軸方向と同じになることはないので、形状記憶合金から銅薄膜が剥がれてしまうことはない。但し、はんだ付け部分を極めて小さい部位に形成する場合には形状記憶合金コイルであっても先端部を上記第1の構成にしておくのが効果的である。
なお、形状記憶合金コイルであっても、より強固な銅薄膜の付着力を付けるため上記第1の構成を付け加えてもよい。
【0022】
ところで、形状記憶合金の表面を薬品や、やすりがけなどによって荒らしてもよいが、形状記憶合金の表面改質によって接合性を改善することも可能である。例えば、NiとTiにおける平衡酸素分圧の差を利用して、Tiを優先酸化除去し、表面にNi富裕層を形成させてもよい。
具体的にはTi−Ni系平衡状態図から不要な金属間化合物を作らない最も高い温度条件として700℃を選択し、ボイラーによって発生した1気圧の水蒸気をNi−Ti系形状記憶合金に接触させて電気炉で加熱する。このとき酸化膜とNi富裕層との間に空隙が生じるので熱サイクルによる熱応力で酸化膜を剥離可能である。水蒸気に代えて単に電気炉で空気酸化してもよい。この空気酸化の場合は、混合酸性溶液で酸化膜を除去する。
【0023】
このようにして、この形状記憶合金の表面改質では、形状記憶合金の表面に金属間化合物の形成がなく、表面にNi富裕層を形成することができる。したがって、この形状記憶合金の表面改質は融合阻害となるTi酸化膜の形成を抑えることができるので、接合性を高くすることができ、銅薄膜の付着力をさらに強くすることができる。なお、本明細書においては、形状記憶合金の表面改質には上記形状記憶合金の表面を荒らす意味をも含めて用いる。
【0024】
図1は本発明に係る形状記憶合金コイルと基板上の電極との接合構造の構成を示し、(a)は構成外観図であり、(b)及び(c)は接合構造の一部概略断面図である。図1(a)、(b)及び(c)を参照して、形状記憶合金コイル2と電極6との接合構造10は、形状記憶合金コイル2の一端側に形成された銅薄膜4と、基板1に例えばパターン化された電極6とを直接に接触又は共晶はんだ8を介して電気的に接触させ、かつ、機械的に固定されている。このとき共晶はんだで覆われた部分以外には銅薄膜は形成されていない。
【0025】
形状記憶合金コイルの一端にて銅薄膜が形成されているコイルの巻数は、用途により適宜選択できるが、数巻き程度でも十分である。
なお、銅薄膜の付着力を強めるように表面改質した形状記憶合金では、図1(c)に示すように、銅薄膜が形成された形状記憶合金コイルの一部先端部だけのはんだ付けでも実用に耐えるので、以下の接合構造においても同様の構成にすることが可能である。
【0026】
図2は形状記憶合金コイルと配線との接合構造を示し、(a)は構成外観図、(b)及び(c)は接合構造の一部概略断面図である。図2(b)に示すように、一端に銅薄膜4が形成された形状記憶合金コイル2の内部に配線12、例えばエナメル線を通して直接に接触又は共晶はんだ8を介して電気的に接触させ、かつ、機械的に固定されている。
図2(c)に示す例では、一端に銅薄膜4が形成された形状記憶合金コイル2と配線12とを単に並べて直接に接触又は共晶はんだ8を介して電気的に接触させ、かつ、機械的に固定されている。この図2(c)に示すように単に並べて配置する接合構造は以下の接合構造でも同様の構成とすることが可能である。
【0027】
図3は形状記憶合金コイル同士の接合構造を示し、(a)は構成外観図、(b)は一部概略断面図である。形状記憶合金コイル2の銅薄膜4が形成された同士を直接に接触させてからませ又は共晶はんだ8を介して電気的に接触させ、かつ、機械的に固定されている。
なお、図1(c)に示したように形状記憶合金コイルの一部先端だけのはんだ付けでもよく、また図2(c)に示したように単に並べて配置して接合させる構成としてもよい。
【0028】
図4は形状記憶合金ワイヤの外観図であり、(a)は一端をコイル状にした形状記憶合金ワイヤを示し、(b)は一端をジグザグ形状にした形状記憶合金ワイヤを示し、(c)は一端を直線状のまま表面改質した形状記憶合金ワイヤを示し、(d)は一端を平らな一巻き形状にして表面改質した形状記憶合金ワイヤを示す図である。
図4(a)及び(b)に示す形状記憶合金ワイヤ14,23の場合、コイル状の先端部15又はジグザグ状の先端部18に銅薄膜が形成される構成とするか、又は図4(c)及び(d)に示す形状記憶合金ワイヤ16,25のように、直線状のワイヤ先端部17又は平らな一巻き形状のワイヤ先端部19を表面改質して洗浄し銅薄膜が形成された構成として利用する。
【0029】
ここで、形状記憶合金ワイヤの先端部の形状は、形状記憶合金の形状回復力の作用を受けないような形状(このような形状を本明細書において「弾性固定形状」という)とする時には、例えば上記したコイル状やジグザグ状のようにするか、又は、はんだ付けされた共晶はんだと係わり合った状態で固定される形状(以下、「係合固定形状」という)とするかは適宜、用途などによって決定されるべきものである。
弾性固定形状の場合は形状回復力の作用方向の力を受けないので、換言すると作用する力が例えばコイル状の場合、素線の軸方向と同じになることはないので、銅薄膜は剥がれない。
またどのような形状であっても、強固な接合構造にするためには、形状記憶合金ワイヤの先端部を表面改質により銅薄膜との付着力を高めておくのも効果的である。
なお、形状記憶ワイヤ先端部18をジグザグ状にしたものは、上記弾性固定形状になっているが、はんだ付けされた場合、この形状に基づいて共晶はんだと係わり合った状態で固定もされることになる。したがって、このように形状記憶合金ワイヤとの接合構造では、形状記憶合金ワイヤ先端部の形状が弾性固定形状と係合固定形状とを併せ持っている場合も可能である。
【0030】
図5は形状記憶合金コイルと形状記憶ワイヤとの接合構造を示し、(a)は構成外観図、(b)は一端が直線状のワイヤを表面改質した形状記憶合金ワイヤと形状記憶合金コイルの接合構造の一部概略断面図、(c)は先端部がコイル状に形成された形状記憶合金ワイヤと形状記憶合金コイルの接合構造の一部概略断面図である。
図5(b)に示すように、形状記憶合金コイル2の一端側に形成された銅薄膜4のコイル内部に、表面改質部分に銅薄膜4が形成された形状記憶合金ワイヤ16が直接接触又は共晶はんだ8を介して電気的に接触させて挿入され、かつ、機械的に固定されている。
また図5(c)に示すように、一端がコイル状になっている形状記憶合金ワイヤ14の場合はさらに直接接触させて絡ませ又は共晶はんだ8を介して電気的に接触させて絡ませ、かつ、機械的に固定される。
【0031】
図6は形状記憶合金ワイヤと配線の接合構造を示し、(a)は接合構造の外観図、(b)は先端部が直線状の形状記憶合金ワイヤと配線の接合構造の一部概略断面図であり、(c)は先端部がコイル状に形成された形状記憶合金ワイヤと配線の接合構造の一部概略断面図である。
図6(b)に示す接合構造は、形状記憶合金ワイヤ16の直線状の先端部に形成された銅薄膜4と配線12を直接接触させ又は共晶はんだ8を介して電気的に接触させ、かつ、機械的に固定している。図6(c)に示す接合構造では、銅薄膜4が形成されたコイル状の先端部を有する形状記憶合金ワイヤ14の先端部分を突き合わせて直接接触させ又は共晶はんだ8を介して電気的に接触させ、かつ、機械的に固定している。
【0032】
図7は形状記憶合金ワイヤと基板上の電極との接合構造を示し、(a)は構成外観図、(b)は一端が直線状のワイヤを表面改質した形状記憶合金ワイヤ16と基板上の電極の接合構造の一部概略断面図であり、(c)は先端部がコイル状に形成された形状記憶合金ワイヤ14と基板上の電極の接合構造の一部概略断面図である。図7に示す接合構造は図6に示す配線12と形状記憶合金ワイヤ14,16との接合構造と同様である。
【0033】
図8は形状記憶合金ワイヤ同士の接合構造を示す図であり、(a)は構成外観図、(b)は一端が直線状のワイヤを表面改質した形状記憶合金ワイヤ同士の接合構造の一部概略断面図であり、(c)は先端部がコイル状に形成された形状記憶合金ワイヤ同士の接合構造の一部概略断面図であり、(d)は一端が直線状のワイヤを表面改質した形状記憶合金ワイヤと先端部がコイル状に形成された形状記憶合金ワイヤとの一部概略断面図である。
図8(b)に示すように、一端が直線状のワイヤを表面改質した形状記憶合金ワイヤ同士の接合構造は、形状記憶合金ワイヤ16の直線状の先端部に形成された銅薄膜4と他方の形状記憶合金ワイヤ16の直線状先端部に形成された銅薄膜4とを直接接触させ又は共晶はんだ8を介して電気的に接触させ、かつ、機械的に固定する。
図8(c)に示す接合構造は、図3(b)及び図5(c)に示す接合構造と同様である。また図8(d)に示す接合構造は図5(b)に示す接合構造と同様である。
【0034】
次に、上述した組み合わせ以外の形状記憶合金板のはんだ付けについて説明する。
形状記憶合金板の場合、力の働く方向が形状記憶合金板の水平方向と同じになるため、せん断力により銅薄膜が剥がれてしまう可能性がある。そこで、形状記憶合金ワイヤと同様に表面改質して銅薄膜の付着力を強くしたり、図9に示すように形状記憶合金板21の一端側の両側端を、凹凸形状、くし歯状等、共晶はんだと係わり合った状態で固定される形状(これも上記した「係合固定形状」の意味に含める)とした固定構造を形成するように加工することで、形状記憶合金板を機械的に強く固定することができる。
【0035】
図10は形状記憶合金板と電極との接合構造を示す図であり、(a)は構成外観図、(b)は接合構造の一部概略断面図である。
図10(a)及び(b)を参照して、形状記憶合金板21と電極6との接合構造では、形状記憶合金板21の一端の両側端が凹凸状に形成された箇所に銅薄膜4が形成されており、この銅薄膜4が形成された箇所と基板1に例えばパターン化された電極6とを直接に接触又は共晶はんだ8を介して電気的に接触させ、かつ、機械的に固定している。このとき、共晶はんだ8で覆われた部分以外には銅薄膜は形成されていない。
なお、図10に示す例は形状記憶合金板と電極との接合構造であるが、図11(a)、(b)及び(c)に形状記憶合金板21と配線12、形状記憶コイル2及び形状記憶ワイヤ14,16との接合構造の一部概略断面図を示したが、共晶はんだ8から形状記憶合金板21を透視して併せて図示した。
【0036】
このような形状記憶合金の接合構造では、難はんだ接合性を有する形状記憶合金であっても、銅薄膜を介して形状記憶合金と電極、配線、形状記憶コイル及び形状記憶ワイヤとがはんだ付け可能になる。したがって、本実施形態の接合構造は、難はんだ接合性を有する形状記憶合金であっても電極等と電気的機械的接合ができる。
【0037】
本実施の形態の接合構造は、はんだ付けを用いているため接合部での接触抵抗を生じるおそれがなく電気抵抗が小さい。さらに固定を行うための機械的強度は十分であるが、金属としては比較的やわらかく、接合部で応力集中を起こしにくく、接続を行う時に形状記憶合金全体を加熱する必要はない。この接合部は、はんだで接合をする時に加熱をしなければならないが、形状記憶合金の熱伝導率は小さく、はんだ付けをする部分以外への熱による損傷は少ない。したがって、本実施形態の接合構造では接合部を極めて小さくできる。
【0038】
次に、本発明における接合構造形成方法の好適な実施形態について説明する。この実施形態の接合構造の形成方法は、形状記憶合金に銅薄膜を形成する第1工程と、この形状記憶合金の形状回復力の作用方向と異なる向きに形成された銅薄膜の一端をはんだ付けする第2工程と、はんだ付けされた箇所以外の形状記憶合金に形成された銅薄膜を取り除く第3工程とを備える。
通常、形状記憶合金は共晶はんだと合金をつくらず弾くため、はんだ付けをすることは困難であったが、本実施形態では以下の方法を用いることで、形状記憶合金のはんだ付けが可能になる。
【0039】
まず、はんだ付けが可能である銅を、形状記憶合金の表面全体又は適宜の箇所にめっきをして銅薄膜を形成する。このとき、形状記憶合金の表面全体又は適宜の箇所に蒸着、スパッタリングなどで成膜した後、膜厚を厚くするためにめっきを施しても良い。
そして、上記接合構造の実施形態で説明したように、形状記憶合金同士、又は形状記憶合金と配線又は電極間をはんだ付けにより接合する。
最後に、銅を高い選択比で溶かすことができる溶液に浸し、接合部以外の部分の銅薄膜を除去する。
このようにして本実施形態では、形状記憶合金上にはんだ付けをすることができる。
【0040】
また表面改質処理をする接合構造の形成方法では、形状記憶合金の接合箇所であって形状回復力の作用方向と同じ向きの箇所に表面改質処理をする第1工程と、この形状記憶合金に銅薄膜を形成する第2工程と、この形状記憶合金の表面改質処理がされ銅薄膜が覆っている一端をはんだ付けする第3工程と、はんだ付けされた箇所以外の形状記憶合金に形成された銅薄膜を取り除く第4工程とを備えた構成としてもよい。具体的形成方法は上記方法と同様であるが、表面改質処理が追加される。
【0041】
【実施例】
次に実施例について説明する。
形状記憶合金の形状と電極及び配線の組み合わせは多々あるが、基本的な接合方法は同じであるので、ここではその内の形状記憶合金コイルと配線とのはんだ付けによる接合構造の形成方法について説明する。
まず、エチルアルコールで形状記憶合金コイルの脱脂をおこなう。次に形状記憶合金コイルの表面に無電解銅めっき又は電解銅めっきを施す。そして、形状記憶合金コイルの内部に配線として使用するエナメル線を通す。さらに、形状記憶合金コイルと配線との接合部をはんだ付けする。
最後に、銅を高い選択比で溶かすことができる溶液に形状記憶合金コイルを浸し、接合部以外の銅被膜部分を除去する。高い選択比で銅を溶解する溶液の一例として、例えば、アンモニアと過酸化水素水を2:1の割合で混ぜた溶液を使用する。
【0042】
銅エッチャントとしては、塩化鉄、希硫酸、濃硝酸及び硫酸銅等があるが、エッチング速度及びエッチングの選択性などから、アンモニアと過酸化水素水の上記割合のものが最適である。この銅エッチャントの場合、エッチング速度が速く、共晶はんだ及び形状記憶合金は溶けない。ここで使用した形状記憶合金コイルは素線直径50μm、外形直径200μmであり、エナメル線は太さ60μmである。
【0043】
【発明の効果】
以上の説明から理解されるように、本発明の形状記憶合金の接合構造では、難はんだ接合性を有する形状記憶合金であっても電極等と電気的機械的接合ができるという効果を有する。
また本発明の接合構造形成方法では、形状記憶合金上に、はんだ付けをすることができる接合構造を形成することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る形状記憶合金コイルと基板上の電極との接合構造の構成を示し、(a)は構成外観図であり、(b)及び(c)は接合構造の一部概略断面図である。
【図2】形状記憶合金コイルと配線との接合構造を示し、(a)は構成外観図であり、(b)及び(c)は接合構造の一部概略断面図である。
【図3】形状記憶合金コイル同士の接合構造を示し、(a)は構成外観図であり、(b)は一部概略断面図である。
【図4】形状記憶合金ワイヤの外観図であり、(a)は一端をコイル状にした形状記憶合金ワイヤを示し、(b)は一端をジグザグ形状にした形状記憶合金ワイヤを示し、(c)は一端を直線状のまま表面改質した形状記憶合金ワイヤを示し、(d)は一端を平らな一巻き形状にして表面改質した形状記憶合金ワイヤを示す。
【図5】形状記憶合金コイルと形状記憶合金ワイヤとの接合構造を示し、(a)は構成外観図であり、(b)は一端が直線状のワイヤを表面改質した形状記憶合金ワイヤと形状記憶合金コイルの接合構造の一部概略断面図であり、(c)は先端部がコイル状に形成された形状記憶合金ワイヤと形状記憶合金コイルの接合構造の一部概略断面図である。
【図6】形状記憶合金ワイヤと配線との接合構造を示し、(a)は接合構造の外観図であり、(b)は先端部が直線状の形状記憶合金ワイヤと配線の接合構造の一部概略断面図であり、(c)は先端部がコイル状に形成された形状記憶合金ワイヤと配線の接合構造の一部概略断面図である。
【図7】形状記憶合金ワイヤと基板上の電極との接合構造を示し、(a)は構成外観図であり、(b)は一端が直線状のワイヤを表面改質した形状記憶合金ワイヤと基板上の電極との接合構造の一部概略断面図であり、(c)は先端部がコイル状に形成された形状記憶合金ワイヤと基板上の電極との接合構造の一部概略断面図である。
【図8】形状記憶合金ワイヤ同士の接合構造を示す図であり、(a)は構成外観図であり、(b)は一端が直線状のワイヤを表面改質した形状記憶合金ワイヤ同士の接合構造の一部概略断面図であり、(c)は先端部がコイル状に形成された形状記憶合金ワイヤ同士の接合構造の一部概略断面図であり、(d)は一端が直線状のワイヤを表面改質した形状記憶合金ワイヤと先端部がコイル状に形成された形状記憶合金ワイヤとの一部概略断面図である。
【図9】本発明に係る形状記憶合金板の外観図である。
【図10】形状記憶合金板と電極との接合構造を示し、(a)は構成外観図、(b)は接合構造の一部概略断面図である。
【図11】(a),(b),(c)はそれぞれ、形状記憶合金板と配線、形状記憶コイル及び形状記憶ワイヤとの接合構造の一部概略断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 形状記億合金コイル
4 銅薄膜
6 電極
10 形状記憶合金コイルと電極との接合構造
12 配線
14,16,23,25 形状記憶合金ワイヤ
15 コイル状の先端部
17 直線状のワイヤ先端部
18 ジグザグ状のワイヤ先端部
19 一巻状のワイヤ先端部
21 形状記憶合金板
Claims (2)
- 難接合性を有する形状記憶合金の接合方法において、接合箇所を有する形状記憶合金の全体に接合膜を形成する第1工程と、接合箇所に形成した接合膜をはんだ付けする第2工程と、はんだ付けされた箇所以外の形状記憶合金に形成された接合膜を取り除く第3工程とを備え、
上記形状記憶合金の接合箇所がコイル状に形成されていて、上記接合膜を介してコイル状の接合箇所をはんだ付けすることを特徴とする、形状記憶合金の接合構造形成方法。 - 前記形状記憶合金が、形状記憶合金コイル及び形状記憶合金ワイヤのいずれかであることを特徴とする、請求項1記載の形状記憶合金の接合構造形成方法。
Priority Applications (1)
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