JP3814480B2 - アルカリ電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスケットの劣化による漏液を防止したアルカリ電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルカリ電池を構成するケースの開口部は、集電子を通した合成樹脂製のガスケットを嵌合することにより封口されている。ここで、図3に従来からのアルカリ電池の概略縦断面図を示す。
図3に示すアルカリ電池において、ナイロン製のガスケットのボス部15の中央孔(図示せず。)にはワッシャー17を介して真鍮製の集電子16が圧入され、集電子16およびガスケットのボス部15がゲル負極12と接している。
【0003】
このガスケットのボス部15と集電子16との嵌合面には、電解液のはい上がりによる漏液を防止するために、アスファルト系、クロロスルフォン化ポリエチレン系、ポリアミド系などのシール剤が塗布されている。
【0004】
このようなアルカリ電池を作製するには、まずケース11に正極合剤13を挿入し、ついで筒状セパレータ14を介してゲル負極12を注入した後、集電子16と一体となったボス部15を有するガスケットを挿入する。そして、ガスケット、ワッシャー17および底板18をケース11の端部でかしめることにより開口部を封止する。ここで、図4に、図3における部分Aの拡大図を示す。
【0005】
上述のような従来のアルカリ電池においては、ガスケットの中央孔の寸法と集電体の径を規制して耐ストレス性および耐クリープ性を向上させ、両者間からの漏液を防ごうとしても、時間の経過とともにガスケットが劣化して若干収縮することがある。そして、ガスケットのボス部15と集電子16の間にわずかながらに間隙ができ、そこから電解液が漏れてしまうという問題があった。
【0006】
これに対し、特開昭55−66862号公報には、集電子の表面における少なくともガスケットを当接させる面に、ベンゾトリアゾールと非イオン性界面活性剤との混合物からなる電解液漏出防止被膜を形成する技術が開示されている。
すなわち、これは図5に示すように、ガスケットのボス部15と集電子16との接面19に被膜20を設けることによってシール効果をもたせ、物理的に漏液を防ごうとするものである。図5は、従来のアルカリ電池における図4に相当する図である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、かかる従来技術によっても漏液対策は充分ではなかった。なぜなら、上述のようにガスケットのボス部15と集電子16との間に被膜を設けても、やはり電池作製後長時間を経過した場合にはガスケットそのものの劣化を抑制することができず、図6に示すように、非常に稀ではあるが、ガスケットのボス部15、集電子16およびゲル負極12の三相界面(図6における点B)から矢印の方向に向かって放射状にクラックが発生することがあるからである。
【0008】
そして、クラックが点Cまで到達してしまうと、ゲル負極12中の電解液が外部に漏れることになる。
以上のような従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、ガスケットの劣化に起因する漏液を防ぐことのできるアルカリ電池を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ケースの開口部を封口する合成樹脂製ガスケット、前記ガスケットに設けられたボス部の中央孔に挿入された集電子、および前記ケースに充填された電解液を含むアルカリ電池であって、少なくとも前記ガスケットのボス部、前記集電子および前記電解液の三相界面が、陰イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルリン酸カリウムからなる膜で覆われていることを特徴とするアルカリ電池に関する。
【0010】
この場合、少なくとも前記ボス部において、前記電解液と接する部分の外表面が、前記陰イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルリン酸カリウムからなる膜で覆われているのが有効である。
また、前記合成樹脂としては、ポリアミド(ナイロン)であるのが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
上述のように、本発明者らは、従来技術にしたがってガスケットのボス部15と集電子16との間に被膜を設けても、電池作製後長時間を経過した場合にはガスケットそのものの劣化を抑制することができず、ガスケットのボス部15、集電子16およびゲル負極12の三相界面から矢印の方向に向かって放射状にクラックが発生し得ることを見出し、これを防ぐべく、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明に係るアルカリ電池は、図1に示すように、少なくともガスケットのボス部5、集電子6およびゲル負極2の三相界面Bを覆うように、ガスケットのコーナー部分に界面活性剤からなる膜9を設けたことを最大の特徴とする。
このような位置に膜9を設けることにより、ガスケットが劣化してボス部15と集電子6との間に隙間ができてもゲル負極中2の電解液が漏れることはなく、また、三相界面Bを起点とするガスケットそのものの劣化を抑制することができるという効果を奏するものである。
【0013】
特に、図2に示すように、少なくとも前記ボス部5において、前記電解液と接し得る部分の外表面が、前記界面活性剤からなる膜9で覆われていれば、電解液の漏液だけでなく、ガスケットそのものの劣化を抑制する効果もさらに大きくなる。
【0014】
図1および2は、本発明に係るアルカリ電池の概略縦断面図である。界面活性剤からなる膜9を、少なくともガスケットのボス部5、集電子6およびゲル負極2の三相界面Bを覆う部分、またはボス部15において電解液と接し得る部分の外表面に設けること以外は、図3に示した従来のアルカリ電池と同様である。
本発明において用いる界面活性剤としては、集電子およびガスケット上において膜形成能を有するものであればよく、陰イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。これは、陽イオン性界面活性剤を用いると、電池内で分解され易い傾向にあるからである。
【0015】
さらに、例えばポリオキシエチレンアルキルリン酸カリウムまたはポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの陰イオン性界面活性剤を用いるのが特に好ましい。
また、ガスケットを構成する材料としては、従来から用いられているポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリアミド(ナイロン)などの合成樹脂であればよく、なかでも吸水性、機械的強度および弾力性によってケース1のシール性に優れているという観点から、ポリアミドを用いるのが好ましい。
なお、本発明者らは、ガスケットの材料としてポリアミドを用いた場合に、上記界面活性剤からなる膜によるクラック発生防止能が顕著に発揮されることを見出した。
【0016】
つぎに、集電子6を構成する材料としても、従来から用いられているものであればよく、例えば銅または真鍮など銅合金などがあげられる。また、電解液としては、強アルカリ性を有する従来のものであればよい。
また、ガスケットのボス部5と集電子6の嵌合面には、電解液のはい上がりによる漏液を防止するために、シール剤を塗布するのが好ましく、かかるシール剤としては、例えばアスファルト系、クロロスルフォン化ポリエチレン系、ポリアミド系などを用いることができる。
【0017】
その他の、アルカリ電池の構成要素についても、本発明の効果を損なわない範囲で従来のものを用いればよい。
以下に、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものである。
【0018】
【実施例】
《実施例1および比較例》
ボス部の外径が4.0mm、中央孔の孔径が1.38mmのナイロン製のLR6型ガスケット、およびピン径が1.45mmの真鍮製の集電子を用い、図1に示す構造を有する単3形アルカリ乾電池を組み立てた。なお、ガスケットと集電子との間にはポリアミノアミド系シール剤を塗布した。
まず、射出成型法で得られたナイロン製ガスケットを、温水に浸漬して加湿し、ついで5%ポリオキシエチレンアルキルリン酸カリウム(界面活性剤)に浸漬させた。その後、常温常湿で乾燥させ、集電子をガスケットの孔に圧入した。
【0019】
このときガスケット全体の表面に、界面活性剤からなる膜が形成されており、集電子を圧入したことにより、孔内部にあった界面活性剤が集電子部分にも付着していた。
このようにして、図1に示すように、集電子6、ガスケットのボス部5およびゲル負極2の三相界面に界面活性剤からなる膜9を有するアルカリ乾電池a(実施例1)を得た。
一方、ガスケットを界面活性剤に浸漬しない他は実施例1と同様にして、比較用のアルカリ乾電池b(比較例)を得た。
【0020】
[評価]
上述のようにしてアルカリ乾電池aおよびbを50個ずつ作製し、45℃の温度下で保存した。そして、1月、3月、6月および9月後に電池の漏液の有無を確認し、漏液した電池を分解してクラックが図6に示したように点Bから点Cに到達して漏液しているか否かを確認した。結果を(漏液電池数/試験電池数)として表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
表1から明らかなように、本発明によれば、陰イオン性界面活性剤からなる膜を、ガスケット、集電子およびゲル負極の三相界面を覆うように形成することにより、ガスケットのクラック発生を効果的に抑制できたことがわかる。
【0023】
《実施例2》
温水に浸漬して加湿したガスケットに集電子6を圧入した後に、電池を組み立てたときに三相界面Bを覆うように界面活性剤を塗布し、図1に示すような界面活性剤からなる膜9を設けた。これ以外については実施例1と同様にしてアルカリ乾電池cを作製し、評価した。その結果、実施例1と同じ結果が得られた。
これから、少なくとも三相界面に上記膜を設ければ、本発明の効果が得られることがわかった。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、ガスケットの劣化に起因する漏液を防ぐことのできるアルカリ電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアルカリ乾電池の概略縦断面図である。
【図2】本発明に係る別のアルカリ乾電池の概略縦断面図である。
【図3】従来のアルカリ乾電池の概略縦断面図である。
【図4】図3における部分Aの拡大図である。
【図5】別の従来のアルカリ乾電池における図4に相当する図である。
【図6】図5において、ガスケットにクラックが発生する様子を示す図である。
【符号の説明】
1、11 ケース
2、12 ゲル負極
3、13 正極合剤
4、14 筒状セパレータ
5、15 ガスケットのボス部
6、16 集電子
7、17 ワッシャー
8、18 負極板
9 界面活性剤からなる膜
19 接面
20 被膜
B 三相界面
Claims (3)
- ケースの開口部を封口する合成樹脂製ガスケット、前記ガスケットに設けられたボス部の中央孔に挿入された集電子、および前記ケースに充填された電解液を含むアルカリ電池であって、
少なくとも前記ガスケットのボス部、前記集電子および前記電解液の三相界面が、陰イオン性界面活性剤からなる膜で覆われており、
前記陰イオン性界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルリン酸カリウムであることを特徴とするアルカリ電池。 - 前記ボス部において、少なくとも前記電解液と接する部分の外表面が、前記陰イオン性界面活性剤からなる膜で覆われていることを特徴とする請求項1記載のアルカリ電池。
- 前記合成樹脂がポリアミドであることを特徴とする請求項1または2に記載のアルカリ電池。
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