JP3814280B2 - 多方向入力装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ゲーム機や携帯電話機等に用いて好適な多方向入力装置に係り、特に、スライド操作によって所定の入力が可能な多方向入力装置に関する。
図21は従来の多方向入力装置を示す断面図であり、この多方向入力装置は操作部をスライド操作することによって所定の入力が可能となっている(例えば、特許文献1参照)。図21に示す多方向入力装置は、絶縁性の上ケース2および下ケース3を組み合わせてなる筐体1と、この筐体1にスライド操作可能に保持された操作体4と、この操作体4の突起部4aに駆動されて筐体1の内部で互いに直交する方向にスライド移動する第1のスライダ5および第2のスライダ6と、第1のスライダ5に保持された第1の摺動子7と、第2のスライダ6に保持された第2の摺動子8と、上ケース2の裏面に配設された基板9とによって主に構成されており、基板9の底面側には第1および第2の摺動子7,8がそれぞれ摺接する図示せぬ一対の導電パターンが設けられている。筐体1の上ケース2には開口2aが設けられており、この開口2aを貫通する操作体4の突起部4aの上端部に図示せぬ操作つまみが固着されて、突起部4aに操作力が付与されるようになっている。操作体4には下ケース3の内底面3aを受け面とする正方形状の平板部4bが設けられており、この平板部4bの中央に突起部4aが立設されている。第1のスライダ5には操作体4の突起部4aを挿通して係合させた直線状の係合孔5aが形成されており、この係合孔5aの短手方向に沿って第1のスライダ5は移動可能である。同様に、第2のスライダ6には突起部4aを挿通して係合させた直線状の係合孔6aが形成されており、この係合孔6aの短手方向に沿って第2のスライダ6は移動可能である。すなわち、互いに直交する方向に延びる係合孔5aと係合孔6aが交叉する位置に突起部4aを挿通して係合させることにより、突起部4aの水平方向(開口2aの径方向)の移動に伴って各スライダ5,6がそれぞれ互いに直交する方向にスライド移動するようになっている。なお、下ケース3には第1および第2のスライダ5,6のスライド移動を案内するガイド壁3bが枠状に立設されている。
このように概略構成された従来の多方向入力装置は、図示せぬ操作つまみを介して操作体4を例えば係合孔5aの長手方向(図21の左右方向)に沿ってスライド操作すると、第1のスライダ5には操作力が作用しないが、第2のスライダ6は突起部4aに駆動されるため操作方向へスライド移動し、よって第2の摺動子8が対応する導電パターンとの接触位置を変化させて、該接触位置に応じた検出信号が図示せぬ端子から出力される。同様に、操作体4を係合孔6aの長手方向(図21の紙面と直交する方向)に沿ってスライド操作すると、第2のスライダ6には操作力が作用しないが、第1のスライダ5は突起部4aに駆動されるため操作方向へスライド移動し、よって第1の摺動子7が対応する導電パターンとの接触位置を変化させて、該接触位置に応じた検出信号が図示せぬ端子から出力される。また、操作体4を係合孔5a,6aに対して斜め方向にスライド操作した場合は、その操作方向とスライド量に応じて第1および第2のスライダ5,6が互いに直交する方向へそれぞれ所定量だけスライド移動して、第1および第2の摺動子7,8の位置に応じた検出信号が出力される。したがって、これらの検出信号を図示せぬ制御部で演算処理することにより、操作体4のスライド方向およびスライド量を検出できるようになっている。
特開平5−324184号公報(第3−4頁、図2)
しかしながら、前述した従来の多方向入力装置には、スライド操作した操作体4を初期位置へ自動復帰させる復帰手段が設けられていないため、操作体4をスライド操作が可能な領域の端部近傍で停止させると、次なるスライド操作を行う際に該端部方向へはほとんどスライド移動させることができなくなってしまい、ゲーム機などにおいて良好な操作性が得られないという問題があった。
そこで、操作体4を初期位置へ自動復帰させるためにゴム部材やばね部材等からなる復帰手段を筐体1内に組み込むことが考えられるが、筐体1内には操作体4のスライド方向およびスライド量を検出するための検出手段として、互いに直交する方向にスライド移動する一対のスライダ5,6や各スライダ5,6に保持された摺動子7,8等が配設されているので、該復帰手段を筐体1内に組み込むためには該検出手段の検出動作に悪影響が及ばないように特別な配慮をしておく必要がある。
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、スライド操作した操作体を自動復帰させることができて操作性が良好な多方向入力装置を提供することにある。
上述した目的を達成するため、本発明の多方向入力装置では、連通開口が形成された隔壁によって仕切られた第1の空洞部および第2の空洞部を有し、これら第1の空洞部および第2の空洞部のいずれか一方を外部開口に臨出させている筐体と、前記第1の空洞部に配置された大径部と前記外部開口に露出する操作力付与部とが設けられ、多方向へスライド操作可能に保持された操作体と、前記操作体のスライド操作に伴って駆動されて前記第2の空洞部内で互いに直交する方向にスライド移動する第1のスライダおよび第2のスライダを含み、該両スライダを介して前記操作体のスライド方向およびスライド量を検出する検出手段と、前記第1の空洞部内で前記大径部の周囲に組み込まれ、該大径部を初期位置へ自動復帰させる弾性復帰部材と、該弾性復帰部材に係合してその復帰位置を規定する位置決め手段とを備え、前記操作体のスライド操作時に前記大径部が前記弾性復帰部材を押し込んで弾性変形させるように構成した。
このように構成された多方向入力装置は、筐体内の第1の空洞部と第2の空洞部が隔壁によって仕切られ、操作体を自動復帰させるための弾性復帰部材が該第1の空洞部に組み込まれていると共に、一対のスライダを含む検出手段が該第2の空洞部に組み込まれているので、弾性復帰部材が検出手段の検出動作に悪影響を及ぼす虞がない。また、この多方向入力装置は、スライド操作時に操作体の大径部によって弾性復帰部材を大きく弾性変形させることが可能なため、操作体のスライド操作可能な領域(操作領域)を広く採れる。
かかる構成の多方向入力装置において、前記弾性復帰部材が前記大径部を包囲する位置に組み込まれた環状弾性部材であって、該環状弾性部材の内周部が前記位置決め手段に当接して位置規制されるようになし、前記操作体のスライド操作時に前記大径部がそのスライド方向に位置する前記環状弾性部材を押し込んで伸長(弾性変形)させるようにしておけば、操作体を大きくスライド移動させても環状弾性部材を無理なく伸長させることができると共に、操作力がスライド方向によって大きくばらつく虞がなくなるため、操作性の向上が図れる。
この場合、前記大径部の外形が平面視円形状であれば、該大径部の外周面に全周に亘って環状弾性部材を弾接させることができるため、操作力がスライド方向によってばらつく可能性がさらに低減して好ましい。また、環状弾性部材は環状ゴム等であってもよいが、環状弾性部材が環状コイルばねであれば、長期に亘って劣化しにくくスライド操作が繰り返されても塑性変形を起こしにくいため、高い信頼性が期待できる。
また、かかる構成の多方向入力装置において、前記第1のスライダとその対向面のいずれか一方に第1の摺動子を設けて他方に該摺動子が摺接する第1の導電パターンを設けると共に、前記第2のスライダとその対向面のいずれか一方に第2の摺動子を設けて他方に該摺動子が摺接する第2の導電パターンを設けることによって前記検出手段を構成すれば、摺動子と導電パターンの相対位置変化に基づく簡素で高精度な検出が行えるため好ましい。
また、かかる構成の多方向入力装置において、前記大径部が板状に形成されており、該大径部によって前記外部開口および前記連通開口の少なくとも一方が前記初期位置において蓋閉されるようにしてあれば、外部開口を介して筐体の内部に異物が侵入する危険性が少なくなる。また、外部開口と連通開口の両方が初期位置において大径部によって蓋閉されている場合には、仮に外部開口に臨出している側の一方の空洞部に異物が侵入したとしても、連通開口を介して他方の空洞部へ到達する危険性は極めて少なくなるので、信頼性の向上が図れて好ましい。
また、かかる構成の多方向入力装置にあっては、前記位置決め手段が前記第1の空洞部の内壁に突設された突堤部からなることが好ましい。すなわち、第1の空洞部に臨出する前記隔壁等を利用すれば、環状コイルばね等の弾性復帰部材を所定位置に保持可能な突堤部を形成することは容易であり、部品点数の増加も回避できる。この場合、該突堤部を円環状に形成しておけば、環状弾性部材を全周に亘って同等の条件で位置規制することができるため、操作力がスライド方向によってばらつく可能性がさらに低減して好ましく、突堤部に対する環状弾性部材の動きをスムーズなものとすることができる。
また、かかる構成の多方向入力装置にあっては、前記第2の空洞部の内壁に前記第1および第2のスライダのスライド移動を案内するガイド壁を突設しておくことが好ましい。すなわち、第2の空洞部に臨出する前記隔壁等を利用すれば、互いに直交する方向にスライド移動する一対のスライダを案内するためのガイド壁を形成することは容易である。
本発明の多方向入力装置は、筐体内の第1の空洞部と第2の空洞部が隔壁によって仕切られ、操作体を自動復帰させるための弾性復帰部材が該第1の空洞部に組み込まれていると共に、一対のスライダを含む検出手段が該第2の空洞部に組み込まれているので、弾性復帰部材が検出手段の検出動作に悪影響を及ぼす虞がない。また、操作体をスライド操作すると弾性復帰部材が大径部に押し込まれて弾性変形するようになっているので、操作体のスライド操作可能な領域を広く採れる。特に、弾性復帰部材が環状コイルばね等の環状弾性部材からなる場合には、スライド方向が異なっても操作力が大きくばらつく虞がなくなる。それゆえ、スライド操作した操作体を自動復帰させることができて操作性が良好な高信頼性の多方向入力装置を提供することができる。
実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係る多方向入力装置の分解斜視図、図2は該多方向入力装置の断面図、図3は該多方向入力装置の平面図、図4は該多方向入力装置の側面図、図5は該多方向入力装置を図4とは別角度から見た側面図、図6は該多方向入力装置の底面図、図7は底部カバーおよび基板を除去して該多方向入力装置を底面側から見た斜視図、図8は該多方向入力装置を天面側から見た斜視図、図9は上ケースと底部カバーを除去して該多方向入力装置を天面側から見た斜視図、図10は該多方向入力装置の一対のスライダと基板を天面側から見た斜視図、図11は該多方向入力装置の環状コイルばねを示す平面図、図12(a)〜(c)は該環状コイルばねの形成方法を示す説明図である。また、図13〜図18は該多方向入力装置の動作説明図であり、図13は非操作時における操作体と環状コイルばねの位置を示す平面図、図14は図13と同じ状態での各スライダの位置を示す底面図、図15は筐体の一辺に沿ってスライド操作したときの操作体と環状コイルばねの位置を示す平面図、図16は図15と同じ状態での各スライダの位置を示す底面図、図17は筐体の対角線方向にスライド操作したときの操作体と環状コイルばねの位置を示す平面図、図18は図17と同じ状態での各スライダの位置を示す底面図である。また、図19と図20は該多方向入力装置の組立方法を示す説明図であり、図19は組立治具によって環状コイルばねを仮保持している状態を示す平面図、図20は図19に示す組立過程の多方向入力装置の断面図である。
これらの図に示す多方向入力装置は、筐体10の構成要素である絶縁性の上ケース11および下ケース12と、円板状の大径部13aの両面の中心部に突起部13bと駆動部13cを突設してなる操作体13と、上ケース11内で大径部13aを包囲する位置に組み込まれた環状コイルばね14と、下ケース12内で互いに直交する方向にスライド移動可能な第1のスライダ15および第2のスライダ16と、第1のスライダ15に保持された第1の摺動子17と、第2のスライダ16に保持された第2の摺動子18と、これら第1および第2の摺動子17,18がそれぞれ摺接する第1および第2の導電パターン25,26が設けられた基板19と、板金製の底部カバー20とによって主に構成されている。
この多方向入力装置の筐体10は、上ケース11と下ケース12および底部カバー20を組み合わせて一体化することにより構成されている。上ケース11の天板部は筐体10の天板部10aに相当し、この天板部10aには、操作体13の突起部13bがスライド移動可能に挿通される大きめな円形の外部開口10bが開設されていると共に、該開口10bの周囲の同一円周上に略等間隔な配置で4個の小さな治具挿通孔10cが穿設されている。これら治具挿通孔10cは、組立時に後述するピン形状の組立治具30を挿通するためのものである。また、下ケース12の天板部は筐体10の隔壁10dに相当し、この隔壁10dには操作体13の駆動部13cがスライド移動可能に挿通される大きめな円形の連通開口10eが開設されている。
この筐体10の内部空間は、隔壁10dを介して上方の第1の空洞部21と下方の第2の空洞部22とに仕切られている。そして、上ケース11と隔壁10dとによって画成される第1の空洞部21に、操作体13の大径部13aと環状コイルばね14とが配置されており、下ケース12と底部カバー20上に載置された基板19とによって画成される第2の空洞部22に、操作体13の駆動部13cや第1および第2のスライダ15,16等が配置されている。また、第1の空洞部21の天井側の内壁(天板部10a)と床面側の内壁(隔壁10d)には、図2に示す非操作時(初期位置)の大径部13aの外周部と対向する位置に円環状の突堤部10f,10gが形成されている。そして、平面視でこれら突堤部10f,10gを包囲するように、前述した4個の治具挿通孔10cが配置されている。
また、上ケース11の底面の四隅には連結ピン11aが下向きに突設されており、下ケース12と基板19および底部カバー20にはそれぞれの四隅に連結孔12a,19a,20aが穿設されている。そして、各連結ピン11aを対応する連結孔12a,19a,20aに挿通して熱溶着等により底部カバー20の底面に固着させると共に、底部カバー20の四隅に立設されているかしめ片20bを上ケース11の天面の四隅にかしめつけることにより、上ケース11と下ケース12と基板19と底部カバー20とが一体化されている。なお、コンパクト化を図るため上ケース11と下ケース12と基板19と底部カバー20はすべて平面視略正方形に形成されているが、本実施形態例では、これらを一体化する際に誤った向きに組み付けてしまうことがないように、連結ピン11aとこれに対応する連結孔12a,19a,20aの形状や大きさを場所により異ならせて、組み付ける向きが一義的に規定されるようにしている。
操作体13は筐体10によって平面内を多方向へスライド操作可能に保持されており、その突起部13bが外部開口10bを貫通して上方へ延出している。この突起部13bの上端部には図示せぬ操作つまみが固着され、該操作つまみを介して突起部13aに操作力が付与されるようになっている。操作体13の大径部13aは第1の空洞部21に配置されている。この大径部13aは外部開口10bや連通開口10eよりも大径な円板状に形成されており、少なくとも操作体13の初期位置において外部開口10bや連通開口10eは大径部13aによって蓋閉されるようになっている。なお、外部開口10bが前記操作つまみによっても常時蓋閉されるように構成することも可能である。操作体13の駆動部13cは連通開口10eを貫通して第2の空洞部22に延出しており、この駆動部13cによって第1および第2のスライダ15,16が駆動されるようになっている。
環状コイルばね14は、図12(a)に示すような所定長さの直線状のコイルばね23の両端部23a,23bを連結して円環状に形成したものである。具体的には、図12(b)に示すように、コイルばね23の一端部23aと該一端部23aよりもコイル径の小なる他端部23bとを対向させて、該他端部23bを該一端部23a内へねじ込むように挿入していくことにより、図12(c)に示すように両端部23a,23bを簡単かつ確実に係止させることができ、これにより図11に示すような環状コイルばね14が得られる。なお、直線状のコイルばね23の他端部23bのコイル径(外径)は、一端部23aの内径よりも大きくて該一端部23aのコイル径(外径)よりも小さな寸法に設定されている。また、直線状のコイルばね23は他端部23bを除いてコイル径がほぼ一定に形成されているので、その両端部23a,23bを連結してなる環状コイルばね14は全周に亘ってコイル径がほぼ一定となっている。そのため、組立時に環状コイルばね14を周方向に位置決めする必要はない。
この環状コイルばね14は、筐体10内の第1の空洞部21に配置されて、操作体13の大径部13aに弾接状態で巻装されており、操作体13のスライド操作時に大径部13aがそのスライド方向に位置する環状コイルばね14を押し込んで伸長(弾性変形)させるようになっている。したがって、スライド操作後は、環状コイルばね14の復元力によって大径部13aを初期位置へ自動復帰させることができる。ただし、第1の空洞部21の上下の内壁に設けられた突堤部10f,10gが環状コイルばね14の内周部に当接して位置規制しているため、環状コイルばね14が突堤部10f,10gよりも径方向内側へ移動することはない。
第1のスライダ15と第2のスライダ16は筐体10内の第2の空洞部22に配置されており、各スライダ15,16の底面の長手方向一端部にそれぞれ第1の摺動子17と第2の摺動子18が固着されている。第1のスライダ15には操作体13の駆動部13cを挿通して係合させた直線状の係合孔15aが形成されており、この係合孔15aの短手方向に沿って第1のスライダ15は移動可能である。同様に、第2のスライダ16には駆動部13cを挿通して係合させた直線状の係合孔16aが形成されており、この係合孔16aの短手方向に沿って第2のスライダ16は移動可能である。すなわち、互いに直交する方向に延びる係合孔15aと係合孔16aが交叉する位置に駆動部13cを挿通して係合させることにより、駆動部13cのスライド移動に伴って各スライダ15,16がそれぞれ互いに直交する方向にスライド移動するようになっている。また、図1に示すように、下ケース12の底面には第1および第2のスライダ15,16のスライド移動を案内するガイド壁12bが枠状に突設されている。
基板19の天面側には、図10に示すように、係合孔15aの短手方向(係合孔16aの長手方向)に沿って延びて第1の摺動子17が摺動可能な抵抗体および導電体からなる第1の導電パターン25と、係合孔16aの短手方向(係合孔15aの長手方向)に沿って延びて第2の摺動子18が摺動可能な抵抗体および導電体からなる第2の導電パターン26とが設けられている。また、この基板19の一辺端には第1および第2の導電パターン25,26を図示せぬ外部回路と接続するための複数の端子24が配設されている。
このように構成された多方向入力装置を組み立てる際に、環状コイルばね14を操作体13の大径部13aに直接巻装しようとすると、組立作業が煩雑化して環状コイルばね14の変形や紛失事故も起こりやすくなる。そのため本実施形態例にあっては、図19および図20に示すように、組立時に筐体10の治具挿通孔10cにピン形状の組立治具30を挿通し、この組立治具30に環状コイルばね14を巻装して仮保持した状態で、上ケース11に操作体13や下ケース12等を順次組み込んでいくという組立方法を採用している。こうすることで、環状コイルばね14に邪魔されずに操作体13の大径部13aを第1の空洞部21内に収納させることができ、この後、組立治具30を治具挿通孔10cから抜き取れば、環状コイルばね14が自身の弾性で大径部13aに巻装されることとなる。したがって、環状コイルばね14や操作体13の組み込み作業を円滑に行うことができ、組立性が良好な多方向入力装置が得られる。
なお、本実施形態例にあっては、筐体10に略等間隔な配置で突堤部10f,10gを包囲するように4個の治具挿通孔10cが設けてあるので、各治具挿通孔10cが突堤部10f,10gの比較的近傍にあっても、これらの治具挿通孔10cに挿通した組立治具30に環状コイルばね14を巻装しておくことにより、図19に示すように、操作体13の大径部13aと干渉しない位置に環状コイルばね14を仮保持しておくことができる。それゆえ、組立性を向上させたことで多方向入力装置の小型化が阻害される心配はない。
次に、本実施形態例に係る多方向入力装置の動作を、主に図13〜図18に基づいて説明する。この多方向入力装置は、図示せぬ操作つまみを介して操作体13が任意の方向へ平面的にスライド操作されるというものであるが、操作力が付与されていない非操作時には環状コイルばね14が円環状に保持されているため、図2と図13および図14に示すように、操作体13の突起部13bと駆動部13cがそれぞれ外部開口10bの中心部と連通開口10eの中心部に位置している。このとき、駆動部13cは係合孔15a,16aの各中央部と係合しているので、第1および第2のスライダ15,16はいずれも中立位置に保持されている。
図13と図14に示す状態で、前記操作つまみを介して操作体13を係合孔15aの長手方向に沿ってスライド操作すると、第1のスライダ15には操作力が作用しないが、第2のスライダ16は駆動部13cに駆動されるため操作方向へスライド移動し、例えば図15と図16に示すような状態に移行する。この場合、前記第1の導電パターン25に対する第1の摺動子17の接触位置は変化しないが、前記第2の導電パターン26に対する第2の摺動子18の接触位置は変化する。また、突起部13bおよび駆動部13cと一体の大径部13aがスライド移動するため、図15に示すように、大径部13aが移動する側で環状コイルばね14が伸長する。
同様に、図13と図14に示す状態で、操作体13を係合孔16aの長手方向に沿ってスライド操作した場合は、第2のスライダ16には操作力が作用せず、よって第2の導電パターン26に対する第2の摺動子18の接触位置は変化しないが、第1のスライダ15は駆動部13cに駆動されるため操作方向へスライド移動し、第1の導電パターン25に対する第1の摺動子17の接触位置が変化する。なお、図示はしていないが、この場合、環状コイルばね14は図13の左右方向へ伸長する。
また、図13と図14に示す状態で、前記操作つまみを介して操作体13を筐体10の対角線方向にスライド操作した場合は、その操作方向とスライド量に応じて第1および第2のスライダ15,16が互いに直交する方向へそれぞれ所定量だけスライド移動し、例えば図17と図18に示すような状態に移行し、大径部13aが移動する側で環状コイルばね14が伸長する。したがって、第1の導電パターン25に対する第1の摺動子17の接触位置に応じた検出信号と、第2の導電パターン26に対する第2の摺動子18の接触位置に応じた検出信号とを、端子24を介して外部回路へ出力して図示せぬ制御部で演算処理することにより、操作体13のスライド方向およびスライド量を検出することができる。
そして、このように操作体13をスライド操作した後、その操作力を除去すると、大径部13aに押し込まれて伸長していた環状コイルばね14が自身の弾性で元の形状に戻ろうとするため、この環状コイルばね14の復元力によって大径部13aが押し戻され、操作体13が図13と図14に示す初期位置へ自動復帰するようになっている。
上述したように本実施形態例に係る多方向入力装置は、操作体13をスライド操作すると、円板状の大径部13aの外周面に全周に亘って弾接している環状コイルばね14が該大径部13aに押し込まれてスライド方向へ伸長するようになっているので、操作体13を大きくスライド移動させても環状コイルばね14を無理なく伸長させることができる。また、第1の空洞部21の内壁に突出形成した円環状の突堤部10f,10gによって環状コイルばね14の内周部を位置規制しているので、環状コイルばね14を全周に亘って同等の条件で位置規制することができる。そのため、操作体13のスライド操作可能な領域(操作領域)を広く採れると共に、スライド方向が異なっても操作力のばらつきはほとんどない。また、操作力を除去すると伸長していた環状コイルばね14の復元力によって大径部13aが押し戻されるため、操作体13を初期位置へ自動復帰させることができる。したがって、この多方向入力装置の操作性は極めて良好である。
また、この多方向入力装置で使用している環状コイルばね14は、所定長さのコイルばね23の両端部23a,23bを係止させるだけで簡単に形成できるため、部品コストを抑えることができる。しかも、環状コイルばね14はその内径を一時的に増減させる弾性変形を行うだけで、スライド操作が繰り返されても塑性変形を起こしにくいため、長期に亘って良好な操作性を維持することができる。
また、この多方向入力装置では、円板状の大径部13aによって筐体10の外部開口10bや連通開口10eが少なくとも操作体13の初期位置において蓋閉されるため、多方向入力装置の搬送時等にこれらの開口10b,10eを介して第1の空洞部21や第2の空洞部22に異物が侵入する危険性が少ない。それゆえ、異物の侵入に起因する環状コイルばね14やスライダ15,16の動作不良が発生しにくく、また摺動子17,18や導電パターン25,26に異物が付着して検出不良を招来する危険性も減り、信頼性が高まっている。
また、この多方向入力装置は、環状コイルばね14を収納している第1の空洞部21と、摺動子17,18や導電パターン25,26等の検出手段を収納している第2の空洞部22とが、隔壁10dによって仕切られているので、環状弾性部材(環状コイルばね)14が該検出手段の検出動作に悪影響を及ぼす虞がない。
また、この多方向入力装置を組み立てる際には、筐体10の治具挿通孔10cに挿通した組立治具30に環状コイルばね14を巻装しておくことにより、その後に組み込まれる操作体13の大径部13aと干渉しない位置に環状コイルばね14を仮保持しておくことができるため、環状コイルばね14によって組立性が損なわれる心配もない。
なお、上記実施形態例においては、第1の空洞部21を外部開口10bに臨出させた筐体10としたが、第1および第2の空洞部の配置関係を逆にして、検出手段が収納される第2の空洞部22を外部開口10bに臨出させるようにしてもよい。この場合には、第1の空洞部内に収納された操作体13の大径部13aから連通開口を通って外部開口側に延びる突起部13bのみを一体的に設ければよく、第2の空洞部内に位置する該突起部13bの部分が一対のスライダ15,16を駆動させる駆動部として機能する。
また、環状コイルばね14の内周部の位置規制を突堤部10f,10gのいずれか一方のみで行うことも可能である。さらに、摺動子17,18を導電パターン25,26上で摺動させるという検出方式以外に、受発光素子を用いた光検出方式や、磁気検出方式、静電容量検出方式などを採用することも可能である。
また、復帰手段として環状コイルばねの代わりに、環状のゴム部材やエラストマー等を使用してもよく、環状ではない線ばね等を使用することも可能であるが、上記実施形態例のように復帰手段として環状コイルばねを使用すると、長期に亘って劣化しにくくスライド操作が繰り返されても塑性変形を起こしにくいため、高い信頼性が期待できて好ましい。
本発明の実施形態例に係る多方向入力装置の分解斜視図である。 該多方向入力装置の断面図である。 該多方向入力装置の平面図である。 該多方向入力装置の側面図である。 該多方向入力装置を図4とは別角度から見た側面図である。 該多方向入力装置の底面図である。 底部カバーと基板を除去して該多方向入力装置を底面側から見た斜視図である。 該多方向入力装置を天面側から見た斜視図である。 上ケースと底部カバーを除去して該多方向入力装置を天面側から見た斜視図である。 該多方向入力装置の一対のスライダと基板を天面側から見た斜視図である。 該多方向入力装置の環状コイルばねを示す平面図である。 該環状コイルばねの形成方法を示す説明図である。 非操作時における操作体と環状コイルばねの位置を示す平面図である。 図13と同じ状態での各スライダの位置を示す底面図である。 筐体の一辺に沿ってスライド操作したときの操作体と環状コイルばねの位置を示す平面図である。 図15と同じ状態での各スライダの位置を示す底面図である。 筐体の対角線方向にスライド操作したときの操作体と環状コイルばねの位置を示す平面図である。 図17と同じ状態での各スライダの位置を示す底面図である。 組立治具によって環状コイルばねを仮保持している状態を示す平面図である。 図19に示す組立過程の多方向入力装置の断面図である。 従来例に係る多方向入力装置の断面図である。
符号の説明
10 筐体
10a 天板部
10b 外部開口
10c 治具挿通孔
10d 隔壁
10e 連通開口
10f,10g 突堤部(位置決め手段)
11 上ケース
12 下ケース
12b ガイド壁
13 操作体
13a 大径部
13b 突起部(操作力付与部)
13c 駆動部
14 環状コイルばね
15 第1のスライダ
16 第2のスライダ
17 第1の摺動子(検出手段)
18 第2の摺動子(検出手段)
19 基板
20 底部カバー
21 第1の空洞部
22 第2の空洞部
23 コイルばね
23a,23b 端部
24 端子
25 第1の導電パターン(検出手段)
26 第2の導電パターン(検出手段)
30 組立治具

Claims (9)

  1. 連通開口が形成された隔壁によって仕切られた第1の空洞部および第2の空洞部を有し、これら第1の空洞部および第2の空洞部のいずれか一方を外部開口に臨出させている筐体と、
    前記第1の空洞部に配置された大径部と前記外部開口に露出する操作力付与部とが設けられ、多方向へスライド操作可能に保持された操作体と、
    前記操作体のスライド操作に伴って駆動されて前記第2の空洞部内で互いに直交する方向にスライド移動する第1のスライダおよび第2のスライダを含み、該両スライダを介して前記操作体のスライド方向およびスライド量を検出する検出手段と、
    前記第1の空洞部内で前記大径部の周囲に組み込まれ、該大径部を初期位置へ自動復帰させる弾性復帰部材と、
    該弾性復帰部材に係合してその復帰位置を規定する位置決め手段とを備え、
    前記操作体のスライド操作時に前記大径部が前記弾性復帰部材を押し込んで弾性変形させるように構成したことを特徴とする多方向入力装置。
  2. 請求項1の記載において、前記弾性復帰部材が前記大径部を包囲する位置に組み込まれた環状弾性部材であって、該環状弾性部材の内周部が前記位置決め手段に当接して位置規制されるようになし、前記操作体のスライド操作時に前記大径部がそのスライド方向に位置する前記環状弾性部材を押し込んで伸長させるように構成したことを特徴とする多方向入力装置。
  3. 請求項2の記載において、前記大径部の外形が平面視円形状であることを特徴とする多方向入力装置。
  4. 請求項2または3の記載において、前記環状弾性部材が環状コイルばねからなることを特徴とする多方向入力装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項の記載において、前記第1のスライダとその対向面のいずれか一方に第1の摺動子を設けると共に、他方に該摺動子が摺接する第1の導電パターンを設け、かつ、前記第2のスライダとその対向面のいずれか一方に第2の摺動子を設けると共に、他方に該摺動子が摺接する第2の導電パターンを設けたことを特徴とする多方向入力装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項の記載において、前記大径部は板状に形成されており、該大径部によって前記外部開口および前記連通開口の少なくとも一方が前記初期位置において蓋閉されるようにしたことを特徴とする多方向入力装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項の記載において、前記位置決め手段が前記第1の空洞部の内壁に突設された突堤部からなることを特徴とする多方向入力装置。
  8. 請求項7の記載において、前記突堤部が円環状に形成されていることを特徴とする多方向入力装置。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項の記載において、前記第2の空洞部の内壁に前記第1および第2のスライダのスライド移動を案内するガイド壁が突設されていることを特徴とする多方向入力装置。
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