以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係る多方向入力装置は、例えば、携帯電話装置やゲーム機用コントローラ等における方位入力操作に用いられるものである。なお、本実施の形態に係る多方向入力装置の用途については、これらに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
図1から図3を参照して、多方向入力装置の全体構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る多方向入力装置の斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係る多方向入力装置の上面側から見た分解斜視図である。図3は、本発明の実施の形態に係る多方向入力装置の下面側から見た分解斜視図である。
図1から図3に示すように、本実施の形態に係る多方向入力装置1は、摘み部または図示しない摘みの取付部として機能する操作部41の操作により多方向入力を可能とするものであり、上部ケース2及び下部ケース3からなるハウジングの空洞部内に各種構成部品を収納して構成される。上部ケース2及び下部ケース3は、重ね合わせられた状態で、下部ケース3の下方から取付部材4を上部ケース2にスナップ結合させることにより一体化されている。
上部ケース2は、絶縁性の樹脂材料等で下面を開口した扁平箱状に形成されている。上部ケース2の上面部15の中央には、操作部41を外部に突出させる円形状の開口部16が形成されている。下部ケース3は、絶縁性の樹脂材料等で上面を開口した扁平箱状に形成されている。上部ケース2の上面部15と空洞部を介して対向配置される下部ケース3の底面部21の中央には、空洞部内に突出する円柱状の突出部22が設けられている。また、突出部22の裏面側には、後述する磁気センサ11が収容される凹部23が形成されている。
このように構成されたハウジング内の空洞部には、目隠し部材6、操作体7、複数(本実施の形態では4つ)の保持体8及び弾性部材としてのコイルばね9が収容される。目隠し部材6は、中央に開口部29を設けた環状シートであり、上部ケース2と操作体7との間に配置される。操作体7は、操作部41を目隠し部材6の開口部29及び上部ケース2の開口部16を介してハウジング外に突出させた状態で収納される。また、操作体7は、操作部41を有する操作本体部31の下側に、操作本体部31の回転を規制する規制部材32と、磁石33を保持した可動部34とを取り付けて構成されている。
複数の保持体8は、操作体7の可動部34及び下部ケース3の突出部22の周囲に配置される。この場合、可動部34及び突出部22は、その外形形状が略同一系の平面視円形状をなして円柱状(円筒状)に突出されており、非操作状態において外周面が連続するように面一となっている。複数の保持体8は、この外周面を四方から囲うようにして配置されている。所定の長さのコイルばね9の両端部を連結することにより形成した環状のコイルばね9は、複数の保持体8を可動部34及び突出部22の外周面に押し付けるように複数の保持体8に装着される。また、下部ケース3の下面には、取付部材4を介して磁気センサ11を有するフレキシブル基板12が取り付けられている。以下、空洞部に配置される各構成部材の構成について説明する。
操作本体部31は、絶縁性の樹脂材料等により形成され、円板状の操作部41と、ハウジング内の空洞部に配置される上面視略矩形板状の鍔状部42と、操作部41の中央部分と鍔状部42の中央部分とを連ねるくびれ部43とを有している。操作部41は、上部ケース2及び目隠し部材6の開口部16、29を介して外部側に挿通可能な寸法、すなわち、開口部16、29よりも小径に形成されている。鍔状部42の下面中央部分には、略円形の凹部44が形成されると共に、この略円形の凹部44を鍔状部42の一辺に沿う一方向に横切るように帯状の凹部45が形成されている。この略円形の凹部44と帯状の凹部45には、可動部34及び規制部材32が取り付けられる。より具体的には、帯状の凹部45に後述する規制部材32の長尺部48が配置された状態で、略円形の凹部44に可動部34の円弧状をなした周壁部が圧入されることで、操作本体31に可動部34が嵌合して取り付けられる。
操作本体部31のくびれ部43には、ハウジング内を遮蔽する目隠し部材6が取り付けられる。目隠し部材6は、例えば、ポリカーボネイト樹脂等で形成された環状シートである。目隠し部材6の開口部29は、操作部41よりも大径に形成されている。また、目隠し部材6の外形は、鍔状部42よりも大きく形成されており、操作体7のスライド移動時に、上部ケース2の上面部15と鍔状部42との間の隙間を埋めるように形成されている。この目隠し部材6と鍔状部42により、開口部16からハウジング内に異物が入るのが抑制されている。なお、操作体7の非操作状態においては、開口部16は鍔状部42によって覆われている。
規制部材32は、ハウジングに対する操作体7の回転を規制するものであり、例えば、ステンレス等の非磁性金属材料で形成されている。規制部材32は、長尺部48と、この長尺部48の長手方向の両端部から下方に折り曲げて形成された一対の規制片49とを有している。長尺部48は、鍔状部42に形成された帯状の凹部45よりも僅かに幅狭に形成され、凹部45に対してスライド可能に配置される。そして、規制部材32は、鍔状部42と可動部34との間に挟み込まれることで、操作本体部31に取り付けられる。この場合、長尺部48の長手方向の両端部は、鍔状部42から側方に突出され、一対の規制片49を鍔状部42の外側に位置されている。なお、規制部材32は、非磁性材料で形成されていれば良く、例えば、絶縁性の樹脂材料で形成されてもよい。
可動部34は、絶縁性の樹脂材料等により、内側に磁性部材としての磁石33を収容した有底円筒状に形成されている。可動部34の周壁部には、上端面から下方に切り欠かれた一対の切欠部51が形成されている。この切欠部51の幅寸法は、規制部材32の長尺部48の幅寸法よりも僅かに大きく形成され、規制部材32の長尺部48を挿通可能としている。切欠部51の深さ寸法は、長尺部48の板厚よりも僅かに大きなものとなっている。
磁石33は、円板状に形成されており、可動部34の内側に嵌合されている。このように、磁石33は、操作本体部31と別体に形成された可動部34内に収納され、可動部34を介して操作本体部31に取り付けられる。よって、操作体7に対する磁石33の取り付け作業を容易化することが可能となる。なお、磁石33は、磁性部材であれば、どのようなものであってもよい。
このように構成された操作体7は、上部ケース2の対向する一対の側壁部17に、一対の規制片49を沿わせるようにしてハウジング内に配置される。この場合、一対の規制片49の外面間隔は、一対の側壁部17の内壁面の対向間隔と略同一に形成されている。したがって、操作体7は、回転力が与えられた場合に、一対の規制片49が上部ケース2の側壁部17の内壁面に当接されて回転が規制される。
また、操作体7は、規制部材32により一方向(X軸方向)及びこれに直交する他方向(Y軸方向)にガイドされる(図6参照)。すなわち、操作体7は、一方向に延在する長尺部48と鍔状部42の下面に形成された帯状の凹部45とにより一方向にガイドされ、一対の規制片49の外面と上部ケース2の側壁部17の内壁面とにより他方向にガイドされる。このように、規制部材32は、操作体7の回転を規制しつつ、操作体7の平面方向のスライド移動を可能としている。
コイルばね9は、操作体7を初期位置に復帰させる弾性部材として機能するものであり、例えば、ステンレス等の非磁性金属材料で形成されている。コイルばね9は、操作体7の非操作状態において、複数の保持体8に僅かに押し広げられた状態で装着されている。したがって、コイルばね9は、操作体7の操作時に、内側への収縮力によって可動部34を初期位置に向けて付勢する。なお、操作体7の初期位置とは、可動部34及び突出部22の外周面が面一となる位置である。
複数の保持体8は、コイルばね9を保持するものであり、例えば、絶縁性の樹脂材料等で形成されている。各保持体8は、円弧状に延在しており、突出部22の周囲に配置されている。各保持体8の内周面は、突出部22及び可動部34の外周面と同一の曲率で、突出部22及び可動部34の外周面と面接触可能に形成されている。各保持体8の外周面は、凹部を構成するU字溝状の保持面53が形成されており、この保持面53に環状のコイルばね9の内周側が保持されている。ここで、各保持体8の保持面53は、図6(a)に示す操作体7の非操作状態(初期状態)における円環状をなしたコイルばね9の内周部に沿って円弧状に延びている。
また、各保持体8の下面には、下部ケース3に形成された案内孔24に挿入される突部54が形成されている。この案内孔24は、突出部22と下部ケース3の四隅とを結ぶ対角線上に配置され、各保持体8を直線的にスライド移動させる。このように、複数の保持体8が下部ケース3の対角線上を直線的に移動するため、コイルばね9がスライド移動する複数の保持体8間で円滑に押し広げられ、コイルばね9が各保持体8に良好に保持される。なお、案内孔24は、下部ケース3の底面部21に形成された穴部からなる規制部を構成している。本実施の形態においては、案内孔24は貫通孔で形成しているば、有底の穴部であってもよい。
このように構成された複数の保持体8は、コイルばね9の内周側を保持した状態で、突出部22及び可動部34の周囲に配置される。換言すれば、複数の保持体8は、突出部22および可動部34とコイルばね9との間に配設されたものとなっている。このとき、各保持体8の保持面53は、コイルばね9の内周側を覆っており、コイルばね9の上下方向のズレを規制している。一方、コイルばね9は、その収縮力により各保持体8を突出部22及び可動部34の外周面側に押し付けている。この構成により、コイルばね9の上下方向のズレが規制されると共に、各保持体8の保持面53とコイルばね9とが強く当接され、コイルばね9の各保持体8からの抜け外れが抑制される。
さらに、各保持体8は、突出部22に対して可動部34を初期位置に位置決めする位置決め部材として機能する。例えば、操作体7が一方向に操作された場合、コイルばね9の一方向側が一部の保持体8により押し広げられ、コイルばね9の他方向側が残りの保持体8により係止される。そして、操作体7の操作が解除されると、コイルばね9の収縮力(復帰力)により一部の保持体8を介して可動部34が突出部22に対して初期位置に復帰される。このとき、各保持体8の内周面は、可動部34を初期位置に位置決めする位置決め面として機能し、可動部34を突出部22上で互いに対向するように位置決めする。
ハウジングの下面には、取付部材4を介して磁気センサ11を有するフレキシブル基板12が配置される。フレキシブル基板12は、磁気センサ11及び図示しない検出回路が設けられた基板本体56と、基板本体56から側方に延出された複数のリード線が設けられた出力配線部57とを有している。基板本体56は、上面視矩形状に形成され、下部ケース3の背面に形成された矩形状の位置決め部25に位置決め状態で配置される。このとき、基板本体56に設けられた磁気センサ11が下部ケース3の凹部23内に配置され、出力配線部57がハウジングの側方に突出される。
磁気センサ11は、例えば、複数のGMR(Giant Magneto Resistive effect)素子でブリッジ回路を形成したGMRセンサであり、操作体7の可動部34内に設けられた磁石33と共に検出手段を構成するものである。ここで、GMR素子は、基本的な構成として、反強磁性層、ピン層、中間層及びフリー層をフレキシブル基板12上に積層して形成されている。
磁気センサ11は、可動部34内の磁石33からの磁束をGMR素子に作用させて、磁束の向きによって電気抵抗値を変化させる。そして、電気抵抗値の変化に応じた出力信号に基づいて操作体7のスライド位置が検出される。なお、この磁気センサ11が備えるGMR素子が巨大磁気抵抗効果を発揮するためには、例えば、反強磁性層がα−Fe2O3層、ピン層がNiFe層、中間層がCu層、フリー層がNiFe層から形成されることが好ましいが、これらのものに限定されるものではなく、磁気抵抗効果を発揮するものであれば、いずれのものであってもよい。また、磁気センサ11が備えるGMR素子は、磁気抵抗効果を発揮するものであれば、上記の積層構造のものに限定されるものではない。
取付部材4は、例えば、ステンレス等の非磁性金属材料の金属板を折り曲げて形成され、矩形状の平板部61と、平板部61の四隅に設けられた係合片62とを有している。各係合片62は、上部ケース2の四隅に形成された被係合部18に係合され、上部ケース2と平板部61との間に下部ケース3及びフレキシブル基板12を挟み込むように固定する。平板部61の中央部分には、フレキシブル基板12を下部ケース3に向けて押し付ける一対の押圧片63が形成されている。一対の押圧片63は、平板部61から僅かに上方に切り起こされた片持バネであり、フレキシブル基板12を背面側から上方に付勢する。この構成により、フレキシブル基板12(磁気センサ11)の上下方向における位置ズレが抑制される。
次に、図4を参照して、多方向入力装置の組み付け状態について説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る多方向入力装置の断面図である。
図4に示すように、下部ケース3の突出部22及び操作体7の可動部34は、コイルばね9の収縮力によって複数の保持体8を介して位置合わせされている。この場合、複数の保持体8及びコイルばね9は、鍔状部42と底面部21との間に配置され、上下方向の移動が規制されている。この構成により、コイルばね9の保持をより確実なものとすることが可能となっている。また、操作体7は、可動部34の下面34a及び突出部22の上面22a(突出端面)を面接触させて、平面方向に移動可能に構成されている。この可動部34の下面34a及び突出部22の上面22aのそれぞれには、合せ面から僅かに窪んだ凹部26、46が形成されている。凹部26、46は、可動部34と突出部22との摺接によって発生した摩耗粉を溜めることで、摩耗粉に起因した操作体7の不安定なスライド移動を防止する。
また、可動部34と突出部22との合せ面には、摺動性を向上させるためのグリス等の潤滑剤が塗布されている。これにより、可動部34と突出部22との摺接による摩耗粉の発生が抑制されている。突出部22の裏面側の凹部23には、可動部34内の磁石33の磁界を検出する磁気センサ11が配置されている。このように、磁気センサ11が収納される凹部23が、下部ケース3の下面側に形成されるため、摩耗粉や潤滑剤の侵入が防止され、磁気センサ11に摩耗粉や潤滑剤が付着されることがなく、磁気センサ11の検出精度が悪化することがない。
磁石33及び磁気センサ11は、可動部34の下面34aと突出部22の上面22aとの接触により、一定の間隔を空けて対向配置されている。また、上記したように、フレキシブル基板12が取付部材4の一対の押圧片63によって下部ケース3の下面に押し付けられ、磁気センサ11の上下方向の位置ズレが抑制されている。これらの構成により、可動部34内の磁石33と凹部23内の磁気センサ11との対向間隔が一定に維持され、磁気センサ11による操作体7のスライド移動の検出精度が向上されている。
このように組み付けられた多方向入力装置1の各構成部品は、磁石33を除いて非磁性材料でされているため、各構成部品が磁石33の磁界に影響を及ぼすことが防止される。これにより、磁気センサ11による操作体7のスライド移動の検出精度がさらに向上される。
次に、図5及び図6を参照して、多方向入力装置の動作について説明する。図5は、本発明の実施の形態に係る多方向入力装置を側方から見た場合の動作説明図である。図6は、本発明の実施の形態に係る多方向入力装置を上方から見た場合の動作説明図である。なお、図5は、図4とは直交する方向で切断した場合の断面図で示す動作説明図である。また、図6においては、説明の便宜上、上部ケースや目隠し部材を省略すると共に、可動部を含む操作体については破線で示している。また、図6においては、コイルばねを輪郭で示す等して全体的に簡略化した説明図としている。
側方から見た多方向入力装置1の動作について説明する。図5(a)に示すように、操作体7の非操作状態においては、操作体7がハウジングの略中央の初期位置に位置されている。この場合、下部ケース3の突出部22及び操作体7の可動部34は、コイルばね9の収縮力によって複数の保持体8を介して位置合わせされている。この非操作状態から操作体7が一方向側(図示左方向)に操作されると、コイルばね9の収縮力に抗して可動部34が一方向にスライド移動(平面移動)される。可動部34のスライド移動により、コイルばね9が他方向側(図示右方向)に位置する保持体8によって係止されると共に、一方向側に位置する保持体8のスライド移動によって押し広げられる。
図5(b)に示すように、操作体7がさらに一方向側に操作されると、操作体7のくびれ部43が上部ケース2の開口部16の開口縁部に当接される。この操作体7の最大操作時には、上部ケース2の開口部16と鍔状部42との隙間が、目隠し部材6によって遮蔽され、ハウジング内への異物の侵入が防止される。このため、鍔状部42だけで目隠しする構成と比較して、鍔状部42を小さく形成して操作体7の操作量を大きくすることができる。これにより、多方向入力装置1を小型化しても操作体7の十分な操作量を確保することが可能となる。
操作体7の操作が解除されると、コイルばね9の収縮力により一方向側の保持体8によって可動部34が他方向側に押し戻される。そして、一方向側の保持体8の内周面と他方向側の保持体8の内周面とによって、可動部34が突出部22に対して上下方向で互いに対向するように位置決めされ、操作体7が初期位置に復帰される。
次に、上方から見た多方向入力装置1の動作について説明する。図6(a)に示すように、操作体7の非操作状態においては、操作体7(可動部34)が下部ケース3の略中央の初期位置に位置されている。この場合、コイルばね9の収縮力によって、四方に位置する複数の保持体8a−8dの内周面が下部ケース3の突出部22及び操作体7の可動部34の外周面に押し付けられ、突出部22と可動部34とが位置合わせされている。また、複数の保持体8a−8dは、操作体7の鍔状部42に覆われており、上下方向の移動が規制されている。
図6(b)に示すように、操作体7が初期位置からX軸方向に操作される場合、操作体7は、規制部材32の長尺部48と鍔状部42に形成された凹部45とをガイドとしてX軸方向に移動される。操作体7が操作されると、コイルばね9の収縮力に抗して可動部34がX軸方向にスライド移動され、保持体8a、8bが可動部34によって下部ケース3の角部に向けて押し込まれる。コイルばね9は、保持体8c、8dによって略半部が係止されると共に、保持体8a、8bのスライド移動によって残りの略半部がX軸方向に押し広げられる。よって、コイルばね9は、上面視円形状からX軸方向が長径となる上面視略楕円形状(小判形状)に変形される。ここで、コイルばね9は、所定長さのコイルばね9の両端を連結して環状としたものであるため、コイルばね9がX軸方向に押し広げられた場合でも、コイルばね9全体が延びるものである。したがって、保持体8c、8dによって係止された部分のコイルばね9も延びている。これは、いずれの方向に操作体7を操作した場合でも同様である。
この場合、鍔状部42は、保持体8a−8dのそれぞれと少なくとも一部で重なっており、保持体8a‐8dの上下動を規制して、保持体8によるコイルばね9の保持をより確実なものとしている。そして、操作体7の操作が解除されると、コイルばね9の収縮力により可動部34が保持体8a、8bを介して押し戻される。これにより、操作体7は、図6(a)に示す初期位置に自動的に復帰される。
図6(c)に示すように、操作体7が初期位置からY軸方向に操作される場合、操作体7は、規制部材32の一対の規制片49と上部ケース2の側壁部17とをガイドとして規制部材32と一体的にY軸方向に移動される。操作体7が操作されると、コイルばね9の収縮力に抗して可動部34がY軸方向にスライド移動され、保持体8a、8dが可動部34によって下部ケース3の角部に向けて押し込まれる。コイルばね9は、保持体8b、8cによって略半部が係止されると共に、保持体8a、8dのスライド移動によって残りの略半部がY軸方向に押し広げられる。よって、コイルばね9は、上面視円形状からY軸方向が長径となる上面視略楕円形状(小判形状)に変形される。
この場合、鍔状部42は、保持体8a−8dのそれぞれと少なくとも一部で重なっており、保持体8a‐8dの上下動を規制して、保持体8によるコイルばね9の保持をより確実なものとしている。そして、操作体7の操作が解除されると、コイルばね9の収縮力により可動部34が保持体8a、8dを介して押し戻される。これにより、操作体7は、図6(a)に示す初期位置に自動的に復帰される。
図6(d)に示すように、操作体7が初期位置から下部ケース3の角部に向かう斜め方向に操作される場合、操作体7は、長尺部48と鍔状部42の凹部45とをX軸方向のガイドとし、一対の規制片49と上部ケース2の側壁部17とをY軸方向のガイドとして斜め方向に移動される。操作体7が操作されると、コイルばね9の収縮力に抗して可動部34が斜め方向にスライド移動され、可動部34によって保持体8b、8dが下部ケース3の角部に向けて僅かに押し退けられ、保持体8aが下部ケース3の角部に向けて押し込まれる。
コイルばね9は、保持体8cによって係止されると共に、保持体8a、8b、8dによって押し広げられる。このとき、保持体8b、8dのスライド量は僅かであり、保持体8aのスライド量は保持体8b、8dのスライド量よりも大きくなっている。よって、コイルばね9は、上面視円形状から斜め方向が長径となる上面視略楕円形状に変形される。
この場合、鍔状部42は、保持体8a−8dのそれぞれと少なくとも一部で重なっており、保持体8a‐8dの上下動を規制して、保持体8によるコイルばね9の保持をより確実なものとしている。そして、操作体7の操作が解除されると、コイルばね9の収縮力により可動部34が保持体8a、8b、8dを介して押し戻される。これにより、操作体7は、図6(a)に示す初期位置に自動的に復帰される。
このように、操作体7が操作されると、複数の保持体8a‐8dは案内孔24に案内されて下部ケース3の四隅に向けてスライド移動される。したがって、スライド移動する保持体8同士が接近して偏ってしまうことがなく、コイルばね9が各保持体8に良好に保持される。また、鍔状部42が、保持体8a‐8dのそれぞれと少なくとも一部で重なることで、保持体8a‐8dの上下方向の移動を規制することができるため、鍔状部42を小さく形成して操作体7の操作量を大きくとることができる。これにより、多方向入力装置1を小型化しても操作体7の十分な操作量を確保することが可能となる。
次に、図7を参照して、保持体とコイルばねとの保持構成について説明する。図7は、本発明の実施の形態に係る保持体とコイルばねとの保持構成の説明図である。
図7(a)に示すように、コイルばね9は、断面視において、保持体8の保持面53に内周側の略半部を覆うように保持されている。このとき、保持体8の保持面53には、コイルばね9の収縮力が作用する一方、コイルばね9には保持面53から矢印に示すように半径方向内側に向けて反力が作用している。すなわち、コイルばね9には、自身の収縮力の反力のうち上下方向の分力が、コイルばね9を保持面53に留める方向に作用する。したがって、コイルばね9が複数の保持体8に良好に保持されるため、多方向入力装置の落下等によってハウジングが変形しても、コイルばね9が複数の保持体8から外れて可動部34と下部ケース3との間に挟み込まれることがない。
また、図7(b)に示すように、コイルばね9が押し広げられた場合においては、コイルばね9の収縮力が大きくなることから、コイルばね9に作用する反力も大きくなる。したがって、コイルばね9には、反力の上下方向の分力が、保持面53に留める方向に強く作用する。このように、複数の保持体8がコイルばね9を保持した状態でスライド移動可能なため、操作体7の操作中にコイルばね9が保持面53から外れるのを防止することが可能となる。
また、保持体8の保持面53は、コイルばね9の最内周部に当接されるため、コイルばね9をより安定して保持することができる。さらに、コイルばね9は、保持体8の保持面53との当接位置が径方向(例えば、図7(a)の左右方向)に位置ズレしにくいものとなり、非操作時における最内周部の径が精度良く定められるため、操作体7の可動部34に作用するコイルばね9によるプリテンションのバラツキを小さくして、操作体7を動かし始めるのみ必要な作動力を安定させることができる。なお、最内周部とは、下部ケース3の底面部21に平行な水平面上において、環状のコイルばね9の最も内側に位置する部分をいう。
なお、保持体8の凹部を形成する保持面53は、上記したU字溝状に限定されるものではない。保持体8の保持面53は、コイルばね9の内周側を収容可能に形成されていればよく、図8(a)に示すように角溝状に形成されてもよい。この保持体8の凹部を角溝状に形成した場合でも、U字溝状に形成した場合と同様に、凹部の内側面で構成される保持面とコイルばね9の最内周部とが当接するため、コイルばね9のプリテンションのバラツキを小さくすることが可能である。また、保持体8の凹部は、図8(b)に示すようにV字溝状に形成されていてもよい。
また、保持体8は、上記したようにコイルばね9の内周側を保持するものに限定されるものではない。保持体8は、コイルばね9の少なくとも内周側を収容可能に形成されていればよく、コイルばね9の内周側及び外周側の一部を収容可能、あるいはコイルばね9を全周に亘って収容可能に形成されていてもよい。
以上のように、本実施の形態に係る多方向入力装置1によれば、コイルばね9の内周側が複数の保持体8の保持面53に保持されるため、多方向入力装置1の落下等によってハウジングが変形しても、コイルばね9が保持体8から外れて可動部34とハウジングとの間に挟み込まれるような不具合を防止すること可能となる。また、操作体7の操作に伴って、複数の保持体8がコイルばね9を保持した状態でスライド移動可能なため、操作体7の操作中にコイルばね9が保持体8から外れるのを防止することが可能となる。
なお、上記した実施の形態においては、4つの保持体がコイルばねを保持する構成としたが、この構成に限定されるものではない。コイルばねは、少なくとも2つ以上の保持体により保持される構成であればよい。例えば、図9(a)に示すように、コイルばね9は、2つの保持体8により保持されてもよい。この場合、X軸方向の操作時には、一方の保持体8がスライド移動してコイルばね9が押し広げられ、Y軸方向の操作時には、図9(b)に示すように、両方の保持体8が押し退けられてコイルばね9が押し広げられる。また、図9(c)に示すように3つの保持体8により保持されてもよい。このような構成であっても、上記した実施の形態と同様な効果を得ることが可能である。さらに、保持体の数は5つ以上であってもよい。
また、上記した実施の形態においては、可動部が平面視円形状の外周面を有する構成としたが、この構成に限定されるものではない。可動部の外周面は、複数の保持体を押し出し可能であればよい。例えば、図10(a)に示すように、可動部34の外周面は、平面視矩形状に形成されてもよいし、図10(b)に示すように、平面視三角形状に形成されてもよい。なお、可動部34の外形形状は、下部ケースの突出部22の外形形状と必ずしも同一形状である必要はなく、非操作状態(初期状態)において、複数の保持体8を位置決めでき、操作時に所定の保持体8をスライド移動できれば、その形状は限定されない。さらに、可動部34を複数の凸部によって形成することも可能である。
また、上記した実施の形態においては、規制部としての案内孔が、保持体の突部を一方向にガイドする構成としたが、この構成に限定されるものではない。規制部は、保持体のスライド移動を所定領域内に規制する構成であれば、どのような構成でもよい。例えば、図11に示すように、規制部は、保持体8の突部54を遊嵌する穴部67で構成され、保持体8を所定領域内で遊動可能とする構成としてもよい。このような構成であっても、スライド移動する保持体8同士の接近による偏りを防止して、コイルばね9を円滑に押し広げることが可能となる。また、上記実施の形態においては、ハウジングを構成する下部ケース3に規制部としての穴部(案内孔)を形成したものであるが、ハウジングとは別部材に規制部を設けて、この別部材をハウジングに一体化した構成でもよい。
また、上記した実施の形態においては、操作体は、操作本体部(鍔状部)と磁石を収納した可動部とを別部材で構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、図12に示すように、操作体7は、操作本体部31と可動部34とを一体に形成してもよい。この場合、鍔状部42の下方から円環状に可動部34が突出され、可動部34の内側に磁石33が配置される。また、鍔状部42と操作部41とが別体に形成されており、金属磁性材料で形成されたネジ部47で、可動部34の内側から固定される。そして、可動部34の内側に配置された磁石33がネジ部47を吸着することで、磁石33が可動部34で保持される。このように構成された操作体であっても、本実施の形態と同様な効果を得ることが可能となっている。
また、上記した実施の形態においては、複数の保持体に鍔状部が直接当接して、保持体の上下動を規制するように構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、規制部材の長尺部が配設される配設される鍔状部の凹部の隙間に、保持体が引っ掛かりにくくするために、環状をしたシート状のスペーサを鍔状部と長尺部の下側に設け、このスペーサを介して保持体の上下動が鍔状部に規制されるものでもよい。
また、上記した実施の形態では、操作体に鍔状部が設けられたものであるが、この構成に限定されるものではない。すなわち、鍔状部を有さない操作体を採用する場合には、空洞部を介して対向配置される上部ケースの上面部と下部ケースの底面部とによって、複数の保持体の上下方向の動きを規制するように構成する。なお、この場合には、鍔状部の下側に設けた規制部材も省略する。
また、上記した実施の形態においては、下部ケースの突出部が、磁気センサが配置される凹部をハウジングの空洞部から仕切るように形成されているが、この構成に限定されるものではない。突出部は、磁気センサが配置される凹部とハウジングの空洞部とを連通する連通孔が形成されていてもよい。また、下部ケースの突出部は、1つの突出部で構成したものに限られず、平面視で磁気センサを囲むように下部ケースに立設した複数の柱状をなした突出部であってもよい。
また、上記した実施の形態においては、検出手段は、磁石と磁気センサによって非接触式としたが、この構成に限定されるものではない。検出手段は、操作体のスライド移動を検出可能な構成であればよく、例えば、可変抵抗器等の接触式でもよい。
また、上記した実施の形態においては、可動部の下面と突出部の上面とが面接触される構成としたが、この構成に限定されるものではない。可動部の下面は、突出部の上面に接触して、可動部内の磁石と突出部の背面側の磁気センサとの対向間隔を一定とする構成でれば、どのような接触構成でもよい。
また、上記した実施の形態においては、磁気センサと磁石により検出手段を構成したがこの構成に限定されるものではない。検出手段は、操作体のスライド移動を検出する可能な構成であればよく、例えば、光学的に検出してもよい。
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。