JP3814062B2 - ポリエステルフィラメントの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業資材用、特に抄紙用カンバス糸、ベルト布、フィルター等に好適な優れた性能を有するポリエステルフィラメントの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフィラメント、特にポリエチレンテレフタレートのフィラメントは優れた諸物理的性質と化学的性質を有し、産業資材用フィラメントとして広く使用されている。
しかし、産業資材用フィラメントの中でも、抄紙用カンバス糸、ベルト布、フィルター等に使用されるフィラメントは、使用される環境が過酷であり、比較的短期間にフィラメントの劣化が起こり、使用できなくなることがある。例えば、ポリエステルフィラメントを用いた抄紙用カンバスは、抄紙プレスゾーン並びにその後の乾燥ゾーン等の工程において高温多湿状態にさらされる。そのため、水、熱、水蒸気の影響により、ポリエステルが熱及び加水分解劣化を起こし、短期間で使用できなくなる。
【0003】
水、水蒸気によるポリエステルの加水分解は、水分子のエステル結合部分への攻撃によってこの部分が分解し、カルボキシル基と水酸基が形成され、ポリマー鎖の分裂が起こり加水分解劣化が進行していく。さらに、これにより形成されたカルボキシル末端基は、ポリエステルの加水分解反応の触媒的な役割を担い、カルボキシル末端基量の増加に伴い、その加水分解速度は加速され、また、熱が加わることによっても加水分解反応は促進される。
【0004】
そこで、熱加水分解に対する対応策としてカルボキシル末端基量の少ないポリエステルとすることにより、フィラメントの耐湿熱性能を改良する方法が採用されている。例えば、特公平1−15604 号公報、特開平4−289221号公報には、カルボジイミド化合物を添加し、カルボキシル末端基の封鎖を行うことによって、耐湿熱性が改善されたポリエステルフィラメントを得る方法が開示されている。しかし、ポリエステルフィラメント中のカルボキシル末端基量を低減させるだけでは、耐湿熱性能を長期間にわたって持続させることは不可能であった。
【0005】
また、耐湿熱性に優れたフィラメントを得る方法として、特開平7−258524号公報には、ポリエステルにポリオレフィンとカルボジイミド化合物を添加する方法が開示されている。しかし、含有させるポリオレフィンが官能基を有していないため、ポリエステルとの相分離を起こしやすく、フィラメントがフィブリル化したり、糸質物性が低下したりするという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、糸質物性が良好で、優れた耐湿熱性を長期間にわたって保持することができ、産業資材用途に好適に使用できるポリエステルフィラメントの製造方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討の結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、次の1〜4の工程を順次行うことを特徴とするポリエステルフィラメントの製造方法を要旨とするものである。
1.固相重合反応を経て、相対粘度1.4 以上のポリエステル(A)を得る工程、
2.ポリオレフィン樹脂(B)10〜90重量%とメタクリル酸グリシジル成分を有するポリオレフィン樹脂(C)90〜10重量%とを溶融混練し、ポリオレフィン混合物(D)を得る工程、
3.ポリエステル(A)に予め溶融混練したポリオレフィン混合物(D)1.0 〜20重量%を混練し、さらに、カルボジイミド化合物(E)を全重量に対して0.1 〜5.0 重量%添加した後溶融紡糸し、カルボキシル末端基量が10eq/t以下のフィラメントを得る工程、
4.フィラメントを延伸する工程。
【0008】
なお、本発明における相対粘度、カルボキシル末端基量及びカルボジイミド化合物含有量は、次の方法で測定して得られる値である。
〔相対粘度〕
フェノールと四塩化エタンとの等重量混合物を溶媒とし、濃度0.5g/dl、温度20℃の条件でウベローデ型粘度計を用いて測定する。
〔カルボキシル末端基量〕
ポリエステルをベンジルアルコールに溶解し、0.1 規定の水酸化カリウムメタノール溶液で滴定して求める。
〔カルボジイミド化合物含有量〕
フィラメントをヘキサフロロイソプロパノールとトリクロロメタンとの等容量混合溶媒に溶解し、トリクロロメタンで希釈した後、アセトニトリルを添加してポリマー分を沈殿させ、濾過した溶液について液体クロマトグラフ法で定量して求める。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明におけるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好適であるが、これを主体とし、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を少量共重合したものを用いることもできる。
【0010】
まず、本発明においては、1.の工程として、固相重合反応を経て、相対粘度1.4 以上のポリエステル(A)を得る。
具体的には、通常の溶融重合法によって相対粘度が1.2 〜1.4 のプレポリマーを得て、このプレポリマーのペレットを固相状態で減圧下又は不活性ガス流通下に加熱して固相重合反応を行い、相対粘度1.4 以上のポリエステルとする。プレポリマーの相対粘度が適当でないと、溶融重合および固相重合の時間が著しく長くなったり、固相重合後のカルボキシル末端基量を低くすることができなかったりするので、プレポリマーの相対粘度を上記の範囲とすることが望ましい。
【0011】
固相重合後のポリエステルは、相対粘度が1.4 以上のものであることが必要である。この条件が満たされないと製糸性が悪化したり、溶融紡糸して得られるフィラメントの相対粘度も低くなり、強伸度等の糸質物性に劣ったものとなる。
【0012】
なお、固相重合により相対粘度がプレポリマーよりも0.10〜0.40程度高くなるように固相重合の条件を選定することが好ましい。この固相重合によりポリエステルのカルボキシル末端基量が減少するとともに、オリゴマー等の不純物が除去される。
【0013】
また、固相重合後のポリエステルは、カルボキシル末端基量が20.0eq/t以下であることが好ましい。この条件が満たされないと、溶融紡糸して得られるフィラメントのカルボキシル末端基量を10.0eq/t以下にすることが困難になり、仮に、カルボキシル末端基量を低減させる末端封鎖剤としてのカルボジイミド化合物を多量に添加することにより、カルボキシル末端基量を低減させることができるとしても、カルボジイミド化合物を多量に添加すると製糸性の悪化等の問題を引き起こす。
【0014】
次に、2.の工程として、ポリオレフィン樹脂(B)10〜90重量%と、メタクリル酸グリシジル成分(以下、GMAとする)を有するポリオレフィン樹脂(C)90〜10重量%とを溶融混練し、ポリオレフィン混合物(D)を得る。
GMA成分を有するポリオレフィン樹脂(C)としては、ポリオレフィン主鎖中にGMA成分を共重合成分として1〜35重量%含有するのものが好ましい。また、その他の成分として、酢酸ビニル成分、スチレン成分、アクリル酸エステル成分等が共重合されていてもよい。ポリオレフィン成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ-4- メチルペンテン等が挙げられるが工業的に生産が容易であるポリエチレンが最も好ましい。
【0015】
このGMA成分を有するポリオレフィン樹脂(C)を用いる理由は、ポリエステル主鎖中にポリオレフィン成分を含有させることでエステル結合部分の加水分解反応を抑制し、耐湿熱性能を向上させることができるが、ポリエステルとオレフィン系ポリマーの相溶性は一般的に悪いため相分離を起こし、糸質性能の低下を引き起こす。そこで、ポリエステル末端基と反応するGMA成分を導入することで、得られるフィラメント中でのポリエステルとポリオレフィンの相分離を低減させ、糸質物性を向上させることが可能となる。
【0016】
GMA成分の含有量(共重合比)が1重量%未満であると、ポリエステルとの反応が少ないため相分離が起こり目的の耐湿熱性能が得られないとともに、糸質物性が低いものとなる。一方、GMA成分の含有量(共重合比)が35重量%を超えると、ポリエステルとの反応が進行しすぎる結果、溶融粘度上昇が顕著となり、製糸性が悪化するとともにポリオレフィン成分の効果が発現され難くなる。
【0017】
また、ポリオレフィン樹脂(B)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ-4- メチルペンテン等が挙げられるが、以下に述べるように、ポリオレフィン樹脂(C)との相溶性がよいものがよいため、GMA成分を含有するポリオレフィン樹脂(C)のポリオレフィン成分と同じものとすることが好ましく、ポリオレフィン樹脂(C)で最も好ましく用いられるポリエチレンを採用することが好ましい。
【0018】
このように、ポリオレフィン樹脂(B)と、GMAを有するポリオレフィン樹脂(C)とを溶融混練することによって、本発明で目的とする優れた耐湿熱性を有するフィラメントを得ることができる。
すなわち、ポリオレフィン樹脂(B)をGMA成分を含有するポリオレフィン樹脂(C)に添加し、溶融混練することで、ポリオレフィン樹脂(C)の相溶性を良好にすることができ、かつ、GMA成分を含有するポリオレフィン樹脂(C)をミクロ分散させるとともに、ドメインとなるポリオレフィン樹脂の表層にGMA成分を局在させ、ポリエステルとの混和性をより良好にすることができる。
【0019】
また、ポリオレフィン樹脂(B)の混合量は10〜90重量%、GMA成分を含有するポリオレフィン樹脂(C)の混合量は90〜10重量%であることが必要である。ポリオレフィン樹脂(B)の混合量が10重量%未満であると、ポリオレフィン樹脂(B)の上記の効果を発揮することが困難となり、90重量%を超えると、GMA成分が少なくなりすぎ、GMA成分の効果が発揮されず、ポリエステルとポリオレフィンとの相分離を低減させることができなくなる。
【0020】
次に、3.の工程として、ポリエステル(A)に2.の工程で溶融混練したポリオレフィン混合物(D)1.0 〜20重量%を混練し、さらに、カルボジイミド化合物(E)を全重量に対して0.1 〜5.0 重量%添加した後溶融紡糸し、カルボキシル末端基量が10eq/t以下のフィラメントを得る。
【0021】
ポリオレフィン混合物(D)は、ポリエステル(A)に1.0 〜20重量%添加し、混練することが必要である。ポリオレフィン混合物(D)の添加量が1.0 重量%未満であるとポリオレフィン成分やGMA成分の効果が発現され難く、20重量%を超えると、操業性が悪化するとともに得られるフィラメントの糸質物性が劣ったものとなる。
【0022】
そして、ポリエステル(A)とポリオレフィン混合物(D)を混練したものにカルボジイミド化合物(以下、CDIとする)を添加する。カルボジイミド化合物の具体例としては、N,N' −ビス(2,6- ジメチルフェニル) カルボジイミド、N,N' −ビス(2,6- ジエチルフェニル) カルボジイミド、N,N' −ビス(2,6- ジイソプロピルフェニル) カルボジイミド、N,N' −ビス(2- イソプロピルフェニル) カルボジイミド等が挙げられるが、中でも、耐熱性に優れ、工業レベルでの使用が可能であるためN,N' −ビス(2,6- ジイソプロピルフェニル) カルボジイミドが最も好ましい。
【0023】
CDIの添加量は、0.1 〜5.0 重量%とすることが必要である。添加量が0.1 重量%未満であると、カルボキシル末端基の封鎖が不十分となり、フィラメントの耐湿熱性能が十分なものとならず、5.0 重量%を超えると製糸性が悪化する。
【0024】
CDIを添加することによって、溶融紡糸して得られるフィラメントのカルボキシル末端基量が10eq/t以下となるようにすることが必要であり、さらには、5eq/t以下とすることが好ましい。得られるフィラメントのカルボキシル末端基量が10eq/tを超えると、末端基の封鎖が不十分となり、優れた耐湿熱性能が得られない。
【0025】
さらに、CDIを添加する際には、活性状態のCDIが20〜20000ppm程度残存する量とすることが好ましい。活性状態とは、カルボキシル基や水分子と反応可能な状態のことをいい、この含有量が20ppm 未満であるとCDIの効果が発現され難く、20000ppmを超えるようにすることは、多量のCDIの添加が必要となり、好ましくない。
【0026】
そして、3.の工程においては、ポリエステル(A)にポリオレフィン混合物(D)を混練し、CDIを添加した後、溶融紡糸を行うが、このとき、エクストルーダー型紡糸装置を用い、スクリュウ部せん断速度20s-1以上で混練し、ノズル孔の長さ/ノズル孔の直径(L/D)が1.5 以上の条件を満たすノズル細孔を通過させて溶融紡糸を行うことが好ましい。
【0027】
本発明におけるスクリュウ部せん断速度とは、次式で算出するものである。
スクリュウ部せん断速度 r=(πSN)/H
S:スクリュウ径 (cm) N:スクリュウ回転数 (回転数/sec) H:スクリュウ溝深さ (cm)
【0028】
スクリュウ部せん断速度が20s-1未満であると、ポリオレフィン成分とポリエステル成分の混練が不十分となりやすく、溶融混練斑が生じたり、GMAとの反応が不足し、目的とするフィラメントを得ることが困難となる場合がある。
また、相分離を抑制する目的で紡糸ライン中、あるいはノズルパック中にスタティックミキサーを含有させることが好ましい。
【0029】
さらに、ポリマーを紡出させる紡糸ノズル孔は、L/Dが1.5 以上であることが好ましい。この条件を満たさないと、工業的な操業性に問題が生じやすく、得られるフィラメント径の変動等が生じ、品質が悪化したり、糸質物性が低下しやすくなる。
【0030】
そして、溶融紡糸は常法によって行うことができるが、紡糸温度は350 ℃以下、好ましくは310 ℃以下とすることが望ましい。紡糸温度が高すぎるとポリエステル及び添加物が熱分解を起こし、円滑な紡糸が困難になるとともに得られるフィラメントの物性が劣ったものとなる。また、ポリエステルの熱分解反応に伴ってカルボキシル末端基が生成し、溶融紡糸時に末端基封鎖剤が多量に消費されてしまい、所望の性能が発揮されない。
また、溶融紡糸に際しては、得られるフィラメントの相対粘度が1.40未満とならないように、紡糸温度や滞留時間を調整することが好ましい。
【0031】
このように紡出されたフィラメントは、0 〜100 ℃、好ましくは20〜90℃の液体、または、0 〜100 ℃、好ましくは10〜40℃の空気中で冷却する。冷却温度をあまり低くすると温度管理及び作業性等に困難をきたし、高すぎると冷却不足となり最終的に得られるフィラメントの糸質性能が劣ったものとなりやすい。
【0032】
次いで、4.の工程として、冷却固化したフィラメントを一旦巻き取った後又は巻き取ることなく延伸する。
延伸は一段又は二段以上の多段で行うことができるが、多段で行うことが好ましい。まず、延伸点の移動を起こさない65〜95℃の温度の液体中又は70〜200 ℃の気体中で、3.0 〜6.5 倍の第一段延伸を行い、続いて第一段延伸よりも高温の130 〜300 ℃の液体又は気体中で全延伸倍率が5.0 〜8.0 倍となるように第二段目以降の延伸を行うことが好ましい。
【0033】
この際、延伸温度が上記の範囲より低いと加熱不足となり、延伸斑及び糸切れが発生し、一方、延伸温度が高すぎるとフィラメントの融解及び熱劣化が起こり、好ましくない。全延伸倍率が5.0 倍未満であると得られるフィラメントの糸質特性、特に直線強度が低くなりやすい。一方、全延伸倍率を8.0 倍より大きくすると繊維内での塑性変形に分子配向が対応できなくなるため、繊維中にミクロボイドが発生し、満足な性能を示すフィラメントが得られないことがある。
【0034】
また、延伸後、150 〜500 ℃の気体中で1.0 〜15.0%の弛緩熱処理を行うのが好ましい。熱処理温度が150 ℃より低いとフィラメントに対する熱処理効果が不十分となりやすく、熱処理時間にも関係するが500 ℃より高くすると繊維表面でポリエステルの熱分解反応が起こり、目標とする性能を示すフィラメントが得られにくい。また、弛緩率を1.0 %未満にすると得られるフィラメントは、熱収縮率の高いものとなり、場合によっては実用に適さなくなり、15.0%を超える弛緩熱処理を行うと、弛緩熱処理段階で糸のたるみが発生し、操業性が悪化するとともに、目標の糸質性能が得られにくくなる。
【0035】
なお、本発明の製造方法によれば、耐湿熱性に優れたポリエステルフィラメントとして、モノフィラメント及びマルチフィラメントを製造することが可能である。
【0036】
【作用】
本発明においては、特定以上の相対粘度を有するポリエステルを用い、これに予め溶融混練したポリオレフィン樹脂(B)とGMA成分を含有するポリオレフィン樹脂(C)の混合物を混練させるので、GMA成分を含有するポリオレフィン樹脂(C)の相溶性を良好にすることができ、ポリオレフィン成分がポリエステル末端基と化学的に結合しやすく、かつ、ミクロ分散するため、相分離が十分に抑制され、フィラメントを安定して生産することが可能となる。さらにCDIを添加することで、カルボキシル末端基の封鎖が良好に行われ、GMA成分とポリオレフィン成分とCDIとの相乗効果で、長期間にわたり優れた耐湿熱性能と糸質物性を示すフィラメントを得ることが可能となる。
【0037】
【実施例】
次に、実施例によって本発明を具体的に説明する。
実施例中における各種の測定、評価は次のとおりに行った。なお、相対粘度、カルボキシル末端基量、カルボジイミド化合物含有量は前記の方法で行った。
〔強伸度〕
JIS L 1013に準じて測定した。
〔耐湿熱性〕
フィラメントを120 ℃の飽和水蒸気で10日間処理した後、未処理フィラメントに対する強力保持率で評価した。
〔操業性(製糸性)〕
8時間連続して操業を行い、この間に糸切れ、ノズルパック内圧力の上昇等の問題が発生しなかった場合を○、発生した場合を×とした。
〔品質〕
得られたフィラメントを目視及び触感で判断し、糸斑や表面荒れ等の欠点が生じていないものを○、いずれかの欠点が生じているものを×とした。
【0038】
実施例1
PETオリゴマーとエチレングリコールを出発物質とする重縮合反応を行い、相対粘度1.34、カルボキシル末端基量30.9eq/tのプレポリマーペレットを得た後、固相重合反応を行い、相対粘度1.55、カルボキシル末端基量15.8eq/tの固相重合ペレット〔ポリエステル(A)〕を得た。
ポリオレフィン樹脂(B)としてポリエチレンを用い、GMA成分を有するポリオレフィン樹脂(C)として、エチレンにGMAを8重量%共重合した共重合体〔ELF ATOCHEM 社製「LOTADER AX- 8840」〕を用い、これらをポリエチレン:エチレン−GMA共重合体を重量比60:40の割合で二軸混練機を使用し、溶融混練し、ポリエチレン混合物〔ポリオレフィン混合物(D)〕を得た。
エクストルーダー型紡糸装置を用い、固相重合ペレットにポリエチレン混合物5.0 重量%を混練し、さらに、N,N' −ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル) カルボジイミド1.8 重量%を添加して、スクリュウ部せん断速度23s-1で混練し、溶融紡糸した。溶融紡糸は、紡糸温度295 ℃、ノズル孔の長さ 4.0mm、ノズル孔の直径 2.0mm(L/D=2)の紡糸孔を有する紡糸口金を使用して行った。
紡出糸条を70℃の水浴中で冷却し、未延伸糸を得た。この未延伸糸を90℃の水浴中で延伸倍率3.3 倍で第一段階目の延伸を行い、次いで250 ℃の熱風雰囲気下で延伸倍率1.7 倍の第二段階目の延伸を行い、全延伸倍率を5.7 倍とした。引き続いて300 ℃の熱風雰囲気下で弛緩率12%で弛緩熱処理を行い、ポリエステルモノフィラメントを得た。
得られたモノフィラメントの糸質性能や評価等を表1に示す。
【0039】
実施例2〜6、比較例1〜6
ポリエチレン〔ポリオレフィン樹脂(B)〕とエチレン−GMA共重合体〔ポリオレフィン樹脂(C)〕とを溶融混練する比率、これらからなるポリエチレン混合物とN,N' −ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル) カルボジイミドをポリエステル(A)に添加する量を表1に示すように変更し、溶融紡糸時のエクストルーダー型紡糸装置のスクリュウ部せん断速度、ノズル孔の長さ/ノズル孔の直径(L/D)も表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして行った。
得られたモノフィラメントの糸質性能や評価等を表1に示す。
【0040】
実施例7
ポリエステル(A)として、固相重合によって得た相対粘度1.41、カルボキシル末端基量17.5eq/tの固相重合ペレットを用い、N,N' −ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル) カルボジイミドの添加量を1.0 重量%とし、ノズル孔の長さ0.8 mm、ノズル孔の直径 0.4mm(L/D=2)の紡糸孔を48個有する紡糸口金を使用した以外は、実施例1と同様にして溶融紡糸を行った。
そして、紡出糸条を20℃の空気で冷却し、未延伸糸を得た。この未延伸糸を90℃に加熱し、第一ローラと230 ℃に加熱した第二ローラとの間で延伸倍率6.35倍で延伸を行い、次いで170 ℃に加熱して弛緩率6%で弛緩熱処理を行い、ポリエステルマルチフィラメントを得た。
得られたマルチフィラメントの糸質性能や評価等を表1に示す。
【0041】
比較例7
ポリエステル(A)として、固相重合によって得た相対粘度1.35、カルボキシル末端基量23.4eq/tの固相重合ペレットを用いた以外は、実施例7と同様にして行った。
得られたマルチフィラメントの糸質性能や評価等を表1に示す。
【0042】
【表1】
Figure 0003814062
【0043】
表1より明らかなように、実施例1〜7で得られたフィラメントは、耐湿熱性能、強伸度等の糸質物性に優れ、繊維表面にざらつきや糸斑もない品位の高いものであり、操業性にも優れていた。
一方、比較例1は、ポリエチレン混合物中のエチレン−GMA共重合体の割合が少なすぎたため、ポリエステルとの反応が少なく、相分離が起こり、得られたフィラメントは耐湿熱性能に劣ったものであった。比較例2は、ポリエチレン混合物中のポリエチレンの割合が少なすぎたため、エチレン−GMA共重合体の相溶性を良好にし、ミクロ分散させることができず、溶融混練斑が生じ、操業性が悪く、得られたフィラメントは糸質物性の低いフィラメントとなった。比較例3は、CDI化合物の添加量が少なすぎたため、得られたフィラメントはカルボキシル末端基量が多く、また、活性状態のCDIの量が少なく、耐湿熱性能に劣ったものであった。比較例4は、CDI化合物の添加量が多すぎたため、操業性が悪化し、フィラメントを得ることができなかった。比較例5は、ポリエチレン混合物の添加量が少なすぎたため、ポリオレフィン成分やGMA成分の効果が発現されず、相分離が起こり、得られたフィラメントは耐湿熱性能に劣るものであった。比較例6は、ポリエチレン混合物の添加量が多すぎたため、比較例7は、ポリエステル(A)の相対粘度が低すぎたため、ともに操業性が悪化し、フィラメントを得ることができなかった。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、産業資材用フィラメント、特に工業用織物である抄紙用カンバス糸、ベルト布、フィルター等として好適な、優れた耐湿熱性能を長期間にわたって保持することができ、かつ糸質物性が良好なポリエステルフィラメントを操業性よく得ることが可能となる。

Claims (5)

  1. 次の1〜4の工程を順次行うことを特徴とするポリエステルフィラメントの製造方法。
    1.固相重合反応を経て、相対粘度1.4 以上のポリエステル(A)を得る工程、
    2.ポリオレフィン樹脂(B)10〜90重量%とメタクリル酸グリシジル成分を有するポリオレフィン樹脂(C)90〜10重量%とを溶融混練し、ポリオレフィン混合物(D)を得る工程、
    3.ポリエステル(A)に予め溶融混練したポリオレフィン混合物(D)1.0 〜20重量%を混練し、さらに、カルボジイミド化合物(E)を全重量に対して0.1 〜5.0 重量%添加した後溶融紡糸し、カルボキシル末端基量が10eq/t以下のフィラメントを得る工程、
    4.フィラメントを延伸する工程。
  2. ポリオレフィン樹脂(B)がポリエチレンである請求項1記載のポリエステルフィラメントの製造方法。
  3. メタクリル酸グリシジル成分を有するポリオレフィン樹脂(C)のポリオレフィン成分がポリエチレン成分である請求項1又は2記載のポリエステルフィラメントの製造方法。
  4. カルボジイミド化合物(E)がN,N' −ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル) カルボジイミドである請求項1、2又は3に記載のポリエステルフィラメントの製造方法。
  5. 3.の工程が、エクストルーダー型紡糸装置を用い、ポリエステル(A)に予め溶融混練したポリオレフィン混合物(D)1.0 〜20重量%を混練し、さらに、カルボジイミド化合物(E)を全重量に対して0.1 〜5.0 重量%添加した後、スクリュウ部せん断速度20s-1以上で混練し、ノズル孔の長さ/ノズル孔の直径(L/D)が1.5 以上の条件を満たすノズル細孔を通過させて溶融紡糸し、カルボキシル末端基量が10eq/t以下のフィラメントを得る工程である請求項1、2、3又は4に記載のポリエステルフィラメントの製造方法。
JP28338697A 1997-10-16 1997-10-16 ポリエステルフィラメントの製造方法 Expired - Fee Related JP3814062B2 (ja)

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