【発明の詳細な説明】
弾性繊維
本発明は、コポリエステルエーテルまたはコポリエステルエステルを含む弾性
繊維に関する。
コポリエーテルエステルおよびコポリエステルエステルは、以降、一緒にして
コポリエステルと言う。
かかるコポリエステル繊維は、1995年9月20〜22日の第34回国際化学繊維会議
Dornbirnの際にViethが発表した論文‘Neues aus Forschutg und Entwicklung’
の報告から公知である。
この公知繊維の欠点は、繊維を伸長した後に生じる高い永久伸びに示される低
い弾性回復である。上記の発表は、繊維をその最初の長さの100%伸長した後
のこの伸長からの回復が90%以下であることを示している。すなわち、繊維の
長さは、その最初の長さの少なくとも10%が永久に増加している。このことは
、その公知繊維の糸または織物に弾性を付与する成分としての用途をかなり制限
するものである。この制限は、かかる発表でも認められる。またその発表は、永
久伸びは後延伸によって確かに減少するが、破断時の伸びはかなりの劣化を示す
ことを示している。
今回見出されたのは、コポリエステルエーテルまたはコポリエステルエステル
および化学的に架橋したゴムの混合物を含む弾性繊維である。
驚いたことに、かかる繊維は、繊維を100%伸長した後の永久伸びが高々9
%であり、破断時の伸びは少なくとも450%である。事実、繊維は、繊維を1
00%伸長した後の永久伸びが高々6%であり、破断時の伸びは少なくとも50
0%であり、600%ですらあることを示すことが分かった。
本発明に係る繊維は、後延伸することにより、繊維を100%伸長した後の永
久伸びがいっそう低くなることが見出された。従って、本発明は、繊維を100
%伸長した後の永久伸びが高々5%であり、さらには3%であり、2%ですらあ
る、記載した組成物の繊維にも関する。
すなわち、本発明に係る繊維は、特に高い弾性回復度と共に高い破断時の伸び
を有することが見出された。
弾性繊維の多くの用途には、最初の長さの100%よりかなり高い伸長を伴う
。このようなより高い伸長であっても、本発明に係る繊維は、優れた弾性回復を
示すことが見出された。最初の長さをたとえ200%伸長しても、本発明に係る
繊維は、永久伸びが伸長前の繊維の長さの高々15%であり、多くの場合は高々
10%であり、5%または2%ですらある。
伸長後の永久伸びは、以降、「残留伸び」と言うが、その測定は、室温で、引
張試験機のあご(ジョー)
に所与の長さの繊維を挟み、そのあごを、所望の伸長に達するまで200mm/分
の速度で引き離すことにより行う。この目的のために、繊維に50mmの間隔(l0
とする)で印を付ける。その伸長状態で10秒間保持したら、繊維に作用する
引張力を取り除き、繊維をあごから取り出す。繊維を室温で1時間緩和させた後
、残留伸び(%)を、伸長後に緩和させた繊維上の印の間の距離(lとする)と
これらの印の間の最初の距離10との差を最初の距離10で割り、その商に100
を掛けることにより求める。
コポリエーテルエステルおよびコポリエステルエステルは、硬質で結晶性の比
較的融点の高いポリエステルセグメントおよび軟質で柔軟性のある比較的融点の
低いポリエーテルまたはポリエステルセグメントから構成されるセグメントブロ
ックコポリマーである。本発明に係る繊維に適する硬質ポリエステルセグメント
は、例えば、ポリアルキレンテレフタレート、例えば、ポリ(ブチレン−ナフタ
レンジカルボン酸)、ポリ(シクロヘキサンジカルボン酸−シクロヘキサンメタ
ノール)および好ましくはポリブチレンテレフタレートおよびポリトリメチレン
テレフタレート−2,6−ナフタレートである。要件に適合する他の種類の硬質
ポリエステルセグメントも同様にブロックコポリマーで使用でき、また、複数の
種類を同時に使用することもできる。硬質結晶性セ
グメントに適するポリエステル単位は、例えば、酸およびグリコールから作られ
る。適する酸としては、例えば、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカル
ボン酸が挙げられる。テレフタル酸および/または2,6−ナフタレンジカルボ
ン酸のほかに、少量の異なるジカルボン酸を添加することもでき、例えば、イソ
フタル酸、または脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、シクロヘキサン−
1,4−ジカルボン酸)または二量体酸が挙げられる。ポリエステル単位の選択
されるグリコール成分は、例えば、2〜12個の炭素原子を有するグリコールで
あり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレング
リコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオールまたはデカンジオールが
挙げられる。
適する軟質ポリエステルセグメントは、例えば、脂肪族ポリエステルであり、
例えば、ポリブチレンアジペートおよび好ましくはポリテトラメチルアジペート
およびポリカプロラクトンが挙げられる。要件に適合する他の種類の軟質ポリエ
ステルセグメントも同様にブロックコポリマーで使用でき、また、複数の種類を
同時に使用することもできる。適するポリエーテルセグメントは、例えば、ポリ
アルキレンオキシドであり、例えば、ポリテトラメチレンオキシド、ポリプロピ
レンオキシド、ポリエチレンオキ
シドが挙げられる。要件に適合する他の種類のポリエーテルセグメントも同様に
ブロックコポリマーで使用でき、また、複数の種類をコポリエステルで同時に使
用することもできる。非常に適するのは、ポリエステルセグメントがポリアルキ
レンテレフタレート、好ましくはポリブチレンテレフタレートであり、ポリエー
テルセグメントがポリアルキレンオキシド、好ましくはポリテトラメチレンオキ
シドであるコポリエーテルエステルである。
本発明に係る繊維に適するコポリエーテルエステルは、どんな場合も、処理温
度、特に融点が、認めうる熱分解がポリマー中で生じる温度よりも下である。
コポリエステルの低融点部分の融点の上限に関しては特に制限はない。通常は
130℃以下、好ましくは100℃以下である。低融点ポリマーセグメントの重
量平均分子量は、200〜10000g/モル、好ましくは400〜6000g/モルである。
コポリエステルの高融点結晶性セグメントと低融点柔軟性セグメントとの重量
%比は、95:5〜5:95、好ましくは70:30から30:70である。
化学的に架橋したゴムとは、化学反応によって不溶かつ非溶融性のポリマーに
され、その中の分子鎖が相互連結して三次元の網目構造を形成したゴムを意味す
る。かかる反応の例は、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering第
2版,John Wiley and Sons,
Volume 4,第350頁以下および第666頁以下に記載されている。
本発明の繊維に適するゴムとしては、アクリルゴム、ブチルゴム、ハロゲン化
ゴム、例えば臭素化および塩素化イソブチレン−イソプレン、(スチレン−)ブ
タジエンゴム、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン、ニトリルゴム、天然ゴ
ム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリスルフィドゴム、フルオロカーボンゴ
ム、エチレン−プロピレン−(ジエン−)ゴム(一般に、EP(D)Mゴムと言
う)、ポリイソプレン、エピクロロヒドリン、塩素化ポリエチレン、クロロプレ
ン、クロロスルホン化ポリエチレンが挙げられる。好ましくは、繊維が、経済的
に魅力的であり、通常使用されるアクリルゴム、(スチレン−)ブタジエンゴム
、ブチルゴム、塩素化ポリエチレン、クロロプレン、クロロスルホン化ポリエチ
レン、エピクロロヒドリン、エチレン−プロピレン−(ジエン−)ゴム、ニトリ
ルゴム、天然ゴム、ポリイソプレンまたはシリコーンゴムを含む。EP(D)M
ゴムが非常に適する。繊維はまた、種々のゴムの混合物を含んでいてもよく、そ
のうちの少なくとも一つは化学的に架橋されている。
繊維中のゴムは、公知の任意の方法によって架橋することができ、各々のゴム
に最も適切な方法が選択される。架橋は、通常、架橋剤の影響下で行われ、
そのよく知られた例は、硫黄、過酸化物、金属酸化物、(有機)シラン化合物、
エポキシ樹脂、キノンジオキシム、フェノール樹脂、アルキルフェノールホルム
アルデヒド樹脂、ジウレタン、ビスマレイミドおよびアミンである。ハロゲン化
ブチルゴムは、例えば、酸化亜鉛で架橋することができるが、樹脂、例えば(臭
素化)フェノール樹脂およびウレタン樹脂を使用して架橋することもできる。こ
れらの樹脂も、例えばEPDMゴムに適切な架橋剤である。有機過酸化物および
硫黄も架橋剤として公知であり、適切である。架橋は、所望により、促進剤およ
び/または活性剤の存在下で行ってもよい。、混合物は、熱可塑性加硫ゴムであ
るのが好ましい。熱可塑性加硫ゴムは自体公知であり、通常はTPVと略される
が、これは、コポリエステルの存在下でゴムを静的または動的に加硫または架橋
することにより得られる。動的加硫とは、架橋されていないゴムおよび熱可塑性
ポリマー、本発明の場合は熱可塑性エラストマーを含む組成物において、ゴムを
高せん断下で架橋する方法を意味する。混合物は、好ましくは、動的加硫に付し
ておく。というのは、そのような混合物では、コポリエステル中のゴムの分布が
非常に均一であり、繊維が最良の特性を有するからである。動的加硫は、公知の
混合装置、例えばロールミル、バンバリーミキサー、連続ミキサー、混練機およ
び
混合押出機で行うことができ、そのうち、二軸スクリュー押出機が好ましい。
公知の動的加硫法の概要は、1992年11月4日に行われた米国化学学会ゴム分科
会(米国テネシー州ナッシュビル)の論文No.41に示されている。
架橋剤の選択は、第一に、ゴムを架橋するためのその安定性によって決定する
。さらに、架橋剤は、架橋剤がコポリエステルに望ましくない影響を何も及ぼさ
ないように選択すべきである。当技術分野で周知の望ましくない影響は、例えば
、コポリエステルの分解、変色または架橋である。関与する作業の現場でこのこ
とがまだ分かってない場合、当業者であれば、意図する架橋剤および意図するコ
ポリエステルが互いに相溶性であるかどうかの簡単な実験によって確認すること
かできる。
ゴムは、通常の添加物を含んでいてもよい。その例としては、硬化剤、促進剤
、遅延剤、活性剤、充填材、増量剤、可塑剤、他のポリマー、色調節剤、分解防
止剤(酸化防止剤、オゾン化防止剤、相溶剤、熱安定剤およびUV安定剤など)
が挙げられる。
繊維中のゴムの重量部数の選択および決定では、そこに含まれる添加物および
架橋剤を除いたゴムを出発点とする。
繊維は、さらに、外観,加工性および使用特性に影響を及ぼし得る物質を含む
か、該物質で被覆しても
よい。その例としては、艶消剤、増白剤、界面活性剤、染料、顔料ならびに光、
UVおよび熱安定剤が挙げられる。
本発明に係る繊維または繊維をマルチフィラメント繊維にする個々のフィラメ
ントの繊度は、5〜1000dtex、好ましくは10〜500 dtex、より好ましくは20〜25
0 dtexである。破断時の伸びは、実際にはゴムのそれに等しく、本明細書で先に
示した残留伸びに応じて、少なくとも100%であり、少なくとも400%、さらには
少なくとも500%ですらありうる。
繊維は、特に、繊維材料、織物および編み物に弾性を付与するのに適している
。その例としては、水着、下着、スポーツウェア、レジャーウェア、ストッキン
グ、タイツ、ソックス、クロスの弾性帯、おむつおよび包帯が挙げられる。
本発明に係る繊維は、そのままでも使用できるが、他の繊維、特にポリエステ
ル、ポリアミドまたは木綿でその繊維を覆ったり、繊維に巻き付けたり、紡糸す
ることも可能であり、あるいは、繊維を、当技術分野で公知の技術により他の繊
維と共に加工処理して弾性糸を形成してもよい。
本明細書で以前および以降に使用の「繊維」は、テープまたはフィルムおよび
一般に少なくとも一方向の大きさが高々1000μm、好ましくは高々500μm、よ
り好ましくは高々250μm、最も好ましくは高々100、
さらには50μmですらある任意の物体を含むものとする。繊維またはフィラメン
トの断面は、繊維がマルチフィラメントの場合、丸、卵形またはマルチローブ形
(例えば、三葉形)でありうる。そのような形状の例は、Introductory Texsile
Science,Science,第5版,Marjory L.Joseph著,Kolt,Rinehart and Winston
Inc.発行,第40頁に見ることができる。
本発明はまた、コポリエステルおよびゴムの混合物の溶融紡糸を含む、上記で
定義した弾性繊維の製造法にも関し、該方法では、繊維形成の瞬間にゴムが完全
またはほとんど完全に架橋される。
驚くべきことに、本発明に係る方法は、弾性回復が非常に良好であり、かつ破
断時の伸びも高い弾性繊維を製造することができることが見出された。すなわち
、最初の長さを100%伸長した後の残留伸びが高々10%、さらには高々5%であ
り、破断時の伸びが少なくとも500%であり、少なくとも600%ですらある繊維を
製造することが可能であることが分かった。さらに、延伸することにより、本発
明に係る方法によって得られる繊維は、最初の長さを100%伸長した後の残留伸
びが高々5%、3%または2%ですらあることが見出された。
その方法のさらに別の利点は、可能であることが立証された高い紡糸速度のお
かげで、高い製造速度が達成できることである。さらに、ゴム含有物質の通
常の処理法では、ゴムの架橋が、ゴム含有物質がその所望の形状になるまで行わ
れない。このことは、余分な、そしてしばしば時間を要する処理工程を伴う。本
発明に係る方法では、予め架橋したゴムからスタートするので、時間を要する紡
糸繊維の架橋の必要性は回避される。
完全またはほとんど完全に架橋されたゴムを含む混合物の高い紡糸速度での良
好な紡糸性は、それ自体が驚くべきことである。というのは、必要とされる紡糸
温度(使用するコポリエステルに応じて150〜350℃)でのかかる混合物の動的粘
度が0.1および200/sのせん断速度で各々1,000,000〜1000Pa.sであるからであ
る。教科書のPlastic ExtrusionTechnology,Friedhelm Hensen編,Hansen Publi
shpers(ミュンヘン),第566頁によれば、紡糸可能な混合物の粘度に関する通
常の値は、許容可能な紡糸速度が達成できる場合、80〜300Pa.sの範囲である。
粘度が高いことを考慮すると、当業者であれば、達成できる最も高い紡糸速度は
10m/分であると予想するであろう。しかし、本発明に係る方法では、100および
500〜1000m/分、さらには1200m/分以上のはるかに高い紡糸速度が可能である
ことが見出された。拘束があるとすれば、それは、紡糸装置の限られた能力によ
ってのみ課せられ、混合物の紡糸挙動によってではないことが分かった。
本発明に係る方法の別の利点は、細い繊維が簡単に製造できることである。す
なわち、繊度が10、さらには5dtexである繊維が製造できる。一般には、また本
発明方法においても、比較的太い繊維の製造は、細い繊維の紡糸よりも発生する
問題が少ない。例えば25、50、100または250 dtexまでもの比較的太い繊維は、
比較的大きい紡糸口金孔を使用して容易に製造することができる。さらに太い50
0、1000またはそれ以上のdtexまでの繊維も可能であるが、そのような太さの場
合はむしろ、糸またはテープと言うべきである。たとえそのような太さであって
も、出発混合物の良好な紡糸性により、上記した方法の利点が得られ、一方、そ
の場合ですら、材料の好ましい特性が、製造された物質に存在する。繊維の太さ
は、紡糸中または紡糸後に繊維を延伸することにより減少させることができる。
延伸は、広い温度範囲、例えば,0℃からコポリエステルの融点近くまでの範囲
で行うことができるが、好ましくは、コポリエステルの融点の3℃下よりも高い
温度ではない。コポリエステルの融点は、主に、硬質セグメントによって決定さ
れ、DSCなどの標準的な方法を使用して調べることができる。延伸の後、繊維
は、好ましくは、或る時間、好ましくは張力をかけないで或る一定の温度にさら
すことにより緩和させる。そうすると繊維は収縮し、延伸によって生じた伸びは
再び部
分的に取り除かれる。緩和は、感知できる長さの減少がさらに認められない場合
、完全であるとみなされる。緩和温度も、好ましくは0℃からコポリエステルの
融点であり、延伸温度に等しく、または異なるように選択できる。繊維を緩和さ
せるために選択される時間は、緩和温度が高いほど短くすることができる。
本発明に係る方法では、コポリエステルおよびゴムの混合物が紡糸され、ゴム
は、繊維形成の瞬間に完全またはほとんど完全に架橋される。混合物は、90〜10
重量部のコポリエステルに対して10〜90重量部のゴムを含み、好ましくは、70〜
25重量部のコポリエステルに対して30〜75重量部のゴムを含む。最も好ましくは
、混合物は、45〜30重量部のコポリエステルに対して55〜70重量部のゴムを含む
。ゴムの含量の決定においては、ゴムは、架橋系など、そこに含まれるどの添加
剤も除いて考える。
適切かつ好ましいゴムおよびコポリエステルは、上記で本発明に係る弾性繊維
に適切かつ好ましいとして記載したものである。そこに挙げた通常の公知添加剤
も紡糸したい混合物に添加できる。
方法は、必要な特徴を有する任意の混合物を使用して行うことができる。プロ
セス工学の観点から、混合物は、一つの連続したプロセス作業で製造し、紡糸す
るのが有利である。架橋したゴムおよびコポリ
エステルの混合物は、架橋していないゴムおよびコポリエステルの混合物から架
橋剤の存在下で製造するのが好ましい。ゴムは、コポリエステルと混合する前に
すでにわずかに架橋しておいてもよい。しかし、その時点では、ゴムは、なおも
熱可塑性樹脂として挙動する程度に未架橋であり、溶融状態のコポリエステルと
相溶性であることが必須である。
混合物の製造に適切な方法は、前記で説明した。好ましくは、混合物が、前記
で説明した動的加硫によって製造されたTPVである。一般に、本明細書で使用す
る混合および混練は、ゴムが完全またはほとんど完全に架橋されるまで続ける。
これは、ゴムが、通常の方法で、すなわち、そのままであってコポリエステルの
存在下での動的でない方法で加硫されたゴムが通常有する弾性を持つために十分
であるよりもはるかに架橋されることを意味する。架橋の進行程度は、動的に加
硫された混合物からゴム用溶媒を使用して高められた温度で抽出できるゴム画分
によって解析できる。好ましくは、この画分が高々40重量%、より好ましくは高
々25重量%、さらには高々10重量%、最も好ましくは高々5重量%であり、これ
は、混合物中のゴムの量を意味する。抽出可能な画分が減少すると、残留伸びは
減少する。抽出可能なゴム画分の測定は、当技術分野において自体公知の方法で
ある。使用する溶媒は、関与するゴムにと
って良好であることが知られている溶媒である。一般には、例えば、EP(D)
M中の抽出可能な画分の測定には沸騰キシレンが使用される。
架橋作業の一部は紡糸工程中にも生じる。この紡糸工程では、混合物を再溶融
し、均質化し、紡糸ヘッドに送り、そこで繊維の実際の形成が行われる。一般に
、かかる作業は、高められた温度およびせん断応力下で行われ、従って、動的加
硫をもたらす条件下で行われる。
全体または上記したように多分一部のみが架橋した混合物は、紡糸装置に供給
することができる。そのとき、混合系が紡糸装置と一体になっていてもよく、そ
の場合、例えば、ゴムおよびコポリエステルの混合と同時にゴムが架橋される押
出機で構成される。混合物は、その工程でコポリエステルの融点よりも高い温度
に加熱して、溶融加工性になるようにしてもよい。混合物は次いで、その形状で
、押出機を塞ぐ紡糸口金に供給できる。紡糸口金は、所望の形状および大きさの
紡糸孔を所望の数量で有する。溶融混合物は紡糸ポンプに供給し、そこから紡糸
口金に供給してもよい。その場合、繊維の実際の形成は、紡糸口金で行われる。
その場所では、混合物は溶融加工性の形状で存在し、ゴムは完全またはほとんど
完全に架橋される。
所望ならば、混合物の製造および紡糸を別々にそれ
ぞれの場所で行ってもよい。混合物は完全に架橋されていてもいなくてもよいが
、所望により冷却後に、その大きさを縮小することができ、また、得られる粒状
体または最初の塊を後におよび/または他の所で紡糸装置に供給し、そこで必要
ならばゴムをさらに架橋し、架橋したゴムと共にその混合物を再溶融し、溶融物
として紡糸口金に供給してもよい。
使用される紡糸装置は、所望により混合物を製造することができ、同時にゴム
を架橋してもしなくてもよいが、いずれの場合も、混合物を溶融し、溶融した混
合物を所望の速度で、所望の形状および大きさの孔を有する紡糸口金に通すこと
ができる任意の公知の装置であり得る。必要ならば、ゴムを完全または部分的に
架橋するために必要な条件を紡糸装置で確立することも可能であるはずである。
繊維は、空気中または不活性ガスもしくは液体が存在する空間で紡糸される。
使用する混合物に応じて、気体、空気または液体を室温または高められた温度で
保持することができ、後者は好ましくはコポリエステルの融点より下である。繊
維は、紡糸ヘッドを出た直後に水蒸気雰囲気にさらしてもよい。多くの場合は、
或る程度空気、気体または水蒸気を通過した後、さらに、そして所望するならば
より急速に冷却するために、紡糸された繊維を液浴、特に水浴に通す。こうして
繊維は冷却し、安定形状を獲得し、
ボビン上に巻き取ることができる。繊維は紡糸され、モノフィラメントとしてボ
ビン上に巻き取ることができるが、マルチフィラメントとしても巻き取ることが
できる。繊維は、繊維がなおも全体または部分的に溶融した状態にある紡糸中ま
たは紡糸直後に延伸操作に付してもよい。このようにして、繊度が比較的低い繊
維を得ることができる。本明細書の初めの方で説明したように、繊度をより低く
するために、繊維は、その直後または別の工程で延伸してもよく、それは、残留
伸びの改善にも役立つであろう。
繊維はさらに、繊維にとっては通常の他の後処理、例えば熱処理、収縮、クリ
ンプ加工および染色などに付してもよい。また、他の繊維または糸、例えばポリ
アミド、木綿およびポリエステルの繊維または糸をその繊維の周りに紡糸しても
よく、あるいは、繊維を他の繊維または糸と共紡糸したり、編んだり、織ったり
してもよい。
本発明を下記の実施例によって説明するが、本発明は以下の実施例に限定され
るものではない。
Spintesterまたは長さLが20mm、直径Dが0.5mm(L/D=40)、バ
レル直径が12mmおよびプランジャー速度が0.2mm/sである紡糸口
糸した(特に断らない限り)。
繊維の機械的特性は、Zwick 1435引張試験機を使用し、試験速度を20cm/
分とし、グリップを5cm離して調べた。
実施例I
下記の材料を順次、Haake 50 ccバンバリー混練機に供給した。
t=0のとき、23.8gのEPDM(Keltan(商標)778);
t=1分のとき、17.5gのコポリエーテルエステル(Arnitel(商標)EM400
)、2.82gの顔料(Kronos(商標)2210)、安定剤としての0.18gのIr
ganox(商標)1098;および
t=4分のとき、2.7gのフェノール樹脂(Schenectedy(商標)SP1045)。
実験開始時の混練機の温度および速度は、各々、225℃および100RPMにセ
ットした。8時間後、得られた混合物(TPV)を排出し、室温に冷却した。混
合物の一部を使用して、溶融紡糸によりモノフィラメント弾性繊維を製造した。
その工程では、
特性は以下の通りであった。
繊度: 1430 dtex
引張強さ: 1.7 cN/tex
破断時の伸び: 920%
50%伸長後の残留伸び: 2%
100%伸長後の残留伸び: 6%
200%伸長後の残留伸び: 16%
300%伸長後の残留伸び: 30%
同様の繊維を20℃でその最初の長さの9倍(800%)に延伸した。繊維の
特性は、繊維を24時間(20±2℃、65±5%相対湿度)緩和させた後に再
び測定した。紡糸した繊維の特性は以下の通りであった。
繊度: 660dtex
引張強さ: 3.1cN/tex
破断時の伸び: 410%
50%伸長後の残留伸び: 0%
100%伸長後の残留伸び: 1%
200%伸長後の残留伸び: 4%
300%伸長後の残留伸び: 8%
実施例II
実施例Iの混合物を使用して、マルチフィラメン
Viscotesterには、マルチフィラメント紡糸口金(4x100μm,、L/D=
2)を備えた。延伸した繊維の特性は以下の通りであった。
繊度: 388dtex
(97dtex/
フィラメント)
引張強さ: 1.6cN/tex
破断時の伸び: 620%
50%伸長後の残留伸び: 2%
100%伸長後の残留伸び: 7%
200%伸長後の残留伸び: 17%
300%伸長後の残留伸び: 32%
同様の繊維を20℃でその最初の長さの5倍(400%)に延伸した。繊維の
特性は、繊維を24時間(20±2℃、65±5%相対湿度)緩和させた後に再
び測定した。延伸した繊維の特性は以下の通りであった。
繊度: 280dtex
(70dtex/
フィラメント)
引張強さ: 2.9 cN/tex
破断時の伸び: 360%
50%伸長後の残留伸び: 0%
100%伸長後の残留伸び: 1%
200%伸長後の弾性伸び: 5%
300%伸長後の残留伸び: 9%
実施例III
下記の材料を順次、Haake 50 ccバンバリー混練機に供給した。
t=0のとき、24.0gのNBRゴム(Nysyn(商標)405);
t=1分のとき、18.8gのコポリエーテルエステル(Arnitel(商標)EM400
)、安定剤としての0.19gのIrganox(商標)1098;および
t=4分のとき、4.23gのフェノール樹脂(Schenectedy(商標)SP1045)
。
実験開始時の混練機の温度および速度は、各々、225℃および100RPM
にセットした。8時間後、動的に加硫した混合物(TPV)を排出し、室温に冷
却した。混合物の一部を使用して、溶融紡糸によりモノフィラメント弾性繊維を
製造した。その
した繊維の特性は以下の通りであった。
繊度: 1510dtex
引張強さ: 2.5cN/tex
破断時の伸び: 680%
50%伸長後の残留伸び: 2%
100%伸長後の残留伸び: 5%
200%伸長後の残留伸び: 13%
300%伸長後の残留伸び: 26%
同様の繊維を20℃でその最初の長さの6倍(500%)に延伸した。繊維の
特性は、繊維を24時間(20±2℃、65±5%相対湿度)緩和させた後に再
び測定した。延伸した繊維の特性は以下の通りであった。
繊度: 845dtex
引張強さ: 4.3cN/tex
破断時の伸び: 380%
50%伸長後の残留伸び: 0%
100%伸長後の残留伸び: 0%
200%伸長後の弾性伸び: 3%
300%伸長後の残留伸び: 7%
実施例IV
下記の材料を順次、Farrel 3500cc混練機に供給した。
t=0のとき、1377gのEPDMゴム(Keltan(商標)714)および108
0gのコポリエーテルエステル(Arnitel(商標)EM400);ならびにt=4分の
とき、243gのフェノール樹脂(Schenectedy(商標)SP104
5)。
実験開始時の混練機の温度を180℃にセットし、混練中に温度は235℃に
上昇し、混練中は混練機の速度を調節する(90〜l60RPM)ことによりそ
のレベルで維持した。8分後、混合物を排出し、顆粒化し、紡糸実験を行うため
に乾燥した。混合物から溶融紡糸することにより、マルチフィラメント
Spintesterを使用した。溶融紡糸は、下記の条件下で行った。
溶融温度: 240℃
処理量: 18g/分
紡糸用ブロック紡糸口金 12* 0.25mm
L/D: 2
巻き取り速度 120m/分
紡糸した繊維の特性は以下の通りであった。
繊度: 1510dtex
(125dtex/
フィラメント)
引張強さ: 2.1cN/tex
破断時の伸び: 630%
50%伸長後の残留伸び: 2%
100%伸長後の残留伸び: 5%
200%伸長後の残留伸び: 14%
300%伸長後の残留伸び: 28%
同様の繊維を20℃でその最初の長さの6倍(400%)に延伸した。繊維の
特性は、繊維を24時間(20±2℃、65±5%相対湿度)緩和させた後に再
び測定した。延伸した繊維の特性は以下の通りであった。
繊度: 912dtex
(76dtex/
フィラメント)
引張強さ: 3.2cN/dtex
破断時の伸び: 380%
50%伸長後の残留伸び: 0%
100%伸長後の残留伸び: 1%
200%伸長後の残留伸び: 5%
300%伸長後の残留伸び: 9%
実施例V
ZSK30/42D 二軸スクリュー押出機を使用して、下記組成物を有する動的加硫
混合物(TPV)を製造した。
コポリエーテルエステル(Arnitel(商標)EM400)
37.4%
ゴム(EPDM、Kelten(商標)714) 50.0%
フェノール樹脂(Schenectedy(商標)SP1045) 6.5%
顔料(Kronos(商標)2210) 5.5%
安定剤(Irganox(商標)1098) 0.6%
次の条件および状態が認められた。すなわち、処理量4kg/時、滞留時間3
.5分、押出ヘッド溶融温度280℃、速度150RPMである。フェノール樹
脂を除く全ての成分は、押出機の最初に計量した。成分を溶融および混合した後
、フェノール樹脂を50%(重量)アセトン溶液の形でサイドフィーダーにより
計量した。得られた動的加硫混合物(TPV)は、紡糸実験を行うために顆粒化
し、乾燥させた。該フェノール樹脂添加法は、構造が非常に均一であり、かなり
の高速で紡糸し、巻き取ることができるTPVを生じることが見出された。
Spintesterを使用した。溶融紡糸は、下記条件下で行った。
溶融温度 239℃
紡糸ポンプの処理量: 18g/分
紡糸用ブロック紡糸口金 1*0.50mm
L/D: 2
巻き取り速度 1100m/分
紡糸した繊維の特性は以下の通りであった。
繊度: 109dtex
引張強さ: 2.3cN/tex
破断時の伸び: 510%
50%伸長後の残留伸び: 1%
100%伸長後の残留伸び: 5%
200%伸長後の残留伸び: 14%
300%伸長後の残留伸び: 28%
同様の繊維を20℃でその最初の長さの5倍(400%)に延伸した。繊維を
24時間(20±2℃、65±5%相対湿度)弛緩させた後、繊維の特性を再び
測定した。延伸した繊維の特性は以下の通りであった。
繊度: 73dtex
引張強さ: 3.2cN/tex
破断時の伸び: 325%
50%伸長後の残留伸び: 0%
100%伸長後の残留伸び: 1%
200%伸長後の残留伸び: 4%
300%伸長後の残留伸び: 8%
比較例A
比較のために、まさにコポリエーテルエステル(Arnitel(商標)EM400)から
繊維を製造した。こ
紡糸した繊維の特性は以下の通りであった。
繊度: 813dtex
引張強さ: 3.7cN/tex
破断時の伸び: 575%
50%伸長後の残留伸び: 8%
100%伸長後の残留伸び: 18%
200%伸長後の残留伸び: 40%
300%伸長後の残留伸び: 75%
同様の繊維を20℃でその最初の長さの5倍(400%)に延伸した。繊維を
24時間(20±2℃、65±5%相対湿度)弛緩させた後、繊維の特性を再び
測定した。延伸した繊維の特性は以下の通りであった。
繊度: 395dtex
引張強さ: 6.3cN/tex
破断時の伸び: 290%
50%伸長後の残留伸び: 3%
100%伸長後の残留伸び: 7%
200%伸長後の残留伸び: 18%
300%伸長後の残留伸び: 破断
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(72)発明者 ウィルエムス,エドウィン
オランダ国,6136 ジーシー シッタル
ド,ルイス デ ベーレンブルックストラ
ート 4―ザ セカンド
(72)発明者 ベルスルイス,コルネリス
オランダ国,6171 イーティー ステイ
ン,ブルグストラート 13