JP3813364B2 - 薄型非水電解質電池及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ICカードや腕時計等の電源として使用される薄型非水電解質電池に係り、特に、一対の外装体間に正極と負極と非水電解質とを収容させ、上記の外装体間の周囲を熱溶着性樹脂によって封口させた薄型非水電解質電池において、この薄型非水電解質電池内に水分が浸入して電池性能が低下するのを防止する点に特徴を有するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ICカードや腕時計等の電源として薄型電池が使用されており、また近年においては、このような薄型電池において、電解質に非水電解質を用い、リチウムの酸化,還元を利用して十分に電池容量が得られるようにした薄型非水電解質電池が開発されている。
【0003】
ここで、上記のような薄型非水電解質電池としては、図1に示すように、一対の外装体1,1間に、正極2と、非水電解液を含浸させたセパレータやポリマー電解質からなる非水電解質3と、負極4とを積層させて収容させると共に、この外装体1間の周囲を熱溶着性樹脂5によって封口させたものが一般に使用されている。
【0004】
ここで、このような薄型非水電解質電池において、外装体1,1間の周囲を封口させる熱溶着性樹脂5として、従来においては、一般に融点が低くて接着性のよい変性ポリエチレンが使用されていた。
【0005】
しかし、このような変性ポリエチレンからなる熱溶着性樹脂5の場合、水分透過性が大きく、変性ポリエチレンからなる熱溶着性樹脂5を用いて外装体1,1間の周囲を封口させた場合、この熱溶着性樹脂5を通して外部の水分が電池の内部に浸入し、この水分が正極2や負極3等と反応して、電池性能が低下するという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、一対の外装体間に正極と負極と非水電解質とを収容させ、上記の外装体間の周囲を熱溶着性樹脂によって封口させるようにした薄型非水電解質電池における上記のような問題を解決することを課題とするものであり、上記のような薄型非水電解質電池において、外部の水分が外装体間の周囲を封口させた熱溶着性樹脂を通して電池の内部に浸入するのを抑制し、安定した電池性能が得られるようにすることを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明における薄型非水電解質電池においては、上記のような課題を解決するため、一対の外装体間に正極と負極と非水電解質とが収容され、上記の外装体間の周囲が熱溶着性樹脂によって封口されてなる薄型非水電解質電池において、上記の外装体間の周囲を、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリフッ化ビニル,ポリフッ化ビニリデン,ポリ3フッ化エチレン及びポリ(エチレン−4フッ化エチレン)共重合体から選択される少なくとも1種の第1熱溶着性樹脂で封口させると共に、この第1熱溶着性樹脂の内周側に変性ポリエチレン,変性ポリプロピレン,イオノマー及びポリウレタンから選択される少なくとも1種の第2熱溶着性樹脂を嵌め込むようにして熱溶着させるようにしたのである。
【0008】
また、このような薄型非水電解質電池を製造するにあたっては、各外装体の周辺部に第1熱溶着性樹脂を設け、各外装体に設けられた第1熱溶着性樹脂間の内周側に第2熱溶着性樹脂を介在させ、この状態で熱溶着させて、外装体間の周囲を第1熱溶着性樹脂で封口させると共に、この第1熱溶着性樹脂の内周側に第2熱溶着性樹脂が嵌まり込むようにして熱溶着させ、外装体間の周囲を封口する第1熱溶着性樹脂相互を第2熱溶着性樹脂を介して接着させるようにする。
【0009】
このようにすると、外装体間の周囲が水分透過性の低い第1熱溶着性樹脂で封口されると共に、各外装体の周囲に設けられた第1熱溶着性樹脂の間に第2熱溶着性樹脂が介在して第1熱溶着性樹脂相互が確実に接着されるようになり、外部の水分が電池の内部に浸入するのが抑制され、電池の内部に浸入した水分が正極や負極等と反応して、電池性能が低下するのが防止される。
【0012】
また、上記のように外装体間において第1熱溶着性樹脂の内周側に第2熱溶着性樹脂を嵌め込むようにして熱溶着させた場合において、この第2熱溶着性樹脂の厚みが大きくなりすぎると、外部の水分が電池の内部に浸透し易くなる一方、この第2熱溶着性樹脂の厚みが薄くなりすぎると、各外装体の周囲に設けられた第1熱溶着性樹脂相互の接着が十分に行えなくなり、この場合においても、外部の水分が電池の内部に浸透し易くなるため、外装体間における第1熱溶着性樹脂の厚みLAと第2熱溶着性樹脂の厚みLBの比(LB/LA)が、0.1≦LB/LA≦0.9の範囲になるようにすることが好ましい。
【0013】
また、外装体間における第1熱溶着性樹脂の厚みLAと第2熱溶着性樹脂の厚みLBが厚くなり過ぎると、外部の水分が電池の内部に浸透し易くなる一方、これらの厚みが薄くなり過ぎると、外装体相互が接触してショートが発生し易くなるため、外装体間における第1熱溶着性樹脂の厚みLAと第2熱溶着性樹脂の厚みLBの和(LA+LB)が、75μm≦LA+LB≦300μmの条件を満たすことが好ましい。
【0014】
なお、この発明の薄型非水電解質電池は、上記のように外装体間の周囲を熱溶着性樹脂によって封口させる点に特徴を有するものであり、外装体間に収容させる正極や負極や非水電解質等については特に限定されず、従来より使用されている公知の材料を用いることができる。
【0015】
ここで、正極を構成する正極材料としては、例えば、二酸化マンガン、リチウム含有マンガン酸化物、リチウム含有コバルト酸化物、リチウム含有バナジウム酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物、リチウム含有鉄酸化物、リチウム含有クロム酸化物、リチウム含有チタン酸化物等を使用することができる。
【0016】
また、負極を構成する負極材料としては、例えば、金属リチウム、Li−Al,Li−In,Li−Sn,Li−Pb,Li−Bi,Li−Ga,Li−Sr,Li−Si,Li−Zn,Li−Cd,Li−Ca,Li−Ba等のリチウム合金、リチウムイオンの吸蔵,放出が可能な黒鉛,コークス,有機物焼成体等の炭素材料を使用することができる。
【0017】
また、非水電解質としては、非水電解液をセパレータに含浸させたものの他に、ポリーマ電解質や非水電解液を含浸させたゲル状のポリーマ電解質を用いることができる。
【0018】
そして、非水電解液における溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状炭酸エステルや、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボート等の鎖状炭酸エステルや、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン等の溶媒を一種又は2種以上混合させて用いることができ、また上記の溶媒に溶解させる電解質としては、例えば、LiPF6 、LiBF4 、LiN(C2 F5 SO2 )2 、LiAsF6 、LiSbF6 、LiBiF4 、LiAlF4 、LiGaF4 、LiInF4 、LiClO4 、LiN(CF3 SO2 )2 、LiCF3 SO3 等のリチウム化合物を使用することができる。
【0019】
【実施例】
以下、この発明の実施例に係る薄型非水電解質電池及びその製造方法を添付図面に基づいて具体的に説明すると共に、この実施例における薄型非水電解質電池においては、外部の水分が電池の内部に浸透するのが抑制されて、高温・高湿度の状態で保存した場合においても電池の内部抵抗が上昇するのが防止されることを比較例を挙げて明らかにする。なお、この発明における薄型非水電解質電池は、下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0020】
(実施例1〜9)
これらの実施例における薄型非水電解質電池においては、下記のようにして作製した正極と負極と非水電解液とを用いるようにした。
【0021】
[正極の作製]
正極材料にリチウム二酸化コバルトLiCoO2 粉末を使用し、このLiCoO2 粉末と、導電剤としての炭素粉末と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンとを85:10:5の重量比で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリー化させ、このスラリーを厚みが20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の片面にドクターブレード法により塗布し、これを150℃で2時間真空乾燥させ、正極材料の層の厚みが約80μmで、一辺が10mmの正方形状になった正極を作製した。
【0022】
[負極の作製]
負極材料に天然黒鉛粉末を使用し、この天然黒鉛粉末と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンとを95:5の重量比で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリー化させ、このスラリーを厚みが20μmの銅箔からなる負極集電体の片面にドクターブレード法によって塗布し、これを150℃で2時間真空乾燥させ、負極材料の層の厚みが約60μmで、一辺が10mmの正方形状になった負極を作製した。
【0023】
[非水電解液の作製]
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを40:60の体積比で混合させた混合溶媒に、電解質としてヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF6 を1mol/lの割合で溶解させて非水電解液を作製した。
【0024】
そして、これらの実施例においては、図2(A)に示すように、上記のようにして作製した正極2と負極4との間に非水電解質3を設けるにあたり、上記の正極2の上に、N−メチル−2−ピロリドンにポリエチレンオキシドを溶解させた溶液をドクターブレード法により塗布し、これを静置させて溶媒のN−メチル−2−ピロリドンを蒸発させ、ポリエチレンオキシドのポリマー電解質を正極2上に形成した後、このポリマー電解質に上記のように作製した非水電解液を1:1の重量比で加え、このポリマー電解質をゲル化させて非水電解質3を形成し、この非水電解質3の上に上記のようにして作製した負極4を載置させた。
【0025】
一方、外装体1においては、その周辺部を覆うように外装体1の両面に至る水分透過率が低い第1熱溶着性樹脂5aを設け、このように周辺部に第1熱溶着性樹脂5aが設けられた一対の外装体1,1間に上記の正極2とポリマー電解質3と負極4とを収容させると共に、各外装体1の周辺部に設けられた内面側の第1熱溶着性樹脂5a,5a間の内周側に融点が低くて接着性に優れた第2熱溶着性樹脂5bを挟み込むようにした。
【0026】
次いで、この状態で、熱溶着装置(図示せず)により外装体1の周辺部に熱を加え、図2(B)に示すように、各外装体1の周辺部に設けられた第1熱溶着性樹脂5a,5a相互を第2熱溶着性樹脂5bを介して接着させ、この第1熱溶着性樹脂5aによって外装体1,1間の周囲を封口させると共に、この第1熱溶着性樹脂5aの内周側に第2熱溶着性樹脂5bが嵌め込まれるようにして、各実施例の薄型非水電解質電池を作製した。
【0027】
ここで、実施例1〜9の各薄型非水電解質電池においては、各外装体1に設けられた第1熱溶着性樹脂5aの内面側の厚みLA/2を50μmにすると共に、第2熱溶着性樹脂5bの厚みLBを50μmにし、外装体1,1間における第1熱溶着性樹脂5aの厚みLAと、第2熱溶着性樹脂5bの厚みLBとの比(LB/LA)を0.5にすると共に、外装体1,1間における第1熱溶着性樹脂5aの厚みLAと第2熱溶着性樹脂5bの厚みLBとの和(LA+LB)を150μmにした。
【0028】
そして、実施例1〜6の各薄型非水電解質電池においては、下記の表1に示すように上記の第2熱溶着性樹脂5bとして、ポリエチレンの水素の一部にカルボニル基を導入させた変性ポリエチレンを用いる一方、第1熱溶着性樹脂5aとして、実施例1ではポリエチレンを、実施例2ではポリプロピレンを、実施例3ではポリフッ化ビニルを、実施例4ではポリフッ化ビニリデンを、実施例5ではポリ3フッ化エチレンを、実施例6ではポリ(エチレン−4フッ化エチレン)共重合体を用いるようにした。また、実施例7〜9の各薄型非水電解質電池においては、上記の第1熱溶着性樹脂5aとしてポリプロピレンを用いる一方、第2熱溶着性樹脂5bとして、実施例7では変性ポリプロピレンを、実施例8ではイオノマーを、実施例9ではポリウレタンを用いるようにした。
【0029】
なお、上記の各樹脂における融点及び水分透過性を調べ、その結果を表1に合わせて示した。
【0030】
ここで、各樹脂における水分透過性については、それぞれ厚みが50μm、縦と横が12cmになった2枚の各樹脂シートを用い、2枚の各樹脂シート間に水分量10ppmのジメチルカーボネートを封入させて、この2枚の各樹脂シートを周辺部1cmを封口し、この状態で温度60℃、湿度90%の雰囲気中に2時間放置した後、2枚の各樹脂シート間に収容された上記のジメチルカーボネートの水分量をカールフィッシャー法で測定し、その結果を表1示した。ここで、ジメチルカーボネートの水分量が増加したのは、外部の水分が2枚の樹脂シートを通してジメチルカーボネートに含まれるようになったためであり、上記の水分量が小さい程その樹脂における水分透過性が低いものである。
【0031】
(比較例1)
この比較例における薄型非水電解質電池においては、前記の図1に示したように、外装体1,1間の周辺部に、熱溶着性樹脂5として融点が低くて接着性に優れるが水分透過性が高い変性ポリエチレンを挟み込むようにし、厚みが150μmになった変性ポリエチレンからなる熱溶着性樹脂5を外装体1,1間に熱溶着させて、外装体1,1間の周囲を封口させ、それ以外については、上記の実施例1〜9の場合と同様にして薄型非水電解質電池を作製した。
【0032】
(比較例2,3)
これらの比較例における薄型非水電解質電池においては、図3(A),(B)に示すように、外装体1の周辺部を覆うようにして外装体1の両面に至る熱溶着性樹脂5を設け、各外装体1の周辺部に設けられた熱溶着性樹脂5相互を熱溶着させ、外装体1,1間の厚みが150μmになった熱溶着性樹脂5によって外装体1,1間の周囲を封口させるようにした。
【0033】
ここで、上記の熱溶着性樹脂5として、下記の表1に示すように、比較例2においては融点が低くて接着性に優れるが水分透過性が高い変性ポリエチレンを、比較例3においては水分透過性が低いが融点が高くて接着性が悪いポリプロピレンを用いるようにし、それ以外については、上記の実施例1〜9の場合と同様にして各薄型非水電解質電池を作製した。
【0034】
次に、上記のようにして作製した実施例1〜9及び比較例1〜3の各薄型非水電解質電池を、それぞれ充電電流100μAで充電終止電圧4.2Vまで充電させた後、放電電流100μAで放電終止電圧2.75Vまで放電し、この状態で、温度60℃、湿度90%の恒温恒湿槽内に20日間保存させ、各薄型非水電解質電池における保存前の内部抵抗R1と保存後の内部抵抗R2とを測定すると共に、保存後における内部抵抗上昇率を下記の式により求め、これらの結果を下記の表1に合わせて示した。
内部抵抗上昇率(%)=[(R2−R1)/R1]×100
【0035】
【表1】
【0036】
この結果から明らかなように、外装体1の周辺部に設けられた水分透過性が低い第1熱溶着性樹脂5a,5a相互を第2熱溶着性樹脂5bを介して接着させ、この第1熱溶着性樹脂5aによって外装体1,1間の周囲を封口させると共に、この第1熱溶着性樹脂5aの内周側に第2熱溶着性樹脂5bが嵌め込まれるようにした実施例1〜9の各薄型非水電解質電池は、1種類の熱溶着性樹脂5によって外装体1,1間の周囲を封口させるようにした比較例1〜3の各薄型非水電解質電池に比べて、電池内部への水分の浸入が抑制されて、高温・高湿度下で保存した場合における内部抵抗の上昇が少なくなっていた。
【0037】
また、実施例1〜9の各薄型非水電解質電池を比較した場合、第1熱溶着性樹脂5aにポリエチレンやポリプロピレンを用いると共に、第2熱溶着性樹脂5bに変性ポリエチレンや変性ポリプロピレンを用いた実施例1,2,7の各薄型非水電解質電池においては、電池内部への水分の浸入がさらに抑制されて、高温・高湿度下で保存した場合における内部抵抗の上昇が非常に少なくなっていた。
【0038】
(実施例10〜15)
これらの実施例における薄型非水電解質電池においては、上記の実施例2の場合と同様に、第1熱溶着性樹脂5aにポリプロピレンを用いると共に、第2熱溶着性樹脂5bに変性ポリエチレンを用いるようにした。
【0039】
ここで、これらの実施例においては、外装体1,1間における第1熱溶着性樹脂5aの厚みLAと第2熱溶着性樹脂5bの厚みLBとの和(LA+LB)を実施例2の場合と同じ150μmにする一方、外装体1に設けられた第1熱溶着性樹脂5aの内面側の厚みLA/2及び第2熱溶着性樹脂5bの厚みLBを変更させて、外装体1,1間における第1熱溶着性樹脂5aの厚みLAと、第2熱溶着性樹脂5bの厚みLBとの比(LB/LA)を、下記の表2に示すように、0.05〜0.95の範囲で変更させ、それ以外については、上記の実施例2の場合と同様にして各薄型非水電解質電池を作製した。
【0040】
そして、上記のようにして作製した実施例10〜15の各薄型非水電解質電池についても、上記の場合と同様にして、放電状態で温度60℃、湿度90%の恒温恒湿槽内に20日間保存させ、各薄型非水電解質電池における保存前の内部抵抗R1と保存後の内部抵抗R2とを測定すると共に、保存後における内部抵抗上昇率を求め、これらの結果を上記の実施例2の場合と合わせて下記の表2に示した。
【0041】
【表2】
【0042】
この結果から明らかなように、外装体1,1間における第1熱溶着性樹脂5aの厚みLAと、第2熱溶着性樹脂5bの厚みLBとの比(LB/LA)を0.05〜0.95の範囲で変更させた場合においても、1種類の熱溶着性樹脂5によって外装体1,1間の周囲を封口させるようにした比較例1〜3の各薄型非水電解質電池に比べて、電池内部への水分の浸入が抑制されて、高温・高湿度下で保存した場合における内部抵抗の上昇が少なくなっており、特に、上記のLB/LAの値を0.1〜0.9の範囲にした実施例2,11〜14の各薄型非水電解質電池においては、電池内部への水分の浸入がさらに抑制されて、高温・高湿度下で保存した場合における内部抵抗の上昇が非常に少なくなっていた。
【0043】
(実施例16〜20)
これらの実施例における薄型非水電解質電池においても、上記の実施例2の場合と同様に、第1熱溶着性樹脂5aにポリプロピレンを用いると共に、第2熱溶着性樹脂5bに変性ポリエチレンを用いるようにした。
【0044】
ここで、これらの実施例においては、外装体1,1間における第1熱溶着性樹脂5aの厚みLAと第2熱溶着性樹脂5bの厚みLBとの比(LB/LA)を、実施例2の場合と同様に0.5にする一方、下記の表3に示すように、外装体1に設けられた第1熱溶着性樹脂5aの内面側の厚みLA/2及び第2熱溶着性樹脂5bの厚みLBを変更させて、第1熱溶着性樹脂5aの厚みLAと第2熱溶着性樹脂5bの厚みLBとの和(LA+LB)を30〜375μmの範囲で変更させ、それ以外については、上記の実施例2の場合と同様にして各薄型非水電解質電池を作製した。
【0045】
そして、上記のようにして作製した実施例16〜20の各薄型非水電解質電池についても、上記の場合と同様にして、放電状態で温度60℃、湿度90%の恒温恒湿槽内に20日間保存させ、各薄型非水電解質電池における保存前の内部抵抗R1と保存後の内部抵抗R2とを測定すると共に、保存後における内部抵抗上昇率を求め、これらの結果を上記の実施例2の場合と合わせて下記の表3に示した。
【0046】
また、上記のようにして実施例16〜20の各薄型非水電解質電池をそれぞれ100個作製し、電池のショート発生率を求め、その結果を下記の表3に合わせた示した。
【0047】
【表3】
【0048】
この結果から明らかなように、外装体1,1間における第1熱溶着性樹脂5aの厚みLAと第2熱溶着性樹脂5bの厚みLBとの和(LA+LB)を30〜375μmの範囲にした場合においても、1種類の熱溶着性樹脂5によって外装体1,1間の周囲を封口させるようにした比較例1〜3の各薄型非水電解質電池に比べて、電池内部への水分の浸入が抑制されて、高温・高湿度下で保存した場合における内部抵抗の上昇が少なくなっていた。
【0049】
また、上記のLA+LBの値が300μm以下になった実施例2,16〜19の各薄型非水電解質電池においては、電池内部への水分の浸入がさらに抑制されて、高温・高湿度下で保存した場合における内部抵抗の上昇が非常に少なくなっていたが、LA+LBの値が75μm以下の30μmになった実施例16の薄型非水電解質電池においては、作製された電池にショートが発生するため、LA+LBの値を75〜300μmのの範囲にすることが好ましかった。
【0050】
(実施例21〜26)
これらの実施例における薄型非水電解質電池においては、上記の実施例1〜6の場合と同様に、下記の表4に示すように、第2熱溶着性樹脂5bに変性ポリエチレンを用いる一方、第1熱溶着性樹脂5aとして、実施例21ではポリエチレンを、実施例22ではポリプロピレンを、実施例23ではポリフッ化ビニルを、実施例24ではポリフッ化ビニリデンを、実施例25ではポリ3フッ化エチレンを、実施例26ではポリ(エチレン−4フッ化エチレン)共重合体を用いるようにした。
【0051】
また、各外装体1に設ける第1熱溶着性樹脂5aの内面側の厚みLA/2を50μmにする一方、第2熱溶着性樹脂5bの厚みLBを50μmにし、外装体1,1間における第1熱溶着性樹脂5aの厚みLAと、第2熱溶着性樹脂5bの厚みLBとの比(LB/LA)を0.5にすると共に、外装体1,1間における第1熱溶着性樹脂5aの厚みLAと第2熱溶着性樹脂5bの厚みLBとの和(LA+LB)を150μmにした。
【0052】
そして、これらの実施例においては、非水電解質として、上記の実施例1〜6におけるポリマー電解質3に代えて、上記の実施例1〜6の場合と同じ非水電解液をポリプロピレン製の微多孔膜からなるセパレータに含浸させたものを用い、それ以外については、上記の実施例1〜6の場合と同様にして各薄型非水電解質電池を作製した。
【0053】
(比較例4,5)
これらの比較例4,5においても、上記の実施例21〜26の場合と同様に、非水電解質として、前記の非水電解液をポリプロピレン製の微多孔膜からなるセパレータに含浸させたものを用いるようにした。
【0054】
そして、比較例4においては、上記の比較例1の場合と同様に、外装体1,1間の周辺部に熱溶着性樹脂5として変性ポリエチレンを挟み込み、この熱溶着性樹脂5を外装体1,1間に熱溶着させて、外装体1,1間の周囲を封口させるようにし、また比較例5においては、上記の比較例2の場合と同様に、外装体1の周辺部を覆うようにして外装体1の両面に至る熱溶着性樹脂5として変性ポリエチレンを設け、各外装体1の周辺部に設けられたこの熱溶着性樹脂5,5相互を熱溶着させて、外装体1,1間の周囲を封口させるようにした。
【0055】
そして、上記のように作製した実施例21〜26及び比較例4,5の各薄型非水電解質電池についても、上記の場合と同様にして、放電状態で温度60℃、湿度90%の恒温恒湿槽内に20日間保存させ、各薄型非水電解質電池における保存前の内部抵抗R1と保存後の内部抵抗R2とを測定すると共に、保存後における内部抵抗上昇率を求め、これらの結果を下記の表4に示した。
【0056】
【表4】
【0057】
この結果から明らかなように、非水電解質として非水電解液をポリプロピレン製の微多孔膜からなるセパレータに含浸させたものを用いる場合においても、水分透過性が低い第1熱溶着性樹脂5aで外装体1,1間の周囲を封口させると共に、この第1熱溶着性樹脂5aの内周側に融点が低い第2熱溶着性樹脂5bが嵌め込まれるようにした実施例21〜26の各薄型非水電解質電池は、1種類の熱溶着性樹脂5によって外装体1,1間の周囲を封口させるようにした比較例4,5の各薄型非水電解質電池に比べて、電池内部への水分の浸入が抑制されて、高温・高湿度下で保存した場合における内部抵抗の上昇が少なくなっていた。
【0058】
なお、上記の実施例21〜26の各薄型非水電解質電池と前記の実施例1〜6の各薄型非水電解質電池とを比較した場合、非水電解質としてゲル状のポリマー電解質を用いた上記の実施例1〜6の各薄型非水電解質電池の方が高温・高湿度下で保存した場合における内部抵抗の上昇が少なくなっており、非水電解質としてゲル状のポリマー電解質を用いる方が好ましかった。
【0059】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明における薄型非水電解質電池においては、一対の外装体間に正極と負極と非水電解液とを収容させ、この外装体間の周囲を熱溶着性樹脂によって封口させるにあたり、外装体間の周囲を水分透過性の低いポリエチレン,ポリプロピレン,ポリフッ化ビニル,ポリフッ化ビニリデン,ポリ3フッ化エチレン及びポリ(エチレン−4フッ化エチレン)共重合体から選択される少なくとも1種の第1熱溶着性樹脂で封口させると共に、この第1熱溶着性樹脂の内周側に融点がこの第1熱溶着性樹脂より低い変性ポリエチレン,変性ポリプロピレン,イオノマー及びポリウレタンから選択される少なくとも1種の第2熱溶着性樹脂を嵌め込むようにして熱溶着させたため、各外装体の周囲に設けられた第1熱溶着性樹脂相互が第2熱溶着性樹脂により確実に接着されるようになり、外部の水分が電池の内部に浸入するのが外装体間の周囲を封口する上記の水分透過性の低い第1熱溶着性樹脂によって確実に抑制されるようになった。
【0060】
この結果、この発明における薄型非水電解質電池においては、高温・高湿度下で保存した場合においても、電池内部に水分が浸入するのが抑制され、電池内部に浸入した水分によって電池の内部抵抗が上昇するのが防止され、安定した電池性能が得られるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来及び比較例1,4の薄型非水電解質電池において、外装体間の周囲を熱溶着性樹脂によって封口させた状態を示した断面説明図である。
【図2】この発明の実施例における薄型非水電解質電池において、外装体間の周囲を第1及び第2の熱溶着性樹脂を用いて封口させる状態を示した断面説明図である。
【図3】比較例2,3,5の薄型非水電解質電池において、外装体間の周囲を熱溶着性樹脂を用いて封口させる状態を示した断面説明図である。
【符号の説明】
1 外装体
2 正極
3 非水電解質
4 負極
5 熱溶着性樹脂
5a 第1熱溶着性樹脂
5b 第2熱溶着性樹脂
Claims (6)
- 一対の外装体間に正極と負極と非水電解質とが収容され、上記の外装体間の周囲が熱溶着性樹脂によって封口されてなる薄型非水電解質電池において、上記の外装体間の周囲が、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリフッ化ビニル,ポリフッ化ビニリデン,ポリ3フッ化エチレン及びポリ(エチレン−4フッ化エチレン)共重合体から選択される少なくとも1種の第1熱溶着性樹脂で封口されると共に、この第1熱溶着性樹脂の内周側に変性ポリエチレン,変性ポリプロピレン,イオノマー及びポリウレタンから選択される少なくとも1種の第2熱溶着性樹脂が嵌め込まれるようにして熱溶着されてなることを特徴とする薄型非水電解質電池。
- 請求項1に記載した薄型非水電解質電池において、上記の非水電解質として、非水電解液を保持させたポリマー電解質を用いたことを特徴とする薄型非水電解質電池。
- 請求項1又は2に記載した薄型非水電解質電池において、上記の第1熱溶着性樹脂がポリエチレン又はポリプロピレンであることを特徴とする薄型非水電解質電池。
- 請求項1〜3の何れか一項に記載した薄型非水電解質電池において、上記の第2熱溶着性樹脂が変性ポリエチレン又は変性ポリプロピレンであることを特徴とする薄型非水電解質電池。
- 請求項1〜4の何れか一項に記載した薄型非水電解質電池において、上記の外装体間における第1熱溶着性樹脂の厚みLAと、第2熱溶着性樹脂の厚みLBとが0.1≦LB/LA≦0.9の条件を満たすことを特徴とする薄型非水電解質電池。
- 請求項1〜5の何れか一項に記載した薄型非水電解質電池を製造するにあたり、各外装体の周辺部に第1熱溶着性樹脂を設け、各外装体に設けられた第1熱溶着性樹脂間の内周側に第2熱溶着性樹脂を介在させた状態で熱溶着させ、外装体間の周囲を第1熱溶着性樹脂で封口させると共に、この第1熱溶着性樹脂の内周側に第2熱溶着性樹脂が嵌め込まれるようにすることを特徴とする薄型非水電解質電池の製造方法。
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