JP2006228602A - 電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高温環境下であっても、容量の低下を抑えつつ、膨れを抑制することができる電池を提供する。
【解決手段】正極21と負極22とをセパレータ23および電解質24を介して積層し巻回した巻回電極体20が、フィルム状の外装部材30の内部に収納されている。電解質24は、LiCF3 SO3 、LiN(CF3 SO2 )2 またはジメチルスルフォキシドなどの酸化電位が満充電時の正極21の電位より低い硫黄化合物を含んでいる。これにより、正極21における溶媒の分解反応が抑制される。
【選択図】 図2
【解決手段】正極21と負極22とをセパレータ23および電解質24を介して積層し巻回した巻回電極体20が、フィルム状の外装部材30の内部に収納されている。電解質24は、LiCF3 SO3 、LiN(CF3 SO2 )2 またはジメチルスルフォキシドなどの酸化電位が満充電時の正極21の電位より低い硫黄化合物を含んでいる。これにより、正極21における溶媒の分解反応が抑制される。
【選択図】 図2
Description
本発明は、フィルム状の外装部材の内部に、正極および負極と共に電解質を備えた電池に関する。
近年、ノートブック型パーソナルコンピュータ,カメラ一体型VTR(Videotape Recorder;ビデオテープレコーダ)あるいは携帯電話などのポータブル電子機器が次々に出現し、その小型化および軽量化が図られている。それに伴い、携帯可能なポータブル電源として二次電池が脚光を浴び、更に高いエネルギー密度を得るための活発な研究が行われている。そのような中、高いエネルギー密度を有する二次電池として、リチウムイオン二次電池が提案され、実用化が始まっている。
従来、リチウムイオン二次電池では、イオン伝導を司る物質として非水溶媒にリチウム塩を溶解させた液状の電解質である電解液が用いられてきた。そのため、液漏れを防止するために外装部材として金属製の容器を用い、電池内部の気密性を厳重に確保する必要があった。しかし、外装部材に金属製の容器を用いると、薄くて大面積のシート型電池,薄くて小面積のカード型電池あるいは柔軟でより自由度の高い形状の電池などを作製することが極めて困難であった。
そこで、電解液に代えて、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状の電解質を用いた二次電池が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この電池では、液漏れの問題がないので、外装部材にラミネートフィルムなどを用いることができ、一層の小型化,軽量化および薄型化を図ることができ、かつ、形状の自由度を高くすることができる。
特開2001−283910号公報
しかしながら、外装部材にラミネートフィルムを使用すると、高温環境下において保存した際に、正極における溶媒の分解反応により、容量が低下してしまうと共に、ガスが発生して電池が膨れてしまうという問題があった。
また、近年ではラミネートフィルムなどを外装部材として用いた電池についても、液状の電解質を用いることが検討されているが、この場合には、容量の低下やガスの発生による膨れがより顕著に現れる。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、高温環境下で保存しても容量の低下を抑えつつ、電池の膨れを抑制することができる電池を提供することにある。
本発明による電池は、フィルム状の外装部材の内部に、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、電解質は、酸化電位が満充電時の正極の電位より低い硫黄化合物を含有するものである。
本発明の電池によれば、電解質に、酸化電位が満充電時の正極の電位より低い硫黄化合物を含有するようにしたので、充電時に硫黄化合物が正極において酸化分解し、硫黄が正極を被覆することにより、高温環境下で保存しても正極における溶媒の分解反応を抑制することができ、容量の低下を抑えつつ、電池の膨れを抑制することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る二次電池を分解して表すものである。この二次電池は、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池であり、正極端子11および負極端子12が取り付けられた巻回電極体20をフィルム状の外装部材30の内部に備えている。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る二次電池を分解して表すものである。この二次電池は、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池であり、正極端子11および負極端子12が取り付けられた巻回電極体20をフィルム状の外装部材30の内部に備えている。
正極端子11および負極端子12は、外装部材30の内部から外部に向かい例えば同一方向にそれぞれ導出されている。正極端子11および負極端子12は、例えば、アルミニウム(Al),銅(Cu),ニッケル(Ni)あるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
外装部材30は、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のラミネートフィルムにより構成されている。外装部材30は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回電極体20とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材30と正極端子11および負極端子12との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム31が挿入されている。密着フィルム31は、正極端子11および負極端子12に対して密着性を有する材料により構成され、例えば、正極端子11および負極端子12が上述した金属材料により構成される場合には、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されることが好ましい。
なお、外装部材30は、上述したラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム,ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
図2は、図1に示した巻回電極体20のII−II線に沿った断面構造を表すものである。巻回電極体20は、正極21と負極22とをセパレータ23および電解質24を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ25により保護されている。
正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aと、正極集電体21Aの両面に設けられた正極活物質層21Bとを有している。正極集電体21Aには、長手方向における一方の端部に正極活物質層21Bが設けられず露出している部分があり、この露出部分に正極端子11が取り付けられている。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、リチウム(Li)を吸蔵および放出することが可能な正極材料を含んで構成されている。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物、またはリチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物が好ましく、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くすることができるからである。複合酸化物としては、例えば、遷移金属元素として、コバルト(Co),ニッケルおよびマンガン(Mn)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。具体的には、例えば、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2 )、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LiNix Co1-x O2 (0<x<1))、あるいはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2 O4 )が挙げられる。リン酸化合物としては、例えば、遷移金属元素として鉄(Fe)を含むものが好ましく、リチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4 )あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-y Mny PO4 (0<y<1))などが挙げられる。
正極活物質層21Bは、また、例えば導電剤を含んでおり、必要に応じて更に結着剤を含んでいてもよい。導電剤としては、例えば、黒鉛,カーボンブラックあるいはケッチェンブラックなどの炭素材料が挙げられ、そのうちの1種または2種以上が混合して用いられる。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料あるいは導電性高分子材料などを用いるようにしてもよい。結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム,フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンゴムなどの合成ゴム、またはポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられ、そのうちの1種または2種以上が混合して用いられる。
負極22は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体22Aと、負極集電体22Aの両面に設けられた負極活物質層22Bとを有している。負極集電体22Aは、例えば、良好な電気化学的安定性、電気伝導性および機械的強度を有する銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。特に、銅箔は高い電気伝導性を有するので最も好ましい。
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて、例えば正極活物質層21Bと同様の結着剤を含んでいてもよい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、炭素材料,金属酸化物あるいは高分子化合物などが挙げられる。炭素材料としては、例えば、易黒鉛化炭素、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化炭素、あるいは(002)面の面間隔が0.340nm以下の黒鉛が挙げられる。より具体的には、熱分解炭素類,コークス類,グラファイト類,ガラス状炭素類,有機高分子化合物焼成体,炭素繊維あるいは活性炭などがある。このうち、コークス類には、ピッチコークス,ニードルコークスあるいは石油コークスなどがあり、有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子化合物を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。また、金属酸化物としては、酸化鉄,酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどが挙げられ、高分子化合物としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、また、リチウムと合金を形成可能な金属元素または半金属元素を構成元素として含む材料が挙げられる。具体的には、リチウムと合金を形成可能な金属元素の単体,合金,あるいは化合物、またはリチウムと合金を形成可能な半金属元素の単体,合金,あるいは化合物、またはこれらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
このような金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、スズ(Sn),鉛(Pb),アルミニウム,インジウム(In),ケイ素(Si),亜鉛(Zn),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),カドミウム(Cd),マグネシウム(Mg),ホウ素(B),ガリウム(Ga),ゲルマニウム(Ge),ヒ素(As),銀(Ag),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y)またはハフニウム(Hf)が挙げられる。中でも、長周期型周期表における14族の金属元素あるいは半金属元素が好ましく、特に好ましいのはケイ素あるいはスズである。ケイ素およびスズはリチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、エネルギー密度を高くすることができるからである。
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ,ニッケル,銅,鉄,コバルト,マンガン,亜鉛,インジウム,銀,チタン(Ti),ゲルマニウム,ビスマス,アンチモンおよびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素,ニッケル,銅,鉄,コバルト,マンガン,亜鉛,インジウム,銀,チタン,ゲルマニウム,ビスマス,アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
ケイ素の化合物あるいはスズの化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、ケイ素またはスズに加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
この負極活物質層22Bは、例えば、塗布により形成されたものでもよく、また、気相法,液相法および焼成法からなる群のうちの少なくとも1つの方法により形成されたものであってもよい。焼成法というのは、粒子状の負極活物質を必要に応じて結着剤あるいは溶剤などと混合して成形したのち、例えば結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。この場合、充放電に伴う負極活物質層22Bの膨張・収縮による破壊を抑制することができると共に、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとを一体化することができ、負極活物質層22Bにおける電子伝導性を向上させることができるので好ましい。また、結着剤および空隙などを低減または排除でき、負極22を薄膜化することもできるので好ましい。
この場合、負極活物質層22Bは、負極集電体22Aとの界面の少なくとも一部において負極集電体22Aと合金化していることが好ましい。具体的には、界面において負極集電体22Aの構成元素が負極活物質層22Bに、または負極活物質の構成元素が負極集電体22Aに、またはそれらが互いに拡散していることが好ましい。この合金化は、負極活物質層22Bを気相法,液相法あるいは焼成法により形成する際に同時に起こることが多いが、更に熱処理が施されることにより起こったものでもよい。
セパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜はショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。
電解質24は、電解液を高分子化合物に保持させたいわゆるゲル状の電解質である。ゲル状の電解質は高いイオン伝導率を得ることができると共に、漏液を防止することができるので好ましい。
電解液は、例えば電解質塩と、この電解質塩を溶解する溶媒とを含んでいる。電解質塩としては、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 、LiAsF6 、LiB(C6 H5 )4 、LiB(C2 O4 )2 、LiCl、あるいはLiBrなどのリチウム塩が挙げられる。電解質塩は、いずれか1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
中でも、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 およびLiAsF6 のうちのいずれか1種または2種以上を混合して用いるようにすれば、保存特性などの電池特性を向上させることができると共に、内部抵抗を低減させることができ、更に高い導電率を得ることができるので好ましく、LiPF6 と、LiBF4 ,LiClO4 およびLiAsF6 からなる群のうちの少なくとも1種とを混合して用いるようにすれば、更に好ましい。
溶媒としては、例えば、炭酸エチレン,炭酸プロピレン,炭酸ブチレンあるいは炭酸ビニレンなどの環状炭酸エステル、炭酸ジメチル,炭酸ジエチルあるいは炭酸エチルメチルなどの鎖状炭酸エステル、酢酸メチル,プロピオン酸メチルあるいは酪酸メチルなどのカルボン酸エステル、テトラヒドロフラン,2−メチルテトラヒドロフランあるいは1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、またはこれらの少なくとも一部の水素をハロゲンで置換したハロゲン化物が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、複数種を混合して用いてもよい。
中でも、炭酸エチレン,炭酸プロピレン,炭酸ビニレン,γ−ブチロラクトンあるいはγ−バレロラクトンを用いるようにすれば、高いイオン伝導性を得ることができるので好ましい。また、第3級カルボン酸エステルのハロゲン化物を用いるようにすれば、高温保存特性を向上させることができるので好ましい。第3級カルボン酸エステルのハロゲン化物としては、例えば、化1から化4に示した化合物が挙げられ、それらの2種以上を混合して用いてもよい。
電解液は、また、酸化電位が満充電時における正極21の電位よりも低い硫黄化合物を含有している。充電時に硫黄化合物が正極21において酸化分解し、硫黄が正極21を被覆することにより、高温環境下で保存しても正極21における溶媒の分解反応を抑制することができるからである。このような硫黄化合物としては、例えば、−SO2 CF2 −構造を有する物質が挙げられる。具体的には、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、または、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )2 )あるいはビスペンタフルオロエチルスルホニルイミドリチウム(LiN(C2 F5 SO2 )2 )などのLiN(Cm F2m+1SO2 )(Cn F2n+1SO2 )で表されるものが挙げられる。mおよびnは1以上の整数であり、同一でも異なっていてもよい。また、このような硫黄化合物としては、例えば、ジメチルスルフォキシドおよびその誘導体も挙げられる。この硫黄化合物は、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体、ポリプロピレンオキサイドあるいはポリメタクリニトリルを繰返し単位として含むもの、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンあるいはポリカーボネートが挙げられる。特に、電気化学的安定性の点からは、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体、あるいはポリエチレンオキサイドの構造を持つ高分子化合物を用いることが望ましい。電解液に対する高分子化合物の添加量は、両者の相溶性によっても異なるが、通常、電解液の5質量%〜50質量%程度が好ましい。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、例えば、正極集電体21Aに正極活物質層21Bを形成し正極21を作製する。正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質の粉末と炭素材料などの導電剤とポリフッ化ビニリデンなどの結着剤とを混合して正極合剤を調製したのち、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの分散媒に分散させて正極合剤スラリーとし、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し乾燥させ、圧縮成型することにより形成する。
また、例えば、負極集電体22Aに負極活物質層22Bを形成し負極22を作製する。負極活物質層22Bは、例えば、負極活物質の粉末とポリフッ化ビニリデンなどの結着剤とを混合して負極合剤を調製したのち、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの分散媒に分散させて負極合剤スラリーとし、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し乾燥させ、圧縮成型することにより形成する。
また、負極活物質層22Bは、例えば、負極集電体22Aに、気相法または液相法により、負極活物質を堆積させることにより形成するようにしてもよい。更に、粒子状の負極活物質を含む前駆層を負極集電体22Aに形成したのち、これを焼成する焼成法により形成するようにしてもよいし、気相法,液相法および焼成法のうちの2以上の方法を組み合わせて形成するようにしてもよい。この場合、負極活物質層22Bを形成したのちに、真空雰囲気下または非酸化性雰囲気下で熱処理を行うようにしてもよい。
なお、気相法としては、例えば、物理堆積法あるいは化学堆積法を用いることができ、具体的には、真空蒸着法,スパッタ法,イオンプレーティング法,レーザーアブレーション法,熱CVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法,プラズマCVD法あるいは溶射法等が利用可能である。液相法としては電解鍍金あるいは無電解鍍金等の公知の手法が利用可能である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法,反応焼成法あるいはホットプレス焼成法が利用可能である。
続いて、例えば、正極集電体21Aに正極端子11を取り付けると共に、正極活物質層21Bの上に電解質24を形成する。また、負極集電体22Aに負極端子12を取り付けると共に、負極活物質層22Bの上に電解質24を形成する。そののち、例えば、電解質24を形成した正極21と負極22とをセパレータ23を介して積層し、長手方向に巻回して最外周部に保護テープ25を接着し、巻回電極体20を形成する。
巻回電極体20を形成したのち、例えば、外装部材30の間に巻回電極体20を挟み込み、外装部材30の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極端子11および負極端子12と外装部材30との間には密着フィルム31を挿入する。これにより、図1および図2に示した二次電池が完成する。
また、次のようにして製造するようにしてもよい。まず上述したようにして正極21および負極22を作製し、正極端子11および負極端子12を取り付けたのち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ25を接着して、巻回電極体20の前駆体である巻回体を形成する。次いで、この巻回体を外装部材30の間に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材30の内部に収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料である重合性化合物と、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材30の内部に注入する。そののち、外装部材30の開口部を真空雰囲気下で熱融着し密閉する。次いで、熱を加えて重合性化合物を重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質24を形成し、図1および図2に示した二次電池を組み立てる。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが離脱し、電解質24を介して負極22に吸蔵される。一方、放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが離脱し、電解質24を介して正極21に吸蔵される。その際、電解質24には酸化電位が満充電時の正極21の電位より低い硫黄化合物が含まれているので、充電時に硫黄化合物が正極21において酸化分解し、硫黄が正極21を被覆する。よって、高温環境下であっても、正極21における溶媒の分解反応が抑制され、容量の低下が抑制されると共に、ガスの発生が抑制される。
このように本実施の形態では、電解質24に酸化電位が満充電時の正極21の電位より低い硫黄化合物を含有するようにしたので、高温環境下で保存しても正極21における溶媒の分解反応を抑制することができ、容量の低下を抑えつつ、電池の膨れを抑制することができる。
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態に係る二次電池は、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出による容量成分と、リチウムの析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和により表されるものである。この二次電池は、負極活物質層22Bの構成が異なることを除き、他は第1の実施の形態と同様の構成を有しており、同様にして製造することができる。したがって、図1および図2を参照し、対応する構成要素には同一の符号を付して同一の部分の説明は省略する。
本発明の第2の実施の形態に係る二次電池は、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出による容量成分と、リチウムの析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和により表されるものである。この二次電池は、負極活物質層22Bの構成が異なることを除き、他は第1の実施の形態と同様の構成を有しており、同様にして製造することができる。したがって、図1および図2を参照し、対応する構成要素には同一の符号を付して同一の部分の説明は省略する。
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出可能な1種または2種以上の負極材料を含んでおり、必要に応じて結着剤を含んでいてもよい。このような負極材料としては、第1の実施の形態と同様のものを用いることができるが、中でも、炭素材料を用いるようにすれば、優れたサイクル特性を得ることができるので好ましい。
このリチウムを吸蔵および放出可能な負極材料の量は、この負極材料による充電容量が正極21の充電容量よりも小さくなるように調節されている。これにより、この二次電池では、充電の過程において、開回路電圧(すなわち電池電圧)が過充電電圧よりも低い時点で負極22にリチウム金属が析出し始めるようになっている。
なお、過充電電圧というのは、電池が過充電状態になった時の開回路電圧を指し、例えば、日本蓄電池工業会(電池工業会)の定めた指針の一つである「リチウム二次電池安全性評価基準ガイドライン」(SBA G1101)に記載され定義される「完全充電」された電池の開回路電圧よりも高い電圧を指す。また換言すれば、各電池の公称容量を求める際に用いた充電方法、標準充電方法、もしくは推奨充電方法を用いて充電した後の開回路電圧よりも高い電圧を指す。例えば、開回路電圧が4.2Vの時に完全充電となる場合には、開回路電圧が0V以上4.2V以下の範囲内の一部においてリチウムを吸蔵および放出可能な負極材料の表面にリチウム金属が析出している。従って、この二次電池では、リチウムを吸蔵および放出可能な負極材料とリチウム金属との両方が負極活物質として機能し、リチウムを吸蔵および放出可能な負極材料はリチウム金属が析出する際の基材となっている。
この二次電池は、負極22にリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料を用いるという点では従来のリチウムイオン二次電池と同様であり、また、負極22にリチウム金属を析出させるという点では従来のリチウム金属二次電池と同様であるが、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料にリチウム金属を析出させるようにしたことにより、高いエネルギー密度を得ることができると共に、サイクル特性および急速充電特性を向上させることができるようになっている。
この二次電池では、充電を行うと、正極21からリチウムイオンが放出され、電解質24を介して、まず、負極22に含まれるリチウムを吸蔵および放出可能な負極材料に吸蔵される。更に充電を続けると、開回路電圧が過充電電圧よりも低い状態において、リチウムを吸蔵および放出可能な負極材料の表面にリチウム金属が析出し始める。そののち、充電を終了するまで負極22にはリチウム金属が析出し続ける。次いで、放電を行うと、まず、負極22に析出したリチウム金属がイオンとなって溶出し、電解質24を介して、正極21に吸蔵される。更に放電を続けると、負極22中のリチウムを吸蔵および放出可能な負極材料からリチウムイオンが放出され、電解質24を介して正極21に吸蔵される。その際、電解質24には酸化電位が満充電時の正極21の電位より低い硫黄化合物が含まれているので、この二次電池においても、硫黄化合物が正極21において酸化分解し、硫黄が正極21を被覆する。よって、高温環境下であっても、正極21における溶媒の分解反応が抑制される。
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態に係る二次電池は、電解質の構成が高分子化合物を含まない液状の電解液であり、この電解液がセパレータ23に含浸されていることを除き、他は第1または第2の実施の形態と同様の構成、作用および効果を有している。なお、電解液の構成は第1の実施の形態と同様である。
本発明の第3の実施の形態に係る二次電池は、電解質の構成が高分子化合物を含まない液状の電解液であり、この電解液がセパレータ23に含浸されていることを除き、他は第1または第2の実施の形態と同様の構成、作用および効果を有している。なお、電解液の構成は第1の実施の形態と同様である。
この二次電池は、例えば、電解質用組成物の代わりに電解液のみを注入すること除き、他は第1の実施の形態と同様にして製造することができる。
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1−1〜1−5)
負極22の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池を作製した。まず、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを、Li2 CO3 :CoCO3 =0.5:1のモル比で混合し、空気中において900℃で5時間焼成して、正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2 )を得た。次いで、得られたコバルト酸リチウム85質量部と、導電剤である黒鉛5質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して正極合剤を調製した。続いて、この正極合剤を分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとしたのち、厚み20μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体21Aに均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して、正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製した。そののち、正極21に正極端子11を取り付けた。
負極22の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池を作製した。まず、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを、Li2 CO3 :CoCO3 =0.5:1のモル比で混合し、空気中において900℃で5時間焼成して、正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2 )を得た。次いで、得られたコバルト酸リチウム85質量部と、導電剤である黒鉛5質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して正極合剤を調製した。続いて、この正極合剤を分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとしたのち、厚み20μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体21Aに均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して、正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製した。そののち、正極21に正極端子11を取り付けた。
また、粉砕した黒鉛粉末を負極活物質として用意し、この黒鉛粉末90質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して負極合剤を調製し、さらにこれを分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させ負極合剤スラリーとした。次いで、この負極合剤スラリーを厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体22Aの両面に均一に塗布し、乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成形して負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製した。続いて、負極22に負極端子12を取り付けた。その際、正極21と負極22との面積密度比を調整し、負極22にリチウムが析出しないようにした。
正極21および負極22を作製したのち、正極21および負極22を、厚み25μmの微孔性ポリエチレンフィルムよりなるセパレータ24を介して密着させ、長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ25を貼り付けることにより、巻回体を作製した。そののち、作製した巻回体を外装部材30の間に装填し、外装部材30の3辺を熱融着した。外装部材30には最外層から順に25μm厚のナイロンフィルムと40μm厚のアルミニウム箔と30μm厚のポリプロピレンフィルムとが積層されてなる防湿性のアルミラミネートフィルムを用いた。
次いで、炭酸エチレンと炭酸エチルメチルとを、炭酸エチレン:炭酸エチルメチル=3:7の質量比で混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を添加すると共に、硫黄化合物を添加して電解液を調製した。その際、実施例1−1,1−2では硫黄化合物としてLiCF3 SO3 を用い、実施例1−3,1−4ではLiN(CF3 SO2 )2 を用い、実施例1−5ではジメチルスルフォキシドを用いた。また、実施例1−1〜1−4ではLiPF6 とLiCF3 SO3 またはLiN(CF3 SO2 )2 との合計を1mol/kgとし、実施例1−1におけるLiCF3 SO3 の含有量は0.02mol/kg、実施例1−2におけるLiCF3 SO3 の含有量は0.05mol/kg、実施例1−3におけるLiN(CF3 SO2 )2 の含有量は0.1mol/kg、実施例1−4におけるLiN(CF3 SO2 )2 の含有量は0.2mol/kgとした。実施例1−5では、LiPF6 の含有量を1mol/kgとし、ジメチルスルホキシドの含有量を溶媒に対して5質量%とした。
続いて、これらの電解液95質量部に対して、重合性化合物溶液を5質量部の割合で混合し、電解質用組成物を作製した。その際、重合性化合物には、化5に示したトリメチロールプロパントリアクリレートと化6に示したポリエチレングリコールジアクリレート(nは平均9である)とをトリメチロールプロパントリアクリレート:ポリエチレングリコールジアクリレート=3:7の質量比で混合したものを用いた。
そののち、外装部材30の内部に電解質用組成物を注入し、外装部材30の残りの1辺を熱融着して、これをガラス板に挟んで75℃で30分間加熱し、重合性化合物を重合させることによりゲル状の電解質24を形成した。これにより、図1および図2に示した二次電池を得た。
実施例1−1〜1−5に対する比較例1−1として、硫黄化合物を添加せず、LiPF6 の含有量を1mol/kgとしたことを除き、他は実施例1−1〜1−5と同様にして二次電池を作製した。また、比較例1−2として、LiPF6 の含有量を1mol/kgとし、エチレンサルファイトを溶媒に対して5質量%の割合で添加したことを除き、他は実施例1−1〜1−5と同様にして二次電池を作製した。
作製した実施例1−1〜1−5および比較例1−1,1−2の二次電池について、高温保存前の容量、高温保存時の膨れ量および高温保存後の容量維持率を次のようにして調べた。
まず、880mAの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで定電流充電を行ったのち、4.2Vの定電圧で電流値が1mAに達するまで定電圧充電を行い、880mAの定電流で電池電圧が3.0Vに達するまで定電流放電を行った。このときの放電容量を高温保存前の容量とした。
次に、上述と同様の条件で、2サイクル目の充電を行ったのち、60℃の環境下で20日間保存した。このときの電池の厚みの変化量を高温保存時の膨れ量とした。
更に、上述と同様の条件で2サイクル目の放電を行い、このときの放電容量を求めた。高温保存後の容量維持率は、(高温保存後の放電容量/高温保存前の放電容量)×100(%)として求めた。これらの結果を表1に示す。
また、実施例1−1〜1−5および比較例1−1,1−2の二次電池について、保存後に解体し、正極活物質の表面を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)を用いて観察した。図3に実施例1−4のSEM写真を、図4に比較例1−1のSEM写真を代表して示すと共に、参考として図5に保存前の実施例1−4のSEM写真を示す。
更に、実施例1−1〜1−5および比較例1−2で添加した硫黄化合物、並びに実施例1−1〜1−5および比較例1−1,1−2で用いたリチウム塩LiPF6 の酸化電位を次のようにして調べた。
まず、LiPF6 、実施例1−1,1−2で用いたLiCF3 SO3 、および実施例1−3,1−4で用いたLiN(CF3 SO2 )2 については、炭酸エチレンと炭酸エチルメチルとを3:7の質量比で混合した溶媒に、LiPF6 、LiCF3 SO3 またはLiN(CF3 SO2 )2 を1mol/kg溶解させて電解液とした。また、実施例1−5で用いたジメチルスルフォキシドおよび比較例1−2で用いたエチレンサルファイトについては、ジメチルスルフォキシドまたはエチレンサルファイトと、炭酸エチルメチルとを、3:7の質量比で混合した溶媒に、LiPF6 を1mol/kg溶解させて電解液とした。次いで、作用極をアルミニウム板、参照極および対極をステンレス板にリチウム箔を圧着させたものとして、3極式セルを組んだ。そののち、各3極式セルについて、作用極電位を自然電位から貴の方向に掃引させ、酸化電流の流れ始めた対リチウム電位を測定した。
その結果、LiPF6 の酸化電位は5.5V、LiCF3 SO3 の酸化電位は3.9V、LiN(CF3 SO2 )2 の酸化電位は2.3V、ジメチルスルフォキシドの酸化電位は3.8V、エチレンサルファイトの酸化電位は5.5Vであった。本実施例では、満充電時の正極21の対リチウム電位が約4.5Vであるので、LiCF3 SO3 、LiN(CF3 SO2 )2 およびジメチルスルフォキシドの酸化電位は満充電時の正極21の電位よりも低く、エチレンサルファイトの酸化電位は満充電時の正極21の電位よりも高いことが分かった。
表1に示したように、実施例1−1〜1−5によれば、比較例1−1に比べて、高温保存時の膨れを小さくすることができ、さらに保存後の容量維持率を向上させることができた。また、この硫黄化合物は塩であっても有機物であってもその効果は変わらないことが明らかとなった。さらに、酸化電位が満充電時の正極21の電位より高い硫黄化合物を添加した比較例1−2では、比較例1−1よりも、高温時の膨れも大きく、容量劣化も大きかった。
また、図3に示したように、実施例1−4では正極活物質の表面に有機物は見られず、図5に示した保存前の状態と同様に、正極活物質の層構造が観察された。これに対して、図4に示したように、比較例1−1では正極活物質の表面がうっすらと有機物で覆われており、図5で見られるような層構造は観察されなかった。なお、実施例1−1〜1−3,1−5については図示しないが、実施例1−4と同様であった。すなわち、酸化電位が満充電時の正極21の電位より低い硫黄化合物を含有させることにより、正極活物質が被毒され、正極21における電解液の分解反応が抑制されたことが示唆された。
これらの結果から、電解質24に、酸化電位が満充電時の正極21の電位より低い硫黄化合物を添加するようにすれば、膨れを抑制することができると共に、高温保存特性を向上させることができることが分かった。
(実施例1−6〜1−8)
電解質塩としてLiPF6 に加えて、LiBF4 、LiClO4 、またはLiAsF6 を混合して用いたことを除き、他は実施例1−4と同様にして二次電池を作製した。その際LiPF6 の含有量は0.6mol/kgとし、他の電解質塩の含有量はそれぞれ、0.2mol/kgとした。
電解質塩としてLiPF6 に加えて、LiBF4 、LiClO4 、またはLiAsF6 を混合して用いたことを除き、他は実施例1−4と同様にして二次電池を作製した。その際LiPF6 の含有量は0.6mol/kgとし、他の電解質塩の含有量はそれぞれ、0.2mol/kgとした。
実施例1−6〜1−8に対する比較例1−3〜1−5として、電解液にLiN(CF3 SO2 )2 を添加せず、LiPF6 の含有量を0.8mol/kgとしたことを除き、他は実施例1−6〜1−8と同様にして二次電池を作製した。なお、比較例1−3は実施例1−6に対応し、比較例1−4は実施例1−7に対応し、比較例1−5は実施例1−8に対応している。
実施例1−6〜1−8および比較例1−3〜1−5の二次電池についても、実施例1−4と同様にして高温保存前の容量、高温保存時の膨れ量および高温保存後の容量維持率を調べた。その結果を表2に示す。
表2に示したように、実施例1−6〜1−8によれば、実施例1−4と同様に、比較例1−3〜1−5よりも高温保存時の膨れを小さくすることができ、保存後の容量維持率も向上させることができた。すなわち、電解質24に酸化電位が満充電時の正極21の電位より低い硫黄化合物を添加するようにすれば、他の電解質塩を用いても、その効果は変わらないことが分かった。
(実施例2−1〜2−5)
算術平均粗さ(Ra)が0.5μm、厚みが35μmの電解銅箔よりなる負極集電体22Bの上に蒸着法により厚み4μmのケイ素よりなる負極活物質層22Bを形成したことの除き、他は実施例1−1〜1−4と同様にして二次電池を作製した。その際、実施例2−1,2−2では硫黄化合物としてLiCF3 SO3 を用い、実施例2−3〜2−5ではLiN(CF3 SO2 )2 を用いた。また、LiPF6 とLiCF3 SO3 またはLiN(CF3 SO2 )2 との合計を1mol/kgとし、実施例2−1におけるLiCF3 SO3 の含有量は0.02mol/kg、実施例2−2におけるLiCF3 SO3 の含有量は0.05mol/kg、実施例2−3におけるLiN(CF3 SO2 )2 の含有量は0.1mol/kg、実施例2−4におけるLiN(CF3 SO2 )2 の含有量は0.2mol/kg、実施例2−5におけるLiN(CF3 SO2 )2 の含有量は0.5mol/kgとした。
算術平均粗さ(Ra)が0.5μm、厚みが35μmの電解銅箔よりなる負極集電体22Bの上に蒸着法により厚み4μmのケイ素よりなる負極活物質層22Bを形成したことの除き、他は実施例1−1〜1−4と同様にして二次電池を作製した。その際、実施例2−1,2−2では硫黄化合物としてLiCF3 SO3 を用い、実施例2−3〜2−5ではLiN(CF3 SO2 )2 を用いた。また、LiPF6 とLiCF3 SO3 またはLiN(CF3 SO2 )2 との合計を1mol/kgとし、実施例2−1におけるLiCF3 SO3 の含有量は0.02mol/kg、実施例2−2におけるLiCF3 SO3 の含有量は0.05mol/kg、実施例2−3におけるLiN(CF3 SO2 )2 の含有量は0.1mol/kg、実施例2−4におけるLiN(CF3 SO2 )2 の含有量は0.2mol/kg、実施例2−5におけるLiN(CF3 SO2 )2 の含有量は0.5mol/kgとした。
実施例2−1〜2−5に対する比較例2−1として、硫黄化合物を添加せず、LiPF6 の含有量を1mol/kgとしたことを除き、他は実施例2−1〜2−5と同様にして二次電池を作製した。
実施例2−1〜2−5および比較例2−1の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして高温保存前の容量、高温保存時の膨れ量および高温保存後の容量維持率を調べた。それらの結果を表3に示す。
表3に示したように、実施例2−1〜2−5によれば、実施例1−1〜1−4と同様に、比較例2−1よりも高温保存時の膨れを小さくすることができ、保存後の容量維持率も向上させることができた。すなわち、他の負極活物質を用いても、その効果は変わらないことが分かった。
(実施例2−6〜2−9)
溶媒として、炭酸エチレンと、炭酸エチルメチルと、第3級カルボン酸エステルのハロゲン化物とを、炭酸エチレン:炭酸エチルメチル:第3級カルボン酸エステルのハロゲン化物=3:3.5:3.5の質量比で混合したものを用いたことを除き、他は実施例2−5と同様にして二次電池を作製した。その際、第3級カルボン酸エステルのハロゲン化物としては、実施例2−6では化1に示した化合物を用い、実施例2−7では化2に示した化合物を用い、実施例2−8では化3に示した化合物を用い、実施例2−9では化4に示した化合物を用いた。
溶媒として、炭酸エチレンと、炭酸エチルメチルと、第3級カルボン酸エステルのハロゲン化物とを、炭酸エチレン:炭酸エチルメチル:第3級カルボン酸エステルのハロゲン化物=3:3.5:3.5の質量比で混合したものを用いたことを除き、他は実施例2−5と同様にして二次電池を作製した。その際、第3級カルボン酸エステルのハロゲン化物としては、実施例2−6では化1に示した化合物を用い、実施例2−7では化2に示した化合物を用い、実施例2−8では化3に示した化合物を用い、実施例2−9では化4に示した化合物を用いた。
実施例2−6〜2−9の二次電池についても、実施例2−5と同様にして高温保存前の容量、高温保存時の膨れ量および高温保存後の容量維持率を調べた。それらの結果を実施例2−5および比較例2−1の結果と共に表4に示す。
表4に示したように、第3級カルボン酸エステルのハロゲン化物を用いた実施例2−6〜2−9によれば、第3級カルボン酸エステルのハロゲン化物を含まない実施例2−5よりも高温保存時の膨れを小さくすることができ、保存後の容量維持率も向上させることができた。すなわち、第3級カルボン酸エステルのハロゲン化物を用いるようにすれば、膨れをより抑制することができると共に、高温保存特性をより向上させることができることが分かった。
(実施例3−1,3−2)
電解質24に用いる高分子化合物を変えたことを除き、他は実施例1−2または実施例1−4と同様にして二次電池を作製した。高分子化合物には、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体のうち重量平均分子量が70万のもの(A)と、重量平均分子量が31万のもの(B)とを(A):(B)=9:1の質量比で混合したものを用いた。共重合体におけるヘキサフルオロプロピレンの割合は7質量%とした。電解質24は、この高分子化合物と、電解液とを混合して正極21および負極22のそれぞれにバーコーターを用いて塗布することにより形成した。
電解質24に用いる高分子化合物を変えたことを除き、他は実施例1−2または実施例1−4と同様にして二次電池を作製した。高分子化合物には、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体のうち重量平均分子量が70万のもの(A)と、重量平均分子量が31万のもの(B)とを(A):(B)=9:1の質量比で混合したものを用いた。共重合体におけるヘキサフルオロプロピレンの割合は7質量%とした。電解質24は、この高分子化合物と、電解液とを混合して正極21および負極22のそれぞれにバーコーターを用いて塗布することにより形成した。
実施例3−1,3−2に対する比較例3−1として、硫黄化合物を添加せず、LiPF6 の含有量を1mol/kgとしたことを除き、他は実施例3−1,3−2と同様にして二次電池を作製した。
実施例3−1,3−2および比較例3−1の二次電池についても、実施例1−2,1−4と同様にして高温保存前の容量、高温保存時の膨れ量および高温保存後の容量維持率を調べた。それらの結果を表5に示す。
表5に示したように、実施例3−1,3−2によれば、実施例1−2,1−4と同様に、比較例3−1よりも高温保存時の膨れを小さくすることができ、保存後の容量維持率も向上させることができた。すなわち、他の高分子化合物を用いても、その効果は変わらないことが分かった。
(実施例4−1,4−2)
正極活物質として、コバルト酸リチウムに代えて、リン酸リチウム鉄(LiFePO4 )を用いたことを除き、他は実施例1−2または実施例1−4と同様にして二次電池を作製した。リン酸リチウム鉄は、シュウ酸鉄二水物(Fe2 CO4 ・2H2 O)とリン酸二水素アンモニウム(NH4 H2 PO4 )と炭酸リチウム(LiCO3 )とを、Fe2 CO4 ・2H2 O:NH4 H2 PO4 :LiCO3 =2:2:1のモル比で混合し、窒素雰囲気中において300℃で12時間仮焼成したのち、窒素雰囲気中で600℃で24時間焼成することにより合成した。
正極活物質として、コバルト酸リチウムに代えて、リン酸リチウム鉄(LiFePO4 )を用いたことを除き、他は実施例1−2または実施例1−4と同様にして二次電池を作製した。リン酸リチウム鉄は、シュウ酸鉄二水物(Fe2 CO4 ・2H2 O)とリン酸二水素アンモニウム(NH4 H2 PO4 )と炭酸リチウム(LiCO3 )とを、Fe2 CO4 ・2H2 O:NH4 H2 PO4 :LiCO3 =2:2:1のモル比で混合し、窒素雰囲気中において300℃で12時間仮焼成したのち、窒素雰囲気中で600℃で24時間焼成することにより合成した。
実施例4−1,4−2に対する比較例4−1として、硫黄化合物を添加せず、LiPF6 の含有量を1mol/kgとしたことを除き、他は実施例4−1,4−2と同様にして二次電池を作製した。
実施例4−1,4−2および比較例4−1の二次電池についても、実施例1−2,1−4と同様にして高温保存前の容量、高温保存時の膨れ量および高温保存後の容量維持率を調べた。それらの結果を表6に示す。
表6に示したように、実施例4−1,4−2によれば、実施例1−2,1−4と同様に、比較例4−1よりも高温保存時の膨れを小さくすることができ、保存後の容量維持率も向上させることができた。すなわち、他の正極活物質を用いても、その効果は変わらないことが分かった。
(実施例5−1,5−2)
正極21と負極22との面積密度比を調整し、負極22の容量が、リチウムの吸蔵および離脱による容量成分と、リチウムの析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和により表されるようにしたことを除き、他は実施例1−2または実施例1−4と同様にして二次電池を作製した。
正極21と負極22との面積密度比を調整し、負極22の容量が、リチウムの吸蔵および離脱による容量成分と、リチウムの析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和により表されるようにしたことを除き、他は実施例1−2または実施例1−4と同様にして二次電池を作製した。
実施例5−1,5−2に対する比較例5−1として、硫黄化合物を添加せず、LiPF6 の含有量を1mol/kgとしたことを除き、他は実施例5−1,5−2と同様にして二次電池を作製した。
実施例5−1,5−2および比較例5−1の二次電池についても、実施例1−2,1−4と同様にして高温保存前の容量、高温保存時の膨れ量および高温保存後の容量維持率を調べた。それらの結果を表7に示す。
表7に示したように、実施例5−1,5−2によれば、実施例1−2,1−4と同様に、比較例5−1よりも高温保存時の膨れを小さくすることができ、保存後の容量維持率も向上させることができた。すなわち、負極22の容量が、リチウムの吸蔵および離脱による容量成分と、リチウムの析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和により表される二次電池においても、同様の効果を得られることが分かった。
(実施例6−1〜6−3)
重合性化合物を混合せず、電解液をそのまま用いたことを除き、他は実施例1−1,1−2,1−4と同様にして二次電池を作製した。実施例6−1〜6−3に対する比較例6−1として、硫黄化合物を添加せず、LiPF6 の含有量を1mol/kgとしたことを除き、他は実施例6−1〜6−3と同様にして二次電池を作製した。
重合性化合物を混合せず、電解液をそのまま用いたことを除き、他は実施例1−1,1−2,1−4と同様にして二次電池を作製した。実施例6−1〜6−3に対する比較例6−1として、硫黄化合物を添加せず、LiPF6 の含有量を1mol/kgとしたことを除き、他は実施例6−1〜6−3と同様にして二次電池を作製した。
実施例6−1〜6−3および比較例6−1の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして高温保存前の容量、高温保存時の膨れ量および高温保存後の容量維持率を調べた。それらの結果を表8に示す。
表8に示したように、実施例6−1〜6−3によれば、実施例1−1〜1−4と同様に、比較例6−1よりも高温保存時の膨れを小さくすることができ、保存後の容量維持率も向上させることができた。すなわち、高分子化合物に保持させずに電解液をそのまま用いる場合におても、同様の効果を得られることが分かった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの長周期型周期表における他の1族の元素、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などの長周期型周期表における2族の元素、またはアルミニウムなどの他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。
また、上記実施の形態および実施例では、電解液の保持体として高分子化合物を用いる場合について説明したが、保持体にイオン伝導性無機化合物または高分子化合物とイオン伝導性無機化合物との混合物を用いるようにしてもよい。イオン伝導性無機化合物としては、例えば、窒化リチウム,ヨウ化リチウムあるいは水酸化リチウムの多結晶、ヨウ化リチウムと三酸化二クロムとの混合物、またはヨウ化リチウムと硫化リチウムと亜硫化二リンとの混合物などを含むものが挙げられる。
更に、上記実施の形態および実施例では、二次電池の構成について一例を挙げて説明したが、本発明は他の構成を有する電池についても適用することができる。例えば、上記実施の形態および実施例では、巻回ラミネート型の二次電池について説明したが、単層ラミネート型または積層ラミネート型についても同様に適用することができる。また、二次電池に限らず、一次電池についても適用することができる。
11…正極端子、12…負極端子、20…巻回電極体、21…正極、21A…正極集電体、21B…正極活物質層、22…負極、22A…負極集電体、22B…負極活物質層、23…セパレータ、24…電解質、25…保護テープ、30…外装部材、31…密着フィルム。
Claims (11)
- フィルム状の外装部材の内部に、正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記電解質は、酸化電位が満充電時の正極の電位よりも低い硫黄化合物を含有することを特徴とする電池。 - 前記硫黄化合物は、−SO2 CF2 −構造を有する物質を含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
- 前記硫黄化合物は、ジメチルスルフォキシドおよびその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
- 前記電解質は、電解質塩として、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 、およびLiAsF6 からなる群のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1記載の電池。
- 前記電解質は、高分子化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の電池。
- 前記電解質は、第3級カルボン酸エステルのハロゲン化物を含有することを特徴とする請求項1記載の電池。
- 前記正極は、リチウム(Li)と遷移金属元素とを含む複合酸化物、およびリチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1記載の電池。
- 前記負極は、炭素材料を含有することを特徴とする請求項1記載の電池。
- 前記負極の容量は、リチウムの吸蔵および放出による容量成分と、リチウムの析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和により表されることを特徴とする請求項1記載の電池。
- 前記負極は、構成元素として、ケイ素(Si)およびスズ(Sn)のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
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