JP3813245B2 - バッグインボックス用袋体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
柔軟な材質からなる袋体に液体を充填し、段ボール等に収納して流通、保存、使用するバッグインボックスの前記袋体の材質に関する。
【0002】
【従来の技術】
図2はバッグインボックスを示す概念図であって、ボックスPのフラップを開いた状態を示す。図3はヒートシールされた袋体の部分拡大図である。
バッグインボックスは、ミネラルウォーター、食酢、清酒、みりんや味液、醤油又はソース等の飲料、調味料などの業務用の容器として、又、純水、現像液や定着液、液体化学薬品など試薬や工業用液体容器として用いられ、その容量サイズとしては5〜20リットル程度の容量サイズが主である。
そして、前記飲料、調味料などの業務用の容器としてのバッグインボックスは、内容物の風味を重視する前記飲料用または調味料等の包装容器として用いられるものであり、その袋体Bは2枚以上のフィルムを袋体を形成するための周縁部シールSおよびグロメットGを取り付けるためのシール部以外の部位は相互に接着していない、いわゆる多重袋である。 前記多重袋とするフィルムには、単体フィルム、複合フィルム共に用いられるが、その最内フィルムとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVA と称する) 、低密度ポリエチレン(以下LDPEと称する) 中密度ポリエチレン(以下、MDPEと称する) 、直鎖状低密度ポリエチレン(以下LLDPE と称する)などの単層フィルムにより構成されているケースが殆どであった。
例えば、具体的な2重袋の材質構成の例をあげれば、
例1 (外袋) ON/DL/LDPE 、 (内袋) LDPE、
例2 (外袋) ON/LDPE/AL/LDPE/LLDPE、 (内袋) LLDPE 、
等の組み合わせで使用されている。
{略号は、ON: 2軸延伸ナイロンフィルム、DL:ドライラミネーション、AL:アルミ箔}。
【0003】
通常用いられるLDPEフィルムは、製膜適性、熱接着性の良さからバッグインボックスの最内フィルムとして多用されてきたが、屈曲によるピンホール発生が、前記LDPEよりも少ない材質として、前記EVA やLLDPE 等の材質のフィルムを用いることがある。
LDPEに代えてEVA やLLDPE を用いることにより、耐屈曲性は向上し、ピンホールの発生は押さえられるが、LDPEを含めこれらの材質に起因する要素により内容物の味覚に悪い影響を及ぼすことがある。例えば、樹脂臭そのものが内容物に移行したり、内容物中の成分の吸着による味覚の劣化を起こすことがある。
また、これらの樹脂は、低温度領域でヒートシール可能であるが、反面、加熱充填される内容物の熱により、最内フィルム、中間フィルム、外面フィルム間で融着を起こしてしまうことがある。すなわち、2重袋、3重袋のフィルム同士が熱融着をおこし、単層化してしまって、そのために該熱融着部のフィルムの剛度があがり、輸送時の振動等による屈曲により、ピンホールを発生しやすくなる。
この結果漏れ事故の原因となることがあった。さらに、LDPEは比較的低温で溶融する樹脂であるが、製袋におけるヒートシールバーHSによる加圧加熱の際に、シール熱接着部Hの厚みが薄くなり、特に、最内フィルムの該熱融着部の端部に近い部分が痩せる現象を示すことがある(図3)。この部分をシール痩せDと称し、バッグインボックス容器として強い衝撃を受けたときに、前記シール痩せ部分Dにおいて、断裂し、大きな液漏れとなることがあった。そのために、製袋の工程においては、シール状態に注意して、とくにその温度範囲の狭い作業条件で製袋していた。
【0004】
そこで、前記味覚の劣化や加熱充填によるフィルム間の熱接着対策として、中密度ポリエチレン (MDPE) のフィルムを最内フィルムとすることにより、前記の課題は解決することができるが、フィルムの剛度が大きくなりすぎて、耐屈曲に弱いのでピンホールの発生があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
優れた柔軟性、低温条件下における強靱性などを損なわず、かつ、加熱充填によるフィルム間の融着を引き起こすことのない最内フィルムを有するバッグインボックス用袋体の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決する手段】
【請求項1】
バッグインボックス用袋体であって、前記袋体が2枚以上のフィルムから構成された多重袋において、前記多重袋の最内フィルムがシングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体を共押出ししてなる3層以上の多層フィルムであり、前記3層以上の多層フィルムが、少なくとも最外層、中間層、最内層からなる共押出しフィルムであって、前記中間層の樹脂の密度が、前記最外層、最内層の樹脂の密度よりも低い密度を有する樹脂であること、また、前記中間層の厚さの割合が前記多層フィルムの全厚さの50〜90%であることを含む。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1(1−1)は本発明によるバッグインボックス用袋体の平面図、(1−2)は(1−1)のX−Xの断面図、(1−3)は(1−2)のY部分の断面拡大図、図2はバッグインボックスの概念図、また、図3はシール部の断面拡大図である。
バッグインボックス用袋体Bは、グロメットGのフランジ部および袋体シール部Sのみが接着されている、いわゆる2重袋または3重袋であり、最外装として段ボールやプラスチック製のボックスPの中に収納して用いられる(図2)。前記袋体は、内容物Kが液体であるために、充填後の輸送および保存等の流通段階、内容物の取り出し、残液保存等の使用段階を終えるまで、漏れる心配のないことが要求される。
また、本発明において対象とする飲料等の内容物を充填する袋体としては、前記内容物の味覚を損なわないことが要求される。さらに,前記袋体に用いられるフィルムは、その製膜、製袋等の工程における安定した作業の可能な材質であることが必要である。
本発明は、前記の多くの課題に対応するために、前記2重袋、3重袋の最内フィルムに着目し、前記最内フィルムFLがシングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体(S-PE)を共押出ししてなる3層以上の多層フィルムとした。
また、前記3層以上の多層フィルムが、最外層3、1層もしくは多層からなる中間層2、最内層1からなる共押出しフィルムであって、前記中間層2の樹脂の密度が、前記最外層3、最内層1の樹脂の密度よりも低い密度を有する樹脂とした。具体的には前記最外層3、最内層1として用いるS-PEの密度としては、0.910 〜0.965 、また、前記中間層2として用いるS-PEの密度は0.890 〜0.920 の範囲内で選択すればよいが、中間層のS-PEが最外層、最内層のS-PEよりも低いS-PEを用いることにより、バッグインボックス用袋体として柔軟性を持たせるとともに、LDPEやLLDPE を用いると、低分子量成分が最内層を通して、内容物中に溶出し、味覚を低下させることがあるので、前記のような低分子量成分を含有しないS-PEとするのである。また、密度が0.890 〜0.920 と低いので、柔軟性もあり、振動等による前記袋体の損傷を防止する効果もある。
また、前記中間層2の厚さの割合が前記最内フィルムの全厚さの50〜90%であるバッグインボックス用袋体とした。
本発明においては、ポリエチレン及びS-PEの密度とその表現は、概ね次の通りである。
低密度 0.890 〜0.925
中密度 0.926 〜0.940
高密度 0.941 〜0.965
【0008】
LLDPE、LLDPE 、MDPEは、チルド温度以下の低温条件において柔軟性等の物性が劣化する。特にMDPEは密度が高く、前記耐熱性は備えているものの、剛性があるために耐ピンホール性、突刺適性などに劣り、これらの物性は低温条件下において更に低下する。これらの材料を最内フィルムとした場合、輸送時の振動によって、容易にピンホールが発生したり、寒冷地での作業時にわずかな衝撃によって破袋を起こすことがあった。
本発明においては、前記最内フィルムを3層以上の共押出多層フィルムとし、その中間層に低密度のS-PEを用い、該中間層の厚さを前記最内フィルムの厚さの50〜90%とすることによって、前記低温条件での柔軟性を確保することとした。
また、前記中間層は、本発明の課題に解決に関して支障が泣ければ、最外層、最内層の樹脂よりも密度が低い樹脂の範囲において2層以上の多層構成であってもよい。
低温条件下での柔軟性と、優れた突刺強度、衝撃強度を付与するために、密度の低いS-PEの中間層(の厚み)をできる限り厚くすることが望ましい。
前記中間層の特性を維持させ、バッグインボックス用袋体の袋体として適性なシール、外面フィルム等とがブロッキングしないように前記最外層、最内層に前記中間層のS-PEの密度よりも高い密度のS-PEを積層(共押出法により)した。
【0009】
従来、バッグインボックス用袋体の 最内フィルムはLDPE、LLDPE 等の単層フィルムとしていたが、これらの材質の最内フィルムであると、内容物をホットパック(加熱充填)することにより最内フィルムと中間フィルムとの間でフィルム同士が熱融着(ブロッキング)を起こすことがあった。多重袋のフィルム間でブロッキングすると、フィルムの剛性が増大し、前記ブロッキング部(熱融着部)への応力集中などにより、輸送時の振動などによって特定の部位のフィルムが屈曲することによってピンホールが発生し、その結果液漏れの原因になるケースがあった。
本発明においては、最内フィルムの最外層を構成する樹脂に、中間層より密度の高いS-PEを用いることによって、加熱充填等によるフィルム間のブロッキングをふせぐことができた。前記最外層に用いる中間層2よりも密度の高いS-PEの厚さは、前記ブロッキングを防ぐ事ができればよい。
また、最内フィルムをLDPE、LLDPE 等の単層とした場合には、製袋時ヒートシールバーによる加熱加圧の際にシール痩せ現象を起こす場合がある。前記シール痩せはLDPEやLLDPE のように低温で溶融する樹脂を使用した場合に起こる現象であり、このシール痩せとなったバッグインボックス用袋体Bに強い衝撃が加わった時に、シール際で根切れ、破袋などの事故が起こることがあった。
本発明の最内フィルムFLは、最内層1に中間層2よりも密度の高いS-PEを用いているために、中間層2の低密度のS-PEがヒートシール時に溶融して過剰の流動性を起こすことなく、シール痩せの発生を制御する。そのために衝撃による破袋等の減少に効果がある。前記最内層に用いる中間層2よりも密度の高いS-PEの厚さは、バッグインボックス用袋体として使用する際に適正なヒートシール強度が得られ、前記シール痩せDを起こさない範囲であれば成るべく薄い膜であればよい。
また、本発明の最内フィルムFLを共押出しフィルムとし、該共押出しフィルムの外側に、ラミネート法またはコーティング法により他のフィルムを積層させることも考えられるが、本発明の意図を妨げない範囲で実施することは可能である。
【0010】
以上説明したように、バッグインボックス用袋体の最内フィルムFLを低密度のS-PEを中間層とし、最外層、最内層に前記中間層のS-PEよりも密度の高いS-PEとすることによって、前記袋体を製袋する際のグロメットGを取り付けるるための孔明け(パンチング)工程において、フィルムの剛度があるため、安定した抜き工程となるメリットがあり、かつ、フィルムの表面の滑りも、より低密度のS-PEまたはPEと比較して良好である。
【0011】
LDPEやLLDPE 等の単層フィルムを最内フィルムとして用いると、これらのフィルムの中に含有する低分子量成分に起因する樹脂臭が内容物に移行したり、また逆に内容物のなかの特定の成分を吸着してしまうことがあった。
その結果、特に味覚風味が重要である内容物に対して、官能的に悪影響を及ぼす場合がある。
S-PEはLDPE、LLDPE 等と比較して分子量が均一であり、特に低分子量成分の含有が少ないために、樹脂臭いが少なくて、且つ内容物成分の吸着も比較的少ない。そのために、内容物の味覚の劣化が少なく、微妙な風味を重視する内容物の輸送、保存に適した接液用材料として好適に用いられる。
【0012】
本発明のバッグインボックス用袋体の最内フィルムの構成を2種類以上のS-PEの共押出による3層以上の多層フィルムとし、前記多層フィルムの中間層の厚さが、前記課題の解決に大きく影響することが、種々の実験により明らかになった。本発明における前記中間層の厚さの割合は前記最内フィルムFLの全厚さに対して50〜90%のとする。前記中間層の厚さの割合が前記最内フィルムFLの全厚さに対して50%未満であると、バッグインボックス用袋体として必要な柔軟性に劣るフィルムとなり、また、前記柔軟性を重視して、前記同様、中間層の厚さの割合が前記最内フィルムFLの全厚さに対して90%を超えると、前記シール痩せ防止効果がなくなり、また、内容物のホットパックによるフィルム間の融着を起こす危険が生ずる。柔軟性を確保した最内フィルムFLとしては、前記中間層を出来るだけ厚くする方がよいが、前記シール痩せや前記ブロッキング対策としての最内層、最外層の厚さは、適正範囲において最小の厚みとする。
【0013】
【実施例】
外面FNフィルムをKON15/DL/LLDPE60のバリアー性を有する複合フィルムとし、最内フィルムFLを80μmの(内袋)フィルムとした場合に、最内フィルムとして次の6種類を用いた6種のバッグインボックス用袋体を作成した。
(材質)
実施例1 S-PE(H) /S-PE(L) /S-PE(M) 厚み比 1:18:1 (中間層90%)
実施例2 〃 厚み比 1:8:1 ( 中間層80%)
実施例3 〃 厚み比 1:3:1 ( 中間層60%)
実施例4 〃 厚み比 1:1:1 ( 中間層33%)
比較例1 LLDPE 単層
比較例2 MDPE 単層
使用した素材は次の通りである。
S-PE(H) : ダウケミカル AFFINITY HF1030(MI 2.5 D 0.935)
S-PE(L) : ダウケミカル AFFINITY FW1650(MI 3.0 D 0.902)
S-PE(M) : ダウケミカル AFFINITY PL1845(MI 3.5 D 0.915)
LLDPE : 三菱化学 SF240(MI 2.0 D 0.920)
MDPE : 三菱化学 SF941(MI 2.0 D 0.936)
【0014】
(耐熱性、カット性)
耐熱性は所定の温度に設定した2枚重ねの試験片に荷重をかけて1時間放置する。荷重は10×10cmの鉄製プレート(300g)の上に700gのおもりを乗せ、全体荷重が1Kg(10g/m2)となるようにする。加熱後、ブロッキング強度をテンシロン引張試験機で測定する。
また、カット性はエルメンドルフ引裂試験機により測定した(JIS K7128)。
Figure 0003813245
【0015】
(耐屈曲ピンホール性)
ゲルボフレックステスターにて、−10℃の温度条件において5000回の屈曲を与え、その結果300 ×210mm の面積の中に発生したピンホールの数をカウントした。但し。測定回数は各4回とし、そのなかの最大値を示した。
Figure 0003813245
(結果)
上記の各テスト項目による評価として、最内フィルムの3層構成の中間層の厚み比が50〜90%の範囲のものが、安定した特性を示し、バッグインボックス用袋体として好ましく用いられることを見いだした。
【0016】
【発明の効果】
本発明のバッグインボックス用袋体の最内フィルムFLをS-PEを共押出ししてなる3層以上の多層フィルムとしたために、従来用いられていたLDPEやLLDPE のような低分子量成分の溶出がなく、内容物の味覚保持に効果があり、さらに、前記多層フィルムの中間層のS-PEを最外層、最内層のS-PEよりも低い密度のものとし、該中間層の層厚さの比が前記最内フィルムFLの総厚さの50〜90%としたことで、バッグインボックス用袋体としての柔軟性が確保され、また、適度の厚みに設計した高密度のS-PEによる表面層によって、フィルムを製膜する時の巻取でのブロッキングを防止でき、さらに、バッグインボックス用袋体の製袋時のヒートシールにおいて、シール痩せを少なくすることにより、その破袋強度を増し、内容物のホットパック時の最内フィルムの外面と中間フィルム等とのブロッキングが防止でき、フィルムに適度のコシを与え、良好な加工適性、充填適性を付与することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるバッグインボックス用袋体の平面図及び部分断面拡大図
【図2】バッグインボックスの概念図
【図3】袋体のシール部の拡大断面図
【符号の説明】
P ボックス
B 袋体
S 袋体シール部
G グロメット
K 内容物
HS ヒートシールバー
H 熱融着部
D シール痩せ部
FL 最内フィルム
FM 中間フィルム
FN 外面フィルム
1 最内フィルムの最内層
2 最内フィルムの中間層
3 最内フィルムの最外層

Claims (1)

  1. バッグインボックス用袋体であって、前記袋体が少なくとも2枚以上のフィルムから構成された多重袋において、前記多重袋の最内フィルムをシングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体からなる最外層、最内層、中間層からなる3層以上の共押出しフィルムで構成し、その場合において、中間層の樹脂の密度が、前記最外層、最内層の樹脂の密度よりも低いこと、かつ、前記中間層の厚さの割合が前記共押出しフィルムの全厚さの50〜90%であることを特徴とするバッグインボックス用袋体。
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