JP7316819B2 - 包装材料および包装体 - Google Patents
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Description
従来、包装材料には内容物の保護という観点から、高ヒートシール強度、耐圧強度、衝撃強度などが求められてきた。一方、近年ではユニバーサルデザイン化の中で包装材料に対しても消費者への配慮が求められている。例えば、内容物を加熱調理してから開封するレトルト食品については、開封時の直線カット性などが求められている。
包装材料に、ある程度の直線カット性を持たせるために、ベースフィルムとして、易引裂き性を有する二軸延伸フィルムを用いることが知られている。
直線カット性をさらに向上するため、例えば3層共押出のシーラントフィルムの中間層に環状オレフィン系樹脂を用いる方法が提案されている(特許文献1参照)。
ベースフィルムに易引裂き性の二軸延伸フィルムを用いる方法では、引裂きの際にシーラントフィルムにおいて樹脂の粘りによる伸びが発生する。このため、ベースフィルムとシーラントフィルムのデラミネーションによる引裂き阻害が発生したり、股裂けが大きくなったりする。「股裂け」とは、包装袋を構成する重ね合わされた複数のシートが同時に引き裂かれる際に、互いの切り口(引裂き線)にずれが生じる現象を表す。
特許文献1の易引裂性多層シーラントフィルムは、直鎖状ポリエチレン系樹脂および環状オレフィン系樹脂を含有する中間層を、融点が130℃以下のポリプロピレン系樹脂を主成分とする外層および内層で挟んだ3層構造からなる。特許文献1には、この易引裂性多層シーラントフィルムは、流れ方向および幅方向ともに高い直線カット性を有することが記載されている。
しかしながら、特許文献1の技術によれば、易引裂性多層シーラントフィルム自体が外部からの応力によって破断しやすくなる。特に、易引裂性多層シーラントフィルムを含む包装材料のヒートシール強度測定を行うと、ヒートシール部が破壊するよりも低い負荷で、ヒートシール部のエッジにおける易引裂性多層シーラントフィルムから破断が進行する。この結果、包装材が破断してしまう。このように、特許文献1に記載の技術は、包装材料に必要な直線カット性とヒートシール強度とを両立できない。
この理由は、中間層に用いられた環状オレフィン系樹脂の柔軟性が低いためであると考えられる。
前記ポリオレフィン共重合体は、プロピレン-エチレンブロック共重合体を含有する。
このとき、二軸延伸樹脂フィルム上に設けられたバリア層上に、さらに中間樹脂層を有してもよい。
図1は、本発明の実施形態の包装体の一例を示す模式的な正面図である。図2は、本発明の実施形態の包装袋の一例を示す模式的な正面図である。図3は、本発明の実施形態の包装材料の一例を示す模式的な断面図である。
図1に示す一例では、包装体3は、互いに重ね合わされた2枚のシート1a(包装材料)が、それぞれの外縁部でヒートシールされた平袋状である。図1では、他のシート1aは図示裏側に配置されている。シート1aの詳細構成については後述する。
包装体3の正面視形状は、一例として、略矩形状である。このため、包装体3における四辺の外縁部には、ヒートシール部1b、1cが形成されている。ヒートシール部1bは、包装体3の各長辺部に形成されている。ヒートシール部1cは、包装体3の各短辺部に形成されている。
ノッチ5Aは、ヒートシール部1bの厚さ方向に貫通する切り欠き、孔、または切れ目である。ノッチ5Aの形状は、開封を容易化できれば特に限定されない。例えば、ノッチ5Aは、V字状切り欠き、U字状切り欠き、線状の切れ目、ミシン目状の貫通孔などであってもよい。
なお、開封を容易にするために、ノッチ5Aに代えて、厚さ方向に貫通しない脆弱部が形成されてもよい。脆弱部の例としては、例えば、ハーフカット線、微細孔などが挙げられる。
ノッチ5Bの構成は、ノッチ5Aとして好適な構成と同様な構成が用いられる。ノッチ5Aの場合と同様、ノッチ5Bに代えて、厚さ方向に貫通しない脆弱部が形成されてもよい。
本実施形態では、包装袋1は、図2に示すような正面視矩形状の平袋である。
包装袋1では、表側のシート1aと重なり合う図示略の裏側のシート1aとが、長辺方向における一端を除く三方の外縁部においてヒートシールされている。すなわち、包装袋1では、上述した図1の図示上側のヒートシール部1cに代えて、開口部1dが形成されている。包装袋1において、開口部1dを除く、長辺部および短辺部には、上述したヒートシール部1cと、一対のヒートシール部1bと、が形成されている。
ただし、後述する内容物2が収容可能であれば、包装袋1の種類は平袋には限定されない。例えば、包装袋1は、ガセット袋、スタンディングパウチ、ピロー袋などであってもよい。このような各種形状の包装袋1を形成するためには、包装材料のシートは2枚には限定されない。
内容物2の具体例としては、例えば、レトルト食品、飲料、ペットフードなどが挙げられる。
図3に示すように、積層フィルム4は、第1積層体4A(ベースフィルム層)、接着剤層13、および第2積層体4B(積層体)、を備える。第1積層体4Aと、接着剤層13、および第2積層体4Bは、この順に積層されている。
第1積層体4Aは、基材層として、少なくとも1層の二軸延伸樹脂フィルムを含む。第1積層体4Aは、基材層の他にも、例えば、バリア層、印刷層、接着剤層などの適宜の層状部を有していてもよい。
図3に示す例では、第1積層体4Aは、基材層10およびバリア層12(蒸着層)を有する。
例えば、基材層10としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルム、ONy(延伸ナイロン)フィルムなどが用いられてもよい。基材層10が他の樹脂層を有する場合、上述のフィルムのうちの2枚以上が組み合わせられてもよい。この場合は、PETフィルムおよびONyフィルムを含む組み合わせがより好ましい。他の例として、未延伸フィルムを貼り合わせたり、二軸延伸フィルム上に溶融した樹脂で層を形成したりしてもよい。
バリア層12の構成は、バリア対象の気体の透過を低減できれば、特に限定されない。例えば、バリア層12は、金属または金属酸化物(無機酸化物)を蒸着して形成できる。金属としてはアルミニウムを、金属酸化物としてはシリカ、アルミナ等をそれぞれ例示できる。金属酸化物層を有するバリア層12は、アルミニウム等の酸化していない金属を使用するバリア層よりも廃棄時における環境負荷を低く抑えつつ、十分なガスバリア性を得ることができ、電子レンジによる加熱も可能になる。
基材層10とバリア層12との密着性を高めるために、基材層にプラズマ処理を施したり、基材層10とバリア層12との間に密着層を形成したりしてもよい。
バリア層12として、例えば、PET、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ONy、OPPなどの樹脂基材(基材層)上にバリア機能を発揮する層を設けたバリアフィルムが用いられてもよい。樹脂基材として二軸延伸フィルムが用いられる場合、このバリアフィルムは基材層10およびバリア層12を兼ねることができる。
バリア層12において、金属酸化物層上にさらに被覆層が設けられてもよい。この場合、ガスバリア性が向上する。金属酸化物層が被覆層で被覆されると、例えば、バリア層12に印刷層を積層させる場合に、被覆層を介して印刷層との密着性を向上することができる。被覆層としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)等の水溶性高分子膜が用いられてもよい。被覆層としては、珪素、アルミニウムなどの酸化物と、上述の水溶性高分子膜と、を含む有機無機ハイブリッド膜等が用いられてもよい。
図4に示す変形例の第1積層体4Cのように、バリア層12上にさらに中間樹脂層17を設けて、製造される積層フィルムの突き刺し強度を向上させてもよい。例えば基材層10がPETである場合、突き刺し耐性の高いナイロンフィルムが中間樹脂層17として好適である。ナイロンフィルムで中間樹脂層17を形成する場合は、バリア層12と中間樹脂層17との間に、不図示の接着層が存在する。
第2積層体4Bは、ポリオレフィン共重合体を主成分とする2層以上の樹脂層からなる。
本実施形態では、第2積層体4Bは、易引裂き層14(樹脂層)、中間層15(樹脂層)、およびシーラント層16(樹脂層)を備える。易引裂き層14、中間層15、およびシーラント層16は、接着表面4cから第2表面4bに向かって、この順に積層している。接着表面4cは、第2積層体4Bの厚さ方向において、第2表面4bと反対側の表面である。接着表面4cは、接着剤層13に密着している。
ベース樹脂には、ポリオレフィン共重合体以外の樹脂材料が含有されてもよい。
環状オレフィン系樹脂の種類は、直線カット性が向上できれば、特に限定されない。環状オレフィン系樹脂の例としては、ノルボルネン-エチレン共重合体(COC)、ノボルネン系単量体の開環重合体(COP)、COPおよびCOCの水素添加物などが挙げられる。
易引裂き層14における環状オレフィン系樹脂の含有量は、例えば、ベース樹脂100質量部に対して、20質量部以上70質量部以下であってもよい。易引裂き層14における環状オレフィン系樹脂の含有量は、例えば、ベース樹脂100質量部に対して、20質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。
易引裂き層14には、必要に応じて、環状オレフィン系樹脂以外に、適宜の添加剤が含有されてもよい。易引裂き層14に含有可能な添加剤の例としては、例えば、顔料、防雲剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。例えば、顔料の例としては、酸化チタンなどが挙げられる。易引裂き層14に酸化チタンが含有される場合、積層フィルム4の遮光性が向上する。
易引裂き層14は、接着表面4cにおいて、接着剤層13のみを間に挟んで第1積層体4Aと対向した状態で、第1積層体4Aと接合されている。
中間層15は、単層でもよいし、多層でもよい。例えば、積層フィルム4が5層構成の場合において、中間層15は、例えば、ベース樹脂の種類、ベース樹脂の組成、添加剤の含有量などが異なる2層が互いに積層されていてもよい。
中間層15は、ポリオレフィン共重合体を主成分とするベース樹脂に、必要に応じて、適宜の樹脂材料、添加剤などが含有されて形成されている。
中間層15におけるベース樹脂は、易引裂き層14におけるベース樹脂に好適な樹脂材料と同様な樹脂材料で構成される。中間層15におけるベース樹脂は、易引裂き層14におけるベース樹脂と同一種類でもよいし、異なる種類であってもよい。
ただし、中間層15に含有される樹脂材料には、環状オレフィン系樹脂は含まれない。中間層15に含有可能な添加剤の例としては、易引裂き層14に含有可能な例として上述された添加剤が挙げられる。
ポリオレフィン共重合体を主成分とするベース樹脂は、柔軟性および伸び性が高いため、シール強度にも優れている。
シーラント層16は、ポリオレフィン共重合体を主成分とするベース樹脂によって形成されている。シーラント層16におけるベース樹脂は、中間層15におけるベース樹脂に好適な樹脂材料と同様な樹脂材料で構成される。このため、中間層15と同様、シーラント層16にも、環状オレフィン系樹脂は含まれない。
シーラント層16におけるベース樹脂の種類および組成は、ヒートシール強度が良好な材料が用いられる。シーラント層16のベース樹脂の樹脂材料は、中間層15との密着性、一体性を向上するために、中間層15のベース樹脂と同様な樹脂材料であることがより好ましい。
シーラント層16は、ヒートシール部1b、1cを形成する部位を除くと、包装袋1における最内面を形成する。このため、シーラント層16は、内容物2と接触によって、内容物2に溶け出したり、内容物2が浸潤したりしない材料が用いられる。
シーラント層16は、内容物2と接触によって、内容物2に溶け出したり、内容物2が浸潤したりしない物質であれば、ポリオレフィン共重合体以外の樹脂材料および環状オレフィン系樹脂以外の添加物を含有していてもよい。例えば、シーラント層16は、上述した中間層15に含有可能な添加剤のうち、内容物に溶け出さない適宜の添加剤を含有してもよい。ただし、シーラント層16には、添加剤が含まれないことがより好ましい。
易引裂き層14の厚さは、第2積層体4Bの総厚に対して20%以上70%以下であってもよい。易引裂き層14の厚さは、第2積層体4Bの総厚に対して20%以上50%以下であることがより好ましい。
易引裂き層14の厚さが、第2積層体4Bの総厚の20%未満であると、引裂き性および直線カット性が低下しすぎる可能性がある。
易引裂き層14の厚さが、第2積層体4Bの総厚の70%を超えると、積層フィルム4の柔軟性が損なわれることによって、例えば、積層フィルム4におけるヒートシール強度、耐衝撃性が低下しすぎる可能性がある。
例えば、第1積層体4Aが、ドライラミネート可能な複数のシートに分割できる場合には、第1積層体4Aを形成する複数のシートと、第2積層体4Bと、がドライラミネートされてもよい。
積層フィルム4において、TD方向の引裂き強度と、MD方向の引裂き強度と、の差は、0N以上2N以下であることがより好ましい。ここで、引裂き強度は、JIS K 7128に記載のトラウザー法に準拠した測定値である。
この後、各シート1aが、それぞれのシーラント層16が対向するように重ね合わされる。互いに積層されたシート1aは、外形における三方の端縁部がヒートシールされることによって、ヒートシール部1cと、1対のヒートシール部1bと、が形成される。
ノッチ5A、5Bは、以上の製造工程の間に形成されてもよい。ただし、開口部1dにおけるノッチ5Bは、開口部1dがシールされるとき、または、包装体3の製造時に開口部1dがシールされた後に、形成されてもよい。
以上で、包装袋1が製造される。
包装袋1の各シート1aには、積層フィルム4が用いられている。積層フィルム4においては、第1積層体4A、中間層15、およびシーラント層16は、いずれも、柔軟性が高く、耐衝撃性にも優れた樹脂材料が用いられている。これに対して、易引裂き層14は、直線カット性を向上するために、より高剛性になっている。このため、易引裂き層14は、第1積層体4A、中間層15、およびシーラント層16に比べて、柔軟性および耐衝撃性が低い。
本実施形態では、易引裂き層14は、柔軟性および耐衝撃性に優れる第1積層体4Aと、中間層15との間に挟まれている。このため、包装袋1の外側および内側に外力が作用しても、第1積層体4Aおよび中間層15の間に保護された易引裂き層14は破断しにくくなっている。
その際、易引裂き層14は脆い材料であるため、応力が集中する箇所では脆性的に破壊する。しかし、易引裂き層14は、樹脂としては、剛性が高いため、破壊が進行するような応力場が形成される領域は小さい。加えて、易引裂き層14は、押し出し成形による配向によって、TD方向およびMD方向に破壊が進行しやすい。このため、易引裂き層14は、TD方向およびMD方向に沿う直線状に引裂かれやすい。
このようにしてシート1aが引き裂かれる際、第1積層体4Aおよび中間層15は、高剛性の易引裂き層14に密着接合されている。このため、第1積層体4A、中間層15、およびシーラント層16が延びやすい柔軟な材料であっても、易引裂き層14とともに、易引裂き層14の破断線に沿って、直線状に引き裂かれていく。このように、本実施形態では、易引裂き層14の作用によって、積層フィルム4の直線カット性が良好になっている。
このため、包装袋1では、引裂き阻害、股裂けなどが抑制できる。
このような配置によって、中間層15およびシーラント層16は、全体として、柔軟性および耐衝撃性に優れるひとまとまりの層状部を形成している。これにより、包装袋1におけるシート1aの内側は、柔軟性および耐衝撃性に優れている。
図5は、本発明の実施形態の包装材料の作用を説明する模式的な断面図である。図6は、比較例の包装材料の作用を説明する模式的な断面図である。ただし、図5、6では、見易さのため、主要な層のみが図示されている。
この場合、包装袋1の内側のヒートシール部1bの端縁部Eにおいて、シート1aは、包装袋1の外側に向かって曲げられる。このとき、ヒートシール部1bの端縁部Eにおける応力は、第1表面4aから第2表面4bに向かって漸次増大する応力分布が形成される。このため、各層に作用する応力は、シーラント層16、中間層15、および易引裂き層14の順に小さくなる。さらに、シーラント層16および中間層15は、同種のベース樹脂によって一体的に形成されているため、それぞれが単層で存在している場合に比べて厚肉部になっている。厚肉部は、柔軟性が高い材料で形成されているため、厚肉部の変形によって、応力は緩和されやすくなる(応力f1参照)。
このような変形モードでは、易引裂き層14の応力f2は、応力f1に比べて低くなるため、易引裂き層14の破断が進行しにくい。このため、ヒートシール部1bのヒートシール強度が向上される。
外層115は、本実施形態における中間層15と同じ材料、厚さを有する層状部である。外層115は、第2積層体104Bの接着表面4cを形成している。外層115は、第2積層体104B内における配置位置が、第2積層体4Bの中間層15の配置位置と異なる。
このように、シート101aは、本実施形態のシート1aにおいて、易引裂き層14と中間層15との位置を互いに入れ替えたことに相当する層構成を有している。
各シート101aは、シート1aと同様にカットされた後、包装袋1と同様にヒートシール部1bと、図示略のヒートシール部1cとが形成される。
ここで、比較例における易引裂き層14は、第2積層体4Bに比べると、第2表面4bに近い位置に配置されているため、応力F2は、応力f2よりも大きくなる。このため、比較例では、易引裂き層14の破壊がより進行しやすい。
加えて、比較例では、外層115と、シーラント層16とが、易引裂き層14によって分断配置されているため、それぞれの厚さはシート1aにおける中間層15、シーラント層16と同じでも、応力緩和効果は、シート1aに比べて劣る。具体的には、最も高い応力が発生するシーラント層16から破断が進行しやすくなる。
これらの効果が相俟って、接着表面4cにおける接着が破壊されるよりも先に、ヒートシール部1bの内側の端縁部に沿って、シート101aが破断されてしまう。
次に、本実施形態の変形例について説明する。
図7は、本発明の実施形態の変形例の包装材料の一例を示す模式的な断面図である。
変形例の包装袋21は、上記実施形態の包装袋1の各シート1aに代えて、それぞれ、シート21a(包装材料)を備える。以下、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
第2積層体24Bは、上記実施形態における中間層15およびシーラント層16に代えて、シーラント層36を備える。
シーラント層36は、上記実施形態におけるシーラント層16と厚さのみが異なる。シーラント層36の厚さは、上記実施形態における中間層15およびシーラント層16の合計厚さに等しい。
このような積層フィルム24は、積層フィルム4と同様、共押し出し成形によって製造される。例えば、積層フィルム24が三層共押し出し成形機によって製造される場合には、隣り合う2層の樹脂材料をシーラント層16と同じ材料にすれば、積層フィルム24が製造される。
本変形例は、第2積層体24Bが、ポリオレフィン共重合体を主成分とする2層の樹脂層からなる場合の例になっている。
遮光や着色の目的で樹脂層に顔料を加える場合、樹脂層を3層構成にし、そのうちの中間層に顔料を含有させることが好ましい。このようにすると、第1積層体4Aとの接着性に悪影響を与えない。また、内容物に接触しないため、顔料が流出するおそれがない。顔料としては、例えばカーボンブラックなどの黒色顔料、酸化チタンなどの白色顔料、酸化鉄赤、などの有彩色顔料が挙げられる。
さらに、ノッチ5Aは、ヒートシール部1bの一方のみに設けられていてもよい。ノッチ5Bは、ヒートシール部1cの一方のみに設けられていてもよい。
実施例1は、上記実施形態の変形例の積層フィルム24において、バリア層12を有しない場合の実施例である。基材層10としては、厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムが用いられた。実施例1では、バリア層12は形成されなかった。
易引裂き層14のベース樹脂は、プロピレン-エチレンブロック共重合体が用いられた。プロピレン-エチレンブロック共重合体におけるプロピレン:エチレンのモル比は、81.9:18.9とされた。これにより、プロピレン-エチレンブロック共重合体のMFR[Melt Flow Rate]は、230℃において、3.5g/10分であった。プロピレン-エチレンブロック共重合体の密度は、0.90g/cm3であった。プロピレン-エチレンブロック共重合体の非晶部粘度ηは、2.8dL/gであった。
易引裂き層14の環状オレフィン系樹脂は、ノボルネン-エチレン共重合体(COC)が用いられた。COCのMFRは、280℃において、50g/10分であった。
易引裂き層14において、プロピレン-エチレンブロック共重合体の含有量は60質量%、COCの含有量は40質量%であった。
シーラント層26としては、易引裂き層14のベース樹脂と同様のプロピレン-エチレンブロック共重合体が用いられた。
第2積層体24Bは、インフレーション方式によって成形された。第2積層体24Bの総厚は、70μmとされた。易引裂き層14の厚さは、第2積層体4Bの総厚に対して25%(17.5μm)とされた。このため、シーラント層26の厚さは、第2積層体4Bの総厚に対して75%(52.5μm)とされた。
これにより、実施例1の積層フィルム24が製造された。
包装袋21の外形は、積層フィルム24のMD方向が150mm、TD方向が180mmの矩形状とされた。ヒートシール部1b、1cの幅は5mmとされた。
ヒートシール部1b、1cの形成条件は、ヒートシール装置において、上シールバー温度が210℃とされた。下シールバーは加熱されなかった。シール圧は、0.2Pa、シール時間は、1秒とされた。
実施例1の包装体23の供試サンプルを製造するため、包装袋21に、内容物2として200gの水が開口部1dから充填された。内容物2の充填後、開口部1dはヒートシールされた。ヒートシール条件は、ヒートシール部1b等と同様とされた。これにより、ヒートシール部1cが形成された。
実施例2の積層フィルム24は、実施例1においてバリア層12が追加されて製造された。具体的には、実施例1の基材層10の表面に、バリア層12としてシリカ蒸着膜が形成された。シリカ蒸着膜の膜厚は、300Åとされた。これにより、実施例2の第1積層体4Aが形成された。第1積層体4Aは、実施例1の第2積層体24Bと接着剤層13を介して貼り合わされた。これにより、第1積層体4Aのバリア層12と、第2積層体24Bの接着表面4cとが、接着剤層13を介して接着された。
実施例2の包装袋21および包装体23の供試サンプルは、実施例2の積層フィルム24が用いられた以外は、実施例1と同様にして製造された。
実施例3の積層フィルム24は、実施例2の積層フィルムにおいて、バリア層12と接着剤層13との間に厚さ15μmのナイロンフィルムを中間樹脂層17として配置した点が異なっている。ナイロンフィルムは、第1積層体24Aと、第2積層体24Bと、を貼り合わせるドライラミネート工程において、同時に貼り合わされた。したがって、ナイロンフィルムは、図示略のドライラミネート用接着剤層を間に挟んで、シリカ蒸着膜に貼り合わされている。
実施例3の包装袋21および包装体23の供試サンプルは、実施例3の積層フィルム24が用いられた以外は、実施例1と同様にして製造された。
実施例4は、上記実施形態の積層フィルム4の実施例である。実施例4は、実施例3のシーラント層36に代えて、中間層15およびシーラント層16が用いられた以外は、実施例3と同様に形成された。
シーラント層16は、実施例1のシーラント層36と同様の材料が用いられた。
中間層15の材料は、シーラント層16のベース樹脂と、酸化チタンと、の混合物が用いられた。中間層15における酸化チタンの含有率は、6質量%とされた。
中間層15およびシーラント層16の厚さは、第2積層体4Bの総厚に対して50%(35μm)、25%(17.5μm)とされた。
実施例3の包装袋1および包装体3の供試サンプルは、実施例3の積層フィルム4が用いられた以外は、実施例1と同様にして製造された。
比較例1は、実施例4において、COCが含有されない例である。比較例1の積層フィルムは、実施例4の易引裂き層14において、COCが含有されない以外は、実施例4の積層フィルム24と同様に形成された。
比較例1の包装袋および包装体の供試サンプルは、比較例1の積層フィルムが用いられた以外は、実施例1と同様にして製造された。
比較例2においては、第2積層体を形成する際に、易引裂き層14の厚さ方向両側にプロピレン-エチレンブロック共重合体からなる層を形成した。すなわち、第2積層体の構造は、特許文献1と同様である。比較例の第2積層体において、易引裂き層の厚さは実施例1と同様であり、シーラント層の厚さは、易引裂き層と同一である。シーラント層と反対側に形成されたプロピレン-エチレンブロック共重合体からなる層(外層)の厚さは35μmであり、第2積層体の総厚の50%であった。
その他の点は、実施例3と同様の手順で比較例2の積層フィルムを作製した。
比較例2の包装袋および包装体の供試サンプルは、比較例2の積層フィルムが用いられた以外は、実施例1と同様にして製造された。
[表1]に示すように、実施例1~4および比較例1、2の各供試サンプルに対して、ヒートシール強度評価と、引裂き性評価と、が実施された。
ヒートシール強度評価では、JIS Z 1713に準拠したヒートシール強度が測定された。
ヒートシール強度評価における評価用サンプルは、各実施例、比較例の包装体の各供試サンプルが用いられた。評価用サンプルとしては、下記のレトルト処理が施された供試サンプル([表1]では「レトルト処理済み」)と、レトルト処理が施される前の供試サンプル([表1]では「レトルト処理無し」)と、が用いられた。
レトルト処理の処理方式としては、貯湯式が用いられた。レトルト処理における処理温度は121℃、処理時間は30分とされた。
各評価用サンプルから、TD方向およびMD方向のシール強度が測定可能な試験片が切り出された。試験片幅は15mmとされた。
ヒートシール強度測定においては、各試験片を用いてJIS Z 1713に準拠した測定が行われた。引張速度は、300mm/分とされた。
[表1]には、ヒートシール強度の測定結果が、TD方向([表1]では「TD」)と、MD方向([表1]では「MD」)と、に分けて記載されている。
引裂き強度測定は、JIS K 7128に記載のトラウザー法に準拠して行われた。 上述のレトルト処理済みの各評価用サンプルから、TD方向およびMD方向の強度が測定可能な試験片が切り出された。引裂き強度測定における引張速度は200mm/分とされた。
開封試験では、試験者が、上述のレトルト処理済みの各評価用サンプルを試験者の手で引き裂いて開封した。引裂き方向は、TD方向およびMD方向の2方向とされた。この後、各評価用サンプルの切り口における股裂けの測定と、目視による切り口の直線性の観察と、が行われた。
股裂けの測定では、互いに重なり合ったシートのうち表側シートの切り口と、裏側のシートの切り口と、のずれ量(以下、段差と言う)が測定された。段差の測定は、引裂き方向と直交する方向においてスケールを当てて行われた。開封線に沿う段差の最大値が股裂けの測定値とされた。
切り口の直線性の観察では、試験者が切り口を目視観察した。試験者は直線カット性の程度を判定した。
[表1]に示すヒートシール強度の測定結果によれば、各実施例、比較例ともレトルト処理無しのヒートシール強度の方が、レトルト処理済みのヒートシール強度よりも大きかった。さらに、MD方向におけるヒートシール強度と、TD方向におけるヒートシール強度とは、いずれも、MD方向の方が高かった。ただし、MD方向におけるヒートシール強度と、TD方向におけるヒートシール強度との強度差は、レトルト処理済みの方が少なかった。
実施例1~4は、比較例1よりも、ヒートシール強度が低い傾向にあった。しかし、実施例1~4は、レトルト処理後の最低のヒートシール強度でも、40N/15mm以上であった。レトルト包装体に必要なヒートシール強度は、食品衛生法の品質規格において23N/15mm以上であるため、実施例1~4のヒートシール強度は、レトルト包装体の許容範囲内であった。比較例2は、各実施例よりもヒートシール強度が低かった。さらに、レトルト処理後には、上記品質規格を下回り、許容範囲を逸脱した。
実施例1~4のTD方向の引裂き強度は、それぞれ0.4N、0.5N、0.8N、0.9Nであった。これに対して、比較例1のTD方向の引裂き強度は、3.2Nであった。
このため、実施例1~4は、比較例1に比べて格段に開封が容易になることが分かる。
実施例3、4は、ナイロンフィルムからなる被覆層を含むため、実施例1、2に比べて引裂き強度が高くなったと考えられる。しかし、この場合でも、実施例3、4は、比較例1の1/4~1/3程度であるため、きわめて開封性が向上している。
「○」(good)は、股裂けの段差が1mm未満、かつ切り口が直線的であったことを表す。
「×」(no good)は、股裂けの段差が1mm以上、または切り口が直線的でなかったことを表す。切り口が直線的でないとは、切り口の両端部を結ぶ直線に対する切り口の偏差の絶対値が2.5mm以上であるか、または、フィルムに伸びが生じて切り口が滑らかな線状にならなかったことを表す。
[表1]に示すように、実施例1~4の開封試験結果は、MD方向およびTD方向のいずれの開封試験でも、すべて、○(good)と判定された。これに対して、比較例1の場合、MD方向およびTD方向のいずれの開封試験でも、すべて、×(no good)と判定された。比較例1の場合、シーラント層に伸びが生じて開封すること自体が困難であった。比較例2の場合、引き裂き性についてはいずれの項目も良好であったが、上述のように、ヒートシール強度は許容できない程度に低かった。
また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
1a、21a シート(包装材料)
1b、1c ヒートシール部
1d 開口部
2 内容物
3、23 包装体
4、24 積層フィルム(包装材料)
4a 第1表面
4A、4C、24A 第1積層体
4b 第2表面
4B、24B 第2積層体(積層体)
4c 接着表面
5A、5B ノッチ
10 基材層
12 バリア層(蒸着層)
13 接着剤層
14 易引裂き層(樹脂層)
15 中間層(樹脂層)
16、36 シーラント層(樹脂層)
17 中間樹脂層
Claims (7)
- 少なくとも1層の二軸延伸樹脂フィルムを含み、第1表面を形成するベースフィルム層と、
ポリオレフィン共重合体を主成分とする2層以上の樹脂層からなり、前記第1表面と反対側の第2表面を形成する積層体と、
前記ベースフィルム層と前記積層体とを互いに貼り合わせる接着剤層と、
を含み、
前記樹脂層は、
ヒートシール可能であり、前記第2表面を形成しているシーラント層と、
前記接着剤層を挟んで前記ベースフィルム層と対向し、環状オレフィン系樹脂を含有する易引裂き層と、を含み、
前記ポリオレフィン共重合体は、プロピレン-エチレンブロック共重合体を含有する、
包装材料。 - 前記ベースフィルム層における前記二軸延伸樹脂フィルムの表面に、金属または無機酸化物からなるバリア層が設けられている、
請求項1に記載の包装材料。 - 前記ベースフィルム層は、前記二軸延伸樹脂フィルム上に設けられた前記バリア層上に、樹脂フィルムからなる中間樹脂層を有する、
請求項2に記載の包装材料。 - 前記易引裂き層の厚さは、前記積層体の総厚に対して、20%以上70%以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の包装材料。 - JIS K 7128に準拠したトラウザー法で測定された、幅方向の引裂き強度と、流れ方向の引裂き強度と、の差が、2N以下である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の包装材料。 - 前記樹脂層は、前記シーラント層と前記易引裂き層との間に設けられ、顔料を含有する中間層をさらに有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の包装材料。 - 請求項1~6のいずれか一項に記載の包装材料によって形成された包装袋と、
前記包装袋に収容された内容物と、
を備える、包装体。
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