JP3813057B2 - 温度検出装置及びそれを用いた空気調和機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サーモパイル型の赤外線センサを備えた温度検出装置及びそれを用いて部屋の床面または壁面等から放射される赤外線を検出する空気調和機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
すべての物体は絶対温度の4乗に比例する赤外線を放射しており、一般的な温度検出装置は該赤外線を検出している。一般に温度検出装置に用いられる赤外線センサは、量子型センサと熱型センサとに大別される。熱型センサには、熱起電力効果を利用したサーモパイル、焦電効果を利用したPZT、熱導電効果を利用したサーミスタなどがあり、これらはその使用目的、要求精度等を考慮して選択使用されている。
【0003】
従来、空気調和機の室内部分に装着し、離れた床面または壁面の表面温度を測定する温度検出装置には、サーミスタ型の赤外線センサが用いられてきた。このサーミスタ型の赤外線センサは一種の感温抵抗であり温度変化に応答して抵抗値が変化する性質を利用しており、サーミスタの抵抗値の経時変化を測定することで、床面または壁面の温度変化を相対的に検出していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなサーミスタ型の赤外線センサには、光ガイドやレンズが使用されておらず、温度検出範囲即ちセンサの視野角が絞られてないため、例えば床面のみの温度を検出したい場合に周囲の壁面の温度も検出してしまう問題点があった。また、このセンサは上述のように経時測定により相対的な温度変化を検出しているので検出速度が遅く、検出精度が良くなかった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑み、温度検出範囲を絞り、特定の対象物のみの温度を検出可能な温度検出装置を提供することを目的とする。また、本発明は、従来より温度検出速度および温度検出精度を向上させ、空気調和機等の省エネルギーや快適な空調が実現可能な温度検出装置及びそれを用いた空気調和機を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る温度検出装置においては、離れた特定の対象物の温度を高精度に検出可能なサーモパイル型の赤外線センサを温度検出手段として用いる。前記温度検出装置には、一定の視野を保持する光ガイド用の伝熱体が備えられ、更に視野を限定するためには、伝熱体の開口部にレンズが備えられる。
【0007】
このように、本発明に係る赤外線センサを用いた温度検出装置においては、光ガイドにより視野角を絞った赤外線センサを用いた温度検出装置において、開口部面積が内側底面積より大なる截頭円錐状の凹部を有した伝熱体からなる光ガイドと、前記凹部の内側底面に装着され前記光ガイドと広い面積で接触するようにしたサーモパイル型の赤外線センサとを備え、少なくとも前記光ガイドの開口部を覆い、前記光ガイドの外面に嵌合したレンズを備えた構成とする。
【0010】
また、前記光ガイドがプリント基板に接するとともに、前記光ガイドの一部が前記プリント基板に直接嵌合している構成としてもよい。
【0011】
更に、前記凹部内において前記サーモパイル型の赤外線センサを嵌合摺動させることによる位置決め手段を備えた構成としてもよい。
【0012】
なお、前記位置決め手段は、前記凹部内に形成された溝または凸部と、前記サーモパイル型の赤外線センサに形成された凸部または溝とから成る構成とすることができる。
【0013】
そして、部屋の床面または壁面等から放射される赤外線を検出し、該床面または壁面等の表面温度を算出して温度制御する本発明に係る空気調和機においては、前記赤外線を検出する手段として前記何れかの温度検出装置を備えた構成とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
まず、空気調和機の室内部分に備えた本発明の温度検出装置が、床面や壁面等の表面温度を高精度で検出するための光学構造の概要を説明する。図1に、空気調和機に備えた本発明の温度検出装置による検出範囲の一例を示す。空気調和機1の床面からの高さが約2mであり、約2畳分の床面エリア2の表面温度の平均を検出する場合、温度検出装置(不図示)の視野角θは約40°になる。
【0015】
ここで、本発明の温度検出装置に用いられる一般的なサーモパイル型の赤外線センサの視野角は100°以上であるため、前記赤外線センサの周囲に光ガイド用の筒等を設けることで視野角を絞る。図2(a)、(b)、(c)に、本発明の温度検出装置の側断面の模式図を示す。サーモパイル型の赤外線センサ3の周囲に光ガイド用の筒4,4’,4”が設けられており、視野角θ’が視野角θ”より大きくなっている。通常、視野角θ’,θ”内の被測定面から放射される赤外線が受光部5で検出されるほか、視野角θ’,θ”外からの外乱赤外線が筒4,4’,4”内面で反射され、受光部5で検出される。このとき、外乱赤外線入射角A,Bは、視野角の大きい方が大きくなり、それに対応して温度測定誤差も大きくなる。一方、図2(c)は、図2(a)と同一の視野角を有しているが、筒4”は底部を狭めた形状とすることで、外乱赤外線入射角Cは外乱赤外線入射角Aより小さくなる。
【0016】
前記温度測定誤差を小さくするためには外乱赤外線の入射を遮ればよく、筒4,4’,4”の上部に赤外線透過性のレンズ(不図示)を設ければよい。
【0017】
以上説明してきたように、サーモパイル型の赤外線センサを用いた温度検出装置において、被測定面の温度を精度良く測定するには、温度検出装置の視野角内から入射する赤外線のみを検出することが条件となる。この場合、光ガイド用の筒やレンズから放射される赤外線も測定誤差の原因となるため、前記筒やレンズの温度と赤外線センサの温度は常に同温であることが望ましい。
【0018】
そこで、以下の本発明の実施例においては、光ガイド用の筒の一例として截頭円錐状の光ガイド用の凹部を有した伝熱体を用い、レンズは該伝熱体に嵌合させることにより、赤外線センサとの温度誤差を小さくしている。
【0019】
以下に、本発明の温度検出装置を空気調和機に用いる場合の実施例について図面を用いて説明する。
【0020】
図3(a)に、本発明の伝熱体の一例の正面図と上面図とを示し、図3(b)に、図3(a)のA−A線断面図を示す。伝熱体6は開口部7の面積が内側底面8の面積より大なる截頭円錐状の光ガイド用の凹部を有している。また、伝熱体6の外側底面にはプリント基板に直接嵌合するための凸部9が形成され、内側底面8には赤外線センサの電極リードが貫通するための穴15が穿設され、伝熱体6の凹部内には、サーモパイル型の赤外線センサの凸部を嵌合摺動させることによる位置決め手段である溝10が形成されている。
【0021】
ここで、伝熱体6の凹部を図2(c)のような截頭円錐状にすることによって、所定の視野角に対して、外乱赤外線入射角を小さくすることができる。
【0022】
なお、伝熱体6の材料は熱伝導性及び熱容量が大きく、成形が容易であればよく、好ましくは金属であり、更に好ましくはアルミニウムである。熱伝導性が大きいことで、周囲温度と赤外線センサの温度を同一することができ、熱容量が大きいことで、周囲温度の急激な変化に対して影響を受けにくく、安定した温度検出が可能となる。
【0023】
図4に、本発明のサーモパイル型の赤外線センサの斜視図を示す。金属ケース11と金属ケース11の上面に設けられた赤外線透過フィルター12との内側にサーモパイルが備えられている。サーモパイルは、シリコン基板上に複数の熱電対を直列に接続し、その一端の温接点側が受光部であり、他端の冷接点側が金属ケース11に接続されて構成されている。この構成によりサーモパイルは感温抵抗であるサーミスタより検出速度が速い。前記受光部に赤外線が入射されるとそのエネルギーにほぼ比例する電圧が前記熱電対の両端に発生する。また、電極リード14が設けられており、金属ケース11の側面には、図3の溝10に嵌合摺動させることによる位置決め手段である凸部13が設けられている。
【0024】
なお、図3の伝熱体6と図4のサーモパイル型の赤外線センサ3との位置決め手段は、図3の溝10に代えて突条を形成し、図4の凸部13に代えて溝を形成してもよい。
【0025】
図5(a)に、本発明の温度検出装置の一例の上面図を示し、図5(b)に、図5(a)のA−A線断面図を示す。ここで、伝熱体6は図3のものを、サーモパイル型の赤外線センサ3は図4のものをそれぞれ用いた。サーモパイル型の赤外線センサ3は凸部13を伝熱体6の溝10に嵌合摺動させることで内側底面8に位置決めされるとともに、電極リード14は穴15を貫通している。そして、伝熱体6の外面形状と同一の内面形状を有したレンズ16を伝熱体6に嵌合させている。このようにして温度検出装置17は構成されている。
【0026】
温度検出装置17において、例えば、伝熱体6の温度がサーモパイル型の赤外線センサ3の温度より0.5℃高い場合、被測定物の温度は約5℃高く検出される程の誤差を生じる。そこで、温度検出を高精度にするには、サーモパイル型の赤外線センサ3と伝熱体6とレンズ16との温度差をできる限り小さくすればよい。つまり、サーモパイル型の赤外線センサ3と伝熱体6とを広い面積で接触させ、レンズ16と伝熱体6との隙間をなくすことで、高精度な温度検出ができる。さらに精度を高めるには、伝熱体6の凹部内面での赤外線の反射を少なくすればよく、伝熱体6の凹部内面はつや消しの黒色処理をするのが好ましい。
【0027】
なお、レンズ16は多眼のフレネルレンズとするのが好ましい。被測定面を多眼と同数のポイントについて赤外線検出し、それらを平均した温度測定ができるからである。また、レンズ16の焦点は、サーモパイル型の赤外線センサ3の受光部に精度良く合っていなければならない。なお、レンズ16には赤外線透過率が高く、安価な材料を用い、好ましくはシリコンレンズであり、さらに好ましくはポリエチレンレンズである。
【0028】
なお、伝熱体6とレンズ16との外面形状には特に限定はなく、空気調和機に設置した際に美的外観を損なわない形状であればよい。
【0029】
そして、温度検出装置17をプリント基板に設置する手段として、伝熱体6の底面がプリント基板18に接するとともに、凸部9がプリント基板18に形成された穴に直接嵌合している。また、電極リード14はプリント基板18を貫通して半田19によりプリント基板18に固着され、レンズ16はプリント基板18に咬合している。
【0030】
次に、本発明の温度検出装置を用いた空気調和機において、床面温度を測定する方法について説明する。図6に、本発明の温度検出装置を用いた空気調和機の一例の制御回路ブロック図を示す。オペアンプ回路(不図示)で構成される増幅回路は、空気調和機の生産時にオフセット調節回路で予めオフセット電圧が調節される。また、前記増幅回路は周囲温度の変化による出力特性変化を生じるので、周囲温度補正回路を設けている。そして、床面からの赤外線を受光すると赤外線センサの熱電対の両端に電圧が発生し、該電圧は前記増幅回路にて約5000倍に増幅されてマイコンのA/Dポート(不図示)へ入力される。前記マイコンは、前記赤外線センサの近傍に設けられた周囲温度測定用サーミスタにより周囲温度を測定し、これを前記赤外線センサ自身の温度とし、前記増幅回路の出力値とから、床面温度を算出する。
【0031】
一般に個々の赤外線センサには入射した赤外線エネルギー量とセンサ出力である起電圧とにばらつきがあるため、空気調和機の生産時に感度調節を行い、個々の赤外線センサについて補正データを不揮発性メモリICに記憶させる。そして、床面温度測定時に該補正データに基づいて補正して算出した値を床面温度検出値とする。
【0032】
なお、前記赤外線センサの感度調節には、赤外線を反射せず安定した絶対温度を維持する装置、いわゆる面黒体を使用することができる。
【0033】
次に、床面温度を算出するための計算式について説明する。床面温度測定時の前記赤外線センサの周囲温度において、前記増幅回路の赤外線センサ入力スイッチをオフにしたときの前記増幅回路の出力電圧をVzとし、前記増幅回路の赤外線センサ入力スイッチをオンにしたときの前記増幅回路の出力電圧をVsとする。また、前記赤外線センサの周囲温度をTa、前記増幅回路の出力電圧の温度勾配をAとすると、
(床面温度)=Ta−(Vz−Vs)/A [℃]
となる。ここで、Aの値は前記不揮発性メモリに記憶した補正データを用いる。
【0034】
以上の実施例においては、床面温度の測定について説明したが、壁面温度の測定についても同様である。
【0035】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明の温度検出装置により、温度検出範囲を絞り、特定の対象物のみの温度が検出可能となる。また、本発明の温度検出装置においては、従来より温度検出速度および温度検出精度を向上させることができ、本発明の温度検出装置を搭載した空気調和機においては、省エネルギーや快適な空調が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 空気調和機に取り付けた本発明の温度検出装置による検出範囲の一例図である。
【図2】 本発明の温度検出装置の側断面の模式図である。
【図3】(a)本発明の伝熱体の一例の正面図と上面図である。
(b)図3(a)のA−A線断面図である。
【図4】 本発明のサーモパイル型の赤外線センサの斜視図である。
【図5】(a)本発明の温度検出装置の一例の上面図である。
(b)図5(a)のA−A線断面図である。
【図6】 本発明の温度検出装置を用いた空気調和機の一例の制御回路ブロック図である。
【符号の説明】
1 空気調和機
3 サーモパイル型の赤外線センサ
6 伝熱体
7 開口部
8 内側底面
10 溝
13 凸部
16 レンズ
17 温度検出装置
18 プリント基板

Claims (5)

  1. 光ガイドにより視野角を絞った赤外線センサを用いた温度検出装置において、開口部面積が内側底面積より大なる截頭円錐状の凹部を有した伝熱体からなる光ガイドと、前記凹部の内側底面に装着され前記光ガイドと広い面積で接触するようにしたサーモパイル型の赤外線センサとを備え、少なくとも前記光ガイドの開口部を覆い、前記光ガイドの外面に嵌合したレンズを備えたことを特徴とする温度検出装置。
  2. 前記光ガイドがプリント基板に接するとともに、前記光ガイドの一部が前記プリント基板に直接嵌合していることを特徴とする請求項1に記載の温度検出装置。
  3. 前記凹部内において前記サーモパイル型の赤外線センサを嵌合摺動させることによる位置決め手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の温度検出装置。
  4. 前記位置決め手段は、前記凹部内に形成された溝または凸部と、前記サーモパイル型の赤外線センサに形成された凸部または溝とから成る請求項3記載の温度検出装置。
  5. 部屋の床面または壁面等から放射される赤外線を検出し、該床面または壁面等の表面温度を算出して温度制御する空気調和機において、前記赤外線を検出する手段として請求項1〜4の何れかの温度検出装置を備えたことを特徴とする空気調和機。
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