JP3812814B2 - 動物用多価オイルアジュバントワクチン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、家畜、家禽または愛玩動物に好適に用いることのできる動物用多価ワクチンおよび動物を免疫する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
動物用ワクチンには、大きく分けて、弱毒化した生ウイルスまたは生菌を用いた生ワクチンと、それらをホルマリン、紫外線あるいはその他の方法で不活化した不活化ワクチンがあり、それらは互いに個別に使用される場合が多く、両者を混合して同時に注射することは、いくつかの例外を除いてあまり行われていない。その大きな理由は、不活化ワクチンに含まれるホルマリン、石炭酸、水銀製剤などの不活化剤や保存剤または界面活性剤などが、生ウイルスや生菌などの活性に悪影響を及ぼすことが危惧されるためであり、特に親水性界面活性剤はウイルスや菌の生物活性に対し重大な悪影響を及ぼすとともに、ワクチンを注射される生体にとっても、親水性界面活性剤の可溶化作用によりワクチンの注射局所の細胞を壊死させ、接種反応を強めることが危惧される。
【0003】
特に、コロナウイルス、アルテリウイルス、ヘルペスウイルスなどに代表される、いわゆるエンベロープウイルスにとって、これまでのO/W型やW/O/W型オイルアジュバントに含まれるポリオキシエチレン系やポリグリセリン系などの親水性界面活性剤は可溶化力が強く、ウイルスエンベロープを破壊することによりウイルスに致死的影響を及ぼすことが知られている。また、豚丹毒菌などの弱毒生ワクチン株の場合にも、乳剤中に親水性界面活性剤が高濃度に存在することにより菌体が溶解され、致死的影響を受ける。
【0004】
従って、従来においては、このようなエンベロープウイルスや生菌を、親水性界面活性剤の配合が不可欠なO/W型やW/O/W型アジュバント製剤に配合することは不可能であった。例えば、特開昭59−62340にはポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを、また特開2001−131087および特開平11−269093には、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルなどの可溶化力の強い親水性の低分子非イオン性界面活性剤をW/O/W型ワクチン製剤の外水相中に使用して剤型を整えることが記載されているが、このような処方ではO/W型やW/O/W型製剤中に上記した生ウイルスや生菌を配合することは到底不可能である。
【0005】
ヒト用ワクチンとは異なり、畜産分野のワクチンにおいては、オイルアジュバントワクチンの占める比率は年毎に増える傾向にあり、従来多用されていた流動パラフィンと親油性乳化剤を用いたW/O型ワクチンアジュバントに代えて、最近では代謝性の高い各種の動植物性オイルを用いたO/W型やW/O/W型アジュバントが使用されるようになってきており、このような乳剤を調製するためには、これまではポリオキシエチレン系などの界面活性作用が強く比較的低分子の界面活性剤を使用するのが常であった。しかし、このような界面活性剤を含むO/W型またはW/O/W型乳剤と上記の生ウイルスや生菌などの活性抗原を混合して使用することは、これらの活性抗原の生物活性に重大な影響を及ぼすため不可能であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、O/W型やW/O/W型の不活化ワクチンを調製する際に、ポリオキシエチレン系などの親水性界面活性剤、例えばポリソルベート80などを使用せずに、物理的に安定なO/W型またはW/O/W型不活化ワクチンを調製することで、不活化抗原および活性抗原を同一製剤中に含有する動物用多価オイルアジュバントワクチンを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記のような従来のワクチンの欠点を除き、活性抗原である生ウイルス、生菌の凍結乾燥品を溶解しても、これら生ウイルスや生菌の活性に影響を及ぼさず、不活化抗原および活性抗原を同一製剤中に含有するO/W型やW/O/W型のオイルアジュバントワクチンを完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、生物学的に不活性な抗原と生物学的に活性な抗原とを含有し、親水性界面活性剤を含まず高分子乳化剤を用いて調製されてなるO/W型またはW/O/W型の動物用多価オイルアジュバントワクチンである。なお、ここでいう「親水性界面活性剤」とは、特に規定されるものではないが、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween系)やポリオキシエチレンヒマシ油などのポリオキシエチレン系界面活性剤、モノラウリン酸ヘキサグリセリルやモノオレイン酸デカグリセリルなどのポリグリセリン系、ソルビタン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステルなどの単糖・オリゴ糖エステル系などの界面活性剤のうちHLB値(Hydrophil Lypophil Balance)8.0以上の親水性界面活性剤をいう。
【0009】
前記O/W型オイルアジュバントワクチンは、不活性な抗原が高分子乳化剤を用いて乳化して調製されたO/W型乳剤の水相中に含有され、このO/W型乳剤を溶解溶液として、別に凍結乾燥された生ウイルスまたは生菌を溶解することにより得られ、さらには、高分子乳化剤を用いて乳化して調製されたO/W型乳剤の水相中に不活性な抗原を含有させたO/W型不活化ワクチンに、生ウイルスまたは生菌を凍結乾燥した生ワクチンを添加して溶解することにより得られる。
【0010】
また、前記W/O/W型オイルアジュバントワクチンの場合は、生物学的に不活性な抗原を流動パラフィン等の油相中に親油性界面活性剤を用いて分散乳化(一次乳化)して調製されたW/O乳剤を、生物学的に不活性な抗原を含む、あるいは含まない水相中に高分子乳化剤を用いて再度分散乳化(2次乳化)することによりW/O/W型ワクチンが調製される。次に、このW/O/W型ワクチンを溶解溶液として、別に凍結乾燥された生ウイルスまたは生菌を溶解することによって不活化・生混合多価オイルアジュバントワクチンが得られる。
【0011】
なお、本発明で、多価とは同一製剤中に複数種の抗原が含有されていることを示し、2価とは2種類の抗原が、3価は3種類の抗原が含有されていることを意味する。また、乳化剤の分子量とは重量平均分子量を意味する。
【0012】
前記O/W型乳剤の調製過程またはW/O/W型乳剤の2次乳化過程で使用される高分子乳化剤としては、多糖のエステルまたはアミドを使用することができ、例えばセルロース脂肪酸エステル、マンナンコレステロールエステル、プルランコレステロールエステルなどの多糖エステルが挙げられる。また、前記高分子乳化剤として、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体なども好適に使用できる。
【0013】
前記生物学的に活性なウイルス抗原としては、エンベロープを有するウイルスが挙げられる。前記エンベロープを有する代表的なウイルスとしては、コロナウイルス科に属するウイルス、アルテリウイルス科に属するウイルス、ヘルペスウイルス科に属するウイルス、ブニヤウイルス科に属するウイルスなどが挙げられ、コロナウイルス科に属するウイルスとしては、豚伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)、豚流行性下痢ウイルス(PEDV)、アルテリウイルス科に属するウイルスとしては、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)が挙げられる。また、生物学的に活性な細菌抗原としては、弱毒豚丹毒菌やサルモネラ菌あるいはマイコプラズマの生菌などを用いることができる。
【0014】
また、生物学的に不活性な細菌抗原としては、特に限定されるものではないが、毒素原性大腸菌、ボルデッテラ・ブロンキセプチカ、パスツレラ・マルトシダ、サルモネラ属菌、マイコプラズマ属、レプトスピラ属、アクチノバチルス属、ヘモフィルス属、マンハイミア属の細菌、あるいはこれらの細菌に由来する抗原およびこれらの遺伝子情報に基づいて作出された抗原及びペプチド合成などの手法によって作出された抗原などが挙げられる。
【0015】
本発明による動物を免疫する方法は、高分子乳化剤を用いて乳化して調製されたO/W型乳剤の水相中に不活性な抗原が含有されたO/W型不活化ワクチンを、生ウイルスまたは生菌を凍結乾燥した生ワクチンのバイアル中に添加して溶解し、これを動物に接種することにより動物を免疫する方法、または、高分子乳化剤を用いて2次乳化して調製されたW/O/W型乳剤の内水相中および/または外水相中に不活性な抗原が含有されたW/O/W型不活化ワクチンを、生ウイルスまたは生菌を凍結乾燥した生ワクチンのバイアル中に添加して溶解し、これを動物に接種することにより動物を免疫する方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明における生物学的に活性な抗原とは、弱毒化した生ウイルスまたは生菌のこと(以下、活性抗原という。)であり、また生物学的に不活性な抗原とは、それらを紫外線またはその他の方法で不活化したもの(以下、不活化抗原という。)である。
【0017】
本発明は、例えば、活性抗原である生ウイルスまたは生菌をバイアル瓶に分注して凍結乾燥した生ワクチンと、O/W型またはW/O/W型の乳化型を有する不活化ワクチンを組み合わせることにより、対象動物に数種の抗原を一度に接種することができる多価オイルアジュバントワクチンを提供するものであり、従来のO/W型またはW/O/W型ワクチンの欠点である活性抗原(活性微生物)に対する致死的影響を除くため、O/W型乳剤の調製過程で使用される親水性乳化剤や、W/O/W型乳剤の調製過程において1次乳化物であるW/O型乳剤を、再度水相に分散乳化してW/O/W型乳剤とする2次乳化で使用される乳化剤として、ポリオキシエチレン系界面活性剤など、可溶化作用のある親水性界面活性剤を一切含まないことを特徴とする。これにより、生、不活化の両ワクチンを混合した際に微生物の活性低下が全く生じない。
【0018】
すなわち、従来の生ワクチンは、通常、凍結真空乾燥された弱毒生ウイルスや生菌を、これに添付された溶解溶液で溶解して速やかに投与する方法が多用されており、オイルアジュバントワクチンとの混合注射は、生ウイルスや生菌などの活性抗原に対して毒性を示す親水性界面活性剤をほとんど含まないW/O型オイルアジュバントワクチンとの組み合わせに限られ、O/W型やW/O/W型のワクチンは、このような親水性界面活性剤を乳化剤として多量に含むため、界面活性剤に感受性の高いコロナウイルスやヘルペスイウルスなど、エンベロープウイルスとの混合注射はできなかった。そこで、本発明では、O/W型やW/O/W型のオイルアジュバントワクチンを乳化する際に、生ウイルスや生菌などの活性抗原に影響を及ぼす親水性界面活性剤を全く使用せずに良好な乳化状態のO/W型またはW/O/W型不活化オイルアジュバントワクチンを調製し、このようにして調製されたO/W型またはW/O/W型不活化ワクチンを、凍結乾燥生ワクチンに加えて溶解させることにより、不活化・生混合のO/W型およびW/O/W型オイルアジュバントワクチンの処方を確立するに至ったものである。
【0019】
従って、本発明における活性抗原としては、特に限定されるものではないが、親水性界面活性剤により致死的影響を受けるエンベロープを有するウイルスや生菌が好適に使用される。前記エンベロープを有するウイルスとしては、例えば、豚伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)、豚流行性下痢ウイルス(PEDV)、牛コロナウイルス、猫伝染性腹膜炎ウイルス、鶏伝染性気管支炎ウイルスなどのコロナウイルス科に属するウイルス、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、馬動脈炎ウイルスなどのアルテリウイルス科に属するウイルス、日本脳炎ウイルス、豚コレラウイルス、牛ウイルス性下痢ウイルスなどのフラビウイルス科に属するウイルス、オーエスキー病ウイルス、牛ヘルペスウイルス、鶏伝染性喉頭気管炎ウイルス、マレック病ウイルスなどのヘルペスウイルス科に属するウイルス、牛白血病ウイルス、猫白血病ウイルス、猫免疫不全ウイルス、馬伝染性貧血ウイルスなどのレトロウイルス科に属するウイルス、アカバネウイルス、アイノウイルスなどのブニヤウイルス科に属するウイルス、狂犬病ウイルス、牛流行熱ウイルス、水泡性口炎ウイルスなどのラブドウイルス科に属するウイルス、ゲタウイルスなどのトガウイルス科に属するウイルス、インフルエンザなどのオルソミクソウイルス科に属するウイルス、牛RSウイルス、牛パラインフルエンザウイルス3、ニューカッスル病ウイルス、犬ジステンパーウイルスなどのパラミクソウイルス科に属するウイルスなどが挙げられる。また、生菌としては、豚丹毒菌、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ、アクチノバチルス・プルロニューモニエ、連鎖球菌、リステリア・モノサイトゲネスなどが挙げられる。これらのウイルスおよび菌は、いずれも大学や国公立の研究機関等から容易に入手することができ、また野外感染性からも容易に分離することが可能で、これを弱毒化またはそのまま活性抗原として使用する。
【0020】
また、本発明に使用される不活化抗原としては特に限定されるものではなく、ウイルス抗原としては、例えば、上記した活性抗原として使用される各種ウイルスおよびそれらの遺伝子配列に基づく組換え抗原などが挙げられる。また細菌抗原としては毒素原性大腸菌や、豚萎縮性鼻炎の原因菌であるボルデッテラ・プロンキセプチカ、パスツレラ・マルトシダ、さらには上記した活性抗原として使用される細菌菌体、毒素または菌体より分離した菌体成分およびそれらの遺伝子配列に基づく組換え抗原などが挙げられる。これらのウイルスおよび菌は、いずれも大学や国公立の研究機関等から容易に入手することができ、また野外感染性からも容易に分離することが可能で、ウイルス、菌体、毒素は紫外線またはその他の公知の方法で不活化して使用する。また菌体成分はそのままあるいはホルマリン等で固定処理して使用する。
【0021】
また、本発明では、O/W型またはW/O/W型オイルアジュバントワクチンを調製するために、O/W型乳剤の調製過程で使用される親水性乳化剤や、W/O/W型乳剤の調製過程において1次乳化物であるW/O型乳剤をW/O/W型乳剤とする2次乳化で使用される親水性乳化剤として、親水性界面活性剤を含まず、高分子乳化剤を用いる。本発明で使用する高分子乳化剤としては、多糖のエステルまたはアミドが挙げられ、例えば、多糖類の脂肪酸エステルまたはアミドが挙げられる。多糖類のエステルまたはアミドにおける親水性基である多糖部分としては、セルロースが好ましいが、マンナン、グルカン、キトサン、プルランなども使用できる。なおここでいう多糖とは、構成単糖数が好ましくは50以上、より好ましくは100以上さらに好ましくは200以上である。また、疎水性基としては、オレイン酸などの脂肪酸が好ましいが、コレステロールを疎水基とするものを使用することもできる。従って、本発明で使用する高分子乳化剤としては、セルロース脂肪酸エステル、マンナンコレステロールエステル、プルランコレステロールエステルや、N−オレイルキトサンやN−ステアリルキトサンなどのN−アシルキトサンなどが挙げられる。前記セルロース脂肪酸エステルの具体例としては、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセロース、例えば、「サンジェロース90L」(平均分子量約650,000、構成単糖数約3,600;三協化学製または大同化成工業製)が挙げられる。また、マンナンコレステロールエステルとしては、「コール−AECM−マンナン([N-[2-(Cholesterylcarboxyamino)ethyl]carbamoylmethyl]mannan)」(平均分子量約200,000、構成単糖数約1,000;同仁化学製)、プルランコレステロールエステルとしては、「コール−AECM−プルラン([N-[2-(Cholesterylcarboxyamino)ethyl]carbamoylmethyl]pullulan)」(平均分子量約50,000、構成単糖数約270;同仁化学製)などが挙げられる。またN−アシルキトサンは、希酸で限定加水分解したキトサンをジメチルホルムアミド中でオレイルクロライドやステアリルクロライドなどのアシルクロライドと反応させることにより容易に作出することができる。さらに、本発明の高分子乳化剤としては、カルボキシビニルポリマーやアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体なども好適に使用することができる。
【0022】
本発明のO/W型オイルアジュバントワクチンの具体的製造方法およびこれを用いて動物を免疫する方法は、例えば以下のとおりである。
▲1▼ O/W型不活化ワクチンの調製;
高分子乳化剤として多糖脂肪酸エステル、例えば疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば「サンジェロース90L」;三協化学製)を好ましくは0.05〜0.5w/v%、より好ましくは0.1〜0.3w/v%、さらに好ましくは0.15〜0.25w/v%と不活化抗原を混合した水相に油性成分(例えば、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、合成アルカン系オイル、植物油など)を滴下しながら、高速ホモジナイザーで乳化することにより、不活化抗原を水相中に含み、油相成分を1〜75v/v%含むO/W型不活化ワクチンを調製してバイアル瓶に分注する。
▲2▼ 生ワクチンの調製;
弱毒ウイルスまたは弱毒生菌を別のバイアル瓶に分注し、凍結乾燥して生ワクチンを調製する。
▲3▼ 最終ワクチンの調製および動物への接種;
上記▲1▼で調製したO/W型不活化ワクチンを上記▲2▼で調製した生ワクチンに全量加えて溶解し、動物に接種する。
なお、上記▲1▼のO/W型不活化ワクチンの調製において、高分子乳化剤としてマンナンコレステロールエステルやプルランコレステロールエステルを用いる場合の使用濃度は好ましくは0.05〜0.5w/v%、より好ましくは0.1〜0.3w/v%、より好ましくは0.15〜0.25w/v%である。またカルボキシビニルポリマーやアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を用いる場合の使用濃度は好ましくは0.002〜0.07w/v%、より好ましくは0.005〜0.04w/v%、さらに好ましくは0.01〜0.025w/v%である。
【0023】
また、本発明のW/O/W型オイルアジュバントワクチンの具体的製造方法およびこれを用いて動物を免疫する方法は、例えば以下のとおりである。
▲1▼ W/O/W型不活化ワクチンの調製;
▲1▼-1 1次乳化;
親油性乳化剤として、例えば無水マンニトールオレイン酸エステルを3〜5w/v%含有する油相成分(例えば流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、合成アルカン系オイル、植物油など)7容に不活化抗原を含む水相3容を滴下しながら高速ホモジナイザーで乳化することにより、不活化抗原を水相中に含むW/O型乳剤を調製する。
▲1▼-2 2次乳化;
高分子乳化剤として多糖脂肪酸エステル、例えば疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば「サンジェロース90L」;三協化学製)を0.1〜0.3w/v%含有する水相に、上記▲1▼-1で調製したW/O型乳剤を滴下しながら高速ホモジナイザーで乳化することにより、不活化抗原を内部の水相中に含有するW/O/W型不活化ワクチンを調製し、バイアル瓶に分注して密栓する。
なお、不活化抗原を外水相中に含有するW/O/W型不活化ワクチンの場合は、2次乳化の際に外水相中に高分子乳化剤と抗原を同時に添加してW/O/W型不活化ワクチンを調製し、バイアル瓶に分注して密栓する。
▲2▼ 生ワクチンの調製;
弱毒生ウイルスまたは弱毒生菌を別のバイアル瓶に分注して凍結乾燥して生ワクチンを調製する。
▲3▼ 最終ワクチンの調製および動物への接種;
上記▲1▼で調製したW/O/W型不活化ワクチンを上記▲2▼で調製した生ワクチンに全量加えて溶解し、動物に接種する。
なお、上記▲1▼のW/O/W型不活化ワクチンの調製において、高分子乳化剤としてマンナンコレステロールエステルやプルランコレステロールエステルを用いる場合の使用濃度は好ましくは0.05〜0.5w/v%、より好ましくは0.1〜0.3w/v%、より好ましくは0.15〜0.25w/v%である。またカルボキシビニルポリマーやアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を用いる場合の使用濃度は好ましくは0.002〜0.07w/v%、より好ましくは0.005〜0.04w/v%、さらに好ましくは0.01〜0.025w/v%である。
【0024】
【実施例】
[実験]各種界面活性剤の生ウイルス、生菌に対する影響
W/O/W乳剤の2次乳化に使用する界面活性剤が、生ウイルス、生菌にどのように影響するかを調べる目的で、下記ウイルスおよび菌を各種の界面活性剤で処理し、処理後のウイルス価および生菌数を調べた。
【0025】
(1)供試ウイルス、細菌
▲1▼弱毒豚流行性下痢ウイルス(PEDV)K962株;野外の感染豚から分離した強毒株をミドリ猿腎由来Vero細胞で低温順化した弱毒株(株式会社微生物化学研究所)。
▲2▼弱毒豚伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)TO−K株;野外の感染豚から分離した強毒株をハムスター由来HAL細胞で低温継代順化した弱毒株(株式会社微生物化学研究所)。
▲3▼豚繁殖・呼吸器障害症候群ウイルス(PRRSV);野外の感染豚から分離して低温継代した弱毒株(株式会社微生物化学研究所)
▲4▼弱毒豚丹毒菌小金井株;独立行政法人農業技術研究機構動物衛生研究所より分与されたもの。
▲5▼マイコプラズマ・ハイオニューモニエYB−O1株;野外の感染豚より分離した強毒株(株式会社微生物化学研究所)。
【0026】
(2)供試親水性界面活性剤
▲1▼W/O乳化剤(1次乳化剤)
・無水マンニトールオレイン酸エステル(HLB2.4、分子量428)
▲2▼親水性界面活性剤(2次乳化剤)
・モノラウリン酸ヘキサグリセリル(HLB14.5、分子量約752)
・モノラウリン酸デカグリセリル(HLB15.5、分子量約1,120)
・モノステアリン酸デカグリセリル(HLB12.0、分子量約1,200)
・モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(HLB15.6、分子量約1,250)
・トリステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(HLB10.5、分子量約1,092)
・ポリオキシエチレン(100)硬化ひまし油(HLB16.5、分子量約5,000〜5,500)
▲3▼高分子乳化剤(2次乳化剤)
・疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース(三協化学製「サンジェロース90L」;平均分子量約650,000)
・コール−AECM−マンナン(同仁化学製;[N-[2-(Cholesterylcarboxyamino)ethyl]carbamoylmethyl]mannan;平均分子量約200,000)
・コール−AECM−プルラン(同仁化学製;[N-[2-(Cholesterylcarboxyamino)ethyl]carbamoylmethyl]pullulan;平均分子量約50,000)
・カルボキシビニルポリマー(BF Goodrich製;平均分子量約600,000)
・アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(BF Goodrich製;平均分子量約600,000)
【0027】
(3)試験方法
各種界面活性剤を1w/v%、0.5w/v%、0.2w/v%、0.1w/v%、0.05w/v%、0.025w/v%または0.01w/v%の濃度になるようにPEDV、TGEVおよびPRRSVのウイルス液に添加し、4℃30分間静置した後に猫腎由来fcwf細胞の単層培養を用いてウイルス価を測定した。豚丹毒菌およびマイコプラズマ・ハイオニューモニエについては、各種界面活性剤を5w/v%、0.5w/v%、0.2w/v%、0.1w/v%、0.05w/v%、0.025w/v%または0.01w/v%の濃度になるように添加し、同様に処理し、馬肉ブイヨン寒天培地で混釈培養して生じたコロニー株を計測した。結果を表1〜5に示す。
【0028】
なお、表中、MLHはモノラウリン酸ヘキサグリセリル、MLDはモノラウリン酸デカグリセリル、MSDはモノステアリン酸デカグリセリル、MPPOEはモノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、TSPOEはトリステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、POECOはポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油、HP−HPMCは疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、CAECM−Mはコール−AECM−マンナン、CAECM−Pはコール−AECM−プルラン、CVPはカルボキシビニルポリマー、またAMCOPはアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体をそれぞれ表す。また、PEDV、TGEVおよびPRRSVはウイルス価(log10TCID50/ml)で、豚丹毒菌およびマイコプラズマ・ハイオニューモニエは寒天混釈培養で生じたコロニー数で表示した。さらに、表中の「判定不能」は、界面活性剤の細胞毒性により単層細胞が脱落したことによりウイルス価の測定ができなかったことを示す。また、「ND」は、この濃度においては極めて粘度が高くなるために取扱いができず、測定を実施しなかったことを示す。
【0029】
【表1】
Figure 0003812814
【0030】
【表2】
Figure 0003812814
【0031】
【表3】
Figure 0003812814
【0032】
【表4】
Figure 0003812814
【0033】
【表5】
Figure 0003812814
【0034】
表1〜5に示した結果から明らかなように、PEDV、TGEVおよびPRRSVは、共に親水性界面活性剤のいかなる濃度においてもウイルス活性が失われたが、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コール−AECM−マンナン、コール−AECM−プルランにおいては各濃度で全くウイルス価の低下は認められなかった。また、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体においても実用至適濃度(0.01〜0.1w/v%)内におけるウイルス価の低下は認められなかった。一方、豚丹毒菌においては、PEDV、TGEV、PRRSVでみられたような強い影響は認められず、0.1w/v%程度の低濃度ではむしろやや発育が促進されるが、界面活性剤を用いて乳剤を調製する際に通常使用する数w/v%の濃度では生菌数が低下する傾向がみられた。またマイコプラズマでは0.2w/v%以上の濃度では発育抑制が認められた。
従って、これらの界面活性剤が高濃度においては豚丹毒菌などの細菌に対しても発育抑制を示すことが確認された。これらのことから、低分子非イオン性乳化剤は、ウイルスや菌などの微生物の生物活性に対して重大な影響を及ぼすのに対して、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コール−AECM−マンナン、コール−AECM−プルラン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体などの高分子乳化剤は、ウイルスや菌の生物活性に殆ど影響を与えないことが確認された。
【0035】
[実施例1]母子免疫用、豚伝染性胃腸炎、豚流行性下痢、豚大腸菌下痢症、豚萎縮性鼻炎混合多価ワクチンの調製と効力検定
(1)豚伝染性胃腸炎、豚大腸菌下痢症2種混合生ワクチンの調製
▲1▼上記実験で用いたものと同じ弱毒豚伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)をハムスター肺由来HAL細胞で培養してウイルス液を得た。
▲2▼上記実験で用いたものと同じ弱毒豚流行性下痢症ウイルス(PEDV)をミドリザル腎由来Vero細胞で培養して得られたウイルス液を限外ろ過で約10倍に濃縮したウイルス液を得た。
上記▲1▼、▲2▼のウイルス液を最終ワクチン中でTGEV、PEDVがそれぞれ約6.0log10TCID50/doseとなるように濃度調製して混合し混合し、凍結乾燥保護剤を加え、20mlバイアル瓶に20ml宛分注して凍結乾燥した。
【0036】
(2)豚大腸菌下痢症、豚萎縮性鼻炎混合不活化W/O/W型オイルワクチンの調製
1)毒素原性大腸菌(K88及びK99)のホルマリン不活化菌体の調製
K88及びK99保有毒素原性大腸菌(いずれも野外の感染豚より分離された株、株式会社微生物化学研究所)をそれぞれ37℃、7時間攪拌タンク培養後、培養液に最終濃度0.2v/v%になるようにホルマリンを加え、37℃で48時間処理して両株の不活化菌液を得た。
2)ボルデッテラ・ブロンキセプチカ赤血球凝集素(HA)抗原の調製
ボルデッテラ・ブロンキセプチカI相菌(野外の感染豚より分離された株、株式会社微生物化学研究所)を37℃48時間通気攪拌タンク培養し、培養上清からソーナル遠心、ゲルろ過でHA抗原を得た。
3)パスツレラ・マルトシダ壊死毒(PMT)抗原の調製
パスツレラ・マルトシダ強毒菌(野外の感染豚より分離された株、株式会社微生物化学研究所)を37℃、48時間攪拌培養し、培養上清から限外ろ過でPMTを採取し、ホルマリン0.3v/v%を加えて不活化毒素を調製した。
【0037】
各抗原を遠心洗浄または限外ろ過で透析して余剰ホルマリンを除去し、最終ワクチン中において、大腸菌K88およびK99がそれぞれ5×107CFU/dose、ボルデッテラ・ブロンキセプチカが1000HA unit/dose、パスツレラ・マルトシダが1000DNT unit/doseになるように原液の各抗原量を調整し、この3容を、マンニトールオレイン酸エステル(親油性乳化剤)5w/v%、スクワラン20v/v%を添加した流動パラフィン7容と混合乳化して、W/O型の1次乳剤を調製した。次に、前記W/O型乳剤を高分子乳化剤である疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース(三協化学製「サンジェロース90L」;平均分子量約650,000)、コール−AECM−マンナン(同仁化学製;平均分子量約200,000)の各0.2w/v%水溶液または0.02w/v%アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(BF Goodrich社製;平均分子量約600,000)水溶液に滴下しながら高速ホモジナイザーで乳化し、さらに高圧ホモジナイザーで均質に乳化して3種類の安定なW/O/W型オイルアジュバントワクチンを調製し20mlバイアル瓶に各々20ml宛分注した。
【0038】
(3)最終ワクチンの調製と豚への接種
上記(1)記載の凍結乾燥生ウイルスワクチンに上記(2)記載の3種のオイルアジュバントワクチンをそれぞれ全量加えて溶解し、1検体宛3頭の妊娠豚に交配後1ヶ月および分娩予定日の1ヶ月前の2回、頸部筋肉内に2ml宛注射した。
【0039】
(4)ワクチン接種豚の抗体測定
1)ワクチン接種豚のTGEV、PEDVに対する中和抗体価の測定。
社団法人動物用生物学的製剤協会(平成7年10月発行)、動物用生物学的製剤基準および追加基準を準用し、上記ワクチン接種妊娠豚の分娩時の血清、初乳乳清、産子の生後7日後の血清をサンプルとして96穴のプラスチックプレートを用いて測定した。
2)ワクチン接種豚のK88、K99に対する抗体測定(ELISA抗体価の測定)
社団法人動物用生物学的製剤協会(平成7年10月発行)、動物用生物学的製剤基準に記載の豚大腸菌性下痢症(K88保有全菌体・K99保有全菌体)不活化ワクチンの力価試験法を準用し、上記ワクチン接種妊娠豚の分娩時の血清、産子の生後7日目の血清を検体としてELISA抗体価を測定した。
3)ワクチン接種豚のボルデッテラ・ブロンキセプチカに対する抗体測定(HI抗体価の測定)
社団法人動物用生物学的製剤協会(平成7年10月発行)、動物用生物学的製剤基準に記載のボルデッテラ感染症精製不活化ワクチンの力価試験法を準用し、上記ワクチン接種妊娠豚の分娩時の血清と初乳乳清、産子の生後7日目の血清を検体として抗体価を測定した。
4)ワクチン接種豚のパスツレラ・マルトシダトキソイドに対する抗体測定(PMT中和抗体価の測定)
上記ワクチン妊娠豚の分娩時の血清と初乳乳清、産子の生後7日目の血清をそれぞれ2倍段階希釈し、これにPMT(パスツレラ・マルトシダトキシン)(5MLD/0.1ml)を等量混合し、37℃で1時間感作した。次に、この混合物0.1mlを5週齢のBALB/cマウスの脚部筋肉内に注射して7日間観察した。マウスが毒素に耐過生存した血清の希釈倍率をPMT中和抗体価とした。
【0040】
高分子乳化剤として0.2%疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用したW/O/W型多価オイルアジュバントワクチン接種豚の血清・初乳および7日齢産子の血清抗体価を表6〜11に、高分子乳化剤として0.2%コール−AECM−マンナンを使用したW/O/W型多価オイルアジュバントワクチン接種豚の血清・初乳および7日齢産子の血清抗体価を表12〜17に、高分子乳化剤として0.02%アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を使用したW/O/W型多価オイルアジュバントワクチン接種豚の血清・初乳および7日齢産子の血清抗体価を表18〜23に示す。
【0041】
【表6】
Figure 0003812814
【0042】
【表7】
Figure 0003812814
【0043】
【表8】
Figure 0003812814
【0044】
【表9】
Figure 0003812814
【0045】
【表10】
Figure 0003812814
【0046】
【表11】
Figure 0003812814
【0047】
【表12】
Figure 0003812814
【0048】
【表13】
Figure 0003812814
【0049】
【表14】
Figure 0003812814
【0050】
【表15】
Figure 0003812814
【0051】
【表16】
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【0052】
【表17】
Figure 0003812814
【0053】
【表18】
Figure 0003812814
【0054】
【表19】
Figure 0003812814
【0055】
【表20】
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【0056】
【表21】
Figure 0003812814
【0057】
【表22】
Figure 0003812814
【0058】
【表23】
Figure 0003812814
【0059】
表6〜23に示したように、高分子乳化剤を用いて調製したW/O/W型オイルアジュバントワクチンを接種された母豚は、豚伝染性胃腸炎、豚流行性下痢、豚大腸菌下痢症、豚萎縮性鼻炎から産子を防御するに十分な抗体を産生することが確認された。また、社団法人動物用生物学的製剤協会(平成7年10月発行)、動物用生物学的製剤基準に記載の各種ワクチンの力価検定法を準用した試験を実施したところ、全ての項目において合格することが確認され、有効性が確認された。
【0060】
(5)安全性に関する試験結果
本ワクチン接種後、30分、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間の母豚の体温測定を実施するとともに、最終注射後2ヶ月で解剖し、ワクチン接種部位の局所反応について観察した。その結果、全ての高分子乳化剤を用いて2次乳化したワクチンを注射した豚では注射当日には一過性の軽い発熱をみたが、翌日には回復した。
注射局所の剖検では疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた豚のNo.926、929、932は接種反応を認めなかったが、No.928においては、注射局所に2〜4mm程度の肉芽腫性反応を数個認めた。コール−AECM−マンナンを用いた豚で、No.911と912で直径2mm前後のオイルグラニュローマが確認されたが、他の豚では接種反応は認められなかった。アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体はNo.916、918で3×4mmのオイルグラニュローマがそれぞれ2箇所確認されたが他の豚では反応を認めなかった。これらの所見は、通常のW/0型ワクチンが注射部位周辺に直径数センチに渡る広範囲にオイルグラニュローマを形成する強い炎症反応を示すのと比較して、本発明の高分子乳化剤を用いたW/O/Wワクチンでは注射局所に限局してオイルグラニュローマが形成される反応が認められたのみで、本W/O/W型オイルアジュバントワクチンの安全性が確認された。
【0061】
以上の結果から、高分子乳化剤によって乳剤を形成して生と不活化の抗原を同一製剤中に含む本発明のW/O/W型オイルアジュバントワクチンの有効性が確認された。
【0062】
[実施例2]肥育豚用豚アクチノバチルス1、2、5型、豚丹毒、豚繁殖・呼吸障害症候群混合多価ワクチンの調製と検定
(1)豚丹毒、豚繁殖・呼吸障害症候群混合生ワクチンの調製
▲1▼弱毒豚丹毒菌小金井株(独立行政法人農業技術研究機構動物衛生研究所より分与されたもの)を37℃で24時間培養した菌液を採取した。
▲2▼弱毒豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRSV)ウイルス(野外の感染豚より分離して低温継代で弱毒化した株;株式会社微生物化学研究所)をMARC細胞で増殖させ、限外ろ過で10倍に濃縮したウイルス液を調製した。
上記▲1▼および▲2▼の菌液およびウイルス液に凍結乾燥保護剤を加えて、豚丹毒、豚繁殖・呼吸障害症候群混合生ワクチンを調製した。
(2)豚アクチノバチルス3価O/W型オイルワクチンの調製
1)豚アクチノバチルス1、2、5型菌培養上清由来抗原の調製
アクチノバチルス1型Y−1株菌、2型G−5株菌および5型E−3株菌(いずれも、野外の感染豚より分離した強毒株;株式会社微生物化学研究所)を37℃、12時間攪拌タンク培養した菌液より遠心分離で培養上清を採取し、限外ろ過で抗原を濃縮して上記1、2、5型のワクチン抗原を得た。各抗原画分に最終濃度0.3v/v%になるようにホルマリンを加え37℃で2日間処理して蛋白を固定化して3種の抗原を調製した。
2)O/W型不活化オイルワクチンの調製
各抗原中の余剰ホルマリンを限外ろ過で除去し、適当な抗原濃度に調整したのち疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース(三協化学製「サンジェロース90L」;平均分子量約650,000)を終濃度0.2w/v%になるように加え、その7.5容にマンニトールオレイン酸エステル(親油性乳化剤)2w/v%添加スクワラン2.5容を滴下しながら高速ホモジナイザーで混合乳化し、さらに高圧ホモジナイザーにかけて均質化して豚アクチノバチルス3価O/W型オイルワクチンを調整し、20mlバイアル瓶に各々20ml宛分注した。
(3)ワクチン接種
上記(1)記載の生ワクチンに上記(2)記載のO/W型不活化ワクチンを全量加えて溶解し、その2mlを1ヶ月齢肥育豚の耳根部筋肉内に注射し、さらに1ヶ月後に同じく2mlを注射して免疫し、2回目注射の3週間後に採血して血清抗体価を測定した。
【0063】
(4)抗体価の測定方法
1)豚アクチノバチルス1、2、5型に対するELISA抗体価の測定
1. 各血清型ELISA抗原を炭酸緩衝液で所定の倍率に希釈し、ELISA用プレートの各ウェルに100μlずつ分注する。
2. 4℃、一晩感作させる。
3. プレートをTween20加PBS(T-PBS)で洗浄する(3回)。
4. 0.5%牛血清アルブミン溶液を各ウェルに200μlずつ分注する。
5. 37℃、1時間感作させる。
6. プレートをT-PBSで洗浄する(3回)。
7. T-PBSで100倍より2倍段階希釈した血清を各ウェルに100μlずつ分注する。
8. 37℃、1時間感作させる。
9. プレートをT-PBSで洗浄する(3回)。
10. T-PBSで所定の倍率に希釈したPOD標識抗豚IgGを各ウェルに100μlずつ分注する。
11. 37℃、1時間感作させる。
12. プレートをT-PBSで洗浄する(5回)。
13. 過酸化水素加0.04%オルトフェニレンジアミン溶液を各ウェルに100μlずつ分注する。
14. 遮光して30℃、30分間反応させる。
15. 1M硫酸溶液を各ウェルに50μlずつ分注する。
16. 波長490nmと630nmの二波長で吸光度を測定し、その差をELISA価とする。
17. ELISA価が0.5を示す最高希釈倍率を抗体価とする。
【0064】
2)豚丹毒菌に対する生菌発育凝集抗体価の測定
図1〜2に示す方法により生菌発育凝集抗体価を測定した。
判定は、管底に膜状の沈降物を生じるものを生菌凝集反応「+」、管底中央に円形の菌塊のみを生ずるものを生菌凝集反応「−」とした。「+」以上の生菌凝集反応を生ずる被検血清の最高希釈倍率の逆数を丹毒生菌凝集抗体価とした。
【0065】
3)PRRSウイルスに対する間接蛍光抗体(IFA)価の測定
4穴チャンバースライドにミドリ猿由来MARC細胞を単層培養し、PRRSウイルスchiba−92株(独立行政法人農業技術研究機構動物衛生研究所より分与されたもの)を感染させた後、2日目にウイルス感染細胞をアセトン固定し、2倍段階希釈した被検血清を37℃1時間感作し、リン酸緩衝整理食塩水(PBS)で3回洗浄後、染色力価4単位に調整したFITC標識抗豚IgCウサギ血清を37℃1時間感作し、同様に洗浄後、無蛍光グリセリンPBSを用いてカバーグラスで封入し、NIKON落射型蛍光顕微鏡(日本光学製)でPRRSウイルスに対する蛍光を観察した。一次血清の最高希釈倍数の逆数をIFA価とした。
【0066】
以上の疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて調製した肥育豚用豚アクチノバチルス1、2、5型、豚丹毒、豚繁殖・呼吸障害症候群混合多価O/W型オイルアジュバンントワクチンの血清抗体化の測定結果を表24〜28に示す。なお、表中、App−1は豚アクチノバチスル1型、App−2は豚アクチノバチスル2型、App−5は豚アクチノバチスル5型、PRRSVは豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルスを表す。
【0067】
【表24】
Figure 0003812814
【0068】
【表25】
Figure 0003812814
【0069】
【表26】
Figure 0003812814
【0070】
【表27】
Figure 0003812814
【0071】
【表28】
Figure 0003812814
【0072】
表24〜28に示すように、本発明のO/W型オイルアジュバントワクチンの各抗原に対する抗体価は、これら感染症から肥育豚を十分防御するに足る抗体価を示し、その有効性が確認された。また本発明のO/W型オイルアジュバントワクチンを接種された供試豚は発熱も一過性で、剖検に於いても接種部位に全く変化は認められなかった。
【0073】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、可溶化作用のある親水性界面活性剤を含まず、高分子乳化剤を用いることで、不活化および生の多種の抗原を同一製剤中に含有させることができ、省力的かつ安全なO/W型またはW/O/W型の動物用多価オイルアジュバントワクチンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 豚丹毒菌に対する生菌凝集抗体価の測定方法。
【図2】 豚丹毒菌に対する生菌凝集抗体価の測定方法。

Claims (12)

  1. 不活化抗原と弱毒化した生ウイルスまたは生菌とを含有し、多糖エステルまたはアミド、カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の高分子乳化剤を用いて乳化して調製されてなるO/W型またはW/O/W型の動物用多価オイルアジュバントワクチンであって、
    前記高分子乳化剤を用いて乳化して調製されたO/W型乳剤の水相中に不活化抗原が含有されたO/W型不活化ワクチンまたは前記高分子乳化剤を用いて2次乳化して調製されたW/O/W型乳剤の内水相中および/または外水相中に不活化抗原が含有されたW/O/W型不活化ワクチンと、別に凍結乾燥された生ウイルスもしくは生菌または前記生ウイルスもしくは生菌を凍結乾燥した生ワクチンとを混合してなることを特徴とするO/W型またはW/O/W型の動物用多価オイルアジュバントワクチン
  2. 多糖エステルまたはアミドが、セルロース脂肪酸エステルである請求項1に記載の動物用多価オイルアジュバントワクチン。
  3. 多糖エステルまたはアミドが、マンナンコレステロールエステルまたはプルランコレステロールエステルである請求項1に記載の動物用多価オイルアジュバントワクチン。
  4. 生ウイルスが、エンベロープを有するウイルスである請求項1〜3のいずれかに記載の動物用多価オイルアジュバントワクチン。
  5. エンベロープを有するウイルスが、コロナウイルス科に属するウイルスである請求項4に記載の動物用多価オイルアジュバントワクチン。
  6. コロナウイルス科に属するウイルスが、豚伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)および/または豚流行性下痢ウイルス(PEDV)である請求項5に記載の動物用多価オイルアジュバントワクチン。
  7. エンベロープを有するウイルスがアルテリウイルス科に属するウイルスである請求項4に記載の動物用多価オイルアジュバントワクチン。
  8. アルテリウイルス科に属するウイルスが、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)である請求項7に記載の動物用多価オイルアジュバントワクチン。
  9. 生菌が、豚丹毒菌である請求項1〜3のいずれかに記載の動物用多価オイルアジュバントワクチン。
  10. 不活化抗原が、毒素原性大腸菌、ボルデッテラ・ブロンキセプチカ、パスツレラ・マルトシダからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の動物用多価オイルアジュバントワクチン。
  11. 多糖エステルまたはアミド、カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の高分子乳化剤を用いて乳化して調製されたO/W型乳剤の水相中に不活化抗原が含有されたO/W型不活化ワクチンに、生ウイルスまたは生菌を凍結乾燥した生ワクチンを添加して溶解し、これを動物(ただし、ヒトを除く)に接種することにより動物を免疫する方法。
  12. 多糖エステルまたはアミド、カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の高分子乳化剤を用いて2次乳化して調製されたW/O/W型乳剤の内水相中および/または外水相中に不活化抗原が含有されたW/O/W型不活化ワクチンに、生ウイルスまたは生菌を凍結乾燥した生ワクチンを添加して溶解し、これを動物(ただし、ヒトを除く)に接種することにより動物を免疫する方法。
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