JP3812047B2 - エリスリトール結晶及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は甘味料として有用なエリスリトール結晶及びその製造方法に存し、特にエリスリトール微粉末の保存に際して固結を抑制し使用時の粉砕等が不要な容易使用可能なエリスリトール結晶及びその製造方法に存する。
【0002】
【従来の技術】
甘味料として糖類、特に蔗糖は従来から慣れ親しまれており、独特の甘味質からその消費量も多い。しかし近年、蔗糖等の過剰摂取による虫歯、肥満、糖尿病患者の増加などが問題になってきている。このため、製菓業界では蔗糖を含まない低カロリー、低う蝕化を図った粉末糖が多数開発され、既に市販されているものもある。最近になって、四炭糖アルコールであるエリスリトールの製造方法が開発されて、エリスリトールが低カロリー・非う蝕性甘味料として販売されたことから、これを種々の甘味食品へ利用することが試みられている。エリスリトールは四炭糖の糖アルコールで水溶性に富み、非常に結晶化し易く、結晶は美麗で白色である。甘味の強さは蔗糖の約44%であり、食すると爽やかな冷感を感じるという特徴を有するのでテーブルシュガー等に広く用いられてきた。また、エリスリトール微細結晶粉末の外観は砂糖の粉糖の様で水に溶けやすく、食した際冷感と滑らかな食感を有しているので打錠菓子、ガム類及びチョコレート等様々な製菓製造に用いられている。例えば、特公昭56−18180号公報にエリスリトールを使用したチューイングガムなどへの利用が記載されており、また特開平1−174332号公報にはエリスリトールからなる非吸湿性アイシング剤に関する記載がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、エリスリトール粉末は蔗糖粉末に比較すると吸湿性が極めて小さいにもかかわらず保存中に固結することがあり、使用に供する際に再度粉砕を必要とするなど取り扱いに不便な点があった。又、このような固結したものを用いると他の製菓原料との混合に於いて混合が充分に行えず、例えば、固結したエリスリトールを例えばチョコレートを製造する際ココアバター、ビターチョコレート、乳化剤などと混合すると均一に混合することが出来ずグリツ状になり肌理の滑らかなチョコレートは得られないという問題があった。
チョコレート等の特に滑らかな食感を望まれる食品において、特に、結晶粒径が75μm篩上以上のものは食した際ざらつきを感じ好ましくない課題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上述が如き問題について鋭意検討した結果本発明を完成させた。本発明者はエリスリトール結晶粒径1000μm篩下から360μm篩上が97重量%、水分含有量0.05重量%のものを結晶粉砕し、粉末エリスリトールの水分を測定したところ、意外にも水分含有量が2倍近く増加することが解った。また、結晶粒径44μm篩下、水分含有量0.06重量%のものはクラフト袋に入れ保存しても固結することがないことが解った。ところでエリスリトールは、前述のように吸湿しにくい性質であるため、雰囲気の湿度による影響で水分が増加することは殆ど無い。従って、固結原因はエリスリトール結晶間または結晶内部に存在する水(以下、「内部水分」または「結晶内部水分」と称することもある)が粉砕によりフリーになることが原因であることが判明し、また、特定粒径のエリスリトールにおいて粉末中水分含有量が0.06%以下であれば固結しないことが判明し、本発明を完成させた。
【0005】
即ち、本発明の要旨は、粒径が44μm篩下で、かつ、水分含有量が0.06重量%以下であることを特徴とするエリスリトール結晶に存する。また本発明の他の要旨は、1000μm篩下から360μm篩上の結晶を97重量%以上、360μm篩下の結晶を3重量%未満含有しており、かつ、水分含有量が0.2重量%以下のエリスリトール結晶を、20〜110℃、相対湿度65%以下の条件で粉砕して上記エリスリトール結晶とすることを特徴とするエリスリトール結晶の製造方法に存する。本発明の更に他の要旨は、上記のエリスリトール結晶をクラフト袋又は樹脂製袋に入れて保管することを特徴とするエリスリトール結晶を固結させずに保管する方法に存する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエリスリトール結晶はJIS標準篩による44μm篩下の結晶粒子でいわゆる微粉末であっても、水分含有量を0.06重量%以下とすることで樹脂製袋に梱包しても経時的な固結は生じず結晶は流動性を保ち、製菓等の製造に際して有効である。水分含有量が0.06重量%を超えると梱包時は流動性を保っているものの、経時的に固結してしまう。なお、本発明において、水分含有量とは、常圧、105℃、4時間の加熱乾燥による蒸発減量のことを指す。
【0007】
このような微細なエリスリトール結晶は通常公知の方法で得られた結晶を任意の方法で粉砕・乾燥させて得られる。通常、エリスリトール結晶はブドウ糖等を原料としてエリスリトール生産菌の存在下、水性培地中、好気性条件下で培養して得た混合培養液を精製し、これを晶析等の操作により回収される結晶を任意の方法で粉砕・乾燥して得られる。
【0008】
通常、エリスリトール結晶の乾燥方法としては、流動乾燥で40〜50℃で10〜20分間流動乾燥を行う方法がとられている。この方法で得られた結晶の水分含有量は0.10重量%であるが内部水分が除去出来ていないのでこれに内部水分を加えれば約0.15〜0.20重量%となり、固結するに十分な水が存在することになる。
そこで本発明の水分含有量が0.06重量%以下のエリスリトール結晶を得るには、結晶内部水分を除去する必要がある。
【0009】
結晶内部水分を除去する方法としては、高温で長時間乾燥する方法が挙げられるが、特に、本発明の微細で低水分含量のエリスリトール結晶を得るには、エリスリトール結晶を、まず、1000μm篩下から360μm篩上の結晶を97重量%以上、360μm篩下の結晶を3重量%未満含有し、水分含有量が0.2重量%以下のエリスリトール結晶とし、次いでこれを、粒径が44μm篩下で水分含有量が0.06重量%以下のエリスリトール結晶となるように粉砕乾燥する方法によるのが好ましい。この方法によると、結晶内部水分を効率良く、短時間で蒸発させることが可能となる。また、高温、長時間乾燥させる方法と比較して、エリスリトール結晶の風味を損うこともない。
【0010】
なお、上記の工程に於いて水分を除去する方法としては、結晶を粉砕する際に熱風又は乾燥空気を気流として用いる流動乾燥方法で水を除去する方法が好ましい。
このとき、乾燥空気の温度は、高ければ乾燥時間を短くすることができるが、熱風温度が110℃を超えるとエリスリトールが溶解、溶融することがあるので、110℃以下が好ましい。また、流動乾燥は相対湿度が低い条件で行う方が良く、相対湿度を65%以下としておく方が効率が上がり好ましい。
乾燥方法は熱風を用いる棚式乾燥機、トンネル型乾燥機等を用いることができるが、気流乾燥機は、乾燥速度が早く、乾燥機と空気搬送装置の機能をあわせもつので有利である。乾燥が終了したならばエリスリトール結晶をポリエチレン等の樹脂製袋に充填し封をすることで固結を生じさせずに保存することができる。
【0011】
【実施例】
以下に示す実施例によって、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
実施例及び比較例
以下の条件下、奈良式M−4型粉砕機(奈良機械社製)を用い、エリスリトール(三菱化学フーズ社製)を下記の条件で粉砕乾燥後44μm篩(JIS標準篩)で篩分けして得られたエリスリトール結晶20kgをポリ袋(6cm×6cm)に充填し段ボール箱(縦、横、高さは各々31cm、45cm、28cm)に入れて室温(5〜25℃)の条件下2ヵ月間保存し固結状態を観察・評価した。固結状態は、丸型バネ式テンションゲージ(OBA インスツルメント ワークス LTD)で測定した。結果を表1に示した。
【0012】
粉砕・乾燥条件
粉砕機 奈良機械(社)製 M−4型粉砕機、回転数3550(RPM)、スクリーン0.25(mm)、処理量(kg/min)10/2
乾燥温度 72℃
粉体供給量 30(kg/H)、粉体投入方法 電磁フィーダ
室内雰囲気 22(℃)、相対湿度40%
保存期間 室内2ヶ月
【0013】
【表1】
表1
Figure 0003812047
【0014】
上記の結果よりエリスリトール結晶粒径が44μm以下、水分含有量が0.06重量%以下のものは2ヶ月保存しても固結しない。これに対し、比較例の水分含有量が0.08重量%のものは固結した。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、長期間保存しても固結しない結晶粒径44μm以下のエリスリトール結晶が得られる。本発明のエリスリトール結晶は、取扱いやすく他の食品材への混合が容易であり、特に、チョコレート、キャンデーなどに用いた際にざらつきのない滑らかな食感を有するものが得られる。

Claims (4)

  1. 粒径が44μm篩下で、かつ、水分含有量が0.06重量%以下であることを特徴とするエリスリトール結晶。
  2. 1000μm篩下から360μm篩上の結晶を97重量%以上、360μm篩下の結晶を3重量%未満含有しており、かつ、水分含有量が0.2重量%以下のエリスリトール結晶を、20〜110℃、相対湿度65%以下の条件で粉砕することを特徴とする請求項1に記載のエリスリトール結晶の製造方法。
  3. 粉砕を、温度20〜110℃、相対湿度65%以下の空気を気流として用いる流動乾燥条件下に行うことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
  4. 請求項1に記載のエリスリトール結晶をクラフト袋又は樹脂製袋に入れて保管することを特徴とするエリスリトール結晶の保管方法。
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