JP3811614B2 - 廃水の処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境ホルモン等の難分解性物質含有廃水や高濃度廃水を処理した場合に、これらの廃水中に含有されている有機性及び無機性物質を、炭酸ガス、水、窒素にまで酸化分解するのに有効な湿式酸化方式を用いた廃水の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水中の汚濁物質は、河川や湖沼等の自然の中で、沈殿、凝集、酸化、還元等の物理化学的、生物学的な作用を受けて分解除去されて浄化される。特に有機物を含んだ汚濁は、微生物による生物学的な作用で浄化され易い。これを利用した活性汚泥によって有機性廃水を処理する活性汚泥法は、浄化能力が高く、比較的に処理経費が少なくて済む等の利点があり、広く一般に行なわれている。しかし、有機物の分解に長時間を要し、しかも、微生物の成育に適した濃度に廃水を希釈する必要があるので処理施設の設置面積が広大になり、更に、処理によって生み出される生物難分解性物質等を含む余剰汚泥の処理を必要とし、かかる余剰汚泥の処理に関して、莫大な処理コストの問題や廃棄による環境汚染発生等の問題もある。
【0003】
上記生物処理方法に対して、廃水を湿式酸化によって化学的に酸化処理して浄化する方法がある。この方法では、高濃度の有機物を含む水溶液に対し、例えば、0.40〜20MPaの圧力下、150〜370℃の温度で、有機物の酸化分解を行う。かかる方法によれば、有機性及び無機性物質を多く含む高濃度廃水を、無害な炭酸ガス、水、窒素にまで分解することが可能である。しかし、この方法では、反応速度が遅く、完全に酸化分解するには長時間を要し、又、環境ホルモン等の難分解性物質に対しては分解率が低いという問題もある。近年、これを解消すべく、各種酸化触媒の使用や、触媒を特定の担体に担持させる方法等が検討されているが、未だ充分とは言えない。又、酸化剤としてオゾン又は過酸化水素を用い、常温、常圧で有機物を酸化分解する方法等が提案されているが、常温、常圧下で処理を行なっているため、高価なオゾンを多く必要とし、経済的でない上に反応速度が遅く、有機物の分解率が低いといった問題があり、これも充分なものとは言えなかった。
【0004】
これに対し、特公平3−34996号公報に、廃水を固体触媒の存在下に、370℃以下の温度で、該廃水が液相を保持する圧力下に処理するに際して、該廃水中の有機性及び無機物質を窒素、炭素ガス及び水にまで分解するに必要な理論酸素量の1.0〜1.5倍量の酸素を含有するガスと、オゾン及び/又は過酸化水素の共存下に該廃水を湿式酸化する廃水の処理方法が提案されている。かかる方法によれば、従来、酸化剤として使用していた分子状酸素に、オゾン及び/又は過酸化水素を併用させることで、比較的、低温、低圧で反応が遂行し、有機物を高い効率で分解処理できるとされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、確かに上記した廃水の処理方法では、酸素を含有するガスのみで酸化処理する場合よりも、その処理効率を向上することが確認されるものの、未だ完全に有機性及び無機性物質を、炭酸ガス、水、窒素にまで酸化分解するところ迄には至っていない。又、酸化分解処理にオゾンを用いる場合には、オゾンが高価であるので処理コストがかかり、しかも、未反応オゾンの発生に対して、無害化処理が必要となるといった問題があった。更に、酸素を含有するガスに、過酸化水素を併用する処理にあっては処理が煩雑になるという問題がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、環境ホルモン等の難分解性物質含有廃水や高濃度廃水を処理した場合における、廃水中の有機性及び無機性物質を湿式酸化で酸化分解して浄化する廃水の処理方法において、有機性及び無機性物質をほぼ完全に、炭酸ガス、水、窒素にまで酸化分解することができる簡易且つ経済的な廃水の処理方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。即ち、本発明は、難分解性物質であるベンゾフェノンを含む廃水を酸化分解処理する廃水の処理方法において、0.40〜20MPaの圧力及び125〜250℃の加温加圧下で、酸化剤として過酸化水素を用い、pH2.0以上3以下の条件で処理することを特徴とする廃水の処理方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、上記した従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究の結果、難分解性物質含有廃水及び/又は高濃度廃水を湿式酸化法により処理する場合に、酸化剤として、酸素を含有するガスやオゾンを用いることなく、加温加圧下、過酸化水素のみを用いて(好ましくは、その使用量を炭酸ガス等への酸化分解処理に必要な理論酸素量の0.1〜5倍とする)、pH6以下の酸性条件下で処理することで、廃水中に含まれている有機性及び無機性物質を、ほぼ完全に、無害な炭酸ガス、水、窒素にまで酸化分解することができることを知見して本発明に至った。更に、本発明者らの検討によれば、過酸化水素と共に金属触媒を用いて処理すれば、比較的低温条件下でも、高効率の処理が可能となることがわかった。以下、本発明の廃水の処理方法で使用する各材料について説明する。
【0009】
先ず、本発明の廃水の処理方法では、酸化剤として液体状の過酸化水素のみを使用する。従って、未反応オゾンの後処理の問題や、オゾンにかかる高コストの問題、使用するガス量についての煩雑な制御といった問題を生じることがない。更に、過酸化水素の使用量としては、廃水中の有機性及び無機性物質を、炭酸ガス、水、窒素にまで酸化分解するのに必要な理論酸素量の0.1〜5倍の範囲で使用することが好ましい。過酸化水素の量が、該理論酸素量の0.1倍よりも少ないと、酸化状態が不充分となり、一方、過酸化水素の量を上記理論酸素量の5倍よりも多くしても分解効率の更なる向上は望めないため経済的でなく、いずれも好ましくない。
【0010】
本発明においては、酸化剤として、上記の過酸化水素に加えて、従来公知の化学酸化方法において使用されている酸化剤、例えば、過酸化カルシウム、過硫酸アンモニウム、アルキルヒドロペルオキシド、過酸エステル、過酸化ジアルキル又はジアシル等を添加して、過酸化水素と併用してもよい。
【0011】
更に、本発明の廃水の処理方法では、加温加圧下、pH6以下の酸性条件下で、過酸化水素による酸化分解処理を行うことを特徴とする。本発明者らの検討によれば、従来知られていた廃水の湿式酸化処理方法では、いずれもpH9以上のアルカリ性の条件下で酸化処理が行なわれていたが、酸化剤として過酸化水素のみを用いる場合には、アルカリ性の条件下で酸化分解するよりも、pH6以下、更には5以下、より好ましくは、pH1.5〜3の酸性条件下で酸化分解を行なった方が、廃水中の有機性及び無機性物質の分解効率を向上でき、更には、これらの物質が、炭酸ガス、水、窒素にまで酸化分解する完全分解率をも格段に向上させることができることがわかった。
【0012】
更に、本発明者らの検討によれば、本発明の廃水の処理方法においては、酸化剤として用いる過酸化水素は、複数回に分けて添加する方が好ましいことがわかった。即ち、過酸化水素を複数回に分けて添加すると、有機性及び無機性物質を、炭酸ガス、水、窒素にまで酸化分解する完全分解率が、一度に過酸化水素を添加した場合に比べて格段に向上できることが確認できた。本発明においては、処理量によっても異なるが、例えば、2〜5回に分割して過酸化水素を添加することが好ましい。
【0013】
本発明の廃水の処理方法では、上記で説明したように、加温加圧下、酸化剤として過酸化水素を用い、pH6以下の条件下で処理すれば、難分解性物質含有廃水及び/又は高濃度廃水に含有されている有機性及び無機性物質の酸化分解処理法として十分な効果が得られるが、更に、下記に挙げるような金属触媒を添加し、金属触媒の存在下で過酸化水素による酸化分解処理を行えば、反応効率、反応速度を著しく向上させることが可能となる。この結果、有機性及び無機性物質を、より効率よく、ほぼ完全に酸化分解処理することができる。特に、金属触媒を用いると、比較的に低温で処理した場合にも、効率よく、ほぼ完全に無害な炭酸ガス、水、窒素にまで酸化分解することができる。
【0014】
この際に使用できる金属触媒としては、例えば、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、イットリウム、ニオブ、ルテニウム、銀、インジウム、スズ、ハフニウム、ビスマス、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、白金、ホルミウム、イッテルビウム等の金属、これらの金属酸化物、金属塩及び錯体からなる群から選ばれるものが挙げられる。本発明者らの詳細な検討によれば、これらの中でも特に、銅酸化物、鉄フェライト及び銅フェライトを使用した場合に、より効率よく、ほぼ完全に酸化分解処理することができ、好ましいことがわかった。又、これらの金属触媒の使用量としては、過酸化水素100mg/l当たり10〜100mg/lの範囲で添加すればよく、処理効率の向上効果が十分に得られる。
【0015】
図1に、金属酸化物を触媒として利用する態様の過酸化水素による酸化分解に使用することのできる反応装置の一例を図解的に示した。先ず、廃水を不図示のpH調整槽に導入し、処理対象となる廃水のpHを6以下にする。pH調整された廃水(被処理水)は、金属触媒が予め添加されている反応層へと導かれ、ここで過酸化水素を適宜な濃度となるように添加されて酸化処理がなされる。
【0016】
この際、従来の湿式酸化法と同様に、加温加圧の状態で反応させる。具体的には、温度を100〜370℃、好ましくは125〜250℃の範囲に加温して酸化処理を行なえばよい。又、圧力は0.40〜20MPa、好ましくは0.4〜6MPaの範囲に加圧して酸化処理を行なえばよい。金属酸化物を触媒として利用する態様の本発明の廃水の処理方法では、従来の湿式酸化法と比べて比較的、低温、低圧で処理できる。反応させる廃水を加熱する手段としては、例えば、水蒸気等の吹込み、工場における他の熱交換等、任意の手段を利用することができる。しかし、酸化分解処理する廃水が適宜の温度に加温加圧され、その状態を維持できれば、その方法は特に限定されない。
上記したような方法で過酸化水素による酸化反応が行なわれた反応液は、更に中和槽へと導入されて、ここで、水酸化ナトリウム等のアルカリが加えられ、反応液のpH値を6.5〜7.5に中和された後、放流される。
【0017】
本発明の廃水の処理方法の対象となる廃水としては、環境ホルモン等の難分解性物質を含有する廃水や、COD値で表される汚濁物質が5000ppm以上含まれている高濃度廃水が挙げられる。
【0018】
【実施例】
次に、本発明の実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。表1に、実施例及び比較例における酸化分解条件、及び、その分解率をまとめて示した。
<実施例1>
図1に示した反応容積300mlの回分式オートクレーブを使用して、ベンゾフェノンを80mg/l含む有機性の模擬廃水を作製し、該廃水の湿式酸化処理を行った。反応は、温度を150℃とし、初期反応pHを2.0とし、圧力0.40MPaの条件下で行った。過酸化水素を酸化剤として用い、その量は理論酸素量の1.50倍量とし、触媒は反応pHによる処理結果を明確にするために使用しなかった。
上記の酸化分解処理後に得られた処理水中のベンゾフェノンを測定した結果、全く残留しておらず、その分解率は99.9%以上であることがわかった。又、ベンゾフェノンの二酸化炭素までの完全分解率を測定したところ、92.8%であり、良好な状態で酸化分解が行われたことが確認できた。
【0019】
<実施例2>
初期反応pHを3.0とした以外は実施例1と同様にして、実施例1と同様の模擬廃水について酸化分解を行った。
酸化分解処理後に得られた処理水中のベンゾフェノンを、実施例1で行ったと同様の方法で測定した結果、全く残留しておらず、実施例1と同様に、その分解率は99.9%以上であることがわかった。更に、ベンゾフェノンの二酸化炭素までの完全分解率を測定したところ67.8%であり、実施例1の場合と比較すると劣っていた。
以上の実施例1及び実施例2とを比較した結果、完全に酸化分解させるには、反応pH値を3.0とするよりも、2.0と、より酸性側にする方が効率のよい完全な分解ができることが確認できた。
【0020】
<実施例3>
反応温度を125℃、初期反応pHを2.5とし、更に、触媒を添加した以外は実施例1と同様の方法で、実施例1と同様の模擬廃水の過酸化水素による酸化分解を行った。この際に、触媒として銅触媒を用い、試験開始当初に銅として200mg/lになるようにCuOを添加した。
酸化分解処理後に得られた処理水中のベンゾフェノンの分解率を、実施例1で行ったと同様の方法で測定した結果、99.9%以上であった。更に、実施例1と同様にして、ベンゾフェノンの二酸化炭素までの完全分解率を測定したところ、94.5%であった。
実施例1と比べて低温条件で、しかも反応pHは2.5であり、実施例1における反応pH2.0よりも酸性が弱いpHで処理したにも関わらず、実施例1と比べて更に完全分解率が向上したことから、金属触媒の使用が酸化分解に有効であることが確認できた。
【0021】
<実施例4>
初期反応pHを2.5とし、更に触媒を添加した以外は実施例1と同様の条件下で、実施例1と同様の模擬廃水について、過酸化水素による酸化分解を行った。この際、触媒としては銅触媒を用い、試験開始当初に銅として200mg/lになるようにCuOを添加した。
酸化分解処理後に得られた処理水中のベンゾフェノンの分解率を、実施例1で行ったと同様の方法で測定した結果、99.9%以上であった。更に、実施例1と同様にして、ベンゾフェノンの二酸化炭素までの完全分解率を測定したところ98.5%であり、良好な結果が得られた。
本実施例の条件は、触媒を添加し、pHを2.5にしたこと以外は実施例1と同様の条件であるのに対し、完全分解率が向上したことから、触媒の添加が過酸化水素による酸化分解の効率向上に有効であることが確認できた。
【0022】
<実施例5>
初期反応pHを2.5とし、酸化剤(過酸化水素)の量を理論酸素量の1.30倍量とし、更に触媒を添加した以外は実施例1と同様の条件下で、実施例1と同様の模擬廃水について、過酸化水素による酸化分解を行った。この際、触媒としては銅フェライト触媒を用い、試験開始当初にその含有量が300mg/lになるように添加した。
酸化分解処理後に得られた処理水中のベンゾフェノンの分解率を、実施例1で行ったと同様の方法で測定した結果、99.9%以上であった。更に、実施例1と同様にして、ベンゾフェノンの二酸化炭素までの完全分解率を測定したところ91%であり、良好な結果が得られた。本実施例の場合も、実施例4と同様に、触媒の添加が過酸化水素による酸化分解の効率向上に有効であることが確認できた。
【0023】
<実施例6>
初期反応pHを2.5とし、酸化剤(過酸化水素)の量を理論酸素量の1.30倍量とし、更に触媒を添加した以外は実施例1と同様の条件下で、実施例1と同様の模擬廃水について、過酸化水素による酸化分解を行った。この際、触媒としては鉄フェライト触媒を用い、試験開始当初にその含有量が300mg/lになるように添加した。
酸化分解処理後に得られた処理水中のベンゾフェノンの分解率を、実施例1で行ったと同様の方法で測定した結果、99.9%以上であった。更に、実施例1と同様にして、ベンゾフェノンの二酸化炭素までの完全分解率を測定したところ65%であり、触媒の添加が有効であることが確認できた。特に、本実施例の場合は、反応後の触媒の劣化がなく、この点で、銅系の触媒を用いた場合と比べて好ましいことがわかった。
【0024】
<比較例1>
反応pHを6.2とした以外は実施例1と同様にして、模擬廃水の過酸化水素による酸化分解を行った。酸化分解処理後に得られた処理水中のベンゾフェノンの分解率を実施例1と同様に測定したところ、98.5%であり、本比較例の場合は、実施例1に比べて分解率が若干劣ることがわかった。更に、実施例1で行ったと同様の方法でベンゾフェノンの二酸化炭素までの完全分解率を測定したところ42.3%であり、実施例の場合と比べて分解率が低下することがわかった。
上記の結果、酸化分解の効率向上には反応pHが重要であり、反応pHを6以上とした場合と比べて、反応pHを3以下で処理を行う実施例の場合の方が著しく効果的であることが確認できた。
【0025】
<比較例2>
反応pHを9.3とアルカリ条件下にした以外は実施例1と同様にして、模擬廃水の過酸化水素による酸化分解を行った。酸化分解処理後に得られた処理水中のベンゾフェノンの分解率を、実施例1で行ったと同様の方法で測定した結果、67.5%であり、アルカリ条件下では、酸性条件下で処理を行う実施例の場合に比べて分解率が劣ることが確認できた。又、実施例1の場合と同様にして、ベンゾフェノンの二酸化炭素までの完全分解率を測定したところ、本比較例の場合は19.8%であり、実施例に比べて完全分解率が格段に低下し、又、比較例1と比べた場合よりも低下することがわかった。
以上の結果、過酸化水素による酸化分解の場合には反応pHが、分解効率向上、更には完全分解率向上の重要な要件となっており、反応pHが、アルカリ条件下の場合よりも酸性条件下の方が著しく効果的であることが確認できた。又、比較例1と比べて本比較例の場合は完全分解率が更に劣っていることから、比較例1の場合と同様に、反応pHが6以上であると十分な分解が行われないが、反応pH値がより酸性側であるほど過酸化水素による酸化分解効率が向上することがわかった。
【0026】
<比較例3>
反応pHを11.0とアルカリ条件下にした以外は実施例1と同様にして、模擬廃水の過酸化水素による酸化分解を行った。酸化分解処理後に得られた処理水中のベンゾフェノンの分解率を、実施例1で行ったと同様の方法で測定した結果、34.3%であり、比較例2の場合よりも更に分解率が劣っていた。又、実施例1で行ったと同様の方法で、ベンゾフェノンの二酸化炭素までの完全分解率を測定したところ9.6%であり、こちらも比較例2の場合よりも更に分解率が低下することがわかった。
以上の結果、過酸化水素による酸化分解の場合には反応pHが重要であり、分解効率向上、更には完全分解率向上の重要な要件となっており、反応pHが、同じアルカリ条件下である場合にも、より酸性側の条件の方が過酸化水素による酸化分解処理が効率的に行われることを確認できた。
【0027】
<比較例4>
反応pHを11.0とした以外は実施例4と同様の条件で、金属触媒を用いた状態で過酸化水素による模擬廃水の酸化分解を行った。酸化分解処理後に得られた処理水中のベンゾフェノンの分解率を実施例4と同様に測定したところ42.6%であり、実施例4の場合に比べて格段に分解率が劣っていた。更に、実施例4と同様にして、ベンゾフェノンの二酸化炭素までの完全分解率を測定したところ14.5%であり、こちらも格段に分解率が劣ることがわかった。
上記の結果、有機物の過酸化水素による酸化分解の条件が及ぼす分解効率に与える影響としては、金属触媒の有無よりも、反応pHがによる変動が大きいことがわかった。
【0028】
<比較例5>
反応pHを2.5とし、酸化剤として酸素を用い、更に、使用する酸素量を理論量の3倍とした以外は実施例3と同様にして、模擬廃水の酸素による酸化分解を行った。酸化分解処理後に得られた処理水中のベンゾフェノンの分解率を実施例3と同様にして測定した結果、殆ど分解されておらず、その分解率は0.1%未満であることがわかった。この結果、有機物を完全に酸化分解させて無害な二酸化炭素とするためには、酸性条件下における過酸化水素による酸化処理が必要であることがわかった。
【0029】
<比較例6>
反応pHを11.0、酸化剤として酸素を用い、更に、使用する酸素量を理論量の3倍とした以外は実施例3と同様にして、模擬廃水の酸素による酸化分解を行った。酸化分解処理後に得られた処理水中のベンゾフェノンの分解率を実施例3と同様にして測定した結果、殆ど分解されておらず、その分解率は0.1%未満であることがわかった。このことからも、有機物を完全に酸化分解させて無害な二酸化炭素とするためには、酸性条件下における過酸化水素による酸化処理が必要であることがわかった。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】
上記したように、本発明によれば、湿式酸化方式による廃水の処理方法において、環境ホルモン等の難分解性物質や高濃度廃水中の特に有機物を高い効率で酸化分解することができ、しかも、簡易な方法で、効率よく、ほぼ完全に、無害な炭酸ガス、水、窒素にまでも完全に分解できる完全分解率が極めて高い廃水の処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の廃水の処理方法の処理フローの一例である。
Claims (3)
- 難分解性物質であるベンゾフェノンを含む廃水を酸化分解処理する廃水の処理方法において、0.40〜20MPaの圧力及び125〜250℃の加温加圧下で、酸化剤として過酸化水素を用い、pH2.0以上3以下の条件で処理することを特徴とする廃水の処理方法。
- 過酸化水素を複数回に分けて添加する請求項1に記載の廃水の処理方法。
- 更に、鉄及び銅の金属、これらの金属酸化物、金属塩及び錯体からなる群から選ばれる金属系触媒を用いて処理する請求項1又は2に記載の廃水の処理方法。
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