JP3811589B2 - 弛み止め構造 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、自動車のドラッグ・リンク機構において、そのリンク同士をボルトと溝付きナットと弛み止めピンを用いて連結する際に、ボルトの先端部に螺合した溝付きナットの弛みを防止する弛み止め構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種弛み止め構造として、実開昭54−11273号公報の第2図に示すものが存する。
該従来の弛み止め構造は、先端部にピン孔を開設したボルトと、該ボルトの先端部に螺合する溝付きナットと、1本の弾性を有する金属線材により成形される弛み止めピンとから成り、弛み止めピンは、C字状を呈する環状部の一端側に中央が折曲する折曲脚部を設け、同他端側に先端に折り返し形状が付与された直線脚部を設けて、リンク同士を連結する際に、溝付きナットを螺合したボルトの先端部に開設されているピン孔内に上記折曲脚部と直線脚部とをナットの溝を介して差し込むと、折曲脚部はその弾性作用を伴ってピン孔の内周面に弾接する一方、直線脚部の折り返し形状がナットの溝縁に引っ掛かるので、これにより、リンク同士をボルトとナットを用いて連結できると同時に、ボルトに螺合しているナットの弛みを防止して、当該ナットがボルトの先端部から脱落することを解消できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、従来の弛み止め構造の下では、溝付きナットが弛んでボルトの先端部から脱落することを有効に防止できる訳であるが、弛み止めピン自体は、ボルトの先端部に対する仮止め機能を有していないので、環状部をハンマーで叩いてその折曲脚部と直線脚部とをピン孔内に差し込む時には、弛み止めピンの姿勢を直しながらハンマーで叩かなければならないので、この分だけ作業効率が悪くなっていた。又、仮に、仮止めができたとしても、その状態は極めて不安定なものであるから、同様な姿勢直しの作業が強いられることとなる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、斯かる従来の弛み止め構造が抱える課題を有効に解決するために開発されたもので、請求項1記載の発明は、先端部にピン孔を開設したボルトと、ボルトの先端部に螺合する溝付きナットと、ボルトとナットとの弛みを防止する1本の金属線材で成形された弛み止めピンとから成る弛み止め構造であって、弛み止めピンは、その環状部の一端側に上記ピン孔内に弾性作用を伴って差し込まれる差込脚部を設け、同他端側にボルトの端面に弾性作用を伴って弾接する弾接脚部を設ける一方、差込脚部は、上記ナットの溝に嵌り込んで弛み止めピンの回転を規制する規制部を有し、弾接脚部は、ボルトに係合して抜け外れを防止する外れ防止部と、上記規制部と共働してボルトの先端部を挟み込む弾接部とを有し、弛み止めピンの差込脚部をボルトのピン孔に途中まで差し込むと、弾接脚部の外れ防止部がボルトの端面に弾接すると同時に、差込脚部の規制部がナットの溝内に嵌り込む構成を採用した。
【0005】
請求項2記載の発明は、請求項1を前提として、弛み止めピンの弾接脚部の先端に外れ防止部を設ける構成を採用した。
【0006】
請求項3記載の発明は、請求項1を前提として、弛み止めピンの差込脚部と弾接脚部とでボルトの先端部を挟み込む構成を採用した。
【0007】
請求項4記載の発明は、請求項1を前提として、弛み止めピンの差込脚部をピン孔に完全に差し込んだ時には、外れ防止部が逆方向からピン孔に係合する構成を採用した。請求項5記載の発明は、請求項1を前提として、弛み止めピンの差込脚部をピン孔に完全に差し込んだ時には、差込脚部の規制部がピン孔の内周面に弾性作用を伴って弾接すると同時に、弾接脚部の弾接部がボルトの端面に弾性作用を伴って弾接し、且つ、差込脚部の先端がナットの溝の底面に弾接する構成を採用した。
【0008】
依って、請求項1記載の発明にあっては、弛み止めピンの差込脚部をボルトのピン孔に途中まで差し込むと、弾接脚部の外れ防止部がボルトの端面に弾接すると同時に、差込脚部の規制部がナットの溝に嵌り込んで、弛み止めピン自体の回転を規制するので、これにより、弛み止めピンの確実な仮止め状態が得られる。従って、後は、この仮止め状態を積極的に利用して、弛み止めピンの差込脚部をボルトのピン孔に完全に差し込めば、外れ防止部がボルトに係合するので、これにより、弛み止めピンが本止めされて、ボルトの先端部に螺合される溝付きナットの弛みを有効に防止できる。
【0009】
請求項2記載の発明にあっては、弛み止めピンの弾接脚部の先端に外れ防止部が設けられている関係で、仮止め状態から本止め状態への移行がスムーズに行える。請求項3記載の発明にあっては、弛み止めピンの差込脚部と弾接脚部とでボルトの先端部を挟み込む関係で、本止め時には、寸法上のバラツキを吸収して、弛み止めピンのガタツキをなくすことが可能となる。請求項4記載の発明にあっては、弛み止めピンの外れ防止部がボルトのピン孔に逆方向から係合する関係で、本止め時には、弛み止めピンのボルトの先端部からの抜け外れを確実に防止することが可能となる。請求項5記載の発明にあっては、差込脚部が自身の先端をナットの溝の底面に弾接させながら、その規制部をピン孔の内周面に弾接させると同時に、弾接脚部がその弾接部をボルトの端面に弾接させる関係で、本止め時には、例え、ボルトのピン孔と端面間に大きな寸法上のバラツキが生じていたとしても、当該寸法上のバラツキを吸収して、弛み止めピンのガタツキをなくすことが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する好適な実施の形態に基づいて詳述すれば、該実施の形態に係る弛み止め構造も、図1に示す如く、先端部にピン孔10を開設したボルトBと、ボルトBの先端部に螺合する溝付きナットNと、ボルトBとナットNの弛みを防止する1本の金属線材で成形された弛み止めピンPとから成るものであるが、当該弛み止めピンPは、図1・図2に示す如く、C字状を呈する環状部1の一端側にボルトBの先端部に開設されたピン孔10内に差し込まれる差込脚部2を設け、同他端側にボルトBの端面に弾接する弾接脚部3を設ける構成となっている。
【0011】
そして、前者の差込脚部2は、上記環状部1から続くその付根部位を弾接脚部3方向に折曲して、該折曲部位を溝付きナットNの溝11に嵌り込んで弛み止めピンP自体の回転を規制する規制部4となし、該規制部4から続く先端側を外方に拡開する構成が付与され、後者の弾接脚部3は、環状部1から続くその中央部位を差込脚部2方向に湾曲して、該湾曲部位を上記規制部4と共働してボルトBの先端部を挟み込む弾接部5となし、該弾接部5から続く先端側を環状部1方向に折り返して、弛み止めピンP自体の抜け外れを防止する外れ防止部6となす構成が付与されている。従って、この外れ防止部6は、弾接脚部3の先端に設けられる関係で、弛み止めピンP自体の簡素化が期待できると共に、仮止め状態から本止め状態への移行がスムーズに行える。
【0012】
依って、例えば、自動車のドラッグ・リンク機構におけるリンクL同士をボルトBと溝付きナットNで連結する状態にあって、上記した弛み止めピンPを用いて、ボルトBの先端部に螺合した溝付きナットNの弛みを防止する場合には、まず、図3に示す如く、ボルトBのピン孔10とナットNの溝11とを一致させる状態を得て、ボルトBの先端部に開設されたピン孔10に差込脚部2の先端を途中まで差し込むと、弾接脚部3の折り返された外れ防止部6がボルトBの端面に弾接すると同時に、差込脚部2側の規制部4がナットNの溝11内に嵌り込んで、弛み止めピンP自体の回転を規制するので、これにより、弛み止めピンPの確実な仮止め状態が得られることとなる。
【0013】
従って、後は、この弛み止めピンPの仮止め状態を積極的に利用して、C字状を呈する環状部1をハンマーで叩いて、差込脚部2をピン孔10に完全に差し込めば、今度は、図4に示す如く、外れ防止部6がボルトBのピン孔10に逆方向から係合するので、これにより、弛み止めピンPが本止めされて、ボルトBの先端部に螺合される溝付きナットNの弛みを有効に防止できることとなる。
【0014】
又、斯かる状態にあっては、図示する如く、折曲する規制部4がピン孔10の内周面に弾性作用を伴って弾接し、湾曲する弾接部5がボルトBの端面に弾性作用を伴って弾接して、ボルトBの先端部を上下方向から挟み込むこととなるので、例え、ボルトBのピン孔10と端面間に大きな寸法上のバラツキが生じていたとしても、このバラツキを当該弾性作用で吸収して、弛み止めピンP自体のガタツキをも有効に防止するが可能となる。
【0015】
【発明の効果】
以上の如く、本発明は、上記構成の採用により、請求項1の下では、弛み止めピンの差込脚部をボルトのピン孔に途中まで差し込むと、弾接脚部の外れ防止部がボルトの端面に弾接すると同時に、差込脚部の規制部がナットの溝に嵌り込んで、弛み止めピン自体の回転を規制するので、これにより、弛み止めピンの確実な仮止め状態が得られる。従って、後は、この仮止め状態を積極的に利用して、弛み止めピンの差込脚部をボルトのピン孔に完全に差し込めば、外れ防止部がボルトに係合するので、これにより、弛み止めピンが本止めされて、ボルトの先端部に螺合される溝付きナットの弛みを有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る弛み止め構造を示す分解斜視図である。
【図2】弛み止めピンの正面図である。
【図3】弛み止めピンをボルト側に仮止めした状態を示す要部拡大断面図である。
【図4】弛み止めピンをボルト側に本止めした状態を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
1 環状部
2 差込脚部
3 弾接脚部
4 規制部
5 弾接部
6 外れ防止部
10 ボルトのピン孔
11 ナットの溝
P 弛み止めピン
B ボルト
N 溝付きナット
L リンク

Claims (5)

  1. 先端部にピン孔を開設したボルトと、ボルトの先端部に螺合する溝付きナットと、ボルトとナットとの弛みを防止する1本の金属線材で成形された弛み止めピンとから成る弛み止め構造であって、弛み止めピンは、その環状部の一端側に上記ピン孔内に弾性作用を伴って差し込まれる差込脚部を設け、同他端側にボルトの端面に弾性作用を伴って弾接する弾接脚部を設ける一方、差込脚部は、上記ナットの溝に嵌り込んで弛み止めピンの回転を規制する規制部を有し、弾接脚部は、ボルトに係合して抜け外れを防止する外れ防止部と、上記規制部と共働してボルトの先端部を挟み込む弾接部とを有し、弛み止めピンの差込脚部をボルトのピン孔に途中まで差し込むと、弾接脚部の外れ防止部がボルトの端面に弾接すると同時に、差込脚部の規制部がナットの溝内に嵌り込むことを特徴とする弛み止め構造。
  2. 弛み止めピンの弾接脚部の先端に外れ防止部を設けたことを特徴とする請求項1記載の弛み止め構造。
  3. 弛み止めピンの差込脚部と弾接脚部とでボルトの先端部を挟み込むことを特徴とする請求項1記載の弛み止め構造。
  4. 弛み止めピンの差込脚部をピン孔に完全に差し込んだ時には、外れ防止部が逆方向からピン孔に係合することを特徴とする請求項1記載の弛み止め構造。
  5. 弛み止めピンの差込脚部をピン孔に完全に差し込んだ時には、差込脚部の規制部がピン孔の内周面に弾性作用を伴って弾接すると同時に、弾接脚部の弾接部がボルトの端面に弾性作用を伴って弾接し、且つ、差込脚部の先端がナットの溝の底面に弾接することを特徴とする請求項1記載の弛み止め構造。
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