JP3810625B2 - 圧電振動子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話及び携帯情報端末等に用いられる圧電振動子に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在の圧電振動子の組立工程では、金属薄膜の電極パターンが形成されたチップ、例えば、水晶(SiO2)からなる音叉型水晶振動片と、その保持器であるプラグのインナーリードの接合に、ハンダや接着剤が用いられている。この工程はマウント工程と呼ばれている。マウント工程の後に、金属製のケースにより気密封止してシリンダタイプの圧電振動子の組立が終了する。図6(a)は、音叉型水晶振動子の水晶振動片33上の金属電極薄膜のパターンを示す模式図である。同図に示すように、通常はプラグとの接合部であるマウントパッド34、励振のための主電極38及び側面電極39からなる電極部35、マウントパッド34とこれら主電極38及び側面電極39からなる電極部35を接続するためのリード36、周波数を調整するための錘部37の4つの部分がある。これらは、同材質の金属薄膜でチップの表裏に形成される。図6(b)は、水晶振動片33の片側の振動棒の断面を示しており、水晶振動片33のZ面である上下面に主電極38が、またX面である側面には側面電極39が形成されている。金属薄膜材料としては、図6(c)(図6(a)のCC1部の断面図)に示すように、例えば下地の金属薄膜40としてはクロム(Cr)、表面の金属薄膜41としては金(Au)等が用いられる。膜厚は両者ともに500オングストロームから1000オングストローム前後である。
【0003】
一方、図6(d)に示す様に、プラグ10のインナーリード11、ステム26、アウターリード25には、プラグの製造工程で、その表面に予め10〜15ミクロンの膜厚のハンダ43が電解メッキでコーティングされている。プラグとチップをハンダで接合する場合は、インナーリードと11マウントパッド34を位置合わせした後に、インナーリード表面のハンダの膜を加熱した窒素(N2)等の熱風で溶かし、この溶融したハンダでマウントパッド34を濡らすことでハンダによる接合が可能となる。尚、ステム26のハンダメッキはケースとの冷間接合(勘合)用であり、アウターリード25のハンダメッキは、基板に装着する際の予備ハンダとして役割を持つ。
【0004】
従来のハンダメッキ材料では、錫(Sn)と鉛(Pb)を、その重量割合が9:1ないし1:9に調合したものが用いられてきた。圧電振動子をリフロープロセスで基板に装着する場合は、後者の鉛の比率が高いいわゆる高温ハンダをメッキ材料として採用していた。しかしながら、ハンダ中の鉛の有害性が広く認識された今日、鉛を取り除き、代わりに銀(Ag)、ビスマス(Bi)、銅(Cu)等をSnに添加したいわゆる鉛フリーハンダが開発されつつあり、圧電振動子も鉛フリーメッキのプラグの採用が検討されている。リフロープロセスに対応できる鉛フリーメッキ材料としては、例えばCuを添加したSn/Cuメッキ(Cuの重量割合が6%〜10%前後)が有力な候補である。しかしながら、このような鉛フリーハンダをメッキ材料として用いたプラグにチップをマウントして完成させた圧電振動子と、従来の鉛を含んだハンダメッキ製のプラグにマウントして完成させた圧電振動子のリフロー前後の周波数変化を実験により比較した結果、前者のサンプルの方が周波数変化が明らかに大きいことが判明した。サンプル内部を調査した結果、マウントパッド部内に留まるべきハンダが、リフローの際の熱で、リード、主電極表面あるいは側面電極表面に拡散しており、周波数の変化は、この拡散により振動子片内の重量バランスがリフローの前後で変化して引き起こされたものと推定された。
【0005】
このような問題に対応するために、既に2つの方策が提示されている。これを図7に示した。第1の方策は、同図(a)に示す様に、圧電振動片に電極用に形成したリード16の表面金属薄膜21あるいは前記リード16と電極部15の一部の表面金属薄膜21と、前記圧電振動片の基端部に形成されたマウントパッド14の表面金属薄膜21との間に溝24を形成する方法である。第2の方策は、同図(b)に示す様に、前記マウントパッド14を構成する表面金属薄膜21の下に位置する下地金属薄膜20の面積を、最表面の前記金属薄膜21よりも大きく形成する方法である。これら2つの方策は、両者ともに、ハンダメッキ材料に対する表面金属薄膜21と下地金属薄膜20の拡散係数の差に着目し、下地金属薄膜の拡散係数が表面金属薄膜のそれより十分小さい事実に基いている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら2つの方策は、次のような欠点を持つ。
【0007】
まず第1の方策では、側面の表面金属薄膜もエッチングすることが望ましいが、側面の表面金属薄膜のエッチングを実行するためには、特別な露光装置(側面露光機)があることが前提となる。また、側面をエッチングする一つの工程の追加は、レジスト塗布、乾燥、露光、現像、洗浄、表面金属薄膜エッチング、エッチング後洗浄、レジスト剥離、剥離後洗浄、乾燥等の一連の作業を実施することが必要であり、製造コストの増加を伴うことを意味している。
【0008】
また、第2の方策は、この方策だけを単独で実行した場合は、リフロー温度がより高い場合は、周波数のシフトが発生する可能性を持っている。図8は、この事情を説明するための図である。マウントパッドの表面金属薄膜はAuで、これは下地のCr膜よりその面積が小さく構成されている。それゆえ、マウント時にマウントパッドに広がったメッキ構成材料そのものは、リフロー工程でリードや側面金属に拡散することはない。しかしながら、リフロー温度がより高温になるとインナーリード11に予めコートされたメッキ材料が、リフロー工程で溶融して、振動片の底面30から側面31を経由して側面電極19に拡散する。同図(a)の矢印は拡散の経路を示す。この結果、大幅な周波数シフトが発生する。同図(b)に示すように、通常、底面30は側面31と同一の金属薄膜構造(例えば、下地がCrで、表面金属はAu)をしているので、この拡散は容易に起こる。リフローの温度領域(およそ230℃~270℃の温度範囲)では、計算によれば、金に対するSnやCuの拡散係数は、約30℃の上昇に対しても、約1桁上昇する。リフロー温度の30℃程度のバラツキは、ユーザー間で十分あり得ることである。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、鉛フリーハンダをメッキ材料としたプラグを用いてマウントした圧電振動子のリフロー前後の周波数変化を減少させて、Sn/Pbハンダメッキを用いて組み立てた従来の圧電振動子のそれと同等の高い周波数安定性を持つ圧電振動子を提供することを課題とする。
【0010】
【問題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、側面電極へハンダメッキ材料が拡散することを防ぐ目的で、側面電極を構成する表面金属膜及び下地の金属薄膜の両方の一部分を取り除いた側面電極構造を持つことを特徴とする圧電振動子にある。
【0011】
かかる本発明では、リフロー工程において、ハンダメッキ構成材料が側面電極のパターンを取り除いた部分で拡散が停止するため、大幅な周波数のシフトが発生することがなく、周波数変化を規定値内に抑制することが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0013】
図1は、圧電振動子の概観図であり、金属薄膜の電極パターンが形成されたチップ、その保持器であるプラグ10と、圧電振動子内部を気密封止する金属製のケース13からなるシリンダタイプの圧電振動子である。圧電振動子のチップは例えば水晶(SiO2)からなる音叉型の水晶振動片12である。
【0014】
プラグ10はアウターリード25とインナーリード11とステム26からなる。プラグ10のインナーリード11、ステム26、アウターリード25には、プラグの製造工程で、その表面に予め10〜15ミクロンの膜厚のハンダが電解メッキでコーティングされている。本実施形態ではハンダはSnとCuの亜共晶合金(Cuの重量割合が6〜7%)の鉛フリーハンダを用いた。マウント工程において、プラグ10と水晶振動片12はインナーリード11と水晶振動片12上のマウントパッド14を位置合わせした後に、インナーリード11の表面のハンダ膜を加熱した窒素(N2)等の熱風で溶かし、この溶融したハンダでマウントパッド14を濡らすことにより接合される。マウント工程の後に、金属製のケース13をプラグ10のステム26に圧入し固定することにより圧電振動子の内部が気密封止される。
【0015】
図2は、本発明の一実施形態に係る圧電振動子のチップ上の金属電極薄膜のパターンを示す図であり、図2(a)は上面図、図2(b)は斜視図、図2(c)は、断面図である。先にも述べたとおり、圧電振動子のチップは例えば水晶(SiO2)からなる音叉型の水晶振動片12である。
【0016】
水晶振動片12の表面に形成される電極パターンは、励振のための主電極及び側面電極からなる電極部15、マウントパッド14と電極部15を接続するためのリード16、周波数を調整するための錘部17の4つの部分がある。これらは、同材質の金属薄膜で水晶振動片12の表面に形成される。また、図には省略されているが、水晶振動片12のZ面である上下面に主電極18が、またX面である側面には側面電極19が形成されている。金属薄膜材料としては、例えば下地金属薄膜20としてはクロム(Cr)、表面金属薄膜21としては金(Au)等が用いられる。膜厚は両者ともに500オングストロームから1000オングストローム前後である。
【0017】
同図でハッチングした領域が表面金属薄膜21及び下地金属薄膜20をレーザーにより同時に除去した部分である。すなわち、マウントパッド14の側面に水晶振動子12の厚み方向に帯状に水晶露出部50を設けた。また、この水晶露出部50は、側面から上面の一部につながっている。除去した部分は、水晶自体が表面に露出した構造になっている。除去する幅(h)は数十ミクロンで十分であり、左右のインナーリードに対応して、2ヶ所除去する。除去する領域はこのようにマウント近傍の一部分であり、非除去領域がマウントと側面電極を十分直流的に接続こしているので振動子の特性は全く問題がない。この除去工程は、マウント前あるいはマウント後どちらでも可能である。
【0018】
図3は、マウント前に除去する場合を示している。振動子の製造工程においては、水晶のチップは、同図(a)に示すように、通常は数インチの水晶ウエハ32からホトリソグラフィ技術を用いて製造されている。水晶のチップは、3インチウエハでは約800個〜1000個程度形成できる。水晶チップがウエハ32に付いている段階で、同図(b)の矢印で示す位置にレーザービームを照射して側面電極の一部除去工程を実施すれば、レーザービームの位置決めが極めて容易であること及びこの除去工程の後に洗浄を行うことも可能であり、表面の清浄を保つことも容易である等の利点を持つ。
【0019】
図4は、マウントの後に行う場合を示している。具体的には、周波数を微調整する前に実施することが望ましい。この場合も、ワークである振動子はパレット42等に整列しているから、水晶チップに対するレーザービームの位置決めは容易である。
【0020】
図3及び図4に示した両方の場合ともに、除去工程は真空中でも大気中でもどちらでも可能である。ただし、レーザービームは、側面にやや斜めに入射する必要がある。垂直に入射した場合は側面の薄膜は除去できない。
【0021】
図5に、本発明の効果を定量的に示す。プラグのインナーリード部のハンダメッキ材料は、前節で述べたSnとCuの亜共晶合金(Cuの重量割合は6〜7%)を用いた。リフローに用いた温度パターンは、電子部品の基板実装にSn−Ag−Cu等の鉛フリーハンダを用いる場合のもので、最高温度は270℃でかつ260℃以上の時間は16秒である。このリフロー工程を連続2回実施した。この温度設定は、リフロー試験でもかなり高いものである。サンプル数は、25ケである。ここで、サンプルに用いた振動子は、本発明の図4に示した手法、即ちマウント後に、マウント位置近傍の左右の側面電極の一部をレーザーで除去したものである。レーザーはYAGレーザーであり、ビームのスポット径は約20ミクロンである。カット幅は約100ミクロンである。除去作業は大気中で行った。リフロー前後での周波数変化量は10ppm以下であり、これは、従来のSn/Pbメッキ品でのリフローの結果に匹敵している。リフローを実施したサンプルのケースを取り外して、光学顕微鏡で側面の拡散を確認した結果、ハンダメッキ材料の拡散は薄膜をレーザーで除去した位置で停止しており、本発明の有効性が確認できた。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように本発明では、圧電振動子の振動片上に形成される電極薄膜と保持器であるプラグのハンダメッキ材料との間の拡散に着目し、ハンダ構成材料が側面電極に拡散して周波数の変化を引き起こす現象を防止する側面電極の構造を提供している。
これにより、従来のSn/Pbハンダメッキ用いた圧電振動子と同等のリフロー安定性をもつ鉛フリーの圧電振動子を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願の水晶振動子の外観を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る水晶振動子の金属電極薄膜のパターンを示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る水晶振動子の側面金属薄膜の除去工程を示す模式図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る水晶振動子の側面金属薄膜の除去工程を示す模式図である。
【図5】本発明の水晶振動子のリフロー実験での振動子の周波数のシフトを示す図である。
【図6】従来の水晶振動子の水晶チップ上の金属電極薄膜のパターンを示す模式図である。
【図7】従来の方策を示す図である。
【図8】従来の方策の問題点を示す図である。
【符号の説明】
10 プラグ
11 インナーリード
12 水晶振動片
13 ケース
14 マウントパッド
15 電極部
16 リード
17 錘部
18 主電極
19 側面電極
20 下地金属薄膜
21 表面金属薄膜
22 金属薄膜
23 金属薄膜
24 溝
25 アウターリード
26 ステム
30 底面
31 側面
32 水晶ウエハ
33 水晶振動片
34 マウントパッド
35 電極部
36 リード部
37 錘部
38 主電極
39 側面電極
40 下地金属薄膜
41 表面金属薄膜
42 パレット
Claims (5)
- 圧電振動片と、
前記圧電振動片をハンダにより接合するインナーリードを有するプラグと、
圧電振動子内部を気密封止するケースからなる圧電振動子において、
前記圧電振動片の上面に形成された下地金属薄膜からなる主電極と、
前記下地金属薄膜と、前記下地金属薄膜の上面に形成され前記下地金属薄膜よりも面積の小さい表面金属薄膜とからなり、前記下地金属薄膜によって前記主電極と接続されたマウントパッドと、
前記圧電振動片の側面に形成された前記表面金属薄膜と、前記表面金属薄膜の下面に形成された前記下地金属薄膜とからなり、前記マウントパッドの前記主電極側の端部近傍で所定の幅にわたって前記表面金属薄膜及び前記下地金属薄膜の両者ともに除去した水晶露出部を有する側面電極と、
を持つことを特徴とする圧電振動子。 - 前記下地金属薄膜の拡散係数が、前記表面金属膜の拡散係数より小さい請求項1に記載の圧電振動子。
- 請求項2記載の圧電振動子において、前記の側面金属薄膜は、レーザーを用いて除去されたことを特徴とする圧電振動子。
- 前記所定の幅が数十ミクロン以上100ミクロン以下である請求項3に記載の圧電振動子。
- 前記インナーリードが、前記圧電振動片の上面に複数形成された前記マウントパッドに接合され、同一平面上にインナーリードの接合部を有する請求項4に記載の圧電振動子。
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