JP3810464B2 - 常温架橋型合成樹脂水性エマルジョン組成物 - Google Patents

常温架橋型合成樹脂水性エマルジョン組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は常温で架橋することができる合成樹脂水性エマルジョン組成物に関し、耐溶剤性、耐水性、耐熱性に優れた皮膜を与えることから、各種の塗料、接着、コーティング剤、紙・繊維処理剤等に用いることができる。さらに、架橋剤としてヒドラジン誘導体を使用しないため毒性の問題がなく、かつ従来の常温架橋型樹脂組成物に見られる着色の問題もない。
【0002】
【従来の技術】
カルボニル基を有する合成樹脂水性エマルジョンにヒドラジン誘導体を配合すると、常温でカルボニル基とヒドラジノ基が反応して耐溶剤性、耐水性、耐熱性に優れる常温架橋性の合成樹脂水性エマルジョンの得られることは米国特許第3,345,336号明細書、特公昭58−20991号公報等で知られている。しかしこれ等にはヒドラジン誘導体を使用することによる毒性の問題がつきまとい、毒性問題の少ない常温架橋性の合成樹脂水性エマルジョンが求められていた。
特公昭61−6881号公報では、重金属塩をヒドラジン誘導体を含有するカルボニル基含有合成樹脂水性エマルジョンに配合して、有毒なヒドラジンが貯蔵中に遊離するのを防止することが提案されている。しかしこの方法もヒドラジン誘導体を使用するので、毒性の問題を充分解決したとは言えないものである。
一方常温架橋性の合成樹脂水性エマルジョンは各種塗料、接着、コーティング剤、処理剤等に用いられるので、エマルジョンあるいはフイルムが着色すると商品価値を失う。
米国特許第3,345,336ではカルボニル基としてアセトアセチル基が例示されている。特公昭58−20991や特公昭61−6861でもカルボニル基を有する化合物の一種として、アセトアセチル基を有する化合物が明細書の中で例示されている。しかしカルボニル基の一種であるアセトアセチル基を含む合成樹脂水性エマルジョンにヒドラジン誘導体を配合すると、経時的にエマルジョンやフイルムが赤く着色する問題があった。
【0003】
【発明の概要】
このように、カルボニル基を有する合成樹脂水性エマルジョンにヒドラジン誘導体を配合したエマルジョンには、ヒドラジン誘導体の使用に起因する毒性の問題がある。またカルボニル基の一種であるアセトアセチル基を有する合成樹脂水性エマルジョンにヒドラジン誘導体を配合したエマルジョンでは、毒性問題の他にエマルジョンやフイルムが赤く着色する問題がある。
本発明者らは、今般、アミノ基を分子中に2個以上有する塩基性アミノ酸をカルボニル基を有する合成樹脂水性エマルジョンに配合すると、エマルジョンやフイルムが赤く着色することなく、架橋反応が進行して乾燥フイルムの耐溶剤牲が向上することを見いだした。またこの反応系はヒドラジン誘導体を含まないので、それによる毒性問題も避けることができることも、本発明者らは見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0004】
本発明による常温架橋型合成樹脂水性エマルジョン組成物は、カルボニル基を含有する合成樹脂の水性エマルジョンに、該エマルジョンに含まれるカルボニル基1molに対し、塩基性アミノ酸を0.05〜2.0mol配合してなるものである。
本発明の好ましい態様によれば、前記常温架橋型合成樹脂水性エマルジョン組成物において、合成樹脂水性エマルジョン濃度は30〜70%である。
本発明の別の好ましい態様によれば、前記常温架橋型合成樹脂水性エマルジョン組成物において、合成樹脂水性エマルジョンはアクリル系樹脂エマルジョンである。
本発明のさらに別の好ましい態様によれば、前記合成樹脂水性エマルジョンに含有されるカルボニル基はアセトアセチル基である。
本発明の好ましい態様によれば、常温架橋型合成樹脂水性エマルジョン組成物は、エマルジョン粒子の沈降防止剤として水溶性カルボニル化合物を添加してなるものである。
本発明の好ましい態様によれば、前記塩基性アミノ酸は、アミノ基を2個以上有するものである。
【0005】
【発明の具体的説明】
カルボニル基と塩基性アミノ酸の反応は、水が存在すると反応は抑制されエマルジョンは安定である。しかし、もし架橋反応が進行すると粒子が沈降する問題を生ずる。本発明のエマルジョン組成物は使用直前に塩基性アミノ酸が配合される場合や、予め塩基性アミノ酸を配合した一液型のエマルジョンとして使用される場合もあり、後者の場合に、エマルジョンが長期に保存されたりすると、エマルジョンの粒子が沈降することがある。このような粒子の沈降を防止するために、本発明のエマルジョン組成物にさらに水溶性カルボニル化合物を配合すると沈降防止に有効である。その添加量は10重童部以下が望ましく、10重量部より多くなるとかえってエマルジョンの安定性が損なわれたりする。
【0006】
本発明に使用されるカルボニル基を含有する合成樹脂水性エマルジョンについて説明する。
本発明に使用されるカルボニル基を含有する合成樹脂水性エマルジョンはカルボニル基含有不飽和単量体と、該単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体を乳化共重合することによって得られるものである。
カルボニル基不飽和単量体とは、分子中に少なくとも1個のカルボニル基(カルボキシル基及びカルボン酸エステル基に基づくカルボニル基を除く)を含有する重合可能な二重結合を含有する不飽和単量体、言い換えれば、アルド基またはケト基に基づくカルボニル基を分子中に少なくとも1個含有する重合可能な二重結合を有する不飽和単量体である。
【0007】
例えば、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチルクロナート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピルクロナート、2−ジアノアセトアセトキシエチルメタクリレート等のアセトアセチル基含有不飽和単量体、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトンなどのビニルアルキルケトン、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート−アセチルアセテート、ブタンジオールー1,4−アクリレート−アセチルアセテート、(メタ)アクリルオキシアルキルプロパナール等が挙げられ、これ等の1または2以上が使用される。
これ等のカルボニル基含有不飽和単量体の中でもアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチルクロナート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピルクロナート、2−シアノアセトアセトキシエチルメタクリレートなどのアセトアセチル基含有不飽和単量体が好適である。
【0008】
カルボニル基含有不飽和単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、アルキル基の炭素数が1〜12個の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸、酢酸ビニル、α位で分岐した飽和カルボン酸のビニルエステル、プロピオン酸のごときビニルエステル類、アクリロニトリル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシアクリレート、エチレンジエタクリレートなどの官能性単量体、エチレン、塩化ビニル等が挙げられ、これらの1または2以上が使用される。
本発明では、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いたアクリル系樹脂エマルジョンが好適に用いられる。
合成樹脂水性エマルジョンの濃度は、30〜70%が好適に使用される。
【0009】
合成樹脂水性エマルジョンに配合するアミノ基を分子中に2個以上有する塩基性アミノ酸としては、リジン、アルギニン、ヒスチジン等が挙げられる。
その使用量はエマルジョン中のカルボニル基1molに対し、塩基性アミノ酸を0.05〜2.0molである。0.05molより少ないと充分な架橋効果が出ないため諸物性が劣る。2.0molより多いと未反応の塩基性アミノ酸が造膜後のフイルムに残留するため耐水性が悪くなる。
【0010】
粒子の沈降防止に使用する水溶性カルボニル化合物としては、アセトン、エチルメチルケトン、メチルプロピルケトン、イソプロピルメチルケトン、ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、ピナコロン、ジエチルケトン、ブチロイン、ジイソプロピルケトン、メチルビニルケトン、アセトインなどが挙げられる。その添加量は10重量部以下が望ましく、10重量部より多くなるとかえってエマルジョンの安定性が損なわれたりする。
【0011】
【実施例】
カルボニル基含有合成樹脂水性エマルジョンの製造例
反応缶に、脱イオン水104.8重量部と、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル系乳化剤0.6重量部とを仕込み、昇温させた。これに、メチルメタアクリレート 65重量部、ブチルアクリレート 59重量部、アセトアセトキシエチルメタアクリレート 9.8重量部、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル系乳化剤 5.9重量部、および脱イオン水 39.0重量部の乳化混合物を滴下し、開始剤として過硫酸カリウムを用いて乳化重合させた。得られた合成樹脂水性エマルジョンは、濃度40%であった。
【0012】
実施例1
製造例で得た合成樹脂水性エマルジョン100重量部に塩基性アミノ酸として10%アルギニン水溶液3.6重量部を均一に添加した。
このエマルジョン組成物の室温×1ヶ月放置後の着色の有無を観察した。さらにアルギニン架橋樹脂の乾燥皮膜を室温×7日間の条件下で作成し、水に室温×7日間浸漬し皮膜の吸水率(%)を(A)式により算出した。また同様の方法でトルエン溶液に室温×7日間浸漬し皮膜のトルエン溶出率(%)を(B)式により算出した。
(A) 皮膜の吸水率(%)=((Wb−Wa)/Wa)×100
Wa:水浸漬前の皮膜の重量(%)
Wb:水浸漬後の皮膜の重量(%)
(B) 皮膜のトルエン溶出率(%)=((Wc−Wd)/Wc)×100
Wc:トルエン浸漬前の乾燥皮膜の重量(g)
Wd:トルエン浸漬後の乾燥皮膜の重量(g)
【0013】
実施例2
10%アルギニン水溶液を3.6重量部から7.2重量部に変更した以外は実施例1と同様にした。
【0014】
実施例3
沈降防止剤として10%アセトン水溶液を25重量部配合した以外は実施例1と同様にした。
【0015】
実施例4
10%アルギニン水溶液を3.6重量部から7.2重量部に変更し、さらに沈降防止剤として10%アセトン水溶液を25重量部配合した以外は実施例1と同様にした。
【0016】
比較例1
製造例にて得られた合成樹脂水性エマルジョンをそのまま用いた。
【0017】
比較例2
製造例にて得られた合成樹脂水性エマルジョン100重量部にヒドラジン誘導体のアジピン酸ジヒドラジド7.2重量部を均一に配合した。
【0018】
【表1】
Figure 0003810464
【0019】
(註)
表中 MMAはメチルメタアクリレートであり、BAはブチルアクリレートであり、AAEMはアセトアセトキシエチルメタアクリレートであり、ADHはアジピン酸ジヒドラジドである。
一は配合しないことを示す。
Figure 0003810464
【0020】
【発明の効果】
本発明は常温で架橋して、耐溶剤性、耐水性、耐熱性に優れた皮膜を形成し、毒性もなく着色の発生がない効果を奏する。

Claims (6)

  1. カルボニル基を含有する合成樹脂の水性エマルジョンに、該エマルジョンに含まれるカルボニル基1molに対し、塩基性アミノ酸を0.05〜2.0mol配合してなる、常温架橋型合成樹脂水性エマルジョン組成物。
  2. 合成樹脂水性エマルジョン濃度が30〜70%である、請求項1に記載された常温架橋型合成樹脂水性エマルジョン組成物。
  3. 合成樹脂水性エマルジョンがアクリル系樹脂エマルジョンである、請求項1または2に記載された常温架橋型合成樹脂水性エマルジョン組成物。
  4. 合成樹脂水性エマルジョンに含有されるカルボニル基がアセトアセチル基である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載された常温架橋型合成樹脂水性エマルジョン組成物。
  5. エマルジョン粒子の沈降防止剤として水溶性カルボニル化合物を添加した、請求項1ないし4のいずれか1項に記載された常温架橋型合成樹脂水性エマルジョン組成物。
  6. 塩基性アミノ酸がアミノ基を2個以上有する塩基性アミノ酸である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載された常温架橋型合成樹脂水性エマルジョン組成物。
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