JP3810114B2 - 人工歯根の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
開示技術は、口腔内にて顎骨に対しチタンやチタン合金製のインプラントとして埋設する人工歯根の製造の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
周知の如く、人間にとって歯は口腔内にて摂食、発声、表情発現等極めて重要な機能に深くかかわるものであり、したがって、該歯が欠損等で喪失することはこれらの機能を損ううえで致命的な大問題となる。
【0003】
したがって、旧くからかかる抜け歯等の欠損を補うために当該欠損した歯に近接した歯に所定の処置を施す等することにより対応するようにしてきたが、近時当該近接歯の喪失や交通事故や大きな疾患等により隣接する複数の歯が失われるような場合には、口腔内にて顎骨にチタンやチタン合金製等のインプラントとしての人工歯根を埋設する技術が開発され、一部では実用化されてはいる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
かかる技術については、例えば、特開平1−11539号公報(特公平7−71563号公報)発明等に開示されている技術のように優れたものが開発されてはいるが、当該在来態様の人工歯根技術にあっては顎骨に埋入する脚部と上部の補綴物を維持する頭部と両者の間にあって粘膜を貫通する頸部とが一体のもの、或いは、当該頸部の一部を頭部として使用出来るような部分2分割のものであるがために、次のような問題が生ずるに至っている。
【0005】
即ち、顎骨内に埋入するインプラントは該顎骨との強固な一体結合(オセオインテグレーション)の獲得が必要不可欠であるが、これまでの臨床上のデータから該オセオインテグレーションの獲得には数ヵ月もの長時間を要することが分っており、そのため、顎骨内への埋入の初期より該獲得までの長時間の期間内に摂食や発声等の際の咬合圧が印加されたりすることは骨芽の成育上好ましくはなく、頭部の補綴物の義歯程度の自重すら好ましくないことが必要となっていることが分ってきており、したがって、インプラントの人工歯根を顎骨内に埋設する脚部から頭部の補綴物のところまで一体構造の上記在来技術の態様ではかかる咬合圧の印加等の関係から好ましくないという不都合さがあった。
【0006】
又、強固なオセオインテグレーションはインプラントの埋入後の上述構造上の問題ばかりでなく、何らかの手段により咬合圧を印加しない構造が得られるとしても、粘膜上にインプラント構造体としての頭部の補綴物支持部が突出していることは施術後の感染上の観点からも好ましくない欠点があった。
【0007】
即ち、在来態様の一体構造のインプラントでは粘膜を貫通して頭部が一体的に突出している以上、当該施術後インプラントの頸部を介し下部への感染が避けられないという不具合がある。
【0008】
而して、インプラントの埋入を行う手術に際しては粘膜の切開で始まり、縫合で手術が終了するが、当該切開手術は感染防止のために極めて重要であり、又、必然的に2回以上の手術がこれに伴って必要であり、感染を防止するにはインプラント埋入部位を避けて切開を行うことが極めて重要であり、したがって、当然のことながら、粘膜上突出する構造物があってはならないことが好ましいこととなる。
【0009】
そして、インプラント本来の目的は該インプラントを顎骨内に埋入することではなく、それを利用して補綴物の上部構造物を作製することにあり、しかも、当該上部構造物は患者によっても異なり、患者によって隣接する歯や対合歯によっても異なり、埋入後の時間の経過、即ち、年齢の増加によっても異なり、そして、当該患者の顎骨内に於ける埋入部位やその時期に適合した「粘膜貫通部」、「補綴物支持部」が必要である。
【0010】
そのためには「顎骨内植込み部」、「粘膜貫通部」、「補綴物支持部」が各々独立した3つに分割可能、又は、「粘膜貫通部、及び、補綴物支持部」が一体化されている部分と顎骨植込み部とが2つに分割可能にされていなければならず、このような構造学的、医学的な要望には前記従来技術の一体構造のインプラント人工歯根では対応出来ない不都合さがあった。
【0011】
そして、顎骨内植込み部と粘膜貫通部と補綴物支持部との結合構造を、又、患者に適合した最適な補綴物を臨床経過と共に、早期に選択交換等が出来るようにするためにも補綴物支持部が単独で交換自在に出来る構造が必要であるにもかかわらず、前述在来態様のインプラントの人工歯根ではこれが現出出来ないというマイナス点があった。
【0012】
又、インプラントの人工歯根の「顎骨内の植込み部」と「粘膜貫通部」、乃至、「補綴物支持部」の頸部と頭部が脚部に対し分離し得る2体分割方式のインプラントの人工歯根にあっても上述「顎骨内植込み部」と「粘膜貫通部」、及び、「補綴物支持部」とが各々3分割されねばならないさまざまな条件には対応出来ない欠点さがあった。
【0013】
そして、先述した特開平1−11539号公報(特公平7−71563号公報発明)等に開示されている在来態様にあっては頸部と脚部、乃至、頭部が所謂凹凸係合による一体化連結構造であるために、臨床的に印加される咬合圧に対する対処が不充分であり、該咬合圧により結合部が動揺し、結果的に補綴物が動揺し、人工歯根としての機能が満足に果せないという難点があった。
【0014】
又、前述特開平1−11539号(特公平7−71563号公報)発明の在来態様にあってはインプラントとしての人工歯根が脚部の顎骨内植込み部と頸部としての粘膜貫通部とその上部の頭部としての補綴物支持部とが3者一体である上述さまざまな問題を有するのみならず、これらの素材としてのチタン、又は、チタン合金の素材に対する圧延、又は、鍛造の板材から数値プログラムを介してのワイヤーカット放電加工による成形が行われているために、素材に対する圧延加工、又は、鍛造加工による板材は曲げ応力の印加の仕方によってその圧延,鍛造圧力がその印加方向と直角方向では明らかに圧力の状態が異なることが分っている。
【0015】
即ち、かかる圧延手段、又は、鍛造手段では圧力印加方向に対して直角方向に応力を加えると、弱くなる特性があり、このような特性は口腔内等での咬合圧等の印加を考慮すると、臨床学的にも解剖学的にも避けなければならない好ましくない特性である欠点があるものである。
【0016】
かかる問題を避けるためには印加される曲げ応力に対して同方向の加工圧を印加する必要があり、かかる加工はスウェージング加工が好ましいものであり、必然的に素材は板状ではなく、丸棒状が好ましいものである。
【0017】
そして、前述在来態様ではスウェージング加工による丸棒を素材としてはいないことから、口腔内に印加される咬合等の曲げ応力等に対し同方向の加工圧を加える素材とはされないために本質的にこれに対処出来ないという不都合さがあったものである。
【0018】
【発明の目的】
この出願の発明の目的は上述従来技術に基づく自然歯欠損に対処する優れたインプラントの人工歯根の技術が開発されながら構造学的に、又、解剖学的にも臨床学的にも充分に適用出来ない一体物、乃至、同等構造の人工歯根、及び、その製造の問題点を解決すべき技術的課題とし、施術者がインプラントの顎骨内への埋入に伴うオセオインテグレーションの獲得が確実に保証されるように製造が出来、該施術者により人工歯根の顎骨内埋入が容易に行え、粘膜貫通部の切開も極めてスムーズに行え、感染の虞も可及的に防止され、埋入後は半永久的に設計通りの摂食や発生による咬合等も確実に行え、オセオインテグレーションの消失がないようにして医療産業に於ける歯科技術利用分野に益する優れた人工歯根の製造方法を提供せんとするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段・作用】
上述目的に沿い先述特許請求の範囲を要旨とするこの出願の発明の構成は、前述課題を解決するために、欠損された歯に対するインプラントの人工歯根を顎骨内に埋設するに際し、人工歯根の脚部としての顎骨内植込み部と上部の補綴物支持部と両者の間に一体的に介設され、頸部としての粘膜貫通部とを相互にネジ結合により、一体連結分離が自在に行われるようにし、而して、当該顎骨内植込み部の製造に際してはチタン又はチタン合金素材の棒状のものに対するスウェージング加工を介しての加工強化棒材を素材とし、次いで、自動旋盤加工により1次外形形状の加工を行い、又、顎骨との接触面積を増加してオセオインテグレーションを良好に得るべくその軸方向に沿う所定数の溝、及び、そのオーバーハング状のカバーをNC制御ワイヤーカット放電加工により切出しを行い、更にその側面の表面が当該ワイヤーカット放電加工によって平均粗さが5μm以上の放電痕等を形成し顎骨内への脚部の埋入に際し、確実にオセオインテグレーションの獲得が得られるようにし、又、リン酸カルシウム系セラミック被膜を有するようにして顎骨に対するなじみ性が良く、骨芽の発生を良好にし、咬合等の印加に際しても埋入後の脚部のぐらつき等がないようにし、又、当該顎骨内植込み部と粘膜貫通部との結合部には同じくチタン、又は、チタン合金素材によるスウェージング加工した加工強化棒材を用い旋盤加工により結合部を切出し加工した後プレス等の手段により所定の塑性加工を行って結合部を加工してネジ結合としネジ締め付けや解離に際しての回転トルクによる回転防止のために、受け止め部として当該粘膜貫通部の底部には3角以上の多角形状にして回転防止構造部を形成し、更に、その上部に於ては断面円形に形成することにより水平応力に対する耐力構造部とし、又、粘膜貫通部と補綴物支持部との結合部については上述加工と同様に加工し、粘膜貫通部に対する補綴物支持部の結合部についてはネジの締め付け、又は、解離による回転を防止し、補綴物支持部の粘膜貫通部に対する結合部に於ては該粘膜貫通部をナット,レンチ等により不動状態に固定するような構造とし、確実に締め付け,解離が行われ、而して、上述ワイヤーカット放電加工に際しては棒材を負極に、ワイヤーを正極として行い、電極のワイヤーの棒材への加工時の付着を防止し、設計通りの骨芽発生による良好なオセオインテグレーション獲得や良好なメンテナンス保持が充分に図れるようにした技術的手段を講じたものである。
【0020】
【実施例】
次に、この出願の発明の1実施例を図面を参照して説明すれば以下の通りである。
【0021】
尚、全図面を通じて同一態様部分には同一符号を用いて説明するものとする。
【0022】
そして、実施例の態様において人工歯根についてはその材質はチタン、又はチタン合金製である。
【0023】
図1〜図6に示す態様はこの出願の発明により得られる基本的な人工歯根であり、1はこの出願の発明によって得られるインプラントとしての人工歯根であり、該人工歯根1は脚部としての下部の顎骨内植込み部2と中間部の頸部としての粘膜貫通部3と上部の頭部としての補綴物支持部4との3体よりなる棒状体であり、歯肉5内に埋設され、それぞれネジ結合により3体に分離自在に一体化されるようにされている。
【0024】
そして、脚部の顎骨内植込み部2は顎骨6に対し埋入され、表面全面が平均粗さ5μm以上(理想的には当該平均粗さが15〜25μmであることが好ましいことが実験的に判明している。)のワイヤーカット放電加工による放電痕、或いは、リン酸カルシウム系セラミック被膜を有している。
【0025】
このように形成することにより、顎骨6との骨芽の良好な成長による確実なオセオインテグレーション獲得が短期間に達成出来ることが実験的に分っている。
【0026】
そして、該顎骨内植込み部2の中途部分から先端部にかけて周方向に3本のノッチ状の溝7,7,7が後述するワイヤーカット放電加工により形成され、該溝7の中途部分には両側からオーバーハング状のカバー8が一体的に形成されて骨芽の成長に伴う顎骨6との強固な一体化がなされ、回転応力や水平応力や垂直応力に対する強度を増加することが出来、顎骨6に対する接触面積を増加し、初期の有効なオセオインテグレーションを極めて容易に獲得することが出来るようにされている。
【0027】
尚、顎骨6との強固なオセオインテグレーションの獲得には該顎骨6に対して局部的応力集中のない構造が必要であり、当該溝7は長手方向に段階的な構造ではなく、先端部に滑らかに集中するような形状に形成されている。
【0028】
そして、粘膜9に対する該粘膜貫通部3は顎骨内植込み部2に対する結合部10に於て図2〜図4に示す様に、スウェージング加工により加工強化された同材質の棒材の素材に対し自動旋盤加工により切出し加工され、更に、先端部が六角形状の臨床的に印加される咬合圧のうちの回転応力に対する回転防止構造のための多角形状部11とその上部の当該咬合印加時の水平方向の分力に対する断面円形の耐力構造部12が一体的に加工形成され、そして、その上部にはテーパー状の粘膜貫通部本体13が形成され、上部の補綴物支持部4のネジ結合時における回転トルク発生に対処するための平断面六角形の受け部14が形成されている。
【0029】
そして、当該粘膜貫通部3には同心的に顎骨内植込み部2に対する結合部10に於いては自動旋盤加工を介し固定ネジ15に対するネジ孔16が形成されると共にその上部に補綴物支持部4の該粘膜貫通部3に対するロック兼結合用の固定ネジ17のオネジ17´ に対するメネジ16´ が刻設されている。
【0030】
尚、18は補綴物としてのセメント固定形成物である。
【0031】
又、4´ は補綴物支持部4の上部に形成された固定ネジ17のオネジ17´ のほめ付けのための穴である。
【0032】
そして、上記受け部14は補綴物支持部4の粘膜貫通部3に対する固定ネジ15,17の締め付けや解離の際に、図示しないナット,レンチにより回転力を受けて回転防止し、確実な結合を得ることが出来るようにするものである。
【0033】
而して、上述した脚部としての顎骨内植込み部2と頸部としての粘膜貫通部3、及び、頭部としての補綴物支持部4の製造について材質的に3者同様のチタン、又は、チタン合金であるが、代表的な例示として顎骨内植込み部2についてその製造方法を図7〜図10に従って説明すると、まず、図7に示す如く、周公知のスウェージング手段によりチタン、又、チタン合金製の棒状の素材21に対し、これを回転しながら、治工具23により該棒状の素材21に対し、径方向から矢印に示す様に、押圧力を印加し、スウェージング加工を行い、得られた加工強化棒材24を所定長さに切断する。
【0034】
そして、図8に示す如く、周公知の自動旋盤加工装置により該加工強化棒材24に対し人工歯根1の顎骨内植込み部2の直径形状と粘膜貫通部4の結合部10のネジ加工部等を加工治具としてのバイト25やドリル26により切出し加工する。
【0035】
尚、この場合、加工治具25,26は矢印方向に所定プログラムに従って押進させるが、顎骨内植込み部の素材2´ の棒状素材は回転を付与しておくようにする。
【0036】
而して、その後、図9に示す様に、顎骨植込み部2の所定部位から先端部分にかけての前記溝7、及び、オーバーハング状のカバー8の図5,図6に示す形状加工については図9に示す様に、NC制御のワイヤーカット放電加工手段により行う。
【0037】
尚、電極はチタンワイヤーを用いるものである。
【0038】
次に、図10に示す様に、顎骨内植込み部2の溝7を放電加工した後に図10に示す様に、該加工後の棒状素材2´ を回転させるとともに設定プログラムに従って前進させ、又、その外形にワイヤーカット放電加工装置のワイヤー27を進退動させて所定に前進後退させながら、その外形表面を平均粗さ5μm以上(理想的には15〜25μmであることが好ましい)に加工するが、このワイヤーカット放電加工による表面加工に加えて、又はこれに代えてリン酸カルシウム系セラミック被膜を形成するようにしても良く、このようにして顎骨内植込み部2が形成されると、顎骨6に対す骨芽の発生を良好にし、初期の良好なオセオインテグレーション獲得が確実に保証され、施術後の臨床経過における咬合の印加に際しても脚部、即ち、顎骨内植込み部2の顎骨6に対するぐらつき等の防止が確実に保証される。
【0039】
尚、上述ワイヤーカット放電加工に際しては通常問題となる点、即ち、電極であるワイヤーの被加工物のワークに強固に付着結合することであるが、この出願の発明にあってはこれを避けるためにワイヤーを被加工物と同素材とし、ワークとしての顎骨内植込み部2の棒状素材側を負極に、ワイヤー27側を正極とするワイヤーカット放電加工を行うものである。
【0040】
そして、溝7についてはこれに変えて上記旋盤加工、及び、ワイヤーカット放電加工時において板状の突起物を顎骨内植込み部2に一体的に成形加工するようにしても良いものである。
【0041】
而して、粘膜貫通部3の回転防止構造部11の多角形部分の回転防止構造部11やその上部の耐力構造部12については図8に示す自動旋盤による切出し加工後に所定のプレス成形等により塑性加工を行って当該応力対処部分を形成する。
【0042】
そして、頭部としての補綴物支持部4については上述顎骨内植込み部2の自動旋盤による切出し加工を同様に行うようにして製造が行われる。
【0043】
このようにして所定に成形加工がなされた顎骨内植込み部2と粘膜貫通部3と補綴物支持部4とが、その後、別途所定に成形加工された固定ネジ15、及び、該補綴物支持部4の固定ネジのオネジ17を介しインプラントとしての人工歯根1に所定に組立てセットされる。
【0044】
このように製造された前記人工歯根1において、手術者により粘膜9に対する切開部を介し顎骨6に予め形成しておいた埋入孔に棒状の顎骨内植込み部2を挿入し、顎骨6内とのオセオインテグレーションを強固に獲得後、顎骨内植込み部2に粘膜貫通部3をその結合部10により固定ネジ15を介し連結して両者を一体化する。
【0045】
この時、図1に示す様に、該固定ネジ15は顎骨内植込み部2の上部と粘膜貫通部3の下端部とにネジ螺合を介して二段的に連結されているために、手術後の経時的な臨床的咬合印加によっても歪んだりすることはなく、したがって、オセオインテグレーション獲得を充分に保証することが出来る。
【0046】
或いは、先に1回目の手術を行って粘膜9を切開し、顎骨6に穿設した埋入孔に埋入した顎骨内植込み部2に対し粘膜貫通部3を固定ネジ15により二段的に螺合連結する。
【0047】
この際、固定ネジ15は粘膜貫通部3と顎骨内植込み部2との結合部10に於て二段的にネジ螺合されるために連結はロック作用を介して緊結状態になされ、埋入後の臨床経過における咬合等の応力が印加されても結合部10に於ける緩みやガタツキ等が防止される。
【0048】
又、顎骨内植込み部2に於ける溝7,7,7がその顎骨6に対する接触面積を大きくし、又、カバー8,8が顎骨6に食い込むようにされるために、埋入後の顎骨6に於ける骨芽の初期発生が良好に行われ、オセオインテグレーション獲得においては確実に果されることになる。
【0049】
そして、粘膜9に対する切開後の縫合を行い、粘膜貫通部3に対する補綴物支持部4をそのネジ孔16に対するオネジ17を螺合して連結一体化するに際し、該粘膜貫通部3の受け部14に対し、図示しないナット,レンチにて粘膜貫通部3の回転を防止して確実に固定状態にし、補綴物支持部4に対する図示しないナット,レンチを係合させて強固に取り付けを行う。
【0050】
このようにして顎骨内植込み部2と粘膜貫通部3と補綴物支持部4との3体が一体連結固定された状態で歯肉5に対する埋設が終了し、図1に示す様に、粘膜貫通部3と補綴物支持部4にかけて補綴物としてのセメント固定形成物18を所定にセットし、人工歯根1の施術を終了する。
【0051】
そして、臨床経過において摂食や発声等の際に咬合圧が印加され、又、患者の歯ぎしり現象等が生じても、補綴物支持部4と粘膜貫通部3と顎骨内植込み部2とが一体的に固定ネジ15,17を介し強固に連結されているために、緩みやガタツキが生ぜず、初期のオセオインテグレーション獲得が有効に保証される。
【0052】
又、咬合圧の印加や歯ぎしり等の際に、顎骨内植込み部2と粘膜貫通部3との結合部10に対する回転力が印加されても六角状の回転防止構造部11により回転による応力は阻止され、又、これに伴う水平力は断面円形状の耐力構造部12により平均に応力分散がされて獲得されたオセオインテグレーションが確実に保持される。
【0053】
又、不測にして補綴物のセメント固定形成物18を交換等するに際し、補綴物支持部4を粘膜貫通部3から取り外すような場合においても、受け部14に対する図示しないナット,レンチを介して粘膜貫通部3の回転を防止するように固定することにより取り外し再装着等のネジ締め付けや解離が獲得されたオセオインテグレーションを失うことなくスムーズに行われる。
【0054】
そして、当該態様においては顎骨内植込み部2と粘膜貫通部3とが固定ネジ15を介し二段的に強固に一体的に連結されているために手術の際の切開が粘膜9に対する最適部位で行われることにより先述した感染等の虞も生じない。
【0055】
このようにして顎骨内植込み部2と粘膜貫通部3と補綴物支持部4とがネジ連結を介し強固に一体連結され、しかも、ネジの締め付けや解離に際して回転トルクの印加作用が阻止されるために、当該ネジの締め付け、或いは、解離に際しての応力作用が阻止され、初期に獲得されたオセオインテグレーションが損われることがなく、又、顎骨内植込み部2の側面には溝7が周方向に3体形成されているために、顎骨6との接触面積が多くなり、骨芽の初期の形成が良好に行われ、又、該溝7は周方向に沿って均等に、且つ、長手方向において先部方向に滑らかに形成されているために、顎骨6の骨芽の形成が応力集中のない構造によって安定して行われる。
【0056】
又、人工歯根1は材質的にチタン、或いは、チタン合金製であるために、施術後の臨床経過において変質することがなく、為害作用等は生じない。
【0057】
そして、このことは生物学的試験や動物学的実験や臨床試験の結果データからも充分に保証されている。
【0058】
そして、更に顎骨内植込み部2の表面を平均粗さ5μm以上、好ましくは15〜25μmであるようにワイヤーカット放電痕加工によって形成され、或いは、リン酸カルシウム系セラミック被膜を有するように形成されているために、該材質は骨成分に類似していることにより、顎骨6との初期のオセオインテグレーション獲得が極めて短期間に達成出来ることが実験的なデータからも分っている。
【0059】
尚、この出願の発明の実施態様は上述実施例に限るものでないことは勿論であり、例えば、溝については溝とは逆に板状の突起体を一体的に設けること等種々の態様が採用可能である。
【0060】
【発明の効果】
以上、この出願の発明によれば、基本的に在来開発されて数々のメリットを有して実用化されているインプラントとしての人工歯根の製造に際し、その素材がチタン、或いは、チタン合金製であるために、施術後の臨床経過において変質することなく、又、為害作用を生ずることもなく、人工歯根として半永久的に機能保持が図れるという優れた効果が奏される。
【0061】
而して、この出願の発明において脚部としての顎骨内植込み部,頸部としての粘膜貫通部,頭部としての補綴物支持部が特開平1−11539号公報(特公平7−71563号公報)発明等の在来態様の如く、圧延板、又は、鍛造板からではなく、スウェージング加工等による加工強化棒材を用いるために軸方向に対し直角に応力を印加しても弱くならず、したがって、臨床経過時の咬合印加等の際にも充分に対処出来、又、当該加工強化棒材に対しNC自動旋盤による加工が行われ、顎骨内植込み部と粘膜貫通部の固定ネジ等による強固な結合を現出させるために、又、該粘膜貫通部に対する補綴物支持部の固定ネジ結合を介して強固に一体化するうえで、強固で良好な加工精度が必要であるが、この出願の発明においては当該加工強化棒材に対し、NC自動旋盤加工を行うために、供給される高精度の施工が出来るという優れた効果が奏される。
【0062】
そして、当該NC自動旋盤加工が行われた後に、ワイヤーカット放電加工を行うことにより充分な確実なオセオインテグレーションを獲得するうえで顎骨内植込み部の側面部に対する顎骨との接触面積を増加し、骨芽の成長を良好に保証し、設計通りのオセオインテグレーションが獲得出来るという優れた効果が奏される。
【0063】
しかも、一般態様のワイヤーカット放電加工においては電極としてのワイヤーが被加工物のワークに付着する虞があるが、特に、顎骨内に埋設する人工歯根においては解決出来ない問題であるが顎骨内に埋め込む顎骨内植込み部分を負極とし、ワイヤーを正極とするワイヤーカット放電加工を採用することにより、このような虞が確実に防止出来るという優れた効果が奏される。
【0064】
又、上記NC自動旋盤加工により1段的に成形加工が行われ、次いで、プレス加工成形等により結合部に回転防止構造部や水平力に対する耐力防止構造部を塑性加工により作製出来るために、オセオインテグレーション獲得後の臨床経過における咬合印加等においても回転、及び、水平応力の印加による顎骨植込み部と顎骨との結合部のぐらつき等が生ぜず、このような2段成形により確実なオセオインテグレーションを獲得が保証出来るという優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明による人工歯根の概略断面図である。
【図2】同、粘膜貫通部の概略側面図である。
【図3】同、平面図である。
【図4】図2の縦断面図である。
【図5】顎骨内植込み部の概略斜視図である。
【図6】図5のVI−VI部分断面図である。
【図7】この出願の発明の実施例の顎骨内植込み部の棒状素材のスウェージングによる加工強化部の部分切截概略斜視図である。
【図8】同、NC自動旋盤加工の部分切断概略側面図である。
【図9】同、カットワイヤーカット放電加工による溝加工切出しの概略模式側面図である。
【図10】同、顎骨内植込み部の溝切出し加工後の表面の成形加工の模式側面図である。
【符号の説明】
6 顎骨
1,1´ ,1´´ 人工歯根
2 脚部(顎骨内植込み部)
3 頸部(粘膜貫通部)
4 頭部(補綴物支持部)
9 粘膜
11 回転防止構造部
12 耐力構造部
15,17 固定ネジ
7 溝
8 カバー
14 受け部
24 加工強化棒材
21 加工強化前棒材
25,26 旋盤切出し加工治具
27 ワイヤー
Claims (5)
- 顎骨内植込み部、粘膜貫通部及び補綴物支持部から成り、複数体に分割可能な一体構造である人工歯根の製造方法において、
チタン又はチタン合金の素材の加工強化された丸棒状の棒材から、旋盤加工により、上記人工歯根の外形形状と分割可能な一体構造とするための結合構造を切出し加工した後、顎骨内植込み部をワイヤーカット放電加工により切出し加工するようにし、
上記ワイヤーカット放電加工の際、顎骨内植込み部の軸方向に沿う溝と、該溝の側部からオーバーハング状に張出したカバーとが形成されるように、顎骨内植込み部に対して切出し加工を施すことを特徴とする人工歯根の製造方法。 - 顎骨内植込み部、粘膜貫通部及び補綴物支持部を有し、複数体に分割可能な一体構造である人工歯根の製造方法において、
チタン又はチタン合金の素材の加工強化された丸棒状の棒材から、旋盤加工により、上記人工歯根の外形形状と分割可能な一体構造とするための結合構造を切出し加工した後、旋盤切出しを行った外形表面をワイヤーカット放電加工により加工するようにし、
上記ワイヤーカット放電加工の際、顎骨内植込み部の軸方向に沿う溝と、該溝の側部からオーバーハング状に張出したカバーとが形成されるように、顎骨内植込み部に対して切出し加工を施すことを特徴とする人工歯根の製造方法。 - 上記旋盤加工により、前記人工歯根の外形形状と、分割可能な一体構造とするための結合構造を切出し加工した後、更に該結合構造に機械的な塑性加工を加えるようにすることを特徴とする請求項1又は2記載の人工歯根の製造方法。
- 上記ワイヤーカット放電加工を行うに際し、顎骨内植込み部を負極とし、ワイヤーを正極として行うようにすることを特徴とする請求項1又は2記載の人工歯根の製造方法。
- 上記顎骨内植込み部を回転させながら、顎骨内植込み部の旋盤により切出した外形表面をワイヤーカット放電加工することを特徴とする請求項1又は2記載の人工歯根の製造方法。
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