JP3810108B2 - シアノイミノ−1,3−チアゾリジン類の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明はシアノイミノ−1,3−チアゾリジンの新規な製造方法に関する。
【0002】
エタノールの中に入れたジメチルN−シアノジチオカーボネートとシステアミンを還流下で加熱するとシアノイミノ−1,3−チアゾリジンが得られることは公知である(Archiv der Pharmazie 305、731(1972)参照)。しかしながら、この方法は、メチルメルカプタンが2当量除去されると言った欠点を有している。従って、メチルメルカプタンは重大な呼吸毒物であり、追加的安全手段を用いる必要があると共にこれを焼却するか或は次亜塩素酸ナトリウム水溶液または過酸化水素による酸化でこれの分解を生じさせる必要があることから、このようなルートでこれを産業的に製造するのは毒物学的および環境上の理由で非常に高価である。
【0003】
また、水酸化ナトリウム水溶液の中でジメチルN−シアノイミドカーボネートをシステアミンと一緒に10−11のpHで長期間撹拌するとシアノイミノ−1,3−チアゾリジンが得られることも公知である(Org.Prep.Procedure Int.23、(6)、721−728(1991)参照)。しかしながら、このようにして得られた生成物が示す融点(168−170℃の融点)は、高純度のシアノイミノ−1,3−チアゾリジンが示す融点(154−156℃の融点)とかなり異なっており、これは恐らくは前者に二次生成物が混入していることによるものであろう。
【0004】
従って、さらなる精製を行う必要があることで更に収率が低下することになり、これは48%になると示されており、その結果として、この方法もまた産業的製造には不適切である。
【0005】
驚くべきことに、希釈剤の存在下、少なくとも2当量の塩基を存在させ、そして望まれるならば、保護ガス雰囲気の存在下、式(I)
【0006】
【化5】
Figure 0003810108
【0007】
[式中、Xは酸基を表す]
で表されるシステアミン塩と式(II)
【0008】
【化6】
Figure 0003810108
【0009】
[式中、R1およびR2は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチルまたはt−ブチルを表す]
で表されるジアルキルN−シアノイミドカーボネート類とを反応させることによって式(III)
【0010】
【化7】
Figure 0003810108
【0011】
[式中、 1 は上記のとおりであり、(+)は、金属イオン相当物またはアンモニウムイオンを表す]
で表される中間生成物を生じさせた後、これを8から9.5のpHで環化させることにより、式(IV)
【0012】
【化8】
Figure 0003810108
【0013】
で表されるシアノイミノ−1,3−チアゾリジンを生じさせると、シアノイミノ−1,3−チアゾリジンが非常に良好な収率および純度で得られることをここに見い出した。
【0014】
ジメチルN−シアノイミドカーボネートとシステアミンとを0℃の水中で反応させるとメチルN−シアノ−N’−(2−メルカプトエチル)−カルバミミデートか或はそれからもたらされるジスルフィド化合物が生成することが知られていたことから[Chemistry and Industry、1983、349−352;Org.Prep.Procedures Int.、23、(6)、721−728(1991)参照]、本発明に従う方法を用いるとこのシアノイミノ−1,3−チアゾリジンが高純度および高収率で得られることは極めて驚くべきことであると見なされるべきである。従って、この新規な方法は、従来技術に対する実質的な改良を表している。
【0015】
本発明に従う方法では、
Xがハロゲン、酢酸塩、硫酸塩または水素硫酸塩などの如き酸基を表す式(I)で表される化合物を用いるのが好適である。
【0016】
本発明に従う方法では、
1およびR2がメチルまたはエチルを表す式(II)で表される化合物を用いるのが更に好適である。
【0017】
本発明に従う方法の過程で生じる式(III)で表される中間体では、
Aがナトリウム、カリウムまたはアンモニウムイオンを表すのが好適である。
【0018】
本発明に従う方法で、例えば塩酸システアミンと水酸化ナトリウム溶液とジメチルN−シアノイミドカーボネートを用いる場合、下記の図式でこの方法を説明することができる。
【0019】
【化9】
Figure 0003810108
【0020】
本発明に従う方法で出発材料として用いるべき式(I)で表されるシステアミン塩および式(II)で表されるジアルキルN−シアノイミドカーボネート類は、有機化学で一般に知られている化合物である。
【0021】
好適には、希釈剤の存在下で本発明に従う方法を実施する。適切な希釈剤は、この反応条件下で不活性な全ての通常溶媒である。これらには、例えば水、アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノールなど、ニトリル類、例えばアセトニトリル、ブチロニトリルまたはイソブチロニトリルなど、或はエーテル類、例えばジメトキシエタン、メチルt−ブチルエーテルまたはTAMEなどが含まれる。水中または水/アルコール混合物中でこの反応を実施するのが特に好適である。
【0022】
本発明に従う方法の実施では、比較的幅広い範囲内で反応温度を変化させることができる。一般に0℃から100℃の温度、好適には0℃から70℃の温度でこの方法を実施する。
【0023】
最初、上述した溶媒の1つと塩基の混合物の中に式(I)で表される適切なシステアミン塩を導入した後、式(II)で表されるジアルキルN−シアノイミドカーボネート類の1つを分割してその示した温度で加えるような様式で、本発明に従う方法を実施する。次に、鉱酸、例えば硫酸または塩酸など(これはまた望まれるならば気体の形態でも使用可能である)を加えることでpHを8から9.5にすることで、環化を生じさせる。また、添加を逆にすることも可能である、即ち、最初、溶媒の中にジアルキルN−シアノイミドカーボネートを導入した後、塩基が少なくとも2当量入っているシステアミン塩溶液を計量して入れることも可能である。このような操作を用いると、望まれないジスルフィドの生成が特に少なくなる。通常の方法(製造実施例を参照)を用いてその反応混合物を処理することができる。
【0024】
適切な塩基は、アルカリ金属の水酸化物、例えば水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムなど、アルカリ土類金属の水酸化物、例えば水酸化カルシウムなど、並びにアルカリ金属の炭酸塩およびアルカリ金属のアルコラート類、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート、ナトリウムエチラートおよびカリウムエチラートなどであり、これらを過剰量で用いる。
【0025】
望まれるならば不活性ガスの存在下で本発明に従う方法を実施する。これに関連して適切な不活性ガスは窒素であり、そしてまた実質的に全ての貴ガス、特にアルゴンである。
【0026】
本発明に従う方法で製造したシアノイミノ−1,3−チアゾリジンは、有害生物防除剤を製造するための出発物質として使用可能である(ヨーロッパ特許出願公開第235 725号参照)。
【0027】
以下の実施例を用いて本発明の説明を行う。
【0028】
【実施例】
実施例1
最初、窒素雰囲気下で45%濃度の水酸化ナトリウム溶液を17.8g(0.2モル)導入した後、30mLの水で希釈し、そして塩酸システアミンを11.6g(0.1モル)加える。この溶液を30−35℃で15分間撹拌した後、冷却して0℃にする。
【0029】
次に、11.4g(0.1モル)のジメチルN−シアノイミドカーボネートを分割して加えた後、この混合物を0−5℃で2.5時間撹拌する。このpHは12.7である。温度を高くして室温にした後、塩酸を添加してpHを9.5に調整し、続いてこの混合物を40℃に加熱した後、pHを9.0に調整する。この反応混合物を8時間撹拌し、pHを6.8に調整した後、固体を吸引濾別して乾燥させる。
【0030】
融点が154℃のシアノイミノ−1,3−チアゾリジンが10.9g得られる。HPLCに従い、その純度は95.8%である。ジスルフィドの含有量は1.9%であり、これは、収率が理論値の82.1%であることに相当している。
【0031】
本発明の特徴および態様は以下のとうりである。
【0032】
1. シアノイミノ−1,3−チアゾリジンの製造方法において、希釈剤の存在下、少なくとも2当量の塩基を存在させ、そして望まれるならば、保護ガス雰囲気の存在下、式(I)
【0033】
【化10】
Figure 0003810108
【0034】
[式中、Xは酸基を表す]
で表されるシステアミン塩と式(II)
【0035】
【化11】
Figure 0003810108
【0036】
[式中、R1およびR2は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチルまたはt−ブチルを表す]
で表されるジアルキルN−シアノイミドカーボネート類とを反応させることによって式(III)
【0037】
【化12】
Figure 0003810108
【0038】
[式中、 1 は上記のとおりであり、(+)は、金属イオン相当物またはアンモニウムイオンを表す]
で表される中間生成物を生じさせた後、これを8から9.5のpHで環化させることにより、式(IV)
【0039】
【化13】
Figure 0003810108
【0040】
で表されるシアノイミノ−1,3−チアゾリジンを生じさせることを特徴とする方法。
【0041】
2. Xがハロゲン、酢酸塩、硫酸塩または水素硫酸塩の群由来の酸基を表す式(I)で表される化合物を用いることを特徴とする第1項記載の方法。
【0042】
3. R1およびR2がメチルまたはエチルを表す式(II)で表される化合物を用いることを特徴とする第2項記載の方法。

Claims (1)

  1. シアノイミノ−1,3−チアゾリジンの製造方法において、希釈剤の存在下、少なくとも2当量の塩基を存在させ、そして望まれるならば、保護ガス雰囲気の存在下、式(I)
    Figure 0003810108
    [式中、Xは酸基を表す]
    で表されるシステアミン塩と式(II)
    Figure 0003810108
    [式中、R1およびR2は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチルまたはt−ブチルを表す]
    で表されるジアルキルN−シアノイミドカ−ボネート類とを反応させることによって式(III)
    Figure 0003810108
    [式中、 1 は上記のとおりであり、(+)は、金属イオン相当物またはアンモニウムイオンを表す]
    で表される中間生成物を生じさせた後、これを8から9.5のpHで環化させることにより、式(IV)
    Figure 0003810108
    で表されるシアノイミノ−1,3−チアゾリジンを生じさせることを特徴とする方法。
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